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2017年5月28日日曜日

【世界ミニナビ】韓国でまもなく“徳政令”…借金帳消しは経済崩壊の序曲か―【私の論評】金融緩和、積極財政に思いが至らない韓国の悲劇(゚д゚)!


説文在寅大統領が23日午後、慶尚南道金海市進永邑烽下村で開かれた故盧武鉉
元大統領8周忌追悼式に参席し発言している。写真はブログ管理人挿入。以下同じ
 韓国で新大統領・文在寅(ムン・ジェイン)氏の選挙公約が実現に向け動き出した。そのひとつが借金棒引きの“徳政令” だ。100万円以下の借金を10年以上借り続ける人々を対象に、その借金と利息の全額を帳消しにするというもの。対象は43万7000人とされ、実現は簡単ではないが、実現した後にもいばらの道が待っていそうだ。(岡田敏彦)

   猶予から帳消しへ

 借金の全額帳消し計画を伝えたのは韓国紙・東亜日報(電子版)。現在、韓国には「国民幸せ基金」というものがある。かつての李明博(イ・ミョンバク)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)前大統領の政権下で計画、実施されたもので、国民約280万人の債権を買い入れ、うち57万人の約6兆3000億ウォン(約6300億円)の元金と利子を減免するなど債務を調整する役割を担ってきた。

 平たく説明すれば、収入に対して支出が大きすぎ、恒常的に借金返済に追われる庶民を助けようという趣旨でできたシステムだ。

 しかし、新たに大統領になった文氏は、この救済策を上回る「全額帳消し」を公約として大統領選に当選した。10年以上にわたって1000万ウォン(100万円)以下の借金を抱え、返済のままならない人々の借金を全額、国が肩代わりするというプランだ。

故盧武鉉元大統領8周忌追悼式が開かれた23日午後、慶尚南道金海市進永邑烽下村で、文在寅大統領と
盧元大統領の息子のコンホ氏などが式場に向かうと市民が携帯電話を頭の上に持ち上げて撮影している
 東亜日報は、この公約実現に向けて「政府金融当局が本格的な検討に入った」と18日に報じた。

 同紙によると、文氏の選挙参謀の一人は「(こうした)債務者たちはこれまで十分に苦痛を受けてきたが、借金を返済する能力がないものと見なければならない。こうした人たちが再び経済活動ができるようにしなければならない」と理由を説明した。

 日本でいえば室町時代の徳政令のような債権免除にあたる。貧しい人を助ける、といえば聞こえはいいが、実際には効果に疑問符のつく施策だ。

   フェイクの失業率

 まず一つは、当然ながら対症療法でしかないこと。国の経済が上向き、失業率が減らなければ、目先の借金を消しても「同じ事の繰り返し」でしかない。家族を養えるだけの収入がなければ借金生活に逆戻りなのだから。

 現地紙・アジア経済(電子版)は、韓国の青年(15~29歳)失業率は4月基準で11・2%で過去最高と報じているが、韓国の統計は先進国とは違い、“操作”された数字が多いともいわれる。この青年失業率も諸外国は15~25歳が標準だ。「いつまでも夢を追ってニートではいられない」と、理想に遠い職でも妥協する20台後半までレンジを広げることで、失業率の数字を低くできる。

 この11・2%という数字すら額面通りには受け取れない。朝鮮日報(電子版)によると、大学などを卒業した後も、就職のため公務員試験などの試験勉強をしている、もしくはそうした“建前”を主張する人たちはこの11・2%には入っていない。同紙は「こうした人を含めると失業率は23・6%に達する」と指摘。実質的には若者の4人に1人が失業者と推定される。

 仕事がない若者があふれているというのに、約100万円を10年にわたって返済できなかった人の借金を消せば、その人たちは“家族を養える職”に就けるのだろうか。

   なぜ彼らだけが

 もうひとつ指摘されるのがモラルの低下だ。東亜日報は慶煕大学教授のコメントとして「大統領選挙ごとに債務の調整や借金の棒引きを繰り返し行っていれば、(債務者は)返さなくても最後には国が解決してくれるだろう-とする、モラルハザード(倫理観の欠如)が広がる」と指摘する。

 韓国の「家計債務」は過去最高の約135兆円に達しており、中央日報(電子版)によると、昨年12月末のデータで国民1人当たりの借金は2600万ウォン(約259万円)を超えた。

 同紙によると、韓国の処分可能所得(簡単に言えば給料の手取り分と貯蓄)に対する家計負債比率は169・0%。これは経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の平均の129・2%を40ポイント近く上回る高い数値だ。

 今回の“徳政令”が実現すれば、対象にならなかった中間層の借金世帯が「なぜ我々だけ真面目に借金を返さなければならないのか」と怒りの声を上げかねない。

 こうした経済低迷の根底には、内需が脆弱なため新たな雇用がうまれないという悪循環があるのだ。

   新たな雇用

 文氏はこれを解消するため、最下級の公務員(9級)を81万人も雇用するとの公約を掲げてきた。今月に入ってこの公約実現のため10兆ウォン(約1兆円)の追加補正予算の早期編成を進める方針が決まったという。

 81万人という数字は、韓国ではどんな重みを持つのか。その一例を見れば、韓国軍の現有兵力は徴兵込みで約63万5千人で、その3分の1を占めるとされる、徴兵された下級兵士の給料は月1万5千~1万8千円と、小遣い並。正規で公務員を雇えば、こんな給与額では済まない可能性が高い。

 「もうひとつの軍隊」を作れるほどの人数を公務員にする、そんな“公務員天国”を維持する税収をどこからひねり出すのか。文政権の行く先は、いばらの道が続きそうだ。

【私の論評】金融緩和、積極財政に思いが至らない韓国の悲劇(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事を読んで思ったのは新大統領・文在寅(ムン・ジェイン)氏は、朴槿恵もそうでしたが、とにかく酷い経済オンチだということです。

マクロ経済学の標準的なテキストには、雇用が悪化したり、景気が落ち込んだ際には、政府がとるマクロ的な手段としては、金融緩和と、積極財政であると掲載されています。それは、韓国も同じことです。

固定相場制ではない現在の韓国は、富んでいるいないなどの水準の違いはありますが、基本的に日本、米国、EUなどの経済と変わりはないです。そうして、韓国はEUなどの国々とは異なり、自国のみで自国の金融政策や、財政政策を自由に行うことができます。EUのように域内の他の国のことを考えなければならないということもありません。

雇用が悪化すれば、金融緩和すべきですし、国民の借金が増えるなどの状況では同時に積極財政も実行すべきです。

にもかかわらず、文在寅大統領が経済対策として行おうとしているのは、「100万円以下の借金を10年以上借り続ける人々を対象に、その借金と利息の全額を帳消しにする」と、「最下級の公務員(9級)を81万人も雇用するとの公約というもの」です。

これは、どう考えても借金の棒引きは単なる一時しのぎにすぎないですし、雇用に関しても、上の記事にはでていませんが、増税でまかなうということですから、雇用も根本的な解決にはなりません。

そもそも、最近の韓国経済には他国にはない、明確な特徴があります。これは、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
“黒田バズーカ3”韓国経済直撃 ウォン高加速で輸出悪化に拍車―【私の論評】先進国になりそこねた韓国はウリジナル・タンゴを踊るのか(゚д゚)!

