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2020年3月9日月曜日

景気大打撃は確実だが…新型コロナからの「日本復活の秘策」はこれだ―【私の論評】日本は的確な経済・金融政策を実行し、年間自殺者2万以下の現状を維持せよ(゚д゚)!

景気大打撃は確実だが…新型コロナからの「日本復活の秘策」はこれだ

経済政策こそが生命を守る

各国の感染者数「最新の状況」

先週、海外ニュースや海外市場は、新型コロナウイルスの世界的な広がりで大混乱だった。

先週の本コラムでは、各国の感染者数と武漢との距離を表すために次の図を出したが、国別の感染者数では韓国が突出しており、多い順にイタリア、イラン、日本であった。


今週これを更新すると、次の図になる。


感染者数で韓国、イラン、イタリアが図抜けているが、フランス、ドイツ、スペインが日本の上になっている。

相変わらず日本のマスコミは、日本の感染者にクルーズ船の乗客を含めて、過大な数字にして報道しているが、クルーズ船の感染者数はWHOの統計上も日本の感染者ではない。日本とクルーズ船の数字を合わせて報じるのは、誤報ともいわれかねない。

現在はアメリカのカリフォルニア沖にクルーズ船があり、船内感染が起きている模様だが、この数字をアメリカの感染者数に含めて報道したら、アメリカ大使館から抗議が来るだろう。それくらい、日本のマスコミ報道はおかしい。

不安が引き起こす「市場の混乱」

ちなみに、感染者数ではなく人口10万人あたりの感染者率でみると、次の図のようになる。

日本は感染国とは言えないほどの数字だ。


なお、中国の発表する感染者数が増えていないので「すでに中国では終息している」という報道もある。

しかし、中国の統計データは先月に3度も統計変更があったが、通常は変更後と変更前の複数時系列が発表されるべきところ、そうした措置は見当たらず、信用ができない。習近平主席の発言にあわせて統計数字が作られているふしもある。筆者の推計値とも乖離があるので、信用していない。


いずれにしても、世界中が新型コロナウイルスを恐れている。新型コロナウイルスの致死率は、かつてのSARSほど高くなく、例年のインフルエンザより少し高い程度といっても、人々は恐れる。1年もすればワクチンができると言っても、やはり恐れる。それが、市場の混乱を引き起こしている。

「恐怖指数」は同時多発テロ並み

筆者は仕事柄、欧米のニュースを日頃見ているが、連日新型コロナウイルスの話ばかりだ。スポーツ番組でも、7月の東京五輪ができるかどうかという話題だ。プロ野球や大相撲が無観客試合になったことも報じられている。

こうした雰囲気を受け、アメリカの株式市場は乱高下だ。

FRBは、金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)について、定例の17、18日を待たず3日に緊急で開催し、政策金利0.5%の引き下げを行った。

これに対して株式市場は反応せず、ダウ平均は785ドル安だった。それほど、新型コロナウイルスはアメリカ人にとって脅威なのだろう。


アメリカ市場では、今後30日間の米株式市場の予想変動範囲を算出し、それを「恐怖指数」と呼んでいる。

過去のリーマンショック時には90近くまで上がった。NY同時多発テロ、アジア経済危機、ギリシャ危機などの時には、50近くまで上昇した。今回のコロナウイルス騒ぎでも、2月末に50近くまでにあがった。

この意味で、今回はリーマンショックほどではないが、過去の大きな経済危機並みに、アメリカの投資家心理に影を落としていると言えるだろう。

トランプ大統領は、コロナウイルスを過度に心配している。11月に大統領選が控えているいま、対応に不手際があると、再選が危うくなるからだ。こうした危機管理は国民の生命に関わる話なので、政治家は細心の注意を払うのだ。

ようやく尻に火がついた

実は日本でも、アメリカの恐怖指数と同様の数値「日経平均VI」がある。市場が予想する日経平均株価の将来1ヵ月間の変動の大きさ(ボラティリティ)を表す数値だ。


これを見ても、過去10年間で株式市場は最もナーバスになっていることがわかる。

現在は、安倍政権にとっても最大の試練になっている。どこの国であれ、危機管理ができない政府は国民から見捨てられるのが運命だ。

本コラムでは、安倍政権の初動、特に1月28日の感染症指定のミスを厳しく批判してきた。これを上手くこなせなかったために、水際阻止ができず、結果として中国からの全面的な入国制限やクルーズ船入港阻止もできなかったからだ。

ただしここにきて、ようやく安倍政権の尻に火がついたようだ。習近平主席の訪日延期は当然だ(2月10日付筆者コラム「新型コロナウイルスで『習近平訪日は中止』か…状況はかなり厳しい」)。

習近平主席の訪日延期がようやく決まったのが3月5日。これは、天皇謁見は30日前までに申し込まねばならないという「30日ルール」があり、さすがに1ヵ月前には予定を立てざるを得なかったのだろう。

急に始まった対策の数々

そして習氏の訪日延期発表の3時間後に、ようやく中国と韓国からの全面的な入国制限を実施することが決まった。遅きに失したとはいえ、やらないよりマシだ。

その後、安倍政権は吹っ切れたようだ。次々に対策が出てきた。

筆者は様々なメディアにおいて、日本政府がやるべき対策を述べてきたが、完全ではないものの、安倍政権はそれらの対策を矢継ぎ早に決定している。

筆者は3月4日、「生活用品の買い占め対策には、買い占め売り惜しみ防止法や古物営業法を使え」と言った。そうしたら翌5日、〈マスクの買い占め ネット転売禁止へ 政府総合対策取りまとめ〉と報道された。

買い占め防止には現行制度でも様々な方法があり、役人出身の筆者にとって対策をあげるのは難しくない。重要なのは、それを行う政治的な意思である。こうした対策について、国会議員からも質問主意書が出ている(2月10日、「マスクの買い占め・転売行為に対し、物価統制令、国民生活安定緊急措置法、買い占め防止法等を活用することに関する質問主意書」)。

政府は2月21日に「そうした状況でない」と答弁していたが、3月5日には一転して対応を始めた。安倍政権も追い込まれた上の決断だ。

残すは「消費減税」か

また新型コロナウイルスにより打撃を受けている旅行業界、観光業界、イベント業界、飲食業界などでは、緊急融資制度が必須になる。中国人観光客が来ず、国内のイベントも3月末までは中止が相次いでいるので、関係業界の経営は深刻である。

筆者は緊急融資制度について、「マイナス金利を活用して行うべき」と3月2日から言っている(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1234395211410788352https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200306/dom2003060004-n1.html)。

すると3月7日、〈中小・小規模事業者などに実質無利子・無担保融資〉という報道があった。これは、マイナス金利とはいかないが、それでも従来の緊急融資制度より一歩前進するものだ。

これまで筆者が提言した政策で、残されたものは「消費減税」である(「日本経済『コロナ恐慌』回避への“劇薬政策”投入あるか 日銀談話の影響は限定的 識者『10兆円補正』『消費減税』提案」)。

5月18日に1-3月期GDP速報が発表されるが、マイナスになるのは確実である。10-12月期もマイナス(3月9日に2次速報の公表)で、2期連続のマイナスだろうから、2020年度補正予算が必要となっているはずだ。

幸いにも、4月の習近平主席訪日が延期となったので、国会日程はかなり楽だ。もともと4月以降に通すべき重要法案もあまりないので、補正予算編成の絶好のチャンスだ。

経済政策は国民の生命を守る

政府は、2年を限度に新型コロナウイルスを新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に加える改正案を準備し、10日に国会に提出し、13日の成立をめざす。そこでは、財政措置は最小限度のはずなので、本格的な景気対策は4月以降になるだろう。そこで、何とか、新型コロナウイルスがもたらす景気後退を防がなければいけない。

