2011年7月12日火曜日

円急騰、一時79円18銭 協調介入後の高値更新―【私の論評】これは、ニュースにする値もないほどわかりきった話!!日銀は、産業空洞化の原因を他に転嫁しようとしている?

円急騰、一時79円18銭 協調介入後の高値更新

【ロンドン共同】12日のロンドン外国為替市場で円相場は急騰、一時1ドル=79円18銭をつけ、東日本大震災後の急激な円高を抑えるため円売り協調介入に踏み切った3月18日以来の高値を記録した。邦銀筋によると、ギリシャをはじめとした欧州財政問題の深刻化懸念を背景に、円が対ユーロで値を上げ、対ドルでも上昇した。

米国の連邦債務の上限問題に進展が見られないことを手掛かり材料にした円買いドル売りも入った。

11日のロンドン市場の円相場は、英国時間の午後4時現在、前週末比30銭円高ドル安の1ドル=80円30~40銭だった。

2011/07/12 18:59   【共同通信】

【私の論評】これは、ニュースにする値もないほどわかりきった話!!日銀は、産業空洞化の原因を他に転嫁しようとしている?
円高ということで、ニュースになっていますが、しかし、これは本来はニュースになる価値もないほどわかりきった事実です。
まずは、震災がおきてから、すこしした、5月末頃の背景を紐解いていみましょう。以下は、5月29日、現代ビジネスの「ドクターZは知っている」というコラムからの抜粋です。 
今回の大震災後も、直後は円が高騰し、国際的な協調介入によって円安方向に動いたものの、再び79円台に突入するなど円高傾向に戻っている。多くの人は不思議に思うかも知れない。しかし、1~2ヵ月の短期的な為替の動きはランダム・ウォークなので、正直なところ説明不可能だ。金融関係者はテレビや新聞でもっともらしく説明しているが、「もっともらしい」だけの代物のだ。
ただし、まったくわからないのかと言えば、方向性については6割程度の確率で説明することはできる。マネタリーアプローチでは、二国間の通貨量の比率が為替に影響する。例えばドルが相対的に円より少なくなればドルの希少性が高まり、ドル高(円安)になる。現時点で言えば、米国のQE2(量的金融緩和第2弾)は6月末で終わったから、ドルは相対的に減少し、ドル高傾向になるはずだ。 
にもかかわらず、円高になっているのはなぜか。また、米国はQE2終了後もあまり通貨量を絞らない見通しだとしている。となれば、今後も円高圧力が続くと見るのが自然だ。 
加えて、日本政府は復興のために国債を出して、直後に増税すると見られている。そうなると、金利が高くなる可能性があり、それは円高に作用する。これをマンデル=フレミング効果という。日本銀行が金融緩和すれば円高を阻止できまるが、今のところその気配はない。実は阪神淡路大震災の時も同じ状況で円高になった。今回もおそらくそれが繰り返されることなる。 
日銀の円の増発拒否の姿勢は明確なので、今後は円高に動く可能性がかなり高い。
本来、このような時期には、マクロ経済的見地からいって復興で円の需要がかなり高まること、さらには、デフレ傾向であることから、日銀が増刷するのが普通です。しかし、このブログでも書いて来たように、政府も、日銀も、本来マクロ経済学でこうすべきとされている政策と全く反対の政策をしていますし、これからもそうです。今でも、十分円高傾向なのに、増刷はしないし増税するなどという政策をすれば、さらに円高傾向になるということです。

それから、他国の状況といえば、米国では財政赤字削減に向けた与野党協議は難航し、議会手続きを考慮すると実質的なタイムリミットまで約10日しかありません。欧州連合(EU)は11日、ユーロ圏17か国による財務相会合を開きましたが、協議は難航しています。EUの財政不安は、ここしばらく続くものと考えられます。

オバマ大統領は10日夜、この日の決着を期して休日返上で、与党・民主党と野党・共和党の議会指導部と協議しました。米メディアによると、オバマ大統領は10年間で4兆ドル規模(約320兆円)の財政赤字削減を求めましたが、野党共和党との隔たりは大きいです。

11日午前に記者会見した大統領は、デフォルト(債務不履行)で「米国の信用を脅かすことはできない。(抜本的な財政再建を)今やらないで、いつやるのだ」と述べ、両党に決断を求めました。その上で「解決すべきことがたくさんある」として協議を急ぐ考えを示しました。私は、このデフォルト騒ぎに関しては、以前のブログで、アメリカの演出ではないかという説を掲載しましたが、これに関しては、今回の話の本筋ではないので、ここでは詳細を掲載しません。