この記事は、昨年の2月2日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、韓国経済の特徴はこの記事に掲載したものと、現在でも基本的には、今も同じです。以下に、韓国経済の特徴に関わる部分だけ引用します。
韓国経済は、日銀の今回のゼロ金利政策により、ウォン高がいっそう進んで、大変なことになりました。

何しろ、韓国のGDPに占める輸出の割合は、43.87%ですから、もろに直撃をうけるわけです。これは、中国の22.28%よりも高いですし、日本の15.24%や米国の9.32%よりはるかに高いです。

日本は、10数年前くらいまでは、8%程度でした。米国も最近は、9%台ですが、以前は7%ほどでした。米国や日本は、内需がかなり大きいため、あまり輸出をしなくても実体経済にはあまり大きな影響はありません。

何やら、良く日本は、資源がないので、外国から資源を輸入して、それを加工して海外に輸出して成り立っている貿易立国であるというようなことをまことしやかに言う人もいますが、この数字を見ていればそんなことは全く出鱈目であるということが良くわかります。

そうして、上のようなことを語る人は、無条件で貿易立国は素晴らしい良いことであり、それによって国は栄えると無邪気に信じ込んでいる人が多いです。

しかし、これも全く間違いとまではいいませんが、程度問題です。GDPに占める個人消費の割合を比較してみると、韓国は50%台、中国は35%、日本は60%、米国70%台です。一国の経済を強くするには、なにをさておきまずは、当該国の内需を増やすことが前提条件であると思います。

この数値を比較しても、わかるように、韓国は輸出が多く、個人消費は少なめです。そうしてこれは当然のことです。先に、貿易立国を無邪気に良いことと信じている人の例を述べましたが、韓国はまさに、この人のように、貿易立国を現代風に言い直した「グローバル戦略」が良いことであると信じ、とにかく輸出を増やすことを奨励してきました。

とにかく、輸出拡大が韓国の生きる道ということで、企業はもとより、韓国政府もグローバル化一辺倒で経済政策を推進してきました。その結果が今日の悲惨な事態を招いてしまいました。 
輸出額が大きいということは、一見国際競争力があって良いようにもみえますが、逆の方向からみると、外国の影響を受けやすくなるということです。経済を良くするたには、ますば、米国のように自国の内需をできるだけ拡大すべきです。
2012年のグローバリゼーション・インデックス
韓国も、中国も日本より順位が上だが?
本来ならば、韓国はもっと内需を拡大すべきでした。本来もっと余裕のあるときに、金融緩和を行いつつも、グローバル戦略一辺倒ではなく、内需拡大策も実行すべきでした。
もともと、これだけ個人消費が少ないのと、雇用がかなり悪化しているというのなら、本来は早急に金融緩和を実施すべきだったのです。そうして、無論積極財政を実行してなるべくはやく、個人消費を上向かせ、雇用を改善すべきでした。そうすれば、今日韓国経済はまだましなものになっていたはずですし、将来に希望が持てるということで、今日のような混乱はなかったかもしれません。

しかし、 文在寅氏の経済対策はこれからかけ離れたものです。そうして、韓国の世論も、景気循環的対策である金融緩和や、積極財政に触れることはほとんどなく、もっぱら構造改革論議ばかりが行われています。

特に金融緩和に関しては、日本でもそのようなことを言う評論家も多いのですが、緩和すればキャピタルフライトを起こすということで、忌避すべきと考えている人が多いようです。

しかし、中国のような固定相場制の国では、キャピタルフライトは起こりやすいですが、韓国はそうではありませんし、さらにはかつてのアイスランドのように、天文学的な国の対外負債があれば、キャピタルフライトが起こることも考えられますが、韓国の国の対外負債はそのようなレベルにないので、金融緩和をしたからといって、キャピタルフライトがおこるなどということは考えられません。

それに関してはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【韓国新政権】文在寅政権の最重要課題は経済や外交 韓国メディア「対日政策、全般的に見直し」と展望―【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!
朴元大統領
この記事では、韓国が金融緩和をしたからといって、キャピタルフライトが起こることはないことを詳細に説明しました。詳細は、この記事をご覧になって下さい。

文在寅大統領が、早期に金融緩和や、積極財政策をとらないかぎり、韓国経済はますます低迷することになります。

その場合、韓国国民も早々に、分在寅大統領に失望することになります。そうして、早期に退陣を迫られることになります。

それでも、その次の大統領が、景気循環的なマクロ経済対策を実行しない場合は、韓国の経済が立ち直ることもなく、このような状況を10年、20年と続けていれば、韓国経済は完璧に疲弊して、それこそ、現在のアルゼンチン(アルゼンチンは元は先進国でした)のように発展途上国になることは必定です。

文在寅大統領の後に、景気循環的なマクロ経済対策をまともに実行できる人が大統領にならない限り、韓国経済凋落は必定です。

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2016年12月14日水曜日

GDP下方修正を読み解く 再びデフレ突入の瀬戸際も「600兆円」は達成可能―【私の論評】来年こそは安倍首相が財務省無視で、積極財政を推し進める(゚д゚)!

GDP下方修正を読み解く 再びデフレ突入の瀬戸際も「600兆円」は達成可能

GDPの推移、28年7-9は速報値

 8日に発表された7~9月期国内総生産(GDP)の改定値は実質値が下方修正された。1次速報と今回の改定値の違いは、法人企業統計など最新の統計が加わった点である。

 実質GDPの前期比でみると0・5%増から0・3%増、年率換算で2・2%増から1・3%増へそれぞれ下方修正された。

 内訳は、各項目の寄与度でみよう。1次速報と改定値では、民間消費が0・0%から0・2%、民間住宅が0・1%から0・1%、民間企業投資が0・0%からマイナス0・1%、民間在庫がマイナス0・1%からマイナス0・3%、公的需要が0・0%から0・1%、純輸出が0・5%から0・3%と修正された。

 いずれも誤差の範囲であろうが、本コラムで書いたように、マイナス金利による住宅投資増以外はぱっとしない内容である。

 さらに、気になるのがGDPデフレーターの動きだ。GDPデフレーターとは名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数であるが、消費者物価と卸売物価の両方を合わせたようなもので、その推移でデフレ脱却かどうかの判断基準になるとされている。

2016年第3四半期(7-9月)の名目GDPは、前期から0.1%増加して537.3兆円。同様に、
実質GDPは0.3%増加して523兆円(2005年連鎖価格)、GDPデフレーターは0.3%低下して102.7。

 1次速報では、GDPデフレーターは前年同期比でマイナス0・1%と、2013年10~12月期以来、11期ぶりにマイナスになった。改定値でもGDPデフレーターは前年同期比でマイナス0・2%であり、一時、デフレから脱却したかに見えたが、再びデフレに突入の瀬戸際になっているという本コラムで書いた筆者の結論は変わっていない。原油価格の下落は言い訳にならない。原油価格の下落は輸入デフレーター低下になって、逆にGDPデフレーターの上昇要因になるからだ。

 GDPを見る際、今回からちょっとややこしくなった。というのは、国際基準の変更に伴って計算方法を見直したからだ。

 わかりやすいところでいえば、15年度の名目GDPは532・2兆円と、計算変更前に比べて31・6兆円上乗せされている。ただし、今回の改定値での影響は、ほとんど統計誤差の範囲であり、筆者はあまりないとみている。

 今回の計算方法の見直し結果をみて、政府の名目GDP600兆円という目標を揶揄(やゆ)する向きもあるが、国際基準の変更は政府目標のかなり前に決まっていた話なので、政府目標600兆円という話が出た段階で、この上乗せはプロであれば想定内である。

 これを揶揄する識者は、もともと目標達成などできるはずないという立場で批判していた人であるが、それができそうだというわけで、ケチをつけているのだろう。

 この計算方法の見直しがなくても、適切な財政出動を行えば、600兆円は達成可能な数字なのに、ケチをつけたい人は、日本経済の低成長や緊縮財政、日本の財政危機を前提として、増税路線をとる財務省の走狗(そうく)が多いようだ。

 いずれにしてもGDP統計がちょっとさえないので、第3次補正予算の話題も出てくるのではないか。それは、衆院解散と連動したきな臭い話である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】来年こそは安倍首相が財務省無視で、積極財政を推し進める(゚д゚)!

冒頭の記事で、「いずれも誤差の範囲であろうが、本コラムで書いたように、マイナス金利による住宅投資増以外はぱっとしない内容である」と記していますが、高橋氏本コラムに該当する記事も以前このブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ―【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!

