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2020年6月8日月曜日

【新型コロナと米中新冷戦】中国共産党「全正面同時攻撃」の“粗雑” 『超限戦』著者は「米国に絞って対決せよ」と主張 — 【私の論評】コロナで変わった世界で、米中対立は短くて2年、長くて4年で決着がつく‼︎

【新型コロナと米中新冷戦】中国共産党「全正面同時攻撃」の“粗雑” 『超限戦』著者は「米国に絞って対決せよ」と主張 
米中貿易戦争

中国全人代に出席した習近平国家主席(左)と、李克強首相=5月22日、北京の人民大会堂


     新型コロナ禍における中国共産党が採用した措置について、私は「実に『超限戦』的だ」と思ってきた。『超限戦』(角川新書)は、1999年に出版されて世界的なベストセラーになった本だ。同書は、「目的のためには手段を選ばない。制限を加えず、あらゆる手段を活用して目的を達成せよ」と主張している。

 中国共産党は現在、米国やNATO諸国、台湾、香港の反中国勢力など、多くの国・組織・個人を敵に回す「全正面同時攻撃」を展開している。

 具体的には、沖縄県・尖閣諸島周辺や、南シナ海での中国海警局の不法行動、インド国境付近での国境争い、台湾軍事統一の脅し、香港国家安全法を制定しようという動きなどだ。そして、外交における「戦狼外交」だ。

     5月末に、中国共産党の権威主義を示す2つのイベントがあった。同月28日に、香港に「国家安全法」を直接導入する方針が決定し、翌29日に「反国家分裂法」の制定15周年を記念する式典があった。

 式典に参加した人民解放軍の李作成総参謀長は「台湾との平和的な再統一の可能性がなくなった場合、必要なあらゆる手段を用いる」「われわれは武力行使を放棄すると約束しておらず、台湾海峡の状況安定と制御のために必要なあらゆる選択肢を持っている」と台湾に警告した。

     一方、『超限戦』の著者である喬良・退役空軍少将は、中国共産党とは違う主張をしている。

喬良・退役空軍少将


 例えば、喬氏は「主敵である米国に集中すべきだ」「ギャングの抗争においては、まず最も強い相手(ボス)を倒すことに集中するのが原則だ。ボスを倒してしまえば、雑魚は怖がる。まず、強敵に対処すべきで、その他の弱い相手にかまうべきではない。台湾が本当に独立の行動を起こさない限り、台湾を相手にすべきではない」「米国との力比べ(腕相撲)に集中すべきだ」「香港国家安全法は不可欠であり、香港問題はローカルな問題ではなく、米中対立の第一線だ。米国の抑圧をかわす重要な戦場だ」「中国が米国の包括的な抑圧に抵抗できれば、香港も抵抗できる。結局、香港問題は中米の競争問題なのだ」と主張している。

     つまり、喬氏の考えでは、現在、台湾よりも危険なのは香港であり、香港が米中対立の最前線になるという判断だ。

 軍事のセオリーでは、「全正面同時攻撃」は圧倒的な力がないと失敗に終わる。中国共産党が行っている「中国の意に沿わない国家・組織・個人をすべて攻撃する」やり方は粗雑だ。喬氏が主張する「米国に焦点を絞って対決せよ」は間違っていない。喬氏は手ごわい。

 ■渡部悦和(わたなべ・よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書・共著に『中国人民解放軍の全貌』(扶桑社新書)、『台湾有事と日本の安全保障』(ワニブックスPLUS新書)など。

【私の論評】コロナで変わった世界で、米中対立は短くて2年、長くて4年で決着がつく‼︎

ルトワック氏

毎日新聞2018年10月14日付に、世界一の戦略家ルトワックのインタビューに関する記事が出ていました。その内容を以下に紹介します。
米国防総省のアドバイザーなどを務め、戦略論研究で知られるエドワード・ルトワック氏が来日し、毎日新聞のインタビューに応じました。貿易や知的財産権などを巡る米中対立について「長期間に及ぶことになる。対立は中国共産党政権が崩壊するまで続くだろう」と語りました。そうして、米政界における親中派はもはや「壊滅状態」と指摘しました。(毎日新聞)
米国の「親中派」はこの時点で「壊滅状態」だったのです。驚くべきことです。米国は、ニクソンの時代から、基本的に一貫して「親中」でした。キッシンジャーは、70年代から「米中は事実上の同盟関係にある」と宣言していました。
中国が急成長をつづけることができたのは、米国(と日本)から資金と技術を好きなだけ受け取ることができたからです。レーガンもブッシュ(父)もクリントンもブッシュ(子)もオバマも、基本的には皆親中でした(オバマは、2015年3月のAIIB事件以降、反中)。ところが当時から「親中派は壊滅状態」だというのです。

当時から軍需産業や外交ロビーに加え、シリコンバレーなどのハイテク企業も対中圧力を求めるようになり、米政府の「締め付けが始まっている」と強調していました。
トランプ政権の発足直後、ハイテク産業は「自分たちのビジネスに干渉しないでくれという姿勢だった」が、中国による知的財産権の侵害事案が相次ぎ、現在は「ワシントンに来て、助けが必要だと要請するようになっている」というのです。(毎日新聞)
何と、シリコンバレーも「反中」に転じていたのです。米国は、「挙国体制」になったのです。
米中両国が核兵器保有国であることから「米中が軍事衝突する可能性はない」とも強調。ただ、その結果、かえって対立は長引き、共産党支配が終わる「レジーム・チェンジ(体制変革)」まで収束しないと予測しました。(毎日新聞)
これに関しては、このブログでは何度か掲載したことがあります。ルトワック氏は、米中共に、両国ばかりか地球を破壊できる量の核をもっています。だから大戦争(大戦闘)にはなりにくいです。主戦場は、「経済戦争」に移行しているのです。そうして、共産党支配が終わる「レジーム・チェンジ(体制変革)」まで収束しないと予測したのです。

そうして、このルトワック私の説は日本にとって 何を意味するのでしょうか。
1.安全保障面では、大きなプラス

皆さんご存知のように、中国は明確な「日本破壊戦略」をもっています。中国、ロシア、韓国で、「反日統一共同戦線」をつくる。 中ロ韓で、日本の領土要求を断念させる。 日本に断念させる領土とは、北方4島、竹島、尖閣・沖縄のことです。
 日本には、沖縄の領有権はない。 反日統一共同戦線には、米国も入れなければならない。

中国の現政権は、「日本壊滅」を願い、実際積極的に行動しているのです。ですから中共政権がなくなるのは、日本にとっては良いことです。
2.経済では悪影響のはずがコロナで状況は変わった
米国とソ連の冷戦時代、2つのシステム間には、ほとんど経済交流がありませんでした。それで、冷戦時代、日本は問題なく経済成長することができた。しかし、米中冷戦は、事情が違います。中国は、世界経済に完璧に組み込まれています。

冷戦下のソ連での軍事パレード

というわけで、米中貿易戦争の悪影響から、日本は逃れることができないでしょう。昨年は消費税増税、今年は、コロナが日本も直撃し、現在そこから、回復すべく日本は努力しています。
これによって日本では、マスク不足など過度な中国依存の弊害が明るみに出て、中国依存をやめようという動きが広がっています。この動きは日本だけではなく、全世界に広まっています。
米国など先進国は、中国をサプライチェーンから引き離そうとしています。そうなると、かつての米国とソ連の冷戦時代、に2つのシステム間には、ほとんど経済交流がなかった時代のようになるかもしれません。
そうなると、日本はまた、経済的に大発展するかもしれません。それについては、このブログでも掲載したことがあります。
3.日本の針路

日本は、習近平首席を国賓待遇で招くという話があります、安倍総理は「米国の敵国の大将」を招くのだという自覚をはっきりもっていただきたいと思います。

日中両政府が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期した中国の習近平国家主席の国賓としての来日について、年内の実施を見送ることが5日、分かっています。
習氏の来日は来年以降も無期延期状態が継続するとみられ、事実上、白紙となる公算が大きいようです。中国のコロナ対応や香港問題などへの強硬姿勢をめぐっては、米国をはじめ世界各国で批判が高まっており、政府高官は「習氏は来日できないし、来ないだろう」との見通しを明らかにしました。
米中貿易戦争で『歴史的岐路』に立つ日本としては、中国は負ける側であることをしっかり認識すべきです。日本は前回、負けるナチスドイツと同盟を組み、破滅しました。今回は、すでに「勝つ側」と「同盟関係」にあります。日本としては、しっかりと現状を維持すべきです

コロナによって、世界は随分変わりました。コロナ以前には、5年から10年かかった世界の変化が、コロナ後には1年から2年で変わるであろうことをイアンブレマー氏が語っていました。
私も、そう思います。私は、米中対立は中共が体制を変えるか、中共が体制を変えることを拒むなら、経済的に弱体化して世界に大きな影響を及ぼせなくなるまで続くだろうと見ています。そうして、コロナ前には、短くても10年、長けば20年継続するだろうと考えていました。
この長丁場の中では、『超限戦』の著者である喬良・退役空軍少将が主張するように、米国だけを相手にするとか、超限戦を挑むということも意味があったかもしれません。
しかし、金融制裁や資産凍結なども含むありとあらゆる手段で中国を潰そうとする米国に対抗するのは難しいです。しかも、コロナ禍により、他国も中国に対して硬化しています。いくら中国が米国だけを相手にしようとしても、他の国々がそれを許さないでしょう。
コロナ後の世界では、中国VS米国等の国々の対立は、短くて2年、  長くても4 年で決着がつきそうです。5年後には、中共は姿を消し、現在の中国を姿を消し、新たな国が生まれているかもしれません。その時には、チベットやウイグル、内蒙古や旧満州も別な国になっているかもしれません。

日本は、このような展望に立脚し、中国への経済ての依存を断ち切り、冷戦下の時のように、内需を拡大して、令和時代は、平成時代とは一線を画して、経済的にも黄金時代を迎え、国際的にも、米国と並んでリーダー的な地位を勝ち得るように努力すべきです。
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2020年5月9日土曜日

新型コロナ、日本人の低死亡率に新仮説…すでに“集団免疫”が確立されている!? 識者「入国制限の遅れが結果的に奏功か」―【私の論評】日本がクラスター対策で成功している背景には、他国にはない日本ならではの事情が(゚д゚)!


