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2020年4月10日金曜日

日本が「東京封鎖ナシ、1ヵ月で緊急事態を脱出」できる最後の手段―【私の論評】多くの人が、他者との接触を極力避ければ、一ヶ月後には間違いなく、先が見えてくる(゚д゚)!

日本が「東京封鎖ナシ、1ヵ月で緊急事態を脱出」できる最後の手段

見えてきた「目標達成のための条件」
安倍首相「8割の接触減を」の根拠
安倍晋三首相が4月7日、緊急事態宣言を発令し、記者会見で人と人との接触を最低7割、極力8割削減すれば「1ヵ月で緊急事態から脱出できる」と訴えた。はたして、本当に脱出できるのだろうか。欧州の例をみる限り、可能性はゼロではないが、微妙だ。

安倍首相が「1ヵ月で脱出可能」と述べた根拠の1つは、厚生労働省のクラスター(感染集団)対策班のメンバーである北海道大学の西浦博教授が示した試算のようだ。


8日付の読売新聞は「首相『接触 極力8割減を』 緊急事態脱出へ訴え」と題した記事で、西浦博教授(理論疫学)の試算に基づき、下のようなグラフを掲げた(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200408-OYT1T50083/)。これとほぼ同じグラフは、中日新聞など他紙も紹介している(https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2020040802000061.html)。
グラフによれば、30日を経過した時点で「8割の接触減」が達成できれば、新規感染者は青い点線が示すように急激に減少する。「2割の接触減」にとどまると、逆に赤い線が示すように、新規感染者は引き続き急上昇を続ける結果になっている。

グラフには「7割接触減」のケースが示されていないが、8割ほどではないにせよ、新規感染者は緩やかに減少していくのだろう。いつごろ新規感染者がゼロになるか、と言えば、8割減ケースでは、50日辺りでゼロに近づいている。これは中日新聞のグラフも同じだ。

そうだとすると、新規感染者がゼロからスタートして30日でピークに達し、それから20日程度(50日ー30日)でゼロに近づく計算になる。安倍首相が「極力8割減なら1ヵ月で脱出」と語ったのは、多少の余裕を見て「1ヵ月」という話なのだろう。

ただし、以上の結論は、あくまで西浦教授による推計である。日本より感染拡大が先行した欧州や米国など他国で、実際の状況はどうなのか。
各国の感染者数推移の見かた

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「コロナウイルス追跡 パンデミック拡大に伴う最新の数字」という電子版の記事で、各国の感染状況を連日、分析している(https://www.ft.com/coronavirus-latest)。そこで、興味深いグラフをいくつも掲載している。

その1つは「最初に1日当たり30人の感染者が発見されてからの、新規感染者の推移」という下のグラフである(4月7日版。8日版は新規感染者数が7日間の移動平均)。
まず注意してほしいのは、新規感染者を示す縦軸は目盛りの幅が均等ではなく、対数スケール(目盛り)になっている点だ。たとえば、10と50の幅は50と100の幅よりも大きい。なぜ、対数スケールなのかと言えば、感染者はたとえば、1人から2人へ、2人から4人へ、4人から8人、8人から16人へと「指数関数的に増えていく」と考えられるからだ。

そんな新規感染者の増加を絶対値に基づく線形スケールで示すと、推移を示すグラフの形は横軸の経過日数にともなって、1、4、8、16と上昇していくので、あっという間に天井を突き抜けてしまう。まさに「うなぎ上り」だ。

だが、対数スケールにすると、たとえば、5日毎に新規感染者が倍増した場合でも、グラフの形は右斜め上に伸びる「直線」で示される。経過日数が短い間に2倍になれば、傾斜角度が急になり、逆に、長くて2倍になれば、緩やかになる。

グラフの角度を眺めれば、新規感染者が急増しているのか、それとも増加が緩やかなのか、はたまた減っているのか、が一目瞭然になるのだ。たとえば、完全に平らな形になれば、新規感染者は増えもせず、減りもせず、一定数にとどまっている状態を示している。
都市封鎖に踏み切った国の「その後」

