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2018年7月4日水曜日

「トランプ氏の顔に泥」ポンペオ氏が正恩氏を“叱責”か 核・ミサイル温存の疑念―【私の論評】北の崩壊は、中国の崩壊も早める!ドラゴンスレイヤー(対中強硬派)達にとって最高のシナリオ(゚д゚)!

「トランプ氏の顔に泥」ポンペオ氏が正恩氏を“叱責”か 核・ミサイル温存の疑念

飛行機のタラップを降りるポンペオ長官 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 マイク・ポンペオ米国務長官は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談するため、5日に米国を出発する。米国メディアは最近、北朝鮮が「核・ミサイル」施設を温存・隠蔽しているとの報道を続けている。事実なら、6月の米朝首脳会談での「非核化合意」に反し、ドナルド・トランプ米大統領の顔に泥を塗る行為だ。ポンペオ氏が、正恩氏を厳しく叱責する場面もありそうだ。

 ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は2日の記者会見で、ポンペオ氏が5~7日の日程で訪朝することを発表した。

サラ・サンダース報道官

 国務省によると、ポンペオ氏は訪朝後、東京を訪れ、日韓両国の高官と「北朝鮮の最終的かつ完全に検証可能な非核化」について話し合うという。

 米国メディアは最近、北朝鮮の「非核化」姿勢について、強い疑念を指摘する報道を続けている。

 米紙ワシントン・ポストは1日付で、北朝鮮の正恩体制に自国の核戦力を全面放棄する意思はなく、むしろ多数の核弾頭の隠蔽を画策しているのが実態である-と複数の米情報当局者が結論づけたと報じた。

 米CNNテレビ(日本語版)も2日、「北朝鮮、ミサイル製造の施設拡張か」「米専門家が衛星画像分析」というタイトルの記事を掲載した。北朝鮮北東部・咸興(ハムフン)市にある化学材料研究所での工事が完了したのが確認できたとし、北朝鮮の「核・ミサイル」開発の放棄に疑念を投げかけた。

 前出のサンダース氏は、北朝鮮の非核化について、核実験場の爆破などを例示して「進展している」と強調したが、甘い。北朝鮮はこれまで、非核化協定や合意を、ことごとく裏切ってきた前科がある。現に、多くの新聞やテレビが、米情報当局者の同様の分析を伝えている。

ジェームズ・マティス国防長官(手前)とジョン・ボルトン大統領補佐官(奥)

 トランプ政権では現在、ジェームズ・マティス国防長官とジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)ら対北強硬派と、ポンペオ氏ら対北融和派の間で、距離があるとされる。

 ポンペオ氏の今回の訪朝次第では、武力行使も辞さない、対北強硬派が再び力を取り戻すこともありそうだ。

【私の論評】北の崩壊は、中国の崩壊も早める!ドラゴンスレイヤー(対中強硬派)達にとって最高のシナリオ(゚д゚)!

米国の北朝鮮問題の専門家の多くは、「北朝鮮は非核化に努力していると見せかけるため、巧妙に成果を小出しにし、トランプ大統領の歓心を買おうとするのではないか」との疑念を表明。北朝鮮の非核化が進まない場合、制裁強化のほか軍事行動の検討が必要との意見を述べたとされています。

北朝鮮が国際社会を欺き続けてきた経緯を考えれば、こうした疑念が生じるのは当然のことです。

一方、米紙ウォールストリート・ジャーナルは1日、衛星写真を専門家が分析した結果として、北朝鮮がミサイル製造工場の拡張を進めていると伝えました。同紙によると、シンガポールで6月12日に初の米朝首脳会談が行われた前後、北朝鮮の東海岸にある咸興(ハムン)で、ミサイル工場を拡張する動きが見られたといいます。咸興では、長距離弾道ミサイルの燃料を製造しているともされています。

ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された、北朝鮮の寧辺核研究所の一部で、6月21日に
Airbus Defense&Spaceが撮影した衛星画像
多くの人が、勘違いしていることがあうります。それは、金正恩氏が約束したのは「非核化」であり、「武装解除」ではないということです。

北朝鮮の通常戦力は、兵器の老朽化と兵站の混乱、そして部隊内での窃盗や性的虐待の横行など、軍紀びん乱ですっかり弱体化しています。金正恩としては、せめて一定の弾道ミサイル戦力を保持しなければ、国防そのものが危うくなってしまいます。

また、核兵器と同様、弾道ミサイルの開発にも相当な犠牲を払っていますし、金正恩氏は重要なミサイル試射がある度に現場で直接指揮を執り、それを国内メディアで大々的に発表しました。ときには金正恩氏の間近で、死亡事故が起きたケースもあったもようです。

弾道ミサイル開発の成功は核開発と並び、金正恩氏の貴重な「実績」です。その両方をいっぺんに「無」にしてしまう選択は、心理的に簡単ではないでしょう。

しかし、北朝鮮がこの点で不透明さを残せば、米国内では再度「軍事行動論」が頭をもたげることになります。北朝鮮情勢はまだまだ、前途多難です。

一方、2012年に始まった北朝鮮の経済改革は、2016年の朝鮮労働党第7回大会で本格化した。しかし、厳しい経済制裁が科せられているため、経済改革は前途多難です。

現在までのところ、経済制裁が北朝鮮経済に及ぼした影響はさほど大きくはないもようです。しかし、経済制裁の効果が現れるまで一定の時間が掛かることから、今後、影響が顕在化していくことなります。

