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2018年8月27日月曜日

平和ボケと批判された人民解放軍のビジネス活動が全面禁止へ―【私の論評】統治の正当性が不確かな中共がまともな軍隊を持つことを強引に進めれば、自身が滅びる(゚д゚)!

平和ボケと批判された人民解放軍のビジネス活動が全面禁止へ

人民解放軍を視察した習近平

中国の習近平国家主席は7月末、中国共産党の最高意思決定機関である党政治局常務委員会を開催し、現在、中国人民解放軍が行っているビジネス活動を年内いっぱいで全面的禁止することを決めた。

 習氏は「軍の本分は戦うことであり、商売ではない。商売をする時間があれば、軍事演習を行うべきだ」などと檄を飛ばした。軍機関紙「解放軍報」は7月初め、社説で「中国軍は平和ボケ」などと指摘し、軍の怠惰な雰囲気に強い警戒感を示していた。

 中国国営新華社電によると、軍による「有償服務(ビジネス)」は10万6000件以上に上っており、この決定を受けて、年内にすべて禁止する措置を軍内の各部門に通達。「これに抵触すれば、重大な処分を受けることになる」としている。

 軍のビジネスとしては、軍傘下の病院での政府関係者を中心とする診察や治療、軍の学校での研修、軍所属研究機関での委託研究、倉庫や埠頭の使用のほか、軍の出版、映像、音響などの事業の代行など。

 習氏は2015年3月の中央軍事委工作会議で、軍のビジネス活動を全面的に禁止する考えを明らかにしたほか、2016年3月には具体的に「3年以内」との期限を提示している。今回の党政治局常務委での決定は、この3年以内の禁止期限を3カ月間前倒しすることになる。

 日本人の感覚からすれば、軍が内職ともいえる10万件以上ものビジネスを行っていること自体が驚きだが、中国人民解放軍はもともと野戦軍で、しっかりとした軍規や組織があったわけではない。志願兵中心の自然発生的な軍隊であり、食糧や武器なども「自給自足」する風潮が強かった。このため、軍本体が野菜を作ったり、鶏や豚や牛を育てるほか、副業で資金を得るという伝統が残っていた。

 1980年代に改革・開放路線が導入されると、このような軍内に残る伝統の影響もあって、軍本体がビジネスに手を染めるケースが増え、それとともに、腐敗問題が深刻になってきた。

 軍内の地位を得るために、汚職が蔓延。軍内に保管されていた戦闘機、戦車、装甲車、小銃、戦略用燃料、大量の野戦ベッド、軍靴などの軍需物資が、忽然と「消えて」転売されていた事実も明るみになっている。

 『習近平の正体』(小学館刊)などの著作もあり、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は習氏の実質的な『内職禁止令』について、次のように指摘している。

 「習氏が最高指導者に就任するや、『反腐敗運動』が本格化し、多数の党・政府・軍の幹部が逮捕されているが、解放軍報は最近、「軍は『平和病』にかかっている」などとして軍の体質を鋭く批判している。これは習氏が米国との対立激化や悲願である台湾統一などを控え、軍の戦闘力に大きな不安を抱いていることも影響しているだろう。そして、今回の軍のビジネス全面禁止命令は習氏の焦りを如実に現しているといえよう」

【私の論評】統治の正当性が不確かな中共がまともな軍隊を持つことを強引に進めれば、自身が滅びる(゚д゚)!

中国共産党は経済政策ですら権力闘争の道具にしてしまう恐ろしい集団です。それは激しい利権の奪い合いであり、日本で例えるなら、反社会的勢力や裏社会における仁義なき戦いそのものでする。

中国においては、あらゆる法律、規制が派閥闘争の妥協の産物であり、実際にその法律、規制が守られるかどうかさえ、現場を仕切るさまざまな暴力装置(軍、警察)の気分次第で決められてしまいます。

中国の城管


たとえば、中国では「城管(じようかん)」と呼ばれる、都市管理局に相当する部局の公務員が路上秩序を維持するという名目で露天商を次々に暴行しています。

日本では違法駐車の取締員のような立場の「城管」がなぜそんなことをするか理由はよくわかりません。一説によれば露天商がいわゆる「ショバ代(賄賂)」を払わなかったからとか、たんに威張り散らして街をわが物顔で支配しているなどといわれています。

