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2020年7月17日金曜日

顕在化する中国によるカナダへの〝人質司法〟— 【私の論評】人質を取って相手国を脅し確信的利益を守ろうとする中共は、世界の敵!(◎_◎;)

顕在化する中国によるカナダへの〝人質司法〟

岡崎研究所

 ワシントンン・ポスト紙のコラムニストであるデビッド・モスクロップ(オタワ在住)がHuaweiのCFO孟晩舟の解放と引き換えに中国が拘束しているカナダ人2人を釈放するという中国の取引の誘いをトルドー首相が拒否したことを支持する論説を、6月27日付の同紙に書いている。


 2018年12月1日に孟晩舟がカナダで逮捕されて間もなく、カナダ人の2人が中国においてスパイ容疑で拘束された。Michael Kovrig(元外交官でシンク・タンクInternational Crisis Group勤務、12月10日に北京で拘束)とMichael Spavor(コンサルタント、同じ頃居住していた丹東で拘束)の2人である。中国による報復に違いない。拘束されて既に1年半が過ぎた。報道によればKovrigの妻は夫の解放のために各方面に働き掛けを行っている様子である。

 6月24日、中国外務省報道官の趙立堅(Zhao Lijian)は記者会見においてMichael Kovrigの妻の「司法相は孟晩舟の米国への引き渡しを止める権限を有する」とのメディアへの発言に言及して「そのようなオプションは法の支配の範囲内にあり、2人のカナダ人の状態の解決のための空間を開き得よう」と述べた。

 趙立堅は「(孟晩舟の件)は深刻な政治的事件である。それがカナダ側が主張するように法的なケースだとしても、Kovrigの妻が言ったように、カナダの司法相は如何なる時点においても引渡しのプロセスを停止する権限を有する。このことはカナダ政府がこの事件をカナダの法律に従い正しい方法で現に扱うことが可能であることを示している。我々はカナダ側に対し法の支配の精神を真に尊重し、中国の厳粛な立場と懸念を真剣に受け止め、政治的ごまかしを止め、孟晩舟を直ちに解放し、彼女の中国への安全な帰還を確保するよう、再度強く要請する」とも述べた。

 中国は2人の逮捕は孟晩舟の件とは無関係との立場を維持して来たが、ここに来て、孟晩舟の件との取引をあからさまに示唆するに至った。趙立堅による法の支配についてのレクチャーは噴飯ものである。

 カナダ人2人の境遇は悲劇である。同情の他ない。引渡し法(Extradition Act)の下で司法相が進行中の裁判所による引渡しの審理を止める権限を有することは確かなようである。モスクロップの論説では、トルドー首相宛の19人の元政治家や外交官からの書簡について書かれている。書簡は、このままでは結局カナダ人2人は孟晩舟が中国に帰国するまで中国の牢獄に繋がれることになること、引渡しの可否の審理は2024年までかかり得ること、パンデミックのために2人の生命が重大なリスクに晒されていることなどを指摘するとともに、孟晩舟の1件は2人だけでなくカナダの外交をも人質に取っている(5Gの構築にHuaweiの参加を認めるかの決定を為し得ず、香港問題についても発言に注意を強いられる)と指摘して司法相が引渡しの審理を停止すべきことを進言している。

 トルドー首相は、この進言を斥けた。そうするしかない。モスクロップの論説もこの決定を正しいと支持している。しかし、論説はどこか歯切れが悪い。米国に言及している部分は意味が判然としないが、どこか米国の行動に釈然としないものを感じているように思われる。

 カナダは実に苦しい立場にある。カナダ当局が孟晩舟を逮捕した時、中国が米国あるいはカナダの企業幹部を逮捕する危険は予知出来た。カナダは米国から逮捕の要請を受けた時点で或る程度の時間的余裕をもって中国が汚い手で報復に出る危険を予知出来たはずである。あるいは、それを理由に米国の要請を断ることも出来たかも知れない。どうしてカナダは予め危険を防ぐ手を打たなかったのか。

 日本としても、他山の石とすべき1件である。

【私の論評】人質を取って相手国を脅し確信的利益を守ろうとする中共は、世界の敵!(◎_◎;)

うえの記事にもあるとおり、カナダが孟氏の身柄を確保した直後に、カナダ人2人が中国によくわからない理由で逮捕されました。

このカナダ人逮捕に対して、中国側は「拘束されたカナダ人と孟氏の問題は無関係」と公式見解を述べていますが、カナダのトルドー首相は「明確な関連がある」と述べています。

トルドー首相

確かに、いくら国際法無視の中国であっても、「孟氏が外国の法律を犯したとしても、中国の要人なのだから逮捕するのは許せない。だから、何も法律を侵していないカナダ人を2人の身柄を拘束する。カナダ人を返してほしければ、孟氏を返せ」とは表立っては公言できないのだと思います。

しかしながら、尖閣で何かがあった時や、中国政府が日本政府の対応に怒った時には、日本人もよく中国で逮捕されています。

こうしたことから、中共は人質を取って相手国を脅して中共の我儘(彼らの言葉では中国の革新的利益)を通そうとする事を、外交交渉の一つの手法として採用している可能性が高いです。

閣僚経験者や外交官など19人が「孟氏の身柄引き渡し手続きを停止すれば、中国がカナダ人2人を釈放する可能性が高まる」とトルドー首相に書簡を送ったこと自体も本当なのでしょうか。

閣僚経験者や外交官など19人が、何の根拠もなくて首相に書簡を送ることは、ありえないでしょう。私の考えでは、この19人は中国の外交官と接触した際に「孟子を米国に引き渡さなければカナダ人一人を開放する。孟子を中国に返せば2人とも開放する」などなどの中国側からの要求を、その耳で聞いたのだと思います。

しかし中国政府は、国民の信任を得ていなければならない、トルドー首相の考えが全く読めないようです。

現在、欧米ではコロナ発症国でありながら謝罪もせずに我がもの顔で振る舞っている中国に対して、国民レベルで怒りが燃え上がりつつあります。彼らの心の奥底には、自由・平等・人権という価値観を生み出し、先日もこのブログにも掲載した世界初の近代的な条約であるウエストファリァ条約により生み出された世界秩序による、西欧文明こそが、世界の本質であると考えています。