さて、そこで日本をみてほしい。日本は青色の線で示されている。グラフによれば、日本の新規感染者は当初、欧米各国よりも下にあったが、ここへきて増加し、右斜め上に線が伸びている。

グラフ中にいくつかある星型マークは、各国が都市封鎖(ロックダウン)した時点を示す。横軸は「最初に1日当たり30人の感染者が発見されてからの経過日数」だから、封鎖した現実の日付ではない。経過日数だ。たとえば、10日が経過した時点では、星型マークが2つある。うち1つはフランスと読める。

そこで、イタリア(黒色)を眺めてみよう。

グラフによれば、イタリアは18日が経過した辺りで都市封鎖した。それから28日ぐらいでピークに達し、しばらく、ほぼ一定数を保った後、35日辺りから緩やかな下向きに転じた。最後の45日付近では、明らかに減少傾向になっている。

これは何を示しているか。イタリアは「都市封鎖から27日程度(45日ー18日)で新規感染者が減少傾向に転じた」のである。ほぼ1ヵ月だ。

もう1つ、イタリアと並んで感染が爆発したスペイン(ブルー)はどうか。スペインは10日経過時点で都市封鎖し、イタリアと同じように感染が急拡大した後、22日付近でピークに達し、30日付近で減少に転じた。35日付近では減少が明らかだ。

つまり、都市封鎖から25日程度(35日ー10日)で山を越えている。スペインの脱出はイタリアよりも、やや早いくらいである。英国はさらに早く、グラフで見る限り、都市封鎖から14日程度で山を越えつつあるようだ。ただし、この3ヵ国は4月8日時点で都市封鎖を解除していない。

「1ヵ月で脱出」は可能なのか

以上からみると、緊急事態宣言から「1ヵ月で脱出する」という日本の目標は達成不可能とは言えないが、容易ではない。ただし、新規感染者を1ヵ月で減少傾向にするのは、十分に可能である。それで宣言を解除するかどうかは、政治判断になる。

安倍首相や東京都の小池百合子知事が再三、述べているように、日本の緊急事態宣言は欧米のような強制力を伴った都市封鎖ではない。公共交通手段は確保され、商店がすべて閉まっているわけでもない。サラリーマンの出勤も減ったとはいえ、続いている。

だが、多くの人々は政府や自治体の呼びかけに応じて外出を自粛している。FTが掲載しているグラフは「都市封鎖が感染拡大防止に極めて有効」という結果を実証している。そうであれば、鍵を握るのは「欧州並みの外出自粛ができるかどうか」になる。

うまくいけば、1ヵ月どころか、英国のように、2週間程度で成果を出すのも可能だ。いずれにせよ、有効なワクチンや治療薬がまだない以上、外出を控えて「人と人の接触を避ける」ことが、新型コロナウイルスと戦う「最後の手段」であるのは間違いない。

4月7日深夜に公開したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一の『NEWSチャンネル』」では、同じFTのグラフも使って、長谷川と高橋の2人が新型コロナウイルスの見通しなどを徹底議論した(https://www.youtube.com/watch?v=SKStfChCKrg&t=50s)。こちらも、ぜひ参照していただきたい。



【私の論評】多くの人が、他者との接触を極力避ければ、一ヶ月後には間違いなく、先が見えてくる(゚д゚)!

メディアは、連日「感染者が新たに●●人」「感染者●●人超える」「●●県で初の感染者」等と速報を打って、人々を震え上がらせています。緊急事態宣言や“ロックダウン”を求める知事や識者らの声が日々高まっています。手遅れだ、という悲観論も多いです。

一方で、公開情報で、誰でも確認できる情報なのに、全く報じられていないデータや事実があります。

メディアは連日、「感染者数」=「陽性と確認された人数」ばかりを報道しています。

 私たちが日々報道で知る「感染者」の推移は、次のとおりです(毎日新聞の特設ページより)。


ところが、検査人数も増加しています。よく知られている通り、日本では新型コロナウイルス感染症との疑いが強くなった段階でPCR検査を行っているとされ、検査数が少ないです。もっと検査すればもっと陽性確定者が出てくるはずだ、との批判が強いです。

