2016年9月13日火曜日

朝日新聞が戸惑う「改憲賛成」圧倒多数―【私の論評】どうして朝日新聞独自の調査では全く逆の結果がでるのか?

朝日新聞が戸惑う「改憲賛成」圧倒多数

Japan In-depth 9月10日(土)18時0分配信

改正を求める人たちの最も多くが憲法9条を問題にしている
という結果も朝日新聞の社論を否定することとなった。
朝日新聞が9月7日朝刊で報じた自社の世論調査で憲法改正の賛成が反対の2倍近く、つまり圧倒的に上回るという結果が出た。

しかも改正を求める人たちの最も多くが憲法9条を問題にしているという結果も朝日新聞の社論を否定することとなった。だが肝心のこの調査結果を報じる朝日新聞の記事の見出しはまったくそんな事実を隠す形となっていた。

朝日新聞の長年の読者としての私にとってもこの世論調査結果はショッキングだった。

朝日新聞が東京大学の特定の研究室と合同で定期的に実施する日本の国内政治に関する世論調査である。私の記憶では、かなりの年月、続いてきたこの調査でも、また朝日新聞が実施した他の世論調査でも、憲法改正に関して賛成が反対をこれほどの大差で上回るという実例は皆無なのだ。こんな結果だった。

≪憲法改正への賛否について聞いたところ、「賛成」「どちらかと言えば賛成」の賛成派が42%、「どちらとも言えない」の中立派が33%、「どちらかと言えば反対」「反対」の反対派が25%だった≫

要するに、憲法改正に賛成が42%、反対が25%と、改憲派が2倍近い大差で多かったのである。この数字は改憲絶対反対のキャンペーンを長年、必死で続けてきた朝日新聞にとっても衝撃的なはずだ。

しかも同じ世論調査で改憲賛成派の多くがまず第一に憲法9条の改正を求めるという結果が出ていたのだ。この点は朝日新聞の年来の主張とは正反対である。朝日新聞は憲法の改正をたとえ考えても、9条だけは絶対に変えるな、というスタンスできたのだ。改憲を求める安倍晋三首相でさえ、9条改正を迂回して進もうという姿勢をみせている。なのにこんな結果が出てしまったのだ。この点の朝日新聞の報道結果は以下のようだった。

≪改憲賛成派に改憲すべき項目を選んでもらったところ、最も多かったのは「自衛隊または国防軍の保持を明記」で57%、次いで「集団的自衛権の保持を明記」が49%≫

国防軍の保持の明記も、集団的自衛権の保持の明記も9条の範疇である。朝日新聞としてはなんとも不都合な世論調査結果だったのだ。

さてでは朝日新聞はこの結果をどう報じたのか。以下がその記事の見出しだった。

≪7月参院選の投票先 憲法重視層は民進 経済分野自民強み≫

上記のような見出しからはこの世論調査の対象者たちの圧倒的多数が憲法改正を求めていた、という最大のニュース要因は想像もできない。つまり朝日新聞はこの結果を矮小化し、隠蔽に近い見出しの表現を選んだのだ。よほど困ってしまったのだろう。

古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

古森義久氏

【私の論評】どうして朝日新聞独自の調査では全く逆の結果がでるのか?

さて、朝日新聞の元記事はどうなっているか、残念ながら私は朝日新聞を購読してないので、以下に朝日新聞デジタルのそれらの記事のリンクを掲載します。
「憲法」は民進、「経済」は自民 有権者が重視した政策
笹川翔平

2016年9月6日21時49分

ブログ冒頭の記事で、古森氏が掲載していた9月7日の朝日新聞の記事のタイトル「7月参院選の投票先 憲法重視層は民進 経済分野自民強み」とは若干異なりますが、おそらくWEB版の記事をそのままか、若干加筆して朝日新聞に掲載したのでしょう。この記事には、確かに世論調査の詳細は掲載されいません。

詳細が掲載されているのは、この記事の中でリンクを貼ってある以下の記事です。

特集:朝日・東大谷口研究室共同調査
この特集では、確かにアンケートの詳細が記されています。そうして、アンケート解説は以下の3つの柱で構成されています。
改憲、有権者の関心は9条 
消費増税、当選者の見解と差 
民進・共産、互いの好感度低調
WEB版で見ている限り、元記事からは、ブログ冒頭の記事で古森が指摘しているような、重大な結果が掲載されているとはとても思えません。この記事を読んだ人の大半は、アンケートの内容に重大な結果があるとはまず思わないでしょう。

第1の柱に付随している、チャートを以下に掲載します。



この結果から確かに、憲法改正に賛成が42%、反対が25%と、改憲派が2倍近い大差で多かったことがわかります。

そうして、同じ世論調査で改憲賛成派の多くがまず第一に憲法9条の改正を求めるという結果が出ていたこともはっきりしています。

これは、確かに朝日新聞の社論からは、かけ離れた結果です。しかし、朝日新聞としては、この結果を読者にはっきりとわかる形で掲載し、世論が変わったことの潮目であったことをはっきり認識すべきです。

去年のこの調査の結果はわかりませんが、古森氏上の記事で分かる通り、憲法改正派がこのように多かったのです。

古森氏の繰り返しになりますが、なんとも意外な結果です。2012年の総裁選で強く改憲を訴えた安倍総理でも、最近は国民的理解が深まっていないと明言し、9条改正を急がない姿勢を見せています。それもこれも、これまでの各種世論調査の結果がそれを求めているからでした。

ではここで、過去のアンケートを振り返ってみます。、この春に朝日新聞が憲法記念日を前に実施した世論調査ではどんな結果だっただろうか。
改憲不要55%、必要37% 朝日新聞世論調査
朝日新聞デジタル 2016年5月2日22時41分


 憲法記念日を前に朝日新聞社は3月中旬から4月下旬にかけ、憲法に関する全国世論調査(郵送)を実施し、有権者の意識を探った。それによると、憲法を「変える必要はない」が昨年の調査の48%から55%に増え、「変える必要がある」は昨年の43%から37%に減った。大災害などの際に政府の権限を強める「緊急事態条項」を憲法に加えることに「賛成」は33%で、「反対」の52%が上回った。

   憲法改正については、2014年の郵送調査から「必要はない」が「必要がある」を上回っており、その差は今回さらに開いた。
(以下略)
もう一つの、アンケート結果を掲載します。
世論調査―質問と回答〈3・4月実施〉
2016年5月2日22時39
〈調査方法〉 全国の有権者から3千人を選び、郵送法で実施した。対象者の選び方は、層化無作為2段抽出法。全国の縮図になるように338の投票区を選び、各投票区の選挙人名簿から平均9人を選んだ。3月16日に調査票を発送し、4月25日までに届いた返送総数は2077。無記入の多いものや対象者以外の人が回答したと明記されたものを除いた有効回答は2010で、回収率は67%。 
 有効回答の男女比は男47%、女52%、無記入1%。年代別では20代8%、30代14%、40代18%、50代16%、60代21%、70代16%、80歳以上7%。
この調査で興味深いのは、以前は電話調査だったのが安倍政権に変わった2013年3月の調査から郵送方式に変わったことです。そして、安倍政権になってから『変える必要がない』が急に増え始め、逆転しています。

方式変更の影響は不明ですが、特定秘密保護法や安全保障法制にからむ朝日をはじめとするネガティブキャンペーンが影響を与えていることは間違いないようです。この問題で国会で紛糾するたびに内閣支持率は低下し、憲法改正賛成の数字は下がっていきました。