価値観が全く異なる、異質な成金の中共が国際社会で我儘一杯にふるまうのが不愉快でたまらなかったのでしょうが、自国の経済の繁栄のために我慢していたところがあります。元々嫌いだったのが、今回のコロナ禍の原因を作っても、謝罪するどころか、世界中で我が物顔で振る舞い、さらにマスク外交で攻勢に出た中国に対して、怒りが頂点に達したものと見えます。それが、ネガティプな面に繋がり、欧米でアジア系に対する差別や、暴力事件が起こっています。

  イギリスに留学していたシンガポール人男性が現地の男達に「コロナを持ち込むな」等の
  差別的暴言を吐かれ、殴る蹴る等の暴行を受けた

確かに、差別や暴力はいけませんが、こうなると欧米は、中国叩きでは一致団結します。なぜなら、中国嫌いは国民レベルなのですから、中国の嫌がらせによる不快感は、国民を反中国で団結させる原動力になるからです。政府も、こうした国民感情を無視することはできません。

このようなことから、中国がオーストラリアに対して、「牛肉を買わない」と脅しても、オーストラリアは「すいません。ご意向通りにします」と態度を変えずに、「買わないのは、そちらの自由」と却って反発したのです。

今まで欧米諸国の首脳が中国に対して「買ってください」と低姿勢だったのは、その方が国内で支持が集まると判断したからです。つまり、中国に牛肉を売りつけるのは、自分の政権を盤石にするための《手段》であって《目的》ではありません。真の目的は自らの政権の支持率を上げることです。牛肉を中国に売る事ではありません。

そのため、「オーストラリアが、中国のコロナの調査を求めるという正しい行動をしたにも関わらず、中国は牛肉を買わないと脅してきた。こんな強迫に屈するわけにはいかない。国民の皆さん、中国のせいで広がったコロナ感染の危機を乗り切る為に一致団結を」と呼び掛けた方が、支持率が上がるのですから、そちらを選ぶのです。

だからカナダのトルドー首相も、中国の提案を蹴りました。「中国を軽蔑する」と言外に述べながら…。

このように欧米と世界の人達の中国への嫌悪感は、中国との外交関係を左右する所まで大きく広がっています。

しかし、この嫌悪感や軽蔑は人の心の中にあるので、目には見えません。だから中共には見えないのか、見て見ぬ振りをしているのかは解りませんが、とにかく現状の彼らは、西欧の常識から見れば、やめた方がよい事ばかりしています。

中共からすれば、自国内では、それが当たり前であり、何か問題が起きれば、警察や軍隊を用いて、すぐに鎮圧してしまうのが習い性になっているので、鈍感になっているだけかもしれません。元々、中国はこのブログでも何度か掲載してきたように、他国との関係も自国の都合で動く国柄です。そのため、外交にあまり重きを置いていません。

日本では、日本の外務大臣と同様に思われている、王毅氏は、王氏は党政治局(25人)メンバーではなく、200人ほどいる党中央委員の一人にすぎないです。画数順で公表される中央委員の序列は不明なので、26位から200位までの間ということになります。

さらにいえば、王氏は外務省トップとはいえ、中国外交の責任者ですらないのです。とにかく中国では、外交はもともと重要視されていないのです。そもそも、いよいよになれば、人質をとって脅して、革新的利益を守れば良いのですから、外交など重要視する必要性などありません。

王毅氏は日本で言う外務大臣ではない、かなり下のレベルの位置づけ

そのような国柄ですから、先に述べたように、中共は人質を取って相手国を脅して中共の我儘(彼らの言葉では中国の革新的利益)を通そうとする事を、外交交渉の一つの手法として採用している可能性が高いのもうなずけるところです。

日本も、この問題に関して深刻に考えているようには見えません。どのように対応して良いのかわからず右往左往しているようにも見えますが、はた眼には何にも考えず深刻に捉えてないようにも見えます。

せめて、冒頭の記事のように、カナダのニュースを大きく報道して、中国は人質外交をする国なのかもしれない、スパイ罪なら、中共の恣意で誰でも逮捕できるので、渡航は注意すべきとか、中国ビジネスは危険とか、世論を盛り上げるくらいのことはすべきです。

とにかく、国際法は無視、西欧的価値観やイスラム圏の価値観には鈍感というか、日本も含めた世界中の文化・価値観に鈍感で、先日も述べた弁証法的な考えすらできなくなった中共は、今後西欧的価値観から計り知れない、とんでもないことをしでかす可能性が大です。そのことは、心に留めておくべきでしょう。

現在中共に親和的とみられる国々にもいずれ離反していくでしょう。

そうして、中共は西欧のみならず、世界中の敵になる可能性が高いです。

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2019年2月28日木曜日

中国の大誤算。台湾を脅すつもりが世界を敵に回した習近平の失態―【私の論評】次の選挙の勝利を確かなものにし、長期政権を狙うには蔡英文はまともなマクロ経済政策を打ち出せ(゚д゚)!




2018年に行われた台湾統一地方選挙で惨敗を喫し、支持率を10%台まで下落させてしまった蔡英文総統。次期総統選出馬は絶望的と思われていましたが、習近平中国国家主席の台湾に対する恫喝発言がきっかけとなり支持率は一気に30%台まで回復、完全に旗色は変わったようです。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、「中国の台湾に対する脅迫はたいてい逆効果を生む」とし、さらに2020年の台湾総統選の重要性を論じています。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】習近平の失態で支持率回復した蔡英文と台湾の行方

蔡総統、台湾いじめを拒否 自身への中傷に反論 中国との差アピールも

台湾の女性タレント張瑞竹が、蔡英文総統を侮辱するようなコメントをフェイスブックで投稿したことが話題になっています。

その内容は、蔡総統は「見た目も残念、スタイルも残念な女。彼女は毎日何もせず、ただ向かいに住んでいるイケメンに犯されると毎日叫んでいる」というもの。この中に出てくる「向かいに住んでいるイケメン」とは習近平を指しているそうです。習近平を暗示するなら、「イケメン(帥哥)」ではなく「アニキ(大哥)」だと思いますが…。そして極めつけは、批判文の最後についた女性差別の文字でした。

これに対して、蔡総統は自身のフェイスブックで反論しています。
CNNの独占インタビューでも言ったように、私は数千年来の華人社会において、最初に民主的に選出された女性の総統です。これにはとても大きな意義があり、この事実は女性は性別で差別されることなく、無限の可能性を秘めていることを証明しています。 
台湾の最初の女性総統として、私はあらゆる挑戦を受けますが、私は性別、見た目、スタイルといった生まれ持ったもので能力を判断することには意味がないし、主観的だし、焦点がぼやけるだけだと思います。台湾の総統が誰であれ、中国からの脅しや威嚇に対して我々台湾は絶対に屈しないということを、大声で世界にアピールするべきです。 
この点において、性別は関係ありません。士気あるのみです。
そもそも、今回の騒ぎを引き起こした張瑞竹というタレントはどういう人物なのかをちょっとご紹介しましょう。台湾の新竹市出身の50歳、2015年に中国の宝石商と結婚し上海に住んでいます。芸能活動は中国と台湾の両方で行っている中堅タレントといったところです。