しかし、これは昨日このブログで示したように、現在のPCR検査の誤判断率が3割から5割にも登るからです。

これが意味することは、野放図な検査は意味なしということです。だかこそ、検査を絞って実施しているのです。このような、絞られた条件のもとで実施されたPCR検査でも、陽性確定したのは1割未満にとどまっているのです。9割以上が陰性でした。

厚労省のサイトより転載

グラフでは以下ようになります。黄色が陽性と確定した人数、それ以外は陰性だった人数です(最新データは、毎日新聞の特設ページを参照のこと)。


検査数が増えているので、陽性確定者が可視化され、増えているのは間違いないですところが、その中には一定数の無症状者もいます。退院者も増えています。

3月28日は69人、4月4日は1日に61人が退院しました(これまでの累計568人)。もちろん公開されている情報ですが、メディアは新規「感染者」しか報じません。

「1日あたり退院者が過去最多」というニュースは、一切出ません。


新型コロナウイルス感染症は、まだワクチンはありません。治療薬は重傷者には使用され、一定の効果をあげていますが、それはあくまでも現在のところ重傷者にのみ実験的に使用されている段階です。したがって、致死率もインフルエンザより高いとされています。

ただ、まだ全体像はつかめていません。国によっても大きな違いがあり、「致死率はまだわからない」というのが現時点では一番正確でしょう。わからない以上、想定以上に高い可能性がある、という恐れを抱いておくに越したことはないかもしれません。

それを前提に、冷静にデータを見てほしいです。4月5日12時現在、感染者数の累計は3271人ですが、重症者は70人、死者は70人です。

重症者数、死者数の推移は1日あたりの推移は、次の通り、横ばいで推移しています(最新データは、東洋経済オンラインの特設ページを参照)。


この感染症は、感染から発症、重症化、死亡までは一定の時間がかかる症例が多いとされます。今、私たちが見ているデータの多くは1~2週間前に感染した例が多いです。今後、重症化する人が急増する可能性は、もちろん否定できません。

あくまでこれらは過去のデータに過ぎない、といえば、その通りです。今後はどうなるかわからないです。ただ、現時点で確認されているデータを無視すべきではないのも事実です。

もちろん、新型コロナウイルス感染症は全く危なくない、と言いたいのではありません。少なからずの人が亡くなっており、一人一人の命は重たいです。ウイルスは人を選びません。著名人の命を奪ったことは列島に衝撃を与えました。

それでも、あまりにメディアの報道が「感染者数」ばかりにクローズアップし過ぎているので、「今のところ、重症者・死者は1日あたり1桁台で推移している」という事実は、知っておくべきと思います。
東京都・新型コロナウイルス感染症 対策サイトより

東京都では感染者が急増しています。他方で、重症者・死者は抑えられています。人口1300万の都市において、感染者数は1000人を超えたのですが、重症者24人、死者は30人です(最新データは、東京都・新型コロナウイルス感染症対策サイト参照)。

これも今後、急増する可能性がないわけではないですが、現状は、その多くが軽症・中症状者か無症状とみられます。

ところが、懸念されるのが病院がパンクして院内感染が拡大して機能麻痺してしまう、いわゆる「医療崩壊」だ。指定感染症医療機関の病床数も逼迫していると伝えられています(新型コロナウイルス対策ダッシュボード参照)。

東京都は、病床数の拡大を急いでおり、すでに1000床確保し、4000床を目指すとしています。

軽症者がホテル等に移されることも決まっており、逼迫しながらも、現状は、すぐに医療崩壊が起きる状況にないようです。 

政府専門家会議メンバーの発言をメディアが黙殺 「ロックダウン全くする必要がない」発言も

4月4日のNHKスペシャルで、記者会見でおなじみの、政府専門家会議の尾身茂副座長は、番組前半に次のように明言しました。
これは私の考えです。今回、緊急事態宣言が出ても、いわゆる欧米、イタリアとか武漢でやっている、いわゆる“ロックダウン"、都市封鎖ということを、私は全くする必要がないと思います。 
NHKスペシャル4月4日放送より