TVジャーナリストらによる「特定秘密保護法案」反対会見
特に昨年の集団的自衛権を含む安保法案の審議過程においては、朝日新聞に限らず、他の新聞や、テレビそうして野党も加わって大ネガティブキャンペーンが繰り広げられました。

では、なぜ今回の調査では逆の結果となったのでしょうか。逆の結果となった原因には2つあると思います。

まず一つ目は、質問方法の違いです。今回の東大との共同調査の質問内容(文言、質問の順番など)は不明ですが、朝日新聞が春に行った調査では、「◆いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか」の質問の前に以下のような多くの質問をしていました。
◆今度の参議院選挙で一番大きな争点は、憲法だと思いますか。ほかに重要な問題があると思いますか。
一番大きな争点は憲法だ32
ほかに重要な問題がある60

◆憲法を変えるには、衆議院と参議院でそれぞれ3分の2以上の議員が賛成して提案し、国民投票で過半数が賛成することが必要です。今度の参議院選挙の結果、憲法改正に賛成する政党の議員が参議院全体で3分の2以上を占めたほうがよいと思いますか。それとも、占めないほうがよいと思いますか。
占めたほうがよい39
占めないほうがよい51

◆以下は、憲法第9条の条文です。(憲法9条条文は省略)憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか。
変えるほうがよい27
変えないほうがよい68

◆集団的自衛権を使えるようにしたり、自衛隊の海外活動を広げたりする安全保障関連法に、賛成ですか。反対ですか。
賛成 34  反対 53

◆安全保障関連法が、憲法に違反していると思いますか。憲法に違反していないと思いますか。
違反している50
違反していない38

◆いまの自衛隊は、憲法に違反していると思いますか。違反していないと思いますか。
違反している21
違反していない69

◆憲法第9条を変えて、自衛隊を正式な軍隊である国防軍にすることに賛成ですか。反対ですか。
賛成 22  反対 71

◆テロや大災害などに対応するため、政府の権限を強める「緊急事態条項」をいまの憲法に加えるべきだ、という意見があります。一方で、法律を充実すればいまの憲法でも十分対応できる、という意見もあります。いまの憲法に「緊急事態条項」を加えることに、賛成ですか。反対ですか。
賛成 33  反対 52

◆憲法で国家権力の濫用を防ぎ、国民の権利を保障する「立憲主義」という考え方があります。「立憲主義」に共感しますか。共感しませんか。
共感する77
共感しない13

◆憲法は、簡単に変えないほうがよいと思いますか。それとも、柔軟に変えるほうがよいと思いますか。あなたの気持ちに近い方を選んでください。
簡単に変えないほうがよい62
柔軟に変えるほうがよい31


◆いまの日本の憲法は、全体として、よい憲法だと思いますか。そうは思いませんか。
よい憲法67
そうは思わない23


◆いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか。
変える必要がある37
変える必要はない55

この質問の繰り返しが最後の質問に対する回答に影響を与えた可能性があると私は考えます。尚、さらにそう答えた理由を聞く質問もあるのですが、それは割愛しました。
(詳細はこちらから→http://www.asahi.com/articles/ASJ4N63MMJ4NUZPS00F.html

以上のような憲法に関する様々な質問をしたうえで、最後に憲法を変える必要があるかないかの二択に答えさせています。

例えば、自衛隊は憲法違反かどうかで「違反ではない」と7割の人が答えているのですが、そう答えた人は「変える必要がない」と答える可能性が高いです。

また、直前に「いまの日本の憲法は、全体として、よい憲法だと思いますか。そうは思いませんか。」と聞いているのも「変える必要がない」に誘導しようとする意図が見え隠れします。

これらの質問のなかに「北朝鮮や中国を脅威と感じるか」との質問があれば、最後の質問への答えも変わる可能性があるのですが、それはないのです。今回の東大との共同調査では、学術的な方法が遵守されて、上記のような露骨な誘導はなかったのでしょう。

そうして、最も大きな違いは、春の調査では「変える必要がある」と「変える必要はない」の2択に対し、今回の調査は「どちらとも言えない」を含む5択となっていることです。

この問題に関しては、「変えるか変えないか」の2択で迫られと、取りあえず「変える必要はない」を選ぶ人が多くなるのが普通です。

この「変える必要はない」には、「それほど急がなくても良い」や「よく分からないから反対」なども入っているはずです。それが、「どちらかと言えば反対賛成(反対)」や「どちらとも言えない」に分かれたのでしょう。

このように両方の調査結果を見ることで、憲法に対する国民の姿勢が見えます。はっきりと「賛成」「反対」の人より、その間で揺れ動く人のほうがずっと多いのです。だから、昨年のテレビ・新聞による「戦争法案反対」大キャンペーンに揺り動かさた人も多かったのです。やはり、安倍総理の言うように国民的議論を深めることが重要なのでしょう。

SEALDsによるデモ
もう一つの原因としては、多くの国民はごく最近の頻繁な北朝鮮のミサイルの発射による脅威や、中国が尖閣をいつ軍事基地化するかもしれないという脅威に晒されていることを強く認識するようになったいうことでです。

そうして、現在のままの憲法もしくは憲法解釈によれば、北朝鮮によるミサイル発射や中国が尖閣に上陸したときに、反撃することは難しいです。

朝日・東大谷口研究室共同調査と、朝日新聞による2つの世論調査の大きな違いには上記のように、朝日新聞の情報操作と、昨年より一層厳しさをみせているここ数か月の間の安全保障上の脅威も関係しているのでしょう。

憲法改正への道はまだ長く険しいですが、道筋は少し見え始めてきたのではないでしょうか。それにしても、朝日新聞のアンケート調査能力にはかなり問題がありそうです。朝日新聞などのメディアが全くかかわらない、公正な第三者機関によるさらなる、調査が必要だと思います。

【関連記事】



「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派に―【私の論評】憲法を改正するか、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になるか、あなたはどの道を選択しますか?


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2016年9月12日月曜日

「二重国籍問題」蓮舫氏が最も恐れているシナリオはこれ!―【私の論評】二重国籍はこんなに危険!この問題を軽々に扱うべきではない(゚д゚)!

「二重国籍問題」蓮舫氏が最も恐れているシナリオはこれ!