また、全国各地で大暴れする「城管」は、時として人民解放軍と「戦闘状態」に陥ることもあるといいます。

たとえば、2013年9月4日午後5時、山東省青島市石老人村で、城管(都市管理官)と、解放軍の大乱闘が発生しました。軍の高級幹部用マンションに付属する邸宅管理棟がその敷地をはみ出て建てられた違法建築物であることから、現地の城管が自治体の指示で管理棟を取り壊しに行ったところ、これに反対する解放軍兵士が解体を妨害、乱闘となりました。

人数的に勝ち目もなくボコボコにされた軍兵士は銃を持ち出そうとしたそうですが、事前の申し入れから経済格差で豪華なマンションがこれ以上注目を引くことを恐れた軍幹部が青年兵士たちを押しとどめ、なんとか殺傷沙汰にはならなかったとのことでした。

さて、この記事を読んで多くの人が疑問に思ったことでしょう。なぜ、人民解放軍の高級幹部は豪華な邸宅に住んでいるのか。それは、日本のために日夜活躍する自衛官たちが一般の公営住宅と同程度の官舎で暮らしているのとは対照的です。

そもそも、人民解放軍がアメリカ軍や日本の自衛隊と同じく軍隊だと思ったらトンデモない勘違いです。人民解放軍とは「武装する総合商社」であって、われわれ日本人が考えるところの軍隊ではありません。

しかも、人民解放軍は、共産党の配下であり、言ってしまえば共産党の私兵です。国民の生命と財産を守ることら主要任務とする国民国家の軍隊とは全く異なる組織です。

人民解放軍は国境地帯で故意緊張を誘発しては中央政府に予算を要求し、不動産開発、ホテルやバーの経営、資源貿易などさまざまなビジネスに投資する立派な「産業」なのです。

よって高級幹部が豪華なマンションに住んでいたり、軍の経営するホテルで毎晩幹部たちが宴会をしていたり、直営バーにロシア人の売春婦がたくさんいたりすることに驚いてはいけないのです。

解放軍の腐敗は、幹部だけのことではありません。一般の兵士からその親まで巻き込んだ、腐敗の嵐が吹き荒れているといっても過言ではありません。

中国では現実はどうかは別にして、軍隊は、安定した就職先と捉えられています。実際、ある程度上級の階級になれれば、そうだったのでしょう。軍隊への入隊は『待遇、福利がよく一生を保障される』という意味で、鉄で作ったおわんのように割れずに安定している『鉄飯碗』になぞらえられています。多くの親たちはわが子を入隊させるために軍幹部にこぞって賄賂を贈るのです。

賄賂の相場は、2万元(約34万6000円)から30万元(約519万円)といいます。軍隊内では、官位を“商品”として売買する「売官買官」なる行為も横行しています。

こうした腐敗によって解放軍全体の質は史上最低レベルにまで低下しています。遊び好きな将校の中には、自分の部下をお抱えのコンピューターゲームのアップグレード係にする傍若無人な『配属』までやっている始末です。

党指導部は、以前からこうした兵士たちの劣化に危機感を抱き、綱紀粛正に躍起でした。2013年11月に行われた第18期中央委員会第3回総会(3中総会)では、「反腐運動」と銘打った軍部の腐敗撲滅運動を展開しました。これに先立つ、同3月には前代未聞の軍紀も発布していました。

『軍人違反職責罪案件立案標準規定』では、主に防衛戦における将校・兵士の逃亡・投降行為について規定しています。党指導部は、外国と戦争が起きたとき、解放軍の将校・兵士が敵前逃亡してしまうことを恐れているのでしょう。しかし、党指導部が軍紀で定めるのも無理はないです。敵前逃亡の例が実際にあるからです。

「東京を爆撃する」とほざいた羅援少将

中越戦争開戦直前の1979年、解放軍少将で中国戦略文化促進会の常務副会長を務める羅援氏、つまり冒頭で「日本は火の海」と挑発したその本人が、党高級幹部だった父親の口利きで前線勤務を免れています。彼はあちこちで『日本、米国と戦争する』と息巻く解放軍きってのタカ派です。しかし、そう吹聴する本人が戦争逃亡兵だったのだから笑えないです。