尾身氏はこうはっきり言い切ったのですが、どのメディアも報道しませんでした(Yahoo!ニュース検索調べ。他局の番組で取り上げているところもおそらくないでしょう)。尾身氏は番組内で、緊急事態宣言が今すぐ必要な状況にある、というような、発令に前向きな発言もしませんだした。これが生放送でなく、収録であれば、この尾身氏の発言は報道されたでしょうか。緊急事態宣言、事実上のロックダウンをした方がよい、という、都知事や有識者らの声は、たびたび報道もされています。

同じ専門家会議の押谷仁・東北大学教授も同日、ツイッターで「危機感のレベルがオーバーシュートしている」と懸念を示しつつ、
緊急事態宣言をした場合には特定の業種を、法的根拠を持って閉鎖したり、より強い外出の自粛をお願いすることになりますが、すぐに東京や大阪からの交通が遮断されたりすることはありませんし、その必要がある状況でもありません。東京と大阪の状況はニューヨークなどの状況とは全く異なります。いわゆる「3密」の環境にあるホットスポットに行きさえしなければ、東京、大阪で普通の生活をしていて感染するリスクは非常に低いのです。(以下、略)出典:専門家会議メンバーの押谷仁・東北大学教授(4月4日Twitter投稿)
などと、長文のコメントを投稿しました。この投稿は反響を呼び、5.7万件もリツイートされたので、ご覧になった方は少なくないと思います。ところが、これも全く報じられることはありませんでした(Yahoo!ニュース検索調べ)。

欧米諸国では感染拡大が深刻化し、ロックダウン(外出禁止・都市封鎖)している国々の状況がメディアで大きく取り上げられています。一方で、韓国や台湾では、ロックダウンせずに、感染拡大・死者を抑えている。日本はどちらかというと後者に属します。

実は、100万人あたりの感染者数は、日本と台湾とで、さほど変わりません(札幌医科大学附属病院のサイトで、確かめてみてほしい)。日本の人口は約1億2千万人であり、台湾は約2千万です。日本の人口は、台湾の人口の6倍です。このことを忘れて、単純に感染者数などで比較している人もいますが、それは正しい見方ではありません。

100万人当たりの死者数を、欧米とアジア主要国で比べると、次のとおりです。


韓国も台湾も、社会・経済活動をある程度維持し、学校も開いていますが、感染爆発という状況には至っていません。

なぜ欧米諸国でかくも感染拡大・死者が増え、東アジアでは抑えられているのか、要因はよくわからないです。

ここまで日本がギリギリで持ちこたえてきたのは、医療関係者と専門家の尽力が大きいと思います。感謝すべきです。

このようにデータを参照すると、安倍総理が語ったように、緊急事態宣言から「1ヵ月で脱出する」という日本の目標は達成不可能とは言えないですが、結構難しいようです。ただし、新規感染者を1ヵ月で減少傾向にするのは、十分に可能です。

もう、緊急事態宣言は出てしまったのですから、当該地域の人々は、人との接触を8割減らすことに専念していただきたいです。そうして、政府のほうも、それを実現するためにも、協力な支援策を打ち出すべきです。

人は、先に希望があれば、貧乏や危機に意外と強いものです。それは、私達の先達が、歴史で示しています。

様々なデータから、接触を減らすことで、感染を減少傾向に持っていくのは、可能であることがはっきりしてきました。

皆さんも、希望を捨てずに目の前の、人との接触をなるべく減らすということに、集中すべきです。多くの人が本当にそうすれば、1ヶ月後には先が見えるようになります。

ところで「もりかけ桜」問題でも、マスコミはさんざん煽ってきましたが、私自身は、一般に公表されている資料から、「もりかけ」では安倍政権を退陣に追い込むことは不可能だと早い時期から思っていました。「桜」に至っては、どう考えても、倒閣という立場からみても、筋悪以外の何ものでもないと思えました。それに関しては、過去のこのブログに述べました。

実際そのとおりになりました。今後も、「もりかけ桜」等ではどう考えても、野党や左翼の立場にたって考えても、倒閣など無理です。

にもかかわらず、まだ居酒屋に行けた時代の昨年の11月あたり、高齢者4人組が「もう一度加計問題をやるべき」などと真顔で話していました。それについては、このブログにも書きました。彼らは、当然のことながら、サイトで公表されている戦略特区グループの議事録等読んでいないようでした。