蓮舫氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 誰が勝ったところで、経済政策は…

民進党代表選(15日投開票)が後半戦に突入した。蓮舫氏、前原誠司氏と玉木雄一郎氏のうち、蓮舫氏が優勢とされている。

ただ、経済政策の観点からみると、候補者3人のうち誰が勝っても期待はできないことを最初に指摘しておきたい。

3人の過去の言動からみると、いずれも安倍政権と比べて「緊縮財政」と「金融引き締め」路線だといえる。3人とも10%への消費増税に賛成であり、同時に安倍政権の金融緩和についても批判的で、金融引き締め指向だ

この3人ともに、旧民主党時代のマクロ経済政策とほぼ同じであり、どうして安倍政権に負けて政権交代になったのか、まったく勉強していないと言わざるをえない。

すべての政治家がひとつだけ覚えておくべきことは、デフレ脱却をするまで緊縮財政と金融引き締めはやってはいけない、ということだ。

デフレから脱却しないと、雇用の確保も財政再建もおぼつかない。3人の意見を聞いていると、雇用の確保を無視し、財政再建を追い求めているが、肝心のデフレ脱却ができないので、雇用の確保も財政再建もできない、という未来しか見えてこない。

安倍政権がまともなのは、金融緩和を継続している点だ。積極財政は2014年4月からの消費増税で一時失敗したが、その後の再増税局面では過ちを繰り返さなかった。

それらの結果、国内総生産(GDP)成長率はいま一歩であるが、失業率や倒産は史上最低水準となっている。GDPと雇用が最重要な課題であるので、この点からいえば、満点ではないが安倍政権はまずまずである。

それを超えるものが、民進党代表候補の3人から出てこないのは残念である。

新たな民進党代表が決まれば、一定のご祝儀で政党支持率は少し上がるだろうが、経済政策で安倍政権に勝ることは考えられないので、脅威にはならない。デフレ脱却を掲げ、金融緩和強化、消費増税凍結でより強力な積極財政を主張するチャンスなのに、みすみすこれを逃すのは野党第一党なのに情けない。

 「二重国籍」そもそも何が問題か


それに追い打ちをかけるかのような話も出ている。蓮舫氏の「二重国籍問題」だ。

蓮舫氏が民進党代表になる可能性は高いが、二重国政問題を国会で追及する動きもある。蓮舫氏は1985年に日本国籍を取得しているが、台湾籍が放棄されたがどうかが問題とされているわけだ。



日本維新の会の馬場伸幸幹事長は8日、国会議員や国家公務員らが日本以外の国籍を持つ「二重国籍」を禁じる法案を国会に提出する考えを示した。早ければ今月末に召集される臨時国会での提出を検討している。

蓮舫氏の言い分は、「国籍放棄問題の渦中にある蓮舫氏、単独インタビュー」(http://news.yahoo.co.jp/feature/349)が詳しい。それによれば、

「蓮舫氏の説明が本当ならば、1985年に日本国籍を取得して以降、台湾の国籍放棄については、本人は台湾政府に確認していないし、確認が必要だという認識もなく、その点について家族からも説明はなかったので、一切の放棄のための行動を取ってこなかったということだ。

一方で、蓮舫氏が台湾籍であることを自覚し、パスポートを取得して台湾に入国したり、投票や納税などの権利・義務を行使したりしたことはなく、台湾の国籍者としての具体的な振る舞いはなかったということになる。

そうなると、残された問題は台湾籍が形式上残っているかどうかである。日本の国籍法上、二重国籍者は認められていないが、外国籍の離脱は努力義務にとどまり、離脱していなくても罰則はなく、厳格な運用は行われていない。もし台湾籍が残っていた場合、蓮舫氏はどう対応するのだろうか」

とのことだ。蓮舫氏は、念のために、台湾籍の離脱証明を取り寄せているようだ。

もともと、蓮舫氏の二重国籍問題は、元経産官僚の八幡和郎氏がネット上で問題提起したことにはじまる。

おそらく、蓮舫氏が国会議員でない一般人であれば、それほど問題にならなかっただろう。実際、これまで厳格な法運用がなかったために、二重国籍者は数万人程度はいると思われる(実際の国会答弁では「平成14年には約3万3千人を超えている」とされた)。

 国家公務員なら知っていること

ただし、外務公務員法第7条で「国籍を有しない者又は外国の国籍を有する者は、外務公務員となることができない」と規定されている。

筆者のように官僚出身であると、この話は知っているはずだ。特に、キャリア官僚であれば、海外勤務も多く、外務省に出向することがしばしばだからだ。

筆者の経験からいうと、財務キャリアであれば、ほぼ全員が海外勤務を経験する。そのやり方は、外務省に出向する、国際機関に派遣される、海外の大学などに長期出張で派遣されるという3種類がある。どれになるかは、確率3分の1程度なので、二重国籍かどうかは、当然チェックされる。

かつて外務公務員については、配偶者が日本国籍を有さない場合、または外国の国籍を有する場合についても外務公務員の欠格事由となっていたので、外国人配偶者の場合、外務省には出向しないといわれていたこともある。

もっとも、国家公務員では、人事院規則8118第9条では「日本の国籍を有しない者」は採用試験を受けることができないとされているが、二重国籍者を排除していない。

一方、地方公務員では、人事委員会規則で、基本的に「外国籍の職員については、公権力の行使に当たる業務又は公の意思形成に参画する職に就くことができない」と規定されており、二重国籍者は制限を受けることがはっきりしている。

これらの職以外にも、国籍条項が規定されているものは多いが、日本国民を要件とするものが多く、二重国籍者の扱いはあまり明確ではない。

例えば、国会議員などの公職政治家では、被選挙権者の規定である公職選挙法第10条により「日本国民」であることを要件とし、また地方自治体の公職政治家は地方自治法第19条により「日本国民」であることを要件としているだけだ。

日本維新の会の法案提出は、これらの二重国籍のグレーゾーンをすっきりさせるものである。国家公務員については、二重国籍不可は常識なので、外務公務員法のほうに、「国籍を有しない者又は外国の国籍を有する者は、国家公務員となることができない」とされても、支障がないだろう。

そもそも、国籍条項を規定されている職種では、国益と外国籍との利益相反を防止するために国籍条項があるわけで、本来であれば、国籍条項は直ちに二重国籍を不可とするもののはずである。この意味で、日本維新の会の法案は、これまでの法律の不備を埋めるものともいえる。

2007年の参院選で、元ペルー大統領のフジモリ氏が国民新党から立候補したが、フジモリ氏はペルーと日本の二重国籍であった。重大な問題だが、あまり議論はされなかった。日本維新の会の法案が成立すれば、そうした問題は回避されることになる。

筆者としては、国籍条項を必要とする職は必ずある、と考える。そのような職では二重国籍は否定すべきである。これは、一般の二重国籍問題とは区別して考える必要がある。

一般の二重国籍問題では、国際法で「人は必ず唯一の国籍を持つべき」とする国籍単一の原則があるのは知っているが、実際には二重国籍を認めている国は少なくない。この意味では、現在のところ二重国籍者に過度な規制を強いる必要もないと思っている。

ただし、二重国籍を認めている国であっても、国家の権力を行使する職では二重国籍が禁止されているのが普通であるので、その常識を日本でも適用したらいい。

 蓮舫氏が最も恐れていること

以上が政策論であるが、政治論から見ても日本維新の会の法案提出は大きな意味がある。

というのは、この法案が通れば、蓮舫氏の政治的な行動がかなり制約される可能性があるからだ。少し説明しよう。

民進党代表になるということは、政権交代すれば首相になるべき人である。現在、蓮舫氏は参議院議員だ。別に参議院議員は首相になれないという決まりはないが、首相の伝家の宝刀である衆院解散権を行使しにくくなる、というデメリットがある。

参議院議員は衆院を解散しても議席を奪われないので、解散して衆院議員のクビを切りながら、自分は安泰、という批判を受けるからだ。

そうした事情もあるので、蓮舫氏はいずれ衆院に鞍替えしたいはずだ。実は、小池都知事誕生とともに、東京10区(豊島区、練馬区の一部)で10月23日に補欠選挙が予定されている。蓮舫氏にとって、自身がその補欠選挙に出るのは、民進党を浮上させる好手のはずだった。