経済政策こそ、国民の生命に関わる問題である。

公衆衛生学者デヴィッド・スタックラーと医師サンジェイ・バスが著した『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』という興味深い書がある。いくつかの事例から、不況や経済危機における政府の政策対応如何により、人々の健康状態、ひいては生死に大きな影響が及ぼされるという主張だ。経済政策はどんな薬、手術、医療保険よりも命に関係するという彼らの言葉を、経済政策を研究する筆者も首肯したい。
新型コロナウイルスには、経済政策までやって初めて打ち勝てるのだ。
【私の論評】日本は的確な経済・金融政策を実行し、年間自殺者数2万未満の現状を維持せよ(゚д゚)!
日本では今、武漢肺炎対策としての経済対策が話題になっています。現状で世界中の国々が、防疫によりウイルス封じ込めに躍起になっています。そうして、このウイルスの蔓延が終息しようとしまいと、経済に与える悪影響は免れることはできず、これに対する経済対策が実行されることになるでしょう。

いずれの国でも、ウイルス対策に限らず、不況に陥ると経済政策をどのようにするべきか、議論されます。しかし、結局のところ、どのような政策が良いのでしょうか。そして、その決断を、イデオロギーや経済理論だけを頼りに行って、良いのでしょうか。

このような疑問に答えてくれるのが、冒頭の高橋洋一氏が紹介している『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』という興味深い書籍です。

『経済政策で人は下か?』の表紙

世界規模の不況に陥ったとき、国ごとに経済政策は異なり、それによって国民の運命も異なる方向に動かされてきました。公衆衛生学者と疫学者である本書の著者は、そのことを利用して政策の優劣を比較しました。

つまり、過去の各国の政策選択とその結果のデータを、世界恐慌からソ連崩壊後の不況、アジア通貨危機、そしてサブプライム危機後の大不況まで調査し、比較したのです。

ソ連崩壊後の不況に関しては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本経済は後半に回復する 増税スキップ&大型景気対策で中国・EUの不安払拭―【私の論評】殺人政策である10%増税見送りは当然!まともな経済対策で日本は再度成長軌道に乗る(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとて、この記事にはロシアの平均寿命の推移(上グラフ)を掲載しました。

このロシアの例では、ソ連崩壊後の不況においては、ロシア人男性の平均寿命が57.6にまで下がったことがあったことがわかります。経済政策のまずさによっては、人は死ぬのです。

比較の指標は、国民の生死です。政策の違いによって、国の死者数は増えたのか減ったのか、健康状態や平均寿命などがどう変化したかを比較しました。経済政策は、国の借金返済や構造改革、景気刺激など、さまざまな目的で行われますが、そもそも国民に死を強いるようでは元も子もありません。結果はどうだったのでしょうか。

実は数多くの人が、緊縮策の悪影響によって死んでいたのです。

著者らの研究によれば、不況下で危険な「緊縮政策」を選択した影響で増加する死亡数は、まさに驚くべきものです。最も悲惨なのは、ソ連崩壊後のロシアで、1990年代に経済政策の失敗により数百万人の男性が死んだ(主に自殺とアルコール関連の死亡)と考えられるといいます。

アジア通貨危機後にIMFに緊縮財政を強いられたタイでは、感染症対策支出を削らされたせいで、感染症による死亡率が大幅に上昇しました。緊縮財政をとったギリシャでは、これも対策費の削減によりHIV感染が拡大したほか、医療費カットで医療制度が崩壊し国民の健康状態はひどく悪化しました。

著者たちは次のように述べています。

民主的な選択は、裏づけのある政策とそうでない政策を見分けることから始まる。特に国民の生死にかかわるようなリスクの高い政策選択においては、判断をイデオロギーや信念に委ねてはいけない。…正しくかつわかりやすいデータや証拠が国民に示されていないなら、予算編成にしても経済政策にしても、国民は政治家に判断を委ねることができない。その意味で、わたしたちはこの本が民主化への第一歩となることを願っている。

本書をきっかけに、政策論争がイデオロギーを離れ、データに基づいたものになることを願っています。

以上では、ロシアなどの例をあげていますが、日本でも、経済政策のまずさで人が死んだといえるエビデンスがあります。

厚生労働省と警察庁は1月17日、2019年の全国の自殺者数(速報値)が前年より881人少ない1万9959人となり、10年連続で減少したと発表しました。

速報値が2万人を切るのは初めてです。3月に発表される確定値では、警察による捜査で自殺と判断された数百人が加わる見通しが、統計を開始した1978年以降で最も少なかった2万434人(81年)を下回る可能性が高いといいます。


このグラフで着目すべきは、自殺者が3万人台を超えていた期間です。この期間は、ほとんど全期間にわたって日銀が金融引締を実施した時期にあたります。この期間には、さらに追い打ちをかけるように、増税という緊縮財政が繰り返し行われました。

そのため、平成年間のほとんどの期間、日本はデフレと円高に悩まされました。この時期に自殺者が3万人を超えていたのは、やはりこうした経済政策による悪影響もあったとみるべきでしょう。

2014年には、消費税増税をしていますが、金融緩和政策は継続されていたので、雇用は改善され続けました。雇用が良くなったこと、政府の対策などが奏功してこのような結果になったのでしょう。

しかし、現在では10%への消費税増税が実施された他、武漢肺炎による経済の悪化もあります。せっかく、自殺者が2万人を切るような良い状況になったのですから、政府はこの傾向を今後も継続するため、的確な経済対策を実行していただきたものです。

自殺者の数をみていると、現状の武漢肺炎による死者よりもはるかに多いことがわかります。

「経済政策はどんな薬、手術、医療保険よりも命に関係する」という言葉の重みを感じます。

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2018年11月5日月曜日

米中間選挙情勢 接戦6州が焦点 6日投開票―【私の論評】トランプ共和党は確実に過半数を維持する(゚д゚)!

米中間選挙情勢 接戦6州が焦点 6日投開票



米中間選挙は6日に投開票される。与党・共和党が上下両院で過半数を維持できるかどうかが焦点で、戦いの行方は2020年の大統領選で再選を目指すトランプ大統領の政権運営を大きく左右する。共和党は上院で優勢にある一方、下院では厳しい戦いを強いられており、トランプ氏の野党・民主党に対する攻撃は最終盤で過熱している。

 上院(定数100、任期6年)は35議席、下院(定数435、任期2年)は全議席が改選される。全米50州のうち36州では州知事選も行われる。

 米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」は2日現在、上院では非改選分も含めて共和が50議席、民主が44議席を獲得すると予測している。与党は採決で賛否同数の場合、副大統領が兼務する上院議長の決裁で法案を可決させられるため、50議席で議決権を握れる。

 中西部インディアナ、ミズーリ、南部フロリダ、西部アリゾナ、ネバダ、モンタナの6州は支持率5ポイント差以内の接戦だ。トランプ氏は共和の現有51議席からの上積みを目指し、3日にモンタナ、フロリダ両州で演説するなど最終盤のテコ入れに努めている。

 一方、同サイトは、下院選では民主が203、共和が196の選挙区で優位にあり、過半数218をめぐる攻防は接戦36選挙区にかかっているとみている。

 下院については一時、民主の圧勝も予想されたが、9月後半から共和が追い上げている。民主が保守派のカバノー連邦最高裁判事の人事承認をめぐって女性暴行疑惑を追及し、トランプ氏の支持層が反発して結束したとみられている。

 最終盤でトランプ氏は、民主党が不法移民に寛容すぎると非難。中米から米国に向かう移民集団への対処のため、最大1万5千人の米軍部隊を国境地帯に派遣すると表明した。民主党候補を応援するオバマ前大統領は2日、「勇敢な兵士を国境での政治的な人気取りに使っている」と批判した。移民問題の争点化が、有権者の投票行動にどう影響するかも注視される。

【私の論評】トランプ共和党は確実に過半数を維持する(゚д゚)!

