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2019年4月13日土曜日

【日本の解き方】紙幣刷新と共に経済対策を! 1人30万円配る「ヘリ・マネ」は社会保険料の減額で可能だ―【私の論評】増税してしまえば、ヘリマネなどの対策をしても無意味に(゚д゚)!

【日本の解き方】紙幣刷新と共に経済対策を! 1人30万円配る「ヘリ・マネ」は社会保険料の減額で可能だ

新紙幣のイメージを発表する麻生財務相。一万円札は渋沢栄一、五千円札は津田梅子、
千円札は北里柴三郎の肖像となる(左から)=9日、財務省

紙幣のデザイン刷新が公表された。一万円札、五千円札、千円札のデザインは、それぞれ渋沢栄一(日本資本主義の父)、津田梅子(津田塾大創設者)、北里柴三郎(日本細菌学の父)の肖像画となる。

 デザイン一新は2004年以来であり、5年後をメドに新札が発行される予定だ。20年に1度、偽造防止の観点からデザイン一新が行われているが、5年後の話を今したわけで、改元に合わせた話題作りだろう。

 一方、政府はキャッシュレス化を推進している。「キャッシュレス決済比率」は、キャッシュレス支払い手段による年間支払金額を国の家計最終消費支出で除したものと定義できるが、それで日本をみると2割弱であり、先進国の4~6割に比べると低い。

 その半面、現金残高を名目国内総生産(GDP)で除した「現金比率」をみると、日本は2割程度と先進国では一番高く、他国は1割未満である。

 日本では、現金が安全確実な決済手段として確立されており、金融機関の支店や現金自動預払機(ATM)が整備されているので、結果としてキャッシュレス化が低くなっている面もある。

 キャッシュレス化だけを進めようと思えば、偽造通貨を放置するのがいいというのは暴論で、紙幣が決済手段である限り偽造防止は必要である。実際、キャッシュレス化は現実の通貨を前提としたものなので、キャッシュレス化のためにも一定の通貨は必要だ。ただ、実は、まともな偽造対策は、偽造を誘発する高額紙幣の廃止なのだが、今回は見送られた。

 せっかくだから、この際、新札発行とともに経済対策もしたらいい。思い起こされるのが「政府紙幣」だ。

 今回は、既存の紙幣のデザイン一新であるので、厳密には「政府紙幣」の発行ではないが、新札を1人あたり一定の額を配るという政策はありえる。実際に新札を配布するのは煩瑣(はんさ)なので、例えば、全国民が負担している社会保険料を一定額減額するというのが簡便な方策だろう。

 もちろん、そのために予算上は財源が必要であるが、国債発行でいい。その国債を日銀が買い取れば、理論的には、将来の利払い負担が実質的に減少し、その総和で財源は確保できる。

 これは、ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマン氏が唱えていた「ヘリコプター・マネー」と実質的に同等である。元米連邦準備制度理事会(FRB)議長のベン・バーナンキ氏も言及したことがある。

 もちろん、この政策をやり過ぎればひどいインフレになるが、現在の日本の状況ならインフレ目標まで達していないのだから、1人あたり30万円くらいなら、配っても大丈夫だろう。

 こうした手法は、過去から考案されていたもので、最近出てきた現代貨幣理論(MMT)を借りなくても、既存の標準理論から数量的に導き出すことができ、実行も可能なものだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】増税してしまえば、ヘリマネなどの対策をしても無意味に(゚д゚)!

上記の高橋洋一氏のような考え方は当然でてくるでしょう。しかし、高橋洋一氏も、新紙幣の発行は別次元の問題として、それ以前に当然日本政府や日銀がまともなマクロ経済政策を実行してほしいと思っていることでしょう。

おカネの顔だけで、日本経済再生を実現できるはずはないです。肝心なのは、間違った経済政策を改めることで、最優先すべきは令和に入って5カ月後に予定している消費税率の10%引き上げを少なくても凍結することです。5%への税率引き下げなら、大いに空気が変わることでしょう。