東京10区は、2005年の郵政選挙で小池氏が刺客として出馬して以来、民主党(民進党)女性候補と戦うという面白い選挙区だった。そこで、蓮舫氏が「私も崖から飛び降りる」と言って今回の補欠選挙に出馬すれば、かなり盛り上がっただろう。

ところが、日本維新の会の法案提出が、それにブレーキをかけるのだ。今度の臨時国会は今月26日に招集されるが、日本維新の会の法案は自民党にとっても関心事であるし、そもそも現在の法の不備を埋めるものなので、成立する可能性は高いだろう。となると、「二重国籍者」であった場合、蓮舫氏の鞍替えでの東京10区出馬は微妙になる。

ネットの威力は侮れない。台湾籍の離脱は日本でいうところの官報に掲載されているが、それを調べる限り、蓮舫氏の台湾籍離脱はないという指摘がネット上にはある(http://www.honmotakeshi.com/archives/49510141.html)。

蓮舫氏は台湾籍の離脱証明を取り寄せているようだが、実際に証明書が入手できるかどうか、その日付などで様々な議論が起こるはずだ。そうなると、蓮舫氏の東京10区出馬の可能性はかなり少なくなるだろう。

実際にどうなるかは予断できないものの、日本維新の会の法案が国会で審議されれば、民進党や蓮舫氏にとってはかなり痛い話になろう。

【私の論評】二重国籍はこんなに危険!この問題を軽々に扱うべきではない(゚д゚)!

民進党代表候補3人の経済政策がとんでもないものであることは、このブログでも以前掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
民進代表選候補者3人 野党連携は理念や政策の一致前提に―【私の論評】財務省の使い捨て政党民進党とその代表に明日はない(゚д゚)!
民進党代表選候補者三人 左より玉木氏、前原氏、蓮舫氏
詳細は、この記事をご覧にいただくものとして、玉木氏は元財務官僚ですから、理解できるところがあるのですが、他の二人まで、こと経済政策になると、まるでテープレコーダーのすり減ったテープのように、財務省のパンフレット以下の内容を語り続けるだけです。

本当にこんなことでは、政権交代でも起きて、今回の代表選で選ばれた代表が日本の総理大臣でもなって、その経済対策を実行したら、日本は再びデフレに突入して、日本の全国民がまた塗炭の苦しみに追いやられることになります。

代表選の候補者がこの有様です。過去の民主党政権のときの反省がまるでありません。これは、自民党でも似たり寄ったのところがあるのですが、それにしても安倍総理は、過去の自民党のときのデフレ・円高政策を反省して、一度は14年度4月からの増税を決断して、財務省の口車に乗りかけたのですが、その後は一環して、増税見送りの立場を貫いています。

さらに、金融政策でも緩和策をとるように日銀を説得し、最近ではなかなか日銀が追加金融緩和に踏み切らないものの、少なくとも緊縮に戻ることもなく、雇用関係の統計値はかつてなかった程に改善しています。

しかし、民進党の代表候補者は、なぜか全員、増税すべきとか、金融緩和策に懐疑的です。なぜこのようになってしまうかについては、この記事では掲載しませんでしたが、私自身は民進党、その中でも幹部は、財務省の走狗に成り果てているのではないかと睨んでいます。

財務省としては、経済対策に関して、財務省のパンフレットの内容のようなことしか、話せない代表が存在する民進党が与党になれば、自分たちのやりたいことが、国民などにはおかまいなしに、存分にできます。民進党が与党になれば、財務省は我が世の春を謳歌できます。

しかし、民進党の支持率は下がるばかりで、とても再度政権交代をする可能性はありそうにはありません。しかし、財務省はもしかするとという淡い期待は捨てきれないでいるのでしょう。

だから、民進党幹部と財務官僚の間には、財務省が民進党を応援することと引き換えに、民進党が財務省にとって良い経済対策を流布するということで、何らかの形で合意ができているのではないでしょうか。そうでないと、先ほども述べたように、代表候補者の3人ともが財務省のパンフレットの内容以下のことくらいしか、経済政策に関して語らないなどということはあり得ないと思います。


このことだけでさえ、大問題であるにもかかわらず、最近ではにわかに蓮舫氏の二重国籍問題がクローズアップされるようになりました。

この問題に関しては、なぜかテレビなどのメディアはほんど報道しません。不思議といえば、不思議です。著名人の中には、これを大した問題でないかのように発言する人もいます。さらには、どうでも良いことのように発言する人もいます。

しかし、ブログ冒頭の記事で高橋が指摘しているように、"国家公務員では、人事院規則てで「日本の国籍を有しない者」は採用試験を受けることができないとされているが、二重国籍者を排除していない"とあります。

「一方、地方公務員では、人事委員会規則で、基本的に「外国籍の職員については、公権力の行使に当たる業務又は公の意思形成に参画する職に就くことができない」と規定されており、二重国籍者は制限を受けることがはっきりしている"と指摘しています。

とはいいながら、二重国籍に関しては曖昧であることも指摘しています。とはいいながら「国籍条項を必要とする職は必ずある、と考える。そのような職では二重国籍は否定すべきである。これは、一般の二重国籍問題とは区別して考える必要がある」とも言及しています。

ネットをみると少なからずの人が、蓮舫氏の「二重国籍問題」を一般人の「二重国籍問題」として同列に考えてしまい、蓮舫氏に同情的な意見に傾きやすいようです。しかし、上の高橋洋一氏の論説は利益相反の可能性のある領域(国会議員、国家公務員)での二重国籍問題を論じています。

私自身は、やはり高橋氏の指摘が正しい思います。一般人は別にして、国会議員や国家公務員は、このような観点から、私自身はやはり、蓮舫氏個人がどうのこうのというより、そもそも二重国籍であってはならないと思います。ましてや、野党第一党の代表が二重国籍者あるべきではないと思います。そうして、この前提は当然のことと思います。

そうして、私自身は、いわゆるエリートと呼ばれる人たちは、当然のことながら、二重国籍であってはならないと思います。

こう述べると、エリートの定義が日本ではあまりに曖昧なので、以下にエリートについて述べておきます。

エリートというと、倉山満氏が以前「エリートの定義」をツイートしていたのを思い出します。

そのツイートを以下に掲載します。

エリートの定義がおかしいと思ってて日本でしか通用しない定義があって、偏差値が高い人がエリートっていうのがあるじゃないですか。東大出身の人がいたら絶対聞いて欲しいんですが万国共通のエリートの定義は「そいつの命よりも責任が重い」って事ですよ。だから武士は毎日切腹の訓練をしてたんです
確かに、国会議員は東大を出ていないとなれないとか、偏差値の高い大学に入っていないとなれないなどということはありません。企業の役員だってそうです。一部上場の大企業であれば、東大卒などはいて捨てるほどいる中から選定されます。そんな中では、東大出身とか、偏差値が高かったなどということは何の意味も持ちません。

切腹の作法
あくまで、もっとも注目されるのは、責任の重大さに耐えられるかどうかの観点になると思います。ただし、国会議員の選挙や、企業の役員の選定にあたって、実際にこれが重視されているかは別問題です。最近の議員をみていたり、東芝の旧社長らなどをみていると、そうとは限らないことが良く理解できます。