口先だけの見かけ倒しは、まだあります。2009年1月にはこんなことも起きました。中国の大型貨物船がソマリアの海域で海賊に襲われ、船員が人質として拿捕(だほ)されました。中国世論は「貨物船を武力で救出すべきだ」と沸き立ち、これを受け、中国艦隊がソマリア海域に派遣されました。とこめが、武力奪還はならなかったのです。

中国政府はソマリアの海賊におとなしく400万米ドル(当時で約3億6000万円)の身代金を差し出して、商船と船員を取り戻したのです。単なる威嚇のために艦隊を派遣したに過ぎなかったのです。

アデン湾で警備に当たる中国人民解放軍海軍の艦艇

これは、人民解放軍の常套(じょうとう)手段である『孫子兵法』の『戦わずして屈服させる兵法』です。日本に対しても同じハッタリ戦術を使っているに過ぎません。心理戦を仕掛けているだけで、実戦となれば、解放軍は何もできないでしょう。1894年の日清戦争の結末を再演することになるだけです。すなわち、敗北です。

ましてや、いずれの先進国の軍隊にも同じような条件で戦えば、勝つことはないでしょう。勝つのは、一般市民を弾圧したり、自分たちより圧倒的に不利な状況で戦う弱小国の軍隊を相手にしたときだけでしょう。

このような、腐敗まみれの人民解放軍は実際に米軍は無論のこと日本の自衛隊にでさえ対峙したときに、全く勝ち目はないでしょう。解放軍の腐敗は、幹部から下士官まで浸透しています。賄賂の実体をみれば、それは誰の目にも明らかです。誰が腐敗まみれの上官のために本気で戦うことができるでしょうか。

だからこそ、習近平は人民解放軍のビジネス活動を全面禁止しようとしているのでしょうが、それくらいのことで、人民解放軍がまともになるとは考えられません。

本来ならば、ある程度時間をかけて、人民解放軍とは全く別の軍隊組織をつくり、それこそヒトラーが突撃隊幹部を暗殺して、有名無実にしてしまったように、人民解放軍の幹部を情け容赦なく粛清するなどの過激なことをしない限り、習近平はまともな軍隊すら手にすることはできないでしょう。

突撃隊地用エルンスト・レーム(左)とヒトラー
ヒトラーは、レームを粛清した

このような手段を避け、先進国からみてまともな方法で、新たなに軍隊を創設するということになれば、それこそ国民国家の軍隊を創設しなければならず、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめる必要があり、そうなれば中国共産党による統治を根本から改めなければならず、その時は現体制は崩れることになります。

人民解放軍の腐敗などといいますが、統治の正当性が不確かな中国共産党中央政府がまともな軍隊を持つことを強引に進めれば、自身が滅びることになります。

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2017年4月9日日曜日

平和ボケに染まりたくないあなたへ… 韓国は崩壊への道まっしぐらか? 『さらば、自壊する韓国よ!』呉善花著―【私の論評】今日の有様をリー・クアンユーは予言していた(゚д゚)!



韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は逮捕され、1カ月後に後継者が選ばれることになりました。そんな激動する朝鮮半島情勢をいち早く分析したのが本書です。

ソウル拘置所に向かう韓国の前大統領、朴槿恵容疑者=31日未明
 呉善花氏は韓国から留学生として30年余前に来日。そのあと日本に帰化しています。それ故に透徹した眼で「母国」を観察しています。今回の一連のスキャンダルのキーパーソンである崔順実(チェ・スンシル)らと朴氏との長年の癒着や、朴親子(朴正煕(チョンヒ)・槿恵)の確執、韓国容共リベラル派の潮流(金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン))などを総ざらい。
崔順実被告
 さらに慰安婦問題の嘘、金正男暗殺事件、次期大統領選挙の予測など盛りだくさんです。これ一冊で、朝鮮半島をめぐる日本、韓国、北朝鮮、中国など各国間の厳しい国際情勢の動きが手にとるように理解できると思います。