新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真
(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 日本の新型コロナウイルス対策は「PCR検査が少ない」「自粛措置が甘い」などの批判もあり、厚労省は8日、感染の有無を調べるPCR検査や治療に向けた相談・受診の目安を見直し、公表した。ただ、欧米諸国に比べて、日本の死者数や死亡率がケタ違いに少ないのは厳然たる事実である。この謎について、京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、吉備国際大学(岡山県)の高橋淳教授らの研究グループが「日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている」という仮説を発表して注目されている。感染力や毒性の異なる3つの型のウイルス(S型とK型、G型)の拡散時期が重症化に影響したといい、日本は入国制限が遅れたことが結果的に奏功したというのだ。

 「2週間後はニューヨークのようになる」など悲観的な予測もあった東京都、そして日本の新型コロナ感染だが、別表のように現時点ではニューヨークにもロンドンにもなっていない。中国や韓国、表にはないが台湾など東アジアが総じて欧米よりも死者数や死亡率が抑えられている。


 理由を解き明かすには、新型コロナウイルスの型を押さえておく必要がある。中国の研究チームが古い「S型」と感染力の強い「L型」に分けたことは知られている。

 研究プラットホームサイト「Cambridge Open Engage」で発表した京大の研究チームは、新型コロナウイルスに感染した場合、インフルエンザに感染しないという「ウイルス干渉」に着目。インフルエンザの流行カーブの分析で、通常では感知されない「S型」と「K型」の新型コロナウイルス感染の検出に成功した。「S型やK型は感知されないまま世界に拡大した。S型は昨年10~12月の時点で広がり、K型が日本に侵入したピークは今年1月13日の週」だという。やや遅れて中国・武漢発の「G型」と、上海で変異して欧米に広がったG型が拡散した。

 集団感染が最初に深刻化した武漢市が封鎖されたのは1月23日。その後の各国の対応が命運を分けた。イタリアは2月1日、中国との直行便を停止。米国は同2日、14日以内に中国に滞在した外国人の入国を認めない措置を実施した。

 これに対し、日本が発行済み査証(ビザ)の効力を停止し、全面的な入国制限を強化したのは3月9日だった。旧正月「春節」を含む昨年11月~今年2月末の間に184万人以上の中国人が来日したとの推計もある。

 ここで集団免疫獲得に大きな役割を果たしたのがK型だった。上久保氏はこう解説する。

 「日本では3月9日までの期間にK型が広がり、集団免疫を獲得することができた。一方、早い段階で入国制限を実施した欧米ではK型の流行を防いでしまった」

 欧米では、中国との往来が多いイタリアなどで入国制限前にS型が広まっていたところに、感染力や毒性が強いG型が入ってきたという。


 上久保氏は「S型へのTリンパ球の細胞性免疫にはウイルス感染を予防する能力がないが、K型への細胞性免疫には感染予防能力がある」とし、「S型やK型に対する抗体にはウイルスを中和し消失させる作用がなく、逆に細胞への侵入を助長する働き(ADE=抗体依存性増強)がある」と語る。

 専門的な解説だが、結論として「S型に対する抗体によるADE」と、「K型へのTリンパ球細胞性免疫による感染予防が起こらなかったこと」の組み合わせで欧米では重症化が進んだという。

 日本で4月に入って感染者数が急増したことについても説明がつくと上久保氏は語る。「3月20~22日の3連休などで油断した時期に欧米からG型が侵入し、4月上旬までの第2波を生んだと考えられる」

 現状の日本の感染者数は減少傾向だが、課題も残る。「病院内で隔離されている患者には集団免疫が成立していないため、院内感染の懸念がある。また、高齢者や妊婦などは、K型に感染しても感染予防免疫ができにくい場合がある」

 さらに「無症候性の多い新型コロナウイルス感染症では、間違ったカットオフ値(陰性と陽性を分ける境)で開発された免疫抗体キットでは正しい結果が出ない」と警鐘を鳴らす。

 上久保氏は「日本の入国制限の遅れを問題視する声もあったが、結果的には早期に制限をかけず、ワクチンと同様の働きをする弱いウイルスを入れておく期間も必要だったといえる」と総括した。

【私の論評】日本がクラスター対策で成功している背景には、他国にはない日本ならではの事情が(゚д゚)!

冒頭の記事の仮設は、非常に興味深いものです。ただし、矛盾も感じます。感染者数の少ない、死亡者数とも少ない韓国はMersのときの反省もあって、比較的早い時期に海外からの渡航を制限しました。

さらに、上の記事にはなぜか例示されていませんが、日本よりも感染者数や死者数が少ない、台湾でも早い時期に海外からの渡航を禁止していました。

ただし、韓国も台湾もかなり中国とは関係が深く、仮に日本よりも早い時期に、海外からの渡航を禁止したとしても、かなり中国などからの感染者がすでに国内に入り込んでおり、免疫を獲得していた可能性もあります。

このあたりは、今後さらに研究をすすめて、明らかにしてほしいところです。

それにしても、一つ言えることは、まずは人口100万人あたりの感染者数や死者数等をみたうえで、評価しないと、客観的に日本の感染者数や死者が多いのか、判断などできないということです。

日本国内でも、都道府県別の感染者数や、死者数をみるときでも、10万人あたりの感染者数や死者数等をみないと客観的に比較などできないのは当然のことです。

日本のマスコミ、特にワイドショーなどでは、最初から100万人あたりとか、10万人あたりの見方をせずに、単に実数だけで、多くのコメンテーターが「ああでもない、こうでもない」と当て推量を言い合うというような展開で、いたずらに脅威を煽るような結果になっていました。

挙げ句の果に、「イタリアを見習え」「韓国を見習え」「ドイツを見習え」などと語っていたコメンテーターもおり、まさに噴飯ものの状況が日々続いていました。

このようなコメンテーターらの発言などは問題外として、やはり、日本のコロナ感染者数と死亡者数が少ないことは、やはり何か原因があるものと考えられます。

私としては、それについてはこのブログですでに述べてきたとは思うのですが、体系的に述べてはいなかったので、一つの仮設として再度はっきりさせておきたいと思います。

まず考えられるのは、日本社会の特徴です。例えば、近年は高齢者が「高齢者のみの世帯」で生活している率が高く、若い世代との接触を遮断するのが容易だということです。

例えば、日本の高齢者入居施設の場合は2月の早い段階から家族を含めた入所者以外の訪問を停止して厳格な管理をし、大規模感染は起きていません。また、大家族が比較的残っている地方は人口密度が低く、反対に人口密集地域では2世帯、3世帯の同居は少なくなっていることが理由として上げられます。

他にも、公衆衛生の概念が浸透しているとか、手洗いの習慣、マスク着用など生活様式の特徴も理由になりそうです。漠然と説得力を感じるストーリーですが、例えば同じように高齢者の命を奪う季節性のインフルエンザの場合は、例えばアメリカで毎年1万5000人前後の死亡者を出している一方で、日本は3,000から5,000の死亡者数で推移しています。しかし、米国の人口は約3億人、日本は1億2千万にですから、あまり有意な差異はありません。

そうなると、社会の特異性だけでは説明できません。その他、死亡者数の隠蔽とか、PCR検査数が少ないなどというのは単なるフェイクにすぎません。(これについては、過去の記事などを参照していただくものとしてここでは、詳細の説明はしません)

であれば、日本と外国で差異が最も顕著なのは何かといえば、やはりクラスター対策です。

この戦略は、3月19日の専門者会議以降、関係者が徐々に説明を始めていますが、要するにSARSを制圧したのと同じ手法で、感染の連鎖を潰していく作戦です。

PCR検査の投入方法も、限りある検査キットを感染者とその濃厚接触者に集中させ、クラスターを抑え込むことを優先して決めているようですし、例えば「ダイヤモンド・プリンセス」下船者については、100%クラスターの発生は抑止されたという説明もされています。

さらに、日本ではCTの普及率が世界1であることも奏功していると思います。コロナ感染者の中にはほとんど自覚症状のない人がいて、咳の症状すらない人もいます。しかし、そういう人の中には肺の異常がみられる人もいます。そういう人の場合でも、CT検査をすると肺に異常がみつかることがあるそうです。

とにかく、CT検査をすると、コロナであろうかなかろうが、肺炎なのかそうでないのか、肺炎だとして、重篤なのか、軽症なのかもすぐにわかります。肺に異常が見られた人で、症状が重い人、これから重くなりそうな人は、PCR検査を優先的に実行するとか、入院させるということが、医師の判断でかなり迅速にできます。


だからこそ、日本ではクラスターを抑え込むことができたともいえると思います。これは、CTが普及しており、総合病院ては大体設置してあるどころか、診療所レベルの小さな医療施設でも設置している場合もある日本だから、可能だったのです。

CTの普及率が日本よりも相対的に少なく、精度の低いPCR検査自体に頼らなければならない他の国と日本の根本的違いです。

そうだとしても、仮に今後「感染経路の見えない」形で、多数の感染者が発生し、クラスターを抑え込むことができなくなる可能性は残っています。専門家会議の言う「オーバーシュート」とはそうした事態であり、これを恐れて警戒を強めようという趣旨は理解できます。

仮にこの仮設が相当程度にあたっているにしても、専門家委員会が声高にそれを誇るのではなく、警戒を促しているというのは正しい姿勢だと思います。

今後、日本や、台湾などの感染者数が低い理由は、本格的に研究を進めていくべきと思います。

なお、中国の場合は、死者数が少ないことにはなっていますが、中国は1月にコロナの統計のとりかたを3回も変えたという事実があることと、その後もコロナ感染者でも症状が出ていない人は、コロナ感染者数に含めないなどの措置をとっていることから、全く信用ができず、疫学的調査には信頼にたるデータを得られる可能性は低いです。

韓国・ソウルの朴元淳市長は9日、市庁で記者会見し、市内繁華街・梨泰院のクラブを訪れた後、新型コロナウイルスへの感染が発覚した20代男性に関連し、同日正午時点で計40人の感染が確認されたと発表しました。感染封じ込めが期待されてきた韓国は、再び増加に転じた感染者数を前に緊迫感が漂っています。

メルケル首相が6日、新型コロナウイルスに絡む規制の大幅緩和を打ち出したドイツ各地で、クラスター(感染者集団)発生が確認されています。どこまで規制を緩和するかは14州と2特別市ごとに決めるが、難しい地域も生まれそうです。

まだまだ、予断を許さない状況であることは間違いないようです。

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自衛隊中央病院 院内感染対策など公開 東京 新型コロナ―【私の論評】自衛隊は、世界で最も感染に強い組織(゚д゚)!


2020年4月30日木曜日

自衛隊中央病院 院内感染対策など公開 東京 新型コロナ―【私の論評】自衛隊は、世界で最も感染に強い組織(゚д゚)!


NHKニュース

動画はこちらより https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200430/k10012412711000.html

200人を超える新型コロナウイルスの患者を受け入れた自衛隊の病院が、院内感染の対策などを報道関係者に公開しました。

公開されたのは、東京 世田谷区にある自衛隊中央病院で、取材は病院の指導のもと、患者が出入りする動線などと重ならないように配慮して行われました。

30日は、院内感染の対策や患者の受け入れ態勢が公開され、病院に来た人はすべて建物の外にあるテントで体温を測っていることや、感染の疑いの強い人が搬送されてきた場合には、出入り口から検査場所まで専用の動線を設けて誘導していることなどが紹介されました。

また、重症の患者を受け入れている病棟では、廊下を二重の扉で仕切ったうえ室内の空気が外に流れ出ないよう陰圧に保つ対策をしているということです。

病院では、新型コロナウイルスの集団感染があったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客など、200人を超える患者の治療に当たっていて、これまでに院内感染は起きていないということです。

また、自衛隊中央病院は先月、クルーズ船の患者について、軽症や無症状の人でも胸部のCT検査を行うとおよそ半数に肺の異常が認められ、このうち3分の1は、その後、症状が悪化したとする分析結果を公開しています。

病院は、この特徴を「サイレント肺炎」と呼び、症状の悪化に気付きにくいおそれがあると指摘しています。

自衛隊中央病院の上部泰秀院長は「いろいろな医療機関と協力して画像所見を共有してソフトを開発したり、共通の基準を見つけたりすることに取り組んでいる」と話し、今後もほかの医療従事者と知見を共有したいとしています。

【私の論評】自衛隊は、世界で最も感染に強い組織(゚д゚)!