しかし、本当のエリートの定義は「当人の命よりも責任が重い人」ということです。

責任のない人は、自分の命が大事なのだと思います。自分の命を太く未来につなげていくことが一大事なのだと思います。

そもそも、本来エリートは命がけでなるものなのです。偏差値の高い大学に自分の子どもを入れようとしている親の大部分は、そんなことは考えてはいないでしょう。

一昔前ならば、武士の家に生まれれば、自分がどう考えようとも、そういうエリートになるものとして育てられたわけです。いざというときに、自分の命よりも重い責任を取るために、切腹の作法も学ばせたのです。

そうして、国会議員は、当人たちがどう思っているか否かは別にして、「当人の命よりその責任が重い」人です。野党第一党の代表ともなれせば、さらに責任が重いです。国家公務員も、全員ではありませんが、そのくらい責任の重い人は存在すはずです。

こういう意味での、エリートは当然のことながら、二重国籍であってはならないはずです。

そうして、蓮舫氏の「二重国籍問題」に関しては、これを当然のこととして、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
40、50万人との推定もある二重国籍の実態 「偽装日本人」に深刻リスク―【私の論評】蓮舫の二重国籍問題を契機に、これを放置するのはやめるべき(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を以下に掲載します。
世界的には二重国籍を容認する潮流であるともいわれます。国籍の異なる両親から生まれた子が2つの国籍を持つことは、2つの言語、歴史、文化、生活習慣の中で成長する彼らにとって当然の帰結なのだから、二重国籍を容認すべきという意見は根強いです。 
しかし、だからといって我が国の根幹法規というべき国籍法が形骸化し、偽装日本人による日本パスポートの不正取得、不法入国、不正投票などが蔓延している状況や、今回の蓮舫氏の二重国籍疑惑を放置して良いわけがありません。 
国籍のあり方についての国民的議論、そしてそれを踏まえた国会での検討が早急にすべきです。蓮舫氏以外の議員にもこの問題がないかどうか至急調査すべきですし、問題のある議員が出てきた場合、そうして蓮舫議員にも問題があればこれも含めて厳正な措置をとるべきです。 
特定秘密保護法で公務員の身辺調査をするのですから、政治家の身辺調査も当然のことながら実施すべきです。配偶者、親族に外国人がいる、いないの調査を実施すべきです。政治家本人の帰化の有無。政治家の親族に外国人、または帰化者がいないかの公表もすべきです。政治家等の帰化基準が反日勢力に甘すぎるから、蓮舫氏の二重国籍問題が起こるのです。
この結論に書いたように、私自身は、政治家、国家公務員などのエリートはもとより、一般の人の二重国籍もやはり、日本の国籍法にのっとり厳格にある程度以上の年齢になれば、日本国籍を選ぶか外国籍を選ぶかはっきりさせるべきと思います。二重国籍を認めるというのなら、その要件もはっきりさせるべきです。

なぜなら、この二重国籍にはかなりの潜在的な危機が予め予見されるからです。たとえば、中国など日本に多数の中国人民を入国させ、それらをことごとく二重国籍にさせます。そうなると、ある一定数の中国人が二重国籍になったとする、その二重国籍の中国人に対して、中国政府は国防総動員法を発令することができます。

国防総動員法とは、(2010年7月)に中国共産党政府が成立させ、施行したものです。同国の国防に関わる有事にいたった場合に、国内外の支那(China)国籍者の財産の接収(没収)、同国籍者の徴兵(国内・在外を問わない同国籍者の徴兵(兵員化)と、および、同国内での外国資本の没収まで含まれているのです。


長野五輪の聖火リレーの沿道で暴れる動員された中国留学生 1998年
何故、このような法律を性急なまでに施行したのでしょうか。その目的は、中国共産党政府がごく近い将来に有事(および戦争)の発生を想定してのことで、たとえば、対日政策の上では、侵攻による沖縄県尖閣諸島、さらには沖縄本島の収奪・領土化とそのための有事を視野に入れてのことであろうことは邪推の余地も有りません。

もとより、沖縄の領土化は日本本土を次の視野に入れてのことで、日本の属国化、ひいては「日本自治区化」を置いているであろうことは推察に難くありません。 

そうして、在日中国国籍者もこの法律の動員対象となっていることです。在日中国人は65万6403人も居て他の在日外国人と比べて圧倒的に多いです。留学や技能研修など日本に学びに来ている人が多いが、働いている人も多いです。

職種は技術・人文知識・国際業務や調理師から社長や大学教授まで幅広く、数も圧倒的です。男性中心の他の在日外国人と比べて20代・30代の女性が多く、若くて元気です。在日中国人は戦前から居て横浜中華街などを形成しましたが、1990年代から倍増し2000年代前半に激増しました。

最初は集団密航で入国した人も居たが、そのうち留学などを通じて増えて行き企業に新卒採用されたり、犯罪に手を染めたりしました。他、“観光”などで一時的に渡航して来ている者や15万人を超えたとされる同国の留学生も、「有事」発生時点での動員対象になります。
北海道喜茂別町にある中国語で書かれた中国人専用ゴルフ場の看板
さらに、後者の一時的渡航者、留学生の中から絶えない「法律上は日本に存在していない」はずの不法残留(オーバーステイ)者や、さらには、数値ではその掌握が測りかねる不法滞在者(密航者)もその例外ではないのです。

さて、これらの在留華人の多くが、二重国籍者になったらどういうことになるでしょうか。小さな地方自治体などであれば、中国が国防総動員法をこれらの二重国籍者に発動したらどいうことになるでしょうか。

中国と日本との二重国籍者であれば、日本人としての権利・義務を有しながら、中国の国防動員法にも従わなければならないです。

二重国籍者であるということから、日本人でありながら、中国人でもある多くの人間が、どこか地方の町や村に多く集結すれば、実質上その町や村を乗っ取ることだって可能ではありませんか。もし中国が意図的に、数百万もの中国人を日本に送り込み、中国国籍を持ったまま日本の国籍を取得させたらどうなりますか。

こんなことを考えると、一般人の二重国籍者についても、何らかの措置が必要になるのは当然のことです。

二重国籍問題は、軽々に考えるべきではありません。二重国籍問題というと、蓮舫氏個人のことばかりが、問題にされますが、この問題はその低次元の問題ではありません。場合によっては、日本の存亡の危機につながりかねない重大な問題です。

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2016年9月11日日曜日

中国共産党が天津市トップを調査 重大な規律違反で 「習主席の腹心」と香港メディア【私の論評】期せずして中国共産党に引導を渡す習近平(゚д゚)!

中国共産党が天津市トップを調査 重大な規律違反で 「習主席の腹心」と香港メディア

6月28日、2016年夏季ダボスフォーラム(夏季ダボス会議)の閉会式で挨拶する天津市の黄興国市長
中国共産党中央規律検査委員会は10日、重大な規律違反があったとして、天津市トップの黄興国党委員会書記代理(市長兼務)(61)が調査を受けていると発表した。調査の詳細は不明。香港メディアによると、黄氏は習近平国家主席の腹心。

黄氏は、故黄菊元副首相の親戚で、習氏が2002年に浙江省トップの党委書記に就任した際、省幹部の党委常務委員として1年間支えた。胡錦濤前国家主席の元側近で汚職などの罪で無期懲役判決を受けた令計画・人民政治協商会議(政協)元副主席の党ポスト解任に伴って、党内調整で現職に就いていた。

香港メディアは、黄興国氏について、汚職の疑いが指摘されているほか、天津市で173人の犠牲者が出た昨年8月の大規模爆発事故に絡んで調査されている可能性があるとしている。

今年8月以降、天津市では尹海林副市長も規律検査委の調査を受けるなど、多数の幹部が対象となっている。黄氏は調査発表前日の9日まで公務を続け、動向が地元紙で報じられていた。

【私の論評】期せずして中国共産党に引導を渡す習近平(゚д゚)!