消費税増税はあらゆる面でチェックしても、不合理極まるものです。デフレを再来させ、経済成長をゼロ%台に押し下げ、勤労世代や若者に重税を担わせることになります。

結婚や子作りを難しくする増税をしておいて、若い世代の教育無償化や子育て支援を行うとは、欺瞞です。水が溢れているときに、本当の解決策は水道の蛇口を止めることなのに、それをせずに一生懸命に水を汲み取っているようなもので、それでは何の解決策にもなりません。

財務省は消費税増税が政府債務削減によって財政健全化のために必要だとするムードを創り上げ、政治家やメディアに対して増税キャンペーンを繰り広げていますが、これも真っ赤な嘘で、政府債務はむしろ消費増税後、急増しています。

下のグラフは1997年度の消費税率3%から5%、2014年度の5%から8%へのそれぞれの引き上げ後の中央政府の債務残高の推移を示しています。いずれのケースとも、政府債務は増加基調が続いています。原因ははっきりしています。税収が増えても、そっくり同じ額を民間に還流させないと、経済は萎縮するのです。



増税ショックを和らげるためという財政支出拡大額も増収分の一部に過ぎませんい。しかも、一時的な泥縄式の補正予算なので経済効果は不十分で、経済がゼロ・コンマ台の成長に陥るのです。

その結果、消費税以外の税収が伸びません。となると、今度は財政支出を大幅削減するので、デフレ病が進行することになります。そこで、財政健全化という同じ名目で、増税を行う、という悪循環にはまるのです。

この債務悪化傾向が多少でもなだらかになるときは、輸出増で法人税収が持ち直す局面に限られます。円高や輸出減で法人税収が落ち込むと、たちまち債務悪化に拍車がかかります。こうした失敗は1997年度の増税後に体験済みなのに、その教訓から行政府、国会、財界、学界、メディアも何も学んでいません。

日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が11日(日本時間12日)、米ワシントンで始まりまし。日本が初めて議長国を務め、世界経済をテーマとした初日の討議では、麻生太郎財務相が「国際協調を強めなければならない」と主張。米中貿易摩擦で減速傾向が目立ち始めた世界経済を、早期に回復軌道に戻す政策対応を各国に求めました。

麻生氏は「今年後半には世界経済が勢いを取り戻す」との見通しに言及。日本政府として10月に消費税率を引き上げる方針を表明し、「需要の変動を乗り越えるため十二分の財政措置を講じる」と述べました。

日銀からは黒田東彦(はるひこ)総裁が出席。黒田氏は開幕前に記者会見し、英国の欧州連合(EU)離脱などの景気下押し要因に警戒感を示したが、米中の貿易摩擦について「米中は協議を続けており、決裂による関税引き上げのリスクは抑制されている」と指摘した。

麻生財務大臣の発言に、多くのG20参加者の多くが、内心驚いていることでしょう。麻生大臣に援護射撃をするような黒田総裁の発言にも首を傾げた人が多かったのではないでしょうか。

安倍晋三首相は「リーマン・ショック級の出来事が起きない限り、予定通り引き上げる」と繰り返し述べている。しかし、問題なのは増税後の国内景気だ。それこそ、リーマン・ショック級の事態を招く恐れがある。

黒田総裁の下で副総裁を務めた経済学者岩田規久男氏は最近、デフレ脱却を完全なものにするために「10月の消費税増税は凍結すべきだ」とあるシンポジウムで訴えました。

日銀の大規模金融緩和によって2%の物価上昇目標が達成しかかった14年4月、消費税率8%への引き上げの影響で個人消費が大幅に減少し、目標が遠ざかりました。岩田氏はこのように分析しています。

一方、増税に向けて軽減税率の適用やキャッシュレス決済時のポイント還元など着々と準備は整えらているようです。しかし、これは政府自身、増税による景気悪化は不可避とみているための一時しのぎの対策にすぎないです。対策が終了した後の反動減をむしろ恐れるべきです。景気悪化を恐れるなら、最初から増税しなければ良いのです。


大阪市で6月、20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれます。世界経済の不安定要因が増大している中、さらには国内経済の後退が表面化しつつある中で、日本が予定通りの増税を議長国として表明して良いはずがありません。