今回の12月8日の7~9月期国内総生産(GDP)の改定値は、速報値と比較しても誤差の範囲内の相違に過ぎないと高橋洋一は語っています。結局、この時の見立てと何も変わっていないということです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で、高橋洋一氏は「2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった」としています。

この記事では、それを実証する、消費支出のグラフも掲載しています。そのグラフを以下に再掲します。


以下にこのグラフ説明をこの記事から引用します。
増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。
増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。
この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。
これは、どうみても、2014年4月からの8%消費増税が悪影響を及ぼしていることは間違いありません。

これだけ原因がはっきりしすぎるくらいはっきりしているわけですから、 高橋洋一氏上の記事でも主張しているように、大型の第3次補正予算は必須です。

そうして、この記事における、私の結論を以下に掲載します。
日本のGDPに占める個人消費の割合は、60%でありこれが最大です。これを上昇させないかぎり、GDPは上昇しません。政府、日銀とも、これを伸ばすための政策を実行すべきです。特に、積極財政の緊急度は高いです。何をさておいても、なるべくはやく、大型の積極財政策を打つべきです。
そうして、量的金融緩和を拡大しつつ、大型の積極財政を実施すれば、 無論デフレから完全脱却するだけにおよばず、政府の名目GDP600兆円も達成可能です。

そうして、高橋洋一氏は、上の記事で「いずれにしてもGDP統計がちょっとさえないので、第3次補正予算の話題も出てくるのではないか。それは、衆院解散と連動したきな臭い話である」としていますが、これは来年そうそう、衆院の解散総選挙があることを暗示していると思います。

しかし、私は昨日もこのブログで掲載したように、来年そうそうの衆院解散はないとみています。昨日の記事のリンクを以下に掲載します。
蓮舫・民進党の「体たらく」が、首相の解散判断に影響を与える可能性―【私の論評】嘘吐き蓮舫砲が轟きつづける限り、安倍政権は安泰(゚д゚)!
最近とみにブーメランに見舞われる民進党代表蓮舫氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、まずはもし次の衆院選において、野党共闘が実行されれば、自民党はかなり議席数を減らす可能性があることを掲載しました。その上で、蓮舫代表の民進党の動きが最近、あまりにも酷く連日のごとくブーメラン減少を起こしている事実を掲載しました。

そうして、結論は以下のようなものでした。
この状況が続く限り、民進党には政権与党に返り咲く資格など全くないと思います。返り咲けば、雇用も経済もぶち壊しになり、日本はまた酷いデフレスパイラルのどん底に舞い戻ることになります。 
このようなことは、一般に周知されるにはある程度時間がかかるようです。だとすれば、来年早々衆院解散選挙をするよりは少し伸ばしたほうが、選挙戦は有利になるかもしれません。これからも、蓮舫代表はブーメランを繰り返し、民進党の支持率はさらに下がるでしょうから、その頃に選挙に踏み切るべきなのかもしれません。

しかし、もう一つ圧倒的に有利なやり方があります。それは、現在3%程度の失業率を2.7%程度に下げることです。そのためには、さらなる追加金融緩和が必要です。

さらに、GDPをもっと上向かせる必要があります。そのためには、機動的な財政政策が必要です。そのためには、減税なども視野にいれるべきです。そのためには、増税一辺倒で国民の敵である財務省を完膚なきまでに打ち砕く必要があります。

これらのことを実行して、経済を完璧に上向かせるためには、それなりにある程度の時間を要します。経済が上向きつつあり、これからかなり良くなることがはっきり見えてきた段階で選挙にすれば、大勝利は間違いないです。

経済のことを考えれば、どう考えても、他の党では駄目で、やはり今のところは自民党に大勝利してもらう以外にありません。何とか、頑張って、次の選挙では大勝利していただきたいものです。
さて、民進党の蓮舫代表が「廃案」の大号令をかけたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案は最終的に本日成立しました。民進党は衆院段階では賛否すら決められずに退席し、その後、廃案にかじを切ったのですが、逆に参院では自民党と協調して審議重視の姿勢を取りました。国会対応が最後まで迷走したのは明らかで、蓮舫氏の指導力不足が露呈したといえます。

これは、昨日も述べたことですが、カジノに猛烈に反対する蓮舫氏が、実は民主党政権のときに行政改革担当大臣として、カジノを日本に導入しようとしていた張本人であることが分かっています民進党代表定例記者会見において、そのことをフリーの記者に指摘され、しどろもどろの返答をしていました。

民進党としては、このような事実もあることから、いつまでもカジノ法案に反対し続ければ、このことがさらにマスコミなどで吹聴され、かなり不利になることを認識したのでしょう。そのため、蓮舫氏抜きで、参院では自民党と協調して審議重視の姿勢を取り、カジノ法案成立を容認したものとみられます。

このような状況ですから、安倍政権としては、民進党に関しては蓮舫代表が代表である限りにおいては、民進党はかなり扱いやすいとみていることでしょう。

さらに、安倍政権にとっては、さらに有利なことがあります。それは、あの日本の一大背支持勢力でもあった財務省が最近弱体化の様相を呈していることです。

それについては、以前このブログで指摘したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
麻生大臣を怒らせた、佐藤慎一・財務事務次官の大ポカ―【私の論評】日本の巨大政治パワー財務省の完全敗北は意外と近い?
参院本会議で、民進党の蓮舫代表の代表質問を
聞く安倍晋三首相(左奥右)=9月28日午前
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
017年度税制改正について、8月末から9月にかけて盛り上がった配偶者控除見直しの動きが10月上旬、一気にしぼんだ。新聞報道によると、その理由は「衆院解散風」が吹き、有権者の反発を怖れた自民、公明両党が消極的になった、とされている。 
だが、首相官邸筋によると、迷走させた張本人は財務事務次官・佐藤慎一と主税局長・星野次彦だという。 
彼らは財務省内の合意を得ないまま、与党幹部には「首相官邸の了承を得ている」とウソをつき、暴走した。それを止めたのは副総理兼財務相・麻生太郎と官房長官・菅義偉だった。
麻生財務大臣はこれについては激怒したそうで、従来であれば、財務省は麻生氏を手球にとって、国際会議で、「増税は、国際公約」などと言わせるようなことまてしていましたが、最近は風向きが違います。財務省が衰退傾向にあるのは間違いないようです。

財務省がまだ強固で、民進党もいまよりはまだ活力のあった次期を振り返ってみると、安倍総理は、本来政権の専権事項である、「増税見送り」の決断を過去には、衆院解散総選挙という形で民意を問うて実行しました。

しかし、本来財務省は政府の一下部機関に過ぎないわけで、増税をするとか、減税するなどの方針は政府が決めて、財務省がそれに従い、専門家的な立場から、その実施方法などを選択するというのが、正しいあり方です。

しかし、日本では、そうではなく、財政に関しては、財務省があたかも一大政治勢力のように振る舞い、官庁や政治家などに働きかけ、自分たちのやりたいようにやってきたというのが実体でした。

しかし、先にも述べたようにこの状況は変わりつつあります。衰退した財務省と、最大野党の蓮舫・民進党の「体たらく」というこの2つが重なると、安倍総理としてかなりいろいろなことがやりやすくなります。

そうです。安倍総理は、財務省の意向とは、関係なしに、さらには財務省に無理やり納得させるために、選挙という手段に訴えることもなく、大規模な第3次補正予算等を推進す可能性があります。

来年のことを言うと鬼が笑うという諺もありますが、来年は財務省の意向とは関係なく、安倍総理が、積極財政を実行し始める元年となるかもしれません。そうして、日本における政治主導の元年となるかもしれません。どうなるか、今から楽しみです。

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2016年5月17日火曜日

橋下徹氏が都知事選出馬なら首相にとって一石三鳥の戦略―【私の論評】橋下氏は積極財政・金融緩和政策で東京都のデフレを克服し、国政にジャンプせよ(゚д゚)!


橋下徹氏 都知事選出馬はある得るか?
舛添要一・東京都知事が絶体絶命のピンチに立たされている。公用車での毎週末の別荘通いや税金を使った海外出張時の大名旅行ぶりへの批判に加え、政治資金で家族旅行をしていたのではといった疑惑が次々発覚、釈明はしたものの都民の不信感は高まるばかりだ。

ここに来て都議会自民党関係者からは、6月1日辞任、7月10日に都知事選挙と参議院選挙をWで行なうといった憶測も急浮上してきた。都議会自民党の背後には当然官邸の思惑がある。

官邸の思惑通りに舛添電撃辞任によって参院選と都知事選のW選挙となった場合、焦点は新たな「東京五輪の顔」となる都知事候補が誰になるのかだろう。

自民党都議の1人は、「知事を辞任させるべきだという声は強いが、ネックは有力な後任が見当たらないこと。都連は参院選の東京選挙区に2人候補を擁立する方針だが、乙武洋匡氏がスキャンダルで出馬断念した後、参院でも2人目の候補がいまだに見つからないというのが実情。ましてや都知事候補となると高い知名度がいる。候補が決まりさえすれば一気に選挙戦に動くことができるのだが」と語る。

