2017年8月4日金曜日

「仕事師」ズラリ!“改造暗闘”舞台裏 中韓懐柔で河野外相起用、「石破潰し」へ側近入閣で“分断” ―【私の論評】まずは経済を良くして、国民の不安を払拭せよ(゚д゚)!

「仕事師」ズラリ!“改造暗闘”舞台裏 中韓懐柔で河野外相起用、「石破潰し」へ側近入閣で“分断” 

初閣議後の記念撮影に臨む安倍首相と閣僚=3日午後、首相官邸
安倍晋三首相が3日に第3次安倍第3次改造内閣を発足させた。内閣支持率が下落するなか、閣僚19人のうち入閣経験者11人で安定感と改革断行の姿勢を示し、自身と距離のある河野太郎前行革担当相を外相、野田聖子元総務会長を総務相兼女性活躍担当相、林芳正元防衛相を文科相に起用するなど「脱お友達」で挙党一致を目指した。「ポスト安倍」では、岸田文雄外相兼防衛相を自民党政調会長に抜擢(ばってき)して重用する一方、「反安倍」の急先鋒(せんぽう)である石破茂元幹事長の側近・周辺議員を閣内に取り込むなど、「石破潰し」ともいえる側面も見せた。

 「内閣と自民党に対し、国民の厳しい目が注がれている。私自身深く反省している。新たな気持ちで結果を出していくことによって、国民の信頼を勝ち得て、責任を果たしていきたい」

 安倍首相(自民党総裁)は3日午前、臨時総務会を党本部で開き、新体制で信頼回復に全力を挙げる考えを示した。確かに、今回の改造人事には、首相の「絶対に失敗できない」という危機感が現れていた。


 支持率下落の原因は、強引な国会運営や、未熟な閣僚による答弁がもたらした政治不信だ。閣僚の半分以上を経験者で固めたうえ、混乱が続く防衛省や文科省には、小野寺五典元防衛相や林氏といった、霞が関での評価の高い「仕事師」を置いた。6人を初入閣させ、60人を超えていた「入閣待機組」の不満も吸収した。検討された、大物民間人の起用は見送った。

 失言や暴言で自民党に多大なダメージを与えた、稲田朋美前防衛相や豊田真由子衆院議員の反省を示すため、安倍首相の出身派閥でもある細田派からの閣僚起用は極力控え、岸田派や麻生派にポストを振り分けた。

 「政権の骨格」となる麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官は続投する。

 こうしたなか、巧妙な人事手腕も見せている。

河野太郎氏
河野氏の外相起用は、今回の内閣改造で最大のサプライズといえる。

 英語が堪能で、衆院外務委員長も経験し、議員外交にも熱心な河野氏は有資格者といえる。ただ、河野氏は「党内左派の首相候補」とみられており、保守の安倍首相とは政治理念で距離があった。

 河野氏を重要閣僚に抜擢した理由について、官邸周辺は次のように分析する。

 「行革担当相時代、内閣の方針には従うなど、まず『政治家・河野太郎』を信頼している。後ろから鉄砲を撃つ石破氏とは違う。河野氏の父は『親中派』『親韓派』として有名な河野洋平元外相であり、東アジア情勢が緊迫化するなか、中国や韓国を懐柔し、党内左派も落ち着かせる効果がある。保守派は批判するだろうが、河野氏としては、中韓が仕掛ける『歴史戦』の最前線に立ち、日本の名誉を守る重い責任を負うことになる」

 河野氏は3日朝、「政権というのは国民の未来を明るくするためにしっかり頑張るものだ。支持率は、それができていればついてくる」と語った。河野氏が外相として実績を残せば、岸田氏の次の世代のホープに浮上する。石破氏には「世代交代」を感じさせる人事といえる。

野田聖子氏
「反安倍の女性闘士」とみられた野田氏の起用も、巧妙だ。

 安倍首相と野田氏は1993年初当選の同期だが、「保守とリベラル」という政治理念の違いもあり、対立してきた。ただ、昨年11月、同期当選組が集まった席で、野田氏が「これからは『安倍・野田連合vs石破』でやっていこう」と、安倍首相に呼びかけたと伝えられる。

 「安倍首相としては、来年秋の党総裁選を見据えて、『反安倍』の石破-野田連合が構築されるのを防ぐ狙いもあったのでは。一種の分割統治ではないか」(官邸周辺)

 石破氏の側近・周辺議員も閣内に取り込んだ。

 農水相に決まった斎藤健農水副大臣は、石破氏率いる「水月会」の主要メンバー。国家公安委員長兼防災担当相の小此木八郎国対委員長代理と、地方創生担当相の梶山弘志元国交副大臣は、石破氏が立ち上げた「無派閥連絡会」に所属していた。

 安倍首相は追い込まれたなかでも、考え抜いた配置をしている。

 永田町関係者は「今回の内閣改造で、官邸は支持率が急上昇するとは思っていない。手堅く、一歩一歩、政策を実行していく構えだ。一方で、ドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮攻撃も示唆するなか、日本は戦後最大の試練を迎える可能性がある。『政権の安定は不可欠』と考えており、幅広い人々に支持される人材を選んだ。『有事対応内閣』という側面もある」と語っている。

【私の論評】まずは経済を良くして、国民の不安を払拭せよ(゚д゚)!

共同通信社が3、4両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は44.4%でした。前回7月の調査より8.6ポイント上昇しました。不支持は9.9ポイント減の43.2%で、ほぼ拮抗しました。今回の内閣改造、自民党役員人事を「評価する」との回答は45.5%で、「評価しない」は39.6%でした。

総務相に起用された野田聖子自民党元総務会長に「期待する」は61.6%で、「期待しない」は31.4%。外相に起用した河野太郎元行政改革担当相に「期待する」は55.6%、「期待しない」は34.8%でした。

内閣を改造した安倍晋三首相は経済再生を第一の課題に挙げました。今回の支持率の上昇は、この経済再生に対する期待の高まりであると考えられます。

しかし、各種経済調査では景気回復の判断が出ているものの、安倍政権が目指すデフレ脱却は、まだ実現していません。経済再生の道のりは、今のままでは容易でないでしょう。

安倍首相が政権交代を果たし、アベノミクスと呼ばれる経済政策を掲げたときは先行きに期待が生まれ、デフレの重い雰囲気が変わりました。それから5年近くが過ぎて当初の期待感は薄れています。

アベノミクスの当初の三本矢
その原因は、8%増税の大失敗ということは、様々な統計資料からみて明らかなのですが、増税推進派の財務省、マスコミや、多くの政治家、識者らは、多くを語りません。語れば、自分たちの失敗を認めなければならないからです。

そのためもあつてか、彼らの多くは増税の失敗を認めず、アベノミクスそのものが失敗したかのような印象操作を行っています。

そのため、当初の多くの国民の期待は、今や失望に変わろうとしています。安倍首相は厳しい現状を重く受け止め、期待を高める力を取り戻さなければならないでしょう。

デフレから抜け出すためには、平成31年10月まで増税延期というだけではなく、増税そのものをデフレから完璧に脱するだけでなく、経済に悪影響が出るほどのインフレにならない限り、無期限延期にすることを周知徹底すべきです。要するに、アベノミクスの初心に帰って、機動的な財政政策を実行することを宣言するのです。

その決意を誰にでもわかるように国民に対して示すために、消費税を5%に戻すことを宣言することなどによって、国民が将来に対して明るい予想を持てるようにすることが欠かせないです。これだけ、国民の期待感が薄れている中では、このくらいのことをしなければ、国民は納得しません。

日銀はデフレ脱却に向けて掲げた物価上昇目標の達成が遅れる要因として、企業と家計にデフレマインドが根強く残っていることを挙げていました。しかし、これは間違いです。多くの国民にデフレマインドが残っていることは事実ですが、それは、量的金融緩和が不十分だからです。

なぜなら、失業率が3%台を推移しており、最近は2%台になってはいますが、いまだ構造的失業率である2%台半ばにまで安定的に下がっていないからです。これが、安定して2%台半ばに下がるまで、追加の量的金融緩和を実施していないから、金融緩和によって雇用面では随分改善されたのですが、未だに実質賃金が目に見えてあがるという状況にはありません。

緩やかなインフレが実現すれば、たとえば同じ会社で同じ職位についていたとしても、20年もすれば賃金は倍になります。1年、2年では誤差のような上がり方かもしれませんが、20年もたつ目に見えて上がります。ただし、インフレですから、物価にスライドさせてみると、1.5倍くらいという感覚です。

また、非正規と正規労働者の賃金は、同じ仕事を同じ時間だけ実行した場合は、パート・アルバイトのほうが高くなります。これは、緩やかなインフレであれば、人で不足なので、短期の仕事の場合ある程度賃金を割高にしないと人手を集められないからです。

