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2019年2月28日木曜日

中国の大誤算。台湾を脅すつもりが世界を敵に回した習近平の失態―【私の論評】次の選挙の勝利を確かなものにし、長期政権を狙うには蔡英文はまともなマクロ経済政策を打ち出せ(゚д゚)!




2018年に行われた台湾統一地方選挙で惨敗を喫し、支持率を10%台まで下落させてしまった蔡英文総統。次期総統選出馬は絶望的と思われていましたが、習近平中国国家主席の台湾に対する恫喝発言がきっかけとなり支持率は一気に30%台まで回復、完全に旗色は変わったようです。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、「中国の台湾に対する脅迫はたいてい逆効果を生む」とし、さらに2020年の台湾総統選の重要性を論じています。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】習近平の失態で支持率回復した蔡英文と台湾の行方

蔡総統、台湾いじめを拒否 自身への中傷に反論 中国との差アピールも

台湾の女性タレント張瑞竹が、蔡英文総統を侮辱するようなコメントをフェイスブックで投稿したことが話題になっています。

その内容は、蔡総統は「見た目も残念、スタイルも残念な女。彼女は毎日何もせず、ただ向かいに住んでいるイケメンに犯されると毎日叫んでいる」というもの。この中に出てくる「向かいに住んでいるイケメン」とは習近平を指しているそうです。習近平を暗示するなら、「イケメン(帥哥)」ではなく「アニキ(大哥)」だと思いますが…。そして極めつけは、批判文の最後についた女性差別の文字でした。

これに対して、蔡総統は自身のフェイスブックで反論しています。
CNNの独占インタビューでも言ったように、私は数千年来の華人社会において、最初に民主的に選出された女性の総統です。これにはとても大きな意義があり、この事実は女性は性別で差別されることなく、無限の可能性を秘めていることを証明しています。 
台湾の最初の女性総統として、私はあらゆる挑戦を受けますが、私は性別、見た目、スタイルといった生まれ持ったもので能力を判断することには意味がないし、主観的だし、焦点がぼやけるだけだと思います。台湾の総統が誰であれ、中国からの脅しや威嚇に対して我々台湾は絶対に屈しないということを、大声で世界にアピールするべきです。 
この点において、性別は関係ありません。士気あるのみです。
そもそも、今回の騒ぎを引き起こした張瑞竹というタレントはどういう人物なのかをちょっとご紹介しましょう。台湾の新竹市出身の50歳、2015年に中国の宝石商と結婚し上海に住んでいます。芸能活動は中国と台湾の両方で行っている中堅タレントといったところです。

台湾の芸能界は中国市場と強い結びつきがあるため、中国で活動できなくなると困る人も多くいます。そのため、張瑞竹も含め、中国で活動しているタレントは、往々にして中国を刺激するような発言をする台湾の政治家を嫌う傾向にあります。

少し以前の話ですが、2015年、蔡英文が総統選挙で当選するきっかけとなった騒動「周子瑜謝罪事件」を起こした台湾のタレント黄安も中国在住の媚中派でした。台湾人が中国で芸能活動をするには、常に中国人であることを求められるのかもしれません。今回、張瑞竹は「台湾人だって中国人だ」という発言もしています。中国に同化したほうが、彼らにとってはメリットがあるということでしょう。

しかし、蔡英文はそんなくだらないことでブレる人ではありません。彼女の批判を一蹴しただけでなく、それと前後して、蔡総統はCNNの独占インタビューやツイッターで、2020の総統選挙に再出馬することを公言しました。民進党内の派閥も、蔡派が主流となりつつあり、民進党一丸となって蔡英文支援に動きそうです。それもあってか、蔡氏は2020の総統選に向けて「自信がある」とも述べています。