自民党内の人材難は、前回都知事選で党を除名されていた舛添氏を担がざるを得なかったことが証明している。

そこでウルトラCの候補として浮上しているのが「無役」となったあの人だ。政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう見る。

「舛添氏を降ろして出直し都知事選となれば、短期決戦だから、有権者にとって顔と名前が一致する知名度の高い候補でなければ勝負にならない。その意味で、大阪府知事と大阪市長を経験し、首長としての経験十分な橋下徹氏の名前が官邸周辺で囁かれています」

橋下氏は「政界を引退する」と大阪市長を退任した後、『おおさか維新の会』には正式に参加せずに現在は弁護士業とテレビ・コメンテーター業を務めているが、安倍官邸、特に菅義偉官房長官との太いパイプを持つことで知られる。

そもそも菅氏は橋下氏に政界入りを説得した人物で、橋下氏も引退会見で菅氏を「とんでもない政治家だ」と手放しで絶賛するなど、いまだに強い信頼関係がある。

もし、橋下氏が無所属で都知事選に出馬し、安倍政権と自民党が全面支援すれば、知名度からいっても野党側が対抗できる候補を擁立するのは難しいだろう。政治評論家の浅川博忠氏もこう語る。

「現在の安倍政権は外交・防衛に力を入れ、世論が求めている社会保障や景気回復がおろそかになっている。アベノミクスの限界も見えてきた。そういう状況の中で参院選と都知事選のダブル選挙になった場合、大都市圏は革新が強い傾向があるため、通常であれば野党にアドバンテージがあると考えられます。

ただし、安倍政権が橋下氏を擁立できれば風向きはガラリと与党有利に変わる可能性が高い。橋下氏にはそれだけのインパクトがある。橋下氏の出馬が前提なら、安倍政権にとって都知事選とのダブルは切り札的になるでしょう」

安倍首相は参院選で公明党、おおさか維新などを合わせた改憲推進勢力で3分の2の議席確保を目指している。橋下氏自身は参院選出馬に否定的だが、都知事選に出馬すれば、相乗効果でおおさか維新の参院選での議席の上積みも見込める。首相にとっては参院選のテコ入れと都知事選勝利、改憲勢力の拡大というまさに一石三鳥の戦略だ。

橋下氏も憲法改正について「今度の参院選がワン・チャンスだと思っている。泣いても笑っても、ここを逃せば、10年、20年と憲法改正の機会は遠のく」と語るなど首相と同じ考えだ。

※週刊ポスト2016年5月27日号

【私の論評】橋下氏は積極財政・金融緩和政策で東京都のデフレを克服し、国政にジャンプせよ(゚д゚)!

橋本氏が都知事選に出馬という話は、おそらく根も葉もない話ではないのだと思います。まずは、舛添氏に対してはさらなる追及、刑事告発、自民党離反の可能性もあります。

それについては、高橋洋一氏が、あるサイトのコラムで指摘していましたので、その記事のURLを以下に掲載します。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、要旨だけ以下に掲載させていただきます。
舛添都知事が火だるまだ。 
これまで、豪華な海外出張、公用車で週末に湯河原の別荘通いが報じられたが、さらに参議院議員時代に家族旅行とおぼしきものの費用まで政治資金収支報告書に計上していたことなどまで明るみになった。 
今年3月、都有地を韓国人学校のために貸し出すことが批判された。その当時、保育所問題がさかんに議論されており、「東京都は保育所より韓国を優先するのか」という批判だった。その背景にあったのが、舛添氏は、海外出張が多く、そのための経費が石原都知事時代に比べて多いというものだ。 
舛添氏の「都市外交」は、やりたくても、実行するための基盤ができていない。いずれにしても、地方自治体の長がどこまで外交もどきをやるのかということであり、豪華な海外出張を見直すといわざるを得なかったのは当然である。 
次に、4月に発覚した公用車での別荘通いだ。舛添都知事は、2015年度の1年間ほどで、神奈川県湯河原町にある別荘兼事務所に公用車で、ほぼ毎週、48回も都庁との間などを往復していたと報じられた。 
この、過去の二つの問題は、法令に反するものでなく、政治姿勢などの倫理的な問題であるので、遅ればせながらではあるが、見直しをすれば、批判は沈静化していくはずだった。 
しかし、政治資金の問題は、政治資金規正法にふれるかどうかという点で、前2件とは決定的に異なる深刻な問題だ。 
政治資金の支出について、政治資金規正法違反で刑事責任を問われた例は、おそらく過去にはない。 
しかし、昨今ではこの種の話は必ずと言ってよいほど、市民団体によって刑事告発される。捜査当局も、政治家が記者会見までしているので、市民団体の告発を受ければ無視することはできないかもしれない。 
記者会見では、誰に会ったかは言えないという方便ができても、捜査当局が事情聴取すれば、「会議」が実際にあったかどうかは、簡単にわかるだろう。 
政治的な見方からすれば、ポイントは、政治資金の使い方で今後さらに新たな問題が出てくるのかどうかという点だ。 
記者会見を踏まえて、(市民団体などが)刑事告発が行われるかどうか、また、都議会がどのように対処するのか、百条委員会(自治体の事務について疑惑や不祥事があった際、事実関係を調査するために設置される委員会)を設置するのかどうかである。 
7月上旬に参院選もあるので、都議会自民党や公明党が、世間からの批判の矛先がこちらに向くのを恐れて、舛添都知事に対する姿勢が一気に変わる可能性もあり、予断を許さない。そうなったら、舛添都知事はかなり危うくなるだろう。
都議会議員選挙は今年ではなく、来年になりますが、それにしても舛添知事が知事のままで、都議会議員選挙をむかえるとなると、都議会自民党や公明党にとってかなり不利になると考えられます。

もともと、舛添氏は自民党を脱党した人間ですから、そもそも都知事選に自公の公認にすると反対した自民党議員も大勢いますし、都議会自民党や公明党もそのような議員が多かったとされています。

さて、舛添知事に対する批判としては、上記のような観点ばかりではなく、経済学者の田中秀臣氏も経済政策の面から厳しい批判を行っています。その記事のリンクを以下に掲載します。
デフレとの闘いを辞めた舛添氏には即刻退場を求む!
田中秀臣氏
 舛添氏の税金を利用した都市外交などに伴う豪勢な消費は、経済学では「見せびらかしの消費」(誇示的消費)として知られるものだ。異能の経済学者、ソースティン・ヴェブレンが『有閑階級の理論』(1899年)に提示した考え方だ。この書籍の表題になっている有閑階級とは、自分は生産に一切貢献せずに、合法・非合法を問わず、自分の既得権益に基づいて、世間に対して影響力を与えようとする階級のことである。舛添氏のような政治的既得権(知事や国会議員などで得た収入や権力)を所持している人物は、ヴェブレンのいう有閑階級の代表といえるだろう。
 今の日本経済と東京都経済は、ここでも解説したように、消費増税の影響を特に強く受けてデフレ的な経済のままである。雇用状況は堅調であるものの、人々の名目所得の伸びは鈍く、税金が非常に重くのしかかっている。昔と同じ主張をもつのであれば、まず舛添氏がすべきは、無駄にしか思えない都市外交ではなく、政府に対する消費再増税凍結、むしろ消費減税の提案であろう。
 だが、そのような発想はない。これには理由がある。消費増税の一部分は地方消費税として東京都の財源にも組み込まれるうまみがあるからだ。この既得権を捨てるわけにはいかない。また冒頭でも解説した、都知事という社会的ステータスがもたらす「見せびらかしの消費」もこのデフレ的経済の中ではむしろ威力を発揮するものだ。簡単にいうと、舛添氏はそのデフレ経済との戦いという初心を失ったのだろう(もし初心というものが本気であったのならばだが)。いまの彼の行動や発言はすべてデフレ的経済の申し子そのものである。
 実は東京都には、デフレ的経済と闘う手段がある。例えば私はかつて、東京都で地域通貨(アービング・フィッシャー流の日付け貨幣というもの)を発行するという提案をしたことがある。この地域通貨と、現在行われてる地域通貨と決定的に違うのは、これを取得したものは一定期限に利用しないと事実上のペナルティ(追加の増税)を受けることにある。最寄りの地方自治体の窓口に行き、この「日付け貨幣」を受け取った者(希望者に限定する)は、一定の期間に消費してしまわないと、むしろ追加の税負担を要求されるのである。そのためこの追加の税負担を避ける目的で、「日付け貨幣」を得たものは積極的に消費する、という政策の枠組みである。これに類した政策の枠組みは多数ある。要はやる気の問題なのだ。
 東京都の経済が活性化すれば、都の財政状況も改善し、必要な社会保障などの財源として貢献するだろう。だが、いまの東京都の現状では、むしろ低所得者層の状況を悪化させている消費増税の負担で、社会保障を充実しようという倒錯した形になってしまっている。そしてそれは東京都だけではなく、日本全体の縮図でもある。
 このようなデフレ的経済の申し子になった舛添氏には、一刻も早く都知事の座からの退場をお願いしたいというのが偽ることのできない私の意見である。
さて、このようなことから、批判のかなり多い舛添知事です。自ら辞任するのを決意するには、さらなる厳しい追求でもなければ、すぐにとはいかないと思います。