 呉氏は、大統領選挙では容共リベラル派の候補者が一歩リードし「従北政権」誕生の可能性が高く、万が一、保守派の大統領が逆転勝利しても、日韓関係は今より冷え込み、韓国が北朝鮮にすり寄っていくのは必至とみています。

 それを阻止する道は、軍による「戒厳令」しかないだろうと……。かたや、日本海に向けてミサイルをぶっ放すしかノウのない北朝鮮。その北朝鮮と所詮は「五十歩百歩」の独裁国家中国。こんな厳しい国際情勢が目の前にあるのに、日本の国会は能天気に何を議論しているのやらと不安になります。

 そんな「平和ボケ」に染まらないためにもこの一冊をお手元へ。(ワック・920円+税)

 ワック株式会社「書籍部・歴史通」編集長 仙頭寿顕

【私の論評】今日の有様をリー・クアンユーは予言していた(゚д゚)!

北朝鮮には核・ミサイル問題について、中国の仲介を受け入れるつもりはなさそうです。だとすれば、昨日もこのブログに掲載したように、米国単独で北朝鮮に対して軍事行動に踏み切る可能性が出てきました。追い詰められた北朝鮮が最初に矛先を向けるのは、超大国の米中ではなく、むしろ日本と韓国です。

金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(ジョンナム)氏殺害には、毒ガスのVXが使われていました。金正恩氏は体制維持のためならば、同胞に対しても核や化学兵器の使用をためらいません。ご存じのように、北朝鮮はつい先日の5日にもミサイルを発射したばかりですし、6日には米軍がシリアに向けてミサイル攻撃をしました。

これで、いやがおうでも、韓国内にもかなり緊張が走るのではと思っていたのですが、ところが、まったく不思議なことにその韓国が、日本以上に「平和ボケ」の症状を呈しています。

来月に投開票される大統領選で最有力候補とされるのが、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏(64)です。文氏は自分が大統領になれば、北朝鮮への経済援助を再開すると明言しています。在韓米軍に配備された迎撃ミサイルシステムには否定的です。日本には、慰安婦合意の再交渉を求めています。文氏には日韓両国で北朝鮮に立ち向かおうなどという考えがまったくありません。文氏を支持する人たちは、本気で現体制の北朝鮮との融和を望んでいるのでしょうか。

北欧のスウェーデンから先月、7年前に廃止した徴兵制を復活するとのニュースがありました。バルト海で軍事的圧力を強めるロシアの脅威に対抗するためだといいます。日本では安保法制をめぐって、徴兵制復活につながるとの批判がありました。ハイテク兵器を扱う現代の軍隊に、素人は不要である。ナンセンスな議論だった。スウェーデンも、国民の危機感を高めるのが目的でしょう。国民皆兵制により国民全員で国防を担おうという国家の姿勢を指す、イスラエルスイスの姿勢を見習ったのかもしれません。

徴兵制があり緊張が続いていたはずの韓国で、一体何が起きているのでしょうか?この疑問に、呉善花さんの書籍は応えてくれそうです。

さてこの韓国の現状を前から的確に予言をしていた人がいます。それは、シンガポールの前首相のリー・クアン・ユー氏です。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【野口裕之の軍事情勢】中国の代弁者に堕ちたシンガポール ―【私の論評】リー・クアンユー氏が語ったよように「日本はゆっくりと凡庸になる」ことはやめ、アジアで独裁は当たり前という概念を根底から覆すべき(゚д゚)!
リー・クアンユー氏
この記事は、2015年6月28日のものです。リー・クアンユー氏は、2015年3月23日に亡くなっています。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事よりリー・クアン・ユー氏のアジアでは独裁は当たり前という考かにかかわる部分のみを引用します。
リー・クアンユー氏の「遺言」である、「日本はゆっくりと凡庸になっていく」という予言はある意味では正しかったのかもしれません。特に日本の過去においては・・・・。