自衛隊というと、「何であの人たちは感染しないの?」と、現在ネット上などで話題になっています。新型コロナ感染拡大を受けて、数々の現場に赴く彼らは、濃厚接触と戦い続けながらいずれの任務でも感染者を出していません。彼らには独自の「予防マニュアル」があるのだといいます。

この「予防マニュアル」は自衛隊独自もので一般公開はされていませんが、一般家庭向けに『新型コロナウイルスから皆さんを守るために』というマニュアがあります。これは、各自衛隊員の家庭にも配布され、その内容が励行されているのでないかと思います。そうでないと、自衛隊員の感染が海外で感染して帰国した一人の例外を除いて、皆無ということはあり得ないと思います。

3つの密を避けることと、このマニュアルを励行すれば、一版家庭でもかなり感染を防ぐことができるのではないかと思います。

さて、以下に自衛隊員のコロナの防御の内容を記します。

◆脱ぐ時は2人一組

全国の駐屯地から医療・介護施設へのマスク配布作業を始め、集団感染が発生したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』の船内対応、チャーター便帰国者の一時宿泊施設への物資搬送など、新型コロナの感染拡大を受けて様々な任務に従事する自衛隊。

ときには保菌者との濃厚接触が避けられない現場もありますが、隊員の感染事例は海外からの帰国者1人のみです。いまだ任務中の接触を原因とする感染者は出ていないのです。

とりわけ医師や政府職員、検疫官の感染が相次いだクルーズ船の任務では、2700人の隊員が対応にあたったにもかかわらず、感染者ゼロで任務を完了したことは特筆すべきです。

制服組トップの山崎幸二・統合幕僚長は、後日の会見で「しっかりした防護基準を定め、現場で指揮官が徹底し、隊員が実行した。訓練の成果だと思う」と振りかえっています。

例えば、クルーズ船では、厚生労働省が設けた基準とは別に自衛隊独自の防護策を講じていたといます。

「船内の消毒業務などは防護服を着たうえで手袋を二重にし、防護服との隙間が生じないようにつなぎ目を粘着テープでふさぎました。さらに靴カバー、目にはゴーグルを着用しました」(防衛省・統合幕僚監部報道官室)

元陸自一佐で、イラク先遣隊長、福知山駐屯地司令などを歴任した佐藤正久・自民党参院議員が解説しています。

「今回の新型コロナのようにヒトに感染するウイルスに対応する場合、自衛隊は必ず防護服を着用します。手袋をして顔も覆い、靴カバーを付けるフル装備です。任務が長時間にわたる場合は、さらにオムツを着用することもある。

防護服を脱ぐときは“外側”に触れないよう、2人一組で行ないます。一般的には、頭の部分から順番にお互いの防護服を外していき、最後にお互いの手袋を取るといった手順です。そこまで徹底しないと、感染を防ぐことはできません」

◆爪の根元を洗う

自衛隊の新型コロナ対応は防護服のような特殊な対策がメインではありません。むしろ多くの場面で、一般の人もやっている基本対策の徹底を心がけているそうです。ただし、その「やり方」が違うのだといいます。

「船内でのウイルス感染を避けるため、『手指で何かに触れたらすぐに消毒する』、飛沫によるウイルスの侵入を防ぐため『マスク着用時は鼻にあたる部分を押さえて隙間をなくす』などを徹底しました」(統合幕僚監部報道官室)

マスクは鼻まで付ける、ここまではいまや常識だが、そこで鼻回りの隙間をなくす一手間が「自衛隊式」です。そうした配慮は洗濯にも見られます。

「洗濯は各自が行ないましたが、感染リスクが高い医官・看護官らは個室の風呂場や部屋に持ち込んだバケツ型の洗濯機を利用し、それ以外の隊員はフェリー内の洗濯機を共有して使いました」(同前)

その他の対策としては、「食事の際は対面を避ける」「対面の時は2メートル以上空ける」などがあるといいます。

新型コロナに限らず、自衛隊の感染症対策は基本を突き詰めることを重視しています。その代表が「手洗い・うがいの励行」です。自衛隊OBが語ります。

「集団行動が基本の自衛隊では1人が感染症に罹患すれば、部隊の任務自体が行なえなくなってしまう。そのため、入隊後に教育隊から教えられる基本動作の中に手洗い・うがいの励行があります。その結果、手洗い・うがいをきっちりやる習慣が身につくのです」

手洗いの励行は、部隊生活の日常にも及びます。

「トイレや洗面所に『手洗いの仕方』を解説する貼り紙を出しているところもあります。それも、小便器の前だけでなく、個室に座ったときの正面にも張られていたりする。用を足すときに必ず目に入るよう指示の徹底化を図ります」(前出・自衛隊OB)

手洗いにも自衛隊ならではのポイントがあります。

「石鹸をつけ両手の平をゴシゴシ前後にこする人が多いですが、そうすると親指と爪の洗浄が疎かになりがちです。そのため、『親指だけを洗う』『爪の先は別に洗う』『その後、爪の根元を洗う』など、手順を具体的に指示しています」(佐藤氏)

そうした指示は足元にも及びます。感染症対応の現場で、隊員自身がウイルスを運ぶような事態を避けるため、例えば、鳥インフルエンザや豚コレラなど家畜に感染症が発生した場合は、現地での活動後、ブーツに付いた土を必ず現場で落とし、靴底の消毒を徹底しています。

佐藤氏が続けます。

「海外任務では事前に予防注射を何本も打ちますが、それでも感染症の恐れは消えない。そのことを隊員にきっちり伝え、手洗いの励行を指示しました。イラクでは駐屯地の食堂入り口に手洗い場を設け、食事前に手洗いをする動線を作りました」

手洗いに水が使えない屋外での食事の場合は「ウェットティッシュを用いて手指の消毒を行なう」といいます。

◆『衛生ニュース』の発行

これらの「自衛隊式」予防法は誰もが日常生活で実践できる対策ばかりですが、それを集団単位で確実に実施できることが自衛隊の強みです。佐藤氏はこう言います。

「自衛隊は以前から感染症に緊張感を持って対処しています。『自衛隊における感染症対策に関する訓令』や『感染症対策に関する達』により、自衛隊内の各組織での対応や感染症の種類ごとに発生時の報告を義務付けています。隊員には部隊ごとに発行する『衛生ニュース』で、流行中の感染症とその予防法を伝えています」

そうした取り組みが効果を発揮できるのは、自衛隊という組織ならではの特性によります。

「『上意下達』が徹底しているため、組織全体に情報が浸透しやすい。他の役所や民間と大きく違うところです」(同前)

具体的には、部隊での朝礼・終礼での予防励行の伝達、営舎での10人弱の班単位での指示など、多くの段階で感染症予防の徹底が伝えられます。

近年、自衛隊ならではの危機管理テクニックを取り上げた『自衛隊防災BOOK』がヒットしました。そこでは日頃の防災や減災に役立つ知識や技術が数多く披露されています。ある現役隊員が語ります。

「我々の強みは『健康管理も仕事の一部』と全員が認識していることです」

意識の徹底こそがコロナ予防につながっているのです。これは、当然のことながら、自衛隊中央病院でも実践されているはずです。

このような自衛隊の実践的なノウハウは、他の組織にも役に立つはずです。だからこそ自衛隊中央病院は、院内感染対策など公開したのでしょう。これに関しては、設備上参考にしたくてもできない場合もあるでしょうが、他の組織も学ぶべきところは学ぶべきです。

私達自身も学ぶべきです。その意味で以下に自衛隊関連のいくつかの動画を掲載します。

まずは、自衛隊員の感染者がゼロである理由を明快に説明した、「チャンネルくらら」の動画です。


この内容、細かなところでは、多少の間違いもあるのですが、自衛隊員の感染がなぜ"ゼロ"なのか、明快に説明しています。かなり参考になるし、実務的です。間違いについて、気になる方は、この動画の配信先のYouTubeのサイトをご覧になって下さい。コメント欄に、その内容がコメントされています。ご覧になれば、おわかりになると思いますが、これらの間違いはごく些細なものであり、動画の内容や伝えたい内容を毀損するものではありません。

以下は、自衛隊式の手洗いの仕方です。



次は、自衛隊式のマスクの着脱方式です。


以上の2点だけでも、家庭などでは実行すれば、かなり役に立つと思います。

以下は、感染防止の車両の養生法です。


これも大いに参考になりそうです。

以下は、ガウンの自衛隊式のガウン着脱方式です。


これは、病院などの最前線で、コロナウイルス患者の治療に携わっている人々に役立ちそうです。

さて、台湾はコロナウイルス感染の防止で、最も成功した国ですが、その台湾ですら、軍隊で感染クラスターが発生しています。

中央感染症指揮センターは19日、新たに22人の感染が確認されたことを明らかにしました。そのうち21人は軍艦「磐石」の乗組員で、内訳は20代から40代までの男性19人、女性2人。いずれも4月14日から18日にかけて発症した。残る1人は20代男性。昨年4月21日に留学のため渡米し、今年4月10日に米国で発症。17日の帰国時、空港で検体を採取し、感染が確認されました。

なお、軍艦「磐石」で発生したクラスター(集団感染)による感染者は、これで累計24人となりました。中央感染症指揮センターはすでに、「敦睦遠航訓練」に参加していた軍艦「磐石」を含む、合計3つの軍艦の乗組員744人全員の検体検査を行っています。現在、感染が確認された24人はすべて「磐石」の乗組員で、ほか2つの軍艦の乗組員から陽性反応が出ていません。

軍隊における感染の発生は、米国にもみられ、空母が戦列から離れているくらいです。中露の軍隊にも感染者がいるようですが、隠蔽されているものとみられます。その中にあって、感染の最前線に赴いた自衛隊員が多数いる中、一人の例外を除いて感染者がゼロというのはすごいことです。

中露のような独裁国家にとって、コロナウイルスの大流行は寧ろチャンスです。中露では一般人はいくら死んでも、独裁者本人と指導部さえ無事なら、問題ありません。軍隊に感染者がでても、動けるうちは動かし、使い物にならなくなれば、捨てて、交代要員をあてれば、それで良いのです。

ところが、他の国では疫病の為、大混乱が起きています。その混乱に乗じて、中露は覇権拡大を狙うので、常に備えが必要です。このようなときに、自衛隊の感染がゼロというのは本当に心強いです。

自衛隊感染者ゼロという事実は、彼らも知っているでしょう。だから、尖閣などに来る中国の艦艇の乗組員も戦々恐々としているでしょう。なぜなら、彼らには発見することができない日本の潜水艦に、いつ撃沈されるても不思議はないからです。

しかも、今世界はコロナウイルス禍にあり、いわば世界中が緊急事態の最中にあるわけです。このような緊急事態下には、平時にはあり得なかったようなことが起こることがしばしばあるからです。コロナ禍に乗じて何か、有利に立ち回ろうとする彼らからすれば、なおさら敏感になっているはずです。

コロナ感染の影響を受けていない海自の潜水艦は、今でも中国艦艇を沈める模擬訓練を東シナ海や南シナ海行っていることでしょう。

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2020年4月29日水曜日

【真・人民日報】世界で沸騰する新型コロナ「中国責任論」 日本の報道からは見えづらい欧米各国の“思惑”―【私の論評】米中「中国ウイルス」情報戦は米国の圧勝、中国はチェルノブイリの二の舞を舞うことになる(゚д゚)!