これは、デフレではない先進国では、ごく当たり前の状況です。かつてのデフレになる前の、大昔の日本でもそうでした。20年後という未来に対して、このように考えられるか、そうでないかでは、天と地の差です。

職位があがれば、さらに賃金は上がります。能力のある人、努力する人は賃金が20年で数倍になるということもあります。これが、デフレではいつまでたっても、賃金が上がらないどころか、下がるというのですから、夢も希望もありません。

しつこいデフレマインドを払いのけるためには、日銀が大規模な金融緩和を粘り強く続けるだけではなく、量的拡大必要不可欠です。追加の量的緩和効果の拡大に向けて、政府が財政出動で需要を増やす施策も検討すべきです。

今は内閣の支持率低下に伴って、安倍政権の経済政策を疑問視する声が台頭しています。しかし、ここで金融緩和を縮小し、緊縮財政に転じればデフレ脱却は遠のくは明らかです。経済最優先の政策を貫くためには、安倍首相が政権交代時の原点に立ち返って信頼を取り戻すことが何より大事です。

過去の金融緩和をはじめとする経済政策は確実に成果を出しています。景気回復のペースが緩やかなため実感がないという反応もありますが、求人倍率の上昇と失業率の低下は政策効果を明確に物語っています。雇用が悪化せずに、良くなっているのですから、安倍政権の経済対策は総体においては、うまくいったとみるべきでしょう。

実質賃金の向上など、雇用情勢がさらに目に見えて改善すれば経済再生は近いです。こうした期待を多数の国民が実感できるか否かの手腕の有無が首相に問われています。そうして、閣僚はこうしたことに安倍総理が専念できるように、与えられた役割を全うしていただきたいものです。

少なくとも、安倍総理の足手まといになるようなことだけは、絶対に避けていただきたいです。

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2017年8月3日木曜日

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代表辞任を表明した蓮舫氏。民進党が党勢を回復する可能性はあるのか
 民進党は蓮舫代表が辞任を表明し、前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官が代表選への立候補の意向を示しているが、民進党が党勢を回復する可能性はあるのか。

 まず今後のスケジュールを検討しておこう。1年前の民進党代表選は8月2日に公告され、選挙日は9月15日だった。今回は9月1日投開票で調整されている。

 代表候補者は、民進党国会議員の推薦人を20人以上確保する必要がある。今のところ、前原氏、枝野氏のほか、第3の候補を模索する動きもあるようだ。

 こうした民進党の動きは、安倍晋三政権の支持率が落ちていることと無縁ではない。

前原氏と枝野氏
 7月2日に行われた東京都議選では、自民党敗退の陰で目立たなかったが民進党も惨敗している。2009年都議選で54議席、13年に15議席、今回は5議席と10分の1に縮小している。こうした状況なので、安倍政権で解散風が吹いても、今の民進党では受け皿にもはけ口にもならないわけだ。

 そこで、民進党内の一新が求められていた。都議選の敗戦を受けて、野田佳彦幹事長が辞任した。そのとき、蓮舫代表は続投の意思を示していたが、野田幹事長がいないと何もできなかったのだろう。後任の幹事長を引き受ける人がいなかったともいわれている。そこで一転して蓮舫代表が辞任となったようだ。

 これは遅きに失したとはいえ、野党の行動としてはまずまずだ。しかし、当面国政選挙がないと思われるなか、国民の受け皿にはならない。10月に衆議院青森4区と愛媛3区の補欠選挙が行われるが、10月10日告示、22日投票という予定だ。これらの選挙区では自民党が2つとも議席を持っていたが、そこで民進党が勝てるかどうかがポイントとなるだろう。

そこで重要なのが安倍政権との差別化だ。安倍政権の外交は、歴代政権の中でも海外渡航でも図抜けている。長期政権だったので、世界の首脳の中でも経験豊富で外交実績も挙げている。

訪問先のイスラエルで生命を発表する安倍総理大臣
 内政では、本コラムで指摘するように雇用などで実績がある。唯一の弱みとしては、最近の一部メディアの戦略にはまってしまったことだ。森友、加計学園ともに、首相の関与が問題とされていたのに、次々と論点がすり替えられ、今では国会などでの答弁で信頼性を欠いているとされた。首相の関与を示すものは一切ないが、結果として政権支持率は低下してしまった。

 ただし、これだけで民進党が受け皿になるわけではない。やはり経済政策がカギである。ところが、有力とされている前原氏は、財政再建・緊縮財政路線であり、消費増税を掲げている。また枝野氏は、かつて筆者とテレビで議論した際、金利を引き上げることを経済成長の条件としているなど、両者ともに、マクロ経済政策による雇用の確保はできないだろう。

 これでは、政権支持率が低下しても、代わりに民進党というわけにいかない。このまま政権支持率低下が続くと、いずれ自民党内での争いになるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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上の記事では、民進党の再生には経済政策がカギであるとしています。しかし、前原氏も枝野氏も、酷いマクロ経済音痴です。

どのくらい音痴かというと、二人とも見当違いともいえるような経済観を持っています。これについては、あとでも述べますが、自民党の議員も五十歩百歩のところがありますが、それにしても、この二人は図抜けて酷いです。

まずは、前原氏の驚きの発言を紹介します。2013年1月13日、当事民主党の前原氏は以下のようなことを語っていました。

前原氏
デフレの原因は人口減である。それから、(当事の日本の)急激な円高は、震災によるサプライチェーンの分断によるものである」という驚くべき発言です。

デフレ、インフレとは貨幣現象です。人口の増減は関係ありません。こんなことは簡単に論破できます。たとえば、少し物騒なたとえですが、中性子爆弾が日本落ちて人口が半減したとします。これで、インフレになるのかデフレになるのか考えれば、すぐにわかります。

ちなみに、中性子爆弾とは核兵器の一種。核爆発の際のエネルギー放出において中性子線の割合を高め、生物の殺傷能力を高めたものです。建物・インフラなどにはあまり被害を与えず、人間をはじめとする生物を殺傷します。

ここでは、中性子爆弾は建物やお札や貨幣など一切破壊せず、生物の命を奪うものと仮定します。この爆弾が日本全国に落とされ、一気に人口が半分に減ったとします。ただし、お金はそのまま残ったとします。そうなると、これはインフレでしょうか。デフレでしょうか。

無論、人口が半減しお金がそのまま残ったのですから、これはインフレです。これでおわかりでしょう、デフレの原因は人口減であるという説は、全くのトンデモ説なのです。

そうして、このようなことは、上記のような物騒なたとえをしなくても、以下のグラフをみればすぐにインフレと人口減は関係ないことがわかります。


このグラフにも掲載されている相関係数をみればわかりますが、人口増加率と一人あたりGDP伸率との間の相関係数は0.09です。この相関係数1であれば、完璧に相関関係があるとみなすことができますが、1より小さければ、小さいほど相関関係は低いということです。0.09ではどうみても、相関関係はないとみるべきです。

次に、円高は震災によるサプライチェーンの分断によるものという珍説ですが。これも全くいただけないです。ちなみに、サプライチェーンとは個々の企業の役割分担にかかわらず、原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまでの全プロセスの繋がりのことをいいます。

円高になる要因は、様々な要因がからんでいて、予測するのはかなり難しいですが、日本が金融引締めをしていて、他国が金融緩和をしている状況では、円高になる傾向が強いです。

それは、簡単な理屈です。日本が金融引締めをしていて、日本以外の国々が金融緩和をしていれば、円は少なくなり、他国お金は多くなります。そうなると、円の価値があがります。すなわち、これが円高になります。

為替の予想、特に短期の予想は他にも複雑な要素があり非常に難しいのですが、それでも6割がたはこれで説明がつきます。この状況が長期にわたれば、円高になる確率はさらに高くなります。

当事の日本を振りかえつてみると、2013年1月13日当事には、まさに日本はこの状況であり、米国をはじめとするほとんどの国々が金融緩和をしていたにもかかわらず、日本は金融引締めをしていました。

さらに、自然災害などがおこると、発展途上国などの場合は別にして、日本のような先進国の場合は、復興のために、自国通貨への需要がかなり高まります。需要が高まるということは、これすなわち通貨高になります。これは、日本だけではなく、オーストラリアの水害のときにもみられた現象です。

再度まとめると、2013年1月あたりまでの日本の超円高は、他国が金融緩和をしていたにもかかわらず、日本では日本銀行が頑なに引き締めを実行していたことと、震災からの復興のための資金需要の高まりによるものです。