消費税の増税は過去の失敗例を引くまでもなく、景気を悪化させ、税収を減らし、それは上のグラフにも示されているように結果的に政府の赤字を増やしてしまいます。

ただし、日本政府のBSをみれば、日本政府はかなり資産も有しており、資産と負債をあわせるとほとんどゼロであり、この状況ではわざわざ増税する必要性は全くありません。これについては、昨年IMFも同様の指摘をしています。

大阪のG20で、日本が増税するなどと表明すれば、参加国から疑義の声があがることも考えられます。過去に増税でにがい思いをしているのは日本だけではありません。

たとえば、英国はロンドンオリンピックの前の年には、量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税(日本の消費税に相当)」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。

その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。

ロンドンオリンピックのビーチバレーの試合

それでも増税しその後日本経済が低迷し、世界経済にも悪い影響を与えれば、海外から非難されることになるでしょう。このような増税は絶対にすべきではないのです。

増税をとりやめた上で、上の記事で高橋洋一氏が主張したようなことをすれば、日本経済は再び成長起動にのることでしょう。増税したあとでこれを実行したとしても、一時的な効果しか期待できず、日本経済は再びデフレスパイラルの底に沈むことになります。ましてや、軽減税率の適用やキャッシュレス決済時のポイント還元などは、ほとんど何の効果も期待できません。

平成14年4月の消費税増税のときも、政府は様々な対策を打ちましたが、ほとんど効果はなく、増税推進派の「増税が日本経済に及ぼす影響は軽微」という主張は全くの間違いであることがわかりました。今年10月の消費税増税は、前回の増税よりもさらに深刻な悪影響を日本経済にもたらすことになります。

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2018年2月16日金曜日

苦難経て日本との友情深める台湾、先進国間の交流も可能な水準に アジアで際立つ中韓の「反日」―【私の論評】日米は姑息な中国の作り話を無視して、台湾との結びつきを強化すべき(゚д゚)!


中国の人民解放軍の上陸を想定した訓練に参加
した台湾の蔡英文総統=台湾・屏東県、2016年8月
台湾で6日深夜(日本時間7日未明)に発生した地震を受けて、安倍晋三首相が台湾にお見舞いのメッセージを送るとともに、日本政府は警察庁や消防庁などの専門家チームを派遣した。東日本大震災の際には台湾から200億円といわれる義援金が日本に送られた。日本と中国が緊張関係にあるなかで、台湾の位置付けを考えてみよう。

 台湾は、いろいろな調査で親日国の上位にランクされる。台湾の交流協会が定期的に行っている対日世論調査(2015年度)でも、「台湾を除き、あなたの最も好きな国(地域)はどこですか(1つ選択)」という質問に対して、「日本」との回答は56%と、2位の「中国」の6%などを大きく引き離してダントツだ。

 世代別にみると、20歳代が62%、30歳代が65%、40歳代が52%、50~64歳までが53%、65~80歳までで50%となっており、若い世代ほど親日という傾向がある。

 東南アジアでも日本は好まれている。外務省によるASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国における対日世論調査で、「あなたの国にとって、現在信頼すべき友邦はどの国ですか」という質問に対して「日本」を挙げた割合は、ブルネイが24%、カンボジアが33%、インドネシアが67%、ラオス36%、マレーシアが43%、ミャンマーが58%、フィリピンが74%、シンガポールが41%、タイが69%、ベトナムが71%と、いずれの国でもトップまたは上位ランクだった。

 調査方法が異なるので、単純な比較はできないが、台湾が有数の親日国であることは間違いない。戦前の日本統治時代における教育やインフラ整備を評価する高齢世代、それらを継承し、現代日本の文化を肯定的に捉える若者世代まで、高い親日感情につながっている。

 アジアの他の国でも似たような傾向がある。こうしたアジアの親日度を考えると、中国と韓国の反日感情だけが異様である。その特異性は、両国政府によって意図的に形成されたものであることを示唆している。