それはさておき、シンガポール共和国の建国の父であり、同国首相を長く務めたリー・クアンユー。死後、その功績に対して多方面から賞賛の声が寄せられています。

リーの影響力は実際の政治権力が及ぶ範囲を大幅に超えて作用していました。その政治権力は、シンガポールがマレーシアから1965年に分離独立して以降、東南アジアの小さな都市国家の境界を越えて広がることはありませんでした。しかしその影響力は、急成長する企業経済と一党独裁の共産主義政府とが併存する、毛沢東以後の中国へと大きく波及しました。
繁栄する都市国家シンガポール 
リーは資本主義と強権政治とを結び付けた政治家の嚆矢でした。彼の人民行動党は、中国共産党に比べればまったくもって暴力的ではないとはいえ、事実上の独裁政党として国を統治してきました。

シンガポールの活発な経済、物質的豊かさ、効率のよさという面に目を向けると、独裁主義は資本主義よりもうまく機能する、世界にはそうした地域が存在するのだ、という多くの人の考えを裏打ちするかのように見えます。

しかしリー政権は、民主主義を形だけ維持するために選挙を実施しておきながら、反体制派については脅しや財政的な破綻で対処する選択をしました。リーに立ち向かった勇気ある男女は、膨大な額の賠償を請求されて破産に追い込まれました。

しかし、リーは決して、西洋の自由民主主義が誤りだとは主張しませんでした。ただ「アジア人」には向いていないとは述べていました。アジア人は、個人の利益よりも集団の利益を上に置く考え方に慣れていると主張しました。生来、権力者に対して従順で、こうした傾向はアジアの歴史に深く根差す「アジア的価値観」なのだと主張していました。

しかし、シンガポールが民主化を進めていたら、今よりも効率を欠き、繁栄を欠き、平和でもない社会となっていたでしょうか。韓国と台湾は1980年代に不十分とはいいなが民主化され、それぞれの独裁的資本主義に終止符を打ちました。それ以降、両国は非常に繁栄しています。ご承知のように、民主主義が日本経済に悪影響を及ぼしたということも全くありません。

リーは終始一貫して、シンガポールのような多民族社会では、高い能力を持つ官僚が上から調和を押し付けることを前提としなければならないと述べていました。エリートを厚遇することで、汚職がはびこる余地を最小限まで狭めました。 
しかしそれには副作用もありました。シンガポールは効率的で汚職も比較的少ないかもしれないのですが、一方で不毛な土地となってしまいました。知的な業績や芸術的な成果が生まれにくい国となってしまいました。 
わずか人口540万人の小規模な都市国家で、ある一時期有効であったにすぎない政策が、より大きく、より複雑な社会にとって有益なモデルとなるとは到底考えられません。 
資本主義と強権政治を組み合わせた国家資本主義を目指した中国の試みは、大規模な富の偏りを伴う腐敗の巨大システムを生み出しました。またプーチンは、自らの政策の社会的失敗、経済的失敗を覆い隠すため、極めて好戦的な国家主義に頼らざるをえなくなりました。

それを思うと、シンガポールの滑らかに流れるハイウェー、摩天楼が林立するオフィス街、磨き上げられたショッピングモールを賞賛せずにはいられません。しかしリーの遺産を評価する際は、金大中・元韓国大統領がリーに向けて書いた言葉に注意を払う必要があります。 
「最大の障壁は文化的な性向ではなく、独裁的指導者やその擁護者が示す抵抗だ」。
金大中氏
さて、長期の独裁政権を率いてきたリー・クァンユーからみれば、確かに過去の日本は自ら円高・デフレ政策をとり、日銀は金融引き締めを、政府は緊縮財政政策を取り続け、それこそ日本国民を塗炭の苦しみに追いやりつつ、中国の経済発展に力強く寄与してきたと当然看破していたと思います。全く、日本の政治家や官僚は無能と映っていたことでしょう。

また、軍事的に見ても、憲法典にある9条にもとづき、どんな場合にも戦力を行使すべきでないという愚かな言説がまかり通っており、これはあたかも、国連憲章でも認められ、西欧では人権と同じく自然権される集団的自衛権をなきものにするごときものであり、確かに生前のリー・クアンユー氏からみれば、日本はいずれ経済的にも、軍事的にも、凡庸な国になるのは必定と見えたと思います。