これは、その後4月から日銀が金融緩和に転じてから、円安傾向になったことからみても、確かです。

前原氏の震災によるサプライチェーンの分断によるものという説は、多少はそのようなこともあったかもしれませが、それが主要因ではありません。

このように、前原氏経済観は、根底から狂っています。

枝野氏
次に枝野氏ですが、ブログ冒頭の記事にもあるように枝野氏が「金利を引き上げることを経済成長の条件としている」ということで、これもトンデモ理論を信奉しているとしかいいようがありません。

枝野氏は2008年9月下旬のテレビ朝日系列の「朝まで生テレビ」の番組中でこの珍説を披露していました。当時はもちろんリーマン・ショックが世界中で顕在化していました。

通常は、経済危機や深刻な不況のときは、金利を引き下げることが重要です。もし金利を引き下げる余地がないときは、今度は中央銀行が供給するマネー自体を増やしていく、さらには物価安定目標(インフレ目標)の導入で人々の予想をコントロールしたりすることが重要です。

なぜ金利を引き下げるかといえば、経済が落ち込んでいるときは、民間の消費や投資が振るわないときです。例えば、住宅ローンでも車のローンでも金利を安くした方が借りやすくなります。

もちろん金利が変動型であればそれだけ返済負担も少なくなる。消費だけではなく、企業の設備投資のための金利負担も軽くなります。

どんな教科書にも経済危機や不況に、金利を引き上げて景気回復が行うべきなどということは、書かれていません。当たり前のど真ん中ですが、そんなことを経済危機の時に行えば、経済は壊滅的な打撃を受けることになります。それをリーマン・ショックの時期に行えなどと主張するのは、完璧なマクロ経済音痴と言っても過言ではありません。

枝野氏は雇用に関しても、全く見識がありません。昨年1月8日、衆院予算委員会で当事民主党の枝野幸男幹事長が質問に立ち、物価の変動を考慮した実質賃金について、民主党時代は高かったが、安倍晋三政権で低くなっていると批判しました。

確かに、実質賃金については、枝野氏のいうとおりですが、就業者数では民主党時代には30万人程度減少し、安倍政権では100万人以上増加しています。

そうして、名目賃金は物価より硬直的ですが、金融政策は物価に影響を与えられます。このため、金融緩和すると当初は実質賃金は低下し、就業者数が増加します。さらに金融緩和を継続すると、ほぼ失業がなくなる完全雇用の状態となります。そうなると今度は実質賃金も上昇に転じてきます。

経済の拡大によって就業者数は増加しますが、逆に金融引き締めを行うと、実質賃金が高くなり、就業者数が減少。完全雇用からほど遠くなります。


民主党政権と安倍政権の実質賃金と就業者数のデータは、民主党政権では事実上の金融引き締め、安倍政権では金融緩和が実施され、枝野氏の批判は、その通りの効果が現れてきたことを示しているだけであり、雇用政策から見れば、安倍政権の方がはるかに優れています。

民主党政権時代に就業者数の減少を招いたにもかかわらず、実質賃金の高さを誇るのは、雇用政策からみれば噴飯ものとしかいいようがありません。就業者数が減り、実質賃金が上昇することで喜ぶのは「既得権雇用者」たちです。つまり、既得権者保護の政治を民主党は公言していることになります。非正規雇用者、新卒者、失業者という「非既得権雇用者」の利益は考えていない、ということです。

以上のことから、どちらが代表になったにしても、民進党が再生するということはありません。もう一人、代表戦の候補者が出そうですが、これが馬渕氏あたりであれば、彼は民進党内ではただ一人経済にも精通しているので、見込みもあるかもしれませんが、馬淵氏にはその気はないようですから、どうにもなりません。

では、自民党はどうなのかというと、安倍総理とその側近は例外として、経済に精通している人はいません。一作日は、ポスト安倍の有力候補となった岸田外務大臣について、このブログに掲載しました。

しかし、その岸田氏にしても、前原氏や枝野氏それから、自民党内の石破氏よりは酷くはありませんが、経済に精通しているとはいえません。

一昨日のこのブログにも掲載したように、都内で開いた岸田派のシンポジウムで、岸田氏は、4年半のアベノミクスの成果を強調する一方、格差の問題点に言及しました。派閥創設者の池田勇人元首相が所得倍増論を進める中で、中小企業や地方対策といった格差是正にも努めた事例を紹介。アベノミクス修正の必要性を指摘しました。

岸田氏は来場者から政権を取った場合の政策を問われ、「閣僚なので内閣不一致になっちゃいけないと思いつつ覚悟して来た」。言葉を選びつつ、「これだけはやりたいのは何か。成長と分配のバランス」。アベノミクスが成長戦略に偏りがちであることに懸念を持っていることを示唆しました。

しかし、格差の是正をするためにも、まずは経済を良くすること、さらに雇用の面でも、所得をあげるためには、まずは現状の失業率の3%台では、まだ不十分であり、構造的失業率である2%半ばまでもっていかなければ、実施賃金はなかなか上がりません。そのために、物価目標2%が達成させていない現在追加の量的金融緩和は絶対に実施しなければなりません。

そのことを岸田氏は理解していないようで、まずはマクロ的な政策で、雇用や経済が十分に回復していないうちに、ミクロ的な政策を打ったとしても、ほとんど成果をあげられないという現実を理解していないようです。

しかし、岸田氏はアベノミクスを完全否定しているというわけではなく、石破氏などと比較すれば、まだまともです。

しかし、自民党の中でも年配の議員のほとんどや、若手であってすら小泉進次郎議員などのような一部の議員は、積極財政とか、金融政策などという考え方は及びもつかず、経済対策というと、とにかく公共工事をやれば良いくらいのことしか考えていないようです。そうして、あろうことか、公共工事がだめなら、増税すれば良いなどと考えているようです。減税や、給付金などの対策は思い浮かばないようです。

公共工事を増やすにしても、公共工事の供給制約があることや、供給制約を克服できたとしても、工事を過大にすればクラウディング・アウトの危機に見舞われることなど眼中にないようです。クラウディングアウト(英: crowding out)とは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されることをいいます。

現在の日本は、雇用はかなり改善されたのですが、実質賃金もあまり上がらないし、物価目標はなかなか達成できていません。これは、さらなる量的追加金融緩和が必要なのはいうまでありません。

そうして、2014年の8%増税を期に、個人消費は冷え込み、全国の百貨店が相次ぎ閉店しています。

2017年2月28日、セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のそごう・西武が運営する茨城県つくば市の西武筑波店と大阪八尾市の西武八尾店が閉店。その前日には、さくら野百貨店仙台店を運営するエマルシェ(仙台市)が仙台地裁に自己破産を申請して営業を停止するなど、閉店ラッシュが止まりません。

さらに、地方のコンビニの閉店ラッシュも止まりません。

これらの地方の生の声を真摯に聴けば、消費税増税は完璧な失敗であり、効果のある経済対策をするには、まずは消費税を5%に戻すこと、さらに実質賃金や格差を是正するためにも、追加金融緩和すべきことは明らかです。

流通大手イオンの岡田社長は12日の決算会見で、「脱デフレは大いなるイリュージョンだった」と述べ、消費の厳しい現状を指摘しました。

イオンの2月までの1年間の決算は、本業のもうけを示す営業利益が前の年度に比べて4.4%増え、1847億円となりました。

一方、岡田社長は、これまでの経営方針には課題もあったと指摘しました。

イオン・岡田元也社長「“脱デフレ”というのは大いなるイリュージョン(幻想)だったと思いますが、これをきちんと見抜いて対処することに著しく欠けた」としています。

確かに、雇用は良くなっているのですが、8%増税の破滅的な大失敗によってGDPの伸びは少なく、未だ韓国以下の伸びです。

岡田社長は、消費税の増税などで値上げ圧力に屈したと指摘した上で、インターネット通販の拡大で低価格化がすすみ、消費者にも依然、節約志向があることから、今後は、ディスカウント事業に力をいれるとの考えを示しました。

安倍総理は外野の声に惑わされることなく初心に帰るべき
こうした変化を謙虚に分析して、経済に対して適切に対応していかなければ、本来政治家など勤まらないはずです。にもかかわらず、トンデモ経済論を信奉したり、経済対策といえば、公共工事や増税しか思い浮かばないような政治家は、政治家として失格です。

民進党であろうが、自民党であろうが、他の党であろうが、こうした経済の現実を知らなければ、どの政権でも短命に終わります。

それに、政治家個人でも、いつまでもトンデモ経済論にしがみついたり、有権者の生の声を聴いてそれに正しく応えることができないというのであれば、現在では多くの人が経済や雇用に関しても、わかりやすく説明時代には、いずれ有権者の怨嗟の対象となり、今後の選挙では当選できなくなるかもしれません。

地方の百貨店や、コンビニ(フランチャイズが多い)も過去のデフレや、8%増税に耐えに耐えてきたわけですが、もう堪忍袋の尾がきれかかっています。他の業界でも、そのようなところは多いです。

結局有権者の真の声が聴けない政党も政治家も滅ぶということです。このような状況では、安倍総理は初心にかえって、構造改革やミクロ手法の前に、量的追求緩和や、積極財政に大きく舵を転じていただきたいです。

そうして、ポスト安倍に関しても、もし安倍総理がそれが可能なら、後継の人に因果を含めて、まともな金融政策、財政政策をしない限り、民進党の再生が全く困難になったように、自民党もその運命を辿ることを理解させ、因果を含めるへきです。

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2017年8月2日水曜日

安倍首相が使ったクレジットカードは... しゃべる飲食店主、放送するTBS―【私の論評】故意に、焼肉店店長を晒したTBSの手口(゚д゚)!