おそらく、彼らの情報の入手先は、テレビのワイドショーや大手新聞だけなのでしょう。このブログを読んでいる皆さんは、そのようなことにならないように、コロナウイルス等の情報は、上で示した情報源にあたり、自分の頭で判断し、それだけではなく、ワイドショー民の方々に教えてあげましょう。

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2017年5月4日木曜日

アベノミクス、完全に成功…戦後3番目の長期好景気突入、「失われた20年」を脱出―【私の論評】経済認識に関しては、国民に負けた民進党(゚д゚)!

アベノミクス、完全に成功…戦後3番目の長期好景気突入、「失われた20年」を脱出

官邸ホームページより 
 2012年12月に始まったアベノミクス景気が、バブル期を超えて戦後3番目の長さになった。現在の景気は、安倍政権の経済政策が功を奏しているのか。

 これについて日本経済新聞は、景気回復の実感が乏しいとして、その理由に潜在成長率の低下を挙げている。マクロ経済分析の問題であるにもかかわらず、金融緩和に触れていないのは不思議だ。

 景気の動向は、内閣府が作成する景気動向指数によってみることができる。景気動向指数の一致系列指数によって、景気が改善または悪化しているかにより、回復期か後退期なのかが判定されている。

 景気動向指数の一致系列指数としては、以下が挙げられる。
・生産指数(鉱工業)
・鉱工業用生産財出荷指数
・耐久消費財出荷指数
・所定外労働時間指数(調査産業計)
・投資財出荷指数(除輸送機械)
・商業販売額(小売業、前年同月比)
・商業販売額(卸売業、前年同月比)
・営業利益(全産業)
・有効求人倍率(除学卒)

 これらをみてもわかるが、幅広い経済部門から経済指標が選ばれている。

 一致系列で指数は、生産面に重点が置かれている。筆者は経済を分析する際、第一に雇用、第二に所得をみる。つまり、雇用が確保されていれば経済政策は及第点であり、その上で所得が高ければ、さらに満点に近くなる。それ以外の指数、例えば輸出や各産業別の景気分析、所得の不平等などは、人それぞれの価値判断が入るので、評価の対象外にする。経済をシンプルに考えているので、景気判断に必須な経済指標としては、失業率(または有効求人倍率、就業者数)とGDP統計でだいたいの用は足りる。

 こうした筆者の立場から見ると、景気動向指数の一致系列指数は、生産面の指標が重複し、雇用統計が足りないと考える。今の失業率2.8%はバブル景気以来なので、及第点を与えられる。ただし、14年の消費増税以降は消費が伸び悩み、GDPはそれほどでもないので満点とはいえない。

 前出の日経新聞のように雇用を重視しない解説をみていると、経済がわからなくなってしまう。同紙読者は大企業正規雇用者が多いと考えられるので、雇用など確保されていて当然というスタンスなのかもしれない。その立場からみれば、雇用政策たる金融政策には関心がなく、金融市場に影響を与える金融政策にしか興味がないのかもしれない。

 雇用を経済政策のミニマムラインとする筆者からみれば、アベノミクス景気は実感できる。筆者の勤務する大学はいわゆる一流校ではなく、そのときどきの「景気」によって、就職率が大きく変化する。4、5年前には卒業生の就職率が芳しくなく、なんとか学生を就職させるのに四苦八苦だった。ところが、今や就職で苦労することはかなり少なくなった。この間、学生の質が向上したとはいえないにもかかわらずだ。これは、アベノミクスの金融緩和によって失業率が低下したことの恩恵である。

アベノミクスの勝利
 以上は経済的な分析であるが、アベノミクスの成否は政治的には決着済みである。どのように野党が批判しようが、アベノミクスの勝利である。経済的には、「景気がいいのはアベノミクスと無関係」という方便も使えなくもない。しかし、政権交代とともに景気回復が始まり、その後、野党は国政選挙で惨敗が続いているので、政治的には勝負ありだ。