私自身は、米国の議会選挙に詳しくないですし、日本国内の選挙の票読みなども上手にはできません。しかし、トランプ大統領の誕生については、少なくとも1年前くらいから、十分ありえることであると予測して、それは最後まで変えませんでした。

なぜそのようなことをいえたかとえば、やはりトランプ大統領候補が誕生した背景と、米国社会の現状を分析していたからだと思います。このときは、日米のメデイアよりは、よほどまともな予測ができたと思いました。

今回は、やはりトランプ大統領、すなわち共和党側が有利と判定しました。その根拠はこのブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本メディアが報じない「トランプ支持急上昇」の裏事情―【私の論評】上昇は偶然ではなく必然!リベラル派が期せずして火をつけた(゚д゚)!
トランプ大統領の(ときに根拠は不明の)過激発言が保守派支持層を熱狂させている
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に私なりに分析した「トランプ大統領有利」の根拠について引用します。
元々、カバノー氏は清廉潔白の士であり、公平な人物との評価の高い人物でした。だからこそ、トランプ大統領が、最高裁判事に指名したのです。 
このような人物を中傷することで、「またリベラルにいいようにされる」と危機感を抱いた保守派が団結したのです。だから、キャバノー氏が中間選挙の追い風になったのです。
ブレッド・カバノー氏

次に、「カラバン問題」に関しても、「ランプ大統領は「カラバン」の中に犯罪者、テロリスト、中東からの亡命者も含まれていると根拠希薄な主張を繰り返し、断固として国境を守るとアピールしている」としていますが、これも本当に根拠希薄な主張であるといえるかどうか、冷静に判断すべきです。
まずは、「カラバン」の中にテロリストや中東からの亡命者が全く存在しないという主張は正しいでしょうか。私は、その可能性は全く否定することはできないと思います。
そもそも、安全保障などはあらゆる可能性を検討すべきものであり、最初からそのようなことはあり得ないなどとして、検討するなどということは間違いです。大量の移民・難民が押し寄せればその中にはテロリストどころか、武装難民も存在するかもしれないことは否定できません。これは人種差別ではありません。国を守るということを前提とすれば、当然て出て来る懸念です。
米国のマット・ガエッツ下院議員(共和党)はツイッターに、主催者がキャラバン参加者の女性と子供にお金を渡している動画を投稿し、大規模移民団の背後に政治的な動機があることをほのめかしました。またそのツイートでは「Soros?」と書き、ジョージ・ソロス氏の支援する団体との関連をほのめかしていましたが、オープン・ソサエティ財団はすぐさま同団体とソロス氏の一切の関与を否定するリプライを返しています。
 カバノー連邦最高裁判事に対する中傷は、ほんんどの保守派に怒りの感情を燃え上がらせる結果となりました。「カラバン問題」に関しても、リベラル層がこの危険を煽るトランプ大統領を、あらゆる手段で批判・攻撃するリベラル層にやはり怒りの感情に火をつけました。

この怒りの感情はかなり大きなものです。何かができていない、できないことに関して、それを妨げるものに、多数の人々が怒りの感情を燃え上がらせることができれば、それも単純ではなく、ある程度管理できるようなやり方で燃え上がらせることができれば、できていない、できないことを出来るにすることはさほど難しくないと思います。

そうして、これは何も悪いことで否定されるべきことではありません。世の中には、これによって成功した事例はいくらでもあります。ビジネスマンの経験が長い、トランプ大統領はこのようなやり方に長けているのでしょう。

だから、今回の中間選挙は「トランプ大統領」に有利と見たのですが、その後も有利とみれる事柄がいくつかでてきましたので、ここで紹介させていただきます。

まずは、世論調査に現れない「隠れトランプ」が増えていることがあげられます。有力な世論調査会社「ラスムッセン」は2日「また静かな赤い波が押し寄せるのか?」との分析記事を配信しました。

同社では全米1000人の有権者を対象に「中間選挙で誰に投票するか他人に知られても構いませんか?」と質問した結果、民主党支持者の60%は「構わない」と言ったのに対して共和党支持者でそう答えたのは49%に過ぎなかったのです。

最近、米国の都市の一部ではトランプ大統領のスローガンの「アメリカを再び偉大に」と書いた赤いキャップをかぶっていると袋叩きにあったり、レストランで共和党を支持するようなことを喋ると他の客の嫌がらせを受けて店をおいだされるようなこともあるので「トランプ共和党を支持する」と公言するのをためらう空気があるようです。

昨年トランプ大統領が登場するまで、米国ではリベラルが圧倒的に幅をきかせていました。教育機関、学会、役所、組合、民間企業、芸能界、メディアのほとんどすべてが、リベラルが幅を効かせ、リベラルの価値観が正しいとされ、保守層などこの世に存在かのような扱いでした。

この傾向は、トランプ大統領が登場したからといって、すぐに是正されるわけもなく、現在でも、リベラルは幅を効かせているようにみえます。しかし現実は違います。少なくとも米国の人口の半分は、保守層が存在しなければ、トランプ大統領が登場することはおこりえないはずです。

しかし、現実には、保守派は社会のあらゆる機関や、側面で保守派であることをもろに宣言することはなかなか難しいです。だからこそ、保守派であることや、トランプ支持者、共和党支持者は、「トランプ支持者」であることをなかなか公言しないのです。

その逆はよく目にすることがあります、たとえば、有名な芸能人などが、テレビなどで、自分は若い頃熱心な共和党支持者だったことを告白し、今は民主党支持者のリベラルであることを誇らしく語るという番組が結構あります。

この差が世論調査に反映されると、共和党支持の声は民主党のそれよりも低く出るということになって選挙予測を誤らせることになりかねないです。

実は同社は二年前大統領選挙の際にも同様の調査を行なっており、「誰に投票するか知られたくない」とした者が共和党支持者の間で民主党支持者よりも6%多く、この「隠れトランプ支持者」を読み切れなかったことが大方の予想を誤らせた原因とされました。

しかし今回は、その差が11%と二年前よりさらに広がっています。つまり今回の中間選挙では「隠れトランプ支持者」が増えているということなら「また赤い(共和党色)の波が押し寄せるのかもしれない」とラスムッセンは分析しているのです。

その中間選挙ですが、「大統領政党が負ける」というジンクスに加えて、民主党が潤沢な選挙資金を武器に初戦は大きくリードし「青い(民主党色)の波が押し寄せてきた」とも言われました。しかしその後カバノー最高裁判事の任命を巡って民主党が露骨な妨害をしたことで批判され、その一方で景気は上向き続けて共和党が盛り返しています。

メキシコ国境を超えたカラバン

上でもあげたように、特に最近は中米から数千人の移民キャラバンが米国国境を目指していることが米国民の危機感をあおり、移民に寛容な民主党にとって不利な材料になっています。

ブログ冒頭の記事にもある通り、各社の世論調査をもとに選挙予測を行う「リアル・クリア・ポリティックス」の最新の分析では、上院では共和党がすでに過半数の50議席を確保しており、下院では民主党203、共和党196で未定36と接戦になっています。

しかしこれには「隠れトランプ共和党支持者」は考慮されていません。とすれば、共和党は下院でも世論調査に現れている以上の得票を得て、民主党に過半数の218議席を与えないと考えるのが、妥当ではないかと思います。

故に、「トランプ共和党は過半数を維持する」といえると思います。そうして、この勝利は、トランプ大統領の再戦を有利にすることは確実です。


2018年10月6日土曜日

「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国―【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!

