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2011年7月27日水曜日

大人たちの間で超難解な数学が密かなブームに―【私の論評】このブームが行き着く先は?

大人たちの間で超難解な数学が密かなブームに

最近の数学ブームをつくりだした書籍
子どもの理数離れとは裏腹に、今、大人たちの間で数学がブームになっている。

以前は文系講座が主流だったカルチャーセンターでも、最近「数学I」「微分積分」などの数学講座が人気。

「理系講座には人が集まらないのではと心配しましたが、実際は大好評でした」(工学院大学・朝日カレッジ講座企画担当 新海太郎氏)

受講者層は二十〜八十代と幅広い。

「昔ちゃんと学んでなかったから、など学び直し目的の方が多い印象です」(同前)

学び直しを後押しする書籍も多数出版されている。昨年七月に発行された数学解説書『もう一度高校数学』(日本実業出版社)は「難問は避け、基礎を理解しやすい構成にしたところ、現在までに五万部を記録。弊社の他の数学書の倍以上の売れ行きです」(同社第一編集部 生田敏郎氏)。

〇七〜〇九年にかけて、数学をテーマにした小説『数学ガール』(ソフトバンククリエイティブ)も出版された。高校生が、高校数学やフェルマーの最終定理などの難問に挑戦していく物語で、小説自体はライトノベル風だが、数学的にはかなり難易度が高い。

http://bunshun.jp/shukanbunshun/thisweek_life/100729_2.html

【私の論評】このブームが行き着く先は?


映画『博士の愛した数式』のヒットを受けて、書店には数学に関する書籍が多く並べられるようになりました。入門書もあれば、数学の難問と呼ばれる問題について書かれた本もあります。映画の中で、博士がこよやく愛した“オイラーの公式”に関するものも数多く出まわっています。

それ以外にも、“フェルマーの最終定理”、地図を塗るときに必要な“四色問題”、まだ解き明かされていない“ポアンカレ予想”、素数に関する“リーマン予想”などなどです。

映画『博士の愛した数式』に関しては、ご存じの方も多いと思います。これは、2006年1月21日公開。第18回東京国際映画祭特別招待作品、芸術文化振興基金助成事業作品です。

「私」の視点で描かれた原作に対し、映画では中学校の数学教師になった29歳のルート(原作に準ずれば教員生活7年目)が、あるクラスの最初の授業で博士との思い出を語るというものになっています。また、原作では深く描かれなかった博士と未亡人の関係についても触れていること(二人が不義の関係にあった事を窺わせる叙述)などの違いはありますが、原作をほぼ忠実に映画化しています。

あらすじを簡単に紹介しておくと、「家政婦紹介組合から『私』が派遣された先は、80分しか記憶が持たない元数学者「博士」の家だった。こよなく数学を愛し、他に全く興味を示さない博士に、「私」は少なからず困惑する。ある日、「私」に10歳の息子がいることを知った博士は、幼い子供が独りぼっちで母親の帰りを待っていることに居たたまれなくなり、次の日からは息子を連れてくるようにと言う。次の日連れてきた「私」の息子の頭を撫でながら、博士は彼を「ルート」と名付け、その日から3人の日々は温かさに満ちたものに変わってゆく・・・」というものです。