アジアのそれぞれの国の典型的な顔立ち

そうして、晩年のリー・クアンユーからみれば、デフレであるにもかかわらず、金融緩和の効果がまだ十分に出ないうちに、8%増税を決めざるを得なかった安倍政権、中国の脅威がはっきりしているにもかかわらず、安保法制の改定に拒絶反応を示す日本の野党や左翼の有様をみて、やはり西洋の自由民主主義は「アジア人」には向いていないとの確信を深めたことでしよう。 
日本政権与党が独裁政権であれば、自国経済が疲弊するデフレ・円高政策などそもそも最初から絶対に実行させず、誰が反対しようが鶴の一声で金融緩和、積極財政を行い、無用なデフレ・円高など発生させなかったと考えたことでしょう。にもかかわらず、平成14年には、8%増税をして、さらに 10%増税をするのが当然とする日本の識者や、マスコミの有様をみて、その馬鹿さ加減呆れはてたと思います。 
そうして、シンガポールは無論のこと、国連憲章でも認められ、西欧の自由主義的価値観からも、人権と同じように、自由権として、認められてるいる集団的自衛権など、最初から何の躊躇もなく行使する道を選ぶのが当たり前と考えたことでしょう。それすら、すぐに実行できない日本の状況にも呆れ果てたことでしょう。 
リー・クアンユーからすれば、アジアにおいは、人権は制限するのは当たり前としても、集団的自衛権を自由に行使することを制限するのが当然とする、日本の野党や左翼の存在や与党の中にもそのような者が存在する日本の状況をみて、やはり、アジア人である日本人にも西洋の自由主義など全く理解できず、土台無理であるとさらに自信を深めたことでしょう。 
ところで、リー・クアンユー氏は、今年の3月23日に亡くなっています。安部総理は、昨年の12月に10%増税を阻止することを公約の大きな柱として、衆院を解散して、選挙をすることを決定し、それを実行して、選挙で大勝利をしています。 
これは、戦後初で総理大臣が財務省(旧大蔵省)に真正面から挑み、勝利したということで、一部の識者からは高く評価されいます。そうして、安部総理はこの選挙のときにも、集団的自衛権行使を含む、安保法制の改正を公約に盛り込んでいました。 
この有様を見て、リー・クアンユー氏はひょっとすると、日本は独裁政権でなくとも、まともな国に変わるかもしれないと思ったかもしれません。しかし、これは何とも言えません。なにしろ、亡くなったのが、3月ですから、この状況を把握していなかったかもしれません。 
もし、リー・クアンユー氏があと1、2年長生きをしていたら、日本の今の有様を見て、同じアジアにおいても、ひよっとすると日本においては、西欧型の自由主義は成り立つかもしれないので、しばらく様子を見てみようと考えを変えたかもしれません。
リー・クアンユー氏は、 西洋の自由民主主義は、「アジア人」には向いていないとは述べていました。アジア人は、個人の利益よりも集団の利益を上に置く考え方に慣れていると主張しました。生来、権力者に対して従順で、こうした傾向はアジアの歴史に深く根差す「アジア的価値観」なのだと主張していました。

これは、今日の韓国をみているとよくわかるような気がします。韓国で独裁制が終焉し、民主化がなされてから、最初のうちはまだ良かったのですが、最近ではどんどん北朝鮮に浸食されて、今まさに韓国に親北政権が生まれようとしています。

金大中氏は2009年に亡くなっています。もし、あの世というものがあったとして、後から来たリー・クアンユー氏と会話ができたとすれば、今頃金大中氏は、以下のようリー・クアンユー氏に語るかもしれません。

「やはり、リー氏の言ったことが正しかったようです。韓国人にも西洋の自由民主主義はむいていないようです、結局のところ韓国の今の動きを止めるには、現状では軍による戒厳令の発動しかありません。

しかし、それは一時的なものにすぎません、結局韓国に再度独裁軍事政権を成立させなければ、結局北朝鮮に飲み込まれてしまうだけです」

まさに今の韓国はこのような有様であり、リー・クアンユー氏の予言があたったような形です。中国、北朝鮮、韓国も自由民主主義は成り立たないのかもしれません。

そうして、日本でも呉善花氏が「こんな厳しい国際情勢が目の前にあるのに、日本の国会は能天気に何を議論しているのやらと不安になります」と指摘しているように、森友問題で無駄な時間を費やし、目前に迫っているかもしれない北朝鮮工作員の日本国内でのテロの脅威など全く目に入らないかのように野党はテロ等対策法には真向から反対しています。