しかし、橋下氏が都知事候補として、参院都知事同時選挙ということになれば、確かに非常に良いことだと思います。

非常に良いことという中身は、上の記事のようにあるように、安倍自民党、都議会自民党や公明党にとって良いという意味と、他にもう一つあります。

それれは、橋下氏にとって良いということです。私自身は、橋下氏は地方の首長としては、申し分なく随分努力されたと思っています。

ただし、国政ということになると、一抹の不安がありました。それは、何かというと、国政と地方行政の大きな違いであるマクロ経済です。

確かに、橋下氏は大阪府知事としても、大阪市長としても努力されていたと思います。しかし、この努力どちらかというと、緊縮財政的な観点からでした。府として、入ってくるお金は決まっているのですから、それに対して、予算の切り詰めを行うのは知事として当然のことだと思います。

だから、その面では評価します。無論無駄な経費を切り詰めることは、本当に重要なことです。ただし、国政はそれだけでは通用しません。

金融や、財政など地方自治体の首長のようにしかみられなければ、とんでもないことになります。家庭の主婦的な感覚で、切り詰めばかりに走れば、デフレ傾向に拍車をかけるだけになります。

さらに、国政となれば、金融と雇用とは密接に結びついてるということも、理解しなければなりません。そうして、金融緩和をすることにより雇用状況が良くなることを理解する必要があります。さらに、デフレのときには、金融緩和と積極財政をしなければならないというマクロ経済の基本中の基本を知らなければなりません。

実は、このことを全く知らない国会議員は大勢います。民進党などの野党では、理解している人はほんの一握りです。自民党でも、安倍総理とそのブレーンの方々のうち、稲田政調会長等を除いて他の人くらいは理解していますが、それ以外というとほんの一人握りです。



橋本氏は、国政に参加したことがないので、この点に関してはあまり明るくないと思います。実際、過去の経済に関する発言は、あまりマクロ経済政策を意識しているとは思えないことが多かったように思います。そのため、私は前から、今のままの橋下氏であれば、国政には参加しないほうが良いと思っていました。

橋下氏が大阪府知事首長時代に、上記の田中秀臣氏が提案しているような、地域通貨を大阪府で発行し、大阪府のデフレから脱却をはやめるというようなことは実施していませんでした。

もし、橋下氏が東京都知事になったとして、旧来のように緊縮だけではなく、田中秀臣氏のいうような、地域通貨(アービング・フィッシャー流の日付け貨幣というもの)を発行して、東京都の経済が活性化すれば、都の財政状況も改善し、必要な社会保障などの財源として貢献することができるでしょう。

これは、都が行うといことから、国の積極財政や金融緩和政策とは異なります。しかし、東京都のGDPは韓国と同程度です。さらに、地域通貨を発行することから、都内で擬似的に、金融緩和策と積極財政を擬似的に行うことができます。

特に、雇用に関してはかなりのことができそうです。在任中に実施すれば、東京オリンピックの頃にはかなり景気が良くなることになります。そうなると、都財政もかなり充実しますから、保育園の問題なども全国に先駆けたモデル的な事業を展開できます。いや、それどころか、マクロ経済政策における優良モデルになり、社会・経済活動が活発化して、様々な社会事業の魁となることも十分考えられます。

こうした東京都の繁栄は、大阪都構想の推進にも大きな影響を与えることとなります。さらには、道州制にも影響を与えるかもしれません。

こうすることによって、橋下氏は、マクロ経済政策の金融政策や積極財政を実地で学ぶことができます。その後に、国政入りすれば、マクロ経済音痴の他の国会議員にはできなかったような様々な政策に取り組むことができるようになると思います。

もし東京都知事になることができたら、有象無象の政治家や、経済学者などと親交を深めるではなく、高橋洋一氏や、田中秀臣氏、片岡剛司氏、村上尚己、上念司氏(頭に浮かんだ人を掲載しました。他にもまともな方々は随分いらっしゃいます)などのまともにマクロ経済を知っている人たちと親交を深めるべきでしょう。東京にはそうした人材が集中しています。

もし、橋下氏が東京都知事になり、地域通貨を発行し、金融緩和策、積極財政の真髄を東京都で学び、その後の国政に参加した場合かなり有能な政治家になると思います。しかし、もしこのプロセスを欠いた場合には、凡庸な政治家になり、かつての輝きを再び発揮することはないでしょう。

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2016年3月12日土曜日

安倍首相のブレーン本田参与、6月スイス赴任に高まる“消費増税先送り”―【私の論評】日本の積極財政の夜明けがはじまり、世界経済を牽引することになる(゚д゚)!


本田参与の大使赴任遅れは、増税先送りのサインか
政府は11日の閣議で、駐スイス大使に、安倍晋三首相の経済ブレーンで、「反増税派の論客」として知られる本田悦朗内閣官房参与を充てる人事を決定した。発令は同日付だが、何と赴任は6月上旬という。国内外の有識者らを集め、世界経済の情勢を議論する「国際金融経済分析会合」に参加するためで、来年4月の消費税10%の先送りが高まってきた。

「アベノミクスの意義をしっかり議論していきたい」

本田氏は、16日から始まる「分析会合」について、産経新聞の取材にこう答えた。

同会議には、安倍首相や麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、石原伸晃経済再生担当相ら関係閣僚に加え、日銀の黒田東彦総裁、ノーベル経済学賞を受賞した米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授など、海外の著名な経済学者や国際機関の研究者などを招く。

ジョセフ・スティグリッツ教授 彼なら緊縮財政の無意味なことを明快に説明するだろう。
 中国経済の減速や原油価格の低下、金融市場の混乱などをテーマに、5月の伊勢志摩サミットまで5回程度開く予定で、永田町では「消費増税延期の地ならし」(自民党中堅)とみられている。

本田氏がスイス大使に転任するという一報が流れた際、財政再建を重視する政府・自民党内の一部には「反増税派の力が弱まる」という期待感が強まった。だが、本田氏は「分析会合」の全日程に出席し、サミットまでは参与職も兼務するという。

異例の措置に、官邸関係者は「安倍首相の『再増税には慎重』というメッセージが伝わってくる」と語っている。

【私の論評】日本の積極財政の夜明けがはじまり、世界経済を牽引することになる(゚д゚)!

上の記事、消費税10%見送りに向かって、安倍総理が着々と手を打っていることが理解できる記事です。

「国際金融経済分析会合」は、今月中頃からサミットまでに5回程度開催される予定です。伊勢志摩サミットは、5月に開催されます。

本田悦朗内閣官房参与のスイス赴任が、もっと早い時期、たとえば5月より以前であれば、10%増税が実行される可能性が高まったものと判断すべきだったでしょう。

これまでも消費増税決定の前に、経済財政諮問会議の「点検会合」が開かれていました。
2014年4月の5%から8%への消費増税の時には、13年8月26日から30日まで点検会合が開かれました。この会合では、有識者・専門家60人が参加し、消費増税すべきだとする意見が7割超、予定変更すべきだという意見が1割超で、結果として増税が実行されました。消費増税をすべきという意見の人たちは、たとえ増税したとしても、日本経済への影響は軽微としていました。

この点検会合の結果を踏まえ、結局平成14年4月から8%増税が実施されました。しかし、増税後に景気は腰折れし、点検会合で出された意見の多くは間違いだったことがはっきりしました。安倍総理は、これを重く受け止め、点検会合に不信感を抱いたのではないでしょうか。