これ以上、紹介すると、これから、書籍を読んだり、映画をみたりする人には、最初から手品の種明かしをするようなものなので、やめておきます。

それにしても、現在どうして、このようなブームが起こったのか、本日は、その話を掲載しようと思います。

この数学ブームについて、いくつかみてみましたが、ITプロに「数学ができた人の復権」という記事の中に、日経の吉次弘志経済金融部次長の意見として以下のようなことが掲載されていました。
景気もいまひとつぱっとせず、政治も混迷し、グローバル化の進展で今まで頼りになった会社や地域社会などもガタガタになった。そんな不安が絶対確実なものの代名詞、数学への憧憬につながり、静かなブームを生んでいるのかもしれない。
一方この記事を書いた、記者は、また別の見解を述べていました。
数学書が売れている理由を自分なりに考えてみたが、記者になって脱落したとはいえ、もともと数学の世界にいただけに、客観視することが難しい。「数学書が本来売れるべき数量に達しただけ。ようやく普通の状態になったわけで、ブームなんかではない」と思ってしまう。 
「どうにも好きになれない」「嫌い」と思う方々には失礼だが、要するに数学の成績が悪かったということだろう。人それぞれであり、数学が苦手だったことを恥じる必要はない。しかし、数学ができて理工系に進んだ人、数学が好きな人に対して、からかうような態度をとることは慎んでいただきたい。念のため補足すると「数学ができない奴はダメだ」などと言うつもりはない。 
書いているうちにやや興奮し、話がそれた。要するに、数学は面白いものの一つであり、その面白さを解説した本が一定の冊数売れるのは当たり前であると言いたい。
この二つの意見、もっともだと思います。両方共、間違いではないと思います。本日は、NHKの「クローズアップ現代」でも、この、「数学ブーム」について、報道していました。この報道の中では、数学が苦手で挫折経験を持つ方が、“オイラーの公式”に挑戦して、この公式を証明したことが報道されていました。この番組の中ではほとんど報道されていませんでしたが、この方などは先の、日経の吉次弘志経済金融部次長の分析のような動機で始めたように思います。

一方、上記の記者のように数学の得意だった人については、上記のような考えを持つ人が多いのだと思います。このような二つの傾向があって、最近また、数学が見直されているのだと思います。そうして、これは、後のほうの記者の意見のように、ブームでは、終わらない可能性もあると思います。

このブームと似た様なことで、「もしドラ」という書籍が売れていることをこのブログに掲載したことがあります。その記事の中で、私は、「もしドラ」が売れる要因を以下のように分析しました。詳細は、当該記事を読んでいただくものとして、以下に分析の一部をコピペしておきます。
・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうして、今までのように節約一辺倒に走るだけではなく、政府による社会的救済や、企業レベルの救済など当てにしていては、どうしようもないということに気づきはじめて、何とか自分でも何かやりたいとか、何かに取り組み少しでも、自分の身の回りから良くしていきたい、変えていきたいという気持ちに変わってきているのだと思います。ただし、多くの人が自分にはできるのかどうか疑心暗鬼なのだと思います。 
そんなところに、「一見非力に見える女子高生でも、闇雲に頑張るだけではなく、ドラッカーのマネジメント理論に従い正しい努力をすることによって、とてつもなく大きな成果をあげることができる」ことをテーマとした「もしドラ」が出てきたわけです。  
「もしドラ」はまさしく、そのような空気の世の中に、ぴたりと当てはまったのだと思います。ドラッカーのもともとの書籍だと、イメージ的に、経営者ということで、一般の人からすれば並外れた能力などをイメージさせて、とっつきにくく自分の身近な存在として考えられなかったものが、「もしドラ」の主人公は女子高生であり、しかもAKB48のメンバーということで、多くの人に親しみやすかったに違いありません。
この見方、扱っているものは、違うのですが、これは、先の、日経の吉次弘志経済金融部次長の意見と似通った所があると思います。

なぜそんなことになるかといえば、やはり、失われた20年というネガティブな期間があまりに長かったことと、それに、最近の政局の混迷などもかなり影響していると思います。これをみていると、誰もがどこかがおかしい、どこかが間違っていると感じるはずです。

ドラッカーは、問題についていかのようなことを著書に書いています。
あらゆる問題が四つに分類できる。第一が、一般的な問題である。第二が、自分にとってははじめてという一般的な問題である。第三が、真に例外的な問題である。第四が、例外的に見えながら一般的な問題のはじめてのケースである。 
一般的な問題は一般的な解決を必要とする。それらの問題は、原則と方針によって解決しなければならない。状況に応じて原則を適用することで処理する。 
もちろん、例外的な問題は個別に処理しなければならない。しかし、真に例外的な問題というものは稀である。とくに組織が直面する種類の問題は、ほとんどすべてどこかの誰かが解決したことのある問題である。したがって、ほとんどの問題は原則と方針を適用することによって解決できる。最も多く見られる誤りは一般的な問題を例外の連続とすることである。
私は、昨日のブログでも、現在の増税問題に関して掲載して、最後にこのように結びました。
最も、まずいのは、原理原則に則って解決できる問題を、財務省とか新聞社などが、喧伝するように、日本だけの特殊事情とみて、場当たり的に解決することだと思います。多くの人に、あさましい人々の意見に惑わされず、自らの見識を持っていただきたいものです。それに、あさましい学者の方々には、今からでも遅くありません、真実を語ってほしいものです。
確かに政治でも、会社の仕事でも、本当に例外の問題というものは存在しているとは思います。しかし、それは、そうそう頻繁にあるものではありません。世界中の事例をみたり、過去の事例をみたりすれば、いくらでも似たような問題の解放のしかたはあるでしょうし、それらは、原則と、方針を適用することでほとんどが実務的に解決することができるはずです。

