2016年9月18日日曜日

結婚と出産・子育てへの最も高いハードル、いずれもやはり「経済的理由」だったと判明―【私の論評】少子化と経済は、自殺者の増減と同じく大いに関係あり!まずは、経済を良くせよ(゚д゚)!


少子化の大きな原因はやはり経済的理由でした。詳細は以下から。

昨日から話題になっている厚生労働省の出生動向基本調査。これは国立社会保障・人口問題研究所がおおよそ5年ごとに行っている調査で、独身者と夫婦に対して異性との交際や結婚、出産や子育てなどについての実態や意識を調べるもの。

その中で、結婚意思のある未婚者に、1年以内に結婚するとしたら何か障害となることがあるかをたずねたところ、男女とも最も多かったのが「結婚資金」(男性 43.3%、女性 41.9%)となりました。水準はどちらも5年前の前回調査とほぼ同じです。また、2000年以降の調査ではハードルとして「職業や仕事上の問題」を障害に挙げる人が増えています。


図表Ⅰ-1-9 調査別にみた、各「結婚の障害」を選択した未婚者の割合

図表はブログ管理人挿入 以下同じ

また、夫婦が実際に持つつもりの子供の数が理想的な子供の数を下回っている現状に対し、夫婦が理想の子ども数を持たない理由についても「子育てや教育にお金がかかりすぎる」という経済的な理由が56.3%と過半数に達しトップの回答となっています。この傾向は妻の年齢が35歳未満の若い層では8割前後に達しています。

ここから読み取れるのは、結婚の意思のある若者にとって経済的な理由がハードルとなっていると共に、結婚した夫婦にとっても子育てや教育がお金の掛かりすぎるものであるということ。「若者の結婚離れ」や「若者の出産離れ」の背景には「お金の若者離れ」という現実が重くのしかかります。

逆に言えば、若者にお金がしっかりと回るようになれば、意志のある若者にとって結婚や出産・子育てへのハードルは低くなるということ。育児休暇や保育制度の充実はもちろん、そこに至るまでの段階の若者への経済面でのバックアップが少子化対策として有効であると言えそうです。

また、この調査では独身の男女のうち、「異性の交際相手がいない」と答えた男性が69.8%(前回61.4%)、女性で59.1%(同49.5%)と大幅増加しているというショッキングな数字が出ています。性体験のない独身男女も男性42%、女性の44.2%とどちらも前回調査より増加しています。

異性との交際には最低でもデートの時間と多少のお金が必要になるもの。ブラック企業で低賃金で長時間労働をしている場合はどちらも満足に捻出できない可能性が少なからず存在しています。この5年間で男女ともに10ポイント前後も交際相手がいない人が増えているということを考えると、何らかの相関関係は疑ってみてもよいのかも知れません。

2015年の調査で恋愛結婚が87.7%にも上ることを考えれば、恋愛→結婚→出産・子育てという流れはやはり王道と言えるもの。独身の若者が恋愛のできるような時間とお金を持ち、結婚を考えるだけの資金を貯められ、育児や教育に掛かる多大な費用や諸コストを保障する制度があればこそ、少子化に歯止めを掛けることができるのではないでしょうか?

(pdf)第 15 回出生動向基本調査 結果の概要

「交際相手いない」男性7割、女性6割 過去最高を更新 :日本経済新聞

独身男性7割「交際相手いない」「性経験なし」も増加 – 産経ニュース

【私の論評】少子化と経済は、自殺者の増減と同じく大いに関係あり!まずは、経済を良くせよ(゚д゚)!

上の調査は、多くの人々にとってショッキングであると思います。それにしても、上のブログの記事、結論は「独身の若者が恋愛のできるような時間とお金を持ち、結婚を考えるだけの資金を貯められ、育児や教育に掛かる多大な費用や諸コストを保障する制度があればこそ、少子化に歯止めを掛けることができるのではないでしょうか?」です。

結婚する若者に対してそのための、資金を貯められ、費用やコストを保障する制度があれば、少子化に本当に歯止めがかけられるのでしょうか。

制度とはなんでしょうか。政府がこの若者たちを対象に補助金制度などをもうけるということでしょうか。あるいは、学費や子育てにお金がかからないようにするということでしょうか。

残念ながら、私はこれも必要でしょうが、これだけでは少子化には歯止めがかからないと思います。

なぜこのようなことになってしまったのかといえば、やはりあまりにも長い間デフレが放置されたからでしょう。さらに、平成14年4月から導入された8%増税も影を落としていると思います。

せっかく、平成13年4月から、日銀が、金融緩和政策をとってその効果が数字上に明らかに出ていたのに、平成14年に増税してから、金融緩和の効果が相殺されて、経済はほとんど伸びませんでした。ただし、金融緩和は継続していたので、雇用はかなり改善されました。

高卒、大卒の就職率は数十年ぶりに良くなりました。金融緩和と雇用とは密接に結びついている、当たり前のことが実証された形になりました。

私は、少子高齢化に関しても、やはり金融政策と関係があるものと思います。過去の日本のように、20年近くも、デフレでは、やはり上記のように、経済が結婚と出産・子育てへの最も高いハードルになってしまい、少子高齢化につながるものと思います。

私は、以前少子高齢化とデフレには当然密接な関係があるものと考え、人口減などのグラフと、デフレとの関係を示すものがあるに違いないと思い、いろいろと調べてみましたが、これに関してはいろいろ複雑なことがからみ合っていて、単純な相関関係はありませんでした。

考えれば、生まれたばかりの子どもが、大人になってから、子どもを生むようになるまでには、20年後の時を経てからです。単純に相関関係がはっきりわかるような客観的データはなかなか見つかるものではなかったので、そのようなものは現在もみあたりません。

しかし、自殺者とデフレの関係は完璧に相関関係があります。日本がデフレに入った直後から、それまでは二万人台であった年間の自殺者数が、三万人台に増えました。ところが、デフレの深刻さが減衰した頃からは、また二万人台に戻っています。無論、これには政府の自殺対策による効果もあったとは思われますが、一番は、デフレが深刻さが低減したことによるのが最も大きかったと思います。

自殺者数に関しては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機はこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
堺屋太一氏
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では「団塊の世代」という言葉の生みの親でもある堺屋太一氏が、現代の若者が、「欲ない、夢ない、やる気ない」のいわゆる「3Y」に陥っており、現代日本の最大の危機はこの「3Y」にあるという発言について、現在の若者が3Yになる原因を追求してみました。

その大きな原因の一つが、デフレであると結論づけました。その論拠の一つして、自殺者数の推移をあげました。以下にこの記事から、一部を引用いします。
ところで、自殺者数と景気は相関が高いことが知られていますが、この数年間の経済状況の改善と、さらに自殺対策にここ数年経費を増加させていく方針を採用していることもあり最近は自殺者数が減っています。類似の事例はホームレス対策にもいえ、ホームレス数は景気要因に関わらず対策費の増加に合わせて減少しています。 
自殺者数の減少については、マクロ(景気)とミクロ(自殺対策関連予算の増加スタンス)の両方が功を奏していると考えられます。 
自殺対策関連予算の推移はまとまったデータがないので拾い集めてみると
平成19年 247億円 平成20年 144億円 平成21年 136億 平成22年 140億 平成23年 150億 平成24年 326億 平成25年 340億 平成26年 361億 となってます。


そうして、この記事では以下の書籍を紹介しました。

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

この書籍に関して説明し部分をこの記事から引用します。
この書籍には、経済政策と死者数と間の相関を調べた内容が記載されています。

さて、日本では、現在アベノミクスの是非が話題になっています。世界中どこでも、不況に陥ると経済政策をどのようにするべきか、議論されます。しかし、結局のところ、どのような政策がいいのでしょう。そして、その決断を、イデオロギーや経済理論だけを頼りに行って、本当に良いのでしょうか。 
世界規模の不況に陥ったとき、国ごとに経済政策は異なり、それによって国民の運命も異なる方向に動かされてきました。公衆衛生学者と疫学者である本書の著者は、そのことを利用して政策の優劣を比較しました。つまり、過去の各国の政策選択とその結果のデータを、世界恐慌からソ連崩壊後の不況、アジア通貨危機、そしてサブプライム危機後の大不況まで調査し、比較したのです。 
比較の指標は、国民の生死です。政策の違いによって、国の死者数は増えたのか減ったのか、健康状態や平均寿命などがどう変化したかを比較しました。経済政策は、国の借金返済や構造改革、景気刺激など、さまざまな目的で行われますが、そもそも国民に死を強いるようでは元も子もありません。結果はどうだったのでしょうか。 
著者らの研究によれば、不況下で危険な「緊縮政策」を選択した影響で増加する死亡数は、まさに驚くべきものです。最も悲惨なのは、ソ連崩壊後のロシアで、1990年代に経済政策の失敗により数百万人の男性が死んだ(主に自殺とアルコール関連の死亡)と考えられるといいます。
このロシアの例をみてもわかるように、経済政策が悪ければ、自殺者は増えます。反対に、経済政策が良ければ、自殺者は減ります。やはり、自殺するしないに経済的理由は大いに関係があるのです。

日本でも、深刻なデフレに突入した途端に自殺者が三万人台に増えたということで、これは、ロシアだけでなく、日本にも当てはまっているのははっきりしています。

当然のことながら、少子化も国の経済政策に大きく左右されると思います。ただし、国の経済対策が悪くなったからといって、すぐに人口減になるわけではありません。子どもが生まれて、その子どもが大人になり結婚して子どもをもうけるようになるには、少なくとも20年前後の時を経てからです。しかも、高齢化という問題もあります。他の事象ともからまって、少子化と経済の関係が単純にはっきりわかるようなデータはありません。

しかし、ブログ冒頭の記事でもわかるように、結婚と出産・子育てへの最も高いハードルは、経済的な問題であることから、やはり政府の経済対策なども大きくからんでいると考えるのが妥当です。