北朝鮮の貿易は中国への依存度が非常に高いです。2017年の中朝貿易総額は前年比5.9%減の49億8,640万ドルになりました。中国政府が国連の北朝鮮制裁決議に基づいて制裁を科したことが中朝貿易の減少につながりました。

この経済を立て直すには、北朝鮮は米国などの経済支援が必要です。しかし、これについては、トランプ大統領は北朝鮮への経済支援について「日韓両国に用意がある。アメリカが支援する必要はない」と述べています。

これによって、北朝鮮は日本からの支援を受けるためには、「拉致問題」を解決しなければならなくなりました。

軍事的にも、経済的にも追い込まれた北朝鮮です。北朝鮮としては、中国と米国を手玉にとった二股外交をしてこの難局に対処しようとしているようです。

その兆候は、すでに見られています。金正恩はシンガポールでの米朝首脳会談に臨んだ後、北朝鮮の首都平城に帰る前に、中国に立ち寄り、習近平と三回目の中朝会談にのぞんでいます。

第三回中朝首脳会談

そこで、何と金正恩は、段階的核の放棄を主張をしていました。これは、米国からすればとんでもない裏切り行為です。

このブログでは、以前からトランプ大統領は、金正恩が米国の対中国戦略の駒として動くなら、北の存続を許容するだろうし、そうでなければ見限りであろうことを主張してきました。

これは、トランプ政権からみれば当然のことです。米国にとっての本命は中国であり、北朝鮮はその前哨戦に過ぎないからです。

さらに、金正恩が完璧に米国の対中戦略の駒になったとして、実際には、「どのように体制を保証するか」という点において大きな矛盾を抱えています。北朝鮮の独裁体制はアメリカが掲げる「自由と正義」とは正反対であり、さらに人権問題も抱えています。

現体制を保証するということは、自由主義の象徴であるアメリカのリーダーが北朝鮮の現状を容認することにもなってしまいます。

経済発展についても、南北交流が進めば国民の反乱などによって現体制が維持できなくなる可能性も生まれます。独裁者にとって民主主義は最大の敵ですが、経済発展および国際交流はその促進につながることになります。

さらにいえば、北朝鮮の敵は米国だけてはありません。中国やロシアとも敵対する部分があり、一部のミサイルは中国にも向いているといわれていました。そこでミサイルや核兵器を放棄するとなれば、中国の脅威にどう対処するかという問題も浮上します。

方法論として考えられるのは絶対王政から立憲君主制への移行であり、その場合は戦後の日本がモデルケースとなるかもしれません。その上で、安全保障条約を締結して北朝鮮の安全をアメリカが保証するというパターンがあります。

ただし、これに対しては、これまで北朝鮮の後ろ盾であった中国やロシアが反発する可能性も高く、トランプ大統領が言及した将来的な在韓米軍の縮小および撤収とともに、今後の焦点のひとつとなるでしょう。

現実には、北朝鮮の非核化には、このような大きな壁が立ちふさがってるのです。

米国にとっては、中国と本格的に戦争をするのは、あまり現実的ではないということから、トランプ政権は、戦争の代替として、貿易戦争や金融制裁などを本格化させることでしょう。

しかし北朝鮮はといえば、小国であり、軍事オプションを選択しうる対象です。北朝鮮が今後煮え切らない態度をとり、ポンペオ長官がこれを変えることができなければ、軍事行動に打ってでる可能性は十分にあります。

これは、北朝鮮がどうのこうのというのではなく、中国への見せしめとして、大いにあり得るシナリオだと思います。

これは、中国にとってはかなりの脅威となると思われます。現在の中国は習近平の独裁体制が整いつつあり、北と本質的に変わらなくなりつつあります。そのため米国のパンダハガー(対中穏健派)の声は小さくなりました。変わったところがあるとすれば、中国のほうがはるかに国土も広く、人口も多く、経済も軍事力が大きいということだけです。

北が姿を消せば、このインパクトはかなり大きいです。制裁と軍事攻撃で、北が崩壊して、新たな体制が繁栄すれば、これは中国にも多大な影響を与えます。

中国では2010年あたりから毎年10万件以上の暴動が発生しているといわれています。更に、経済は相当低迷しています。次の富の源泉とみられていた、一帯一路はどうみても失敗です。

北の崩壊は、中国崩壊もはやめるということで、実はトランプ政権のドラゴンスレイヤー(対中強硬派)にとっては、最高のシナリオかもしれません。

無論、中国崩壊とは、中国という国そのものが崩壊するという意味ではなく、中国の現体制(中国共産党一党支配)が崩壊するということです。ドラゴンスレイヤー達にとっては、価値観が真っ向から対立し、米国を頂点とする世界秩序に挑戦する中国の体制はこの世にあってはならない存在なのです。

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