【真・人民日報】世界で沸騰する新型コロナ「中国責任論」 日本の報道からは見えづらい欧米各国の“思惑”

米国に続き、メルケル氏ら欧州首脳からも対中不信の声が上がる

今週は新型コロナ問題で中国「責任論」が世界で沸騰している問題を取り上げたい。

中国の初期対応に過失はあったのか。感染源は武漢のウイルス研究所なのか。謎の解明は科学のアプローチに委ね、本稿では国際的な批判の高まりの裏側に目を向けて行きたい。

3月末まで、習近平のコロナ対策を評価していたドナルド・トランプ大統領が、にわかに攻撃に転じたのは4月上旬のことである。

動機は自国の感染対策で出遅れ、大統領選挙にも不利になったからだ。

中国の隠蔽(いんぺい)体質で米国に必要な情報が得られなかったと怒りを爆発させ、中国に忖度(そんたく)して国際機関の役割を果たせなかったと世界保健機関(WHO)も批判した。新型コロナが武漢の研究所から流出したのでは、との疑惑にも言及した。

地元メディアには「米情報機関」のリークがあふれ、米中間にはきな臭い空気も流れた。本来、疑うに足る情報ならばさっさと公開すべきだが、それもせず、ただ「情報機関」という響きに真実性が与えられて独り歩きする流れは、イラク戦争へと向かっていった過去を彷彿とさせる。

ただ、もちろん中国が被害者であるはずはない。国際的にも中国に厳しい風が吹き始めている。

エマニュエル・マクロン仏大統領は「中国が新型コロナの流行にうまく対処していると『ばか正直』に信じてはいけない」と警告し、ドミニク・ラーブ英外相(首相代講)は、新型コロナがどう発生し、なぜ早期封じ込めに失敗したのか、中国に「厳しい質問をせざるを得ない」と語っている。

アンゲラ・メルケル独首相も中国が「発生源に関する情報をもっと開示していたなら、(中略)より良い結果になったと思う」と隠蔽を疑う発言をし、マリス・ペイン豪外相も、独立調査の必要性を求め、米国に歩調を合わせた。

まさに中国包囲網が形成されているようだ。だが、これには2つの流れがあり、1つは国民感情としての「嫌中」、もう1つが国として中国に厳しい顔を見せる対応だ。

前者は一時的な「中国製」嫌悪を招き中国経済に打撃となるが、前例から見て長続きはしない。

後者も、トランプ氏の中国攻撃でにわかに活気づいた日本人が期待するような話ではない。

第一、日本の報道からは各国の思惑が少しも見えていない。不思議だ。

国のトップが発信する以上、何かを獲得するか、何かを防衛する意図がないはずはない。だが日本人は「やっと世界が中国の問題に気が付いた」という好き嫌い-実は官僚もこのレベル-に落着させて納得するため、各国がどんなカードを手に列に加わったのかを見逃すのだ。まるでパーティーの招待状に「軽装」とあるのを真に受けて出かけるような軽率さだ。この国の人々は、願望をむき出しに国際情勢を分析する恐ろしさを、いつになったら学ぶのだろう。

■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

【私の論評】米中「ウイルス情報戦」は米国圧勝、中国はチェルノブイリの二の舞を舞うことになる(゚д゚)!

今年に入って、人類史に必ず残るだろう災厄が出現しました。新型コロナウイルスです。一方、2018年からは米中覇権戦争が勃発しました。中国ウイルス(コロナウイルスのこと)は、この米中戦争の情報戦に使える「最高のネタ」になっています。

かつて、チェルノブイリ事故を隠蔽して国際的に非難されたソ連は、5年後に崩壊しました。コロナは中国共産党にとっての「チェルノブイリ」になる可能性が濃厚です。

チェルノブイリの作業員達


2018年、米中覇権戦争が始まりました。米国と中国は、相手国を破壊し尽くせるだけの核兵器を持つため、両国の「戦闘」は起こりにくく、戦争は「別の形態」を取るようになっています。情報戦、外交戦、経済戦、代理戦争などです。

情報戦の目的は、「敵国を悪魔化する」ことです。中国発で、世界を恐怖に陥れ、たくさんの感染者と死者を出している「新型中国ウイルス」は、米国にとって、情報戦に使える最高の材料です。
4月3日時点で、全世界の感染者数は100万人を超えました。死者数は5万3000人。感染者数も死者数も、どこまで増え続けるのか、誰にも予測できません。

ポンペオ国務長官は、新型中国ウイルスを、世界保健機関(WHO)が定めた「COVID-19」とは言わず、「武漢ウイルス」と呼んでいます。初期の段階で、彼が「武漢ウイルスと呼ぶことで、中国を悪魔化しよう」と考えていたかは不明です。しかし、ポンペオ長官を本気にさせる事件が起こりました。

このブログでも以前掲載させていただたように、中国政府が、「新型コロナウイルスを武漢に持ち込んだのは米軍だ」と主張し始めたのです。

これは市井のトンデモ陰謀論者の発言ではありません。中国外務省の趙立堅報道官の言葉であることが重要です。日本人でこのツイートを重要視する人は少ないとでしょう。「また中国政府が、トンデモ主張し始めた」とあきれ、苦笑するぐらいかもしれません。

しかし、事はそう単純ではありません。確かに、日本が属する「米英情報ピラミッド」や「欧州情報ピラミッド」で「米軍起源説」が力を持つことはないです。ところが、世界には「中共情報ピラミッド」や「クレムリン情報ピラミッド」もあります。特に「中共情報ピラミッド」では、「米軍起源説」が「定説」になる可能性すらあります。

なぜでしょうか?中国やロシアなどの独裁国家です、国民を好きに洗脳できるからです。たとえば、ロシアの情報空間内では、2014年3月のクリミア併合が「絶対善」となっています。

2014年7月に起きた「マレーシア機撃墜事件」についても同様です。全世界では、「ウクライナ東部の親ロシア派による誤爆」が定説になっています。しかし、クレムリン情報ピラミッド内では、「ロシアを孤立させたいウクライナ軍が意図的に撃墜した」が「定説」になっています。

つまり、政府がメディアを支配している国では、政府の意図通りの情報を国民に信じさせることができるのです。中国では、ロシア以上に、政府がメディアを完全支配しています。だから、中国政府が国民に「新型コロナウイルスを持ち込んだのは米軍だ」と信じさせることは、十分可能だろう。

これは、すでに南京虐殺でも実証されているところです。20万人、30万人の市民を殺害するということは、想像を絶するほどの労力を必要とします。2千人とか、3千人などであれば、あり得ると思いますが、しかし、中国政府は30万に登る虐殺があったことを国民に信じさせることに見事に成功しています。

中国の南京市にある南京大虐殺記念館の展示を見る訪問者(2015年10月10日)

そして「米軍起源説」は、習近平政権を守る役割も果たします。「習近平政権が隠蔽(いんぺい)したから、新型コロナウイルスが、全中国、全世界に広がった」というネガティブ情報を、中国国民にわざわざ伝える必要はないです。そうではなく、「悪の米軍が中国にウイルスを持ち込んだが、習主席は、この攻撃を食い止めた英雄なのだ」と信じさせれば良いのです。

こういう「中共情報ピラミッド」の事情を知っていれば、米国政府も本気にならざるを得ないです。まず、トランプ大統領自身が、「参戦」してきました。

トランプ米大統領は3月17日、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んだことに中国が反発しているのに対し「ウイルスは中国から来たのだから全く正しい呼称だと思う」と正当化しました。ホワイトハウスでの記者会見で語りました。

「中国が『ウイルスは米軍が持ち込んだ』と偽情報を流すから来た場所の名前で呼ぶべきだと言った」と反論しました。

中国にレッテルを貼ることにならないかと問われると「そうは思わない。『ウイルスを米軍が持ち込んだ』という方が問題だ」と述べました。

トランプのこの発言、日本人の大部分は、「大人げない」と思ったかもしれません?しかし、情報戦の観点からすると、トランプは正しく行動しているのです。このまま中国の「米軍起源説」を見過ごせば、「気づいたら、米軍起源説が世界の定説になっていた」となりかねないのです(南京30万人大虐殺説や、韓国人慰安婦20万人強制連行説が世界で定説になったように)。

ついで、ポンペオ長官は、「情報戦の味方を増やそう」と画策しました。つまり、「武漢ウイルス」と呼ぶ国を増やすのです。

米紙ワシントン・ポストは25日、主要7カ国(G7)外相がテレビ会議方式で開いた会合で、ポンペオ米国務長官が新型コロナウイルスを「武漢ウイルス」と呼ぶよう訴えたと報じました。

その理由についてポンペオ長官は、以下のように述べている。議長を務めたポンペオ氏は記者会見で中国が偽の情報を流布していると指摘し「G7各国はそれを把握している」と表明しました。

やはり、米国政府は、中国の「トンデモ米軍起源説」を「深刻な脅威」と認識しているのです。

しかし、米国以外の国は、この恐怖を共有していません。それに、中国差別を助長しかねない「武漢ウイルス」という用語は、「ポリティカルコレクトネス」違反と受け取られたようです。結果、他の国々は、ポンペオ提案に同意しませんでした。

現状、世界中の国々が、自国の「コロナ対策」で忙しいです。それで、米中が繰り広げる情報戦に、あまり興味はないでしょう。

しかし、米国と「特別な関係にある」英国は、味方になりそうです。この国では、チャールズ皇太子も、ボリス・ジョンソン首相も、新型コロナウイルスに感染しています。全く「他人事」ではないのです。ジョンソン首相は、中国に激怒しているとい。

イギリスのジョンソン政権は、中国の新型コロナウイルスへの対応に激怒しているようです。3月29日(現地時間)の報道によると、政府関係者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機が落ち着いたら、中国は「報い」を受けるだろうと警告しています。

イギリスの政府関係者は、中国が新型コロナウイルスの感染拡大の深刻度について誤った情報を拡散したと考えています。(BUSINESS INSIDER JAPAN 3/31)

「中国ウイルス」「武漢ウイルス」vs「米軍ウイルス」の情報戦は、どうなるのだろうか?
「中国は、米軍起源説を、自国民に信じさせることができる」ということを踏まえても、米国の勝ちでしょう。なんといっても、「新型コロナウイルスは、中国武漢で発生した」のですから。

米国は、いつの間にか、感染者数世界一になってしまいました。4月3日時点で、感染者数は24万人、死者は5000人を超えています。恐ろしいことに、感染者も死者も、どこまで増えていくかわからないです。経済的打撃も、リーマンショック後の08~09年を上回ることは確実です。破産、倒産が日常化し、町は失業者であふれることになります。

米国民の怒りは普通なら、為政者であるトランプに向かうでしょう。しかし、トランプはこう言っています「これは、私の責任ではない。中国政府が、初期の段階で情報を隠蔽したことが今の惨状の原因だ。我々は、中国政府の責任を厳しく追及していく」と。

こうして彼は、見事に責任を中国に転嫁することに成功する(「転嫁する」というか、事実であるが)。ポリティカルコレクトネスが浸透している日本や欧州は、おそらくトランプに追随しないでしょう。しかし、「自分の責任にされたくない」多くの国の指導者たちは、トランプに続くのではないでしょうか。

米中両国はこれまでも、覇権をかけて、さまざまな形の戦いを繰り広げてきました。

<経済戦>

わかりやすいのは、2018年7月からの「関税引き上げ合戦」です。また、米国が、世界中の国々に「中国のファーウェイを5Gから追い出せ」と圧力をかけているのも、「経済戦争」に分類できるでしょう。

<代理戦争>

米国は、中国と対峙する台湾への武器売却を大幅に増やしています。あるいは、香港の民主化勢力を支持しています。昨年世界を揺るがした「香港デモ」は「米国の作品」というのが、中国政府の見解です。

情報戦は、どうだろうか?昨年まで、米国は「ウイグル問題」を情報戦に使っていました。

中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人を約100万人、テロ取り締まりを「口実」に拘束していると、国連は懸念を強めています。

