本日は、米国債のデフォルト騒ぎに関して、現代ビジネスに高橋 洋一氏のもので興味深い記事を発見したので、その要約を掲載します。
最近、日本の新聞にも「米国国債がデフォルトか」という記事がよくでてくる。8月2日までにオバマ米大統領と議会指導部が債務上限見直しを合意し、上限の引き上げができないと、米国国債はデフォルトになるという話だ。
実際は、どうなのか。まず米国の国債制度を日本と対比してみよう。米国では毎年度の国債発行額は、第二自由公債法に基づく債務残高についての制限を受ける。一方、日本の場合、毎年度建設公債発行額は予算総則で、特例公債は特例法で制限されている。というわけで、米国では第二自由公債法の債務残高上限さえ下回っていれば、毎年度の発行には支障ない。
それにしても、最近、米国債のデフォルトの議論がしばしば新聞にでてくる。たしかに問題になっていることは事実だが、ちょっと騒ぎすぎではないか。これほど騒ぐ理由は何かと穿ってみてしまう。
債務の上限引き上げは年中行事
現在の法定上限は14兆円2940億ドル(1150兆円)である。第二自由公債法は1917年制定だが、それから現在まで74回の上限の引き上げがあった。今年5月には債務残高が法定上限を超え、オバマ政権は議会に法定上限の引き上げを要請し、8月2日までオバマ政権に猶予が与えられている。要するに、債務の上限引き上げは年中行事なのである。
ただし、米国では昨年の中間選挙で共和党が過半数を奪回しており、上院は民主党が過半数を上回り、日本と同様のねじれがおきている。そこ日本と同じく野党が政府・与党を攻撃するために債務残高規制を利用しているのだ。普通に行けば、与野党の政治妥協の上に債務残高が引き上げられるだろう。
新聞は、日本についても財政危機という話をたびたび報じる。「だから増税が必要だ」とあおる新聞社も多い。しかし、そもそも日本が財政危機という話は怪しいのだ。しばしば債務残高がGDPの2倍あるとかいうが、バランスシートの資産もGDPの1.3倍もある。債務も世界一なら資産も世界一なのだ。何よりソブリンCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は1%にも満たずギリシャの20%に比べると雲泥の差だ。だから日本が破綻という話は国際金融市場では出ていない。
自民も民主も大新聞も増税に大賛成
ひょっとしたら驚異的な粘りを発揮する菅政権の手になるかもしれない3次補正。少なくとも10兆円超なので、財源議論が避けられない。野党自民党は、つなぎ復興債を発行するが、その償還のために来年から3年間で所得・法人税増税という方針だ。民主党も償還に5年程度と似たり寄ったりで、増税に同調する見通しだ。
マスコミも日経、読売、朝日等主要紙は復興増税に賛成だ。実はそのために、学者に働きかけるなどの布石も打っている。自らの紙面を使って、増税派の学者にどんどんと意見を書かせている。学者側もそれに応じて、復興増税への賛同者を集めている( http://www.tito.e.u-tokyo.ac.jp/j_fukkou2011_list.htm )。この裏側には作業を手伝っている大手新聞がいるという噂だ。
しかし、かねてより指摘してきたが、震災のような一時的ショックへの財政対応した場合の財源について増税というセオリーはない。直感的にいえば、100年に一度の震災なら、100年国債を発行して、その負担は100年で分割するのがいい。仮に10兆円が3次補正とすれば、100年間で分割するので、1年で1000億円だ。ところが、3年だと1年で3.3兆円になる。
それにもかかわらず、大手新聞が復興増税に前のめりな理由の一つに、大手新聞の幹部の属人的なものがある。幹部の中には若いときに旧大蔵省記者クラブキャップを務め、旧大蔵官僚から情報リークを受けていた人もいるからだ。
大手新聞は、3次補正だけでなく、消費税増税にも前のめりだ。菅政権が、6月30日、消費税について「2010年代半ばまでに10%に」と決めると、その翌日の7月1日は時期を明確にせよなどと財務省応援団みたいな後押し記事ばかりで、消費税上げに賛成だった。
大物財務省OBが天下りした理由
その一方で、新聞協会は7月12日、経済産業省が募集していた来年度の税制改正要望に対して、要望書を提出し、消費税については軽減税率の適用を求めている。新聞業界は、消費税軽減のために海外調査を行う等なりふりかまわぬスタンスだ。つまり消費税率アップが、新聞業界と財務省の共通の利益なのだ。
新聞は消費税アップによっても新聞代の引き上げを避けられる。一方財務省にも利権が発生する。というのは、消費税率がアップすると、必ず軽減税率やゼロ税率の話が出てくる。新聞業界もそのひとつだ。社会的使命を主張しながら、消費税の軽減税率を財務省に働きかけている。これはもちろん新聞では報道されないが事実だ。どの業界に軽減税率を適用するかどうかは財務省の胸先三寸である。
財務省の事務次官であった丹呉泰健氏が読売新聞に天下りしたことは昨年11月22日の本コラムで述べている。消費税率引き上 げと新聞業界の軽減税率・ゼロ税率の願望とは無縁とはいえない。
新聞業界と財務省は既に蜜月関係にあると見ていいだろう。だから、新聞が行う世論調査で、増税が必要かというものはあてにならないことを留意する必要がある。そんなものは質問の仕方によってかなり変わるからだ。【私の論評】消費税率アップが、新聞業界と財務省の共通の利益だが、アメリカの利益にはならない!!