特に、デフレがあまり長期にわたって続くと、若い世代は将来に希望を持てなくなります。逆に、ハイパーインフレはもちろん駄目ですが、緩やかなインフレで、緩やかに経済成長していれば、若者は希望が持てます。

考えてみてください、デフレの時代は希望がありませんが、緩やかなインフレで、緩やかに経済毎年数%ずつ経済成長しているとしたら、物価は上がるものの、給料も物価スライド分よりも少しだけは、あがるとしたらどうなりますか。

1年2年では、物価や給料が上がったにしても、ほんの数%ですから、実際の生活者の視点からすれば、誤差に過ぎませんが。20年たつと、給料は二倍くらいになります。物価スライド分を考慮しても、1.5倍くらいにはなるのです。

これは、今の日本では夢のような話ですが、数十年前の日本では当たり前のことでした。誰もが、自分の給料は少しずつながらあがっていくだろうと思っていました。

そうして、それは、同じ会社で同じ職位に20年間とどまっていてもそうなるのです。少し頑張って、職位が上になったり、給料の高いところに転職したりすれば、2倍、3倍、4倍というのも決して夢ではありません。さらに、努力する人にはもっと給料があがる場合だってあり得るのです。こういう状況なら若者も希望が持てます。

このように将来に希望が持てれば、今貧乏であっても、子どもが大きくなるにしたがって、給料が上がることが見込めるので、結婚しようとか、子育てしようという機運が高まるのは当然のことです。

しかし、これがデフレでは、同じ会社に同じ職位に20年間とどまっていたとしたら、給料があがることは絶対にあり得ません。それどころか、ほんの少しずつですが、給料が下がります。20年も、同じ職位にとどまっていたら、下手をすると給料は半分になっているかもしれません。給料をあげるなら、努力に努力を重ねて激烈な競争に勝ち抜いて、なるべく上の職位につくしかありません。それどころか、いつリストラされないとも限りません。こんな状況では、若者は結婚しようとか、子育てしようという気になれないのは当然のことです。これが、少子化に長期的に結びつくのは明らかです。

なお、少子化の問題というと、すぐにフランスの例がだされたりします。以下にフランスが実施している出産・子育て支援の内容を掲載します。

1. 妊娠・出産手当(妊娠5ヶ月~出産)・・・すべての費用について保険適用 
2. 乳幼児手当(妊娠5ヶ月~生後3歳)・・・子ども1人あたり約23,000円/月 
3. 家族手当・・・子ども2人で約16,000円/月。1人増す毎に約20600円/月追加(20歳までの支給) 
4. 家族手当補足・・・子ども3人以上の1人ごとに約15,000円/月 
5. 新学期手当(小学生~)・・・約29,000円/年 
6. 産後の母親の運動療法・・・保険全額支給 
7. 双子もしくは子ども3人以上など・・・家事代行格安派遣(1~2度/週) 
8. 片親手当・・・子ども1人で約76,000円、1人増えるごとに約19,000円/月
これは、確かに良い政策だとは思います。しかし、日本で現在この制度を導入したからといって、フランスのようにすぐに少子化が改善されるとは思えません。フランスがこのような制度を導入して成功した頃には、無論フランス経済はデフレではありませんでした。日本とは異なり、緩やかに成長していました。

この制度があったにしても、今の結婚適齢期の男女はすっかりデフレ脳になっていて、将来に希望をもてません。将来に希望の持てない、若者たちに対して、このような手厚い支援をしたとしても、すぐに効果がでるどころか、ほんの少し良くはなるかもしれませんが、すぐにもとに戻ってしまいます。

なぜなら、日本は、まだデフレから完璧に脱却しきっていないからです。デフレから脱却して、緩やかなインフレになり、多くの人々が緩やかなインフレはこれからもしばらく続くだろうと、認識するようにならないと、少子化の傾向は継続することになります。

そうして、上記の制度を導入することを条件に、増税ということにでもなれば、若者はますます将来に希望が持てなくなり、この制度が導入されたとしても、少子化は緩和されるどころかさらに促進されることになります。

日銀は未だ物価目標を達成していません。まずは、この物価目標を達成した上で、その状態がしばらく続くと多くの人が認識するようになるまで緩和を続けなければなりません。

それと同時に、フランスの例のような手厚い支援をするようにすれば、それでも5年、10年してからようやっと少子高齢化が緩和され、人口が増えるようになることでしょう。

無論、経済がまともになったして、支援策を充実したとしても、個々の様々な問題は存在し続けるとは思います。しかし、マクロ的にみれば、そのような事例は少数で確実に少子化傾向に歯止めがかかります。個々の問題は、経済の問題ではなく、その他のカウンセリングなどの対策によって救済されるべきものです。

いずれにせよ、経済が緩やかにでも成長するようになっていなければ、少子高齢化問題は、解消しません。

黒田総裁は会談後「次回(9月20、21日)の金融政策決定会合で(金融政策の)総括的な検証をするとしていますが、物価目標も達成できない現在、マイナス金利などの質的緩和の深掘りなどではなく、追加金融緩和を実施すべきです。そうでなければ、直接その影響が見えないかもしれませんが、少子化問題にも少なからず悪影響を及ばすことになります。

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2016年9月17日土曜日

「尖閣は台湾のもの?」“二重国籍”蓮舫新代表が知っておくべき日本と台湾の対立点―【私の論評】南京・尖閣問題で台湾は決して親日ではない(゚д゚)!


民進党代表決定の名前を呼ばれる直前にハンカチで目頭を押さえる 蓮舫新代表=9月15日
■二重国籍の問題点とは?

  「二重国籍」という批判を浴びながらも蓮舫参議院議員は民進党の新代表に就任した。「生まれてからずっと日本人」という意識を持つという蓮舫氏からすれば、不本意だろうが、二重国籍が問題視される理由の一つは、「利益相反」の問題があるからだ。

たしかに台湾には親日的な方が多い。東日本大震災のあとなどに温かい支援をしてくれたことへの感謝の念を日本人は忘れてはいけない。

しかし一方で、日本と台湾には対立点も存在する。

尖閣諸島である。

台湾は、戦後のある時期から「尖閣諸島は我々のものだ」と主張をしており、今もその立場を変えていない。

尖閣問題というと、対中国(中華人民共和国)のことを想定しがちだが、台湾もまたこの問題に絡んでいるのだ。

彼らはいかなる主張をしているのか。

それはどのくらいの「無理筋」なのか。

公文書研究の第一人者である有馬哲夫氏が、第一次資料をもとに歴史問題の真実を解き明かした新著『歴史問題の正解』の「第11章 尖閣諸島は間違いなく日本の領土である」から一部を抜粋、引用してみよう。

***

■尖閣諸島問題の起源

考資料:[出典]防衛省のレポート「尖閣諸島について」(2015年3月)

アメリカは、沖縄を日本に復帰させるにあたって次の二つの選択を求められた。尖閣諸島を沖縄の一部と認め、日本に復帰させるのか、それとも沖縄の一部とは認めず、保留し、帰属のことは日本と台湾の間の議論に任せるのか。ここにおいて、尖閣諸島の議論は、沖縄復帰と直接的に結びついていた。

テレビなどでは、尖閣諸島が1895年から日本領とされて、所有者もいることをしばしば指摘し、それをもって尖閣諸島が日本の領土だと報じている。

だが、日本は第二次世界大戦に敗れてポツダム宣言を受諾し、さらにサンフランシスコ講和条約によって沖縄をアメリカの統治に委ねたのだから、沖縄復帰のときに、これらの島々が日本に復帰させるべき領土とされていなければ、それ以前の領有や所有の実態は、あまり意味を持たない。それは、ポツダム宣言によって日本が放棄させられた千島列島(ただし北方四島は除く)などの場合と同じだ。

したがって尖閣諸島をめぐる議論は、やはり沖縄復帰に関するものとして考えるべきである。そして、以下で見ていく文書の内容からしても、日本―アメリカ―台湾の間のものだったといえる。たしかに、中国も日本とアメリカが沖縄復帰で合意したあとの1970年12月3日になって初めて尖閣諸島の領有権を主張しているが、これについてはアメリカはなんら考慮に値する根拠が挙げられていないと判断している。したがって、台湾の主張を退けることができれば、「尖閣諸島は台湾のものであり、台湾は中国のもので、したがって尖閣諸島は中国のものだ」という中国の三段論法も退けることができる。

■歴史無視の主張

歴史問題の正解 (新潮新書)


そこで、まず、台湾側が沖縄復帰のときにアメリカ側に対してどんな申し入れを行っていたのか、その主張の根拠がどのようなものだったかを見てみよう。

台湾はアメリカに対しどのような根拠でこのような申し入れをおこなったのか。それを示すのが1971年3月15日に駐米の台湾大使がアメリカ国務省に赴き、口頭で台湾の尖閣諸島に対する要求を伝えたうえで渡した文書(尖閣文書)だ。以下はその要旨である。

(1)15世紀の明の時代から琉球に冊封使を送っているが、その使節団の旅行記にとくに釣魚台(魚釣島)、黄尾嶼(久場島)、赤尾嶼(大正島)の3島のことが詳しく記されている。その記述によれば、これらの島々は台湾と琉球の境界線と考えられてきた。

(2)釣魚台列嶼(尖閣諸島のこと)の地質学的構造は台湾のものと似ていて、地理的にも台湾と隣接している。だが、沖縄からは200マイル以上も離れている。

(3)釣魚台列嶼(尖閣諸島)は、長年に渡って台湾漁民の漁場だった。彼らはこれらの島を、嵐を避けるためや船や漁具を修理するために使ってきた。

(4)日本政府は釣魚台列嶼(尖閣諸島)を1894年以前(つまり日清戦争以前)には沖縄県に編入していなかった。この編入は日清戦争のあと中国による台湾と澎湖島の割譲の結果起こっている。