 名目経済成長率について、IMFデータによって1980年代、90年代、2000年代、10年代の平均の世界ランキングをみてみよう。日本のランキングは、以下のとおり。

・1980年代:138国中下から28位
・90年代:150国中最下位
・2000年代:188国中最下位
・10年代:190国中下から15位
 日本の場合、下から20位くらいであれば十分にやっていける。名目経済成長率は、マネー供給量の伸び率と7割程度の強い相関がある。この伸び率は人為的に動かせるので、マネー供給量を増やせば名目経済成長できるといってもいい。ちなみに、1990年代、2000年代の日本のマネー伸び率は世界で最下位だった。これが失われた20年の原因である。

 アベノミクスによって、日本は失われた20年からようやく脱出しようとしている。これこそが、野党がなんだかんだと批判しても、打ち破れない真理である。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

【私の論評】経済認識に関しては、国民に負けた民進党(゚д゚)!

以下に直近の経済指標について、詳細に踏み込んで検証します。

1-3月期GDPでは、ついに消費主体の経済成長が実現しそうです。消費は、今期は高めの伸びが期待でき、ここ3期をならした速度は年率1.6%となることでしょう。それは、消費増税の大打撃の前の2012~13年の伸びと同レベルであり、日本経済の復調を意味することになります。失われた10期を超え、16兆円もの大損害を残しつつも、成長は戻ってきたのです。今後は、雇用数の増加に見合う年率2.0%成長へ更に加速できるかが焦点となります。

3月の商業動態の小売業は前月比+0.2であり、CPIの財が-0.3であったことを踏まえると、実質では、これを上回る伸びとなるでしょう。したがって、3月の日銀・消費活動指数は、若干のプラスが見込まれ、1-3月期の前期比が+0.8まで高まる可能性があります。前期が低迷した反動も含まれますが、ここ3期をならしても+0.6という高さになります。消費の復調と加速をうかがわせるのに十分な数字です。

また、3月の家計調査は、相変わらず不安定な動きを見せ、消費水準指数(除く住居等)が前月比-2.0もの低下となったものの、1,2月の「貯金」で、前期比は+0.2に収まりました。GDPの消費を占う内閣府・消費総合指数は、3月がそれなりの低下となるでしょうが、前期比で+0.7程を確保できそうです。ここ3期の平均は、先述の活動指数より下がるにせよ、+0.4くらいになると考えられます。

+0.4というのは、2012~13年にかけての民間消費の伸びと同レベルです。その後、消費増税による大打撃に対処するため慌てて日銀が異次元緩和第二弾を打ったのですが、輸入物価高で苦しめただけで、2015~16年は+0.1へと沈みました。そのため、増税前のトレンドとの差は広がり、今や16兆円に及びます。8兆円の税収を得るのに、2倍の消費を潰したのだから、度を過ぎた財政再建の愚かしさが分かるというものです。+0.4への復調は、この傷口が広がらなくなったことを示しています。


今後の焦点は、成長の基礎体力である消費がさらなる加速を見せるかいなかにかかっています。その可能性は十分にあります。なぜなら、毎月勤労統計の常用雇用は、消費増税後も、コンスタントに前期比+0.5~+0.6を保ってきたからです。雇用が堅調でも、消費が低迷したのは、消費増税や輸入物価高で実質賃金が低下したことによるものです。ここに来て、パート増による平均賃金や労働時間の押し下げにも歯止めがかかり、雇用増がストレートに所得と消費の増加に反映される環境が整ってきています。

3月の新規求人倍率は、除くパートが+0.06の1.87倍と、12月の1.90倍に次ぐ高水準になりました。他方、パートの求人は一服し、人手不足の現状ではパートでは人員を確保しがたくなってきたので、正社員を集めようとする形へ変化しているようですは。こうした形はバブル期にも見られました。求人は、医療・福祉が多いのは当然ながら、1-3月期は、建設、製造、運輸という、賃金が高めで男性の雇用に結びつく求人が加速しました。