「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国

米日豪印の4本柱に英仏を加えた4+2体制の構築が不可欠に



米海軍誘導ミサイル駆逐艦ディケーター 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念
 米海軍作戦部長のジョン・M・リチャードソン大将は、今年(2018年)9月はじめ、ワシントンで開催されたディフェンス・ニューズ(Defense News)主催の会議において「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念を提唱した。

 そして「本格戦闘に至る前の段階」(Areas Short of Open Warfare)での対処がいかに重要であるかを述べた。

 「Gray War(灰色戦争)」は、わが国でも大きな課題となっている「グレーゾーン事態」あるいは「グレーゾーンの戦い」に相当する概念と解釈される。

 それを主として軍事の対象領域である戦争(War)と捉え、しかも、日本で言えば海上幕僚長に相当する米海軍現役最高位の軍人が公言にしたところに重大な意味がある。

 会議の講演の中でリチャードソン作戦部長は、南シナ海はもちろん中東領域での中国およびロシアとの対立は「本格戦闘に至る前の段階における灰色戦争」であると述べた。

 そして、米海軍は、「灰色戦争」に勝利する能力を備えなければならないと強調した。

 繰り返すと、米国は、現在の中国との対立を「本格戦闘に至る前の段階」にあると認識し、その渦中にある「灰色戦争」に勝利すると明言しているのである。

 それを象徴するかのように、最近になって米軍は、西太平洋以西、特に東シナ海と南シナ海における軍事的プレゼンスを強化している。

 米国防総省は9月26日、核兵器搭載可能な米空軍の「B52」戦略爆撃機が、尖閣諸島をめぐり日中が対立する東シナ海や中国の軍事拠点化が進む南シナ海の上空を飛行したことを明らかにした。

 その際B52は、航空自衛隊の戦闘機の先導で尖閣諸島付近や、中国が東シナ海に設定した防空識別圏内を飛行したと報道されている。

B52戦略爆撃機

 9月30日には、米海軍のイージス駆逐艦「ディケーター」が、「航行の自由作戦」の一環として南沙諸島のガベン礁などの領海(12海里)内を航行したようだ。

 また、インド洋に長期派遣中であった海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)「かが」は、南シナ海において英海軍のフリゲート艦「アーガイル」と共同訓練を実施した。

 このように、日米を中心に英仏などが米国の「灰色戦争」に共同連携する動きを強め、中国の海洋進出と覇権拡大への対抗姿勢を鮮明にしつつある。

「国家安全保障戦略」に基づく既定路線
 このような米軍の動きは、昨年(2017年)12月にドナルド・トランプ米大統領が公表した米国の「国家安全保障戦略」(NSS2017)の方針に沿った「既定路線」と見ることができる。

 NSS2017は、中国(とロシア)を力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難し、米国に挑戦し、安全や繁栄を脅かそうとしている「ライバル強国」であると位置づけた。

 そして、中国はインド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの範囲を拡大し、地域の秩序を好きなように再編成しようとしていると指摘している。

 そのうえで、「我々は新たな対立の時代に入っている」と述べ、米国は中国(とロシア)に対抗して世界各地の係争地域において、米軍の増強や近代化そして同盟国との連携などによってこうした脅威に立ち向かい、「このゲームで米国は勝利する」と宣言している。

 また、NSS2017は、「強い経済は、米国民を守り、米国の生活様式を支え、米国の影響力を維持する」として米国経済を活性化し、米国の国力と優位を回復する必要性を強調している。

 特に中国を睨んで、巨額で慢性的な貿易赤字は許容しないとし、自由で公正、互恵的な経済関係を追求するとしている。

 また、研究、技術および革新の分野で先頭に立たなければならないとして、米国は知的財産を盗用し自由な社会の技術を不当に利用する者から、自国の安全保障の基盤技術を守ることなど、いわゆる経済安全保障の見地から、中国との貿易戦争を予見させる内容になっている。
 今年7月初め、米国が340億ドル分の中国産品輸入に対する25%の関税引き上げを実施したことに始まった米中貿易戦争は、関税措置での制裁と報復の応酬が激しく繰り返される中、出口戦略を見出せない状況が続いている。

 しかし、この問題は、中国が「将来的には地球規模での優位を確立し、米国に取って代わろうとしている」との米国の対中認識が示すように、国際社会の首座を巡る米中の覇権争い、すなわち地球規模での地政戦略的支配権争いが基底をなしている。 米中相互に遠大な戦略の一部であるがゆえに、その解決が容易でないことだけは、はっきりしている。
そして、貿易戦争は、通商的・経済的対立にとどまらず、政治、軍事、情報、サイバー戦など広範な分野へと拡大する危険性を孕んで推移し、「長く、厳しい対立の時代」に入る始まりにすぎないといっても過言ではないのである。

米中は貿易戦争から全方面対決へ

 経済分野においては、対中融和派とされるウィルバー・ロス商務長官やスティーブ・ムニューシン財務長官に代わって強硬派のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表やピーター・ナバロ米国家通商会議(NTC)委員長、ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長が貿易問題で実権を握り、タカ派色が強まっていると伝えられている。

 また、外交・安全保障分野では、国際協調派のジェームズ・マティス国防長官は健在であるようだが、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やマイク・ポンペオ国務長官など、いわゆるタカ派と呼ばれる側近がトランプ大統領に大きな影響力を持つようになり、米政権の顔ぶれは対中強硬派で固まったようだ。

 2018年9月28日付ロイターの『アングル:トランプ政権、中国向け「圧力戦略」が新局面入りか』という記事は、政府高官の話として下記のように伝えている。

 長年の対中強硬派として知られるボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が中心となって、貿易摩擦の枠を超え、サイバー活動や台湾、南シナ海の領有権問題なども含めて、中国に対して強い姿勢を取るようトランプ大統領を説得した。

 新たな戦術はまだ策定中だが、中国への圧力強化により、今後数週間で米国側からのさらなる強硬発言や、新たな政策措置が出てくるだろう。

 その見通しの背景としては、米中関係が緊迫化する中で、トランプ大統領が、先の国連安保理会合で、中国が11月の米中間選挙で共和党が不利になるよう介入し、通商問題におけるトランプ氏の強硬姿勢に一矢報いようとしていると非難したことに現れていると指摘している。

 対中関税措置のほかにも、米国は中国に対し、ロシアから戦闘機やミサイルシステムを購入して米制裁に違反したとして、中国人民解放軍の兵器管理部門を制裁対象に指定した。

 また、バラク・オバマ政権下で延期されていた台湾への3億3000万ドル(約375億円)相当のF16戦闘機の部品などの売却も承認した。

 さらに、中国によるネット上の盗難行為やスパイ行為に対しても、より厳しい行動を取ることを米国政府は検討している。

 前述のとおり、米国の中国向け「圧力戦略」は、NSS2017の対中脅威認識を背景に一貫した展開を見せている。

 そして、「中国は、われわれの政策を撤回させるためにあらゆる手段を講じている」「中国は、政治的、経済的、通商的、軍事的な手段やメディアを使い、中国共産党の利益を得ようとしている」とし、中国は、ロシアがクリミア半島併合で仕掛けた「ハイブリッド戦」と同じ「Gray War(灰色戦争)」を、米国に仕かけていると見ているのである。