第二次世界大戦の終結後、サンフランシスコ講和条約によって、釣魚台列嶼(尖閣諸島)もアメリカの軍事的占領下に入った。中華民国政府は、この地域の安全保障への配慮から、これまでアメリカの軍事的占領に異議を唱えなかった。だが、これは釣魚台列嶼(尖閣諸島)が琉球の一部であることを中華民国政府が黙認したと解釈されるべきではない。

これら歴史、地質、地理、使用実態、国際法上の理由により、釣魚台列嶼(尖閣諸島)は台湾と関係が深く、台湾に付属する、あるいは帰属するものとして扱われるべきである。

1972年にアメリカによる琉球諸島の占領が終結するにあたり、アメリカ政府は中華民国の釣魚台列嶼(尖閣諸島)に対する主権を尊重し、これらの島々を中華民国のために留保すべきである。

以上が、台湾がアメリカ政府に対して行った申し入れの要約である。筆者は、主旨を歪めるような夾雑物は一切入れていないし、日本側にとって不利な点を隠すこともしていない。したがって、この内容が理にかなっていないとすれば、台湾の領有権の主張そのものが理にかなっていないことになる。そして、この要約からも、これまで政府関係者やマスコミから私たちが知らされていた以上におかしなことを台湾が述べていたことがわかる。

■台湾の主張のどこがおかしいか

(1)冊封使の旅行記にしばしば登場し、彼らによって沖縄と台湾の境界線の島々だと考えられていたからといって、尖閣諸島が台湾の一部であるということにはならない。統治とも実効支配ともなんら関係がないからだ。

(2)大陸棚条約などを意識したものだろうが、1895年以降日本が領有していた歴史的事実がある以上、地質学的に台湾に近似していても、地理的に台湾に近くても、それは主権とは関係のない議論だといわざるを得ない。

(3)島々で嵐を避けたり、船や漁具を修理したりしたから(アメリカの沖縄統治時代のことをいっていると思われる)といってそれが実効支配の実績とはならない。そもそも、日本はそれを不法行為として取り締まるよう琉球列島アメリカ民政府に再三要求している。

(4)日清戦争を終結させた下関条約には、尖閣諸島を日本に割譲するとは記されていない。もし、割譲したのなら、カイロ宣言の条項(日本は台湾と澎湖島を中華民国に返還する)を履行すべしとしたポツダム宣言第8条に基づき、日本は尖閣諸島を、中華民国(つまり現在の台湾)に返還しなければならないが、そうではなかった。

尖閣諸島は日本が清から台湾の一部として割譲を受けて沖縄県に編入されたのではなく、日清戦争以前から実効支配していたものを日清戦争と同じ時期に沖縄県に編入したのに過ぎない。

***

同書では、より細かい日、米、台の主張について検討されているが、ここでは割愛する。

結論からいえば、当然のことながら、アメリカはこうした主張を相手にしなかった。

1970年9月10日、アメリカ国務省のスポークスマンは、記者団の質問に答える形で、「佐藤・ニクソン合意に沿って尖閣諸島を日本に復帰させる」と言明している。

また、ヒラリー・クリントン国務長官が「改めてはっきりいいたい。尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の範囲に入る。日本国民を守る義務を重視している」と述べたのも記憶に新しいところだ(2010年10月27日)

蓮舫氏が、彼女に懐疑的な目を向ける人たちから信頼を得るには、こうした歴史問題の「正解」を学んだうえで、高い説明能力を活用して主張していくのは有効な手となりうるだろう。ただし、それは彼女に向けられている「経歴詐称」という批判に対してはあまり意味を持たないかもしれないが。

【私の論評】南京・尖閣問題で台湾は決して親日ではない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事に掲載されている台湾の主張は、台湾の蔡英文・民進党政権になっても基本的に引き継がれているものです。ブログ冒頭の記事にも掲載されているように、確かに台湾には親日的な人も多いことは事実です。しかし、台湾と日本とは利益が相反しているのも事実です。

昨年の台湾で挙行された「対日戦争勝利パレード」
台湾は昨年は大々的に「対日戦争勝利パレード」を挙行しました。中華人民共和国も、「抗日戦争勝利軍事パレード」を行ったことはこのブログにも掲載したことがあります。

そうして、その記事の中では、現在の中華人民共和国は日本と一度も戦争をしたことなどなく、戦争したのは、後に台湾に逃げ込んた、蒋介石率いる中華民国の国民党軍であることを示し、そもそも中華人民共和国が「抗日戦争勝利軍事パレード」を催すこと自体が噴飯ものであることを掲載しました。

そうして、台湾による「対日戦争勝利パレード」を台湾が挙行するのも、同じく噴飯ものと言って良いです。なぜなら、中華民国の国民党軍は、日本と戦争して負け続けていました。その日本は、大東亜戦争に破れ日本軍は中国大陸からも、台湾からも退きました。

その後、国民党軍は、毛沢東率いる共産党軍と戦うことになったのですが、これに惨敗して台湾に逃れました。だから、台湾も「対日戦争勝利パレード」を祝うこと事態が、全くおかしなことなのです。

この記事では、中華人民共和国が、わざわざ噴飯ものの「抗日戦争勝利軍事パレード」を挙行するのは、中国共産党政府の統治の正当性が脆弱なので、歴史を修正して、日本を悪者に仕立て、人民の怒りを日本に向けて、自分たちの統治の正当性を強調するためであることを掲載しました。

台湾における軍事パレードも似たようものであり、国民党軍は一度も日本軍に勝利をしたことなどありません。現実は、日本軍に負け、中国共産党軍に負け、台湾に逃れたのであり、断じて日本と戦争をして勝ったわけではありません。

結局のところ、台湾も中華人民共和国と同じく、日本を悪者に仕立てて、統治の正当性を高めるためにこのような軍事パレードを挙行するのです。

蒋介石が率いた中華民国国民党軍

蔡英文総統は、本省人だからなのでしょうか、今年は大々的な「軍事パレード」はなかったようです。台湾では9月3日が、軍人節です。政府が同日を休日として対日勝利を祝ったことが起源です。1946年に抗日戦争勝利記念日に定められた後、1955年に現在の軍人節に改称されています。

ちなみに、本省人とは戦前から台湾に移住して住んでいる人達の事です。本省人には2種類あり、福建系(ほとんど)と客家系(少数)にわかれます。本省人(福建)は台湾語を話し、本省人(客家)は客家語を話します。

台湾は日本などとは異なり、多民族国家です。本省人の他に、外省人とは戦後に中国大陸からやってきて台湾に移住した人達のことです。

当時中国大陸で国民党と共産党の内戦があり、国民党は負けたので台湾に逃れました。元々は大陸に戻るつもりでしたが、大陸の中国共産党政府が強大になったため、その機会はなくなり、今でもその子孫も含めて台湾に残っています。彼らは、中国語を話し、台湾語は話せません。本省人と外省人の他に、元々台湾に住んでいた現地人もいます。

毛沢東の紅軍、後に人民解放軍と改名
台湾といえばネット等では「親日的」とされるのが常ですが、すべての人がそうではなく、特に外省人などは大陸中国に近い反日的な人間も多いです。また、本省人や現地人の中には、親日的な人も多いようですが、心からそう思っている訳ではなく一種の処世術でそうしている人も多いようです。しかし、そうはいっても、ある一定数の親日的な人々は確実に存在します。また、日本に無関心な人も多いです。これは、否定できません。

現在の台湾は国連に加盟しておらず国家として承認しているのはごく少数に留まっています。戦後すぐに急速な経済成長を遂げた台湾に対して、中国は大躍進・文化大革命の相次ぐ失敗で荒廃しいました。

そのため、中国人が海峡を渡って台湾に亡命する事も多かったものです。ところが、80年代にニクソン訪中をきっかけに急速な経済成長が始まり、あっという間に台湾を抜き去りました。とはいっても、それは全体のGDPだけの話ではあります。

日本、台湾、中国の一人あたりGDPは以下のような状況です。(単位:USドル)
日本   32,485.55 
台湾   22,287.56 
中国    7,989.72
それにしても、国全体では大陸中国は、台湾を圧倒するようになりました。それまで日本に好意的では無かった台湾が急に「親日的」になったのは、この頃からであり、苦境を乗り切るための国家戦略とも取れます。これは、大陸中国の脅威もありやむを得ないことであったかもしれません。

80年代以前の台湾は韓国や大陸中国と同じく、従軍慰安婦や日本の侵略を非難していました。ただし、その当時の反日活動は、今日の韓国や大陸中国のように、執拗で質の悪いものではありませんでしたが、当時は大陸中国も、韓国も、台湾も反日的であったのは事実です。

台湾には大きく分けて台湾独立を志向する政党と、中国による台湾統一を志向する政党、台湾による中国統一を志向する政党が存在します。

国民の考えもほぼこの3通りに集約されています。

1945年から1989年まで台湾を乗っ取っていた軍事独裁政権は台湾による中国統一を目指していましたが、最早これは非現実的です。

1989年から台湾では野党の存在が認められ、政権交代が起きるようになりました。独裁政権から民主的な制度に移行し、政治が混乱しました。同じようなことは、フィリピン、韓国でも発生しました。

台湾では、国民党の単独政権が終わってから、ネコの目のように政権がクルクル変わり、その度に極度に混乱しました。これは、皆さんがご存知の、日本における民主党の整形交代以上のものでした。

1990年代を通じて国民党の力は衰えていき、2000年の総統選挙では民進党の陳水扁が当選し、一党支配が終わりました。

民進党は台湾独立を掲げる左派政党で人気が高かったのですが、政権掌握後の政治腐敗から2008年総統選挙で負け在野しました。

代わって返り咲いたのが「中国との統一」を掲げる国民党でしたが、「中国に統一される事」を志向していました。今年は政権交代があって、5月20日に蔡英文主席率いる民進党政権が発足したのです。