台湾総統選 蔡総統、出馬の意向表明

台湾は、蔡政権になって確実に変わっています。例えば、このメルマガでも書きましたが、議会では「中華台北」という名称についての議論が公になされるようになりました。また、最近のニュースでは、米映画評論サイトがアジア・中国で最も美しい顔を選ぶ投票イベントで、台湾出身の有名人の国籍を示すアイコンに中国の五星紅旗が表示されたことで、台湾の外交部が同サイトに訂正を求めたというのです。

台湾のスターに中国・五星紅旗 外交部、「美しい顔」投票に訂正要求

「世界で最も美しい顔」というイベントだそうで、そこには台湾のタレントのリン・チーリンやジェイチョウなどが名を連ねたそうです。ひと昔前の台湾だったら、そこに「五星紅旗」が表示されても何も言わないどころか、疑問にも思わなかったかもしれません。それが、今では抗議をするまでになりました。

こうした台湾が台湾としての存在をアピールする地道な活動が国際的に認知されると同時に、正月の習近平による「台湾への武力行使も辞さない」というスピーチに危機感を覚えた欧州議会は、台湾を支援するとの内容の声明文と、議員155名の署名を、蔡英文総統に渡しました。

欧州議会が台湾支持の声明文 蔡総統が感謝 今後の協力に期待

蔡政権はまたひとつ心強い後ろ盾を得たことになります。2020年の総統選挙ですが、国民党はまだ候補者を絞れていないようで、党内調整にまだ少し時間がかかりそうです。

蔡英文総統は、2018年11月の「九合一」地方選挙で惨敗した後、党主席を辞任し、支持率は10%台まで下落したことから、2020年の総統選挙はかなり厳しいとみられ、彭明敏や李遠哲ら台独派の長老たちに再出馬を止められていました。ずっと蔡英文の再出馬を支持していたのは100歳近い史明くらいでした。

しかし、正月の習近平の演説がその状況を劇的に変えました。習近平は、台湾に「一国二制度」「武力行使」を放棄しないと脅しをかけ、蔡英文はすぐさまそれに対して反論したのです。このことが蔡英文の支持率を30%台まで引き上げました。米中経済貿易戦争で追い込まれた習近平は、台湾を脅したつもりが、敵に塩を送る結果となったわけです。

今回だけに限らず、中国の脅迫はたいてい逆効果を生むことが多くあります。それでも懲りないのは、中国の習性でしょう。中国が台湾に圧力をかければかけるほど、台湾住民の反発力も強くなります。この現象に最も困惑しているのは、国民党を中心とする台湾内の「統一派」でしょう。国民党が、フェイクニュースまで使って選挙で大勝を果たし、民進党を退けることに成功したのに、習近平のスピーチひとつで蔡英文の人気があっという間に戻ってしまったのですから。

2020年の国政選挙は、今の台湾にとって最大の課題です。台湾人にとっては、「国家」を選ぶ真剣な選択となります。2018年の「九合一」選挙では民進党が大敗し、予想外に国民党が躍進しました。中国は、この勢いに乗って台湾を併合したいとの焦りがあったから、正月の習近平のスピーチがあったのではないでしょうか。

民進党は、この選挙結果をよく分析し、政権党として今後の進路を探る必要があります。台湾が中国との統一を拒否し続けているのは、民主と独裁という体制の違いを維持したいからです。自由民主vs独裁専制の戦いです。

もしも中国が台湾に武力行使をすれば、日米もそれなりに大義名分を持って介入せざるを得ないでしょう。日米も、2020年の国政選挙の行方を見守っているはずです。目下昂進中の米中経済貿易戦争の動向も、2020年の選挙に関わる大きな外因となります。チベット、ウイグル、香港の実例も、台湾に対する影響は極めて大きく、中国の台湾に対する恫喝はどこまで台湾の存在に影響を及ぼすのか、世界も注視しています。

2020年の選挙は、人類史にとっても世紀の選択となるでしょう。

【私の論評】次の選挙の勝利を確かなものにし、長期政権を狙うには蔡英文はまともなマクロ経済政策を打ち出せ(゚д゚)!