 以上の文脈からすると、トランプ政権は、長期的・戦略視点に立って、たとえ中国から激しい反応を引き起こす恐れがあっても、より幅広く押し返そうとする全方面対決を決意していると言えるのではないだろうか。

日米豪印の「4本柱」による安全保障協力体制

 安倍晋三首相が、米ニューヨークで開かれた、先の国連総会での一般討論演説で、「北東アジアの戦後(冷戦)構造を取り除く」(カッコは筆者)と述べたことは、極めて重要である。

 北東アジアでは、終戦から73年経った今日でも戦後は終わっておらず、また、戦後とほぼ同時に始まった冷戦も完全には終わっていない。

 中国、ロシア、北朝鮮をめぐる外交・安全保障の問題がそれである。

 なかでも中国は、国力の増大に伴ってグローバルなパワーバランスに大きな変化をもたらし、軍事的動向にも顕著な影響を及ぼしている。

 それを念頭に、安倍晋三首相は、改めて国連の場で「自由で開かれたインド太平洋戦略を進める」と述べた。

 「私が『自由で開かれたインド太平洋戦略』を言いますのは、まさしくこれらの国々(ASEAN諸国や太平洋島しょ国等)、また米国や豪州、インドなど、思いを共有するすべての国、人々とともに、開かれた、海の恵みを守りたいからです」(カッコは筆者)と訴えた。

国連で演説する安倍総理

 この戦略を実効性ある現実的なものに高めるには、日本は、まず自主防衛力を強化することが先決だ。

 そのうえで、日米豪印の「4本柱」を中心として、基本的価値や戦略的目標・利害を共有する努めて多くの国・地域を有機的に連結した多国間主義による安全保障ネットワークを構築することである。

 この際、日米豪印による「4本柱」を、インド太平洋地域に強い戦略的利害関係をもつ英仏の「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化されるのは請け合いである。

 そして、日米豪印と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制に、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出と世界的覇権拡大の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができるのである。

【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の以下の結論部分は、このブログで私も主張してきたものです。
日米豪印による「4本柱」を、インド太平洋地域に強い戦略的利害関係をもつ英仏の「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化されるのは請け合いである。

そして、日米豪印と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制に、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出と世界的覇権拡大の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができる。
そうして、安倍総理はまさにこの体制を築くために総理に就任直後から全方位外交に傾注してきました。この体制は完成に近づきつつあります。

さて、この体制にも大きな影響を及ぼす米中の経済冷戦はどのようになるのでしようか。

これについては、85年ほど前に起きた銀をめぐる米中間の対立に、昨今の米中貿易摩擦といくつかの類似点があり、米中関係もしくは国際関係の今後を占うためのヒントが含まれています。

各国の金本位制採用とそれに伴う銀売却、1929年に始まった世界恐慌によるデフレーション、銀鉱脈の発見による銀生産の増大などにより銀の価格は低下し、世界恐慌前には1オンス65セント程度あった銀価格は25セント程度にまで落ち込みました。

これに危機を感じた米国の銀業界は積極的なロビーイングを行いました。このころ米国内の銀生産は西部山岳の7州(アリゾナ・カルフォルニア・コロラド・アイダホ・モンタナ・ネバダ・ユタ)に偏り、米上院では人口の多寡にかかわらず各州2名の上院議員がいるので、7州14名の上院議員は「シルバー・メン」と呼ばれて一大勢力を形成していました。

シルバー・メンは、①各国に働きかけて銀需要の喚起と供給の制限を図る、②銀価格を引き上げて、銀を通貨として使用している中国等の購買力を引き上げ(つまり、ドル安元高に誘導する)、米国の輸出を増やす、③銀を通貨発行準備の一部とすることで貨幣供給量を拡大する、などの主張を行いました。

シルバー・メンの声を聞かざるをえないフランクリン・ルーズベルト大統領は銀買い上げ法の施行(1934年)等いくつかの銀価格引き上げ政策を採用し、その結果銀価格は高騰し1オンス70セントをも超えるに至りました。

米国の保守派からは、ソ連と対峙していた日本に戦争を仕掛け、
ソ連と手を組んだ大悪人とみられているフランクリン・ルーズベルト

つまりは、国際経済関係のなかで苦境に陥っている国内産業の声を聞き、自国を最優先して他国を犠牲にする典型的なアメリカ・ファースト政策です。

当時の中国の状況をみると、銀本位制度を採用する中国は、世界恐慌のときには銀価格下落のおかげで自国通貨である元が銀価格に並行して下落し、元安が世界恐慌という大火事に対する防火壁となり、中国は延焼を免れました。

ところが米国の銀価格引き上げ政策が始まると状況が一変しました。銀を米国にもっていけば高値で買い取ってもらえるのですから大量の銀が中国から米国へ流出。中国国内の銀流通総量の3分の1にもなる銀が国外に出ました。中国の貨幣供給量は一気に収縮し、中国経済は深刻なデフレーションに陥って株価は暴落、小銀行や工場、商店が相次いで閉鎖に追い込まれました。銀恐慌に陥ったのです。

中国はどう対処したかといえば、中華民国政府は応急的、一時しのぎ的な対処ではなく、大胆で根源的な策を採りました。1935年11月、約500年続いた銀本位制度を捨て去る幣制改革を断行したのです。これにより、もはや米国の政策により中国経済が翻弄されることがなくなりました。

中華民国十二年発行 竜鳳壱圓(ONE DOLLAR)銀貨
直径:39.39㎜ 重量:26.8g 現在の買取価格 ~65,000円

一連の出来事を通じて、各国の経済にどのような影響があったのでしょうか。主には次の点を挙げることができます。

まず米国については、銀業界は結局損をしました。中国を銀本位制からの離脱に追い込んだがために、もはや地球上に銀を通貨として使う者はほとんどいなくなったのです。銀に対する需要は大いに減退し、銀価格は数カ月のうちに1オンス当たり20セント程度も下落しました。

日本については、一時的ながらも漁夫の利を得ました。

中国は幣制改革を断行する直前、銀の輸出に対して高率の税を課すことで銀流出を食い止めようとしました。ところがその結果、銀の内外価格は数十%も乖離するようになり銀の密輸が激増しました。中国の銀は北方の山海関を越えて満州国に密輸出され、日本はそれを高値で売却して大きな利益を得たのです。

中国については、経済が大いに復活しました。1元40セントを超えていた為替レートは1元30セントを下回るまで下落し、貿易量が増え、生産活動は上昇し、物価は緩やかに上昇しました。恐慌状態にあった中国経済は米国の銀政策を契機とする幣制改革により一気に回復しました。

そして世界経済には、巡り巡って構造変化がもたらされました。中国の銀本位制度からの離脱により銀は大航海時代から続いた国際通貨としての地位を失いました。一方で、米ドルは基軸通貨としての地位を高めました。

中国は幣制改革を実行するにあたり、銀に代わる対外支払準備をある程度確保しておく必要がありました。幣制改革実行直後に中国は米国に5000万オンスの銀を売りドルを獲得して、それを対外支払準備としました。それまで中国経済はイギリス、もしくはポンドの強い影響下にあったのですが、これにより米国、もしくはドルの影響下に軸足が移ったのです。両大戦間期は基軸通貨としての地位がポンドからドルへと移行した時期ですが、米国の銀政策がポンドからドルへの交替を後押しすることとなりました。

ドル紙幣でできたビキニを着用する女性たち ロンドンにて

この85年前の歴史経緯をトランプ政権と中国とのあいだの貿易摩擦に当てはめつつ考えてみるとどうなるでしょうか。

銀をめぐる米中間の対立においてはポンドからドルへと基軸通貨の重心が移動し、米国は覇権国の地位を引き寄せましたが、それから約85年を経た今回の米中対立でも再度米国の地位を大幅に引き上げることが予想できます。