店長が安倍晋三首相の個人情報わべらべらと喋ったとされる焼肉店「鉄庵」
山梨県富士河口湖町にある焼き肉店の店長がTBSの報道番組で、安倍晋三首相の個人情報をベラベラと喋った、とし、店のレビューに批判が殺到、「炎上」状態になっている。放送したTBSに対しても、店長の話を何の躊躇もなく会話の字幕まで付けて放送したとして「個人情報を晒してますね」などと批判が向けられている。

番組では安倍首相と加計学園理事長の交友について報じ、訪れたという焼き肉店の店長は、安倍首相のクレジットカードは「VISAのゴールドだった」などと語った。

TBSの取材スタッフに答える荒井章治鉄庵店長
 「ビールは1、2杯のんだかな?」

問題になっている番組はTBS系「報道特集」(2017年7月29日放送)。加計学園の獣医学部新設に安倍首相の優遇はあったのか、というテーマで話が進み、第2次安倍内閣発足以降、首相と理事長はゴルフや食事など分かっているだけで14回会っている、という解説があった。その一つが富士河口湖町にある焼き肉店で、カメラはその店の中に入って行った。店長へのインタビューが始まり、店長は両者を含む団体が使ったという座敷に案内し、安倍さんは知っているが、理事長の事は当時は知らなかった、一般客と同じように静かに召し上がっていた、と説明し、
「上タン、上カルビ、上ロース...あとはハラミ、ビールは1、2杯のんだかな?」

と語った。記者から支払いはどうしたのかと聞かれると、
「支払いは安倍さん個人のカードですね。VISAカードでゴールドですね」

そう話す店長の映像を、字幕付きで流した。

ネット上では度々、有名人が店に来たなどと店員がSNSで報告するとプライバシーの侵害、個人情報の漏えいだとして「大炎上」に発展する。俳優の山本耕史、堀北真希夫妻が新居を探しに来たとの不動産店員のツイートや、 俳優の玉木宏さんのサインが入ったクレジットカードの伝票の写真を空港の土産物店の店員がツイッターにアップするなど様々なことが起こった。今回は、テレビで堂々と安倍首相の個人情報を話したとしてネット上で怒りが爆発し、焼き肉店店長への批判が噴出している。

 苦情の電話がひっきりなしにかかってきている

ツイッターには、
「ありえない!! 客の情報を公開するとか、どういう神経してるんだ」
「こういう経営者っているんだなぁ。個人情報を垂れ流しちゃったら致命的でしょ」
「カードの守秘義務違反」
などといったことが書き込まれた。グーグルのレビューサイト「クチコミ」では、これまで数件程しかなかった同店の評価数だが、放送後に一気に急増し、17年8月1日16時過ぎに190を超え、その殆どが「☆5」で満点中「☆1つ」だ。
「クレジットカードの会社、ランク等も晒す方針のようです。是非、現金でのお支払いをお勧めします」
などが書き込まれ「炎上」している。

批判の先はTBSにも向けられ、店長が安倍首相の情報を語ったとしても放送していいものとダメなものについては区別が付くはずだ、とし、
「どんなメシ食ってどんなカードを使ったかを公にすることが社会正義なのかい?」
「特定秘密ガー 共謀罪ガー と騒ぐどころか TBSは 総理の個人情報を晒してますね」
「店も店だがTBSは逝くとこまでいきましたね」
などといったことがツイッターや掲示板に書き込まれている。

J-CASTニュースが8月1日にこの店に取材したところ、放送後に苦情の電話がひっきりなしに来ているようで、困り疲れ果てているような感じだった。そして、なぜ安倍首相の個人情報をカメラの前で語ったのか、そもそもどういう趣旨の取材をTBSから申し込まれたのかを聞いたのだが、
「管理者が今は不在のため、後日に連絡いただければと思っております」
ということだった。

【私の論評】故意に、焼肉店店長を晒したTBSの手口(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、TBSの報道番組とされている番組の正式名称は「報道特集」です。問題になっているのは2017年7月31日の放送です。


この店長の名前、もう公開状態になっていますが、何と上の写真でご覧になってもわかる通り、すでにテレビで放映されています。

まずは、この店舗の基本情報を掲載しておきます。
電話: 0555-72-2929
予約: hotpepper.jp
以下に、グーグルマップの最近の口コミを掲載しておきます。


このような批判が巻き起こるのも当然といえば、当然です。

すでに安倍総理も話している通り、加計孝太郎氏とは友人関係にあるのだから一緒に食事をしていても何ら不思議はありません。それにもかかわらずマスコミはプライベートを根掘り葉掘り調べ上げ、あろうことか店長も情報を提供してしまいました。

注文したメニューやクレジットカードのことを証言して一体何が得られたというのでしょうか。真相を明かすための正当な取材と報道なら許されるますが、これはもはや低俗な週刊誌と同レベルではありませんか。

ネット上では「最低な店」「早く潰れてほしい」などと辛辣な声が飛び交っています。少なくとも安倍総理はもう二度とこの店には行かないでしょう。

そうして、何よりも非難されるべきは、こういう低俗な内容をテレビ報道してしまったTBSです。テレビで取材した内容なで、すべて報道するわけではないです。むしろ、報道されない内容のほうが多いはずです。良識は働かなかったのでしょうか。

今回の騒ぎのもととなっているのは、一般人とは違い、「安倍総理」です。お店側としても、これは驚いたでしょう嬉しかったことでしょう。

お店にお客を呼べるネタになるかもしれないし、話題になることは間違いなしです。店長には、それくらいの欲はあったと思います。これは、言ってみれば、森友問題で安倍総理や昭恵夫人を利用した篭池氏の考えと似たところがあったと思います。

篭池氏は安倍首相や昭恵夫人を利用したばかりか、天皇皇后領陛下まで利用して、陛下が森友学園関連のイベントに立ち寄られたなどと自分のサイトに勝手に掲載しました。さらに、保守系の論客を多数招いて講演をしてもらうなどのことを実施しました。

そうして、挙句の果てにマスコミに利用されあることないことペラペラ喋り、野党に利用され国会喚問で証言をするなどのことしました。篭池氏としては、マスコミや国会議員を利用するつもりだったのでしょうが、結果として利用されてしまったようです。

そうして、やはり焼肉店の店長の心の中には、テレビを利用という目論見もあったでしょう。テレビはメディアとして未だ力があり、自分の店のことが報道されれば、かなり影響力があり、宣伝になると踏んだのでしょう。

しかし、この店長の目論見は、逆にTBSの「報道特集」によって潰されてしまいました。宣伝になるどころか、多くの批判にさらされ、炎上ししまいました。あのような取材と報道さえなれば、首相の御用達の店ということで、話題になり、徐々に人気を高めていったのではないかと思います。

実際食べログのコメントを見ると、好意的な内容が掲載されていました。


しかし、今回の動画で店長の問題発言をあえて報道したのは、間違いなくTBS側の責任です。普通は、修正を入れるのが当たり前ではないでしょうか。後から”ピー”の音声をかぶせるることや、”カット”など何とでもできたはずです。

でもそれ実施してあえて、「焼肉屋の店長」が勝手に発言しているという、スタンスで実際に放映してしまうというところが、問題です。店長も全部そのまま、放送されることまでは予期していなかったかもしれません。

本来だったら、荒井店長の顔にモザイクをかけたり、クレジット
カードのとろにはピーをいれるなどの配慮があってしかるべき
バラエティ番組でも芸能タレントが「誰々のことが実は大っ嫌い!共演NG」とか「誰々と過去に関係を持ってしまった」など”危ない発言”にはそれを隠すため確実に”ピー”が入ります。

映像だったらモザイクなりカットなり入ります。そのままTV局側も放映してしまえば確実に炎上、最悪、当事者から名誉毀損で訴えられるという可能性が極めて高くなると思います。