このニュース、どの角度から検討してみても、習近平が中国国内で未だ権力掌握できず、中国では激越な権力闘争が続いてはいるものの、習近平の旗色はかなり悪いことを象徴するものです。

まず、この黄興国氏が、表裏がなく習近平の腹心だったし、今でもそうであると仮定の上で上の出来事を分析してみると、習近平が完璧に権力を掌握していれば、腹心の黄氏が、調査を受けるなどという事態にはならなかったはずです。この仮定においては、習近平は未だ権力を掌握していないことがわかります。

次に、黄氏が習近平の腹心でありながらも、反習近平氏側についていて、それが発覚して、今回のような事態に至ったとしても、腹心と言われる者が、裏切っていたということで、これまた習近平氏の権力基盤は脆弱であることが伺えます。

いずれにせよ、習近平氏は形の上では、中国の最高権力者である、国家主席でありながら、未だ権力を掌握していないということです。

このような兆候はすでに前からありました。それに関する記事をこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【石平のChina Watch】習主席、頓挫した「独裁者」への道 衆人環視の中で目撃された異様な光景 ―【私の論評】刎頚の友で、独裁者になりそこねた習!だが、中共の本質は変わらない(゚д゚)!
2016年3月28日月曜日

習近平国家主席を後ろから手をかけて呼び止め、話しかけた王岐山氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、石平氏の元記事の要約を以下に引用します。
今月4日に開かれた全国政治協商会議(全国政協)の開幕式で、委員たちは異様ともいうべき光景を目撃した。式典が終わって、最高指導部のメンバーたちが順次、ひな壇から退場するとき、党の規律検査委員会の王岐山主任が前を歩く習近平国家主席を後ろから手をかけて呼び止め、話しかけたのである。 
衆人環視の中で、習主席の部下であるはずの王氏が取ったこの「なれなれしい」行動は、主席の権威をないがしろにする「軽薄なる行為」とも映った。その背景には一体何があったのか。 
その2週間ほど前の2月19日、習主席は中央テレビ局など3大メディアを視察し、メディアが党への忠誠に徹すべきだとの訓示を行った。それに応じて、3大メディアは一斉に、「メディアは共産党のものだ、党に絶対の忠誠を誓いたい」と宣した。 
しかし民間からは早速反発の声が上がってきた。習主席の訓示と3大メディアの姿勢に対し、真っ正面から痛烈な批判を浴びせたのは、中国の不動産王で、政治批判の鋭さで「任大砲」の異名をもつ任志強氏である。
「任大砲」の異名をもつ任志強氏 
任氏の微博のアカウントは直ちに閉鎖され、官製メディアによる「任志強批判キャンペーン」が一斉に始まった。
こうした中で、今月1日、中国共産党規律検査委員会の公式サイトに注目の論評が掲載された。 
論評は、「千人の唯々諾々より、一人の志士の直言の方がよい」という昔の言葉を引用して、指導者が「直言」に耳を傾けるべきだと諭した。 
タイミングからすれば、この論評が諭そうとしている相手は、他ならぬ習主席その人であろう。さらに興味深いことに、論評を掲載した公式サイトの持ち主は党の規律委員会であり、そのトップを務めるのは、習主席唯一の盟友とされる王岐山氏である。 
要するに、王岐山氏が習主席を諭したことになるのだ。その2日後、全国政協の壇上で、王氏がおうような態度で習主席を呼び止めた場面を目にして、多くの人々はうなずくことができた。 
習主席の就任から3年、その最大の「政治実績」となったのは腐敗摘発であるが、考えてみればそれは全部、規律検査委員会トップの王氏の手柄であった。そして、摘発権という絶大の武器を手にして党内で権勢を振るった結果、いつの間にか、王氏は習主席をしのぐほどの陰の実力者にのし上がったのである。 
実は上述の規律検査委員会サイトの論評掲載を境目に、任志強氏に対する批判キャンペーンがピッタリと止まった。どうやら本当の実力者が浮上してきた中で、「独裁者」への習主席の道が閉ざされたようだ。
この件といい、ブログ冒頭記事の天津市トップの黄興国党委員会書記代理(市長兼務)が調査を受けているという報道といい、これはどう考えても、習近平は権力を掌握できていないどころか、すでに半習近平派に権力を掌握されかかっているということを示すものです。

習近平は国外では、南シナ海や東シナ海をめぐって、日米その他周辺諸国との対立が先鋭化しました。さらに、経済は低迷、AIIBの大失敗などによって、金融支配にも大失敗しました。どれ一つとっても、習近平は成功したものがありません。習近平が主席になってから、中国の力は衰えるばかりです。

これに対して、反習近平派は一致協力して、習近平排除に動き出したのでしょう。しかし、習近平が失脚したにしても、それで何かが変わるでしょうか。経済の悪化は止めようがないです。キャピタル・フライトも止まらないでしょう。できることといえば、南シナ海や東シナ海での中国の傍若無人な態度を改め、国際社会から孤立しないことくらいかもしれません。

しかし、仮にこれが成功したとしても、現在の中国共産党中央政府の体制が改まり、民社か、経済と政治の分離、法治国家かがある程度推進されないかぎり、何も変わりません。

中国人民の憤怒のマグマは貯まる一方で、いつどこで強烈に爆発してもおかしくない状況にあり、それは現体制が維持される限り、何も変わりありません。

借りに、反習近平派が習近平を失脚させたにしても、今度は反習近平で固まっていた派内で分裂が起こり、さらに習近平派の残党も加わって一層激烈な権力闘争が始まるだけです。

日本のような先進国と異なり、中国には選挙がありませんから、統治の正当性を増すために、各派閥がしのぎを削って大権力闘争を展開することになります。

そうして、この大権力闘争は、人民などそっちのけで、激烈に展開されることになります。そうして、さらに国民の憤怒のマグマは貯まり、いずれ収拾のつかない状況になることでしょう、行き着く先は中国共産党一党独裁による現在の体制の崩壊です。

なお、この件に関しては、『習近平が中国共産党を殺すとき』という書籍に、石平氏と陳破空氏の対談が掲載されています。


この対談中国の新唐人テレビに動画が掲載されています。そのリンク先を以下に掲載します。
『習近平が中国共産党を殺すとき』スペシャル動画配信

新唐人テレビ(しんとうじんテレビ,英語: New Tang Dynasty Television)は、アメリカ合衆国ニューヨークに本部を置く中国語専門のテレビ局です。

2002年、北米の華人向けに放送開始。翌2003年には衛星放送(BS)での放送が開始され、現在は世界各国で視聴できるほか、日本でもインターネットで日本語に翻訳された報道の視聴が可能です。ニュース以外にも、各地の伝統文化や漢方医学など、多岐にわたる分野を専門としています。


中国の情報は、中国のメディアではなかなか本当のところは、わかりません。新唐人テレビなどの情報のほうが中国国内のメディアよりは、信憑性があります。私も、中国についての情報源の一つにしています。