台湾の芸能界は中国市場と強い結びつきがあるため、中国で活動できなくなると困る人も多くいます。そのため、張瑞竹も含め、中国で活動しているタレントは、往々にして中国を刺激するような発言をする台湾の政治家を嫌う傾向にあります。

少し以前の話ですが、2015年、蔡英文が総統選挙で当選するきっかけとなった騒動「周子瑜謝罪事件」を起こした台湾のタレント黄安も中国在住の媚中派でした。台湾人が中国で芸能活動をするには、常に中国人であることを求められるのかもしれません。今回、張瑞竹は「台湾人だって中国人だ」という発言もしています。中国に同化したほうが、彼らにとってはメリットがあるということでしょう。

しかし、蔡英文はそんなくだらないことでブレる人ではありません。彼女の批判を一蹴しただけでなく、それと前後して、蔡総統はCNNの独占インタビューやツイッターで、2020の総統選挙に再出馬することを公言しました。民進党内の派閥も、蔡派が主流となりつつあり、民進党一丸となって蔡英文支援に動きそうです。それもあってか、蔡氏は2020の総統選に向けて「自信がある」とも述べています。

台湾総統選 蔡総統、出馬の意向表明

台湾は、蔡政権になって確実に変わっています。例えば、このメルマガでも書きましたが、議会では「中華台北」という名称についての議論が公になされるようになりました。また、最近のニュースでは、米映画評論サイトがアジア・中国で最も美しい顔を選ぶ投票イベントで、台湾出身の有名人の国籍を示すアイコンに中国の五星紅旗が表示されたことで、台湾の外交部が同サイトに訂正を求めたというのです。

台湾のスターに中国・五星紅旗 外交部、「美しい顔」投票に訂正要求

「世界で最も美しい顔」というイベントだそうで、そこには台湾のタレントのリン・チーリンやジェイチョウなどが名を連ねたそうです。ひと昔前の台湾だったら、そこに「五星紅旗」が表示されても何も言わないどころか、疑問にも思わなかったかもしれません。それが、今では抗議をするまでになりました。

こうした台湾が台湾としての存在をアピールする地道な活動が国際的に認知されると同時に、正月の習近平による「台湾への武力行使も辞さない」というスピーチに危機感を覚えた欧州議会は、台湾を支援するとの内容の声明文と、議員155名の署名を、蔡英文総統に渡しました。

欧州議会が台湾支持の声明文 蔡総統が感謝 今後の協力に期待

蔡政権はまたひとつ心強い後ろ盾を得たことになります。2020年の総統選挙ですが、国民党はまだ候補者を絞れていないようで、党内調整にまだ少し時間がかかりそうです。

蔡英文総統は、2018年11月の「九合一」地方選挙で惨敗した後、党主席を辞任し、支持率は10%台まで下落したことから、2020年の総統選挙はかなり厳しいとみられ、彭明敏や李遠哲ら台独派の長老たちに再出馬を止められていました。ずっと蔡英文の再出馬を支持していたのは100歳近い史明くらいでした。

しかし、正月の習近平の演説がその状況を劇的に変えました。習近平は、台湾に「一国二制度」「武力行使」を放棄しないと脅しをかけ、蔡英文はすぐさまそれに対して反論したのです。このことが蔡英文の支持率を30%台まで引き上げました。米中経済貿易戦争で追い込まれた習近平は、台湾を脅したつもりが、敵に塩を送る結果となったわけです。

今回だけに限らず、中国の脅迫はたいてい逆効果を生むことが多くあります。それでも懲りないのは、中国の習性でしょう。中国が台湾に圧力をかければかけるほど、台湾住民の反発力も強くなります。この現象に最も困惑しているのは、国民党を中心とする台湾内の「統一派」でしょう。国民党が、フェイクニュースまで使って選挙で大勝を果たし、民進党を退けることに成功したのに、習近平のスピーチひとつで蔡英文の人気があっという間に戻ってしまったのですから。

2020年の国政選挙は、今の台湾にとって最大の課題です。台湾人にとっては、「国家」を選ぶ真剣な選択となります。2018年の「九合一」選挙では民進党が大敗し、予想外に国民党が躍進しました。中国は、この勢いに乗って台湾を併合したいとの焦りがあったから、正月の習近平のスピーチがあったのではないでしょうか。

民進党は、この選挙結果をよく分析し、政権党として今後の進路を探る必要があります。台湾が中国との統一を拒否し続けているのは、民主と独裁という体制の違いを維持したいからです。自由民主vs独裁専制の戦いです。

もしも中国が台湾に武力行使をすれば、日米もそれなりに大義名分を持って介入せざるを得ないでしょう。日米も、2020年の国政選挙の行方を見守っているはずです。目下昂進中の米中経済貿易戦争の動向も、2020年の選挙に関わる大きな外因となります。チベット、ウイグル、香港の実例も、台湾に対する影響は極めて大きく、中国の台湾に対する恫喝はどこまで台湾の存在に影響を及ぼすのか、世界も注視しています。

2020年の選挙は、人類史にとっても世紀の選択となるでしょう。

【私の論評】次の選挙の勝利を確かなものにし、長期政権を狙うには蔡英文はまともなマクロ経済政策を打ち出せ(゚д゚)!

