日銀は、16日まで開いた金融政策決定会合で、国内の景気は基調としては緩やかな回復を続けているとしてマイナス金利政策を含めた今の大規模な金融緩和策を維持することを決めました。
日銀は16日までの2日間、金融政策決定会合を開き、国内外の景気や物価の現状と先行きについて議論しました。
その結果、消費は「一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移している」としました。
企業の生産は「地震による影響もあって横ばい圏内の動きを続けている」とし、住宅投資は「再び持ち直している」としました。
これらを踏まえて日銀は、国内の景気について「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」という判断を示しました。
そのうえで、目標とする2%の物価上昇率の達成に向け、マイナス金利政策を含めた今の大規模な金融緩和策を維持することを賛成多数で決めました。
金融市場では、今月23日にイギリスで行われる国民投票に向けて、EU=ヨーロッパ連合からの離脱派が勢いを増しているとの見方から円高や株安が進むなど不安定な値動きが続いています。
しかし、今回の決定で日銀としては、マイナス金利政策が経済に及ぼす効果や、イギリスの国民投票の結果を見極めたいと判断したものとみられます。
【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!
結論からいうと、日銀は追加金融緩和を行うべきでした。以前このブログにも掲載したように、いくら金融緩和しても下げられない失業率を「構造的失業率」といい、実際の失業率が構造的失業率まで下がらないと、物価や実質賃金は本格的に上昇せず、インフレ目標の達成もおぼつかないことになります。
構造的失業率などについて以下に簡単に解説しておきます。
総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。
- 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業
- 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業
- 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。
過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。
このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。
であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。
しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。
日銀黒田総裁 |
2014年10月の日銀の追加緩和は、安倍晋三政権による消費税率10%への再増税を後押しするためだったといわれており、このときの黒田相殺は、中央銀行総裁というよりは、元財務省出身者の立場が良く現れていたと思います。
しかしながら、マイナス金利の導入は、中央銀行総裁としての面目躍如というところで、見事に中央銀行総裁の立場を示したものといえました。
現在政府の景気対策として、財投債(国債の一種)発行によるインフラ整備が20兆円規模で検討されており、補正予算が秋の臨時国会で決定される予定です。その後で、量的緩和の拡大を日銀が行うと、「ヘリコプターマネー」との批判を受けたかもしれません。
しかし、インフレ率が低い現状では、全く取るに足らない批判ですが、日銀としては無駄な説明をしたくないという認識あったのかもしれません。であれば、政府が国債を発行する前に量的緩和しておけば、日銀にとっては良い選択だったと思います。
しかし、今回も量的緩和をしなかったということで、補正予算が決まった後で、量的緩和ということになると、「ヘリコプターマネー」との批判をかなり受けやすくなるといことで、緩和をしにくい状況になると思います。
それにしても、このままでは、いずれ金融緩和の効果も薄れてくるのは必定です。結局、消費税にこだわる財務省とその片棒をかづく政治家やマスコミによって日本はせっかくのデフレ脱却のチャンスを逃すことにもなりかねません。
どこかで、日銀黒田総裁は、初心を思いおこし、中央銀行総裁としての矜持を貫いていただきたいものです。
街頭演説をする安倍総理 |
とはいっても、現在金融緩和をするしないで、すぐに7月の参院選の頃にその影響が現れるということではありません。株価や、為替は別にして、実体経済に対する金融緩和の効き目にはタイムラグがあります。1〜2年程度を経てからはじめてその効果がでてきます。
それに野党は、金融政策と雇用や経済が密接に結びついていることなど全く理解していません。だから、彼らの主張する「アベノミクス失敗」は全く頓珍漢で単なる個人攻撃に過ぎないものです。彼らの批判は一部の人にしか受け入れられません。そもそも、現状の雇用状況のかなりの改善があるのですから、「アベノミクス失敗」と連呼してもそれは一部の人にしか影響を与えません。
それに野党は、金融政策と雇用や経済が密接に結びついていることなど全く理解していません。だから、彼らの主張する「アベノミクス失敗」は全く頓珍漢で単なる個人攻撃に過ぎないものです。彼らの批判は一部の人にしか受け入れられません。そもそも、現状の雇用状況のかなりの改善があるのですから、「アベノミクス失敗」と連呼してもそれは一部の人にしか影響を与えません。
だからすぐにどうこうのということはないです。しかし、長期的にみれば必ずその影響は現れてきます。近いうちに追加金融緩和をしないと、あいかわらず実質賃金が上昇しないという事態に見舞われることになります。それに、せっかくかなり改善した雇用環境が悪化するかもしれません。
そうして、日本経済はまたデフレスパイラルのどん底に沈み込むことになります。
そんなことは、断じて避けなければなりません。日銀は、「ヘリコプターマネー」と批判されたとしても、近いうちに必ず追加金融緩和を行うべきです。
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