アメリカのデフォルトという話は、確かに以前にも何度かあり、別に珍しくも何でもない話です。その真相は、上記の高橋氏が掲載している通りです。高橋氏は、上の記事を書いていて、アメリカのデフォルト騒ぎに関して、主に、日本国内事情から書いています。私は、これはもっともなことであり、多い賛同します。
しかし、私は、このデフォルト騒ぎに関して、アメリカ側からの事情というより、私の憶測を以前このブログに掲載しました。そのURLを以下に掲載しておきます。
【NewsBrief】米大統領が財政協議に関与、デフォルト回避に向け与野党幹部と会談へ―【私の論評】アメリカのデフォルト演出は何を意味するのか?日本に強い関わりがあるその意味!!
詳細は、上の記事をみていただくものとして、簡単にその内容を記載しておきます。この記事では、私は、アメリカのデフォルトは特定の意図をもった演出であるとしました。私が、類推するに、アメリカ側がデフォルト騒ぎを演出するのは、ドルを一時でも、相対的に安くし、アメリカの貿易の振興を図り、一時的に外需主導で、アメリカの景気を良くしようという企てがあるのだと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・
来年は、アメリカ大統領選挙も控えてるので、オバマ大統領は、今年は是が非でも、景気を良くしなければなりません。特に、景気を良くして、雇用状況を良くしなければなりません。そうでなければ、来年の選挙で勝つことはできません。だから、オバマ大統領は、是が非でも今年は、景気を回復させよう、雇用を改善しようと意気込んでいるわけです。
しかしながら、最近のアメリカの雇用統計などみると、思ったほどには、雇用情勢が回復していません。雇用が回復しなければ、本格的な景気の回復は見込むことができません。しかし、アメリカは、過去、金融危機前まで、景気が良い時期が続いたので、先のように復元力の原則からいって、ここ数年、国内の内需拡大による景気回復は見込めないのだと思います。
しかしながら、オバマ大統領是が非でも、ここ、1~2年はアメリカの景気を良くしなければなりません。そうして、深謀遠慮をめぐらした結果、日本に目が向いたのだと思います。
そうです。いままで、低迷していた、日本の景気が上向いてくるわけですから、アメリカ国内景気がどうしても上向かないというのなら、アメリカの輸出が増えて、日本などにアメリカ製品を沢山買ってもらうようになれば、良いということです。そうして、外需主導でアメリカの景気が上向けば良いということです。ただし、このシナリオは、日本の景気回復がしなければ、絶対に成就しません。オバマが勝つためには、何がなんでも日本の景気が良くなる事が前提ですから、今後、日本政府が増税するなどと世迷言を繰り返し、被災地の復興も、モタモタしていれば、デフォルト演出だけでは事がすまなくなり、圧力をかけてくる可能性もあると思います。さて、この推論はあたっているかどうか、それとも、単なる私の憶測で終わってしまうのかどうか・・・・。それに関しては、今後の推移をみていかなければわからないですが、今のところ、この憶測は、アメリカの雇用統計が回復しないことにより、アメリカの景気は内需主導ではなかなか回復しそうにもないこと、さらには、円高基調ということで、少なくとも今のところ外れてはいないと思います。
実際に、本日は以下のようなニュースも飛び込んできています。
26日午前の東京外国為替市場の円相場は、米債務上限問題に進展がないことが嫌気され、一時1ドル=77円95銭近辺を付けた。3月17日以来、約4カ月ぶりの円高ドル安水準。
午前10時現在は前日比02銭円高ドル安の1ドル=78円20~21銭。ユーロは24銭円安ユーロ高の1ユーロ=112円56~58銭。
日本時間26日午前のオバマ米大統領の演説を受け、債務上限問題の進展がないとの見方が広がり円を買い、ドルを売る動きが加速した。市場では「今後の議会の協議次第では、円高が一段と進む可能性がある」(外為ブローカー)との声もある。また、22日時点では、以下のような動画も配信されています。
今のところ、円高傾向は、ますます強まる気配です。確かに、これには、震災などの復興のため、円の需要が高まることが、目にみえているにも限らず、日銀が増刷回避の態度を崩していないという日本の内部事情によるところあると思いますが、今のところ、アメリカ、特にオバマに有利に運んでいるようにみえます。
