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2016年7月21日木曜日

中国人、KFCにお門違いの抗議 中国紙は「間違い」とたしなめる―【私の論評】中共は、これを放置すれば、苛烈な反政府運動になることを反日で学習した(゚д゚)!

中国人、KFCにお門違いの抗議 中国紙は「間違い」とたしなめる

中国のマクドナルド(左)とKFC(右)
中国各紙は19日、各地の米系ファストフード、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の店舗などで中国の主権を否定した仲裁裁判所の判断への抗議活動が相次いだことについて「(こうした行為は)間違いだ」と非難する記事や社説を掲載した。

習近平指導部は仲裁判断を受け入れない意向だが、国内ではナショナリズムの高まりを強く警戒しており、不満を抑え込む狙いとみられる。

共産党機関紙、人民日報系の環球時報は「KFCへの抗議は明らかに間違っている」と主張。中国紙、新京報も社説で「KFCは中国で税金を納めており、妨害行為は同胞を傷つける」と訴えた。

中国メディアによると、抗議活動は中国全土の10カ所以上で発生。参加者はKFCの店舗でKFCでの食事は「先祖の面汚し」と騒ぐなどした。

【私の論評】中共は、これを放置すれば、苛烈な反政府運動になることを反日で学習した(゚д゚)!

  • 日本人にはなかなか理解できないかもしれませんが、中国人にとってはKFCはかなり身近な存在です。実際中国ではKFCはかなり普及しています。中国では、マクドナルドよりも圧倒的に、KFCの店が多いです。

  • 日本では、総店舗数(FC含む)においてマクドナルド3000店:ケンタッキー1000店、連結売上高(FC除く)においてマクドナルド2500億円:ケンタッキー800億円と(このところのマクドナルドは不振にせよ)マクドナルドの圧勝ですが、中国においては、マクドナルド2100店:ケンタッキー4600店とその立場は逆転しています。

    紹興のような地方都市では、マクドナルド5店舗:ケンタッキー25店舗、どこにでもあるケンタッキー、探さないと見つからないマクドナルド(2014年)。マクドナルド密度はスターバックスと同程度というのが実感です。

  • 以前ある中国出身のコンサルタントの林 剛氏が書いた「なぜ中国ではマクドナルドよりケンタッキーのほうが多いのか」という記事では、マクドナルドよりケンタッキーが多い理由を、「マクドナルドはアメリカ式の味を堅持」したのに対し、「ケンタッキーは中国風のファストフードの開発、提供」を行ったところにあると論じています。
しかし、私はそれだけが原因だとはとても思えません。というより、もっと根本的な原因があると思います。それは、何かといえば、結論から言うと、中国人にはケンタッキーのような鶏肉の骨付き肉は昔から食べており、中国の食文化ともなっているのですが、ハンバーガーには馴染みがないということです。

中華料理の「白切鶏」とか「口水鶏」といった鶏料理も骨付き鶏を丸ごと使っています。レストランで中国女子が鶏の足(モミジ)をうれしそうにほおばる姿は、食文化の違いを感じさせます。

マクドナルドにしろケンタッキーしろ、その価格は中国の物価からは割高な部類に入ります。進出当初~2000年代は特にそうでしょう。それにも関わらず、骨付きのフライドチキンがちょっと高価なごちそうとして受けとめられ、受け入れられたことには、「中国人は骨付き鶏肉(まるごと鶏肉)が大好き」という素地があったからです。

マクドナルドが、もし同じように味を現地化したとしても、ハンバーガーは「ごちそう」という意味で骨付き鶏肉には勝ち目はないのかもしれません。おそらく、ハンバーガーは子どもや若者の食べるもの、と受け止められていると思います。いずれにしても、ケンタッキーのほうが幅広い年齢層に受け入れられているのです。

日本で、人口10万人あたりのケンタッキーフライドチキンの店舗数1位の県をご存知でしょうか。それは沖縄県で、人口10万人あたりの店舗数は、最下位の県の4倍、全国平均の1.5倍あります。ご存知、沖縄県は日本文化圏と中国文化圏との交差点にあって、伝統的肉食文化を持っています。沖縄の肉食といえば「豚」ですが、てびち(豚足)、三枚肉(皮付バラ肉)、ソーキ(骨付きあばら)など骨や皮が付いたままの料理が多いのも特徴です。

