2018年4月20日金曜日

トランプ大統領が金正恩委員長に「クビ!」を宣告する日―【私の論評】北朝鮮問題は、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれない〈その3〉(゚д゚)!


かつてトランプ大統領は"Your're fired(お前はクビだ)"というリアリティー番組に出演していた
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 かつてホストをつとめたリアリティ番組で「You’re fired(お前はクビだ)」という決めゼリフが人気を集めたドナルド・トランプ米大統領は、政治もビジネスと同じセンスを曲げずに突き進んでいるように見える。6月上旬までに予定されている史上初の金正恩委員長との米朝首脳会談は、その“トランプ流”外交でどのような展開をみせるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が分析する。

* * *

 “トランプ流”の交渉とは何か。それは極めて単純だ。トランプ大統領は“不動産業を営むローカルなファミリー企業の社長”であり、一発勝負のネゴシエーターである。だから北朝鮮との交渉でも過去のノウハウを応用し、自分が行って“小さなロケットマン”に一発かませば、相手は言うことを聞くはずだ--という発想なのである。

 彼は、前任者が成し得なかった北朝鮮の非核化を自分のディール(取引)で実現した、と今年11月の中間選挙でアピールしたいだけなのだ。

 対する金正恩委員長は、韓国特使団との会談で「非核化の用意がある」と言明したとされる。これをトランプ側は、北朝鮮が核・ミサイル開発を停止し、不可逆的に核兵器を放棄するという意味だと考えている。

 だが、北朝鮮側の「非核化」の対価は、在韓米軍の撤退だろう。つまり、自分たちが核・ミサイル開発をやめる代わりに、核保有が想定される在韓米軍も同時に撤退するということだ。あるいは、中国と歩調を合わせて、非核化は米韓合同軍事演習の中止や米軍削減とバーターだと主張する可能性もある。

 実際、金正恩委員長は習近平主席との会談で「米韓が我々の努力に善意で応え、平和の実現に向け段階的な措置をとれば非核化の問題は解決できる」と主張したと報じられている。しかし、そんな条件をトランプ大統領が飲むはずがない。

 ◆“予測不能”ゆえ「瓢箪から駒」?

 そういう状況下でトランプ大統領と金正恩委員長が会えば、交渉は必ず決裂する。それどころか、会談場所がどこになるにしろ、トランプ大統領と会うことで金正恩委員長の居場所は特定できるので、トランプ大統領は交渉が決裂したら即、金正恩委員長や北朝鮮の核関連施設などをピンポイントで先制攻撃する可能性もある。いわゆる「鼻血(ブラッディ・ノーズ)作戦」だ。そのリスクに対して北朝鮮側が警戒を強めれば、米朝首脳会談はお流れになる。

 それでも今回、北朝鮮が南北首脳会談や米朝首脳会談に向けてアクションを起こしている背景には、中国を含めた経済制裁や、韓国で「死の白鳥」と呼ばれているB-1B爆撃機などの軍事的脅威がある。

B-1B爆撃機

 また、北朝鮮国内では、金正恩委員長は父・金正日総書記にも増して孤立無援状態にあるとみられている。だから異常なほど疑心暗鬼になり、事実上のナンバー2だった叔父の張成沢・前国防委員会副委員長を重機関銃で処刑したのをはじめ、側近を次々に粛清して常に居場所を変えて警戒しているとされる。

 北朝鮮側がスウェーデンやフィンランドと接触したことから、板門店、平壌、ウランバートル、北京などに加えて北欧の両国が米朝首脳会談の開催場所として取り沙汰されたが、北朝鮮の飛行機で北欧まで行くのは難しいし、側近のクーデターを恐れている金正恩委員長が何日間も国を空けることは不可能だろう。となれば、北欧との接触は北朝鮮が主張する「体制保障」のため、金正恩ファミリーの「亡命申請」、またはその可能性を探ったとみるべきではないか。

 北朝鮮の「体制」は定義不可能であり、その「保障」とは“金王朝”の存続以外にないからだ。

 もし、南北間で平和条約が結ばれて人々の交流・往来が始まったら、北朝鮮国民は韓国との歴然とした経済格差を目の当たりにして、嘘をつき続けてきた体制への批判が噴き出すだろう。そうなれば、金正恩委員長は人民が蜂起して殺される前に国外逃亡するしかない。

 前述したように、不動産業を営むローカルなファミリー企業の社長にすぎないのに、世界最大のエネルギー企業エクソンモービルのCEOを務めたティラーソン国務長官をツイッターで“クビ”にしたのが、トランプ大統領である。オバマ前大統領なら、国務省による事前協議を通して予測可能な対応をしただろうが、トランプ大統領はそういったことを一切無視したディールを要求するはずだ。

 落としどころとしては、【1】非核化の履行を中国に監視させる【2】国連監視団を送り込む【3】アメリカ自身が監視団を駐在させる--などが考えられる。

 いわば“予測不能”なトランプ大統領だからこそ「瓢箪から駒」で、北朝鮮問題を一気に解決するかもしれない。つまり首脳会談が実現してもしなくても、トランプ大統領は自分が任命したわけでもない金正恩委員長に得意の「You’re fired!(お前はクビだ!)」を宣告し制裁を加える。それが金王朝の“終わりの始まり”になると思うのだ。

 「独裁政治は悲劇に終わり、衆愚政治は喜劇に終わる」と言われる。それは、ごく一部の例外を除いて歴史が証明している。いずれにせよ、金王朝が終幕を迎える日は、そう遠くないだろう。

 ※週刊ポスト2018年4月27日号

【私の論評】北朝鮮問題は、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれない〈その3〉(゚д゚)!