ブログ冒頭の黄文雄紙の記事では、たいてい逆効果を生む中国の脅迫について掲載されていますが、これは戦略の大家ルトワック氏が主張する「パラドックス」によりその背景を説明することができます。

そもそも中国は「大国は小国に勝てない」という「戦略の論理」を十分に理解していません。

ある大国がはるかに国力に乏しい小国に対して攻撃的な態度に出たとします。その次に起こることは何でしょうか。

周辺の国々が、大国の「次の標的」となることを恐れ、また地域のパワーバランスが崩れるのを警戒して、その小国を助けに回るという現象があらわれるのです。その理由は、小国は他の国にとっては脅威とはならないのですが、大国はつねに潜在的な脅威だからです。
米国は、ベトナム戦争に負けましたが、ベトナムは小国だったがために中国とソ連の支援を受けることができたのです。ベトナムは小国だったゆえに、中国やソ連の脅威とはならなかったからです。

しかも共産国だけではなく資本主義国からも間接的に支援を受けていました。たとえばイギリスは朝鮮戦争で米国側を支援しましたが、ベトナム戦争での参戦を拒否しています。米国が小さな村をナパーム弾で空爆する状況を見て、小国をいじめているというイメージが生まれ、最終的には米国民でさえ、戦争を拒絶するようになってしまったからです。

つまり強くなったら弱くなるのです。戦略の世界は、普通の生活とは違ったメカニズムが働いているのです。

近年、中国は香港で民主化運動に弾圧を加え続け、さらには激しい言論統制を行っています。

北京側が香港で誘拐したり投獄したりと極めて乱暴に振舞ったことで台湾国内の親北京派の力を削いでしまったのです。

そうして、香港に限らず世界中に強い態度でのぞんだことが、世界中から警戒されるようになり、裏目にでて、トランプ大統領から貿易戦争を挑まれるという事態も招いてしまったのです。

中国指導層にとって、香港は攻撃可能な「弱い」相手でもありました。それが台湾という「周辺国」の反発を生んだのです。

中国は過去の一時期から大国戦略をとりはじめて、強く外にでたのですが、抵抗にあうことで立場が弱くなってしまったのです。

このような国際政治において発生する「逆説的」なメカニズムを、ルトワックは「パラドックス」と名づけているのです。

今回は、台湾に対して強くでたのですが、そのことがかえって台湾国内の親中派の力を弱め、世界中から反発をかってしまったのです。

2018年に行われた台湾統一地方選挙での惨敗については、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
台湾、選挙で与党敗北 習近平指導部は圧力路線に自信―【私の論評】大敗の要因は、大陸中国の暗躍だけでなく蔡総統がマクロ経済対策に無知・無関心だったこと(゚д゚)
台湾地方統一戦を終え記者の質問に答える蔡英文総統=11月24日、新北市
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で惨敗の原因としてあげたのは、大陸中国の暗躍もあったのは確かですが、それに次いで、蔡英文総統のマクロ経済政策への無知・無関心をあげました。

その理由としては、蔡英文政権があげている経済政策は、「新南向政策」であり、要するに台湾の南の国々、すなわちASEAN諸国等との交流を活発化させるというものです。しかし、これは経済性ではなく外交政策です。

一国の経済政策においては、やはり自国のマクロ経済政策が最も重要であり、それをおろそかにして、貿易を盛んにしたとしても、国内経済は必ずしも良くなるわけではありません。

実際、台湾人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善である。 その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられました。 

しかし、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいでしょう。

焦った民進党は選挙を前に慌てて基本月給や時給を引き上げる政策を打ち出したが、効果はありませんでした。

台湾住民の貯蓄率はずっと下降傾向にあるが、昨年は過去5年間で最低になるなど、家計の厳しさを示す数字は枚挙に暇がありません。

だから、私自身は、やはりマクロ政策のまずさに原因ありとみたのです。

以下にさらにデータを列挙します。以下は、インフレ率の推移(1980~2018年)を台湾と日本で比較したものです。

グラフで比較していいただけると、よくわかりますが、1982年くらいから日本と同じような動きをしています。

これは、日本が平成時代のほとんどがデフレ状況であったことさらに、最近では物価目標がなかなか達成できていないことを考慮すると、台湾も金融緩和をする余地がかなりあるといえます。台湾は金利は、長期にわたって据え置かれているのですが、それだけではなく、さらに金利を低くするかゼロ金利にして、量的緩和も実行すべきと思います。私は台湾ならば、インフレ率は3%〜4%くらいでも良いのではないかと思います。