ここ20年くらいは、米国は中国によって、知的財産権を無視され、富を一方的に略奪されていたようなものです。今回の経済冷戦の行き着く先は、この略奪がなくなるということですから、途中経過はどうあれ、最終的には米国が唯一の超大国に返り咲くことになるでしょう。

まずは、今回の貿易戦争は、米国が知的財産権を全く守る気がないどころか、積極的に侵害しようとする中国に守らせることを主目的としているということであり、貿易戦争はその手段にすぎないということです。ここが、85年前の米国とは全く異なります。大義は米国のほうにあります。

そのため、この戦争は長く続きます。中国が音を上げ、知的財産権を守るように体制を変えることになるか、中国が体制を変えなければ、中国が経済的にも軍事的にも他国に影響が与えられないほどに弱体化するまで続けられるでしょう。

ただし、中国が知的財産権を守るように体制を変えるといっても、それはかなり困難です。現在の中国は、民主化、経済と政治の分離、法治国家がなされていません。知的財産権を守る体制にするためには、これらを先進国並みに変えなければできないです。

民主化、経済と政治の分離、法治国家化を推進するためには、驚天動地の構造改革をしなければなりません。これを実行すれば、現在の中国共産党は統治の正当性を失って、崩壊した後他の政治勢力がとって変わることになるかもしれません。

それをおそれて、この驚天動地の構造改革を実施しなければ、中国の待つ未来は、図体が大きいだけの、他国に対して影響力が全くない内にこもったアジアの凡庸な独裁国家となることでしょう。ただし、この場合も、中共は弱体化し、多くの人民が不満を持ち、内乱等が勃発して中共は崩壊することになるでしょう。

このまま、米国が経済冷戦と、ブログ冒頭の記事のように、米日豪印の4本柱に英仏を加えた4+2体制を構築さらにASEAN諸国も巻き込み、中国に軍事的に対峙して、中国の封じ込めに成功した場合、いずれにしても中共は崩壊することになるでしょぅ。

これは、当時からすれば、抜本的な構造改革である銀本位制を放棄した当時の中国(中華人民共和国)が、経済的には安定し、日本との戦いには米国などの支援があったため、なんとか勝つことができましたが、統治の正当性を主張することが出来ず、結局共産勢力に負けて、台湾に逃亡したことと類似しています。

結局現在の中共が、米国の経済冷戦と、灰色冷戦に負けて、抜本的な構造改革を断交した場合、現在の中国も過去の中国のように、経済が安定し発展するかもしれませんが、やはり統治の正当性を失い、中国共産党幹部は海外に逃亡することでしょう。彼ら幹部は、すでにドルなどで天文学的な額の蓄財をして海外に大部分を送金し、家族なども移住させ、中共が崩壊したときに自分たちも後から移住できるように準備を整えています。

中共が崩壊した中国では、中国は分裂することでしょう。そうして、おそらくいくつかの民主化、政治と経済の分離、法治国家化の進展度合いが異なる国々が成立することでしょう。これらのうち進展度合いが高い国が、米国と接近して、いずれ経済的に大成功を収めることができるかもしれません。

その後には、米国は中国による富の簒奪を免れ、しばらくの間は超大国は米国一国という時代、すなわち現在と同じような体制から中共が抜け落ちた体制が続くことになるでしょう。

ただし、これは経済冷戦や灰色冷戦が中途半端で終わらない場合です。オバマ政権のように、中途半端で終わらせれば、中共がしぶとく中国に生き残るだけとなります。やはり、この戦争は中国が抜本的に変わるまで続けなければならないのです。

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2016年6月16日木曜日

日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!

日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定



日銀は、16日まで開いた金融政策決定会合で、国内の景気は基調としては緩やかな回復を続けているとしてマイナス金利政策を含めた今の大規模な金融緩和策を維持することを決めました。

日銀は16日までの2日間、金融政策決定会合を開き、国内外の景気や物価の現状と先行きについて議論しました。

その結果、消費は「一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移している」としました。

企業の生産は「地震による影響もあって横ばい圏内の動きを続けている」とし、住宅投資は「再び持ち直している」としました。

これらを踏まえて日銀は、国内の景気について「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」という判断を示しました。

そのうえで、目標とする2%の物価上昇率の達成に向け、マイナス金利政策を含めた今の大規模な金融緩和策を維持することを賛成多数で決めました。

金融市場では、今月23日にイギリスで行われる国民投票に向けて、EU=ヨーロッパ連合からの離脱派が勢いを増しているとの見方から円高や株安が進むなど不安定な値動きが続いています。

しかし、今回の決定で日銀としては、マイナス金利政策が経済に及ぼす効果や、イギリスの国民投票の結果を見極めたいと判断したものとみられます。

【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!

結論からいうと、日銀は追加金融緩和を行うべきでした。以前このブログにも掲載したように、いくら金融緩和しても下げられない失業率を「構造的失業率」といい、実際の失業率が構造的失業率まで下がらないと、物価や実質賃金は本格的に上昇せず、インフレ目標の達成もおぼつかないことになります。

構造的失業率などについて以下に簡単に解説しておきます。

総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。 
  • 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業 
  • 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業 
  • 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。

過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。

過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。

このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。

であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。

しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。

日銀黒田総裁
2014年10月の日銀の追加緩和は、安倍晋三政権による消費税率10%への再増税を後押しするためだったといわれており、このときの黒田相殺は、中央銀行総裁というよりは、元財務省出身者の立場が良く現れていたと思います。

しかしながら、マイナス金利の導入は、中央銀行総裁としての面目躍如というところで、見事に中央銀行総裁の立場を示したものといえました。

しかし、安倍政権は再び再増税を延期し、今回もまた増税を見送ったというか、以前のこのブロクにも述べたように、これはほんど凍結に近いものです。財務省の落胆はかなり、大きかったでしょう。この心情を理解した黒田総裁は、今回も金融緩和する気になれなかったのでしょう。まさに、今回は、中銀行総裁というよりは、旧財務省出身者の立場が貫かれているようです。

しかし、本来は金融緩和を行うべきでした。そうして今回行うべきは、「マイナス金利」の拡大ではなく、量的緩和による国債買い入れ額の拡大とすべきでした。

現在政府の景気対策として、財投債(国債の一種)発行によるインフラ整備が20兆円規模で検討されており、補正予算が秋の臨時国会で決定される予定です。その後で、量的緩和の拡大を日銀が行うと、「ヘリコプターマネー」との批判を受けたかもしれません。


しかし、インフレ率が低い現状では、全く取るに足らない批判ですが、日銀としては無駄な説明をしたくないという認識あったのかもしれません。であれば、政府が国債を発行する前に量的緩和しておけば、日銀にとっては良い選択だったと思います。

しかし、今回も量的緩和をしなかったということで、補正予算が決まった後で、量的緩和ということになると、「ヘリコプターマネー」との批判をかなり受けやすくなるといことで、緩和をしにくい状況になると思います。

それにしても、このままでは、いずれ金融緩和の効果も薄れてくるのは必定です。結局、消費税にこだわる財務省とその片棒をかづく政治家やマスコミによって日本はせっかくのデフレ脱却のチャンスを逃すことにもなりかねません。

どこかで、日銀黒田総裁は、初心を思いおこし、中央銀行総裁としての矜持を貫いていただきたいものです。

街頭演説をする安倍総理
それにしても、今回の参議院選挙は追加金融緩和の見送りでかなり厳しくなりました。今回は、ある程度国民からお灸を据えられそうな雲行きです。野党も株安や円高を責めてくることになるでしょう。野党は、「アベノミクス失敗」の連呼でずいぶんと戦いやすくなったかもしれません。