中国はウイグル人100万人を強制収容しています。この衝撃的な事実は、「敵国悪魔化」という目的にピッタリのテーマです。ペンス副大統領やポンペオ国務長官は、この問題をしばしば取り上げ、中国を厳しく非難してきました。

たとえば、ポンペオ長官は2019年7月18日、「信教の自由に関する閣僚級会合」で演説し、「中国では、現代における最悪の人権危機の1つが起きている。これはまさしく今世紀の汚点である」と述べています。これは、事実であるが故に、強力です。

最近では、「中国共産党は現代のナチス」「習近平は現代のヒトラー」という言葉をしばしばネットで見かけるようになりましたが、その最大の理由は、中国政府がウイグル人100万人を強制収容していることです。

かつて、ソ連という独裁国家が存在しました。この国で1986年4月、「チェルノブイリ原発事故」が起こりました。ソ連は当初、この事実を隠蔽したのですが、スウェーデンが「放射能レベルが上がっている」ことに気づき、ソ連政府に「原発事故があったのではないか?」と問い合わせました。

ソ連は「事故は起こっていない」とシラを切ったのですが、スウェーデン政府が「では、国際原子力機関に報告させてもらう」と脅したところ、一転して事故の事実を認めたのです。


       チェルノブイリ事故を当初隠蔽当時のソ連は、武漢ウイルスの発生を隠蔽した
                 今日の中国にかぶる。ドラマ「チェルノブイリ」の予告編。

中国の武漢で新型コロナウイルスが発生したこと自体は、仕方のないことです。同じようなウイルスが、日本、米国、欧州で発生することも、あり得るかもしれないです。しかし、世界が問題にしているのは、「発生した事実」ではありません。

中国政府が「隠蔽」したことで、全世界にウイルスが拡散されてしまったことです。しかも中国は、反省するどころか「武漢にウイルスを持ち込んだのは米軍だ」と、トンデモ主張をすることで、責任を米国に転嫁しようとしています。

1986年に原発事故を起こしたソ連は、わずか5年後の1991年に崩壊しました。新型コロナウイルス問題は、チェルノブイリ問題をはるかに凌駕する大問題です。この問題が、中国共産党政権にとっての「チェルノブイリ」になる可能性は、かなり高いとみるべきです。

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2020年4月14日火曜日

新型コロナが証明した「独立国家」台湾―【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!



flickerより Robin Huang 台湾国旗柄のビキニの女性 写真はブログ管理人挿入 以下同じ 

 今回の新型コロナウイルス禍をめぐる世界の反応を見れば、台湾が中国の一部でないことを世界の人々に認識せしめた意味は極めて大きい。

 台湾においては、2003年のSARS禍の際、84人の死者を出したことが教訓として残されていることもあり、今回の新型コロナウィルス禍の対策においては、初期対応、検査、隔離、治療などの諸措置が透明性を以て極めて効率的に行われた。これによって、諸外国に比べ、感染者数、死者数とも、今のところ、抑えられた状況にある。台湾は、中国、欧州、米国などに比べて、この災禍を見事なまでに制御していると言える。

 これまでのこの台湾の制御策は世界的にも評価されており、この状況から見れば、台湾と中国の違いは一目瞭然である。

 最近、中国外交部の報道官は、自らのツイッターに、この新型コロナウィルス禍の発生源として、米国軍人がウイルスを武漢に持ち込んだ可能性がある、と投稿した。これに対し、米国は、新型コロナウィルス禍の発生源が中国であることは疑いのない事実であり、初期段階における中国の隠ぺい工作の結果、世界各国が犠牲を払わざるをえなくなった、としてこの投稿内容を非難した。トランプ大統領は、これを新型コロナウイルスではなく、「CHINESE VIRUS」(中国ウィルス)と呼んだ。ポンペオ国務長官は「武漢ウイルス」と呼んだ。

 ごく最近、米国下院においても、この中国報道官のツイッター内容を「偽情報」であると非難して、超党派の決議案がまとめられた。

 中国共産党の習近平政権としては、自分たちの過ちを米国に転嫁する必要から、このようなやり方をとったのであろうが、これは米国の識者を憤慨させるものとなっている。中国としては、新型コロナウィルスを拡散したことの責任を曖昧にし、中国自身が被害者であるかのような印象を与えようと躍起になっているように見える。

 台湾の住民たちにとっては、中国における新型コロナウィルス禍の感染拡大、その後の様々な処置を見ていて、中国の一党独裁体制がいかに新型コロナウィルス対策において限界を有するかを改めて認識させられたに違いない。

 日本はこれまで台湾をWHO(世界保健機関)のメンバーに入れるよう支持してきた。しかし、今回のWHOの動きを見れば、中国の実質的な影響下にあるためであろうが、台湾の存在を無視するような態度を取り続けている。そのため、台湾が新型コロナウィルス禍を如何に抑え込んでいるかについての知識、経験が世界に直ちに共有される状況になっていないのは残念なことと言わねばならない。

 では、台湾がいかに、この新型コロナウィルスの危機に対応してきたかを、改めて、ここで共有しておきたい。日本にとっても参考になるはずである。

 台湾は、早い段階で、国境を閉め、中国との行き来を制限した。学校を2週間閉め、その間に消毒を徹底した。学校の再開時には、徹底した検温検査等を行なった。学校の入り口に、テントの待機所を設け、微熱等で感染可能性のある人はそこで控えるようにしてもらった。台湾の保険証のチップには、渡航歴が分かるようになっていて、診察した段階で、中国や日本に行っていた人かが一目でわかる仕組みが出来ていた。病院はもちろん、レストラン、ホテル等の入り口でも、入館者にはアルコール消毒液を噴射して対処した。そうしない人は、中に入れない。マスクは、早い段階で輸出を禁止し、国内で購入する人は、数を制限し、保険証等のチップで管理する。こうする事で、価格の急騰や品不足、買いだめを防止できた。

 これらの国内的対処のみではない。台湾は、小さい国ながら、世界第3の経済大国である日本に、救いの手を差し伸べてくれた。新型コロナウィルスによって国境が封鎖された南米ペルーで足止めされた日本人観光客29人を、台湾政府のチャーター便に乗せてくれた。104人の日本人観光客は旅行会社が手配したチャーター機で出国した。台湾政府は、自ら、遠いペルーまでチャーター機を手配して自国民の出国を助けたが、その恩恵に、日本も預からせてもらった格好だ。

 3月下旬、トランプ大統領は、超党派の支持で成立した「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ法(TAIPEI法)」に署名した。この法律は、台湾の外交関係強化についての施策を、国務省が議会に報告することを義務付けるとともに、台湾の安全保障に脅威となる国との係わりを再検討することを政府に義務付けている。

 日本も、米国の同盟国として、そして台湾への感謝も含め、今後、台湾との関係をより一層強化すべきであろう。将来的には、日米両国がリードして、国際社会の世論を喚起し、台湾の国際的地位の向上を推進できれば良い。今回の新型コロナウィルスの危機は、台湾が実体として独立した国家であることを証明したのだから。

岡崎研究所

【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!

本年1月11日の台湾総統選で史上最多得票で再選された台湾の蔡英文総統は英BBC放送のインタビューに応じ、台湾の地位について「独立国家だと宣言する必要性はない。既に独立国家であり、われわれは自らを中華民国、台湾と呼んでいる」と述べました。インタビューは英国時間の14日に公表されました。

台湾蔡英文総統

これに対し、中国外務省の耿爽副報道局長は15日の記者会見で、「中華人民共和国が中国を代表する唯一の合法政府であり、台湾は中国の分割できない一部分だ。『一つの中国』原則は国際社会の普遍的な共通認識だ」と不快感を表明しました。

蔡氏はBBCのインタビューで「台湾独立」に対する見方を問われ、与党・民進党の立場を改めて強調。中台統一のためなら武力行使も辞さない方針を示す中国に対し、「われわれは多大な努力をし、能力を高めてきた。台湾を侵略すれば、非常に大きな代償を払うことになるだろう」とけん制しました。

そうして、現在台湾は、中国の助けを一切借りることなく、独力で中国ウイルス対策を実施し、名実ともに独立国であることを世界に向かって、示すことができました。中国は現在国内の中国ウイルスは終息傾向にあるとして、イタリアなどに医療チームを送る等のいわゆる微笑外交をしていますが、台湾には全くその必要がありません。

新型中国ウイルスへのWHO=世界保健機関の初期対応をめぐり、台湾当局は、去年12月にWHOに送った文書を公表し、中国でヒトからヒトへの感染が疑われる事案が起きていると警告していたと強調しました。

WHOの対応を批判する米国に歩調をあわせた形です。

米国国務省は10日、WHOについて「台湾から早期に受けた通知を国際社会に示さなかった。公衆衛生より政治を優先した」などと批判しましたが、AFP通信の取材に対しWHOは「台湾からの通知にヒトからヒトへの感染について言及はなかった」と否定しました。

これについて台湾当局は11日、WHOに対して去年12月末に送った通知の全文を公表しました。

文書には「中国の武漢で非定型の肺炎が少なくとも7例出ていると報道されている。現地当局はSARSとはみられないとしているが、患者は隔離治療を受けている」などと書かれています。

台湾の陳時中衛生福利部長は会見で「隔離治療がどのような状況で必要となるかは公共衛生の専門家や医師であれば誰でもわかる。これを警告と呼ばず、何を警告と呼ぶのか」と述べ、文書はヒトからヒトへの感染が疑われる事案が起きていると警告していたと強調しました。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が台湾から人種差別攻撃があったと主張している問題で、台湾人がインターネット投稿で謝罪しているように中国側が見せかけていると台湾当局が指摘している。

台湾法務部(法務省)調査局は10日の記者会見で、中国のネットユーザーが台湾人を装い、テドロス氏に対する人種差別攻撃について謝っているように見せていると説明。同局情報セキュリティー部門の張尤仁主任によれば、こうした投稿は全て同じ言葉遣いのためフェイク(偽)だと容易に分かるとしています。

投稿は全て「台湾人として、このような悪意のあるやり方でテドロス氏を攻撃したことを極めて恥ずかしく思う。台湾人を代表してテドロス氏に謝り、許しを乞う」というものですが、いずれも中国に拠点を置くアカウントから発せられたようだとしています。

テドロス氏は8日、新型中国ウイルス感染症(COVID19)の対応を巡りオンライン上で3カ月にわたり台湾からの攻撃の標的になっていると述べましたが、台湾の関与を示す証拠は何も示しませんでした。これに対し、台湾の蔡英文総統はテドロス氏の主張に「強い抗議」を表明するとともに、同氏に台湾訪問を呼び掛けました。

台湾はWHOなど国連機関への加盟を長く求めていますが、台湾を領土の一部と見なしている中国が反対し続けています。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、台湾は新型中国ウイルスの感染拡大を他のアジア諸国・地域よりうまく封じ込めており、10日時点で確認症例数は約380件です。ちなみに、これを10万人あたりの感染者数でみると,1.59人です。驚異的な少なさです。

中国国務院台湾事務弁公室はウェブサイトに同日掲載した声明で、蔡政権は「うそを並べ憎悪をあおる」ことをやめ、ウイルスとの闘いに焦点を絞るべきだとコメントしました。

これでは、先程も述べたように、中国が台湾に対してマスクや、防護服の提供、医療チームの派遣などで台湾に微笑外交を展開しようとしても全く無理です。逆に「自分の頭の上の蝿を追え」といわれてしまいそうです。