蔡英文総統
台湾による中国統一、あるいは台湾独立派が政権に就いている間、日本との関係を重視する姿勢が見られました。

中国と台湾は人口比で約60倍もあり、経済力は20倍なのでアメリカの後ろ盾と、日本の支援が絶対必要である。

だが台湾が中国に統一され「祖国復帰」を果たすなら、中国と敵対する日本は敵であり、アメリカも敵ということになります。

統一を志向する国民党の政権の時代は、このように微妙で不安定な立場にあり、常に言動が揺れ動いていました。

例えば台湾は、対立している筈の中国が創設した「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に真っ先に参加を表明して断られていました。

なお台湾は日本が創設した「アジア開発銀行」(ADB)には1966年の発足時から加盟しています。

民進党の前の国民党政権の馬英九総統は中国の習近平政権に近い立場を取っており、結びつきを深めようとしていました。

中国は過去には日中戦争や日華事変で台湾軍(中華民国軍)が果たした役割りを絶対に認めませんでしたが、馬英九政権のときには「中国軍の一部として」認めるようになっていました。これは、先に述べたように、歴史の修正であり、全くの詭弁なのですが、台湾が果たした抗日戦争を評価したのです。

しかし、台湾は中国への対抗意識からこの論法を受け入れず、日本軍と第二次大戦で戦ったのは台湾軍であると鼓舞していました。

昨年の軍事パレードには戦闘機に日本軍機を撃墜した事を示す、撃墜マークを描いた機体を並べて対日戦勝パレードを開催しました。

そうして、日本と台湾には決して親密になれない理由があります。それは現在も大陸中国と台湾が「30万人(100万人とも言っている)の南京市民が犠牲になった」と主張する南京事件があるからです。

『南京事件』は当時の新聞に、国民党軍(現在の台湾軍)が南京を去るとき8万人の市民を犠牲にした、と記載しています。南京虐殺の真実は、南京では通常の戦闘ではなく、異常な戦闘が行われたということです。

なぜ、異常な戦闘になったかといえば、国民党政府軍軍事委員長・蒋介石が戦いの途中で麾下の数万の兵士を置き去りにして高級将校とともに南京から逃げたからです。この時蒋は督戦隊を残して逃亡しています。

督戦隊とは、逃げる兵士を撃ち殺す部隊のことです。そのため、南京市内の国民党軍兵士は逃げるに逃げられなかったのです。

1937年(昭和12年)12月13日に日本軍は南京城に入城しました。当時毛沢東の共産党軍は南京にはおらず、大陸中国の奥地を逃げまわっていました。日本軍は開城を勧告したが応じなかったというか、司令官も存在せず督戦隊が存在したので、国民党軍兵士は降伏することができませんせんでしたので攻城戦となりました。

そうして、日本軍に包囲され、指揮官を失い、逃げ道を失った彼らは、投降するより軍服を脱ぎ捨てて便衣を着て民間人になりすましたのです。南京入した日本軍は、脱ぎ捨てられたおびたたしい数の国民党軍の軍服を発見しました。

日本軍は当惑しました。南京市内には一般市民がいる。彼らと便衣を着て、一般市民になりすましている便衣兵とを見分けるのは難しいです。

結局当時の中支那方面軍司令官の松井石根大将は、便衣兵の掃蕩作戦を行わざるを得ませんでした。そうして、掃蕩した便衣兵の中には、一般中国人が含まれていた可能性は否定できません。ただし、この人数が20万人〜30万人というのは、虚構にすぎません。

日本軍の南京入場
松井石根大将は、この事件のため戦後に極東軍事裁判において死刑になっています。しかし、この事件の大元の責任者である、蒋介石と高級将校たちには、いっさい何の罪にも問われていません。

南京に蒋介石が残っていたら、あるい蒋介石ではなくとも、高級将校が一人でも残っていて、日本軍に降伏していたら、あるいは南京の国民党軍がはやめに全員が南京から逃れていたら事態は混乱せず、日本軍が便衣兵を処刑する必要もなかったはずです。

この所業は、どこの国においても、とんでもない敵前逃亡です。国民党としては、この事実を隠蔽したかったのでしょう。すべての責任を日本軍押し付け「日本軍による市民大量虐殺」という虚構を作り出し、今に至っています。

これが南京事件です、後に台湾に逃げ込んだ蒋介石や国民党軍の幹部としては、南京の敵前逃亡を台湾の国民に知られてしまえば、それこそ統治の正当性が疑われしまいます。たでから、自分たちの卑怯な敵前逃亡を有耶無耶にするため、南京大虐殺という虚妄を作り出し、自分たちの所業を隠蔽したのです。

現在の外省人で、特に国民党関係者や国民党だった人々を先祖に持つ人達は、このような事実を明るみだされるのは、自分たちにとって都合が悪いのでしょう。結局、大陸中国と同じく「南京大虐殺」という虚妄を虚妄とは認めません。

そして現在まで台湾、中国ともに「日本軍が南京事件を起こした最高責任者」という歴史の修正を改めようとはしていません。日本が台湾を国家として正式に認めない本当の理由は、おそらくこの辺にあると思います。

重ねて言いますが、台湾に親日派の人が大勢いることは事実です。しかし、そうではない人も大勢いるというのも事実です。

さて、先に述べたように、台湾では今年は政権交代があって、5月20日に蔡英文総統率いる民進党政権が発足しました。

しかしながら、この政権も、尖閣は台湾領であるとする主張は変えていません。それに、南京虐殺に関しても、その主張は今でも大陸中国と変わりません。

ブログ冒頭の記事と同じく、台湾には、尖閣の領有と南京虐殺に関しては、日本と「利益が相反」する層が少なからず存在するのは間違いありません。それも、一般国民だけではなく、国会議員、司法関係、その他枢要な地位にある人々の中にも存在するのです。

このような国である、台湾籍を持った蓮舫氏が日本の野党第一党である、民進党の代表になったのです。

これは、本当に信じがたい出来事です。利益相反する外国籍を持っていることがはっきりわかっているのに何の対処もせず蓮舫氏を代表に選んでしまった民進党。危機管理能力ゼロの謗りは免れません。

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2016年9月16日金曜日

民進党 新代表に蓮舫氏 与野党の反応―【私の論評】蓮舫氏に新たな危機?台湾が安々と国籍を除籍するとは限らない(゚д゚)!

民進党 新代表に蓮舫氏 与野党の反応




民進党の新しい代表に蓮舫氏が決まったことについて、与野党の反応です。

自民

自民党の二階幹事長は、党本部で記者団に対し、「蓮舫新代表が、予想どおり、圧勝して選ばれたことは、民進党という党の安定から言って、大変結構なことだったのではないか。与党、野党の立場はあるが、われわれは、日本のため、国民のために、ともに手を携えて頑張らなければいけない使命があるのだから、お互いに協力し合っていければよいと思う」と述べました。一方、二階氏は、蓮舫氏の、いわゆる「二重国籍」問題について、「これだけ国際社会が進んでいる時代なのだから、蓮舫氏自身が、自分は何らやましい点はない、日本人だということで、これからご活躍をいただくのであれば、それはそれで、結構ではないか。この問題を取り上げるつもりはない」と述べました。

公明

公明党の山口代表は、国会内で記者団に対し、「野党が受け止めるべき民意もあり、健全な野党が存在することは民主主義の価値を高める。蓮舫新代表は、批判よりも提案を重視したいと言っているので、国会では建設的な立場で具体的な政策を提案してもらい、論議を深めたい。女性活躍の時代を体現する新代表として活躍を期待したい」と述べました。一方、山口氏は、蓮舫氏の、いわゆる「二重国籍」の問題について、「本人が説明責任を尽くすことが大切だし、民進党として国民にどう説明するかということも問われている」と述べました。

共産

共産党の志位委員長は、党本部で記者団に対し、「蓮舫新代表に、まずエールを送りたい。参議院選挙で大きな成果をあげた野党と市民の共闘を、次の衆議院選挙でも大きく発展させたい。来月行われる2つの衆議院の補欠選挙は、大変、大事な戦いであり、衆議院選挙に向けた前哨戦という位置づけにもなってくる。野党共闘を実現し、勝利を勝ち取るという立場で民進党と話し合っていきたい」と述べました。また、志位氏は、蓮舫氏のいわゆる「二重国籍」問題について、「本人も反省の弁を述べており、それ以上私が言うことは無い」と述べました。

維新

日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で、「いわゆる『二重国籍』の問題については、国民がスッと思えるような状況ではなく、蓮舫新代表は国民への説明責任を果たすべきだ。説明責任を果たさないまま、今後、国会で、政府やほかの政党に注文をつけていくのは、いささか疑問だ」と述べました。そのうえで、馬場氏は、「私たちが今後、議員立法で提出していく法案などで賛否が合致すれば、民進党と国会で共闘していくのは、やぶさかではない」と述べました。

生活

生活の党の小沢代表は、「蓮舫氏の、党代表としての活躍を大いに期待している。何より、『一強多弱』により議会制民主主義が崩壊寸前まで追い詰められている状況で、何としても早期に安倍政権を打倒し、再び健全な民主主義を回復させるべく、野党共闘の更なる推進のために奮闘していただきたい」とする談話を発表しました。
社民

社民党の又市幹事長は、「民進党の目指す政権交代を実現するためにも、衆議院選挙での野党共闘の継承・発展が不可欠だ。社民党をはじめ、ほかの野党と手を携え、安倍政治の暴走に正面から対じして、多くの国民の期待に応えるように希望するとともに衆議院の小選挙区選挙でのすみ分けをはじめとする選挙協力の前進を図りたい」などとする談話を発表しました。

こころ

日本のこころを大切にする党の中野正志幹事長は、「蓮舫氏の、二重国籍の問題とその対応には失望の念を禁じ得ない。蓮舫氏が、代表選の最中に虚偽の説明を繰り返してきたこと自体看過し難い問題だが、民進党の、党としての対応も理解に苦しむ。臨時国会では、二重国籍の問題を徹底的に議論し、しかるべき立法を講じなければならず、わが党はその最前線でたたかう覚悟だ」とする談話を発表しました。

【私の論評】蓮舫氏に新たな危機?台湾が安々と国籍を除籍するとは限らない(゚д゚)!