ブログ冒頭の黄文雄紙の記事では、たいてい逆効果を生む中国の脅迫について掲載されていますが、これは戦略の大家ルトワック氏が主張する「パラドックス」によりその背景を説明することができます。

そもそも中国は「大国は小国に勝てない」という「戦略の論理」を十分に理解していません。

ある大国がはるかに国力に乏しい小国に対して攻撃的な態度に出たとします。その次に起こることは何でしょうか。

周辺の国々が、大国の「次の標的」となることを恐れ、また地域のパワーバランスが崩れるのを警戒して、その小国を助けに回るという現象があらわれるのです。その理由は、小国は他の国にとっては脅威とはならないのですが、大国はつねに潜在的な脅威だからです。
米国は、ベトナム戦争に負けましたが、ベトナムは小国だったがために中国とソ連の支援を受けることができたのです。ベトナムは小国だったゆえに、中国やソ連の脅威とはならなかったからです。

しかも共産国だけではなく資本主義国からも間接的に支援を受けていました。たとえばイギリスは朝鮮戦争で米国側を支援しましたが、ベトナム戦争での参戦を拒否しています。米国が小さな村をナパーム弾で空爆する状況を見て、小国をいじめているというイメージが生まれ、最終的には米国民でさえ、戦争を拒絶するようになってしまったからです。

つまり強くなったら弱くなるのです。戦略の世界は、普通の生活とは違ったメカニズムが働いているのです。

近年、中国は香港で民主化運動に弾圧を加え続け、さらには激しい言論統制を行っています。

北京側が香港で誘拐したり投獄したりと極めて乱暴に振舞ったことで台湾国内の親北京派の力を削いでしまったのです。

そうして、香港に限らず世界中に強い態度でのぞんだことが、世界中から警戒されるようになり、裏目にでて、トランプ大統領から貿易戦争を挑まれるという事態も招いてしまったのです。

中国指導層にとって、香港は攻撃可能な「弱い」相手でもありました。それが台湾という「周辺国」の反発を生んだのです。

中国は過去の一時期から大国戦略をとりはじめて、強く外にでたのですが、抵抗にあうことで立場が弱くなってしまったのです。

このような国際政治において発生する「逆説的」なメカニズムを、ルトワックは「パラドックス」と名づけているのです。

今回は、台湾に対して強くでたのですが、そのことがかえって台湾国内の親中派の力を弱め、世界中から反発をかってしまったのです。

2018年に行われた台湾統一地方選挙での惨敗については、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
台湾、選挙で与党敗北 習近平指導部は圧力路線に自信―【私の論評】大敗の要因は、大陸中国の暗躍だけでなく蔡総統がマクロ経済対策に無知・無関心だったこと(゚д゚)
台湾地方統一戦を終え記者の質問に答える蔡英文総統=11月24日、新北市
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で惨敗の原因としてあげたのは、大陸中国の暗躍もあったのは確かですが、それに次いで、蔡英文総統のマクロ経済政策への無知・無関心をあげました。

その理由としては、蔡英文政権があげている経済政策は、「新南向政策」であり、要するに台湾の南の国々、すなわちASEAN諸国等との交流を活発化させるというものです。しかし、これは経済性ではなく外交政策です。

一国の経済政策においては、やはり自国のマクロ経済政策が最も重要であり、それをおろそかにして、貿易を盛んにしたとしても、国内経済は必ずしも良くなるわけではありません。

実際、台湾人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善である。 その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられました。 

しかし、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいでしょう。

焦った民進党は選挙を前に慌てて基本月給や時給を引き上げる政策を打ち出したが、効果はありませんでした。

台湾住民の貯蓄率はずっと下降傾向にあるが、昨年は過去5年間で最低になるなど、家計の厳しさを示す数字は枚挙に暇がありません。

だから、私自身は、やはりマクロ政策のまずさに原因ありとみたのです。

以下にさらにデータを列挙します。以下は、インフレ率の推移(1980~2018年)を台湾と日本で比較したものです。

グラフで比較していいただけると、よくわかりますが、1982年くらいから日本と同じような動きをしています。

これは、日本が平成時代のほとんどがデフレ状況であったことさらに、最近では物価目標がなかなか達成できていないことを考慮すると、台湾も金融緩和をする余地がかなりあるといえます。台湾は金利は、長期にわたって据え置かれているのですが、それだけではなく、さらに金利を低くするかゼロ金利にして、量的緩和も実行すべきと思います。私は台湾ならば、インフレ率は3%〜4%くらいでも良いのではないかと思います。

以下は、経済成長率の推移の比較です。


過去においては、5%程度の成長をしていたものが、近年で日本とあまり変わりないようです。日本は近年では消費増税をしたので、成長率は低いです。台湾はもっと経済成長をさせ、少なくとも毎年5%くらいは維持すべきです。

やはり、台湾は量的金融緩和をし、積極財政も実行すべきです。蔡英文政権は、台湾の経済を一段高い段階にもっていくべきです。これによって、さらに台湾の経済を数年間で一段高い段階にもってくことを国民に約束し実行するのです。それも、大陸中国などに頼らなくても、台湾が自力でそれをなしとげることを国民に誓うのです。

先に述べたように、中国によるパラドックスがあるので、それに脅威を感じる国民が増えたので、次の選挙で蔡英文政権は勝てるとは思いますが、それをさらに確かなものとするとともに、長期政権を狙うためには、まずはまともな経済対策を打つことを表明すべきです。

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2017年8月12日土曜日

米朝対立が破裂寸前!北「グアムに4発同時発射」緊急声明 広島、高知通過と日本にも脅し―【私の論評】北朝鮮の軍事力を等身大に見てみよう(゚д゚)!

米朝対立が破裂寸前!北「グアムに4発同時発射」緊急声明 広島、高知通過と日本にも脅し

九州周辺の上空で米空軍機と共同訓練を行う航空
自衛隊のF2戦闘機(下)=30日午前(航空自衛隊提供)
 米国と北朝鮮の対立が破裂寸前となった。狂気の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮が10日、国営メディアを通じ、「米グアムへの弾道ミサイル4発同時発射を検討している」と宣言したのだ。レッドラインを完全に越えて、威嚇姿勢を強める無法国家に対し、ドナルド・トランプ米大統領は核戦力行使の可能性まで口にし、一歩も引かない構えを示している。今月21日からの米韓合同軍事演習、来月9日の北朝鮮建国記念日を控え、朝鮮半島の緊張は極度に高まっている。

 「わが朝鮮人民軍戦略軍はグアムの主要軍事基地を制圧、牽制し、米国に厳重な警告信号を送るために、中・長距離戦略弾道ロケット『火星12』型の4発同時発射で行うグアム包囲射撃を慎重に検討している」

 北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信は10日朝、朝鮮人民軍戦略軍司令官の発表として、こう伝えた。

 発表では、トランプ氏が8日、「炎と怒りに直面することになる」とツイッターに投稿したことを、「ゴルフ場にいた米軍統帥権者は情勢の方向を全く判断できなかったまま、『火炎と憤怒』だの、何のという妄言をまたもや並び立てて、わが火星砲兵たちの興奮した神経をいっそう鋭く刺激している」と揶揄(やゆ)した。