いずれにせよ、EUの財政不安と、アメリカのこうしたデフォルト不安から、ユーロ安、ドル安傾向になることは明らかで、さらに、円高は助長されることになるでしょう。

さらに、先に日銀は、円の増発拒否の姿勢を変えないことを掲載しましたが、これと、上記のことがらがあいまって、今までも、これからも、円高傾向が続くことは必定です。このようなことから、地震直後に各国の協調介入があったときに、野田財務大臣が「投機筋が云々」などと語ったことは、はなはだしい認識不足であり、笑止千万と言わざるを得ません。ここでも、民主党閣僚のマクロ経済音痴ぶりを露呈したと思います。

マクロ経済音痴の野田財務大臣
日銀の白川総裁は、本日の金融政策決定会合後の記者会見で、生産活動の急速な復旧で日本経済は回復しつつあるとの認識を示す一方で、電力不足が長期化した場合には「経済活動が制約される可能性が高い」として、電力不足が先行き最大のリスク要因であるとの認識を示しました。

白川総裁は個人や企業の節電努力で今夏の電力不足に対する懸念がほぼ解消に向かいつつあるとしましたが、全原発が稼働停止するような事態になれば電力の安定供給の確保は困難になると強調。企業などにとってコスト上昇は避けられず、製造業中心に国内の空洞化が進み「日本の潜在成長力の低下要因となる」と指摘しました。

しかしながら、日銀は、先に述べたように、円の増発拒否の姿勢を変えないとの姿勢を堅持していることから、円高傾向になることは、必定ですから、そうなれば、輸出関連企業は、国外に出て行くことが、十分に予想されます。そうなれば、国内の空洞化は避けられないことになります。

こうしたことから、私は、日銀の白川総裁の記者会見は、自らが産業空洞化を創出している状況を他に転嫁するために予防線をはったものではないかみています。皆さんは、どう思いますか?

増刷拒否の姿勢を崩さない日銀白川総裁
私自身は、円高そのものについては、決してそれが悪いこととは思ってはいません。良いこともたくさんあります。しかし、この円高が、マクロ経済学で教える全く当たり前の真ん中であることをしていれば、おこらなかったかもしれないと考えると、やはり、健全な経済にとっては、良くないことでもあると思います。円高も、極端な円高は害があります。やはり、日本だけが、まともな財政、金融対策をしないというのは間違いだと思います。

そんなことを言っても、日銀の行動は変わらないでしょうから、今後円高傾向は続くと見て今後、対策を練っていく必要があります。政府や日銀に期待できない以上自分の身は、自分で守るしかありません。無論、円高メリットを享受できる方は、これから、多いに期待できることはいうまでもありません。

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4 件のコメント:

「ど」の字 さんのコメント...

(先のコメントの続きです)

 日本経済回復の処方箋は、国民の国家に対する信頼を回復し将来への不安を取り除くことによる消費の回復です。
 
 日本経済の主体である日本国民や中小企業は、経済学的に妥当な行動をする余裕などありません。
 彼らが消費を抑制しているのは、経済学的に得をすると思うからではなく、将来に対する備えのために止む無く倹約しているのです。

 経済学的思想において妥当と思える政策は、それだけでは日本国民(ひいては日本経済)を動かせません。
 まずは安心と希望を政策で打ち出さなければ、何をやろうとも日本の景気は回復しないでしょう。

 自分がインフレターゲット政策や通貨量緩和政策の有効性を疑うのは、それが単体では国民の消費マインドを刺激しないと考えるためです。

(すいません、まだ続きます)

「ど」の字 さんのコメント...

(続き)

 日本経済の根本問題は円高やデフレそのものではなく、それが最終消費財を生産する中小零細製造業に打撃を与えた結果引き起こす雇用と賃金水準の持続的な下落であり、供給能力の低下です。民主党政権の愚挙による電力不足もそれに拍車を掛けています。
※大企業はすでに資本財・中間財生産にシフトしており、円高でも何ら痛痒を感じることなく販売を伸ばせています。
(これはニクソンショック以後の日本大企業に一貫しており、今では日本の資本財無くして世界の最先端製造業は成立しないところまで至っています。そもそも、今の世界に全ての製造業を国内で賄える国は日本以外にはありません。日本は欧米が生産した経験も無い製造業を多く抱えています)