以下は、経済成長率の推移の比較です。


過去においては、5%程度の成長をしていたものが、近年で日本とあまり変わりないようです。日本は近年では消費増税をしたので、成長率は低いです。台湾はもっと経済成長をさせ、少なくとも毎年5%くらいは維持すべきです。

やはり、台湾は量的金融緩和をし、積極財政も実行すべきです。蔡英文政権は、台湾の経済を一段高い段階にもっていくべきです。これによって、さらに台湾の経済を数年間で一段高い段階にもってくことを国民に約束し実行するのです。それも、大陸中国などに頼らなくても、台湾が自力でそれをなしとげることを国民に誓うのです。

先に述べたように、中国によるパラドックスがあるので、それに脅威を感じる国民が増えたので、次の選挙で蔡英文政権は勝てるとは思いますが、それをさらに確かなものとするとともに、長期政権を狙うためには、まずはまともな経済対策を打つことを表明すべきです。

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2016年5月8日日曜日

熊本地震で露呈したテレビ局「失態の数々」救出劇の撮影、割り込み、ホテル占拠で大迷惑―【私の論評】震災時などの緊急時における行動にこそ、人間や組織の本性が現れる(・・;)



崩れそうな家の前で「待機」
何を喜んでいるのか!ハシャギすぎだよ、テレビ局
 「眠れますか?」じゃないよ
「夜寝られないから、昼間にウトウトしているところに、詳しい説明もなくカメラを向けられる。お年寄りは文句を言いませんが、若者は、テレビ局の人たちの不躾な態度に憤っていますよ。
どこの局か知らないけれど、十分に説明せずにお父さんと娘さんを並ばせて、インタビューした局があったんです。中継が終わった後、娘さんが『勝手に撮られた』って怒っていました。化粧もしていない顔で全国放送に映っちゃう、って」
こう話すのは、熊本市内で被災した60代の男性である。
他ならぬ熊本の被災者から、テレビ局クルーの非常識な行為を「告発」する声が上がっている。県内の避難所に身を寄せる50代女性も言う。
「避難所にヘルメットを被った人がいきなり入ってきて、深刻そうな顔で『どうですか、眠れますか』って聞いてくる。あんたらが来るから寝られないんだ、と言いたい。
夜の照明がまぶしい、と訴える人も多いです。中継で使うライトって、ものすごく強力なんですね。しかも、リハーサルの時も点けっぱなしだから、みんな早く終わらないかなって思ってますよ」
大きな災害が、マスコミにとってある意味で「チャンス」であることは否めない。しかし、今回の熊本大地震で現地入りしたテレビ局クルーのハシャギぶりは、少し度が過ぎている。
NHKの朝の人気情報番組『あさイチ』では、18日、有働由美子アナウンサーがこんなFAXを取り上げた。「熊本市内に住む友人から聞いた」という、視聴者の話だ。
「余震で崩れそうなお宅の前で、テレビ局がずっと待機しているのだそうです。すごく失礼なことではないでしょうか」
この視聴者が直に見聞きしたわけではなさそうだが、事実なら、「家が崩れる瞬間を撮るために張り込んでいた」ということだ。明らかに行き過ぎであり、これはもはや「取材」とは言えない。
「いい画」を撮るためなら何でもやる—そんなテレビクルーの姿勢は、番組からもにじんでいた。
巷で「やり過ぎ」という意見が特に多かったのが、17日にフジテレビ系『みんなのニュース』で放送された、消防隊に取材班が密着した映像だ。