番組に出演しているタレントさんは収録とはいえ、実際にはその会話を聞く訳ですからリアルに裏事情を知ってしまう事にもなります。

しかしその情報の公開が「スタジオ内」という範囲だからま、問題も公にならずその場は笑ってすますことがほとんどなのだと思います。

しかいし、今回の一件は、確実に全国ネットで放映されることが事前にわかっているものです。

数十人規模ではおさまらないはずです。数百万人、数千万人規模になる可能性すらあります。さらに、これはSNSなどによって拡散されることはわかりきっていたと思います。そうならないと思ったとしたら、随分頭が悪すぎるのではないかと思います。

これならTwiiterで炎上するような悪いネタ系と対して変わらないのではありませんか。そうして、これは結局TBSのスタッフが意図して意識して実行したとしか思えません。

その背景には、テレビ局を含めたリベラル・左派はとにかく「時の権力と対峙するのが自分たちの使命であり、正義である」との考えに凝り固まり、とにかく安倍総理が嫌いで、事実や事実でないなどといいうことは二の次で、安倍首相個人を貶めためなら何でもやるという固い意思があるということだと思います。

焼肉店の店長の権利などの無視して、とにかく自分たちの目的を達成するという固い意思が感じられます。さらに、店長を故意にさらすことにより炎上させ、自分たちに火の粉がふりかからないようにしたのでしょう。あの異様な、籠池担ぎ、前川担ぎも似たようなものです。

今のところ、篭池夫妻は逮捕されましたが、前川はそのままです。これから、様々なことが暴露され、篭池夫妻や前川に非難が殺到することになるでしょう。しかし、その背後には政治家や、マスコミがいたことを忘れるべきではありません。

これによって、少なくともTBSの加計問題の報道には問題ありということができると思います。ここまで、明白ではないにしても、他のテレビ局も同じような問題を抱えていると思います。

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2017年8月1日火曜日

“裏切り者”石破氏の党内評価急落…「ポスト安倍」争い、岸田氏が逆転リード―【私の論評】トンデモ歴史観・経済論の信奉者石破氏は総理大臣の器にあらず(゚д゚)!

“裏切り者”石破氏の党内評価急落…「ポスト安倍」争い、岸田氏が逆転リード

岸田外相 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 稲田朋美防衛相の辞任に絡み、安倍晋三首相の後継をめぐる「ポスト安倍」争いに異変が生じている。世論調査では、石破茂元幹事長がリードしていたが、党内的には岸田文雄外相の評価が急上昇しているのだ。外相と防衛相を兼務して存在感を高める岸田氏と、過去の「裏切り者」のレッテルが復活しつつある石破氏。8月3日の内閣改造・自民党役員人事をにらみながら、党内序列も激変しそうだ。

 「閣僚(稲田氏)が辞任することについて、国民のみなさまに心からおわび申し上げる。安全保障には一刻の空白も許されない。岸田外相に防衛相を兼務してもらう。北朝鮮の『核・ミサイル』開発が深刻さを増すなか、高度な警戒態勢を維持し、国民の安全を確保するため、万全を期す」

 安倍首相は28日、官邸で記者団にこう語った。

 防衛相辞任という“政治的空白”を突いてきたのか、北朝鮮は同日深夜にICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射した。

 この奇襲的ミサイル発射に対し、政府の対応は素早かった。安倍首相や菅義偉官房長官らは官邸にすぐに駆けつけ、国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合を開催し、対応を協議した。

 岸田氏は翌29日未明に官邸から防衛省に移り、自衛隊に対し、米韓と連携しながら情報収集や高度の警戒態勢の維持などを指示した。

 その後、岸田氏は記者団の取材に対し、「首相から『安全保障に一刻の空白もあってはならない』という意向が示され、私は防衛相を兼ねて務めている。(今回の事態に)防衛省、外務省、一体となって全力で取り組んだ。空白があったというようなことはない」と自信満々に語った。

 防衛相兼任初日から、危機管理対応に追われた岸田氏だが、その手腕の確かさを示すことにもなった。

 安倍首相は当初、防衛相の兼務を、麻生太郎副総理兼財務相に打診したが、都合が付かずに断念し、岸田氏を抜擢(ばってき)したとされる。内閣改造までの一時的措置だが、安倍首相の狙いはドンピシャリだった。

 官邸関係者は「通常、外相と防衛相の兼務は考えられない。米国なら、ティラーソン国務長官とマティス国防相の役割を1人でこなすことだ。短期間だが、多大な責任と権限を手にする。これは安倍首相が岸田氏に『絶対的な信頼』を寄せている証拠だ。麻生氏に先に打診したとすれば、当然、麻生氏の『岸田氏でいい』という了解も得ている。今回の兼務は、岸田氏が『ポスト安倍』で大きく先行したことを意味する」と語った。

 これまで、自民党内では「ポスト安倍」について、「岸田氏と石破氏が競い合い、非常時の緊急避難としては麻生氏」(中堅)とみられてきた。だが、「森友・加計学園」問題や、南スーダンPKO(国連平和維持活動)の日報問題を経て、党内の評価は変わった。

 官邸関係者は「政府与党の危機に、岸田氏は『一致結束して安倍政権を支える』と公言している。これに対し、石破氏はメディアに登場して政権批判を繰り返し、後ろから鉄砲を撃っている。石破氏はかつて自民党を離党し、あの小沢一郎氏(現・自由党代表)と行動をともにした。また、『先祖返り』しているのではないか」と語る。

石破茂
 実際、石破氏の側近である鴨下一郎元環境相は28日のTBS番組収録で、稲田氏をめぐる安倍首相の対応について「かばいすぎのそしりは免れない」と批判した。

 石破氏は、自民党が下野するきっかけになった1993年6月の宮沢喜一内閣に対する内閣不信任案に賛成した。解散総選挙後に成立した細川護煕内閣が、同年11月に提出した小選挙区制の導入などを柱とした「政治改革4法案」にも賛成し、役職停止処分などを受けた。当時の自民党幹事長は森喜朗元首相。その後、自民党を離党し、小沢氏らの新進党の結成に参画した。

 自民党ベテラン秘書は「石破氏は自民党が野党のときに出ていき、与党のときに戻ってきた。つまり『裏切り者』だ。ドイツの哲学者ヘーゲルは『歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は茶番として』と言ったが、安倍首相の苦境、自民党の危機を利用して、けしからぬことを考えている可能性がある。世論調査と正反対で、石破氏の党内評価は急落している。今の動きが『茶番』にならなければよいが…」と分析した。

 「ポスト安倍」を勝ち取るには、岸田氏や石破氏は将来、自民党総裁選で勝利しなければならない。現在、自民党は衆参で約400人いるが、安倍首相の出身派閥・細田派(96人)と、麻生派(59人)、岸田派(45人)を合わせると200人。一方、石破派は19人である。

 政治評論家の伊藤達美氏は「安倍首相は、岸田氏を副総理格で処遇すべきだ」といい、続けた。

 「現在、首相不在の際の臨時代理の順位は、1位が麻生氏、2位が菅義偉官房長官だが、岸田氏を2位にすべきだろう。政治家にとって貸し借りは大事で、岸田氏は今回、安倍首相に大きな貸しを作った。岸田氏率いる宏池会の創設者、池田勇人元首相は、安倍首相の祖父、岸信介元首相の後に総理の座を射止めた。岸田氏は、この事実を冷静に振り返り、安倍首相をしっかり支えて、この難局を乗り越えるべきだろう」

【私の論評】トンデモ歴史観・経済論の信奉者石破氏は総理大臣の器にあらず(゚д゚)!

石破氏の党内評価が急落するのは当然だと思います。私自身も、石橋が総理大臣になることには絶対に反対です。それについては、今に始まったことでなく、以前からそう思っていました。それに関しては、以前のこのブログの記事にも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
石破氏、ポスト安倍狙う“秘策” 党総裁選改革案は「ゲルマンダー」―【私の論評】安部総裁の本来の勝負は平成15年の自民党総裁選!ここで石破総裁が誕生すれば「戦後体制からの脱却」は遠のき、失われた40年が始まる!(◎_◎;)
虎視眈々と自民党総裁の椅子をうかがう石破幹事長
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に石破氏が総理大臣には不適任であることを示した部分を掲載します。 
"
石破茂氏は、総裁選での安部総理の最大の敵ですが、われわれ国民にとっても、最大の敵かもしれません。少なくとも、彼だけは、総理大臣はおろか防衛大臣にしてもいけない人物だと思います。いや、本来は、国会議員だってまともな国だったらなれないかもしれません。

その根拠を以下にあげます。その根拠というのは、石破茂氏の歴史観です。石破氏が防衛大臣だったときに、自らの歴史観を披瀝したことがあります。

この歴史観について、雑誌「2008年WILL6月号」で渡部昇一氏が石破大臣を国賊だと批判していました。

石破氏の中国の新聞に載せられたインタビュー記事は衝撃的であり、この件について当時政府が何も動かなかったことも驚愕です。中国の情報工作はますます進み、当時の石破大臣も篭絡されたのではないでしょうか?だとすれば、末恐ろしいことです。

