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2020年1月14日火曜日

米、中国の為替操作国解除 貿易合意の署名控え 日本含む10カ国を監視―【私の論評】トランプは「為替操作」のフェイクに気づいたか?ならばTPP復帰も期待できる(゚д゚)!

米、中国の為替操作国解除 貿易合意の署名控え 日本含む10カ国を監視

ドル(左)と元(右)

 米財務省は13日、貿易相手国・地域の通貨政策を分析した外国為替報告書を発表し、中国の「為替操作国」指定を解除した。米中が15日に署名する「第1段階」の貿易合意で、中国が人民元の切り下げを自制する約束をしたと前向きに評価。操作国より問題が深刻でない「監視対象」に中国を指定した。監視対象には中国のほか日本やドイツなど計10カ国が入った。
 ムニューシン米財務長官は声明で、「中国は競争的な通貨切り下げを控えると拘束力の強い約束をした」と述べ、操作国指定を取り消した理由を説明した。
 監視国には、日独中に加え、韓国、イタリア、シンガポール、ベトナムなどを指定した。対米貿易・経常黒字の大きさなどが判断基準となった。為替操作国の指定はなかった。
 トランプ米政権は昨年8月、中国が人民元を不当に安値誘導しているとして、25年ぶりに中国を為替操作国に指定した。当時、人民元は対ドルで約11年ぶりの水準まで下落。トランプ米大統領がツイッターなどで中国批判を強めていた。
 ムニューシン氏も、中国の意図が「貿易で競争優位を得るための通貨安誘導にある」と指摘していた。
 米財務省は通常、報告書を毎年春と秋の2回、公表しているが、昨年8月の不定期な公表分以降、報告書の発表が遅れていた。
 一方、日本の監視対象指定は8回連続となった。報告書は「日米の大きな貿易不均衡が持続していることを引き続き懸念している」とした。
【私の論評】トランプは「為替操作」のフェイクに気づいたか?ならばTPP復帰も期待できる(゚д゚)!
米国政府は、昨年8月5日中国が自国の輸出に有利になるよう人民元を意図的に安く誘導しているとして、「為替操作国」に認定したと発表しました。しかし、為替を操作するとはどういうことなのでしょうか。なぜ米国は、そのような認定をしたり解除ができるのでしょうか。

「為替操作国」とは、自国の輸出に有利になるように通貨安へと意図的に誘導している国のことです。

自国通貨を売って、ほかの国の通貨を買うことで、為替相場に介入しているか、中央銀行の金融政策をコントロールしているか、などが判断材料となります。昨年大阪で開催されたG20サミットの首脳宣言にも、為替操作は「避けるべきだ」という文言が盛り込まれ、国際的にも問題視されています。

各国が通貨安を競い合うのは、望ましいことではない、というのは国際的にコンセンサスが得られています。ただ昨年の認定や今回の解除は、米国が自分の国の法律に基づいて、米国独自の判断で決めました。

突然、米国が中国を為替操作国と認定したときには驚きが広がりました。背景には、昨年8月5日、中国・上海の外国為替市場で、およそ11年ぶりに1ドル=7人民元台の元安・ドル高水準をつけたことがあったようです。

中国では、中国人民銀行が通貨・人民元と外国通貨との取り引きの目安となるレートを、「基準値」として設定、発表しています。米国財務省は、中国が最近、自国の輸出に有利になるよう人民元を安く誘導し、為替操作はしないとする国際ルールを守っていないと、中国を批判していました。

米国が中国を為替操作国に認定するのは1994年以来、25年ぶりのことでした。

米国政府は、米国の貿易相手国の為替政策を分析した報告書を年に2回、公表しています。分析の結果、問題ある国を為替操作国に認定する仕組みになっています。認定は主に次のような基準に照らし合わせて行われています。
▽米国に対する貿易黒字が200億ドル以上=日本円でおよそ2兆円以上の国であるかどうか。 
▽一方的な為替介入による外貨の購入を1年間で6か月以上、繰り返し行い、この金額がGDP=国内総生産の2%以上となる国かどうか。 
▽経常黒字がGDP比で2%以上の国に当たるかどうか。
このうち2つに該当すれば「監視リスト」の対象に、3つすべてに該当すれば「為替操作国」に認定される可能性があります。

米国財務省が昨年5月に公表した報告書では、中国は日本などとともに「監視リスト」の対象になっていましたが、「為替操作国」ではありませんでした。

米国財務省が昨年、具体的にどのようなプロセスを経て中国を為替操作国の認定に踏み切ったのかは明らかにしていません。

米財務省

仕組み上、今後、米国政府は、中国に、為替レートの透明性を高めるよう求め、改善が見られなければ、輸入品にかける関税を引き上げる措置をとったりすることができます。

トランプ大統領は昨年8月1日に、中国からの輸入品に追加の関税をかけることを表明しました。トランプ大統領は、中国が、これに対抗するため、自国の輸出に有利になる人民元安に誘導したという疑いを強めたのです。市場関係者の間でも、中国の当局は、輸出企業を下支えするために一定程度の元安を容認しているという見方も出ていました。