北朝鮮情勢に関す、大前研一氏の予測がどの程度あたるかは、わかりまんせんがそれにしても大いに参考になることはあります。

まずは、今年11月の中間選挙でアピールに関してですが、これはトランプ大統領はかなり気にしていることは確かです。もし、この時点で北朝鮮問題が解決したか、解決の見込みがたっていれば、中間選挙はかなり有利になるでしょう。

ここで、実際に議席数を増やして、共和党の議席数を伸ばすことができれば、議会運営はやりやすくなりますし、大統領再戦の道も拓かれることになります。

トランプ大統領としては、何としてもここで勝ちたいと考えるのは当然のことです。

2018年 中間選挙、注目の上院選

次に、金正恩が「非核化」の対価として、在韓米軍の撤退を求めることも十分あり得ます。そうして、これは金正恩の落とし穴になるかもしれません。

在韓米軍が撤退した後に行き着く先は、南北朝戦の統一です。これには、無論日米にとっては望ましくないことです。しかし、これはあまり報道されたり、識者が指摘はしませんが、中国・ロシアにとっても望ましいことではありません。

これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北京訪問の要人は金正恩氏―【私の論評】南北統一で核武装をした先進国なみの経済力を持った独裁国家が生まれることを習近平は懸念している(゚д゚)!
 

 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、南北統一が日米にとってだけではなく、中露にとっても望ましいことではないことを示した部分をこの記事から引用します。
金正恩が、南北統一朝鮮の独裁者なれば、中国と国境を接する朝鮮半島に、核武装をした先進国なみの工業力と経済力を持った独裁国南北統一朝鮮ができあがることになり、中国にとっては脅威です。 
無論、ロシアのプーチンにとっても脅威です。北朝鮮は貧乏な国ですが、南北統一朝鮮ともなれば、GDPは確実にロシアを上回ることになります。日米中露ともに脅威を感じる南北統一朝鮮は出来上がる前に、潰されて、半島に北朝鮮でも韓国でもないいくつかの中立的な国々をつくられてしまう可能性も多いにあります。
驚くべきことに、一般に大国とみられているロシアは、GDPでみると東京都より若干小さいという水準です。韓国はといえば、東京都とほぼ同水準です。

この南北朝鮮が統一すると、核兵器を有した先進国並の経済力を持った独裁国家が朝鮮半島に生まれることになります。そうして、この南北統一朝鮮は、韓国の工業力を引き継ぐことになります。

韓国の工業力と、北朝鮮の核開発が結びつけば、さらに核兵器の開発が進むことになります。そうして、北の兵力と韓国の通常兵器と兵力があわされば、核兵器と通常兵力があわさり、朝鮮半島に強力な軍事力に裏付けされた、先進国なみの国が生まれることになります。

これは、ロシアにとってはかなり脅威になります。これは、中国にとっても脅威です。特に、北朝鮮と接する中国のと東北地方(旧満州)は、朝鮮族も多く北朝鮮と結びつきが強いほか、この地域は経済的にも遅れていて、人民の不満がたかまっており、中国の火薬庫ともいわれている場所です。

中国からみれば、南北統一で朝鮮半島に強力な国家ができれば、それこそ朝鮮半島と東北地方が強い結びつきを持ち、東北地方が独立するなどということも考えられます。さらには、東北地方と南北朝戦の統一などということもになりかねません。

米朝会談で、金正恩が比較化の対価として、在日米軍の徹底を要求した場合、これはトランプ大統領は拒否することになると考えられます。そうなると、金正恩は撤回するかもしれません。しかし、一度要求したということで、トランプ大統領からは、金正恩は南北統一を目指していると受け取られることになります。

そうなれば、トランプ氏はTwitterに「金正恩はクビ」と書き込み、さらに制裁をきつくすることになるでしょう。それこそ、徹底的な海上封鎖と陸上封鎖をするかもしれません。

この封鎖は従来より苛烈なものになり、海上で臨検するなどは当たり前で、場合によっては武力攻撃を含むものになるでしょう。あるいは、機雷封鎖にまでエスカレートするかもしれません。陸上封鎖も、北朝鮮内の中国やロシアに通じる道路や鉄道を破壊するかもしれません。そうなると、北朝鮮はとんでもない状況になります。それこそ、石器時代に戻るかもしれません。

中国やロシアも、南北統一には脅威を感じているはずですから、この制裁にあからさまに反対することはないかもしれません。そうして、制裁逃れを積極的に支援することはないでしょう。

ただし、現在の北朝鮮では穀物などの食糧の自給はぎりぎりで何とかできているようですから、人民はぎりぎり生きていけるかもしれません。制裁で原油など枯渇するので、運搬手段がなくなり、人民の大部分を農林畜産業などに従事させるのと、輸送手段がなくても生きていけるようにするための大規模な強制移動が行われるかもしれません。しかし、ありとあらゆる不自由を強いられるわけですから、人民の不満は高まる一方になります。

餓死するくらいであれば、抵抗することもできないでしょうが、ぎりぎり生きていける可能性があるということが、かえって金正恩に悲劇をもたらすかもしれません。北朝鮮問題は、以前にも述べたように、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれないです。

その時には、金正恩は亡命するか、リビアのカダフィ大佐のような運命をたどるかもしれません。いずれにせよ、米軍が武力攻撃をしようがしまいが、終末は近づいています。米中間選挙の直前までには、ある程度その終末を予想できるようになっているかもしれません。

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