ちなみに、日本も台湾よりは、感染者数の数は多いですが、それでも10万人あたりに換算(感染者数➗人口✖10万)すると、5.6人(4/11現在)です。台湾は、1.59人です。これは、米中や他の先進国と比較すれば、極端に少ないです。中国は人口も約14億人と多いので、10万人あたりでは、一応6人程度ですが、中国統計は全くあてにならないので、この数字は無意味です。

韓国もひところは、感染者数が拡大してしまいましたが、それでも最近は収束しつつあり、11日時点では、10万人あたりの感染者数は19.4人です。これも、他の先進国から比較するとかなり少ないほうです。

ちなみに、なぜ10万人あたりでみるかといえば、無論人口の多い少ないで、その深刻度は異なってくるからです。10万人あたりでみると、感染者が一番多い都道府県は東京ではなく、福井県です(下表参照)。


北朝鮮はどうなのかは、わかりませんが、いずれにしても、台湾、韓国、日本に関しては、中国は「消防士のふりをする放火犯」のように、中国ウィルス関連で、微笑外交を展開するわけにもいきません。

中国自身は、自国の被害の程度を熟知しているでしょうから、近隣の国々では微笑外交もままならないのです。だかこそ、被害がかなり大きかったEU等で微笑外交を展開しているのでしょう。

もし、台湾や日本がヨーロッパや、米国なみに被害が大きかったとすれば、今頃微笑外交で、台湾、日本、韓国などで、存在感を増していたかもしれません。その後には、様々な方法を駆使して、台湾、日本、韓国を取り込みに走ったかもしれません。恐ろしいことです。

今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になりました。

もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。

しかし、台湾は、日米の支援などではなく、独力で封じ込めに成功しました。これは、その後の世界に大きな影響をもたらすことでしょう。

冒頭の記事では、「新型中国ウィルスによって国境が封鎖された南米ペルーで足止めされた日本人観光客29人を、台湾政府のチャーター便に乗せてくれた」とありますが、これは3月29日のことです。

日本もすかさず、台湾におかえしをしています。

新型ウイルスの感染拡大防止のため都市封鎖を実施しているインドから、台湾人12人が現地時間4月1日夜、日本航空(JAL)の臨時便で出国し、2日早朝に東京に到着したことを台湾の外交部が2日、明らかにしました。

  都市封鎖を実施しているインドから、台湾人12人が現地時間4月1日夜、
  日本航空(JAL)の臨時便で出国し、2日早朝に東京に到着

会見を行った欧江安報道によると、現地に滞在する台湾人から、駐インド代表処(大使館に相当)に対し帰国支援を求める問い合わせがあり、代表処が在インド日本国大使館、日本航空などと調整を行い、日本政府が手配する臨時便に同乗できるようになったとのことで、「外交部として心から感謝する」と日本や関係者に謝意を表明しています。なお、東京に到着した12人は、すでに台湾に帰国されています。

日台が、それぞれ独力で、現時点では中国ウイルスの囲い込みに成功していること、日台のこうした友情が、これからの世界を良い方向に変える原動力になるかもしれません。

後は、米国が一日もはやく中国ウイルスから立ち直り、台湾を強力にサポートし、EUに手を伸ばそうとする中国を牽制していただきたいものです。

そうして、このブログにも何度か掲載したように、米国と比較して、日本の経済対策があまりにお粗末です。今のままでは、リーマン・ショック時に、震源地の米国や、その悪影響を直に被った英国が素早く回復したにもかかわらず、日本だけが一人負けになった状況を繰り返すことになりかねません。

この状況では、中国ウイルス後の世界秩序の大きな変更の先頭に米台と同じスタート地点に立つことができないかもしれません。それは、日本だけの損失ではなく、中国を有利してしまうという大きな損失を招く恐れがあります。

そのようなことにならないように、安倍総理は、減税、追加経済対策、憲法改正などを公約にして、はやく解散総選挙を実施して、大勝利をして、維新の党とともに、中国ウイルス収束後におこる、世界秩序の大変更にリーダーシップを発揮できる体制を築くべきです。そうして、台湾なみに、はやく日本も中国ウイルスを収束させるべきです。

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2020年3月24日火曜日

新型コロナで首都封鎖!?:小池都知事:自粛疲れとリスクコミュニケーションの心理―【私の論評】カタカナ英語は、会議・打ち合わせでは絶対に使うな(゚д゚)!

碓井真史 | 新潟青陵大学大学院教授(社会心理学)/スクールカウンセラー

新型ウイルス肺炎の世界流行で3/23に行われた小池都知事の会見

首都封鎖。インパクトのある言葉です。

■首都封鎖!? 東京封鎖!? 小池都知事

「首都の封鎖あり得る」。インパクトのある言葉です。オリンピック延期容認につづき、都知事の言葉として注目が集まっています。
東京都の小池知事は、新型コロナウイルスの大規模な感染拡大が認められた場合は、首都の封鎖=ロックダウンもあり得るとして、都民に対し、大型イベントの自粛などを改めて求めました。
 「この3週間オーバーシュートが発生するか否かの大変重要な分かれ道であるということです」(小池百合子 東京都知事)出典:新型コロナ、小池都知事「首都の封鎖あり得る」:TBS 3/23
■新型コロナウイルス感染への適切な不安、正しく怖がる

私たちは、「適切な不安」を持たなくてはなりません。よく言われるように「正しく怖がる」です。

もしも不安がなければ、どんなに危ない道も用心しないで走って転んでしまいます。不安が全くなければ、試験勉強もしないし、ドアに鍵をかけることもなくなってしまいます。これでは、生活していけません。

ただし、不安は私たちの心を蝕むこともあります。試験に落ちる不安が高まり過ぎれば、かえって試験勉強に手がつきません。試験本番では上がってしまって、実力を発揮できません。不安な状態が長く続けば、心も体も病気になってしまいます。

不安が高くなりすぎると、動けなくなることもありますし、暴走してしまうこともあります。これでは困ります。

必要以上に人々を怖がらせてはいけませんし、油断させてもいけないのです。

■自粛疲れとリスクコミュニケーション

正しい行動のためには、適切な「リスクコミュニケーション」が必要です。専門家や政治家のメッセージが、正しく人々に届かなければなりません。

世間では、「自粛疲れ」などという言葉も出てきました。テレビも新聞も、毎日毎日コロナコロナでは、気が滅入ります。客は減るし、景気は悪い、仕事もひま。こんな状態がいつまでも続いては困ります。

学校の生徒たちは、突然の休校、部活もなし。カラオケもダメだと言われるし、繁華街に出ると白い目で見られることもある。これでは、息が詰まります。

人の心も体も、適度に活動するようにできています。活動が制限され、人との交流が制限されれば、よくうつ状態が出たり、子供若者などはイライラし始めます。

また、ヨーロッパなどと比べると、日本の生活は安定しています。医療崩壊も起きてはいません。

自粛生活にも疲れたし、ストレスはたまるし、もうそろそろ活動を再開しても良さそうだと、少なくない日本人が感じ始めています。

繁華街や観光地にも、少し人が戻ってきたようです。外国人がいないので空いていて、今がチャンスといった宣伝もあるようです。

大阪のライブハウスですら、若い人が集まっているところもあります(地下アイドルのライブ活動などが再開したと大阪の人に聞きました。決してライブハウスが悪者ではないのですが)。

公園などに行くことは、良いことでしょう。必要以上の自粛はよくありません。経済が死んでも困ります。本当に正しい行動は何なのかは難しいのですが、疲れや油断が出てきた面はあるかと思います。

この現状で、適切な緊張感を保つための、「首都封鎖」の発言とも見られます。効果はあるでしょう。

政治家は、必要に応じて、人々を安心させたり、また用心させたり、覚悟させたり、勇気を持たせたりしなくてはなりません。政治家による扇動ではいけませんが、ウイルスに関する正しい知識に基づいて、必要なメッセージを届けることが大切です。

事実や数字だけでなく、気持ち、感情を伝えることが大切です。人は数字では動かず、感情で動くからです。

■新語、カタカナ言葉の問題とリスクコミュニケーション

以前の新型インフルエンザ騒動のときに、一般の人も知った新語が、「パンデミック」や「フェーズ」です(「フェーズ」は、もう忘れた人もいるかもしれません)。

今回の新型コロナウイルスに関しては、パンデミックに加えて、「クラスター」「オーバーシュート」「ロックダウン」です。

マスコミも、私たちも、新語、カタカナ語が好きなので、これらの言葉は注目されやすい良い面があります。

一方、カタカナ言葉は苦手な人もいます。

私は、新型インフルエンザ騒動の時に18を対象に調査しました。これだけ大報道がされていても、「パンデミック」の意味のわからない若者が数パーセントはいました。

また意味は分かったとしても、漢字よりもかえって実感が持ちにくい場合があることも忘れてはいけません。

感染症以外の日常生活でも、アルファベット表記やカタカナ言葉がスマートでカッコ良くても、結局日本語、漢字が、最も直感的に理解できることは、よくあることです。

新語カタカナ語は、時には日本語、漢字以上に、不気味な不安感を呼び起こすこともあります。また時には、カタカナ言葉の意味がわからなかったり、本来感じて欲しい適切な不安感情を導きにくいこともあります。

今回の記事の見出しも、「首都ロックダウン」ではなく「首都封鎖」でした。

新語やカタカナ言葉が悪いわけではありませんが、きちんと正しいメッセージが伝わるリスクコミュニケーションのためには、様々な工夫と配慮が求められています。

本当に首都封鎖などにならないように(本当に首都ロックダウンなどにならないように)、

怖がりすぎず油断せず、新型コロナウイルスと戦っていきたいと思います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
新語解説
  • パンデミックとは:パンデミック(pandemic)は「広範囲に及ぶ流行病」「感染症の世界的な流行状態」のことです。
  • フェーズとは:フェーズ(phase)とは、局面、一側面、位相、段階、「変化する過程の一区切り」です。フェーズは、分野業界によって使い方が異なりますが、医療業界では、 パンデミックの警戒段階を「フェーズ」で表したりします。
  • クラスターとは:クラスター(cluster)とは、房、集団、群れの意味で、これも分野や業界によって使い方が異なりま。心理学の人間だと統計手法の「クラスター分析」を思い浮かべます。感染症に関しては、「小規模な患者の集団」です。
  • オーバーシュートとは:オーバーシュート(over shoot)とは、これも分野や業界で意味が違って、経済分野では為替や株価が過剰反応して行き過ぎたことを指します。感染症に関していえば、「爆発的患者急増」です。
  • ロックダウンとは:ロックダウン(lockdown)は、「封鎖」という意味ですが、IT分野ならセキュリティを強化するためにOSやアプリケーションの機能を制限する仕組みです。建物の内部の人を守るために外部の人が入れないようにするのもロックダウン。緊急事態に人の移動や情報を制限することもロックダウン。感染症で外出禁止もロックダウン。小池都知事は、「感染の爆発的な増加を抑え、ロックダウン(都市封鎖)を避けるために不便をお掛けするが、ご協力をお願いしたい」と呼び掛けました。
カタカナ言葉って、難しいですね。

【私の論評】カタカナ英語は、会議・打ち合わせでは絶対に使うな(゚д゚)!