暗闇の中に浮かび上がる、倒壊した家屋。画面右上には「奇跡の救出劇」という見出しが躍る。
「高齢の女性のようです。今、家屋の外へと出されました……」「おばあちゃん、無事なようです! 今救出されました! 大丈夫ですか!」
消防隊に救い出され、横たわる白髪の女性が大写しになる。夫とみられる男性に、リポーターは笑顔でマイクを向けた。
一見すれば美しい光景かもしれない。しかし、ネット上ではこんな意見が寄せられた。
〈救出された瞬間インタビューしたりそこまでする必要あったんかな〉
〈二次災害とかもあるかもしれないのに。足手まといにもなるかもしれないのに〉
この映像自体は、確かに「スクープ」だろう。だが、極限状態におかれた被災者にカメラとマイクを向けてまで、報じる必要があるのか。危険な状況下、しかも夜間。消防隊員たちに与えた負担も小さくなかったはずだ。
 ホテルも占拠していた
さらにネット上では、現地入りしたテレビクルーの無神経な行為が、「大炎上」を招いた。
「関西テレビの中継車が、熊本県内のガソリンスタンドで列に割り込んだ」
「毎日放送のアナウンサーが、豪勢な弁当を被災地で調達した」
といった情報が瞬く間に広がり、猛烈な批判を浴びたのだ。関西テレビと毎日放送は、これらを事実と認め、謝罪した。
動画はブログ管理人挿入 以下同じ
前出と別の、被災者の男性が言う。
「ガソリンスタンドは、どこに行っても長い行列で、30分で給油できればラッキー。だいたい1時間はかかります。コンビニやスーパーも、まだ商品がスカスカのところもある。割り込みや買い占めがあるとすれば、許しがたいことです。
ホテルもマスコミ関係者で一杯になっている、と聞きました。『避難所にいたくない』という親戚が部屋を取ろうとしたら、熊本市内や周辺のホテルはほとんど押さえられてしまっていたと。休息の場所を最も必要としているのは、地元の人じゃないんですか」
テレビ報道の現場は、誰に向かって何を伝えるべきか、また自分たちが視聴者や取材相手にどう思われているのか、見失っている。そう懸念するのは、ある民放キー局元幹部である。
「ヘルメットを被ったリポーターが、余震が起きると『危険です! 身の安全を確保してください!』と怒鳴っていたけど、視聴者からすれば『誰に向かって言ってるの?』と思ったでしょう。現地の被災者は、テレビなんて見られないんですから。
また、仕方なく車の中で寝ている人に向かって、東京のスタジオにいるキャスターが『車の中にずっといるとエコノミークラス症候群になるから、出てください!』と叫ぶ番組もあった。何様のつもりで作っているのか」
テレビ報道の存在意義とは—今回、被災地でテレビ関係者が見せた振る舞いは、そんな疑問を国民に抱かせた。
彼らが信頼を取り戻す術はあるのか。同志社女子大学教授で、元毎日放送プロデューサーの影山貴彦氏は、こう提言する。
「震災報道が過熱する最大の原因は、行き過ぎた視聴率競争だと思います。テレビのスタッフに、視聴率を考えない者はいない。いい映像が撮れそうだと興奮してしまうのです。
だからせめて、大きな災害の時だけでも各局とスポンサーが連携して、視聴率調査をストップするべきです。『抜いた、抜かれた』のスクープ競争をやめれば、報道の姿勢も変わるはず」
災害の時にテレビが担う役割を、もう一度考え直したほうがいい。
「週刊現代」2016年5月7日・14日合併号より
【私の論評】震災時などの緊急時における行動にこそ、人間や組織の本性が現れる(・・;)