 米国と強固な同盟関係にある日本に対しても、火星12型ミサイルが「島根県、広島県、高知県の上空を通過する」と脅しをかけた。同通信によると、朝鮮人民軍戦略軍は8月中旬までに、4発同時発射計画を最終完成し、発射待機態勢で命令を待つという。

 これは冗談では済まされない。

 北朝鮮は1998年と2009年に、日本上空を越えて弾道ミサイルを発射している。今年3月には、同国西岸から弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射している。

 北朝鮮がグアム攻撃の能力を持つ可能性は高いが、グアム島には、B1爆撃機などが配備されているアンダーセン空軍基地や、原子力潜水艦の基地アプラ港があり、米軍の重要戦略拠点になっている。同時発射は事実上、米国に対する「宣戦布告」といえる。

 正気を失ったかにみえる北朝鮮に対し、トランプ氏の発言も過激化している。9日のツイッターへの書き込みでは、「現在の米国の核戦力は世界最強だ。できれば使わないで済むことを願うが、われわれが世界最強の国でなくなるときは絶対に来ない!」と核戦力を誇示したのだ。

 トランプ氏だけではない。軍人出身で、開戦リスクを熟知するジェームズ・マティス国防長官も強硬姿勢に転じた。

 9日に出した声明で、「北朝鮮は孤立をやめ、核兵器追求を放棄する道を選ぶべきだ。『体制の終焉(しゅうえん)、人民の破滅』につながるいかなる行動の検討もやめる必要がある」と発表した。これまで、マティス氏は「軍事的に解決しようとすれば信じがたい規模の悲惨な事態をもたらす」と述べ、外交的解決を訴えていた。正恩体制の「終焉」にまで言及した今回の声明は、マティス氏が慎重姿勢を転じたようにも読み取れる。

 米朝の緊迫ムードが高まるなか、世界最強の米軍が誇る原子力空母「ロナルド・レーガン」が9日、母港の米海軍横須賀基地に帰港した。

 今月21日からは、韓国で定例の米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」(UFG)が始まる。演習に合わせ、米原子力空母2隻が今月中旬、朝鮮半島近海に展開することが検討されており、「ロナルド・レーガン」の帰港は、それに向けた準備の可能性もある。

 さらに、北朝鮮は9月9日、建国記念日という節目を迎える。演習の始まる今月21日から9月上旬という期間は、「米朝開戦のリスク」が最も高まる時期といえるのだ。

 米朝激突となれば、日本には「戦後最大級の危機」が襲いかかることになる。安倍晋三首相は先の内閣改造で、「有事にも対応できる布陣」を敷いたとされるが、この国家的試練を乗り越えられるのか。

【私の論評】北朝鮮の軍事力を等身大に見てみよう(゚д゚)!

さて、ブログ冒頭の記事を読むと、なにやら、すぐにでも米北の戦争がおこり、とんでもないことになるような感触を受ける人も多いのではないでしょうか。

確かに北朝鮮のミサイルは年々能力を高め潜在的な脅威となっていることは確かです。しかし、日本のマスコミは北朝鮮軍の実力を報道することもなく、危機を煽るばかりです。これだけでは、正しく状況を判断できません。本日は、北朝鮮軍の実力に関して掲載します。
 
北朝鮮は2012年に人工衛星の打ち上げに成功しており、ICBMの基本的な技術は持っているはずですが、まだ実験すらしていません。つまり米国に届く長距離ミサイルが実戦配備されるには、今後数年を要するとみられます。

2012年に人工衛星の打ち上げに成功した北朝鮮
米軍基地のあるグアム島を射程に入れた中距離弾道弾ムスダンは実戦配備されているとみられますが、昨年10月に試射され失敗に終わっています。ムスダンは中国製とみられることから、発射に際しては中国の許可が必要となるはずです。

つまり、安全装置を解除するためには暗証番号を入力する必要があり、その番号はその都度、中国に聞かなければならないのです。正しい番号が入力されずに発射されれば、発射は失敗に終わる仕組みです。

昨年4月15日に北朝鮮が移動式の中距離弾道ミサイル(IRBM)「ムスダン」の発射に失敗した際、現場にいたミサイル技術者らが死亡、もしくは負傷し、移動式発射車両も破損したといいます。 

米国の保守系メディア「ワシントン・フリー・ビーコン」は20日、米軍関係者や外交消息筋の話を引用し「北朝鮮は東海岸にムスダンIRBM2基を配備し、発射試験を準備した。ところが1発目のIRBMが発射からわずか5-6秒後、90メートルほど上昇したところで爆発し、もう1基は発射もできなかった」「ムスダンの発射失敗に関する報告書の内容をよく知る外交消息筋は『ムスダンの発射失敗の原因は、燃料システムやターボポンプの問題とみられる』と語った」と伝えたとしています。

これが事実がどうかはわかりませんが、当時は米国によるサイバー攻撃ではないかという噂も流れました。

私は、これは金正恩がムスダンを打ち上げようとしても、ちゅうごくが暗証番号を教えなかったので、暗証番号を解読させて打ち上げに及んだのではないかと思います。ただし、その暗証番号は間違ったものであった可能性が高いと思います。

ムスダンの暗号は複数あって、正常に作動して打ち上げを成功させるものと、異常を起こし途中で失敗するものもあったものと思います。北朝鮮の科学者は、暗証番号を解読したつもりが、それは正常に作動させるものではなかったという可能性があります。

「米グアムへの弾道ミサイル4発同時発射を検討している」といくら、金正恩氏が力んでみても、中国の許可がなければこれは不可能です。中国がこれを許可するとはとても思えません。

当然米国もこれを承知しており、それを知った上で、トランプ氏やマティス氏は金正恩の「米グアムへの弾道ミサイル4発同時発射を検討している」という威嚇に対して、威嚇で応じたということです。

ムスダンの発射
もちろん、北朝鮮製の弾道弾もあるにはあります。例えば、3月6日に4発発射され、秋田沖に着弾した「スカッドER」は北朝鮮製です。また、日本を射程に入れる「ノドン」も北朝鮮製であり、発射に中国の許可を必要としません。5月14日に発射した中距離弾道弾「火星12号」も同様です。

しかし、これらのミサイルは旧式の液体燃料型であり、発射に際してはその都度、数時間かけて燃料注入をしなければなりません。つまり発射の予兆を探知されやすく、米軍による攻撃の格好のターゲットになります。また、壊滅しそこなったとしても日米韓の分厚いミサイル防衛システムに阻まれることは必定です。