野党・国民党議員団の廖国棟・総召
台北 14日 中央社によりますと、立法院(日本の国会にあたる)で13日、野党・国民党議員団の廖国棟・総召(院内総務に相当)は、日本の民進党の蓮舫代表代行が、日本と台湾とのいわゆる「二重国籍」疑惑において、「台湾は国ではない」と発言したとする台湾メディアの報道を引用し、政府は蓮舫氏に抗議するよう台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表(大使に相当)に訓令を出すべきだと主張しました。

13日、すでに放棄したと説明していた中華民国(台湾)籍の保有を明らかにした蓮舫氏。11日の記者会見では、「一つの中国」論で言ったときに、二重国籍とメディアが使うことに驚いていると述べてましたた。一方、廖氏が引用した自由時報の記事は13日午後現在削除されています。 

台北駐日経済文化代表処 謝長廷代表
廖氏の要求に対し、李大維・外交部長(外相)は、謝氏は国が任命した代表であり、必ず適切な措置を取ると強調。訓令の必要はないとの認識を示した。謝氏は2013年、中国大陸のプロテニス選手・彭帥氏が「台湾は国でない」と発言した際、「私の国の名は中華民国」などと反論していました。

また、廖氏は、蓮舫氏が万が一日本の首相になったとしても、政府はまだ「親日」的な外交政策をとるのかと批判。李部長は、政策はずっと国家と人民の利益を基礎としており、特定の国に偏ることはないと強調しました。 

李大維・外交部長(外相
蓮舫氏は8日、日本メディアのインタビューで、日本が中華民国と断交した1972年以降、自身の国籍は形式上「中国」になっていると指摘。仮に中国(「中華人民共和国」)の法律が適用された場合、外国籍(日本籍)を取得した時点で「中国」の国籍を自動的に喪失しているため、二重国籍には当たらないと主張しています。

また、日本と台湾は国交がないため、台湾籍を保有していても、法的に二重国籍と認定されることはないとの見解も示していました。

しかし、蓮舫氏が二重国籍であることは、この台湾の動きをみていても明らかです。

日本の与野党の反応は、ブログ冒頭の記事で論が別れるようですが、特に今回の二重国籍問題を大きな問題と捉えない人の発言は、とんでもない発言です。

事は蓮舫氏個人の問題ではありません。蓮舫氏現在そうして、過去の立場の問題です。日本の国会議員、閣僚、さらに政権交代をすれば首相になる可能性もある、野党第一党の代表に関わる問題です。

これは、しっかりとして旗幟を鮮明にした発言をすべきでしょう。自民党の二階幹事長の発言など本当に問題外です。公明、維新、こころ以外の野党の発言も非常に問題です。

このような発言、結局のところ国籍法という法律があることを全く念頭に置いていません。国会議員はもとより、野党第一党の代表が法律を無視して良いはずがありません。そんなことを許容すれば、法治国家としての根底が揺るがされかねません。

それにしても、蓮舫氏本人もそうなのですが、どうも日本の国会議員も台湾の実体を良く解っていないようです。

以下にそれを示すこのブログの過去の記事を掲載します。
【日本で報道されない激レアニュース】台湾訪問中の中共高官2人、相次ぎ刑事告訴される―及び腰日本はなぜこのようなことをしないのか?

この記事は、2010年9月20日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
中国宗教事務局の王作安・局長は、先週15日に台湾を訪問した際、台湾法輪大法学会に、法輪功への集団弾圧を陣頭指揮した罪で告訴された。前日の14日、台湾を訪問中の陝西省趙正永・代理省長が同団体に刑事告訴されたばかり。 
台湾法輪大法学会は、台湾の高等裁判所の検察署にジェノサイドと民権公約違反の罪状で二人をそれぞれ刑事告訴し、身柄拘束を要求した。同検察署は訴状を受理した。 
また、趙正永・省長について、同弁護士は同被告人は所轄地区で法輪功愛好者への拷問を命じたり、法輪功への怨恨感情を煽ぎたてる宣伝を行ったりして、積極的に弾圧の陣頭指揮を取ったなどと陳述した。

「法輪功迫害真相調査連盟(CIPFG)」アジア調査団の団長で、立法院(国会にあたる)議員・頼清徳氏は、二人の台湾訪問について、「中共高官の訪問に関して、わが政府はその人権問題に関する前歴を把握した上で訪問を受け入れるかどうかを判断すべき。そうしないと、社会の正義良識を誤って誘導する恐れがある」と述べた。
この二人の台湾訪問中の中国高官は、このように法輪功の愛好者らに訴えられました。そうしてこの二人は、一時台湾当局に拘束されたはずです。その後、特にこのニュースに関しては、報道されないので、拘束は解かれて、中国に戻ったものと思います。

台湾の桃園空港で法輪功愛好者から訴状を
手渡されて険しい表情となった趙正永・代理省長
それにしても、何と大胆ではありませんか。この二人の高官は、無論のこと台湾国籍を持っているわけではありません。それを法輪功愛好者が訴えたため、台湾司法当局がそれを受理し、裁判のため一時勾留したということです。

中華民国からすれば、中華人民共和国の高官二人は、いわば外国人です。それを自国の国民が裁判訴えたので、それを受理し、さら高官二人を裁判のため拘束したというのですから、ものすごい根性です。

実は、習近平も初めて米国を訪問したときには、米国の法輪功愛好者らに訴えられ拘束されるかもしれないことをかなり恐れていたそうです。その後何度か、訪問するにつれてその恐怖は薄れたようです。

さて、米国でもなかなか出来ないこのようなことをする台湾当局です。さすがに、台湾は、中華人民共和国の圧力に屈することなく、日々独立を貫いている国です。気構え、心構えが平和ボケした日本とは根本から違うのでしょう。

ちなみに、法輪功(ファルンゴン)は法輪大法とも呼ばれ、気功によって健康を維持すると同時に、「真・善・忍」の原則を生活で実践して精神の向上を図る、中国の伝統的な身心鍛練法です。1992年5月に創始者の李洪志氏によって伝えだされ、優れた健康維持効果で速やかに中国本土で広がりました。

中共悪魔の所業:法輪功信者から臓器摘出し
販売、さらに人体剥製を作り世界中で展示・販売。
1999年7月に中国当局に弾圧されるまで、愛好者は1億人に上ったと推定されています。法輪功の公式サイトは、10年間に及ぶ弾圧によって少なくとも3400人が拷問などで死亡、数十万人が投獄されていると発表しました。法輪功愛好者らへの迫害は、世界中の人権愛護団体等から厳しく批判されています。

さて、このような台湾です。蓮舫氏は台湾籍の除籍手続をして、それが終了したら「二重国籍」問題は速やかに集結とみているようです。

しかし、事はそのような簡単なのでしょうか。台湾人には、当然のことながら、台湾の国籍法が適用されるのです。今までもそうだったし、蓮舫氏もそう理解していたから、台湾代表処に対して除籍の手続きをしたのでしょう。

蓮舫氏は日本の企業との間で貿易業を営んでいた台湾人の父・謝哲信と、「ミス・シセイドウ」だった日本人の母・斉藤桂子のハーフの長女として東京都で生まれました。出生時の中華民国籍であり、のちに日本国籍を取得し台湾籍と多重国籍となっています。

台湾政府のほうからみれば、蓮舫氏は台湾籍の台湾人以外の何者でもないわけです。台湾籍を除籍しないかぎり、台湾の法律が適用されるわけです。

その台湾人が、いつの間にか外国で国会議員になり、二重国籍が発覚したときには「台湾は国ではない」などと発言し、今度は野党第一党の代表となったわけです。

これでは、野党・国民党議員団の廖国棟・総召の発言も理解できるわけです。私自身は、どう考えても、台湾政府が、蓮舫氏の除籍の手続きがあったからといって、すぐにすんなりと、除籍するとも思えないのです。

台湾政府が除籍しない限り、蓮舫氏は台湾人であり、台湾政府や台湾の法律に従う義務があるのです。

蓮舫氏は、「台湾の籍を抜くときに、提出書類に台湾のパスポートが必要とありました。これが、どこにあるのかがまったくわからない。 31年前のパスポートで、母もすべて父に任せていて、わからないんです。 一緒に、家の中をひっくり返すように探して、やっとでてきました」としています。 (BuzzFeed Japan 9月13日)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160913-00010004-bfj-pol

中華民国、日本国それぞれの旅券。蓮舫氏はこの2つを所持していた。

「BuzzFeed Japan」 の記事によると、蓮舫氏は、日本にある台湾の出先機関に自分のパスポートを提出したことを書いています。ではこの提出はいつかというと、9月6日であることがネット上の記事で確認できます。

台湾政府としては、最低限蓮舫氏本人からの事情聴取をするのではないかと思います。場合によっては、台湾の法廷に召喚されるということもあり得るかもしれません。そうなったとき、一体どうなるのでしょうか。

私自身は、台湾政府はすんなりと、蓮舫氏の国籍を除籍するとは思えません。

民進党代表戦で代表になることが決まった蓮舫氏
蓮舫氏は未だ除籍手続きが完了しておらず、代表選で勝利したため、台湾籍を持った党代表が誕生してしまいました。事態は、蓮舫氏や民主党の幹部などが思っている以上に深刻
だと思います。蓮舫代表の就任後に、台湾政府との間に何かがあり、代表不在のときに衆院解散があったりしたら、民主党はアウトかもしれません。

このような危機があり得ることを蓮舫氏は自覚しているのでしょうか。国籍の持つ意味は、蓮舫氏が考えているよりはるかに重いと思います。

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2016年9月15日木曜日

都議会自民“崖っぷち” 豊洲移転の延期追及から一転…世論は小池氏支持―【私の論評】ローカルでは信じられない程いい加減なことが!東京もその例外ではなかった?