最近は、確かにテレビ等を見ていると、「パンデミック」とか「クラスター」「オーバーシュート」とカタカナ英語が氾濫しています。これは、はっきりいいますが、良くない傾向です。

この良くない傾向に、真正面から警鐘を鳴らした人がいました。そうです、河野防衛大臣です。

「わざわざカタカナで言う必要があるのか」―。河野太郎防衛相は24日の記者会見で、新型コロナウイルスに関する用語として政府が「クラスター」や「オーバーシュート」、「ロックダウン」といったカタカナ英語を使っていることに対し、「分かりやすく日本語で言えばいい」と疑問を呈した。

河野氏は22日に自身のツイッターで、クラスターは「集団感染」、オーバーシュートは「感染爆発」、ロックダウンは「都市封鎖」にそれぞれ置き換えられると指摘。会見では「年配の方をはじめ、よく分からないという声を聞く」と語り、厚生労働省などに働き掛ける考えも示しました。

これに関し、菅義偉官房長官は会見で「国民に分かりやすく説明することは大事だ」と述べた。

このような河野防衛大臣の発言があったことを知ってか、知らずか、23日に小池百合子東京都知事は、会見で「ロックダウン」、「オーバーシュート」という言葉を使っていました。

小池知事は、今回に限らず、元からカタカナ英語を多様する人です。東京都知事選の頃から多様していました。それについては、このブログでも解説したことがあります。

詳細は、当該記事をご覧いただくものとして、以下に当該記事から、画像を以下に貼り付けておきます。


小池知事に限らす、現状ではコロナウイルス関連で、日々「カタカナ英語」が流れています。この風潮が、止むどころか、どんどん広まる傾向があったので、ついに河野太郎防衛大臣にまで言われてしまったというところだと思います。

河野氏は英語ができますから、これまでは堪え難きを堪えていたのでしょうが、ついに「我慢できずに」言ってしまったのでしょう。いくらなんでも、おかしすぎです。

常識的な人なら、ほぼ全員が同じことを思っていたと思います。何しろ、「クラスター」から始まって、このコロナ禍の真っ最中に、次から次へと政府から「カタカナ英語」の数々が発せられる必然性があるのでしょうか。

 しかもそれらは、ほとんどが「なにやら妙な使いかた」をしているカタカナ英語ばかり、です。ちなみに、これらの言葉は、「新語」とされていますが、英語自体の言葉としては、新語でも何でもなく、使い古された言葉です。

しかし、新聞記事などでは、記事中に「新語」として、説明や注釈やらがついています。

しかし、「それだけで」十二分に説明が可能なのですから「クラスター」は「感染者小集団」で良いではありませんか。私自身は、「より正確な意味が伝わる」はずの、日本伝来の「漢語的表現」で十分用が足りると思います。

「クラスター」は英語のclusterのカタカナ表記で、辞書を引けば、「花、果実などの房やかたまり」、「動物、人、物などの群れ、集団」というように書かれています。

これまで日常的な英単語としてはあまり知られていなかった「クラスター」ですが、実際のところは、今回の感染症疫学的な用語としてだけでなく、様々な分野で使われています。

たとえば、日本の大学では、関連性のある学科の科目をまとめたものを「クラスター」と称するのがトレンドになっています。日本語では「科目群」ということですが、専門分野重点型、あるいは分野横断的なクラスターを作って、学生が深く、幅広く学べるようにするという「クラスター制度」を導入する大学が増えています。また、研究者の幅広い取り組みのために、関連分野を統合して「研究クラスター」という共同研究体制を作っている大学もあります。

そのほか、次のような分野でも「クラスター」が用いられています。

【天文学】

星の観測がお好きな方はよくご存知だと思いますが、星がまとまって集団となっているものを英語ではstar cluster(「スタークラスター」)と言います。日本語にすると「星団」です。有名な「すばる」もスタークラスターで、英語ではthe Pleiades star cluster(プレアデス星団)。

肉眼でも6個ほどの星が見えますが、望遠鏡では100個以上の密集した星々を見ることができるのだそうです。こうした数百ほどの星がまばらに集まっている星団をopen cluster(散開星団)、数万個以上の星が丸く球状に集まっている星団をglobular cluster(球状星団)と言います。

【人文社会学一般】

人々の嗜好やライフスタイル、意見などについて、様々なアンケート調査がよく行われますが、その結果を分析するのに「クラスター分析」(cluster analysis)が使われることがあります。

統計解析の手法の一つで、簡単に言えば、雑多な集団の中から似たもの同士をまとめて「クラスター」にして対象を分類するテクニックです。商品アンケートなどの調査データをマーケティングに利用するのに、このクラスター分析がよく用いられます。

この手法は、人文科学だけではなく、生物学でも系統樹を作成するときなどに、用いられます。

【IT】

「クラスター」はコンピューター関係のIT用語でもあります。色々なことを指して使われていますが、複数のコンピューターを連結させた一つのユニットを「コンピュータークラスター」(computer cluster)、あるいはもっとシンプルに「クラスター」と呼びます。

クラスター化してシステムを運用することで、1台のコンピューター以上の処理能力などの高い性能を発揮することができるだけでなく、クラスター内のコンピューターのどれかが故障や障害で停止しても、システム全体を継続して稼働させることができるので、システムの安定性強化につながります。

【英語】

「クラスター」は言語学でも使われ、英語に限らず、単語中の母音の連続をvowel cluster(「母音クラスター」の意味)、子音の連続をconsonant cluster(「子音クラスター」の意味)と言います。日本人の英語の発音の問題でよく取り上げられるのが、子音クラスターについてです。

英語には子音が2つ、3つと続く単語がたくさんあって、子音連結とも言われますが、日本人はこうした子音クラスターを含む単語を発音するのに、連続する子音の間にありもしない音をつけて発音してしまいがちなのです。

わかりやすい例をあげると、電車のtrainは、単語の最初にtrと2つ子音が続きますが、カタカナでトレインと書くこともあって、trの間にはないはずの母音oをつけて「ト(to)」と発音してしまいがちです。日本語と英語の構造の違いによるところが大きいのですが、日本人はこうした「子音クラスター」の発音には注意が必要です。

【軍事】

国際社会で、「クラスター爆弾」(cluster bomb)の使用の是非が問われています。クラスター爆弾は多数の小型の爆弾(子爆弾)を内蔵する爆弾で、空から投下されるか、地上からロケット弾や砲弾として発射され、空中で炸裂して子爆弾を広範囲にまき散らします。無差別に殺傷する能力が高い非人道的な兵器として、使用禁止を求める声が集まっています。

ほかにも、化学分野で「金属クラスター」の研究が、物理学分野で「量子クラスター」の研究が、それぞれ盛んになってきています。ある意味、学術の世界では「クラスター」ブームが起こっているといっても差し支えない状況があります。

このように、色々な分野においてそれぞれの意味でよく知られている「クラスター」なのですが、この度の新型コロナウイルス感染拡大で、感染者集団としての「クラスター」は、一気に私たちの日常用語になった感があります。

しかし、私としては、感染者集団としての「クラスター」は、わかりやすく「小集団」などとすべきと思います。元々、「クラスター」には感染などという意味はありません。

実際、新聞やテレビを見ていると、「クラスター」を「感染者小集団」の意味で使ったり、「集団感染」の意味で使ったりしています。これは、無用な誤解を生みかねません。

そもそカタカナ英語の多様は、誤解を招く元です。
私たちのミッションを考えると社員一丸となって、コンセンサスをとらなければ、モチベーションは下がってくると思うんだよね。だから、何から行うかプライオリティをつけそれをみんなにコミットメントさせればいいんじゃないかなぁ。
このようなカタカナ英語の会議は危険です。

例えば、「モチベーション」という言葉について考えてみましょう。あなたは、このー「モチベーション」をどのような意味で解釈して使っていますか?以前、ある上司と部下が「モチベーション」について話をしていて、言った言わないと話がかみ合わないことがありました。「モチベーション」は、どういう意味で使われていますか?


上司は、「動機づけ」と解釈し、部下が自ら企画の提案をしてくれるきっかけになればと考えていました。部下は、「やる気」と解釈してました。お互い「モチベーション」の解釈が違っていることが判明したのです。これが複数人数での会議だったらどうでしょうか?解釈の違いに気づかず、話はかみ合わない事態を引き起こします。

カタカナ英語を頻繁に使うことに何の得もありません。先にあげたカタカナ英語の会議は、以下のような日本語で十分に意味が通じるのです。
私たちの使命を考えると社員一丸となって、合意をとらなければ、やる気は下がってくると思うんだよね。だから、何から行うか優先順位をつけそれをみんなに約束させればいいんじゃないかなぁ。
この表現であれば解釈の相違は低くなります。しかし、日本語ですら、育った環境や、学歴、言語能力などにより、違って受け取られることもあるのです。だから、日本語でもできるだ誰にでもわかるように、平易で誰にでも知られている言葉を用いる必要があるのです。ましてやカタカナ英語を多用するようなことがあれば、そもそも会議など成り立たないのです。

やはり、カタカナ英語は使わないほうが良さそうです。どうしても必要なら語義をはっきさせる必要があります。最初に必要な意味づけをしておくことで誤解は防ぐことができます。しかし、そもそも、使用の是非について吟味をする必要性があります。

最後にはっり言います、カタカナ英語などを多用する人は馬鹿です。

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2020年3月9日月曜日

景気大打撃は確実だが…新型コロナからの「日本復活の秘策」はこれだ―【私の論評】日本は的確な経済・金融政策を実行し、年間自殺者2万以下の現状を維持せよ(゚д゚)!

景気大打撃は確実だが…新型コロナからの「日本復活の秘策」はこれだ

経済政策こそが生命を守る

各国の感染者数「最新の状況」

先週、海外ニュースや海外市場は、新型コロナウイルスの世界的な広がりで大混乱だった。

先週の本コラムでは、各国の感染者数と武漢との距離を表すために次の図を出したが、国別の感染者数では韓国が突出しており、多い順にイタリア、イラン、日本であった。


今週これを更新すると、次の図になる。


感染者数で韓国、イラン、イタリアが図抜けているが、フランス、ドイツ、スペインが日本の上になっている。

相変わらず日本のマスコミは、日本の感染者にクルーズ船の乗客を含めて、過大な数字にして報道しているが、クルーズ船の感染者数はWHOの統計上も日本の感染者ではない。日本とクルーズ船の数字を合わせて報じるのは、誤報ともいわれかねない。

現在はアメリカのカリフォルニア沖にクルーズ船があり、船内感染が起きている模様だが、この数字をアメリカの感染者数に含めて報道したら、アメリカ大使館から抗議が来るだろう。それくらい、日本のマスコミ報道はおかしい。

不安が引き起こす「市場の混乱」

ちなみに、感染者数ではなく人口10万人あたりの感染者率でみると、次の図のようになる。

日本は感染国とは言えないほどの数字だ。


なお、中国の発表する感染者数が増えていないので「すでに中国では終息している」という報道もある。

しかし、中国の統計データは先月に3度も統計変更があったが、通常は変更後と変更前の複数時系列が発表されるべきところ、そうした措置は見当たらず、信用ができない。習近平主席の発言にあわせて統計数字が作られているふしもある。筆者の推計値とも乖離があるので、信用していない。


いずれにしても、世界中が新型コロナウイルスを恐れている。新型コロナウイルスの致死率は、かつてのSARSほど高くなく、例年のインフルエンザより少し高い程度といっても、人々は恐れる。1年もすればワクチンができると言っても、やはり恐れる。それが、市場の混乱を引き起こしている。

「恐怖指数」は同時多発テロ並み

筆者は仕事柄、欧米のニュースを日頃見ているが、連日新型コロナウイルスの話ばかりだ。スポーツ番組でも、7月の東京五輪ができるかどうかという話題だ。プロ野球や大相撲が無観客試合になったことも報じられている。