そして、懸念が広がっている核爆弾の開発状況については、昨年9月に5回目の核実験に成功し、今後近いうちに、6回目の実験を実施するのは確実とみられています。しかし、弾道弾に搭載できるように小型化、軽量化するには、まだ数年を要するでしょう。

北朝鮮の潜水艦の中で最も大きい1,700トンロミオ級を視察した金正恩
また、北朝鮮の海軍は排水量1700トンのロメオ級潜水艦を20隻程度保有していますが、これは旧ソ連製であり実力としては第二次世界大戦当時の標準的能力しか有していないです。現在3500トン級の戦略潜水艦を建造中ですが、まだ完成にはほど遠いです。日米の対潜水艦能力は世界最高水準にあり、これに対して北朝鮮の潜水艦は全く無力です。

北朝鮮海軍の潜水艦が日本海で1週間にわたって活動していると、NHKが2014年7月23日に米国政府当局者の話として報じました。

それによると、「潜水艦はディーゼル型のロメオ級で、アメリカの監視記録では、この型の潜水艦の場合、通常、4日程度で活動を終えるが、今回はこれを超えておよそ1週間に及び、これまでで最も長い」また、「アメリカ軍はこれまでにない特異な行動だとしてその目的などについて分析を進めている」だと伝えました。

ロメオ級は北朝鮮の主力潜水艦だが、旧ソ連で1950年代に開発された旧式です。弾道ミサイルの発射機能は備えておらず、騒音の大きいディーゼルエンジンで航走し、最大潜航可能時間は約半日程度です。米軍や海上自衛隊のソナーから逃れるのは難しく、うまく水中に隠れても、空気補充のため浮上した際にレーダーで必ず探知されてしまいます。

つまり、この潜水艦自体は日米にとってまったく脅威にならないということです。

では、北朝鮮はなぜこんなことをしたのか。すぐに思い浮かぶのは、弾道ミサイル潜水艦の実戦配備に向けた訓練だろうということです。

核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射台となる原子力弾道ミサイル潜水艦は、米国やロシアなどにおいては、核戦争勃発時の報復攻撃の柱となることを期待され運用されてきました。水中を自在に動き回る隠密性により、他の核戦力に比べ、敵からの第一撃を生き延びる可能性が高いためです。

しかし、ディーゼル推進で静寂性に欠け、長時間の潜航が出来ない北朝鮮の潜水艦に、このような役割を担うことはできません。

ということは、金正恩党委員長は恐らく、いざという時には先制攻撃に使う目的でSLBMをも開発しているものと思われます。実際、その後SLBMを発射という報道を北朝鮮はしていましたが、これは明らかにフェイクとわかる代物でした。

北朝鮮のミグ29
北朝鮮空軍、正式名称「朝鮮人民軍空軍」は、全軍の航空機運用を一手に引き受けており、数の上では1000機もの航空機を保有、うち半数の500機を戦闘機が占める世界トップクラスの兵力を誇る空軍です。
ところが500機の戦闘機のうち現代戦闘機といえる能力を持つ機種はせいぜいMiG-23とMiG-29のみであり、両機をあわせても100機に足りません。また1996(平成8)年にロシアよりMiG-29を購入し、1999(平成11)年にはカザフスタンより旧型のMiG-21bisを購入して老朽機の更新に当ててたのが最後、それ以降はまったく更新が行われていない状況です。
ミグ23は第3世代型の旧式機であり、第4世代型のFA18やわが国のF15に太刀打ちできる代物ではありません。

ミグ29は第4世代型ですが、パイロットの年間飛行時間が20時間程度と日米の150時間以上と比べて極端に少なく、格闘戦は不可能です。これに関しては、中国のパイロットですら、慢性的な部品不足などにより航空機の稼働率が低いため、年間25時間程度といわれています。最新鋭スホーイ27の部隊でもやっと年間100間程度と推測されていることから、北朝鮮のパイロットの技量は推して知るべし水準のものでしょう。

しかも、山口県の岩国の米軍基地には第5世代型のF35が配備されており、ミグ29を一瞬にして壊滅できる実力を誇っています。それに自衛隊もF35の配備をはじめました。

北朝鮮のT27戦車
北朝鮮の陸軍はT72やT62といった旧ソ連製戦車を多数保有していますが、やはり世代的に古く米国のM1戦車の敵ではありません。自走砲として注目されているのが300ミリ多連装ロケット砲ですが、制空権を維持できない状態では戦車同様、米軍の戦闘攻撃機の餌食になるしかありません。

北朝鮮の特殊部隊は10万~20万人いるとされ、北朝鮮軍の中では唯一危惧されるべき存在です。潜水艦による北朝鮮武装兵士浸透事件が起きた1996年、北朝鮮が米国のグリーンベレー、英国のSAS(特殊空挺部隊)等に比肩しうる強力な特殊戦部隊を育成していたことが判明し、米国を震撼させました。

何よりも驚くのはその数です。北の特殊部隊の兵力は当時8万から10万人と言われましたが、これは世界でも類を見ない多さです。

江陵浸透事件 手前が射殺された北朝鮮工作員
この部隊の練度の高さが証明されたのは1996年9月の江陵浸透事件です。

韓国の江原道江陵市近辺で工作員を回収する北朝鮮特殊潜水艦が座礁した時、乗組員と工作員を合わせた26名が韓国内に逃亡。軍と警察の掃討作戦は二か月を要し、韓国側は軍人12名、警察官1名、民間人4名の犠牲者を出しました(負傷者17名)。
1名の工作員を追うのに数十人規模の人員が動員される有様だったのです。

海保巡視船が北朝鮮の不審船を撃ち、沈めた時も、北朝鮮工作員は自沈を選んだことから見ても、彼らは本国への強い忠誠心を見せています。

日本人拉致事件を見れば分かるように、すでにこの工作員メンバーはスパイ天国の日本に多数、入り込んでいると見られています。

朝鮮有事勃発とあらば、彼らが日本各地で活動を開始する危険性が高まります。

金正男暗殺のような事態が日本の要人を狙って引き起こされる可能性がありますし、原発に向けてテロ部隊が夜半に上陸してくる可能性も否定できません。

ただし、これを管理している国家保衛省の上級幹部が最近多数解任されており、有事に際してどれほど動けるのかは不明です。

テレビの報道をだけをみていると、頻繁にミサイル発射の報道がなされており、北朝鮮の軍事力については報道されてはいません、これではあまりにバランスに欠けているので、本日は北朝鮮の軍事力の実体について、触れてみました。