内田繁氏と小池知事 写真・チャートはブログ管理人挿入 以下同じ
「都議会のドン」こと内田茂都議率いる、都議会自民党が窮地に陥っている。土壌汚染対策の決め手となる「盛り土」が一部実施されていなかった豊洲新市場(東京都江東区)について、都側の主張に沿って「安全対策は万全」として、築地市場(中央区)からの移転推進の先頭に立ってきたからだ。会派幹部らは、都職員らの「独断」「隠蔽」「虚偽説明」を責め立てているが、最大会派のチェック機能に問題はなかったのか。

28日開会の定例議会を控え、都議会が慌ただしくなっている。

各会派は続々と豊洲新市場の視察を行っており、14日は公明党都議団が現地入りする。職員の都議会への出入りも、これまでにないほど激しくなっており、都庁内には、災害や非常事態のような緊張感もみられる。

そんななか、都議会自民党は14日午後、緊急の勉強会を開催し、土壌汚染対策の最新状況について、都側から報告を受ける予定だ。移転を強力に推進してきただけに、自民党都議が職員を厳しく糾弾する可能性もある。

実際、フジテレビは13日、担当部署の現在の幹部らが「盛り土」が行われていないことを把握しながら、伝達をしていなかったと報じている。職員に対する恨み節は当然といえる。

土壌対策として本来なされるべきであった盛り土についてチャートを用いて説明する小池東京都知事

 だが、豊洲新市場への移転は、都議会自民党が石原慎太郎知事時代から推進してきた目玉プロジェクトだ。職員だけを責め立てて、「俺たちは知らなかった」ですむ話ではない。

 都政の重要政策は、ドン・内田氏率いる都議会自民党の意向を無視して進められることはなかった。幹部職員は、真っ先に都議会自民党に“おうかがい”を立てるのが常識だからだ。

 都政事情通は「築地市場の豊洲新市場への移転延期は、都民の評価が真っ二つに割れていた。都議会自民党は、移転推進派の業者と一体となって『小池百合子知事の移転無期限延期は暴挙だ。業者への補償はどうなるのか』と反転攻勢に転じる計画だった。それが今回の盛り土の問題で、世論は『小池氏はよくやった!』と拍手喝采を送っている。自民党は厳しい立場にある」と指摘した。

 都議会自民党関係者は「今回の件は、まったく知らされていなかった。移転が完全にストップすれば、業者や自治体への影響は甚大だ。都議会自民党のダメージも計り知れない。議会のチェック機能も問われる…」と絶句している。

【私の論評】ローカルでは信じられない程いい加減なことが!東京もその例外ではなかった?

市場が移転されるにあたって、都は建設予定地の土壌と地下水の汚染状況を平面で調査した結果、土壌で2地点、地下水で13地点の汚染が確認されていることがわかりました。

検出された有害物質はシアン化合物、六価クロム、カドミウム等全部で7種類ありました。

それぞれ土壌及び地下水(六価クロムを除く)での汚染が確認されています。特にベンゼンによる土壌汚染がひどく、通常の10,000倍以上の汚染が確認された地点もありました。
また、以上のような高濃度の汚染が確認された地点において、深さ方向での汚染調査が行われた所、地下数十センチの範囲で基準値を超える汚染が確認されました。

都はこのような汚染状況の対策として、「法令で求められる水準を上回る手厚い内容の対策をとる。」と説明していました。

具体的な対策案として以下のような方法が書かれています。

土壌汚染対策
ガス工場操業時の地盤面の下2メートルまでの土は、きれいな土壌と入れ替えます。その上に厚さ2.5メートルのきれいな土壌を盛ります。ガス工場操業時の地盤面の下2メートルより下の土壌から、環境基準を超える操業に由来する汚染物質を取り除きます。 
出典:東京中央卸売市場
地下水汚染対策

地下水中に環境基準を超える汚染が見つかっている区画の地下水を汲み上げて浄化します。 
出典:東京中央卸売市場
この土壌汚染対策として行われてる工程が「盛り土」というものです。実際に都のHPにある豊洲市場が完成した際のイメージ図では以下のようになっています。


この赤枠で囲っている部分が問題になっている部分です。元々の計画では、本来汚染されていた土をきれいなものと入れ替え、更にその上に土を盛ってふたをするということになっていました。

今回それが市場建物の部分は行われていなかったということで、土壌汚染対策に本当に問題はないのかという大きな問題に発展したということです。

図の青い四角の部分が、本来盛り土されるはずが、コンクリートの構築物になった部分

都は盛り土を行わなかった理由として、建物の構造上、技術的に盛り土ができないという回答をしています。

更に、水産物を扱う売り場棟の建設で配管類を通すため床下に数メートルほどの空間を設ける必要が生じたため盛り土を行わず汚染土壌を除去しただけで建設をしたそうです。

説明によると、売り場棟の下にはコンクリート層を設け安全上には問題はないとしていますが、しかし当初の説明にあった土壌汚染対策とは違う方法で建設が進められたということです。

本来盛り土を行うことで汚染への対策と安全性を主張していたはずにもかかわらず、盛り土を行わないというのであれば土壌対策はされていないという認識になるのが当たり前です。

盛り土を行わなくても安全性に問題はないという見解がありますが、地盤や建物の強度としての「安全」を言っているのでしょうか。

生鮮物を扱う上で汚染による人体への影響がないという意味での「安全」なのでしょうか。

様々な点で気になる事が明るみになっていませんが、今後の都の説明次第で、移転にも影響がでてくるかもしれません。

以下にフジテレビで報道された、豊洲市場建物の本来盛り土されるはずだった部分の地下の動画を掲載します。

実際に放送された内容の動画を以下に掲載します。




おそらく、盛り土をしていれば、これほど水が貯まることはなかったのでしょう。上の動画で、この水を都職員は雨水としていますが、そのような断定は今の時点ではできません。いずれはっきりするでしょうが、地下からの水が湧き出ているということは十分考えられます。

なお、上の動画でリスマス試験紙を用いて、PHの測定をしている議員もいて、何やら意味ありげですが、これは全く意味がありません。コンクリートの原料は石灰で、石灰はアルカリ性です。打ち立てのコンクリにたまった水が、それが雨水であろうと、地下からのものであろうと、強アルカリを示しても不思議でもなんでもないです。未だ、詳しい検査をしてみないと何ともいえません。

しかし、この地下の水が汚染されているか否かはまだはっきりはしていません。そうは言っても盛り土がされていないのは事実であり、これは大問題です。

2011~14年、約850億円かけて敷地全体を2メートル掘り下げて土を入れ替えた上で、さらに2・5メートル盛り土をする大規模なかさ上げ工事を行ったと説明していました。

盛り土をせずに、コンクリートにしたことで、経費がどの程度浮いたのか、浮いたとしたら、その経費はどこに消えたのか、徹底的に調査をしていただきたいものです。

このような事例を見ると、私はやはり地方自治体のいい加減さを思い出します。ごく最近では、富山県議の不祥事があります。

富山市議会の政務活動費の不正請求問題で記者会見する「民政クラブ」の
針山常喜幹事長(右)と高田一郎会長=平成28年9月13日午前、富山市

富山市議会で政務活動費の不正請求が相次いで発覚している問題で、民進党系会派「民政クラブ」の針山常喜幹事長(70)は13日、領収書を改ざんし政活費を不正請求するよう事務員に指示していたことを認め、議員辞職する意向を表明しました。会派会長の高田一郎氏(69)も責任を取って辞職します。

富山市議会(定数40)の政活費不正を巡っては、自民会派の議員5人が領収書偽造など不正を認め、うち3人が辞職しています。

針山氏は富山市で記者会見し、会派事務員に領収書の金額欄に数字を書き加えさせるなどして、不正請求していたと明らかにしました。水増し分は、会派の口座から針山氏と高田氏の口座に移し、選挙時に使うためプールしていたといいます。

都でもそのこのようなお金がブールされている可能性も十分にあります。盛り土をせずに、コンクリートの構造物にしたということで、資金が浮いた可能性があります。この資金がブールされている可能性もあり得ます。

この都の資金のプール(裏金)については、佐藤優氏も指摘しています。それに関しては、このブログにも掲載したことがあります。

地方自治体は、国政と比較するとなかなか報道されなかったり、問題を指摘される機会がないせいでしょうか、このような問題は全国のあらゆる自治体に蔓延しているのかもしれません。

大阪の問題に関しては、橋下徹元大阪府町・元大阪市長であった橋下徹氏が、いろいろと暴露しました。地方自治体は、東京、大阪にかぎらず、いろいろな問題がありそうです。

私自身も、学生のときにそれを経験したことがあります。これに関しては、資金的なものではないのですが、本当に驚いたことがあります。

それは、私が学生の時に、シンクタンクのバイトである人口10万程度の地方都市の新しい下水道の設置をするために積算をしているときに発覚しました。

私は概算を積算したのですが、どうしても市で算出した積算とは数値がかけ離れていました。私の概算のほうが何度計算しなおしても、大きい数字が出るのです。概算であっても数値にあまりの差がありました。これは自分が計算間違いをしているのかもしれないと思い、そのことをシンクタンクの主任研究員に報告したところ、概算そのものは間違いがないようなので、現地調査に行くことになりました。