こうした雰囲気を受け、アメリカの株式市場は乱高下だ。

FRBは、金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)について、定例の17、18日を待たず3日に緊急で開催し、政策金利0.5%の引き下げを行った。

これに対して株式市場は反応せず、ダウ平均は785ドル安だった。それほど、新型コロナウイルスはアメリカ人にとって脅威なのだろう。


アメリカ市場では、今後30日間の米株式市場の予想変動範囲を算出し、それを「恐怖指数」と呼んでいる。

過去のリーマンショック時には90近くまで上がった。NY同時多発テロ、アジア経済危機、ギリシャ危機などの時には、50近くまで上昇した。今回のコロナウイルス騒ぎでも、2月末に50近くまでにあがった。

この意味で、今回はリーマンショックほどではないが、過去の大きな経済危機並みに、アメリカの投資家心理に影を落としていると言えるだろう。

トランプ大統領は、コロナウイルスを過度に心配している。11月に大統領選が控えているいま、対応に不手際があると、再選が危うくなるからだ。こうした危機管理は国民の生命に関わる話なので、政治家は細心の注意を払うのだ。

ようやく尻に火がついた

実は日本でも、アメリカの恐怖指数と同様の数値「日経平均VI」がある。市場が予想する日経平均株価の将来1ヵ月間の変動の大きさ(ボラティリティ)を表す数値だ。


これを見ても、過去10年間で株式市場は最もナーバスになっていることがわかる。

現在は、安倍政権にとっても最大の試練になっている。どこの国であれ、危機管理ができない政府は国民から見捨てられるのが運命だ。

本コラムでは、安倍政権の初動、特に1月28日の感染症指定のミスを厳しく批判してきた。これを上手くこなせなかったために、水際阻止ができず、結果として中国からの全面的な入国制限やクルーズ船入港阻止もできなかったからだ。

ただしここにきて、ようやく安倍政権の尻に火がついたようだ。習近平主席の訪日延期は当然だ(2月10日付筆者コラム「新型コロナウイルスで『習近平訪日は中止』か…状況はかなり厳しい」)。

習近平主席の訪日延期がようやく決まったのが3月5日。これは、天皇謁見は30日前までに申し込まねばならないという「30日ルール」があり、さすがに1ヵ月前には予定を立てざるを得なかったのだろう。

急に始まった対策の数々

そして習氏の訪日延期発表の3時間後に、ようやく中国と韓国からの全面的な入国制限を実施することが決まった。遅きに失したとはいえ、やらないよりマシだ。

その後、安倍政権は吹っ切れたようだ。次々に対策が出てきた。

筆者は様々なメディアにおいて、日本政府がやるべき対策を述べてきたが、完全ではないものの、安倍政権はそれらの対策を矢継ぎ早に決定している。

筆者は3月4日、「生活用品の買い占め対策には、買い占め売り惜しみ防止法や古物営業法を使え」と言った。そうしたら翌5日、〈マスクの買い占め ネット転売禁止へ 政府総合対策取りまとめ〉と報道された。

買い占め防止には現行制度でも様々な方法があり、役人出身の筆者にとって対策をあげるのは難しくない。重要なのは、それを行う政治的な意思である。こうした対策について、国会議員からも質問主意書が出ている(2月10日、「マスクの買い占め・転売行為に対し、物価統制令、国民生活安定緊急措置法、買い占め防止法等を活用することに関する質問主意書」)。

政府は2月21日に「そうした状況でない」と答弁していたが、3月5日には一転して対応を始めた。安倍政権も追い込まれた上の決断だ。

残すは「消費減税」か

また新型コロナウイルスにより打撃を受けている旅行業界、観光業界、イベント業界、飲食業界などでは、緊急融資制度が必須になる。中国人観光客が来ず、国内のイベントも3月末までは中止が相次いでいるので、関係業界の経営は深刻である。

筆者は緊急融資制度について、「マイナス金利を活用して行うべき」と3月2日から言っている(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1234395211410788352https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200306/dom2003060004-n1.html)。

すると3月7日、〈中小・小規模事業者などに実質無利子・無担保融資〉という報道があった。これは、マイナス金利とはいかないが、それでも従来の緊急融資制度より一歩前進するものだ。

これまで筆者が提言した政策で、残されたものは「消費減税」である(「日本経済『コロナ恐慌』回避への“劇薬政策”投入あるか 日銀談話の影響は限定的 識者『10兆円補正』『消費減税』提案」)。

5月18日に1-3月期GDP速報が発表されるが、マイナスになるのは確実である。10-12月期もマイナス(3月9日に2次速報の公表)で、2期連続のマイナスだろうから、2020年度補正予算が必要となっているはずだ。

幸いにも、4月の習近平主席訪日が延期となったので、国会日程はかなり楽だ。もともと4月以降に通すべき重要法案もあまりないので、補正予算編成の絶好のチャンスだ。

経済政策は国民の生命を守る

政府は、2年を限度に新型コロナウイルスを新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に加える改正案を準備し、10日に国会に提出し、13日の成立をめざす。そこでは、財政措置は最小限度のはずなので、本格的な景気対策は4月以降になるだろう。そこで、何とか、新型コロナウイルスがもたらす景気後退を防がなければいけない。

経済政策こそ、国民の生命に関わる問題である。

公衆衛生学者デヴィッド・スタックラーと医師サンジェイ・バスが著した『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』という興味深い書がある。いくつかの事例から、不況や経済危機における政府の政策対応如何により、人々の健康状態、ひいては生死に大きな影響が及ぼされるという主張だ。経済政策はどんな薬、手術、医療保険よりも命に関係するという彼らの言葉を、経済政策を研究する筆者も首肯したい。
新型コロナウイルスには、経済政策までやって初めて打ち勝てるのだ。
【私の論評】日本は的確な経済・金融政策を実行し、年間自殺者数2万未満の現状を維持せよ(゚д゚)!
日本では今、武漢肺炎対策としての経済対策が話題になっています。現状で世界中の国々が、防疫によりウイルス封じ込めに躍起になっています。そうして、このウイルスの蔓延が終息しようとしまいと、経済に与える悪影響は免れることはできず、これに対する経済対策が実行されることになるでしょう。

いずれの国でも、ウイルス対策に限らず、不況に陥ると経済政策をどのようにするべきか、議論されます。しかし、結局のところ、どのような政策が良いのでしょうか。そして、その決断を、イデオロギーや経済理論だけを頼りに行って、良いのでしょうか。

このような疑問に答えてくれるのが、冒頭の高橋洋一氏が紹介している『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』という興味深い書籍です。

『経済政策で人は下か?』の表紙

世界規模の不況に陥ったとき、国ごとに経済政策は異なり、それによって国民の運命も異なる方向に動かされてきました。公衆衛生学者と疫学者である本書の著者は、そのことを利用して政策の優劣を比較しました。

つまり、過去の各国の政策選択とその結果のデータを、世界恐慌からソ連崩壊後の不況、アジア通貨危機、そしてサブプライム危機後の大不況まで調査し、比較したのです。

ソ連崩壊後の不況に関しては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本経済は後半に回復する 増税スキップ&大型景気対策で中国・EUの不安払拭―【私の論評】殺人政策である10%増税見送りは当然!まともな経済対策で日本は再度成長軌道に乗る(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとて、この記事にはロシアの平均寿命の推移(上グラフ)を掲載しました。

このロシアの例では、ソ連崩壊後の不況においては、ロシア人男性の平均寿命が57.6にまで下がったことがあったことがわかります。経済政策のまずさによっては、人は死ぬのです。

比較の指標は、国民の生死です。政策の違いによって、国の死者数は増えたのか減ったのか、健康状態や平均寿命などがどう変化したかを比較しました。経済政策は、国の借金返済や構造改革、景気刺激など、さまざまな目的で行われますが、そもそも国民に死を強いるようでは元も子もありません。結果はどうだったのでしょうか。

実は数多くの人が、緊縮策の悪影響によって死んでいたのです。

著者らの研究によれば、不況下で危険な「緊縮政策」を選択した影響で増加する死亡数は、まさに驚くべきものです。最も悲惨なのは、ソ連崩壊後のロシアで、1990年代に経済政策の失敗により数百万人の男性が死んだ(主に自殺とアルコール関連の死亡)と考えられるといいます。

アジア通貨危機後にIMFに緊縮財政を強いられたタイでは、感染症対策支出を削らされたせいで、感染症による死亡率が大幅に上昇しました。緊縮財政をとったギリシャでは、これも対策費の削減によりHIV感染が拡大したほか、医療費カットで医療制度が崩壊し国民の健康状態はひどく悪化しました。

著者たちは次のように述べています。

民主的な選択は、裏づけのある政策とそうでない政策を見分けることから始まる。特に国民の生死にかかわるようなリスクの高い政策選択においては、判断をイデオロギーや信念に委ねてはいけない。…正しくかつわかりやすいデータや証拠が国民に示されていないなら、予算編成にしても経済政策にしても、国民は政治家に判断を委ねることができない。その意味で、わたしたちはこの本が民主化への第一歩となることを願っている。

本書をきっかけに、政策論争がイデオロギーを離れ、データに基づいたものになることを願っています。

以上では、ロシアなどの例をあげていますが、日本でも、経済政策のまずさで人が死んだといえるエビデンスがあります。

厚生労働省と警察庁は1月17日、2019年の全国の自殺者数(速報値)が前年より881人少ない1万9959人となり、10年連続で減少したと発表しました。

速報値が2万人を切るのは初めてです。3月に発表される確定値では、警察による捜査で自殺と判断された数百人が加わる見通しが、統計を開始した1978年以降で最も少なかった2万434人(81年)を下回る可能性が高いといいます。


このグラフで着目すべきは、自殺者が3万人台を超えていた期間です。この期間は、ほとんど全期間にわたって日銀が金融引締を実施した時期にあたります。この期間には、さらに追い打ちをかけるように、増税という緊縮財政が繰り返し行われました。

そのため、平成年間のほとんどの期間、日本はデフレと円高に悩まされました。この時期に自殺者が3万人を超えていたのは、やはりこうした経済政策による悪影響もあったとみるべきでしょう。

2014年には、消費税増税をしていますが、金融緩和政策は継続されていたので、雇用は改善され続けました。雇用が良くなったこと、政府の対策などが奏功してこのような結果になったのでしょう。

しかし、現在では10%への消費税増税が実施された他、武漢肺炎による経済の悪化もあります。せっかく、自殺者が2万人を切るような良い状況になったのですから、政府はこの傾向を今後も継続するため、的確な経済対策を実行していただきたものです。

自殺者の数をみていると、現状の武漢肺炎による死者よりもはるかに多いことがわかります。

「経済政策はどんな薬、手術、医療保険よりも命に関係する」という言葉の重みを感じます。

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日本経済は後半に回復する 増税スキップ&大型景気対策で中国・EUの不安払拭―【私の論評】殺人政策である10%増税見送りは当然!まともな経済対策で日本は再度成長軌道に乗る(゚д゚)!

西尾幹二氏、日本の危険に警鐘鳴らす「カナリア」 誇り奪う自虐史観と戦う―【私の論評】西尾幹二氏の業績とその影響力:日本の歴史教育と文化を守るために

西尾幹二氏、日本の危険に警鐘鳴らす「カナリア」 誇り奪う自虐史観と戦う まとめ 西尾幹二氏は、自虐史観や不当な歴史教育に反対し、「新しい歴史教科書をつくる会」を設立し、日本の誇りを守るために警鐘を鳴らした。 彼は安易な移民受け入れにも反対し、1980年代からその問題に疑問を投げか...