他方、3月の労働力調査では、就業者数が前月比+13万人、雇用者数が+1万人でした。プラスではあるものの、1-3月期の増加には、やや陰りが見られます。完全失業率は、男性が3か月続けて低下して2.8%となり、女性は2.7%が続いています。一時的かもしれないのですが、次第に人材の供給力に制約が現れてきています。雇用量の動向については、連休明け公表の3月毎勤でも確かめたいところです。

先月参議院の来年度予算案審議でアベノミクスの成果を強調する安倍首相
景気の先行きについては、輸出は拡大トレンドを維持しており、住宅は小康を保ち、公共は底を打っています。これらで構成される追加的需要は、12月頃に下ブレしたものの、それを取り戻すように推移しています。鉱工業生産は、3月が前月比-2.1となり、1-3月期の前期比が+0.1にとどまったのですが、4、5月の予測指数は、+8.9、-3.7と非常に高水準であり、景気の加速を予感させる内容となっています。

鉱工業指数に関しては、設備投資の指標である資本財(除く輸送機械)の出荷は、1-3月期の前期比が、前期の急拡大の反動もあって-2.9となりました。建設投資の目安となる建設材出荷も、同様に-1.0にとどまりました。それでも、GDPの設備投資については、輸送用機械が堅調で、企業の建設投資が盛んだったため、寄与度0.0~-0.1と見られます。また、住宅と公共の建設投資の寄与度は、ほぼゼロでしょう。

GDPの在庫の寄与度は、7-9月期が-0.3、10-12月期が-0.2と成長率を下げてきたのですが、1-3月期は、プラスとなりそうです。鉱工業指数で分かるように、製品在庫はプラス、流通在庫は変わらず、原材料在庫の仮置きがマイナスというところで、寄与度は0.1弱と見られます。また、GDPの外需については、ニッセイ研の斎藤太郎さんによれば、寄与度0.1強のようです。以上を踏まえるなら、1-3月期GDPの成長率は2.0%前後が妥当でしょう。

一部に「今の景気の回復ぶりからすれば、この4月からの消費増税は可能だった」との声もありますが、それをしていれば、増税幅と同じ5兆円の消費減に見舞われた上、失速状態が更に長く続いたでしょう。経験には学ばねばならいです。そうして、この半年の回復局面は、財政出動も、金融緩和も、成長戦略も、大してないまま達成されています。つまり、角な緊縮財政をしなければ、放っておいても日本経済は成長する。まさに8%増税は、百害あって一利なしの悪手中の悪手だったことがわかります。

以上ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事とあわせて、ご覧いただければ、アベノミクスの金融緩和策は大成功、一方8%増税は大失敗でしたが、相対的には成功していることがご理解いただけると思います。

昨年夏の参院選で民主党(現民進党)代表岡田氏が掲げた公約
高橋洋一氏は、「アベノミクスの成否は政治的には決着済み」としています。それは、昨年7月10日の参院選ではアベノミクスが最大の争点となり結局与党側が勝利したことを指しています。無論のその前の衆院選でもアベノミクスの継続をあげた与党が勝利しています。

野党側が「アベノミクスが限界にぶち当たっており、新しい経済政策を展開しなければならない」(岡田克也民進党代表=当時)などと批判したのに対し、安倍晋三首相は熊本県熊本市での第一声で「問われているのは、(現在の)経済政策を前に進めるか、低迷した時代に逆戻りするかだ」と反論しました。野党側はアベノミクスの現状を一時的に大企業の業績を回復させたものの、国民の所得増につながらず、失敗に終わったと考えました。

これに対し、与党側は長年、デフレ下にあった日本経済を回復へ向かわせているとみたわけです。選挙戦は与党側の勝利に終わり、アベノミクスが国民の信任を得た形になりました。そうして、その当時はこの与党側の主張が正しいのか否かは、予測としては正しいとはいえたものの、まだ経済統計などでははっきりとはしていない状況でした。

しかし、直近の数字を見ていると、明らかにこの国民の審判が正しかったことが理解できます。野党よりも、国民の目のほうが確かだったわけです。

民進党などの野党は、与党どころか国民に追いつかなければ正しい経済状況の認識ができなくなったのです。情けない限りです。

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