 日本と台湾の間に正式な国交はない。日本の基本的な立場は、(1)日中共同声明遵守(2)台湾独立不支持(3)台湾国連加盟不支持-というものだ。

 一方で民間交流は年々盛んになっている。昨年の訪日台湾人数は456万人、訪台日本人数は190万人。台湾の人口が2355万人であることを考えると、台湾人の5人に1人が昨年訪日したことになる。

 日台の蜜月ぶりに中国は相当な警戒感を示している。中国外務省は、安倍首相がお見舞いメッセージで、蔡英文氏に「総統」という肩書を使ったことに抗議した。日本政府はその後、削除したが、蔡氏から日本語で「まさかの時の友は真の友」という返事があったことに中国側が焦ったのだろう。

 1人当たり国内総生産(GDP)は、日本が約4万ドル、台湾が約2万5000ドルだ。この水準なら先進国間の経済・資本・技術交流が可能であり、それも中国に不安を与えたようだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日米は姑息な中国の作り話を無視して、台湾との結びつきを強化すべき(゚д゚)!

日本、台湾、韓国、中国の一人あたりの最新の名目GDPを比較すると、以下のようになります。

一人あたりの名目GDP(USドル)比較
 日本 38,882.64
 台湾 22,497.00
 韓国 27,534.84
 中国   8,123.26
           (USドル)

韓国のほうが台湾よりも高いですが、とはいいなが台湾は2万ドル台であり、日本とかけ離れている数字ではありません。人口は、2400万人です。これは韓国の5100万人よりは少ないですが、それでも多い方です。北朝鮮の2537万にとほぼ同じです。

GDPや、人口などがあまりかけ離れている国だと、国民同士が交流するのは難しいですが、台湾と日本ではさほど差はありませんし、そうして、台湾は他国に比較して、圧倒的に親日国です。

日本は韓国、中国などとの付き合いはやめて、台湾との付き合いを深めていくべきです。

台湾への米海兵隊派遣の問題で中国政府は

昨年2月17日に行われた中国外務省の定例記者会見では以下のような質問がありました。

「米国在台協会(AIT)の元台北事務所長は十六日、AIT(※正しくはAIT台北事務所)の新たな場所への移転後、米国は海兵隊を派遣して警備に当たらせると表明した。これは米国の台湾に表明する保証の象徴。中国側はこれにどう反応するのか」

実はこの「中国側はどう反応するのか」こそ、すでに台湾や米国の注視するところにもなっていたのです。

何しろ米国は海兵隊に在外公館の警備を担当させているのですが、国交のない台湾での大使館代行を務めるAIT台北事務所にまで海兵隊を送るとなれば、台湾を国と遇するに等しいとも言え、台湾侵略の野心から、あの島を自国領土と主張し、そして台米関係の強化を恐れる中国には、断じて許し難い動きと映ったことでしよう。

だから中国の「反応」はさぞや激越なものとなるだろうと、台湾メディアは予測していたし、そして中国の御用学者たちもそう言って、台米に警告のメッセージを発していたのだ。

ところが、会見で質問を受けた外務省報道官の答えは、意外と淡々とした内容だった。

嘘を吐くので精いっぱいだった中国外務省のコメント

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「我々は関連報道を注視しているが、具体的な状況については更に詳しく知る必要がある」と前置きしながら、次のように述べました。

「私が指摘したいのは、中国はこれまで一貫して、米国が台湾との間で、たとえいかなる形式のものであれ、政府間交流や軍事的連絡を進めることには断固として反対しており、米国が『一つの中国』政策と中米間の三つのコミュニケでの原則を遵守し、慎重、妥当に台湾に関わる問題を処理するよう望んでいるということだ」