ブログ冒頭の記事においては、テレビ局がはた迷惑な取材をを淡々と掲載したでけで、その背後に何があるのかは、視聴率ということで、そこからは一歩も踏み込んで、全く分析していません。この点については、以下の記事が関係者の声として、かなり踏み込んでいます。
NHK以外はなっとらん!? 民放の被災地取材のヒドさに同僚からも不満噴出中! 
イメージ画像 文書の内容とは直接関係ありません
 熊本地震では多くのテレビ局が現地入りし、今も熊本県内各所からの中継を行っている。しかし、ガソリンスタンドにて中継車が給油待ちの列に割り込んだため、テレビ局が謝罪する事態となったほか、避難所で生活する男性が中継中のクルーに怒りをぶつける模様が生放送で流れてしまうなど、テレビ報道の取材姿勢に対して怒りの声は多い。 
 これらの問題に関してテレビ業界の関係者はどう考えているのか。話を聞いた。 
「生放送中に怒りの言葉を向けられたのは最悪ですね。ただ、あれは避難所の目の前に中継車を置いて邪魔だったのが原因だったようです。スタッフが取るべき行動として考えればたしかに理解はできるのですが、状況が状況だけに最悪でしたね」(番組関係者) 
 行動自体は理解できるとのことだが、一体どういうことか。 
「中継車とカメラはケーブルで結ぶので、両者の位置が近いほうがケーブルを敷く距離が短くてすみますからね。ですが、中継車が邪魔になるという状況であれば遠慮するべきだったと思います。NHKなどはたとえ離れていても近隣の駐車場などに中継車を置いて、そこから何百メートルもケーブルを敷いていますが、民放の場合にはまだまだこのような配慮が行き届かないケースも多いので、今回のようなトラブルを招いてしまったんです」(同) 
 意外にもこのような場面では、NHKのほうがマナーを守っているようだ。民放はなぜクレームが来そうな行為に走るのだろう。 
「機材が少なくケーブルが足りないなど物理的な原因もあります。ですが、それ以上に民放の報道部の人間は『報道の自由』を盾にすれば何をしてもいいと考えている輩が多いんです。NHKの場合にはきっちりした研修もありますが、民放の場合には報道と権力をはき違えた人間もたくさんいます。そういう気持ちの面での差もあると思います。当然、報道の自由と同時に個人のプライバシーや生活権も重視されるべきですから、今後は邪魔な中継車はどんどん110番通報するぐらいの対抗措置を市民側もとるべきですね」(同) 
 仲間をかばうのかと思いきや110番を進言するとは驚きだ。これはどういうことなのか。
「自分は報道の人間ではないのでハッキリ言えますが、テレビ業界の中で最も嫌われている存在は報道セクションなんです。あらゆる場所で横暴な取材を行い、それによっていろいろな町や企業に嫌われています。その影響を受けるのはバラエティやドキュメンタリーなどを作る我々なんです」(同) 
 具体的にはどのような影響があるのか。 
「たとえば商店街で失礼な取材をして、その商店街でほかのバラエティ番組がロケをしようと思っても拒否されたり、今まで取材可能だった店舗から出入り禁止にされたりします。また、ドキュメンタリーの分野で言えば、東日本大震災の現地ドキュメントを撮影しようと思っても、過去に報道の人間からひどい取材をされたなどの理由で、取材NGになるケースもあります。そのため、今回の熊本地震でも報道局のなりふり構わぬ取材態度には身内であっても批判の声が多いんですよ」(同) 
 世間からのバッシングばかりかと思ったが、実際には身内からも嫌われているのが報道部の実情のようだ。一体彼らの報道は誰のために、何のために存在しているのだろうか。
(文=吉沢ひかる)
 結局この記事からも理解できるように、民放の報道部の人間は『報道の自由』を盾にすれば何をしてもいいと考えている輩が多いということが震災地での報道の傍若無人ぶりの背後にあるということです。報道と権力をはき違え、個人のプライバシーや生活権報道の自由よりも報道の自由のほうが上であると勘違いしているところがあるということです。