以下にこの渡辺昇一氏の記事の一部を引用します。
渡辺昇一氏
石破大臣の国賊行為を叱る
渡部昇一
中国共産党の新聞「世界新聞報」(1/29)に駐日記者が石破茂防衛大臣の執務室でインタビューした記事を載せた。 
【石破防衛相の発言】 
●私は防衛庁長官時代にも靖国神社を参拝したことがない。第二次大戦の時に日本の戦争指導者たちは、何も知らない国民を戦線に駆り出し、間違った戦争をした。だから私は靖国神社に参拝しない、あの戦争は間違いだ、多くの国民は被害者だ。 
●日本には南京大虐殺を否定する人がいる。30万人も殺されていないから南京大虐殺そのものが存在しないという。何人が死んだかと大虐殺があったかは別問題だ 
●日本には慰安婦についていろいろな見解があるが、日本軍が関与していたことは間違いない。 
●日本人が大東亜共栄圏の建設を主張したことは、侵略戦争に対する一種の詭弁だ。 
●(中国は日本に対する脅威であるから対中防衛を強化せよという人たちは)何の分析もしないで、中国は日本に対する脅威だと騒いでいる。 
●日本は中国に謝罪するべきだ。
これではまるで稚拙なサヨク学生の言い草ではないか。ギルト・インフォメーションに基づく戦後自虐教育の落とし子そのものである。 
これが事実だとすれば石破茂防衛大臣に対する認識を改めねばならない。 
「WILL」編集部が石破茂防衛大臣に確認したところ、事務所から次の回答が来たという。
問 1月29日付け「世界新聞報」に石破防衛大臣の執務室での独占取材内容が掲載されているが、この取材は実際に受けたものか。 
答 実際に受けたものです。 
問 いつの時点で取材を受けたのか。 
答 平成19年11月21日(水)に取材受けいたしました。 
問 掲載された内容は、石破防衛大臣が話した事実に即しているのか。 
答 インタビューを先方が記事にまとめたものですので、事実に即していないと言うほどではありませんが、事実そのままでもありません。 
問 記事が事実に即していない場合、それに対してなんらかの対処をされたか。 
答 前の答えの通り、どのマスメディアでも発言を加工することはありますので、特別対処というほどのことはしておりません。 
いやはや、恬として恥じない石破氏はアッパレ! 
しかし、この大臣の下で働く自衛隊のみなさんの心情を考えると哀れである。 
その著書「国防」を当ブログでも紹介し、軍隊でないために行動基準がネガティブリストではないこと、軍法会議がないこと、NTP体制は「核のアパルトヘイト」だという発言を好意的に取り上げたが、所詮は単なる「軍事オタク」で国家観も歴史観も持ち合わせていないことが判明した。 
ブッシュ(父)大統領がハワイ在住の日系人の式典で「原爆投下を後悔していない
(I am not sorry)」と発言したことについて、渡部氏はいう。 
「他国に簡単に謝罪するような人間は、大統領はおろか、閣僚にも絶対になれません。それが諸外国では当たり前です」 
野党首相の村山富市は言うに及ばず、宮澤喜一、河野洋平、加藤紘一その他の謝罪外交を繰り返した政治家たちは「当たり前」ではないのである。 
石破茂防衛大臣もその一人として辞任を要求する。
それにしても、石破茂という人物は、とてもじゃないですが、安部政権の幹事長にはふさわしくない人物であることは、はっきりしています。そもそも、歴史観が駄目ですし、それに、今回増税を当たり前のど真ん中かと思っていることから、マクロ経済学も他の自民党の政治家と同レベルの低水準です。しかし、このような人物を幹事長にせざるを得ない安部総理の自民党内部での孤立無援の状況が良く理解できます。
"
渡部昇一先生は、今年の4月にご逝去されました。ご冥福をお祈り申し上げます。石破氏が現在ポスト安倍の有力候補であることを知ったら、先生はさぞ残念に思われることでしょう。

上の引用の、最後のほうにマクロ経済学に関する見識も他の自民党の政治家と同レベルの低水準であることを掲載しました。

石破氏は完璧なリフレ政策反対論者です。石破氏の反リフレ政策の議論は、マネーのバラマキを継続すればハイパーインフレになるというもので、これは石破氏の年来の主張でもあります。2010年7月のインタビューで、すでに彼は以下のように述べています。
(みんなの党(当時)が提出したデフレ脱却法案について) 
 わたしはああいう考え方をとらない。マネーのバラマキは効果的かもしれないが、1年限りで終わるものでなく、2年、3年、4年と続ける必要があり、そのときハイパーインフレにならないという自信がない。麻薬を打つと元気になるが中毒になる前に止めるからいい、という話にならないか。(デフレ脱却法案への反対は)党としてまとまっている。うまくいくかもしれないが、ギャンブルではないのだから(政策として採れない)インタビュー:民主代表選の結果次第で首相交代も=自民政調会長(2010.07.16)
この石破氏の見解が間違いだったことは、もうすでに明らかになっています。日銀の大胆な金融緩和政策が始まってすでに5年目が経過しました。しかし、ハイパーインフレになるどころか、14年の消費増税と世界経済の不安定化によって、いまだに事実上のデフレ状態が続いています。

もっともこの点についても、単にデフレ状態のままだからという理由で、アベノミクスは否定されるわけではありません。安倍政権になってからの金融緩和政策によって、就業者数の増加などの各種経済指標の大幅改善をみれば、よほどの悪意を持たない限り、誰もが認めるところだろうと思います。

最近でも石破氏は、消費税を必ず上げることを約束していることが国債の価値を安定化させていることと、またプライマリーバランスの2020年度の黒字化目標を捨てることも「変えたら終わりだ」とマスコミのインタビューに答えています。

要するに、石破氏の「反アベノミクス」政策とは、①大胆な金融緩和政策は危険なので手じまいが必要、②財政再建のために消費増税を上げることが最優先、というものです。もしこれらの政策を実行すれば、間違いなく日本経済は再び大停滞に陥ることになります。

安倍首相は、12年秋の自民党総裁選からこのインフレ目標の導入を掲げて総裁選に勝利しました。そして政権の座に就いてからも日銀にインフレ目標の導入を事実上迫り、日銀の人事管理(正副総裁選出)を通じて導入の実現に成功しました。

13年のインフレ率の改善は目覚ましいものがありました。これはインフレ目標によってそれまでとは違い、マネタリーベースの水準と物価水準の相関がよみがえりつつある状況になったからです。ただし、残念ながら、それを妨害したのが消費増税でした。

しかし、仮にマネタリーベースの水準と物価水準の相関がよみがえり、マネーを増やせば物価もそれに応じて増加する世界になれば、石破氏の主張するようにハイパーインフレになるでしょうか。それはただのトンデモ理論です。

過去のハイパーインフレの経験をみると、物価が急速に上昇するまでに1年以上の時間の遅れがあります。その間に金融引き締めを行えば良いということです。金融引締めをする暇もないほど、急速にインフレになるということはないのです。

そうして、インフレ目標自体が重要になります。インフレ目標は現状では、対前年比2%の物価水準を目指すというものです。2%のインフレ目標の導入自体が、ハイパーインフレを起こさない強力な手段になっていることは論理的にも理解いただけるものと思います。

一方、都内で開いた岸田派のシンポジウムで、岸田氏は、4年半のアベノミクスの成果を強調する一方、格差の問題点に言及しました。派閥創設者の池田勇人元首相が所得倍増論を進める中で、中小企業や地方対策といった格差是正にも努めた事例を紹介。アベノミクス修正の必要性を指摘しました。

岸田氏は来場者から政権を取った場合の政策を問われ、「閣僚なので内閣不一致になっちゃいけないと思いつつ覚悟して来た」。言葉を選びつつ、「これだけはやりたいのは何か。成長と分配のバランス」。アベノミクスが成長戦略に偏りがちであることに懸念を持っていることを示唆しました。

岸田氏は石破氏のように、アベノミクスを根底から否定しているわけではありません。それに、再分配政策に関しては現状の自民党内ではなぜか不人気な政策なのですが、推進すべき政策の一つでもあります。

しかし、格差の是正をするためにも、まずは経済を良くすること、さらに雇用の面でも、所得をあげるためには、まずは現状の失業率の3%台では、まだ不十分であり、構造的失業率である2%半ばまでもっていかなければ、実施賃金はなかなか上がりません。そのために、物価目標2%が達成させていない現在追加の量的金融緩和は絶対に実施しなければなりません。

さらには、物価目標を達成するためにも、今こそ積極財政を実施しなければなりません。そのための一番の近道は、消費税減税です。これは5%に戻すべきでしよう。

中小企業や地方対策を行うにしても、失業率が2%台半ばになっていること、物価目標を達成していなければ、無理です。このこと岸田氏が本当に理解すれば、岸田氏が総理大臣になったとしても、自民党はうまくやっていけるでしょう。

ただし、岸田氏が景気循環的なマクロ政策の重要性に目覚めず、構造改革などにばかり注力するようであれば、また失われた20年まいもどり、岸田総理大臣が実現しても、短期政権で終わることでしょう。

一方、石破氏の場合は、到底景気循環的なマクロ経済政策の重要性に目覚めるなどということはあり得ないでしょう。

トンデモ歴史観・経済論の信奉者石破氏は総理大臣の器にあらずと、声を大にして言いたいです。

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2017年7月31日月曜日

安倍政権は本当に危機的なのか、「あの法則」を使って検証してみた―【私の論評】初心に戻れば安倍政権の支持率は必ず回復する(゚д゚)!