沖縄のあぐーソーキ
骨・皮の付いたフライドチキンも口に合うのでしょう。沖縄ではおじい、おばあもケンタッキーが好き(客層が広い)です。沖縄の例は、ファーストフードといえども、伝統的食文化を無視できないという実証ともいえます。

さて、話を本題に戻します。このように、多くの中国人にとって、身近な米国というと、金融機関でも、アップルでもなく、KFCということになるのだと思います。

だからこそ、KFCの店に対して、中国の主権を否定した仲裁裁判所の判断への抗議活動が相次いだということなのだと思います。

これを、政府は押さえ込もうとしているようです。そうして、政府はナショナリズムの高まりを強く警戒しており、不満を抑え込もうとしているようです。

しかし、ブログ冒頭の記事では、その真の背景について解説していません。その真の理由が何であったかを理解するには、過去にあった中国の反日デモが2012年には、ピークを迎えて2013年あたりからすっかり影を潜めたその理由を知るとかなり理解しやすいです。

中国では、かつていわゆる反日サイトが結構存在していました。反日的な内容が、次々と書き込まれていたのですが、その書き込みにいつの間に、反政府コメントが書き込まれるようになり、さらにエスカレートして、炎上するサイトが増えたため、政府は2010年あたりから、これを閉鎖すようになり、2011年頃には、姿を消しました。

反日デモも似たような傾向をたどり、中国から影を潜めました。反日デモには、2012年の頭くらいまでは、「愛国無罪」として政府は黙認するどころか、官製デモを意図的に起こして、中国内のあらゆる都市で、反日デモが吹き荒れるようになりました。

かつて頻繁に行われていた中国の反日デモ
ところが、この反日デモのほとんどが、いつの間にか反政府デモにすり替わるといことが頻繁におこりました。それには、人民が反日デモすると届け出た場合、政府も黙認していたのですが、それがいつの間にか反政府デモにすり替わったり、元々反政府デモをすることを目的なのにもかかわらず、反日デモを装ってデモをするということが頻々と発生するようになりました。

そのため、政府は官製反日でもは取りやめるのは無論のこと、市民団体などが反日デモをすることも禁止するようになりました。そのため、2013年あたりから、反日デモは姿を消しました。

今日のKFCへの抗議活動も同じことです。これを放置しておき、かなり頻繁になされるようになれば、かつての反日デモが、いつの間にか反政府運動になったのと同じように、反米デモでもKFCの抗議活動が、いつの間にか反政府運動になってしまうことを恐れてのことです。
中国で日々発生する暴動
そもそも、中国ではもともと暴動が多い国です。建国以来毎年平均2万件の暴動が発生していました。ところが、2010年あたりからは、毎年10万件を超えるようになりました。その頃から、中国政府は暴動の発性件数を発表するのをやめました。

現在でも、10万件を超えているでしょう。中国の人口は、日本の10倍ですから、日本だと毎年1万件程度起こっているような状況です。日本でも1万件というと、毎日必ずいくつかの暴動が発生している計算になります。

それだけ、中国の人民の憤怒マグマは、全国いたるところで、大爆発の寸前にあるということです。この状況は、日本でいえば、内乱状態のようなものだと思います。

中国では、こうした暴動を城官(都市管理のため行政的な法律の執行、即ち各種の法的取り締まりを行う機関)、公安警察(日本の公安とは異なります。日本でいうところの警察)、人民解放軍が徹底的に取り締まり、弾圧して、鎮圧しています。そのため、何とか治安が維持されているという状況です。

2016年4月12日、中国広東省広州市花都区のマクドナルド店前にあったドナルドが城官(中国警察都市
管理局員)に連行された。理由はドナルドが人々の通行の妨げになっていたからなのだそうだが・・・
中国共産党は、この人民の憤怒のマグマを何とかして、自分たちに振りかかることを避けようと、日本を悪者に仕立てて、日本に人民の憤怒のマグマを向けさせようとして、官製デモなどを実行したわけですが、それがいつの間にか反政府デモにすり替わってしまうということを学習したわけです。

その学習の成果が、今回のKFCに対する抗議への政府による批判だというわけです。もし、この抗議活動がさらに先鋭化するようなことがあれば、中国政府はさっそく、これを鎮圧することでしょう。

それにしても、この人民の憤怒のマグマ、これを放置しておくと、とんでもないことになるし、南シナ海では完璧手詰まり状態になりました。これを解消するために、中国共産党は、東シナ海あたりで何かをやらかすかもしれません。もう、その兆候は見えています。

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