さて、上記まででは、震災の被災者に関する報道のみがクローズアップされていますが、震災に関するもので、NHKも含む各放送局でほとんど報道しないものもありました。

それは、何かといえば、あのオスプレイです。オスプレイが、救援物資を運んだという報道はテレビではほとんど報道されませんでした。だから、デレビのみが情報源になっている人の中には、オスプレイが救援活動をしたことを知らない人も大勢います。

これは、新聞報道とは対照的です。オスプレイ報道にもいろいろあって、大手新聞のほとんどは、熊本震災の救援活動にオスプレイは必要ないとか、危険であるとか、実績づくりのためのPRだとか、ネガティブではありながら、報道はしました。産経新聞は、ポジティブな内容で掲載したり、他紙のネガティブな報道の仕方を批判する内容の記事でした。

ネカティブであれ、ポジティブであり、ほとんどの新聞はオスプレイが熊本震災の救援活動に出動したことを掲載していました。



ところが、テレビ局ではほとんど局が、オスプレイに関しては報道しませんでした。これは、一体どうしたことでしょうか。テレビ局の中には、前々からオスプレイが危険だなどと、報道しているところがありました。そういうテレビ局も含めて、ほとんどのテレビが報道しなかったということは、各テレビ局の報道部による恣意的な取捨選択以外の何ものでもありません。

これは、テレビ局が「報道の自由」を行使するのは、当然のこととして「報道しない自由」を行使するのも当然のことと捉えてるということを示す証左としてとらえるべきです。ネガティブな内容でも流すというのならわかりますが、完全無視で、何も報道しないというのですから、とんでもないです。

これらの報道姿勢をテレビ局の傲慢といわずして、何を傲慢というべきでしょうか。このテレビ局の傲慢は、特に各テレビ局の報道部の傲慢さに直結しているのだと思います。だからこそ、テレビ局の報道部は、震災地であのような傲慢な姿勢を見せるのです。このテレビ局の傲慢さに関しては、以前にもこのブログで掲載したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。
K・ギルバート氏“偏向報道番組”斬り「日本のテレビ局の態度は傲慢に見える」―【私の論評】日本のテレビ局の態度は、傲慢どころか日本の民主主義の破壊者(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、TBS系「NEWS23」の安保法制報道が放送法違反だったとして、作曲家のすぎやまこういち氏が代表呼びかけ人を務める任意団体「放送法遵守を求める視聴者の会」が昨年11月26日、記者会見を開き、番組アンカーを務める岸井成格(しげただ)氏やTBSなどに対し、公開質問状を送ったことを明らかにしたことを掲載しました

この記事より、ケント・ギルバート氏の発言の部分のみ掲載せせていただきます。
呼びかけ人の1人で、夕刊フジで「ニッポンの新常識」を連載(金曜掲載)する米カリフォルニア州弁護士、ケント・ギルバート氏は「日本のテレビ局の態度は傲慢に見える。『自分たちは賢く、バカな国民を誘導しなくてはダメ』という態度に見える。決めるのは国民で、意見を押しつけることは正しくない姿勢。もっと謙虚にやってもらいたい」と訴えた。
この記事にもあるように、テレビ局の安保法制に関する報道は、TBSに限らずどの局も傲慢そのものでした。その中でも、得にTBS系の「NEWS23」の報道は極めつけのものでした。

とにかく、テレビは、集団的自由権の行使を含む安保法制に反対し「戦争法案」などとレッテル貼りをする野党の主張や、市民団体のデモばかり報道して、与党側の主張や、保守派などの意見などほとんど報道しませんでした。

これは、「戦争法案」という主張を「報道の自由」として徹底的にとりあげ、その一方で与党側や保守派の人々の主張は「報道しない自由」として徹底的に無視して報道しなかったということで、テレビ局傲慢さを白日の下に晒しました。

とにかく、テレビ局の特に報道部は、ニュースなどを取捨選択し自分たちの主張に合う事柄は、「報道の自由」として長時間報道し、自分たちの主張に合わないものは、徹底して報道しないという「報道しない自由」を貫き通したのです。