さらに、当初15年10月に予定されていた8%から10%への消費再増税をめぐり、やはり経済財政諮問会議の点検会合が14年11月4日から18日まで開催されました。この会議でも、増税すべきという意見が大勢を占めました。

平成14年11月18日の点検会合 
一方、安倍首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議および、20カ国・地域(G20)首脳会合出席のために、同月9日から17日まで外遊しました。

G20に参加し、オバマ大統領と会談した安倍総理
首相はこの外遊期間中に海外から与党要人に個別に電話をかけて衆院解散を伝えた模様でした。総理は点検会合における再増税ありきの議論をまったく受け入れるつもりがなかったのです。

8%増税の悪影響は昨年10月-12月期のGDP成長率が、マイナスになったことでも明らかなように、未だに続いています。さらに、このままだと、アベノミックスの金融緩和による雇用の改善状況も、今年の夏あたりから悪化する可能性すらあります。

現状では、実際には増税による悪影響による景気の悪化を、アベノミクスは頓挫したなどと言い出す政治家や、識者などもでている状況です。これが、さらに夏になり、さらに悪化すれば、マスコミや他の識者まで、それに便乗し、増税は棚にあげ、アベノミクス自体が大失敗と大合唱し、またまた、10%増税を押し切られる可能性が高いです。

そうなれば、景気はさらに落ち込み、とんでもないことになるのはあまりにも明らかです。安倍総理自身もそうなることなど望んではいないことでしょう。

ところで、政府は、伊勢志摩サミットにおいて世界経済のために財政政策と金融政策を同時発動を打ち出す流れになっています。新たな点検会合もこれを補強するのであると考えられます。これは、増税などの緊縮財政とは真逆の積極財政を示すものなので、消費増税もこの流れからすると当然延期ということにならなければ、一貫性がありません。


5月26、27日に伊勢志摩サミット、6月1日に国会会期末という政治日程を考えると、安倍総理による次のシナリオが浮かび上がってきます。

まず、点検会合で「世界経済のためには緊縮財政からの脱却が必要」との方針を打ち出します。サミットで世界の首脳がその方針を確認します。このような外交成果も踏まえて、国会会期末に衆院解散を宣言します。

解散から40日以内の総選挙実施を定めた憲法54条により、7月10日に、衆参ダブル選挙をすることになります。

ダブル選挙の争点の第一は経済になることでしょう。緊縮財政からの脱却を掲げることになれば、増税延期と財源のダブルバズーカが発射されることになるでしょう。

増税推進派からは、積極財政の財源について追求される可能性もありますが、それは、以前もこのブログで掲載したように、外国為替資金特別会計と労働保険特別会計などの埋蔵金が存在します。

これらは、円高対策と、雇用対策にあたられるもので、金融緩和によって、円安傾向や雇用が上向いている現在、その全額を貯めこんでおく必要性などさらさらなく、今こそ経済対策に使うべきものです。そうして、これでも財源としては十分なのですが、さらに奥の手もあります。

これらを整合性を保って、日本の実情にあわせて、合理的に順序立てて誰にでも理解できるように説明できる人としては、現状では本田参与が一番です。

その本田参与が、駐スイス大使に決まってしまったのですが、その赴任がなんと6月ということです。

無論、このようなことは、安倍総理の意思決定によってのみ行われることですが、これはどう考えても、増税延期のスケジュール・シフトと考えて間違いないようです。

それと、本田参与が駐スイス大使になることについては、私なりに考えてみたのですが、最近の国連の動きを牽制するためだと思います。

このブログにも掲載したように、スイス・ジュネーブの国連女子差別撤廃委員会において、日本における「天皇男系継承は女性差別」と勧告しようとしてみたり、慰安婦問題に関する動きがあったたりで、この問題に対処する強力な人材を必要としています。

本田参与を駐スイス大使にするのは、こうした問題に対処させるという目的もあるのだと思います。

 日本の皇室典範の内容にまで、提言をしようとした、国連女子差別撤廃委員会
それにしても、とにかく、日本は積極財政と、金融緩和で、とっととデフレから完全脱却して、まともな経済に戻すべきです。

伊勢志摩サミットは8つの閣僚会議も開催されるという空前の大規模で行われます。これは、前回の洞爺湖サミットよりもかなりインパクトが大きいです。

このインパクトのある会議で、日本が世界の国々に向かって「緊縮財政からの脱却が必要」と訴えるわけです。そうして、最近では景気が悪いときに「緊縮財政」をしても全く効果はないということが、再確認されているので、各国首脳もこれに合意して、共同声明が出されるに違いありません。

そうなると、日本も当然積極財政をしなければならず、緊縮財政の手段である増税などできません。そうして、この直後に安倍総理が増税見送り、衆参両院同時選挙を宣言するわけです。素晴らしいシナリオという以外にありません。

中国経済が落ち込む中、原油安は日本にとっては良いことですし、中国のように構造的に重大な問題のない日本の経済が復活すれば、アジアや世界経済にとっても良いことです。

これを機に日本は、はやい時期にデフレから完全脱却し、世界経済を牽引することになると思います。そうして、世界の他の国々も、過去の日本のように、デフレなどの不景気なときに増税などの緊縮財政をして失敗するという二の轍を踏むこともなくなり、良い方向に向かうことになることでしょう。

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2014年12月25日木曜日

第3次安倍内閣は経済再生優先、アベノミクス進化―【私の論評】今年は金融緩和が効き目はまだない、財政政策がものを言う! 安倍総理は、積極財政に踏み切らざるをえない(゚д゚)!

第3次安倍内閣は経済再生優先、アベノミクス進化

第三次安倍内閣発足

第3次安倍内閣が24日、発足した。安倍晋三首相がアベノミクスを問う選挙と位置づけた先の衆院選での勝利を受け、引き続き経済最優先で政策運営にあたるため、防衛相以外の閣僚を全て再任。まずは経済対策を策定し、今年度補正予算、来年度予算の早期編成と成立を図る。

安倍首相は内閣発足後の会見で、「アベノミクスの成功を確かなものにすることが最大の課題だ。アベノミクスを進化させていく」と語った。

<閣僚はほぼ再任>

新内閣について、首相は第2次安倍改造内閣の全閣僚を再任する意向だったが、政治資金問題で野党の追及を受けた江渡聡徳防衛相が再任を固辞したことから、中谷元・元防衛庁長官を後任に起用。他の全ての閣僚は再任した。

安倍首相は会見で、中谷防衛相の下で、安全保障に関する法案準備を進め、国民の理解を得る努力続けながら、通常国会での成立を図りたいとした。

<アベノミクス前進に全力>

麻生太郎財務相、甘利明経済再生担当相ら主要経済閣僚は再任され、引き続きアベノミクスを前進させる役割を担う。

安倍首相は会見で、アベノミクスの成功を確かなものにするとしたうえで、選挙期間中に聞いた様々な声を反映してさらに「進化させていきたい」とし、消費増税先送りでも社会保障の充実を可能な限り実施していく考えを示した。

一方、「経済再生と財政再建の二兎を追う政権」(菅義偉官房長官)として、2020年度の基礎的財政収支黒字化達成に向けた財政再建への具体的な計画作りも大きな課題となる。

<統一地方選へ、地方再生が鍵>

来年4月に統一地方選挙を控える新政権にとって、アベノミクスの恩恵がまだ得られていない地方にどれだけ効果を波及させることができるかも大きな課題だ。27日に決定する予定の経済対策では、地域の実情に配慮して消費を喚起するための交付金など、地方活性化策が目玉となる。

「統一地方選で安定した政治ができる体制を完成させたい」(谷垣禎一自民党幹事長)と位置づける戦いに向け、地方再生で成果を出していきたい考えだ。

以上は要約です。詳細をご覧になりたい方はこちらから!

【私の論評】来年は追加金融緩和の効き目はまだ期待できない、財政政策がものを言う! 安倍総理は、サプライズを伴う積極財政に踏み切らざるをえない(゚д゚)!