さて、この著書で特に両著者が注目しているのが、国内外で多くの火種を抱えた結果、実は習近平政権は相当弱体化していることです。そのため、次の指導部が決まる2017年秋の中国共産党全国大会までにクーデターが発生し、一党独裁体制に大変革が起こるであろうことを独自に入手した情報を駆使し、緻密に読み解いていきます。

そうした最新の中国分析とともに、両著者の人生を変えた天安門事件について、初めて総括しているところも読みどころの一つです。個人史と中国現代史がクロスする、単なる“反中”を超えた祖国への苦悩と希望が明かされます。

また本対談は全編、中国語で行われました。そのため予定調和の対談とは全く違い、時にケンカかと思えるほどヒートアップ。しかも両者の出身地の四川方言でまくしたてるため、編集協力の中国人スタッフもタジタジになったそうです。

一体誰が何のため政治、経済、軍事を操っているのか、日本人が知っておくべき隣国中国の今と未来の本質を抉(えぐ)りだす、両著者の鋭利な分析をぜひご味読ください。

今年で32回目を迎えた教師節(教師の日)、9日午前、習近平が北京市八一学校(母校)を訪問
いずれにせよ、習近平にはもう先がないのははっきりしています。いずれ近い内に、失脚することでしょう。しかし、習近平が失脚しても、中国共産党の統治システムは同じままでは結局多数の人民にとっては何も変わりありません。

中国共産党の一党独裁体制も、ポスト習近平後しばらくして崩壊するとみなすのが妥当でしょう。期せずして、習近平は、中国共産党の一党独裁を終わらせる役割を果たしているのです。

習近平は中国共産党に引導を渡す役割を担っているということです。

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2016年9月10日土曜日

米がICBM試射、北朝鮮への警告メッセージ―【私の論評】核の暴走をやめない金正恩を米国が斬首するかもしれないこれだけの理由(゚д゚)!

米がICBM試射、北朝鮮への警告メッセージ

東亜日報

ミサイルサイロの中のミニットマンⅢ
写真、動画はブログ管理人挿入。以下同じ。
朴槿恵(パク・クンへ)大統領と米国のオバマ大統領が、ラオスで韓米首脳会談を行った6日(韓国時間)、米国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ミニットマンⅢ」発射訓練を実施したことが確認された。北朝鮮の挑発にあらゆる手段で強硬に対応することを明らかにした韓米首脳の発表を裏付けると共に北朝鮮の核とミサイル脅威に対する警告メッセージとみられる。

7日、米空軍によると、6日夕方、カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地からミニットマンⅢ1発が発射された。ミニットマンⅢは音速の20倍以上の速度で飛翔し、約6700キロ離れた太平洋のマーシャル諸島近海に落下した。ミニットマンⅢには模擬弾頭が搭載されたと、米空軍は伝えた。米空軍関係者は「ミニットマンⅢの正確度と作戦能力を点検し、有事の際、本土と同盟国に対する『核抑止力(nuclear deterrent)』の効用性を確認した」と明らかにした。

米国は今年2月、韓国軍関係者をヴァンデンバーグ空軍基地に招待し、ミニットマンⅢの試験発射の過程を初めて参観させた。その後、ミニットマンⅢを含めあらゆる手段で韓国を防衛すると明らかにした。ミニットマンⅢは、B52戦略爆撃機、戦略原子力潜水艦と共に米国の「3大核の傘」に含まれる。最大3個の核弾頭を1万3000キロ離れた所まで飛ばすことができる、ヴァンデンバーグ空軍基地から平壌(ピョンヤン)(約9360キロ)をはじめ北朝鮮全域に対する戦略的攻撃が可能だ。

韓米首脳会談で高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備を初めて言及したオバマ大統領は、戦争勃発時に米国が先に核兵器を使用しない「先制不使用(No first use)」構想を撤回するという。

米紙ニューヨーク・タイムズは、複数の米政府関係者の話を引用して、「オバマ大統領が『核のない世界』アジェンダを具体化するために任期内に先制不使用を宣言することを検討したが、政府内の反対を受け入れて断念する方向でまとまった」と報じた。核先制不使用は、敵が核兵器を使わないなら、先に核を使わないという約束だ。中国は1964年、インドは2003年に「核の先制不使用」を宣言した。

【私の論評】核の暴走をやめない金正恩を米国が斬首するかもしれないこれだけの理由(゚д゚)!

このニュース日本では、全く報道されていません。北朝鮮の日本海へのミサイル発射の3時間後、米空軍が太平洋にこの発射テストをしました。これは、北朝鮮が日本EEZ内の日本海にミサイル3発を発射した事への警告です。オバマ米大統領は発射直後に「挑発は一層の圧力とより深い孤立を招くと北朝鮮は知るべきだ」と語ったそうです。

これは、極めて重要な意味がある事はこの内容を知れば誰にも理解できると思います。日本のメディアは報道しない自由を選択したようです。なぜ隠すのか理解に苦しみます。

LGM-30 ミニットマン
LGM-30 ミニットマン (Minuteman) はアメリカ空軍の大陸間弾道ミサイル(ICBM)であり、核弾頭を搭載した戦略兵器です。名称はアメリカ独立戦争における民兵に由来します。

アメリカ空軍における最初の本格的な固体燃料ロケットエンジンを搭載した量産型ICBMで、3段式ロケットによって最大速度24,000 km/hを誇ります。一時は爆撃機系統の記号としてB-80が付けられていました。

アメリカ空軍で運用されている大陸間弾道ミサイルであり、戦略爆撃機およびアメリカ海軍の潜水艦発射弾道ミサイルと並び、戦略核攻撃能力を担っています。

冷戦の終結・核軍縮などにより、後継となるはずであったピースキーパーが2005年に退役しました。そのため、1950年代に開発が開始された古いミサイルですが、2009年時点でも配備・運用が続けられ、少なくとも2020年頃までは運用される計画です。

搭載核弾頭については更新・改良が続けられ、長期配備に際しての安全性が考慮されています。

さて、上の記事にもある通り、米国は今年の2月にもミニットマンⅢを発射しています。そのニュースを以下に掲載します。
米国 空軍、大陸間弾道ミサイルを試験発射
2016年2月27日 毎日新聞

 米空軍は米太平洋時間25日午後11時(日本時間26日午後4時)過ぎ、西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から大陸間弾道ミサイル(ICBM)ミニットマン3の発射試験を行った。核兵器でなく試験機器を搭載して約30分で約6500キロを飛行し南太平洋のクエゼリン環礁付近に着弾した。