これに対して中国は意図的に元安に誘導することはないと強く否定し、米国に反発しました。両国の対立がさらに深まり、ますます解決が難しくなっていると、関係者に警戒が広がりました。

そうして、今回の解除です。そもそも、「為替操作」によって各国が通貨戦争をしているというのは、フィクションに過ぎません。

「通貨戦争」という言葉を使う人は、1930年代の大恐慌は各国の通貨切り下げ競争によって激化したという神話を信じていることが多いです。

しかし、この神話は、経済理論的に間違っていたことが最近の研究で明らかになっています。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の為替切り下げ競争が生み出したものは壊滅的な結果ではなく、各国とも好ましい結果になりました。

為替レートは原則としてそれぞれの通貨の相対的な存在量で決まります。相対的に希少な通貨ほどレートが上昇するので、金融緩和すれば確かに通貨安になる。逆に引き締めを行えは、通貨高になります。

しかし、現在の世界の先進国ではほとんど2%前後のインフレ目標を設定しています。そのため、各国は、インフレ目標を超えて金融緩和することはありません。つまり、各国のインフレ目標の上限までしか金融緩和しないという限界があるわけです。

ドル柄のビキニ

インフレ目標が各国に浸透した現代では、各国ともに、自国経済を一定のインフレ率と失業率に抑えようと経済運営すれば、おのずと為替切り下げ競争にはならないのです。

インフレ目標を設定していない国でも、インフレが加速してもなお、為替を操作し続ければ、いずれインフレになりますし、それでもなお操作を続ければ、ハイパーインフレになります。そこまでして、インフレ政策を続ける国はないでしょう。

通貨切り下げによる「近隣窮乏化」は一時的なもので、実際には各国経済が良くなることで、逆に「近隣富裕化」となり、世界経済全体のためにもなります。こうしてみると、自国経済を無視した「通貨戦争」はありえないということになります。

では、なぜ、現在では各国ともに金融緩和なのでしょうか。今の時代、モノの生産技術が大幅に進歩して、モノが安価に大量生産されるようになりました。ところが、金融政策は旧時代のままで、相変わらず過度なインフレ恐怖症です。

このため、カネがモノに対して相対的に過小になって、逆にモノはカネに対して相対的に過大となっています。モノの価値が安くなるため、世界的にデフレ傾向にあります。

多くなりすぎたモノと少なすぎたカネのバランスを保つために、カネを増やす金融緩和が必要となって、各国ともにデフレにならないようにしているのです。このため、「通貨戦争」ではなく、「デフレ戦争」というのが正しいかもしれません。

日本では、白川日銀総裁までの日銀は、デフレであるにもかかわらず、他国のように金融緩和せず、日本だれが「デフレ戦争」に負け続けました。しかし、日銀総裁が黒田氏になった2013年4月からは、異次元の金融緩和に踏み切れ、しばらくの間は勝ち続けましたが、2016年から日銀がいわゆるイールドカーブ・コントロールをはじめ、引き締め傾向に転じました。

そのため現状でも物価目標2%には程遠く、従来のように勝ち続けとは言えない状況になっています。昨年10月から、消費税が10%になったため、過去のせっかくの金融緩和政策もこれから帳消しになる可能性が高いです。

物価目標を達成できる見込みのが全くない現状で、これから「デフレ戦争」に勝つためには、日銀はやはりイールドカーブ・コントロールなどやめて、物価目標を達成するために、異次元に緩和体制に戻るべきです。

先に述べたように、各国ともにデフレにならないようにして緩和している現状では、従来の常識は通用しません。平成年間の30年間をほとんど金融引き締めをしてきた日銀は、本来ならば、ここ数十年くらいは、従来の常識からは、常軌を逸したくらいの緩和が必要なのです。

以上のようなことを考えると、米国よる中国の「為替操作国」指定などの全く意味のないことがわかります。

「為替操作」のフェイクに目覚めたトランプ大統領?

トランプ大統領もようやっと為替操作のフェイクから目覚めたようです。トランプ大統領の取り巻きの中には、経済に詳しい人もいるはずです。にもかかわらずこのような無意味なことをしていたということ自体が信じられません。

トランプ大統領は米国内経済に関しては、まともですが、国際経済に関しては疎いようです。トランプ氏が国際経済にも目覚めれば、米国がTPPに復帰するということも十分考えられると思います。なにしろ、「為替操作」のフェイクに気づいたのですから、期待できると思います。

ただし、中国に対する制裁はこれからも続くことは間違いないでしょう。何しろ、もはや米国による対中国冷戦は、貿易がどうのこうのという次元ではなく、最早価値観の対立になっているからです。

そうして、日本としては、無論米国の立場を応援すべきです。なぜかといえば、まかり間違って、米国が冷戦に負けて、米国が自国内に閉じこもることにでもなれば、世界は中国の価値観によって新たな秩序が作られてしまいます。

そのような世界は、私達日本人にとっては到底耐え難い世界になるからです。

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