最後に一言ですが、たとえ圧倒的に相手側が劣勢であったにしても、戦争とは個別の戦闘の集合の結果あり、いくつも戦闘から成り立っているものです。

ということは、日米韓は、北朝鮮と戦争をした場合、日米韓は必ず大勝利します。特に空海では圧倒的でしょう。ただし、個別の戦闘では負けることもあるわけで、そのときには自衛隊員や軍人も犠牲になることもありえますし、市民も犠牲になる場合もあります。

韓国や日本国内にも、北朝鮮の特殊部隊が攻撃を仕掛けるかもしれません。すでに国内に潜入している工作員がこの攻撃に加わるかも知れません。だとしても、補給路がたたれるし、そもそも北朝鮮は大人数の特殊部隊を韓国や日本に送り込むことはできません。

昼であれば、すぐに発見されてしまいます。夜陰に乗じて少数の部隊を送り込むことができるだけです。

そのため、日本国内での戦闘があったにしても、小規模で短期で終息するものと考えられます。それでも、犠牲者は出る可能性はあります。

北朝鮮有事の場合は、その覚悟はしておかなければならないということです。

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2016年1月1日金曜日

安倍首相、慰安婦問題は日韓合意で完全に終結と認識「もう謝罪もしない」=韓国ネット「これでは謝罪を受けたのか脅しを受けたのか分からない」―【私の論評】日韓合意の背後には米国の圧力?だが、日本に覚悟がなければ、歴史問題は必ず蒸し返される(゚д゚)!


Record China


日本メディアによると、安倍首相は29日、「今後、この問題について一切言わない。次の日韓首脳会談でももう触れない。そのことは電話会談でも言っておいた。昨日(28日の日韓合意)をもってすべて終わりだ。もう謝罪もしない」「ここまでやった上で約束を破ったら、韓国は国際社会の一員として終わる」と述べた。

この報道に、韓国のネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられている。

「これでは謝罪を受けたのか脅しを受けたのか分からない」
「これが謝る側の言うことか」
「韓国国民を完全に無視している」

「安倍の一方的なたわごとで無理な主張だ」
「ところで、安倍は心からの謝罪をしたのか?」
「つまり安倍のやったことは、人の尊厳をお金で解決するということだ」

「こんな交渉をして、日本も迷惑かもしれないが、韓国も迷惑だ」
「現政権最大の失策だ。恥を知れ」

「すでに解決した事案をどうこう言わずに、将来を見て歩んでいこう」
「両国とも合意した内容をちゃんと守ればそれでよい」

【私の論評】日韓合意の背後には米国の圧力?だが、日本に覚悟がなければ、歴史問題は必ず蒸し返される(゚д゚)!

この問題に関しては、私自身は、昨年のブログ記事で、結局頓挫するか、韓国政府の蒸し返しで終わるであろうことを掲載しました。ただし、今後は一切謝罪しないとか、さらには、韓国政府が蒸し返しをした場合、事実上の国交断絶を含む制裁措置も可能になったことを掲載しました。

もし、蒸し返しがあつた場合には、本当に事実上の国交断絶でも良いと思います。北朝鮮に攻められても、日本としては韓国は、日本防衛のための防波堤になってもらうだけで、積極的に政府や国民の生命を助けるなどのことをしなくても良いと思います。

ましてや、戦争などがあったにしても、難民・移民の受け入れは一切しないという方針で望むべきです。経済援助などもっての他です。

この問題に関しては、様々な論評がありますが、以下に倉山満氏によるご自身のブログの「砦」に昨年の大晦日に掲載されていた論評を以下に掲載します。

倉山満氏
歴史問題を解決するためには、本来は戦争に勝たねばならないという覚悟があるだろうか。 
日本人は世界で何が起きているのか、どのような歴史を辿って現在のような国際政治の”レジーム“になったのかに対して、無知すぎるのだ。 
歴史問題の解決に即効薬はない。鉄と金、すなわち軍事力と経済力を蓄える努力は政府が中心になって行わなければならないが、紙、すなわち文化力は国民全体の問題である。 
特に我が国は一部の指導者だけに任せるのではなく、国民全体の文化力が高かったからこそ、自分の足で立って生きてこられたのである。ここ最近の七十年を除いて。 
歴史問題が発生したのは、昭和56年の教科書騒動である。このとき、中国と韓国の抗議に対して、日本政府は教科書検定を近隣諸国に配慮して行うと約束した。 
過去に決着積みの問題の蒸し返しは、敗戦の講和条約の条件を釣り上げたのと同じである。 
また、自らを「総力戦」に敗北してる状態に再び追い込んだのと同じである。
この頃、東アジアでも冷戦が激化し、ソ連の脅威に対抗するために、中国がアメリカを盟主とする自由主義陣営に接近している最中の騒動だった。よりによって、同じ自由主義陣営の韓国だけでなく、共産主義国の中国までが日本に融和的だったときに、過去の蒸し返しが行われた。 
さらに悪いことに、日本の言論界の自虐的な様相は激化し、ついに政府の検定を通過した教科書で「ナチスよりも悪いことをした国」と糾弾するような記述まで登場する始末だった。 
欧米は、ドイツの動向には神経質だったが、何の強制もされないのに自虐的な歴史教育を行っている日本には無関心だった。 
ドイツ(当時は西ドイツ)のほうはよく言われるように、戦争責任をすべてナチスに押しつけ、ドイツ民族や国家としては補償しか行っていない。 
重要な用語なので、確認するが、補償とはあくまで「お悔やみ」であって、自らの非は認めていない。ドイツ(人)もまたナチスの被害者であるが、行為そのものはヒトラーに操られて迷惑をかけているので、その補償はして善意を示すということである。 
非はナチスだけである。 
その代わり、ナチスを否定する教育を行うことを事実上の国際公約にしている。そうしなければヨーロッパでは生きていけないからだ。ドイツもその他ヨーロッパ諸国の双方ともに、このフィクションを胡散臭いと思いながら、現実政治の都合上、そうした建前で外交関係を続けてきた。 
そこに自ら「ナチスよりも悪いことをした国」と名乗り出てくれる国が現れたのだ。 
さらに、平成5年の「従軍慰安婦に関する河野談話」と「侵略戦争に関する細川談話」、二年後の「植民地支配と侵略に関する村山談話」と、「過去の侵略と戦争犯罪」を謝罪する政府声明を出し続ける。 
これらはすべて、サンフランシスコ講和条約以降の条約に上乗せされる約束である。 
敗戦国の側から過去の戦争に関する謝罪を申し出ているのである。補償と違い、謝罪は自らの非を認めている。 
戦勝国に拒否する理由はない。何の労もなく日本を国際社会に受け入れる条件を釣り上げることに成功したのだ。 
従軍慰安婦関する河野談話、自らを侵略国家だと認めた村山談話。これらは時の総理の一声で覆せるような甘い内容ではなく、講和条約として国際法化しているような談話なのである。 
中国や北朝鮮、あるいはロシアが大日本帝国の復活を望むはずがない。アメリカや韓国も同じである。 
アメリカ国内にも、日本が強くなったほうがよいとする「ストロングジャパンポリシー派」はいる。 
しかし彼らの誰が、日本がアメリカと同等以上に強くなることを望むだろうか。アメリカもことごとく、日本自らが言い出した談話を守れと迫る。 
日本が敗戦国のままでいてくれたほうが、国際社会にとって都合が良いのである。日本が歴史問題を解決しようと真剣に思うなら、もう一度戦争を行なって勝つ覚悟が必要なのである。 
歴史問題を解決するためには、本来は戦争に勝たねばならないという覚悟があるだろうか。 
日本人は世界で何が起きているのか、どのような歴史を辿って現在のような国際政治の”レジーム“になったのかに対して、無知すぎるのだ。 
歴史問題の解決に即効薬はない。鉄と金、すなわち軍事力と経済力を蓄える努力は政府が中心になって行わなければならないが、紙、すなわち文化力は国民全体の問題である。 
特に我が国は一部の指導者だけに任せるのではなく、国民全体の文化力が高かったからこそ、自分の足で立って生きてこられたのである。ここ最近の七十年を除いて。 
 よいお年を~♪
さて、歴史問題を解消することは、かなり険しいことを倉山氏は語っています。もう一度戦争をして、勝てるくらいの力を持たないとできないとしています。