しかし、その原因は現地調査をするまでもなく、その地方都市の市役所で調べたところすぐに判明しました。何と、その積算は、現在の当該市の人口が変わらぬものというか、そもそもそのようなことは全く考慮に入れず計算したものだったのです。

当時は、今と違って、その地方都市は宅地開発などが盛んで、人口が増えていました。下水道も当然のことながら、人口増を念頭に入れて積算しなければなりません。それをしないと、下水道のキャパシティが不足して、すぐに追加工事が必要となるという事態になったことでしょう。

そうして、驚いたことに、その計算をした人は、その年に高校を卒業したばかりの新人であったことが判明しました。その新人に単純に計算の仕方を教えて、でてきた計算結果について特に調べもせずに、土木課長が押印し、その上の上司の部長もこれも何も調べもせす押印していたのです。

土木課長とはいっても、たまたまそこに配置されて、土木の仕事をしているというわけで、専門家でも何でもないので、こういうことになったのかもしれません。地方自治体には、人材が不足しているので、こうなったのかもしれません。それなら、それなりのやり方というものがあると思うのですが、どうもそうはなっていないようです。

現在はこのような積算用のソフトウェアがあるので、作業は格段に楽になった。
しかし、最初の想定が間違っていれば、このようなソフトも無用の長物になる。
私はこの時初めて市役所などの地方自治体の仕事は、結構いい加減なことを知ったわけです。そうして、私は他のシンクタンクでもバイトをしたのですが、そのときにも似たような話をいくつか聴きました。本当に、その当時は、それらのことに憤りを感じたものです。その憤りは今でも、感じます。積算間違いは一歩間違えば、事故を誘発します。

このような傾向はおそらく、この地方都市だけに限らず、他の都市でもあったし、今でもあるのかもしれません。ただし、現在なら少子高齢化の傾向ですから、このようなことがあっても問題にはならないだけなのかもしれません。

そうして、このいい加減さは、地方都市に限らず、東京都や大阪府のような大きな自治体でも、多かれ少なかれあるのだと思います。実際、多くの人が内田繁氏が、都議会のドンであるなどということは、最近報道されて初めて知ったのではないでしょうか。

そうして、全国の他の自治体にもこのようなドンが存在するのかもしれません。私達が気づいていないだけかもしれません。

東京といっても、日本の首都という側面の他に、テレビに東京のローカル放送があるように、ローカルとしての東京があります。このローカルの東京のいい加減さが、今回の豊洲市場の問題の背景にあることが、今回白日のもとに晒されたのです。

このような問題、曖昧にせずに徹底的に調査して、二度とこのようなことが起こらないように、関係者を追求するだけでなく、システムそのものを変えていただきたいです。そうでないと、このような悪い体質は温存し続けることになると思います。

そうして、小池知事には是非東京だけに限らず、全国の他の自治体においても、このようないい加減さを排除するためにも、その先駆けになっていただきたいものです。また、私達もいままで以上に自分たちの身近な地方自治体に関心を持ち、何ができるのか考えていきたいものです。

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2016年9月14日水曜日

【蓮舫「二重国籍」】迷走した蓮舫氏の説明 危機管理能力に疑問の声も―【私の論評】小保方、蓮舫と続く組織的危機管理・統治能力欠如の露呈(゚д゚)!

【蓮舫「二重国籍」】迷走した蓮舫氏の説明 危機管理能力に疑問の声も

蓮舫氏

民進党の蓮舫代表代行がこれまで「二重国籍」問題で取ってきた一連の言動から浮かび上がるのは、政権交代を掲げる野党第一党のトップを目指す立場にありながら、事実確認を怠ったまま反射的に回答するというリスク管理の危うさだ。自らの疑惑に発言を迷走させた対応には、党内からも批判や懸念が上がっている。(清宮真一)

「父の台湾、母の日本、2つのルーツを持っているという程度の認識だった。本当に浅はかだった」

蓮舫氏は13日の記者会見で、参院議員に転身する前に答えた雑誌のインタビューなどで台湾籍を持っていると答えた過去をこう反省してみせた。

党代表選の最中でも発言は変化した。3日の読売テレビ番組では「生まれたときから日本人。(台湾)籍は抜いている。18歳で日本人を選んだ」と断言したが、6日の高松市の記者会見では、「18歳」を17歳に訂正した。

読売テレビでの「生まれたときから日本人」の発言も撤回された。蓮舫氏の出生当時の日本の国籍法とつじつまが合わないからだ。7日の産経新聞などのインタビューで「法律的には昭和60年から日本人だ」と修正した。

蓮舫氏は13日、台湾籍が除籍されていなかったことを表明した後にも、平成22年に行政刷新担当相として入閣したことや、今回の代表選出馬には問題はないとの認識を示した。希薄な「国籍」意識に加えて「問題点を検証しないまま言動する軽さ」(民進党ベテラン)は、一国を預かる首相を目指す資質としても疑問符がつく。


ただ、台湾籍の継続が明らかになった13日も、代表選での蓮舫氏の優勢は変わらなかった。くしくもこの日は、地方議員や党員・サポーターの郵便投票の締め切り日でもあった。

「記憶の不確かな部分でご迷惑をおかけしたことは申し訳ない。(15日の)代表選のスピーチで、みなさんに届くような言葉でしっかり説明したい」

会見でこう訴えた蓮舫氏だが、党内では危機感が募る。松木謙公衆院議員ら党内有志は13日、枝野幸男幹事長に対し、今回の国籍問題について党の見解を示すよう文書で要請した。

蓮舫氏は除籍手続きが終わっておらず、このまま代表選で勝利すれば、台湾籍を持った党代表が誕生する可能性もある。ある党中堅は「事態は相当深刻。蓮舫代表の就任直後に衆院解散を打たれたらアウトだ」と表情を曇らせた。




【私の論評】小保方、蓮舫と続く組織的危機管理・統治能力欠如の露呈(゚д゚)!


私は、今回の蓮舫氏の「二重国籍問題」に関しては、上の記事にあるように、蓮舫氏の危機管理能力は無論のこと、民進党という組織の危機管理能力、政府の危機管理能力も低かったことも原因になっていると思います。

危機管理といえば、このブロクでは以前「STAP細胞」に関して、小保方氏の倫理観の問題にすり替えられ、重要な組織の危機管理能力およびガバナンスが疎かにされすぎていると批判したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
小保方さんの恩師もついに口を開いた!米高級誌が報じたSTAP騒動の「真実」―【私の論評】小保方さんの倫理問題にすり替えるな!理研と文科省のガバナンスの問題こそ本質(゚д゚)!
小保方晴子さん
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
ブログ冒頭の記事の最後のほうに、「小保方は『私はスケープゴートにされた』と書いてきた。『日本のメディアはすべて、若山先生が犠牲者で、私がまったくのろくでなしと断定した』とも」と掲載されています。 
仮に、小保方さんが「まったくのろくでなし」であったとしたら、そこでさらに疑問がわきます。では、なぜ「まったくのろくでなし」をSTAP細胞研究のユニットリーダーに抜擢したのかが疑問です。 
理研は小保方さんが、「まったくのろくでなし」あることを見抜く能力がないのか、ないとしたら何に問題があるのか、それを解決する方法や、それを防ぐための「危機管理マニュアル」など存在しないのでしょうか。 
理研は、存在しないというのなら、これから作るつもりなのか、それで本当にリスク回避ができるのかを開示すべきです。 
また、理研も組織であるので、監査や内部統制はどうなっているのか、今回の出来事で監査が有効に実施されていなかったのは、はっきりしています。どのような監査が行われていたのか、不十分だったのか、不十分であれば、どのように改善するのかをはっきりさせるべきです。
日本版SOX法における内部統制フレームワーク
さらに、内部統制は組織的に実施されていたかの問題もあります。内部統制(ないぶとうせい 英:internal control)とは組織の業務の適正を確保するための体制を構築していくシステムを指します。組織がその目的を有効・効率的かつ適正に達成するために、その組織の内部において適用されるルールや業務プロセスを整備し運用すること、ないしその結果確立されたシステムをいいます。 
これは、ガバナンスの要とも言えるもので、近年民間企業においてはその構築と運用が重要視されています。内部監査と密接な関わりがあるので、内部監督と訳されることもありますが、内部統制が一般的な呼び名となっています。 
民間企業でわかりやすい事例としては、たとえば、財務部門と経理部門を一つの組織として、1人上長が管理するようなことはすべきではないというものがあります。 
財務と経理の仕事は、中小企業などでは特に区分していない企業も多いですが、上場企業においては明確に区分されています。 
経理部門が「日々の経費の精算や帳簿の記帳などをする」「事業活動を数字に表していく処理をする」仕事がメインですが、財務部は「経理部門が作成した財務情報を基礎として企業の今後の経営戦略を財務の視点から考える」部署となります。経理部より財務部の方がより専門性が高い業務といえるでしょう。
また、財務部門は、回収と支払いのサイト管理や資金繰りの管理を通して、企業運営を円滑に進められるように、資金が足りないときは外部から調達してくる役割を担っています。 
このような区分を考えると、経理部門と財務部門の管理者が同一であるというのは内部統制上良くないことははっきりわかります。内部統制として望ましいのは、これらの部署が互いに他の部門を牽制するような仕組みをつくることこそ、正しい方向性です。 
理研も、民間営利企業ではないものの、理研としてこのような内部統制や、監査の仕組みさらに、危機管理体制がマニュアル化などしてあれば、そもそも、今回のような騒動は起こらなかったかもしれませんし、起こったにしも、あのような無様な形で、主に小保方さんの倫理的な問題にして、ようやく決着をつけるということにはならなかったと思います。 
理研の実験室など、あのうろたえぶりからすると、このような観点からすれば、たとえば、レイアウトや、入室、退室のさいの手続きとか、実験の各段階における手続きとか、明確になっていたとはとても思えません。 
こういうと、私は小保方さんを援護しているように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。そもそも、部外者である私は、小保方さんの倫理面や人格等を忖度するような立場にもありません。どんな人なのかもわかりません。だから、小保方さんを援護したり、非難したりする気も全くありません。