 日本の景気回復の処方箋は、主に最終消費財を生産する中小零細製造業を梃子入れし、資本財・中間財生産へとシフトすることによって円高に強い産業構造を構築する技術援助をするものになるでしょう(欧米の製造業衰退の失敗例を参考にして、ただ乗りを許さないよう支援期限を厳格に区切る必要があるでしょうが)。
 また、いつ首切られるか分からない不安に怯える非正規雇用者の地位安定化政策も必要になります。将来的には非正規雇用者というカデコリーそのものの発展解消も見据えるべきでしょう。
 ばら撒きによる貨幣死蔵を避けつつも庶民に安心と希望を与えるために、健康保険制度や年金制度にさらなる国家資金を注ぎ込んだりも有効でしょう。


 日本の景気回復は、消費マインドの回復なくしてはありえません。
 国民に安心と安全を与えなければなりません。
 そのためには、日本民主党には一刻も早く政権の座から降りて解党してもらわねばなりません。

(終わり)

山田 豊 さんのコメント...

「ど」の字様のコメントの一番最初のものをうっかり、削除してしまいました。特に、iPhoneでコメントの公開をするときに、このような惨禍が起こりやすいです。公開と、削除が上下に密着して表示されているため、公開のつもりで親指で、公開を押したつもりで、削除を押すということが、前にもありました。今回も、ご多分にもれず、同じ過ちをおかしてしまいました(笑)。ただし、公開、削除を促す画面くは、元のコメントも掲載されていますので、本日はそこから、コピペして掲載します。

これが、上に掲載されている二つのコメントの最初のものです。


 
おはようございます。「ど」の字です。

 今日の未明、円ドルレートは78円台に突入しましたね。

 日銀が円高を容認しているのは、自分は「日本が国を破壊しないで為し得るどんな政策を採っても円高は回避不能である」(手段が無い)
「いくら円高になろうとも産業空洞化しない」(動機が無い)
という認識を持っているのではないかと疑っています。

 欧米がダボス会議で示した方向性を見ていると、彼らはこの世界的金融危機を「責任を取るべき者に責任を取らせる」のではなく「さらなる通貨供給を主に欧米以外の国にさせる(非常に卑怯なやり口です)」ことで危険を希釈してやり過ごそうとしています。
 その気持ちは理解できなくもありませんが、そんな小手先の誤魔化しでこの巨大な危機が回避できるわけが無いことも分かっているでしょうに……。

 欧米各国は現在の危機を回避するためならば、どんな事でもするようになっています。
 彼らの意図に正直に付き合うのは危険過ぎます。

 日銀の諦めたかのような円高容認は、欧米主導の世界経済(の歴史的バブル破裂)から早逃げをしようとしているのではないかという気がしてなりません。

 ただそれにしても、増税による更なる景気冷却は全く解せません。
 増税=増収で無いことは、消費税を増税した時の失敗で良く分かっていることと思うのですが。
 ……まさか日銀は、現在の世界的バブルが崩壊したら間髪入れずに日本経済が過熱する事態を想定している?
 バブル破裂で行き場を失った世界中の投資が集中すると?
 そんな馬鹿な!?

 どちらにしても自分には、欧米に除け者にされた日本が怒りの大博打を打っているように見えます。
 十分勝算があるようにも見えますが、日本一人勝ちがその後の世界情勢にどう影響するかを考えると、やはり危険な賭けと思います(欧米の身勝手振りを見ると選択の余地が無かったとも思いますが)。

 日本経済の世界における位置には、不可解な事が多すぎます。正直、これまでの経済学の常識は参考になりません。

山田 豊 さんのコメント...

「と」の字様 コメント有難うございます。私は、日本の政治家や官僚は、基本的なマクロ経済の見方をしないということにかなり問題があるいると思います。
特に、政治家は、ミクロとマクロの区別もつかず、両者をごちゃまぜにして、語っている人が多くて辟易します。
まるで、生態系を論ずるにおいて、それを構成している、植物や、動物のみを論じているようなものです。困ったものです。全体ではどうなっているのかが、まるで見えていないように思います。
経済学など所詮道具にすぎないのですが、それにしても、マクロ的見方ができない人が多いのには、辟易します。
マクロ経済を微塵も理解しない、民主党には、国政を司る資格はないと思います。もう、さっさと、解散でも何でもやって、選挙で大敗北していただきたいものです。

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