安倍政権は本当に危機的なのか、「あの法則」を使って検証してみた
   安倍政権は「危険水域」か?

報道各社の世論調査で、軒並み安倍政権の支持率が低下し、不支持率が上回る数字となっている。この原因は何か。この傾向は今後も続くのか。今回はそれを考察したい。

過去の本コラムでは、その数値が「50」を切ると政権が倒れるという、永田町では有名な、いわゆる「青木の法則」を紹介してきた(2014.10.20「小渕経産相辞任で安倍政権への影響は? 第一次政権「辞任ドミノ」から先行きを分析する」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40822)。

また、青木率(内閣支持率+与党第一党の政党支持率。これが50を切るとその政権は危ない)を使って、選挙のたびに自民党の獲得議席を予想してきた。

(2014.11.11「解散するなら「今でしょ」! 「青木率」から分析する自民党が勝つためのタイミング」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41027

2016.05.23「衆参ダブル選になったら? 驚異の的中率を誇る「青木率」で自民党の獲得議席を予測してみた」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48719

2016.10.03「蓮舫・野田氏が相手なら、次の選挙で「自民党300議席」は堅そうだ」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49851

青木率をもとにした筆者の選挙結果の予想はかなり当たっているので、安倍政権のトップ級からも「関心を持って読んだ」と直接聞いたこともある。

NHKの「政治意識月例調査」によれば、現在の青木率(内閣支持率+与党第一党の政党支持率)は65ポイントであり、第二次安倍政権誕生以降では最低の水準である。世論調査では各メディアがそれぞれ独特の調査手法で数値を出しているので、あるメディアだけの数値をもって判断するわけにはいかない。

そこで、NHKの調査をひとつの基準とする、NHKの数値を、過去にさかのぼって見てみよう(下図)。

代政権の青木率の推移をみると、ほとんどの場合、発足当初に高かった支持率が時とともに低下し、40~60程度まで下がったところで退陣している。この意味で、NHKの数字を使うと、いわゆる「青木の法則」には確かに説得力がある。

こうしてみると、青木率は60を切ると、その後の回復はまず難しく、じりじりと下げて50以下になって結局退陣に追い込まれるケースが多いことがわかる。ということは、「青木率60」が政権維持の一つの目安だ。

現在の安倍政権の青木率は65であるので、回復がほぼ不可能になる60という危険域に入っているわけではない。ただし、このままでは危険域に突入するというリスクは目に見える。

   第二党との差は圧倒的

今回は青木率だけでなく、別の数字も見ておこう。青木率は内閣支持率+政党支持率であるが、もう一つの指標として、首相の人気、を考えてみよう。これは、内閣支持率から政党支持率を引いて算出する。

首相はそのまま党総裁も務めているのだから、一般的には内閣支持率は政党支持率を上回る。しかし、首相の人気が落ちてくると内閣支持率は急落し、退陣を余儀なくされる。

歴代政権の首相人気の推移をみると、政権発足時の「首相の人気」は20~30程度である。ところが、徐々に下がり、これがゼロ近辺になると退陣する(下図)。現在の安倍政権の首相人気(=内閣支持率-政党支持率)は4であり、これもすぐに、ではないが危険域に近づいている。
しかしながら、現時点では野党の民進党も低迷している。NHK調査では、民進党支持率は8%だ。ここで、批判の受け皿となる第二党についても考えてみる。<第一党支持率-第二党支持率>を算出し、その推移をみてみよう(下図)。

この数字がマイナスになると、第二党の支持が第一党を上回ったこととなり、政権交代が起こるわけだが、現時点では、民進党の低迷によってその差は開いている。第二党との支持率差を考慮するなら、いまの自民党は過去と比べても強いことになる。

この点から、民進党が自民党に勝つという政権交代は想定しがたい。一方、政権交代の可能性はないが、自民党内での不満の高まりから、党内抗争が強くなる可能性は否定できない。

さて、最近になって内閣支持率が急落している要因は何だろうか。若者の政権支持率にはあまり変化がないそうだが、もともと安倍政権支持が少なかった高齢者と女性の支持率がさらに下がっているようだ。

2ヶ月ほど前までは、森友学園や加計学園の問題が騒がれても、内閣支持率は大きく落ちなかった。ところが、1ヶ月前にテロ等準備罪での国会運営が一部で問題視されると急落し、さらに都議選の結果を受けて支持率は再び急落した。改めて現状を説明すると、内閣支持率とともに自民党支持率が急落する一方、他政党の支持率は上がらず、支持なし層が増えている、ということだ。

   雇用の確保」で見てみれば…

2ヶ月前までの安倍政権の高い支持率は、小泉政権以降の歴代政権の支持率と比べて、いくつかの特徴があった。

年代別でみると、他の政権では、一般的に高齢世代ほど支持率が高い傾向があったが、安倍政権は逆に若い世代ほどの支持率が高かった。男女別でみると、他の政権では男女で支持率の差は少ないが、安倍政権は男の支持率が高かった。

実は、10年前の第一次政権と比べても、世代別政権支持率と男女別政権支持率は異なっている。その要因は、今の安倍政権が高い水準の「雇用の確保」を達成・維持していることと関係している。筆者のような大学関係者には直ぐわかるが、今の若い世代は就職に敏感である。数年前の民主党政権時代には、就職がなかなかできなかった。失業率が高いと、限界的な大卒者の就職率も悪くなる。

ところが、政権交代して、大して大学生の学力も変わっていないのに、今は就職で困ることはほとんどない。これは安倍政権のおかげと実感しているのだろう、若い世代では安倍政権支持率が高い。他方、高齢世代では雇用拡大の恩恵を受けることは少ないから、それが支持率に直結することはない。

なお、正規雇用でも有効求人倍率が1を超えたり、すべての都道府県で有効求人倍率が1をこえるなど、雇用については過去の政権でもほとんどなしえなかった偉業を達成している。これらの雇用の成果は、本コラムで繰り返して主張してきたように、金融緩和のおかげである。

ちなみに、安倍政権は長期政権であるが、平成以降の政権でみると、雇用の確保に成功した政権だけが長期政権になっていることも指摘しておこう(下図)。

平成以降、就業者数を伸ばした政権は、橋本政権、小泉政権、安倍政権しかない。このうち橋本政権は1997年4月からの消費増税を行い、失速した。小泉政権は発足当初から消費増税はやらないと宣言し持ちこたえ、安倍政権は2014年4月からの消費増税で一度失敗したが強力な金融緩和で持ちこたえ、2回目の消費増税という失敗はしていない。

高齢者で支持率が低い理由は、高齢世代では雇用拡大の恩恵を受けることはないことに加えて、社会保障カットが進められていることにあるだろう。民主党政権時代から社会保障改革の名のもとに、社会保障費自然増のカットが継続的に行われ、それが高齢世代にボディブローのように効いている。

そして女性の支持率がさらに下がったのは、強引な国会運営に加えて、豊田真由子議員の暴言、稲田朋美前防衛相の失言が原因だろう。

昭恵夫人の奔放な発言まではよかった。旦那の安倍さんは大変だよね、という同情もあった。しかし、豊田氏の暴言は本当に酷かった。高齢世代の男性の支持も大きく失ったはずだ。筆者もあの発言がテレビで流れるたびに腹が立った。

稲田朋美と豊田真由子 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
稲田防衛相の失言も酷かった。ある女性芸能関係者は、神妙になるべき会見で稲田防衛相がつけまつげをしていたのは、ふさわしくないといっていた。こうした点に女性は敏感である。

    回復の手段は…?