一体彼らの報道は誰のために、何のために存在しているかといえば、明らかです。いわゆるパヨクのために、パヨクの主張があたかも世の中の大勢を占めているかのごとく装うために存在しているとしか言いようがありません。

熊本の震災報道でも、視聴率欲しさに無理な報道をしたというよりは、普段からの傲慢ぶりが露呈してしまったに過ぎません。【私の論評】の冒頭に掲載した動画のスチル画像を以下にもう一度掲載します。



テレビ局の人は別として、なぜか辛嶋友香里(からしま ゆかり)というピースボートの人間がMCを実施しています。この辛嶋なる人物の経歴を以下に掲載します。
ピースボート災害ボランティアセンター スタッフ 
教員を目指して大学へ進学。卒業するも、ゆとり教育よりも社会経験だ!と思い、総合美容サロンに勤務。営業、美容、マネージメントを経験し、独立。個人サロンを立ち上げる。26歳でピースボートクルーズに参加。その後も旅を続けていたところ、東日本大震災が発生。急いで帰国し、ボランティアとして東北へ。その後、ピースボート災害ボランティア センターの初期運営メンバーとして支援に携わりそのまま職員となる。被災地に向かう数万人のボランティアをオーガナイズ。現在は、将来の災害に備えるため、主に防災・減災の取り組みに力を入れている。

ピースボート(Peace Boat)とは、国際交流を目的として設立された日本の非政府組織(NGO)、もしくは、その団体が主催している船舶旅行の名称です。設立当初はアジアをめぐるクルーズの運営を主体としていたが、1990年以降は世界各地をめぐる「地球一周の船旅」を繰り返し行っています。後に政治家となった辻元清美ら早稲田大学の学生数名が1983年(昭和58年)に設立しました。創設メンバーで現在も運営に関わっているのは、吉岡達也のみです。

この藤岡達也は現在ピースボートの共同代表です。2008年には『9条世界会議』の共同代表に選ばれました。2012年1月14-15日にパシフィコ横浜開催されたた「脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA」では運営代表を務めました。

要するに、ピースボートはこてこてのパヨク団体です。このようなパヨクをわざわざ震災報道でMCのように使用するというのが、そもそも感覚がずれています。

報道するなら、報道に専念するべきです。こんなところには、パヨクが随伴するのも非常におかしな話ですが、もしも保守の人間が行ったとしても浮いてしまうのではないでしょうか。

そうして、被災民の人から迷惑がられて、叱責され、放送を中断してしまうという不手際を起こしてしまったのです。

とにかく、今のテレビ局のあり方は、この番組報道に凝縮されています。

普段から、「報道の自由」という錦の御旗を笠に着て、やりたい放題の報道内容の取捨選択を行い「報道しない自由」も享受し、震災地でもそれと同じく、とにかく視聴率を稼ぐためにやりたい放題をしたり、パヨクまで随伴するというやりたい放題をしても、そのことに何の疑問も感じないのです。



日々傲慢でやり過ごしてきて、何も批判されず、ましてやパヨクたちからもてはやされるので、感覚が鈍り、被災地でも人を人とも思わない傍若無人を働き、激しく非難されてから、ようやく気がつくという体たらくぶりを発揮しているのです。

ブログ冒頭の記事や、【私の論評】の冒頭に掲載された記事でもNHKのことはあまり批判していませんが、これは記事中にあったように、NHKの報道局の人間など被災地での行動のあり方を教育されているから、今回も被災地でも被災者に直接迷惑をかけることはなかったものの、傲慢さにかけては、他局の報道部とあまり変わりありません。それは、普段の報道ぶりを見ていれば、良くわかります。

人間の本性、本質はピンチのとき、緊急事態のときに表れます。こんなときに、普段はどうであれ、責任を他の人間になすりつけたり、傲慢であったり、小心者であったりのその人間の本質が露呈します。テレビ局などの報道部などの組織も同じことです。今回、震災の報道でみせた彼らの姿勢こそ、彼らの本質なのです。

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