以上の如く、予想されたほどの激しい批判ではなかったのです。

それにはきっと対米非難には時期が悪いとか尚早だとかいう判断が働いたか何かしたのでしょうが、ここで注目したいのはそのことではありません。

それは報道官が、これほど矛盾に満ちた誤魔化しのコメントしか発することができなかった、という事実なのです。

報道官のコメントをわかりやすく整理すると次のようになります。
1.米国には台湾を中国の領土の一部と認める「一つの中国」政策があり、また中米間の三つのコミュニケにおいて台湾を中国の領土の一部とする「一つの中国」原則の遵守を誓ったのだから、それらを忘れてはならない。
2.そして米国は「一つの中国」原則遵守の誓約を守り、中国政府の反対を無視した台湾との政府間交流や軍事的連絡という内政干渉をただちに停止しなければならない。
おおよそこんなところだ。それではなぜこうした主張が誤魔化しかと言うと、そもそも米国の「一つの中国」政策は、台湾を中国領土と認めるものではないからです。

三つのコミュニケにしても、米国はそれらにおいて、そのような承認などしていないのである。

米国には堂々と台湾と政府間交流をする権利がある

米国の「一つの中国」政策とは、三つの米中共同コミュニケ(72年、79年、82年の米中コミュニケ)を柱と位置付けるものですが、この三つのコミュニケで米国が台湾の問題に関して表明したのはせいぜい、「米国政府は中華人民共和国を中国唯一の合法政府であると承認する」(七九年)と「米国政府は、一つの中国しか存在せず、台湾は中国の一部であるとするのが中国政府の立場であると認識する」(同)に尽きるのである。

つまり米国は、台湾の中華民国ではなく中華人民共和国を「中国唯一の合法政府」だとは承認したのですが、しかし「台湾は中国の一部」であるとは承認せず、ただ中国政府がそう主張しているということだけは「認識」しておくと表明したにすぎないのです。

また米国の「一つの中国」政策のもう一つの柱が台湾関係法です。

こちらも台湾は中国領土ではないことを前提に、台湾防衛や台湾の国家と同様の扱いなどを義務付けるものであり、こうした法律が存在する結果として、AIT台北事務所への海兵隊派遣が計画されたともいえそうです。

AIT台北事務所に派遣された米海兵隊
このように中国の主張とは全く逆に、米国は米中コミュニケ、「一つの中国」政策に基づいて、台湾との政府間交流や軍事的連絡を行うことができるわけなのです。

だがそのことを中国は隠蔽したいのです。それで先の報道官のように、米国の立場を捏造した宣伝を展開したわけなのです。

虚偽宣伝に基づく中国の日台接近妨害の要求

そのような中国との友好関係維持の必要性から米国は従来、台湾を中国の領土の一部とする中国の「一つの中国」原則にできるだけ配慮して来ました。

しかし今や中国は「台湾は中国の領土の一部」なるフィクションを盾に台湾、そして西太平洋を勢力下に納めようと脅威を増大させる一方です。そこで米国は台湾への海兵隊員の派遣を通じ、台湾との関係強化を中国に見せつけようとしているようです。

言わば、殻を一つ破ってみせたということでしょう。

それであるなら日本もそれと同様に、これまで中国への配慮で遠慮して来た台湾との政府間交流、軍事的連絡を進めるべきです。

もし日本が実際にそれに踏み出せば、中国側は間違いなく「日本が四つの政治文書を遵守し、慎重、妥当に台湾に関わる問題を処理せよ」と要求してくるでしょう。すでにあの国は事あるごとに、こうした要求を日本に突き付け、日台接近を牽制して来ました。

この所謂「四つの政治文書」(72年の日中共同声明、79年の日中平和友好条約、98年の日中共同宣言、08年の日中共同声明)において日本は、すでに台湾を中国領土の一部と認めていると言わんばかりです。

しかしこれもまた歪曲宣伝です。日本政府がこれらを通じて表明したのは、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」とする中国政府の「立場を十分理解し、尊重」するというものに過ぎないのである。

要するに日本も米国と同様、台湾を中国領土は認めていないのです。ただたんに「尊重する」(特に中国の主張に対して意見は言わない)と表明したのみなのです。

そのため、日本も台湾を中国とは異なる独立国と認め、交流することは可能であり、実施すべきなのです。

1年たってどうなったか

さて、米国がAIT台北事務所に米海兵隊派遣を決めてから、ほぼ1年たちました。その後台米関係はどうなっでしょうか。

それに関しては、以前もこのブログに掲載しました。以下にその記事のリンクを掲載します。
米国が見直す台湾の重み、東アジアの次なる火種に―【私の論評】日本は対中国で台湾と運命共同体(゚д゚)!
ランドール・シュライバー氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では米国は、ランドール・シュライバーの国防次官補にするという人事を発表しましたが、このランドール氏は台湾を戦略的に重視する人物です。これは、今後米国が台湾を重視することを示すものです。