私も、そう思います。実際に戦争するしないは別にして、現在のアメリカや、ロシア、中国などと互角に戦って、勝てるくらいの力と、国民全体の文化力をつけないと、歴史問題は解決できないとしています。

私も、そう思います。本来負けなくても良い戦争(日本の戦争は最初から無謀だったとの考えは、戦後に米国に日本弱体化の一環として刷り込まれたものです。それだけ、米国は日本を恐れたということです)に、負けそれで現在のよう歴史問題が存在するわけですから、 これを元に戻すというのならそれくらいの覚悟がないとできないということです。

この考えに私は大いに賛同します。日韓合意も、韓国内で政権交代になれば、反故にされる可能性は濃厚です。その前に頓挫してしまう可能性も濃厚です。しきし、韓国側(民間団体など)が、合意に反対して合意履行に反発して日本を非難することになれば、日本政府は合意違反だとして国際社会で韓国を非難できることになりました。

その意味では、安倍総理は、一定の成果をあげたとみるべきでしょう。そうして、韓国がこのように変わったように見えるのは、やはり背後に米国の圧力があった見るべきでしょう。

31日、韓国大統領府のフェイスブックに掲載された「新年の辞」を発表する朴槿恵大統領韓国の朴槿恵大統領は1日、慰安婦問題をめぐる日本との合意を、自由貿易協定(FTA)
の拡大と並べて「外交成果」として挙げた
米国からすれば、韓国が従来のように北朝鮮や中国と対峙する、存在であって欲しいのは確かだと思います。しかし、韓国は、中国寄りの姿勢を明確にしたため、アジアの安全保障にとっても危機が迫っていました。

しかし、ご存知のように、韓国は自国の経済が悪化していたので、中国に擦り寄る姿勢を見せたのですが、その中国の経済が低迷し、韓国の頼みの綱とはなり得ないことが明らかになりました。だからこそ、米国側は、ここぞとばかり、慰安婦問題に関して、韓国に日韓合意を迫ったのだと思います。

この推論が正しかったとして、米国が、このような行動に出たのは、戦後初めてのことだと思います。倉山氏が指摘するように、米国などは日本が弱体化したままのほうが良かったので、韓国による慰安婦問題による日本避難はある意味では都合の良いものでした。

米国が黙っていても、韓国が勝手に日本弱体化を推進するので、自分の手を汚さずに日本を弱体化したままにしておけるということだったと思います。

しかし、ご存知のように、南シナ海での中国の傍若無人ぶりは、すでにアメリカの許容範囲を超えてしまいました。だからこそ、米国はイージス艦「ラッセン」を派遣したり、B52戦略爆撃機を南シナ海の中国の埋立地の真上を飛行させたりしたのです。

こんなときに、韓国が中国に擦り寄り姿勢を見せて、アジアの自由主義陣営の足並みが崩れることは、アメリカは許容できなかったのだと思います。

当然のことながら、米国は日韓合意を日本に対しても迫ったものと思います。このような圧力もあったし、安倍総理としては、この千載一遇のチャンスをなんとしても、ものにしようとして、今回のような行動に出て、日韓合意に漕ぎつけたのだと思います。

短期的には、このようなこともあり、しばらくは韓国は日韓合意に基づいて行動するかもしれません。しかし、世界情勢は変わるものです。

中国が経済的に低迷し、さらに最近では毎年10万件発生するといわれる暴動がさらに先鋭化して、内乱、内戦レベルになり、それに拍車をかけるようにこのブログでも以前掲載した、第二イスラム国の脅威が顕在化して、中国内でテロが頻発するよになり、それこそ、過去の中国の歴史における何度も繰り返されてきた、帝国の分裂のような状況になったとしたら?

そこまで行かなくても、その過程で、中国の力が衰え、誰が見ても超大国にはなり得ないとみなすようになった場合は、どうなるでしょうか。

そんなときには、またぞろ、韓国は態度を変えるかもしれません。そうして、中国の力が相対的にかなり弱まった後では、日本がまた力をつけると困るということで、米国の態度も変わり、韓国の歴史修正を黙認するようになるかもしれません。

このようなことは、十分に考えられます。その時に、日本が倉山氏が語るように、鉄と金、すなわち軍事力と経済力を蓄える努力は政府が中心になって行い、戦争が起こっても勝てるだけの力をつけ、紙、すなわち国民全体の文化力が高ければ、他国を意識しなくても自分の足で立って生きることができ、そうして、歴史問題の呪縛から解かれるということです。

そうして、私達の国日本は、70年以上前までは、そのような国だったのです。日本が完璧に歴史問題の呪縛から解かれるのは、これをおいて以外にありません。

今年は、この方向に向かって、一歩でも近づけるように、自分なりに努力していきたいと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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