さて、ここで、国内事情にもう一度もどってみると、上記の記事のように、高橋洋一氏震災などの復興のための増税などといことは、マクロ経済学的にもそのようなセオリーはないですし、現実にも、過去のどの国でも、震災復興のために増税など行われたことはありません。
さらに、上記の高橋氏の記事を補足しておきます。高橋氏は、日本が財政危機という話は怪しいとして、「しばしば債務残高がGDPの2倍あるとかいうが、バランスシートの資産もGDPの1.3倍もある。債務も世界一なら資産も世界一なのだ。何よりソブリンCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は1%にも満たずギリシャの20%に比べると雲泥の差だ。だから日本が破綻という話は国際金融市場では出ていない」としています。確かに、この通りなのですが、この文章には、主語がないので、理解しにくいです。
これに主語を入れると、以下のような文章になります。
しばしば日本国政府の債務残高がGDPの2倍あるとかいうが、日本国政府のバランスシートの資産もGDPの1.3倍もある。債務も世界一なら資産も世界一なのだ。何よりソブリンCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は1%にも満たずギリシャの20%に比べると雲泥の差だ。だから日本国政府が財政破綻という話は国際金融市場では出ていない。上記では、日本国政府という主語を入れました。この主語を入れたことについて、多くの人は、「国=政府」だから、何もわざわざ、ことわるように、主語を入れる必要がないではないかと思われるかも知れません。しかし、国と政府はイーブンではありません。これは、あくまで、政府が借金をしているということであり、日本国そのものが借金をしているわけではありません。
それどころか、日本国単位でみると、日本は世界で一番金融資産を海外に貸し付けている国です。しかも、過去20年かんにわたり一位です。その額は、直近で、266兆円です。では、日本国政府の借金はどこからしているのかといえば、日本国民からです。
これが、ギリシャ政府などの借金の場合は、ギリシャ政府自体が、外国から借金をしているということです。しかも、国民も外貨建ての借金をしているという有様です。日本とは、根本的に異なるのです。これに関しては、このブログでも過去に掲載したことがあります。詳しくは、下の【関連記事】をご覧になってください。
このようなことから、日本が財政破綻をするなどということはあり得ません。日本が破綻するときは、世界経済の滅亡です。おそらく、先進国は、100年前の水準、新興国は、現在の発展途上国なみ、発展途上国は、石器時代の水準に戻ることになります。何か、日本の新聞は、日本が破綻しても、日本だけが、ひっそりと表舞台から姿を消すような報道ぶりですが、そんなことはありません。ギリシャなどの国の財政破綻は、日本にとっては、対岸の火事であるどころか、日本が財政破綻するようなことを主張する日本の新聞は全く異常ということになります。
それから、高橋氏は、世界の金融市場では、日本の財政破綻を「だから日本が破綻という話は国際金融市場では出ていない」としていますが、確かに現時点では、そのようなことはでていません。しか、ギリシャのリスクが表にでたときに、ゴールドマン・サックスなどは、日本のソブリンリスクを喧伝しました。こやつらは、結局、どんな些細なことでも、金儲けになるなら言ってみるという習性があります。それは、アメリカの投資銀行だけではなく日本の証券会社でも似たようなことがあります。
さすがに、国際的には、そのようなことを言っても、最早誰も信じないので、いまでは鳴りを潜めましたが、日本国内だと、直近でもそれに近いことをいう、証券会社のアナリストもいます。このようなことをいう者も、高橋氏が新聞社に対して言っているように、"あさましい"という形容詞がピッタリだと思います。
私は、この点では、このブログでは、高橋氏よりも手厳しい言い方で、このような物言いをする馬鹿者を「金融馬鹿」とか、「賭博師」と呼んでいます。 証券会社のアナリストとか、経済アナリストという中には金儲けのためには、何でも言って見る"あさましい"奴らがいくらでもいます。最も、それが、彼らの会社での仕事なので、彼らを非難しても仕方ないのかもしれませんが、皆さんは、用心してください。