シュライバー氏は、歴史問題を持ち出して日本を非難する中国に対して手厳しい批判を表明してきたことでも知られています。たとえば2015年10月に「プロジェクト2049研究所」がワシントンで開いた、中国の対外戦略についての討論会では、次のような諸点を指摘していました。
・中国の習近平政権は歴史を利用して日本を叩いて悪者とし、日米同盟を骨抜きにしようとしている。だが歴史に関しては中国こそが世界で最大の悪用者なのだ。中国ほど歴史を踏みにじる国はない。
・中国が歴史を利用する際は、1931年から45年までの出来事だけをきわめて選別的に提示し、その後の70年間の日本が関わる歴史はすべて抹殺する。日本の国際貢献、平和主義、対中友好などは見事に消し去るのだ。 
・中国の歴史悪用は、戦争の悪のイメージを現在の日本にリンクさせ、国際社会や米国に向けて、日本は今も軍国主義志向がありパートナーとして頼りにならないと印象づけることを意図している。 
・中国はそうした宣伝を、中国と親しく頻繁に訪中する一部の政治家らを巻き込んで日本の一般国民にも訴える。だがこの10年間、防衛費をほとんど増やしていない日本が軍国主義のはずはない。中国の訴えは虚偽なのだ。 
・中国は日本に「歴史の直視」を求めるが、大躍進、文化大革命、天安門事件での自国政府の残虐行為の歴史は、教科書や博物館ですべて改竄し隠蔽している。朝鮮戦争など対外軍事行動の歴史も同様だ。
こうした見解を堂々と表明してきた人物が、トランプ政権の国防総省のアジア政策面での実務最高責任者のポストに就く。日本にとって大きな意義があることは明白といえます。

そうして、この記事では中国としては、尖閣を奪取するよりも、台湾を奪取するほうがより簡単であると見ていた背景についても解説しました。

それについても、詳細はこの記事をご覧いただくものとして、簡単にまとめると以下のような内容です。

まずは、日本の尖閣諸島は無人島であるとともに、日本の国有地にもなっています。また、日本の海上自衛隊は、海外の評価ではアジア第一であり、中国海軍を凌駕しており、独力で尖閣周辺の中国海軍等を撃退することができます。さらには、日本には同盟国の米軍が駐留しています。

これでは、大陸中国はいくら威勢の良いことを言ったり、尖閣諸島付近に公船や潜水艦を航行させてみても、実際に尖閣諸島を奪取することはなかなかできません。

一方、台湾には、大陸中国出身の人々やその子孫の人々も多く、その中には大陸中国に親和的な人々も多いです。大陸中国はそのような人々を利用して、台湾そのものを大陸中国になびくように台湾内部から誘導することも可能です。実際に勢力的にそれを行っています。

軍事的にみても、中国からみれば劣勢です。さらに、台湾には米軍は駐留していません。

これでは、中国からみてどちらが奪取しやすいと考えられるかといえば、無論台湾です。

ところが、上にも掲載したように、最近米国が台湾を重視する姿勢に転じています。米国が台湾を重視しはじめて、米国の艦船や空母などが、台湾にしばしば寄港することになれば、台湾奪取の試みはうまくいかなくなる可能性が大きくなります。

ここで、日本も米国同様に台湾重視する姿勢をみせて、実際に台湾の交流を強化したり、自衛隊の艦船などが寄港したりするようにすれば、台湾の独立はなお一層確かなものになることでしょう。

日米は、中国の身勝手海洋進出を阻止するためにも、台湾との交流を密にすべきなのです。そうして、現在の台湾自身もそれを望んでいます。

日米は姑息な中国の作り話を無視して、台湾との結びつきを強化すべきなのです。

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