とはいっても、現在金融緩和をするしないで、すぐに7月の参院選の頃にその影響が現れるということではありません。株価や、為替は別にして、実体経済に対する金融緩和の効き目にはタイムラグがあります。1〜2年程度を経てからはじめてその効果がでてきます。

それに野党は、金融政策と雇用や経済が密接に結びついていることなど全く理解していません。だから、彼らの主張する「アベノミクス失敗」は全く頓珍漢で単なる個人攻撃に過ぎないものです。彼らの批判は一部の人にしか受け入れられません。そもそも、現状の雇用状況のかなりの改善があるのですから、「アベノミクス失敗」と連呼してもそれは一部の人にしか影響を与えません。

だからすぐにどうこうのということはないです。しかし、長期的にみれば必ずその影響は現れてきます。近いうちに追加金融緩和をしないと、あいかわらず実質賃金が上昇しないという事態に見舞われることになります。それに、せっかくかなり改善した雇用環境が悪化するかもしれません。

これまで、安倍総理を一番支えてきたのが、他ならぬ金融緩和であることを理解しないと安倍総理は退陣せざをえなくなるかもしれません。そうなれば、一番財務省が喜ぶことになります。

そうして、日本経済はまたデフレスパイラルのどん底に沈み込むことになります。

そんなことは、断じて避けなければなりません。日銀は、「ヘリコプターマネー」と批判されたとしても、近いうちに必ず追加金融緩和を行うべきです。

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2015年3月26日木曜日

世界で最も安全な主要都市ベスト10―【私の論評】来るべき東京オリンピック開催時にも世界で一番安全な都市であるように、この平和を維持するため備えに万全を期することこそ、私達日本が進むべき道(゚д゚)!

世界で最も安全な主要都市ベスト10

東京の街角


移住先を探しているにしても、旅行先や現在住んでいる町が安全かどうかを調べるにしても、都市の安全性を包括的に把握をしておくのは大切なことです。この記事では、世界で最も安全な10の主要都市を紹介します。

それぞれの都市がどの程度安全かを判定するために、Economist Intelligence Unit(EIU)は、作成した調査報告書『Safe Cities Index 2015』の中で44項目の指標をもとに、都市の安全性の基準を次の4種類に分類しました。

・デジタル・セキュリティー:アカウントの乗っ取り、オンライン・プライバシー
・ヘルス・セキュリティー:環境、大気と水の質
・インフラ安全性:ビル、道路、橋
・個人の生活上の安全性:犯罪、暴力

EIU は、研究者や専門家の意見も取り入れて、世界保健機関(WHO)などから得られた情報や、聞き取り調査に基づいたデータを分析しました。ただし、これらの調査では世界最大規模の都市の一部について取り上げるに留めていますので、リストにない都市もあることをご了承ください。それでもなお、これらの都市の比較を見ることは興味深いものです。それでは調査ごとに見ていきましょう。


この報告書は、安全性を測る指標それぞれが該当する地域の特性に合っているかどうかや、データの有効性などの要素に基づき、Economist Intelligence Unit(EIU)によって選ばれた50都市に焦点を当てています。したがって、記載されているリストが世界で最も安全な都市を完全に網羅しているとは言えません。

彼らの研究による最も安全な都市ベスト10は以下の都市です。

10位.ニューヨーク(アメリカ)

ニューヨーク
アメリカの都市としては唯一ランクイン。かつてはアメリカでも有数の犯罪都市でしたが、1994年に当選したジュリアーニ市長が治安対策に乗り出したことにより犯罪率が激減しました。

9位.メルボルン(オーストラリア)

メルボルン
オーストラリア第2の都市であるメルボルンは、イギリス統治時代の面影を残しす歴史ある街。エコノミスト誌の「最も暮らしやすい都市ランキング」では1位に選ばれるほど、住みやすい都市として知られています。

8位.トロント(カナダ)

トロント
「人が集まる場所」を意味するトロントは、その名の通り多くの移民を受け入れながら同国の経済の中心として栄えてきました。気候は温暖で犯罪率が低く、生活水準が高い事から選出されました。

7位.チューリッヒ(スイス)

チューリッヒ
スイス最大の都市であるチューリッヒは法人税率が低く、世界中から金融機関や銀行が集まったことから、ヨーロッパでも「最も裕福な町」として知られています。

6位.シドニー(オーストラリア)

シドニー
オーストラリア最大の都市であるシドニーが6位に選出されています。経済の中心地でありながら芸術やスポーツイベントにも注力しており、観光地として高い人気があります。

5位.アムステルダム(オランダ)

アムステルダム
ゴッホやレンプラントなど世界的なアーティストを輩出したオランダの中心都市だけあって、美術館や博物館の多さで知られています。また運河を中心とした風光明媚な街並みも観光客を魅了しています。

4位.ストックホルム(スウェーデン)

ストックホルム
ストックホルムは市の30%を運河占めており、水面に浮かぶような光景から「水の都」「北欧のヴェネチア」とも呼ばれています。空気がきれいな都市としては1位のスコアを獲得しています。

3位.大阪(日本)

大阪
3位にはストックホルムやシドニーを抑え、大阪がランキング3位に輝きました。国内では犯罪率の高い都市ではありますが、世界的にみれば十分安全な都市と評価されています。

2位.シンガポール(シンガポール)

シンガポール
税金の低さから世界のIT企業を魅了し、発展し続けているシンガポールが2位にランクイン。個人の安全性ではトップのスコアを獲得しています。

1位.東京(日本)

安全な都市-東京
そして総合1位は東京が選ばれました。「空気汚染の低さ」「水道クオリティの高さ」「デジタルセキュリティの高さ」が特に評価されています。これまでにも日本は安全な都市として世界に知られてきましたが、大阪と東京がTOP10にランクインしたことはとても名誉なことではないでしょうか。一方、レポートでは「健康セキュリティスコア」が低い点も指摘しており、今後の課題と言えそうです。
報告の全文では、研究の成果をさらに細かく分類しています。たとえば、デジタル・セキュリティーにおいて最も安全だと言える都市や、北アメリカで最も安全な都市などを挙げています。

リストにあるいずれかの都市を見て驚きを感じたとしても、それによって彼らが市民の安全性をどのように理解しているのかを窺うことができるでしょう。さらに詳細な報告内容はリンク先をご覧ください。

【私の論評】来るべき東京オリンピック開催時にも世界で一番安全な都市であるように、この平和を維持するため備えに万全を期することこそ、私達日本が進むべき道(゚д゚)!