高橋氏は、日本では、財務省が増税を狙っており、新聞は、それを報道すれば、それと引換に、新聞社は増税を免れるという構図になっているといいます。これは、本当にありそうな話です。これに関しては、テレビ報道も似た様なものです。テレビでも、学者がでてきて、マクロ経済的には、あり得ない増税論議をさも、まともな政策のように語っているものをいくつも見たことがあります。
本当に、セオリーからは、逸脱した、これらの学者達の話は、新聞社と同じで、まさに、高橋氏が言っている"あさましい"という形容詞がぴったりです。
しかし、もう一度、アメリカの話を思い出してください。もし、私の憶測があたっていたとしたら、日本が、マクロ経済学の基本セオリーを無視して、増税に走ったとしたら、オバマは黙っていないでしょう。内政干渉ギリギリの圧をかけてくることは必定だと思います。
それにしても、もう日本は、政府も、新聞もテレビも、もう、ズブズブに財務省にやられています。政府も、国民も、財務省の策略にはのせられないようにすべきです。それにしても、もし、私の憶測があたって、オバマが圧力をかけてきたら、本当に情けない事と思います。この憶測はできれば、外れてほしいと願っています。
政府は、東日本大震災の復旧・復興のため、10兆円規模の臨時の増税を行うほか、政府が保有する東京メトロ株や国会議員宿舎跡地の売却を検討しています。
政府は、復旧・復興には10年間で最低23兆円かかるとしたうえで、財源確保のため10兆円程度の復興債を発行する方針です。復興債の返済は5年を基本に、最長で10年間、所得税や法人税などの臨時の増税で賄います。財源の一部として、政府が保有するおよそ1700億円分の東京メトロ株や国会議員宿舎跡地の売却も検討しています。政府は、こうした財源案を盛り込んだ基本方針を29日にも決定したい考えですが、臨時の増税に対しては民主党内から強い反発の声が上がっています。
民主党の中にも、復興に増税て財源を確保するなどという、マクロ経済と世界の常識からかけ離れた暴挙に反対の声があがるのは当然のことと思います。これで、増税すれば、失われた20年が、30年、50年になるかもしれません。
ただし、ここで、誤解をさけるためにいっておきますが、私は、何が何でも、増税するなといっているわけではありません。増税する減税するというのは、あくまで、経済の舵取りをする上でバランスをとらなければならないことをいいたいだけです。
インフレ傾向で、景気が加熱気味のときには、緊縮財政、増税、金融引き締めを、デフレで景気が停滞しているときは、財政出動、減税、金融緩和を、大規模な自然災害などがあったときは、その復興のための財源は国債などによるべきで、増税などすべきではないという、マクロ経済学上の常識、世界一般の常識を、やり方はいろいろあるにしても、実施しましょうと言っているだけのことであって、当たり前の真ん中を主張しているだけです。どの手法をどのようにどの期間でやるかという問題はあっても、この方向性だけは、誰も否定できないと思います。この見地からいって、ここしばらくは、増税などすべきではないと言っているだけです。
これを否定する人は、事実にもとづいて、検証をする必要があると思います。その検証にもとづき、自説を公表すべきです。それが、まともな学者、まともな報道機関の姿であるはずです。しかし、今のところ、これを否定する人々のなかから、納得できる検証内容など誰からも公表されていません。検証もできないものに基づき、経済政策を決定するということは、まさに、愚者の行いといわざるをえません。
いずれにせよ、上記の高橋氏が主張することも、私の言っていることも、それこそ、さして難しくもない中高でも、断片的ではありますが、教えているマクロ経済の原則を知り、財務省などが出している資料などみて、裏付けをとればすぐに判ることです。最も、まずいのは、原理原則に則って解決できる問題を、財務省とか新聞社などが、喧伝するように、日本だけの特殊事情とみて、場当たり的に解決することだと思います。多くの人に、あさましい人々の意見に惑わされず、自らの見識を持っていただきたいものです。それに、あさましい学者の方々には、今からでも遅くありません、真実を語ってほしいものです。
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