以下に、選挙前のものではありますが、最近の経済状況を網羅的に解りやすく説明した、高橋洋一氏の動画を掲載します。



この動画で高橋洋一氏が述べているように、アベノミクスは、当初は金融緩和で始まりましたが、この動画で高橋洋一氏が語っているように、金融効果のが効いてくるのは、1年以上たってからということで、今年の10月の金融緩和は、来年の経済には寄与することはあまり期待できません。

また、円安については、円高と比較すれば、円安のデメリットもあるものの、円高のデメリットのほうがかなり大きく、円安が大変だとするのは間違いです。その間違いをいろいろ、屁理屈をつけて、以下の動画で辛坊治郎が語っています。これじゃ、辛坊が財務省の回し者であると言われても仕方ないと思います。



とにかく、現状の円安水準をどうのこうのいう輩は胡散臭いです。円安は、今の日本にとっては、非常に良いことです。野田政権のときの、1ドル70円台のとを思い出してみて下さい。本当にとんでもないことになっていました。深刻な円高倒産が質、量ともに最悪の水準であったという事実があります。これを無視して、円安がさもかなり悪影響があるかのような、話をする連中は辛坊に限らず本当に胡散臭いです。

さて、平成15年度に、金融緩和が実体経済に及ぼす良い影響はあまり期待できないとすれば、安部首相が、アベノミクスとして打ち出す効果のある経済政策は、積極財政ということになります。

この積極財政で今のところはっきり打ち出されているのは、3.5兆円です。これについては、このブログでも紹介しました。その記事のURLを以下に掲載します。
経済対策3.5兆円に 27日にも決定 地方支援で規模拡大―【私の論評】8%増税悪影響は甚大、対策を怠れば、デフレからの脱却は遠のく!しかし、最も警戒しなければならないのは昼行灯の似非識者と財務省か(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、経済対策として地方支援で規模拡大をするということで3.5兆円で編成するという政府の方針について紹介しました。これでは、規模があまりにも少なすぎて、焼け石に水であることを掲載しました。

ただし、どの程度少ないのかについては、述べませんでした。これに関しては、需給ギャップが参考になります。

日本における直近の需給ギャップがどの程度あるかは、内閣府が定期的に公表しています。それによると、現状では、需要不足なお30兆円であり、デフレ脱却の道はまだまだ厳しいです。

内閣府は4日、日本経済の需要と潜在的な供給力との差を示す「需給ギャップ」が、7~9月期にマイナス2.7%になったとの試算を発表しました。名目では年率換算で14兆円の需要不足になる。前期(マイナス2.2%、11兆円)から需要不足が拡大しました。増税後の個人消費の低迷が長引き、実際の経済成長率が1.6%減となったことが響きました。

需給ギャップは経済全体の供給力に対する需要を示したもので、物価動向などに影響を与える。需給ギャップがマイナスになるのは2008年7~9月期以降、約6年連続で、デフレ脱却にかかる時間の長さを印象付けます。

この「需給ギャップ」、2009年10~12月期はマイナス6.1%で、金額にすると年換算で約30兆円の需要が不足だったので、震災による公共工事や、その後の金融政策などで現在の規模にまで縮小いているわけですが、それでも、年率にするとまだ10兆円以上のギャップが存在しているという深刻な状況です。


さて、これを是正するためには、3.5兆円程度の経済対策では全くもって、不十分なわけです。来年は、少なくとも、年間で10兆円以上の経済対策が必要になります。


この意味するところは、いろいろありますが、平たくいうと天下国家論よりも、まずは経済を安定させて、生活不安がなくなってから、それから天下国家論をするべきとの国民の審判がなされたものとみなすべきです。次世代の党の、経済政策はかなりお粗末でした。それに、主だったメンバーは、マクロ経済を理解していないと思われるような発言を繰り返していました。

安全保障でも、戦後体制からの脱却も、改憲もまずは、目先の経済がまともにならなければ、あまり意味を持ちません。これらが、全部成就しても、経済がズタズタになっていれば、国防費も満足に捻出できません。まずは、この異常なデフレを克服するのが最優先課題です。

次世代の党は経済を軽んじすぎた!

すでに、15年以上も日本はデフレが続いており、今のままでは、良かれと思って何かを実行すると、他の何かが駄目になるというモグラ叩き状態にあり、閉塞状況にあります。おそらく、安倍政権が経済を軽んじて、戦後体制から脱却とか、改憲などのことばかり打ち出せば、支持率はかなり低下するものと思います。

だからこそ、安倍総理は、今回の解散総選挙の大義を「増税見送り」「アベノミクスの継続」を掲げて、勝利することができたのです。

だから、安倍政権としては、まずは経済対策を優先することになると思います。そうして、8%増税によって、経済が悪化することが明々白々であったにもかかわらず、日銀の黒田総裁は、追加の金融緩和策をしなくても、日本経済は落ち込むことはないと主張しましたが、実際に8%増税をしたところ、その主張は脆くも打ち砕かれ、過去二年間にわたる、アベノミクスの成果は水の泡と消え、アベノミクス実施直前の状況に戻ってしまったわけです。

この状況を打破するため、黒田日銀総裁は、今年の10月31日に追加金融緩和に踏み切ったわけです。しかし、これは遅きに失しました。本来は、8%増税が決まった直後に実施すべきでした。なぜなら、先に述べたように、そうして高橋洋一氏も語っているように、金融緩和政策は、実体経済に効き目があらわれるまでには、少なくとも一年くらいはかかるからです。

そうすると、来年の経済を良くするためには、財政政策が大きな鍵をにぎるわけです。そうして、先ほど述べたように、名目では年率換算で14兆円の需要不足が生じている現在、少なくても10兆円以上の政府による経済対策が必須となるわけです。

今後安倍政権が、安定して、長期政権になるためには、少なとくも10兆円規模の財政出動が必要不可欠となります。そうして、公共工事の供給制約のある現在では、できるなら、消費税を5%に戻すか、それができないというのなら、8%増税を帳消しにする程の規模の所得税減税と、給付金政策を行うべきです。

安倍総理は、是が非でも日本をデフレから脱却させなければならない

これを実行するための、方法としては、私自身は国債で賄っても良いと思うのですが、赤字国債を嫌う人も多いので、財源としては、それこそ、高橋洋一氏も主張しておられるように、いわゆる「埋蔵金」を活用すれば良いのです。今の段階なら、円安で含み益が10兆円以上あると思われる外国為替資金特別会計(外為特会)の活用が良いです。もちろん、外為資金百数十兆円すべてが埋蔵金ではなく、あくまで含み益の部分です。

こういう含み益のことも言わず、円安のネガティブな面ばかり強調する辛坊氏の経済論は、どことなく、胡散臭く信用なりません。

いずれにせよ、安倍政権がまともな積極財政にとりくまず、過去の政府のように焼け石に水のような、桁違いに小規模な経済対策に終始するならば、支持率は激減し、安倍長期政権の夢は水泡に帰することは、火を見るよりも明らかです。

それにしても、異次元の包括的金融緩和で口火を切ったアベノミクスを実行に移したのは、安倍総理です。この安倍総理が、現在の状況から、積極財政に踏み切る、それもサプライズを伴う積極財政を実行に移すのは間違いないと思います。

選挙前は、そのようなことは不可能だったかもしれませんが、選挙で大勝した今ならできます。財務省も面従腹背ではありますが、安倍総理の打ち出す、積極財政に従うことになると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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経済対策3.5兆円に 27日にも決定 地方支援で規模拡大―【私の論評】8%増税悪影響は甚大、対策を怠れば、デフレからの脱却は遠のく!しかし、最も警戒しなければならないのは昼行灯の似非識者と財務省か(゚д゚)!