そんなことよりも、たとえ小保方さんが「まったくのろくでなし」であろうが、なかろうが、あるいは悪人であろうが、なかろうが、私はそんなことよりも、たとえ狡猾でかなり頭の良い極悪人が運悪く研究所内に潜り込んだとしても、何か普段では考えられないような危機が発生したとしても、余程のことがない限り、間違いが起こらないようなシステムを構築すべきということを言いたいのです。そうして、仮に間違いが起こっても、早期に収拾できるリスク管理体制を構築すべきであることを言っているのです。
倫理観に基づく、良き意図は大事です。しかし、良き意図だけでは何もできません。何も守れません。何も変えられません。そもそも、理研など国の最先端の研究機関であれば、このあたり、二重三重に備えをしておかなければ、妨害されたり、邪魔をされたり、成果を盗まれたり、あらぬ方向に操作されたりするので、そのようなことが絶対にないように、その備えを固めよと言いたいのです。

そうして、そのような備えを固めることによって、まともなガバナンス(統治)を実行するための基礎ともなると言いたいのです。このようなことを疎かにするような、理研や文科省であれば、統治の正当性が疑われるということを言いたいのです。
この記事を書いたときに、私はいずれ忘れたころに第二、第三の「STAP細胞事件」が起こる可能性があるものと予感しました。

今日、全く予期せぬ形で、それが現実のものとなりました。そうです。今回の「二重国籍
問題」は、一見事象は全く異なるものの、マスコミの論調をみても、他の識者の意見でも、結局のところ、蓮舫氏の倫理問題として、その背後にある民主党や日本政府の管理の問題や、組織のガバナンスの問題を蔑ろにしています。

無論、ブログ冒頭の記事にあるように、蓮舫氏の個人のリスク管理の問題もあります。なぜなら、蓮舫氏は小保方氏とは異なり、選挙によって国民の付託を受けた国会議員であり、さらに野党第一党の、幹部であり、さらに今回民進党の代表になったとすれば、日本の総理大臣になる可能性もあるからです。

先日もこのブログに掲載したように、国会議員さらに野党第一党の幹部となれば、本人はどう思っているか、周りの人はどう思っているかは別にして、本来「自分の命よりもその責任」が重いエリートであることには間違いありません。日本では、エリートの定義があいまいですが、本来のエリートの定義は世界共通でこのようなものです。

エリートというものは、「本人の命よりも責任が重い」という事です。だから昔のエリートである武士は毎日切腹の訓練をしていたのです。

だからこそ、蓮舫氏には自らによる危機管理能力の欠如を追求されてもいたし方ないです。

しかし、小保方さんは理研の研究員のユニットリーダーであり、無論個人の危機管理能力も問われはしますが、そうは言っても、蓮舫氏程にその責任を問われることはありません。彼女は管理職ですらないのです。本来の研究員は危機管理やガバナンスなどについて、熱心に取り組むべき存在ではありません。第一そんなことに一生懸命になっていれば、研究がおろそかになるだけです。彼女はあくまで研究に没頭すべき存在です。

小保方氏と、蓮舫氏にはこのような根本的な違いがあるのは事実です。とは、いいながら、共通点もあります。それは、マスコミや識者の論調が、両者とも両者の倫理的な側面を追求しているということです。

何か問題が起こったときに、個人の倫理に委ねることは本当に簡単です。簡単に言ってしまえば「あいつが悪い」ということです。これだと、本当にどんな問題でも頭を使わずに、簡単です。結局「STAP騒動」においては、亡くなられた若山氏が唯一の犠牲者で、悪いのは小保方氏ということで決着がついています。しかし、あれだけの事件、当然のことながら、背景には多くの事象があり、そうして、理研や文部省にも、危機管理やガバナンスに問題があるのは歴然であると思います。

このことに関しては、蓮舫氏は以下のようにツイートしています。
蓮舫氏は、これだけにとどまらず、参院内閣委員会で理研野依理事を追求しています。

2014年5月13日(火)参議院内閣委員会で理研理事を追求する蓮舫氏
私は、民主党の第1次与党期の冒頭、政府外議員だった蓮舫さんが事業仕分けをしたところ、野依理事長が自民党本部にかけこみ、部会で、「歴史という法廷に立つ覚悟があるのか」と語ったのが印象に残っています。

さて、この野依氏に対して、蓮舫氏は、小保方晴子・理化学研究所研究員が発見した「STAP細胞」に関して論文に不正があったと断定して、理研が処分した問題を取り上げました。

蓮舫さんが理事長の責任を問うと、野依氏は「研究所全体の倫理の問題として、(小保方さんを代表者とする)共同研究の事業は、若者らの意識の変化もあり、経営者(理事長)として非常に重く受け止めています。経営者の責任として、若手の研究者の自立の支援と、外部有識者による委員会の調査結果を待ちたい」と語り、辞任を拒みました。

野依氏は、2015年に理研理事長退任しました。ただし、野衣氏は、当時会見で退任はSTAP細胞問題の引責辞任ではないと強調しました。また、STAP細胞論文に疑念が生じた後の理研の対応について、「社会が求めるスピード感とは乖離があった」と認めたものの、対応は十分だったと総括しました。

私自身は、野依氏に関しては、引責辞任するしないは別にして、あのようなことがお凝らないように、あるいは起こってしまっても傷口を広げないように、危機管理システムを充実してから辞任すべきであったと考えています。

当時の理研監督省庁であった文部省の大臣だった下村博文氏
さて、当時の理研監督省庁であった文部省の当時の下村文部大臣はというと、「STAP細胞」の再現実験には小保方さんも加わるべきだという発言などはしていますが、理研の危機管理システムやガバナンス上の問題に関する発言や、ましてや文部省のそれに関する発言などは全くなかったと思います。

小保方氏は、当理研OBの石川智久・元上級研究員ES細胞窃盗の容疑で告発されましたが、結局警察の取り調べは受けたものの、立件には至っていません。

結局は、この事件若山氏一人が犠牲者で、小保方氏が「ろくでなし」ということで幕引きです。その後、マスコミも専門家も、危機管理の問題や、ガバナンスの問題など有耶無耶にされて、今日に至っています。多くの人は、「小保は悪いやつ」で止まってしまい、そこからさらに背景を追求しようなどとはしません。まるで思考停止してしまっているようです。

そうして、今回の蓮舫氏の「二重国籍問題」です。この出来事に関しては、さすがに、蓮舫氏の倫理問題として片付けるだけではないようではあります。

日本維新の会の馬場伸幸幹事長
日本維新の会の馬場伸幸幹事長は8日、国会議員や国家公務員らが日本以外の国籍を持つ「二重国籍」を禁じる法案を国会に提出する考えを示しています。早ければ今月末に召集される臨時国会への提出を検討しています。

馬場氏は都内で記者団に「国政に携わる者が二重に国籍を持つことはあってはならない」と述べ、国籍法や公職選挙法などの改正で対応する考えを示しました。

菅義偉官房長官も7日の記者会見で「ご自身が説明すべき問題だ」といい、「一般論として申し上げれば、外国の国籍と日本の国籍を有する人は、22歳に達するまでにどちらかの国籍を選択する必要があり、選択しない場合は日本の国籍を失うことがあることは承知している」と語りました。

自民党では、衆参の予算委員会や法務委員会で、法務省の見解などをただすことも検討しているといいます。中国、台湾の法律も絡むため、外務委員会でも質問が出る可能性もあります。

法務行政に精通する自民党のベテラン議員は「もし、蓮舫氏が『二重国籍』のまま、民主党政権の閣僚をやっていたことが確認されれば、その時点で議員辞職だろう。民主党は2009年の政策集に『重国籍容認に向け国籍選択制度を見直します』と掲げていた。当然、民進党の姿勢も問われる」と語っています。

さて、国会での追求ですが、これも「STAP細胞」騒動の反省にたち、蓮舫氏の危機管理能力の欠如や倫理観のみに焦点をあてるだけではなく、民進党の組織としての責任を危機管理やガバナンスの観点から追求して、追求するだけはなく法律は無論のこと、システムも変更していただきたものです。

そうして、忘れてならないのは、政府の責任の追求です。何やら、この問題、蓮舫氏や民主党にのみ責任があるような受け取り方をする人も多いようですが、政府にも明らかに責任があります。

このブログでも以前掲載しましたが、二重国籍者は推定で日本国内に40、50万人存在するとされています。日本の国籍法は二重国籍を認めていません。二重国籍になった場合は、一定期間内にどちらかの国籍を選択しなければなりません。また、自ら志望して外国籍を取得した場合は、日本国籍を喪失しなければなりません。

そうして、期限までに国籍を選択しない場合は、法相が書面による催告をしてから1カ月以内に日本国籍を選択しなければ「日本国籍を剥奪できる」と規定しています。にもかかわらず、二重国籍の人々は年々増加の一途をたどっています。

どうしてこういうことになるかといえば、この規定が守られていないからです。つまり、いつまでも国籍を選択しない者が多いにもかかわらず、法相による催告・国籍剥奪は、一度たりとも行使されたことがないのです。

これは、どう考えても異常です。全員に対してそういうことができないというのなら、国会議員や国家公務員に対してはこれを実行すべきでしょう。そうして、少なくとも反社会勢力に対しては、これを実行すべきでしょう。

いずにしても、「STAP細胞」騒動の時のように、曖昧にして小保方氏一人の倫理問題で片付けるようことがあってはならないです。そうしなければ、いつまでたっても、このような問題は何度でも繰り返し発生することになると思います。

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