そうして、昨日も以下のような報道がありました。
【テロ等準備罪】テロ準備罪めぐり誤認・扇動…野党が空騒ぎ 草野球チームも対象に…死んでいない限り共謀など
SEALDsの元メンバーらが結成した新団体「未来のための公共」の初集会=3月17日夜、国会前
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用します。
 共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案をめぐり、民進党や共産党など野党4党が事実に基づかない曲解や意図的な扇動で批判を強めている。改正案の問題点を突くのが野党の役割とはいえ、ミサイル発射を強行する北朝鮮情勢などが緊迫する中で、国会議員として無頓着な“空騒ぎ”に映る。(田中一世、酒井充) 
 7日夜、国会前で改正案に反対する集会が開かれた。主催は、安全保障関連法に反対し、昨年解散したグループ「SEALDs(シールズ)」の元メンバーの大学生らによる「未来のための公共」。ラップ調で「共謀罪は絶対反対!」などの絶叫が響く中、民進党の江崎孝参院議員がマイクを握り、こう訴えた。 
 「共謀罪を許してしまえば、この国の自由を奪うに違いない」 
 「皆さん方一人一人がもう監視の対象になっている」 
 既に国民全員が監視対象になっているという驚くべき発言に、異を唱える人はいなかった。むしろ「そうだ!」との声が上がり、江崎氏は「共謀罪廃案」に向け「命がけで戦う」と宣言した。社民党の福島瑞穂副党首が続いて発言した。 
 「人と相談し、社会をなんとか変えようとすることが、なんで犯罪になるのか」 
 相談だけで犯罪になることはあり得ず、改正案の趣旨をねじ曲げた解釈だ。共産党の岩渕友参院議員も「犯罪行為がなくても、相談しただけで処罰される恐れがある」と断定した上で次のように強調した。
このような、人たちは集団的自衛権の行使を含む安保法制のときも大反対しました。北朝鮮の暴発があったときには、この安保法制が効力を発揮することでしょう。北朝鮮工作員はによるテロの脅威や、東京オリンピックのときにもテロ対策は完璧にしなければなりません。

今回のテロ等準備罪にあたるような法律は、世界中の他の国々にも存在します。日本だけが存在しません。このようなことでは、テロの脅威に十分対応できません。

まさに、これらの人たち行動は、まるで今の韓国の有様のようです。これらの人々は、リー・クアンユー氏の言うように、まさに西欧的な自由民主主義は無理なのだと思います。

しかし、リー・クアンユー氏の予測は外れている側面もあります。それは、これらの頭がお花畑状態にある人々は、ごく少数であるということです。過去には、テレビなどが頻繁に報道したので、さも多く存在するように見えただけです。

特に、若い世代は安倍政権に賛成する人が多いです、一方頭がお花畑状態の人たちが支援する民進党政権などの野党支持者などはシルバー世代が多いです。特に、民進党はシルバー世代の支持者が多いです。

このまま、時がすぎれば、シルバー世代とともに、野党は消え去るか、お花畑をやめるしかないです。

日本は、歴史的にみても、他のアジアの国々とは違い西欧列強に植民地にされたことはありません。戦争に負けても、驚異的に発展して、先進国に仲間入りしました。

世界でもこのような事例はありません。発展途上国から先進国になった事例は、日本だけです。中国は未だ発展途上国です。一方、アルゼンチンは、日本とは逆に先進国から発展途上国になったただ一つの事例です。

このような歴史を持つ日本は、やはり韓国とは違います。いずれ、リー・クアンユー氏の予測とは異なり、「日本はゆっくりと凡庸になっていく」ことはないでしょう。

韓国は、急速に凡庸なアジアの一独裁国家の北朝鮮に飲み込まれることになるでしょう。中国も、図体が大きいだけのアジアの凡庸な一独裁国家に成り果てることでしょう。

そうして、両国とも先進国になることなく、中進国の罠にどっぷりとはまり、先進国になるそこねた国々として、後世の歴史にしるされることになるでしょう。

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