そのことに、多くの人が気がつきつつあり、その気づきの結果として、「もとドラ」や「数学ブーム」などがあるのではないかと思います。

ところで、私は、以前、「もしドラ」と「コクリコ坂から」が、このブロクで、非常に対比的あることを指摘しました。手短に掲載すると、「もしドラ」は、一見非力に見える女子高生が、ドラッカーのマネジメントを駆使することで、野球チームをマネジメントすることで、甲子園にまで連れて行くというストーリーです。一方「コクリコ坂から」は、「もしドラ」と同じように女子高生を主人公とはしていますが、このストーリーの時代背景は、高度成長期の60年代の日本であり、作者らは、「時代の応援歌」という位置づけを公表していますが、そこには、今の時代に通用するような理論なり、物の考え方があるわけででも、何の具体性もなく、単なる応援歌というものです。

これらの対比から、私は、以下のことを見れば、これからの時流を見抜けると考えました。その部分を以下にコピペしておきます。
『もしドラ』の映画のほうが、圧倒的に興行成績が良くて、この種の映画では考えられないくらいの興行成績をあげて、「コクリコ坂」が良くなければ、上の推論はかなりあたっているということです。世相は変わっていくということです。とにかく、世の中を変えていこうという機運が顕著になってくるということです。 
その逆で「コクリコ坂」が圧倒的に興行成績が良くて、過去のジブリ映画のヒット作と比較しても遜色がないとか、それを上回る興行成績をあげて、『もしドラ』が良くなければ、上の推論は外れたということです。そうです。まだまだ、日本の世相は、上の推論のような状況にはなっていないということです。多くの人、特に中高年以上の層は、過去のノスタルジアに浸り、それ以下の人々はまだまだ、節約に走るだけで、新たな動きは出てこないということです。
さて、「もしドラ」は、映画では、前評判は芳しくはなかったものの、興行収入は初動で1億8000万と決して悪くはないものでした。ただし、映画自体の評判はあまり良くはないです。「コクリコ坂から」はまだ、興行をしはじめたばかりです。

「コクリコ坂から」は、定評あるジブリ映画ですから、それなりの成績を収めることでしょう。こんなこともあって、両者から時流を極めることは、かなり困難なことになると思います。

しかし、そんなところに、数学ブームが起こっており、この趨勢を見極めることも時流を見る一助になるものと思います。

このブーム再度、分析すると、やはり、世の中今世紀に入ってから、ドラッカーの言ったように、知識が富の源泉とされる知識社会に入ったのだと思います。こうした社会では、やはり、問題(トラブルではなく、クエスチョンという意味で)を正しくとらえ、解決する力が問われているのだと思います。

多くの人がそのことに気づきはじめ、「もしドラ」はマネジメントの原理原則を、「数学ブーム」は問題を解く際の原理原則をという具合に、どちらも原理原則を適用することにより、一般的問題をすばやく解決するためということで、多くの人の支持を得るようになったのだと思います。

数学ブームに関しては、今のところは、数学の問題ということにばかり重点がおかれているようですが、数学を含めて、人々のの関心は、ものの考え方の基本に進んでいくのではないかと思います。

知識社会にはいった現在、ものの考え方の基本をおさえていれば、これほど力強いことはないと思います。昨日も、経済の基本を考える上で原理原則となる経済をマクロ的にみる見方について掲載しました。これがないので、いまの政治家は、本当に右往左往して、完璧に原理原則から逸脱した行動をしています。

しかし、原理原則を知っていれば、具体的なやり方には、いろいろなやり方がありますが、方向性としは、はっきり定めることができます。そうすることによって、発言や、行動にも、自信と確信がうまれてきます。やはり、原理原則を学ぶということは、時代をこえて、空間をこえて重要なことです。これに対して、原理原則を知らない人は、いつも揺らいで自信がありません。

ドラッカーは、問題の設定に関しての重要性を指摘しており、問題を設定するには、まずは、自ら意見を持ち、その意見を検証することの重要性や、さらに、事実を分類することなどが重要であることも説いていますが、本日は、これは、本題ではないので、また別の機会に改めて掲載します。

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