また、今回の内閣支持率急落は、一部マスコミの偏向報道がそれに拍車をかけたという意見もある。たしかに、一部マスコミの偏向報道ぶりは凄かった(「加計学園問題は「絶好の教材」 問われるメディア・リテラシー https://www.j-cast.com/2017/07/27304315.html)。

もっとも、一部マスコミの偏向ぶりは最近激しくなったわけではなく、これも「政治」の一環である。過去にも過激な報道があったものの、法的な問題はなく、何のお咎めもなかったという結果はいくらでもある。

実は長期政権であった小泉政権でも、青木率が危険域に近づいたこともあった。2002年のはじめに、田中真紀子外相を更迭し、内閣支持率も自民党支持率も急落した時のことだ。

加計学園問題で、田中真紀子氏が沈黙を破り、安倍晋三
首相に「もう限界」と退陣を迫る発言をしたとされる
2002年6月には、内閣支持率39,自民党支持率25で、青木率64、と今の安倍政権と似たような状況だった。これを一気に打開したのが、2002年9月17日の日朝首脳会談だった。これで、内閣支持率も自民党支持率も一気に回復した。

どの政権でも、地道な政策を常に模索・推進しており、それが花開くかどうかは、運次第の一面もある。今回、安倍政権が「雇用の回復」という王道で大きな成果を出したにもかかわらず、結果として支持率が低下しているのは奇妙であるが、それも「運次第」というべきか。

その回復は容易ならざるものがあるが、まだ危険域には達していない。電撃訪朝ではないが、今後数ヶ月で内外の政策で分かりやすい成果を出せるかどうかがカギを握るだろう。

さしあたり、今週にも行われる予定の内閣改造がひとつ注目である。もっともこれは次へのステップのためであり、人事で支持率が急上昇するほど甘くない。その次は9月の補正予算である。それによって、10月10日告示、22日投票という予定の衆議院青森4区・愛媛3区の補欠選挙の結果がどうなるか。

これらの選挙区では自民党が2つとも議席をもっていたが、これらを守れるかどうか。さらに、外交面で目に見えた成果が出てくるかどうか…それらが安倍政権の帰趨を決めるだろう。

なお、この際解散すればいい、という意見もなくはないが、仮にいま総選挙すれば、自民党は220~240議席程度の「惨敗」になる公算が高いだろう。自民党が減った分は、その他の政党が奪い合うことになるだろう。解散が得策ではないことは、それこそ容易に予測できるのだ。

【私の論評】初心に戻れば安倍政権の支持率は必ず回復する(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事には、支持率回復のための次の一手については、直接は触れていません。しかし、それについてはすでにある程度明らかになっています。

支持率が低迷を続ける中、安倍晋三政権は再び経済政策重視の政権運営へとシフトを始めています。安倍総理が、支持率回復の鍵とみているのは、国民が実感できる賃金アップでのようです。秋の臨時国会では非正規労働者の待遇改善につながる「同一労働同一賃金」の実現が焦点となります。



安倍首相は24日、支持率急落のきっかけとなった学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題などめぐる閉会中審査に臨み、景気が良くなったと実感してもらえるような経済の好循環によって結果を出し「国民の信頼を回復していきたい」と答弁。その上で、「国民を豊かにしていくことであり、仕事をつくり、賃金を上げていくことだ」と語りました。

賃金アップは家計収入を増やし、安倍首相の政権運営に懐疑心を深める国民からの信頼回復につながります。経済の回復を揺るぎないものにしていくことは、支持率回復に必要であることは論を待たないと考えられます。

24日付の毎日新聞の世論調査によると政権支持率は26%となり、第2次安倍政権発足後で初めて3割を切りました。来年9月に自民党総裁任期が終わることを踏まえて、「代わった方がよい」との回答は62%にのぼり、「総裁を続けた方がよい」の23%を上回りました。

支持率の低下は有権者がアベノミクスに納得しておらず、現状の財政政策や金融政策では不十分だという警告であると受け取るべきです。これは、このブログにも何度か掲載してきたように、8%の消費増税は大失敗であったし、失業率が3%台のまま推移し、本来の2%台半ばにはなかなか到達せず、さらには2%物価目標もなかなか達成できないという状況では、追加の量的緩和が必要なのは、統計数値などから明白であるにもかかわらず、日銀はそれを実行していません。

しかし、政治家、マスコミや識者などが、そのことには触れず、あろうことか増税すべきであるとか、構造改革が不十分とか、金融政策のリスクを強調するため、有権者の多くが、構造改革が不十分であるとか、アベノミクスの金融政策がリスキーであるなどと考えているようです。

それに輪をかけて、マクロ経済に疎い国際通貨基金(IMF)は6月に発表した日本経済に関する審査(対日4条協議)終了後の声明で、アベノミクス第3の矢の構造改革の第一優先課題として「労働市場改革による生産性向上と賃上げ」を挙げました。その上で、公定賃金をインフレ目標と整合的に引き上げると同時に、黒字企業に対し毎年最低3%賃金を引き上げるよう奨励することを求めました。

マクロ経済政策に疎いことで評判のIMF専務理事ラガルト氏
IMFは、黒字企業に対して賃金を引き上げるように、奨励することで本当に賃金が上昇すると考えているとすれば、愚かとしか言いようがありません。そのようなことをしても、賃金は上がりません。

本当に賃金をあげる方策は、失業率が3.0%台からなかなか下がらない現状では、本来日本の構造的失業率の2%台半ばまで、失業率を下げるように追加の量的金融緩和を実行することです。
ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ博士は、IMFが1980年代以降市場原理主義者たちの牙城となり、誤った経済政策を追求することになった結果、1990年代以降、世界経済に破壊的な作用を及ぼしたと、強く批判しています。

そんな中でもIMFの罪が最も大きいのは、東アジア危機を発生するきっかけを作ったことと、それを大災害へと発展させたことだといいます。私自身は、IMFは例外もありますが、全体としてマクロ経済政策には疎いと思います。これについては、ここで述べていると長くなってしまいますので、また機会を改めて掲載します。

とはいいながら、より高い賃金の実現へ向け機は熟しています。企業は大量の現金を抱えており、法人企業統計によると2016年10ー12月期の企業収益は過去最大を記録しました。5月の失業率は3.1%とG7諸国の中では最も低く、有効求人倍率は1.49倍と43年ぶりの高水準となりました。

しかし、厚生労働省によると実質賃金の前年比は12年から15年にかけて低下傾向にあり、16年はわずか0.7%増にとどまっています。

政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2017では、具体策として「同一労働同一賃金」と最低賃金の「1000円」への引き上げを掲げている。しかし、現状で、追加の量的緩和を実行しなければ、賃金だけあがって、雇用は減少するだけです。
骨太の方針の表紙
民主党政権時代には、最低賃金1000円という目標があったのは事実ですが、まともな金融政策をしていませんでした。その結果、傾向的に就業者数は30万人程度減少しましたた。それに比べて安倍晋三政権では金融政策はしっかりしているので、就業者数は100万人以上増加しています。それは下のグラフをご覧いただければ、良くご理解いただけるものと思います。


このような実績があるからこそ、雇用弱者ともいわれる、若者はブログ冒頭の記事にもあるように、安倍政権を支持するのは当然です。

それと、今年の骨太の方針からは、「増税」という文字が完璧に消えていることが、特徴的です。安倍総理は、支持率がどうのこうのと言う前に「増税」などあり得ないというのが、本音です。しかし、これには増税派の財務省はかなり神経を尖らせていて、また増税に向けて動き出しています。

厚労省の5月の毎月勤労統計調査によると現金給与総額は前年比0.6%増となりました。これは、不十分といいながらも、長期間量的金融緩和を続けてきた成果です。

ただ、日銀の物価目標2%の達成には不十分で、家計支出も低調です。16年8月に内閣府が実施した「国民生活に関する世論調査(16年度)」によると、49.6%が現在の収入に「不満」と答えています。このような状況では、一日もはやく追加の量的緩和を実施すべきなのは明らかです。

そうして、消費税増税後から、個人消費が伸びず、GDPの伸びがいまいちで、今のままだとデフレに舞い戻ったとしてもおかしくはないこともこのブログに掲載してきました。

消費税増税は大失敗だったことは今や統計数値などから明々白々であり、疑問の余地はありません。であれば、消費税は5%に戻すべきです。私などは、時限的に数年間、消費税をなくしても良いのではないかと思います。とにかく増税をして、大規模な経済対策をするというのは、全くの矛盾です。

増税すると経済に悪影響があるから、大規模な対策するというのなら、最初から増税しなのが一番です。もうこの手の愚かな、マクロ経済的な観点からすれば、悪手中の悪手は実行しないことです。

失業率が2%半ばまで下がり、それ以上下がらなくなるまで、そうして物価目標が2%になるまで、量的追加金融緩和を実施すること、消費税を5%に戻すこと、これを実行すれば、安倍政権の支持率はすぐに回復します。そうして、長期政権になるのは間違いないです。

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