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2014年10月31日金曜日

日銀 追加の金融緩和を決定―【私の論評】日銀が、追加金融緩和を実行し、政府が積極財政に踏み切れば、数十年ぶりの快挙になるのは間違いない。そうなれば、安倍政権支持率はかつてないほどに上昇することだろう(@@)


追加の金融緩和を発表した日銀黒田総裁
日銀は31日に開いた金融政策決定会合で、目標としている2%の物価上昇率の達成を確実にするために、日銀が市場に供給するお金の量を年間80兆円まで増やす追加の金融緩和に踏み切ることを決めました。日銀が去年4月に大規模な金融緩和を導入して以降、追加の金融緩和は初めてです。

声明の中で、日銀は、国内の景気について基調的には緩やかな回復を続けているとしつつ、物価面では消費税率引き上げ後の需要の弱さや原油価格の大幅な下落が下押し要因になっているとしています。そのうえで、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあるとして、追加の金融緩和に踏み切ったとしています。日銀が去年4月に大規模な金融緩和を導入して以降、追加の金融緩和は初めてで、今回は9人の政策委員のうち、賛成が5人、反対が4人という異例の投票結果になりました。

追加緩和策の内容

日銀が今回決定した追加緩和では、まず、マネタリーベースと言われる日銀が市場に供給する資金の量を拡大することを決めました。日銀はこれまで、年間60兆円から70兆円増やすとしていたマネタリーベースを、今回の追加緩和では10兆円から20兆円追加し、年間80兆円増やすことにしました。資金を供給するにあたっては、市場から買い入れる国債などの資産の額を増やします。具体的には、市場から買い入れる資産のうち長期国債については、これまで保有残高が年間50兆円増えるペースで買い入れるとしていましたが、これを30兆円増やし、年間80兆円にします。また、ETFやREITと言われる投資信託を買い入れる額についても、それぞれこれまでの3倍とし、ETFは年間3兆円、REITは年間900億円まで増やします。日銀は、去年4月に今の大規模な金融緩和策を導入した際、黒田総裁自身が「これまでと次元が異なる」としていましたが、今回の追加緩和で、それをさらに上回る資金を市場に供給することになります。

2%物価目標と民間予測

日銀は、目標としている2%の物価上昇率について、これまで、今の大規模な金融緩和の効果で来年度を中心とした時期に実現する可能性が高いとしてきました。その一方で、公益社団法人の「日本経済研究センター」が毎月行っている民間のエコノミストを対象にした調査では、来年度の物価上昇率は消費増税の影響を除いたベースで1.18%にとどまり、日銀はいずれ追加の金融緩和に踏み切ることが必要になるという見方が大勢を占めていました。

この記事は要約記事です。詳細は、こちらから(*_*;

【私の論評】日銀が、追加金融緩和を実行し、政府が積極財政に踏み切れば、数十年ぶりの快挙になるのは間違いない。そうなれば、安倍政権支持率はかつてないほどに上昇することだろう(@@)

まずは、私の上記の記事に関する、論評の結論を書いておきます。

少し遅れましたが、まあまあの内容。あとは、増税しないことと、第三の矢である、成長戦略など余計なことをしないことで、日本はデフレ脱却に一歩近づきます。

できたら、減税や給付金対策など実行すれば、さらに近づきます。公共工事は、現状では、人手不足などによる、公共工事の供給制約があるため、現状では有効な経済対策とはなり得ません。

政府主導による成長戦略など、どこの国でも成功したためしはないです。政府主導で成長戦略ができるなら、共産主義も大成功していたはずです。現実は、周知のとおりです。

それから、最近日銀黒田総裁の増税推進派的な発言が気になっていましたが、これはトーンダウンしたことも報じられています。

その記事のURLとその内容を以下に掲載しておきます。
〔BOJウオッチャー〕黒田日銀総裁の増税タカ派度、トーンダウン
[東京 31日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁の消費税をめぐる発言が変化した。昨年の夏以来、財務省よりタカ派と呼ばれるほどに消費増税による財政再建の重要性を繰り返し発言してきたが、31日の会見では「関与するところでない」とトーンダウンした。政府の増税判断をめぐる動きと関連した事象なのか注目される。 
黒田総裁は今年4月の増税の是非が議論された昨年夏以来、「消費税引き上げを行った場合のリスクに対しては財政・金融政策で対応が可能だが、行わなかった場合のリスクが顕現化した場合、なかなか対応しがたい」と繰り返してきた。 
今年9月の定例会見では、増税を見送る場合「確率は低くても、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味では、リスクが大きい」と断言した。 
増税判断は政府の専権事項で、日銀がみだりに口をはさめばリスクがあるとの見方が、政府・与党や日銀周辺にあったのも事実。そうした中で黒田総裁の発言は、目立つ存在でもあった。 
一方、安倍晋三首相周辺では増税延期論がくすぶっており、首相の経済ブレーンである内閣官房参与の本田悦朗・静岡県立大教授は、黒田総裁の増税発言について「日銀総裁の矩(のり)を超えている」と痛烈に批判していた。 
31日の会見では、政府が消費税率10%への再増税を決断する前に追加緩和に踏み切った経緯と、増税への見解を求められ、「再引き上げは、政府で経済動向を見極めて決定するということになっており、それはまさに政府で決定されることであり、わたくしどもの関与するところではまったくない」と発言。「従って、(政府の増税判断に)影響を与えようとか、どうこうしようと言うつもりもないし、そのようなことにもならない」と述べた。
この黒田総裁の増勢タカ派発言は、前から気になっていました。現状はどう考えても、日本はデフレのど真ん中であり、このようなときには、金融政策でも、財政政策でもできることは何でも実施して、なるべくはやく、デフレ状況から脱するべきにもかかわらず、なせあのような発言をするのか、非常に疑問に思っていました。

そうして、増税するしないは、あくまで安倍総理の専権事項です。政府の一下部機関に過ぎない、日銀の長がそのような発言をするのは、非常におかしなことです。日銀のトップは、日銀のやるべき事に集中すべきであり、増税判断などに口をはさむべきでありません。

日銀の今回の、追加金融緩和に関しては、多くのマスコミが、増税支援などと掲載していますが、黒田総裁は、そのような発言はしていません。マスコミは相変わらず馬鹿です。いくら今回追加金融緩和をしたところで、また増税してしまえば、日本は再びデフレ・スパイラルの底に沈んでしまうことは明らかです。

このブログにも掲載したように、最近では、安倍総理は増税見送りに関わる発言をするようになりましたし、総理の周辺でも、

それに関しては、このブログにも掲載していますかので、その記事のURLを以下に掲載します。
消費再増税、アベノミクス成功のため冷静に判断=安倍首相―【私の論評】安倍総理は、長期政権樹立のため増税パスの政治的な賭けを実行する可能性が高まってきた!しかし、日本のマスコミはこれをスクープできないだろう(・・;)
安倍首相が消費増税の延期示唆、経済への影響踏まえ判断=FT―【私の論評】安倍総理は、外国の新聞社には増税見送りの示唆をするが、殺人マシーンと化した財務省に諜略された日経・朝日新聞をはじめとする大手新聞にはそのようなことはしない。しかし、本当にそんな事で良いのだろうか(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、本日また安倍総理は、増税見送りを示唆するような発言をしました。その記事を以下に掲載します。
<衆院予算委>安倍首相「財政健全化目標は国際公約と違う」2014年10月30日(木)20:47

安倍晋三首相は30日、衆院予算委員会の集中審議で、借金以外の歳入で政策経費をどれだけまかなえるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の赤字を2015年度にGDP(国内総生産)比で10年度から半減させる財政健全化目標について、「国際公約とは違う。何が何でも絶対という約束は果たせない」と述べた。今井雅人氏(維新の党)への答弁。 
 首相が「国際公約」を否定したのは、消費税率を10%に引き上げるかどうかを年末
首相はまた、再増税に向けた経済環境について「(4月の消費増税後の)反動減は想定していたが、想定の中では最も悪い数字に近い」と述べ、消費増税後の景気回復の厳しさを認めた。【葛西大博】
少し前までだと、増税するのがあたり前のど真ん中ような雰囲気でしたが、女性2閣僚の相次ぐ辞任などもあり、最近では安倍内閣支持率も加工気味です。

日銀は、追加金融緩和を決めました。ここで、政府が財政出動に踏み切れば、それこそ、数十年ぶりに、日銀の金融緩和と政府の積極財政による、両方の経済対策により、かつてない勢いで、経済が回復します。それにしても、数十年ぶりというのが情けないです。本来ならば、ずっと前に実行していなければ、ならないことです。



今の政府は、デフレの最中に増税するという大きな間違いをしてしまいました。とんでもないことです。

もし、再増税を見送ったとすると、直近では、多数の増税派が、安倍総理を大批判するかもしれませんが、ほんのすこしの間で、経済対策がすぐに効果を表すので、市場も好感し、国民も安倍総理をかつてないほどに支持することになると思います。

確かに、これは大きな政治的賭けですが、安倍総理が、金融緩和と積極財政に踏み切った場合、景気は、急速に回復基調に向かい、また怒涛の勢いで、安倍政権への支持率が増し、長期政権樹立の道はかなり容易になることでしょう。支持率は、かつてなかった程上昇すると思います。

増税してしまえば、逆の道をたどるでしょう。もし、それで安倍政権が崩壊することにでもなれば、自民党は下野する可能性もあります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

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