上の記事では、安全な都市をあげていましたので、その逆に危険な都市はどこなのか気になったので、危険な都市を調べてみました。


以下にはあらゆるトップ10を紹介する米サイトより、「Top 10 Most Dangerous Cities in the world(世界で一番治安の悪い都市ランキング)」の最新2014年度版を紹介します。

都市の治安の判断基準は、犯罪のレベルを考慮して書かれたものです。犯罪率に加え、犯罪や暴力事件の歴史、1つの都市における犯罪の密度なども考慮しています。

10. カラカス (ベネズエラ)

最も危険な国はどこ?世界で一番治安が悪い都市ランキング2014年度版
カラカスは、ベネズエラ共和国の首都であり、南米有数の世界都市。 人口当たりの殺人事件発生率は東京の100倍を超える。2008年は10万人当たりの殺人事件発生率が130人となり世界最悪、2012年でも10万人当たり119人と世界3位の数字を記録している。カラカスはギャングによる暴力事件が多く、ギャングがらみの窃盗や誘拐、殺人、レイプなどが一般的な犯罪である。

9. シウダー・フアレス (メキシコ)

最も危険な国はどこ?世界で一番治安が悪い都市ランキング2014年度版
シウダー・フアレスはメキシコの都市。近年、工業化が著しく、世界中で最も発展が早い国の1つとして知られているが、同時に急速に治安が悪化しており「戦争地帯を除くと世界で最も危険な都市」とも恐れられていた。2012年には「世界で2番目に危険な場所」になっている。シウダー・フアレスは特に麻薬がらみの犯罪が多く、ギャングやドラッグディーラーの主要コントロールの場とも言われている。

8. ディストリト・セントラル (ホンジュラス)

最も危険な国はどこ?世界で一番治安が悪い都市ランキング2014年度版
ここ数年で急速に治安が悪くなっている都市、ディストリト・セントラル。治安悪化の原因は失業者の増加や職のなさにあるとされている。街はドラッグマフィアやギャングによって抑圧され、殺人や窃盗、密輸などが一般的になりつつある。警察は現状をコントロールできるほどの力がないようだ。

7. ケープタウン (南アフリカ共和国)

最も危険な国はどこ?世界で一番治安が悪い都市ランキング2014年度版
アパルトヘイトの撤廃後、ケープタウンに大量に国内や周辺諸国から住民が流入したが、彼らの多くは失業者となり、治安が急速に悪化した。この国の治安の悪さは貧困と社会的格差に原因がある。

かつては南アフリカにある美しい町として多くの観光客が訪れていたが、ここ数年は犯罪とギャングの対立戦争の中心地となりつつある。ヨハネスブルグほどの治安悪化は見られず、昼間なら徒歩での外出も可能ではあるものの、犯罪は激増している。日本国の外務省からは、市の中心部(シティ・ボウルおよび北西部)ならびに市東部のケープ・フラッツ地区には注意喚起が発出されている。旅行などで訪れる際には十分に注意の必要な都市である。

6. リオデジャネイロ (ブラジル)

最も危険な国はどこ?世界で一番治安が悪い都市ランキング2014年度版


リオの犯罪率は高く、とくにファヴェーラなどで麻薬組織や麻薬販売人による犯罪や殺人が多い。2006年には2273人が殺され、10万人あたりの殺人率は37.7だった。2008年より、リオデジャネイロ州は治安回復計画(UPP)を実施し、悪化していた治安を向上させることに努め、2009年から2010年の殺人率は21%減少し、治安は改善傾向にある。しかし近年ではさらに、これに反発した麻薬組織と警察の対立が激化しており、治安はまた悪化傾向になるという悪循環を繰り返している。

5. アカプルコ (メキシコ)

最も危険な国はどこ?世界で一番治安が悪い都市ランキング2014年度版


アカプルコは、メキシコ合衆国の太平洋岸のゲレーロ州にあるリゾート都市だ。2013年度のランキングでも5位にランクインしている。

アカプルコに限った話ではないが、メキシコ国内では2000年代に入ると麻薬がらみの犯罪や抗争が爆発的に増え、アカプルコにも余波が押し寄せている。2011年1月8日には、ショッピングセンター脇の路上で頭部を切断された15遺体が見つかる事件があり、これも麻薬がらみの犯罪と考えられている。

メキシコのシンクタンクが発表している、2012年の主要都市別の殺人事件発生率では、10万人当たり143人となり世界2位を記録している。

4. バグダード  (イラク)

最も危険な国はどこ?世界で一番治安が悪い都市ランキング2014年度版
バグダードは、イラクの首都で同国最大の都市。最近は,ここ数年に見られない程の頻度で大規模テロ等がバグダッド,中・北部を中心に連続的に発生しており,5月には600人以上がテロにより死亡したとの報道もある。報道によれば,本年1月のテロ等による犠牲者数は992人に上り,昨年の同時期に比して約4倍に増加。

そのため、イラクの一部を除く地域に「退避を勧告します。渡航は延期してください。」との危険情報が発出されている。外務省では、退避勧告が発出されている地域については,いかなる理由であれ渡航しないでくださいとしている。(外務省

3. サナア (イエメン)

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サナアは、アラビア半島南西にあるイエメンの首都である。テロ組織「アラビア半島のアル・カーイダ」(AQAP)の活動が非常に活発であり、外国人誘拐・襲撃事件等が多発している。

2012年2月末の大統領選挙でハーディ大統領が就任して以降、国民融和,治安の安定,経済の復興に向けた取り組みが進められており,治安情勢は総じて改善の方向にあるが,両陣営の根強い対立は依然として解消されておらず,多くの不安定要素も残っている。このような現状を踏まえ、外務省ではサナアのみならずイエメン全土に既に滞在されている邦人に対し,退避を勧告している。(外務省

2. アビジャン (コートジボワール)

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アビジャンは、コートジボワールの最大都市。2010年11月の大統領選挙後、政治的混乱が約4か月間にわたり続き、2011年3月には、実質的な首都機能を果たすアビジャン市において、現大統領を支持する共和国軍(FRCI)と前大統領を支持する国軍(FDS)との間で激しい戦闘が始まり、内戦状態となった。アビジャンのなかでも下層所得層が比較的多い地域や商業地域では事務所や商店の閉店後や夜間は犯罪被害に遭いやすい。夜間の路上強盗や住宅侵入強盗が発生しているため、1人で出歩かないようにして夜間の外出や戸締まりには十分注意する必要がある。

しかし、政府が最重要課題として治安維持に取り組んだ結果、治安機関が威信をかけて強盗団の逮捕や警戒強化を実施したことにより、内戦直後と比較して殺人や強盗事件等凶悪事件の発生も減少している。

1. サンペドロスーラ (ホンジュラス)


昨年に引き続き、世界で最も治安の悪い都市に選ばれたのはサンペドロスーラ。サンペドロスーラでの2011年の殺人事件件数は1143件。人口10万人あたり159人が殺されて亡くなっていおり、サンペドロスーラでの殺人事件発生率は日本の400倍であることがわかる。 

さらに2013年にはホンジュラス全土で国内最多の2,253人が殺害され、殺人の多くはサンペドロスーラ市及び周辺地域で発生したと報告されている。ホンジュラスは「麻薬の経由地」となっており、南米から北米に密輸されるコカインの約80%はホンジュラスを経由している。麻薬組織の活動が活発化し、組織間抗争や麻薬取引のトラブルによる殺人事件も多発。治安の悪化に歯止めが掛からない状況にある。

東京の新しいシンボル スカイツリー

世界で最も安全な都市とされるのが、東京というのは素晴らしいことです。そうして、大阪が3位にランクインしているということから、本当に日本は安全な国であることがうかがえます。

しかし、私達がこのように平和を享受できることをついつい忘れがちです。私達は、この平和があたかも空気のように当たり前になってしまい、世界一安全であることなど意識しません。

そうして、平和であるからこそ、日々の当たり前の普通の暮らしができるということを忘れがちです。しかし、こうして俯瞰してみると、世界には安全すら保証されていない都市が多数あることを改めて認識することができます。

昔から「安全と水はただでは手に入らない」ということが言われていますが、それに最も鈍感になってしまったのが私達かもしれません。この平和は、私達の先達が、様々な努力を工夫をしたから得られたのであって、決して自然発生的に生まれてきたものではありません。

そうして、来るべき東京オリンピック開催時にも、東京が世界で一番安全な都市であるように、この平和を維持するため備えに万全を期することこそ、私達日本が進むべき道だと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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