米軍のICBM発射実験は5日間で2回目。ロシアや中国など対立する核保有国をけん制する意図がある。ワーク国防副長官はAP通信などに「核兵器を持つ国全てに、我々も国を守る必要があれば核兵器を使用する準備がある、とのシグナルだ」と述べた。米政府高官が核兵器使用の可能性に直接的に言及するのは極めて異例だ。 
 ロシアはプーチン大統領が昨年、ウクライナ情勢やテロ対策に関連して核兵器使用の可能性に触れている。こうしたプーチン氏の強気の発言に、今回ワーク氏が対抗した形だ。 
 国防総省によると、ワーク氏は核抑止力について「大国間の戦略的安定の基礎だ」と前向きに評価。「核兵器なき世界」を目指すのがオバマ政権の立場だが、その実現までは「(核)抑止力が安全で信頼でき効果的であるよう努め、競争相手の大国との戦略的安定を維持する」と述べた。 
 オバマ政権は防衛戦略の中で核兵器の数や役割を削減する方針を打ち出しているが、核弾頭やその運搬手段であるICBM、戦略原潜、爆撃機の3本柱は更新・近代化する計画だ。ミニットマン3は1970年代の配備で設備の老朽化が進んでいるとして、米軍幹部らは更新を求めていた。 
 オバマ政権は2017会計年度に核兵器関連で190億ドル(約2兆1660億円)を要求している。カーター米国防長官は25日の議会証言で、核武装近代化の総費用を3500億〜4500億ドル(約40兆〜51兆円)と見積もっている。 
 しかし軍備管理専門家からは「高価過ぎて賄えない」としてICBMや戦略原潜の数を削減すべきだといった批判が出ている。
北朝鮮の核弾道ミサイルムスダンは、日本の防衛省によると推定射程が2500~4000キロ(ロイター)。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)や聯合ニュースは3000~4000キロと伝えています。これは、日本全域をカバーするばかりか、米軍基地のあるグアムまでを射程範囲内とします。

北朝鮮は常々、事と次第によってはアメリカを核攻撃すると挑発を繰り返してきました。もしも仮に、ミサイル搭載可能な核弾頭を開発済みだという北朝鮮の最近の主張が事実であれば、ムスダンは搭載機としてまさにうってつけです。韓国国防省によれば、ムスダンには約650キロの弾頭を搭載できるといいます(朝日新聞)。

「ムスダン」中距離弾道ミサイル「ムスダン」。基地ではなく専用の
車両から発射するので、衛星などで発射の兆候を検知するのは困難だ。
これだと、アメリカ本土にはまだ到達しないわけです。また北朝鮮のSLBM(潜水艦発射型)も、あまり距離は飛びません。これも数千キロといわれています。しかし、北朝鮮の潜水艦の技術はかなり遅れているので、あまり長時間潜水できません。浮上すればすぐに発見されます。

さらに、補足も簡単で、すぐに撃沈されてしまいます。そう考えると、北朝鮮の近海で発射するしかないです。そうなると、これもアメリカ本土は狙えません。

日本や韓国にとっては脅威ですが、アメリカにとっては本土が脅かされることはまだないわけです。しかし、そのアメリカがICBMの発射実験をして北朝鮮に警告を出しているわけです。

北朝鮮は9日、5回目の核実験を行いました。金正恩党委員長は今年3月、「核弾頭爆発」の実験を早期に行えとの指示を下し、その事実を世界に公開しました。彼らとしては、既定路線だったわけです。

北朝鮮は今後も、核戦力整備のために必要なだけの核実験とミサイル発射を繰り返すだろう。しかしこれは、一体何のためなのでしょうか。

少し前まで、北朝鮮の核・ミサイル開発の目的については、米国を振り向かせ、関係改善の対話を行うための「ラブコール」であると見る向きが多くありました。おそらく、かつては米国政府もこうした見方に立っていたはずです。

2009年7月、オバマ政権のクリントン国務長官(当時)は北朝鮮を「関心を集めようとする子どものよう」だと例えながらも、「完全かつ後戻りできない非核化に同意すれば、米国と関係国は北朝鮮に対してインセンティブ・パッケージを与えるつもりだ。これには(米朝)国交正常化が含まれるだろう」と述べていました。

インセンティブ・パッケージとは、米国が国交正常化、体制保障、経済・エネルギー支援などを、北朝鮮は核開発プログラム、核関連施設はもちろん、ミサイルなどすべての交渉材料をテーブルに載せ、大規模な合意を目指すことを念頭に置いていたとみられています。

「核の暴走」が米国への単なるラブコールだったのなら、北朝鮮はこの提案に喜んで応じたはずです。しかし、そうはなりませんでした。なぜでしょうか。

当時は注目されませんでしたが、人権問題が最大の理由ではなかったかと思います。米国にはブッシュ政権時代に出来た、北朝鮮人権法という法律があります。日本人拉致問題も含め、北朝鮮の人権状況が改善されない限り、米国から北朝鮮への人道支援以外の援助を禁止すると定めたものです。

恐怖政治で国民を支配する北朝鮮の体制にとって、人権問題は体制の根幹に触れるものであり、交渉のテーブルに乗せることなどできるはずもありません。

ネット上で拡散している北朝鮮玄永哲氏のものとされた処刑動画。男性は
高射砲で上半身を吹き飛ばれた。ただし、これは本当はISの処刑でらしい。
では、米国が人権問題を引っ込めて、北朝鮮との関係改善に向かう可能性はあるのでしょうか。

それもまた、あり得ないでしょう。現に、米国は人権問題で金正恩氏を制裁指定するなど、攻めの姿勢を強めています。そうである以上、北朝鮮の暴走もまた止まらないでしょう。
2012年の太陽節(金日成氏の生誕記念日)を前にして公開された写真
金正恩氏が目指しているのは恐らく、どの国も北朝鮮の人権問題などまったく顧みられなくなるほどに、自国を取り巻く政治環境を変えることです。そのための手段が「核の恐怖」なのです。日米韓がどのような迎撃システムを築こうとも、「北朝鮮からの核攻撃を100パーセント防ぐのはムリだ」と世の中が認めるほど、質量ともに十分な核戦力を持とうとしているのですす。

まだ32歳の彼が、一部にある体調不安説を克服し、今後も健康を維持して生き続けるとしたら、50歳になるまでにどれほどの核兵器を手にすることになるのでしょうか。考えるだけで恐ろしいことではありませんか。

朝鮮戦争史跡地を現地指導する金正恩氏/2015年6月9日付労働新聞より
こうした、正恩氏の暴走を止めるための手段として、米国によるミニットマンⅢの発射は企図され実行されたのです。そうして、これからも金正恩が核の暴走をやめないかぎり、米国もこの方針を改めることなく、継続することでしょう。

この傾向は、米側ももはや変わらず、金正恩が死ぬか、北朝鮮の体制が変わらない限り続くものと踏んでいるものと思われます。

だからこそ、米軍は韓国に金正恩斬首部隊を常駐させているのです。私は、条件が揃えば、米軍は本当に金正恩を斬首するつもりだと思っています。

そんな馬鹿なと考える人は、一つ忘れていることがあります。それは、アメリカはあのオサマ・ビンラディンを殺害しているという事実です。あれは、あくまで殺害であって、暗殺ではありません。事実米国は、殺害を公にしています。

しかも、核保有国であるもあるパキスタンの領内でこれをやってのけています。オサマ・ビンラディン暗殺には、最初のとりかかりから含めるとアメリカは7年以上の年月をかけて実行しています。私は、すでに米国は金正恩斬首に向けて動いていると思います。そのことは、金正恩氏も知っていると思います。だからこそ、なおさら「核の暴走」をやめることができないのです。

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ついに日本政府からゴーサイン出た! 豪州の将来軍艦プロジェクト、日本から輸出「問題ありません!」 気になる提案内容も明らかに―【私の論評】安倍政権から始まった日豪関係の深化を象徴する出来事

  ついに日本政府からゴーサイン出た! 豪州の将来軍艦プロジェクト、日本から輸出「問題ありません!」 気になる提案内容も明らかに まとめ オーストラリアの将来汎用フリゲート選定計画で、日本の提案が最終候補に選ばれ、国家安全保障会議で海外移転が認められることが確認された。 提案され...