2017年8月26日土曜日

【米海軍の新兵器】見えず音もなし…正確無比で無限に撃てるレーザー 1発わずか1ドル驚異の経済性―【私の論評】日本は世界最大高出力レーザーで核を無力化できる(゚д゚)!

【米海軍の新兵器】見えず音もなし…正確無比で無限に撃てるレーザー 1発わずか1ドル驚異の経済性

輸送揚陸艦ポンスに備えられたレーザー兵器システム「LaWS」
「スター・ウォーズ」などSFではおなじみのレーザー兵器。それがもう夢ではなくなっている。音もなく、目にも見えないが、ドローンを正確に打ち落とす。そしてコストも低い。米海軍の新兵器は、これまでの兵器の概念を大きく変える「革命」を予感させるものだ。

 まるでテレビゲーム

 「LaWS」(レーザー兵器システム)と呼ばれる新兵器は、ペルシャ湾に展開する輸送揚陸艦ポンスに配備されている。見た目は望遠鏡のようで“武器らしい”威圧感はない。

 米海軍が行った試射の様子を独占取材した米CNNテレビ(電子版、7月18日)の映像では、海上に飛ばしたドローンにレーザーが照射されると、翼から突如炎が上がって打ち落とされた。レーザーは目に見えず、音らしい音もない。担当者がモニターを見ながらコントローラーを操作する様子は、まるでテレビゲームのようだ。

 大量の陽子が光速で照射され、その速さは大陸間弾道ミサイル(ICBM)の5万倍になるという。射程5500キロ以上のICBMは再突入時の速度がマッハ24とされている。

輸送揚陸艦ポンス  写真はブログ管理人挿入
 低コストで低リスク

 LaWSを担当するカール・ヒューズ大尉はCNNに、「風、射程などを気にする必要はない。オートフォーカスなので、目標を定めるだけでターゲットを無力化できる。ビームも見えないし、音もしない」などと説明。悪条件下でも極めて正確な攻撃が可能で、米海軍は、二次的な被害を抑えることができるとしている。

 経済性も驚きだ。システム全体は4000万ドル(約44億4000万円)だが、1発当たりの費用はわずか1ドル。必要なのは小さな発電機で供給される電気と、わずか3人の乗員だけだという。ちなみに、4月に米軍が実験したICBM「ミニットマン」は1発当たり約700万ドルとされている。

 2020年代初めまでに配備拡大

 現時点では、過激派組織など対テロリスト戦で、車や船で近づく敵をピンポイント攻撃することを想定しているとみられるが、その用途は拡大しそうだ。

 CNNの報道を元に同兵器について報じた米国政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」(7月19日、電子版)によると、米海軍は2020年代初めまでに他の艦艇にも追加配備する計画で、さらにミサイルなどを標的とする技術を開発しているとしている。

 米防衛大手ロッキード・マーチン社は、複数のレーザーを組み合わせて強力なビームを照射できる出力60キロワットのシステムを開発中で、複数のドローンやミサイルを同時に迎撃することも可能になるという。

 同社のホームページは、「レーザー兵器は繰り返し何度も撃てる。基本的には無限に尽きない弾倉のようなものだ」としており、砲弾やミサイルを使わない攻撃の有効性をアピールする。

 米国以外でも開発が進んでいる。英国は1月、英軍が欧州の防衛企業とレーザー兵器の試作品を造る3900万ドルの契約を結んだと発表した。

 各国で着々と開発、配備が進むレーザー兵器。米海軍専門紙「ネイビー・タイムス」(電子版、7月19日)が表現したように、「もはや単なるスター・ウォーズのファンタジーではない」のだ。

【私の論評】日本は世界最大高出力レーザーで核を無効化できる(゚д゚)!

CNNがこの「LaWS」を報道した動画を以下に掲載しておきます。


過去長年わたり研究開発が続けられながら、高出力レーザー兵器の実用化が進まなかった最大の原因は、大気中でレーザー光が散乱し伝達されるエネルギーが減衰することにあったといいます。

大気の影響を最小化する目的で、ボーイング747に空中発射型のレーザー兵器を開発していたこともあるのですが、レーザーの威力は最大数十キロしか届かず、その範囲にミサイルが通過する前提で防衛網を築くことは非経済的で開発が滞っていました。

しかし、近年そのレーザー光を約12×10-15秒という極めて短いレーザー・パルス状で生成し、その短時間にエネルギーが集約されて100億キロワットに相当するものが開発されました。

この高エネルギー故に衝突する大気中の原資が瞬時にイオン化されてプラズマ状になり、これが大気中でのエネルギーの分散を防ぎ、かなり遠くまで到達可能となりました。

このレーザー兵器を用いれば、航空機や衛星上に搭載する必要もなく、幾何学的に見通しがつく範囲なら地上からのミサイル迎撃が可能になります。

しかも、迎撃の成功失敗は一瞬で判断できる上、相手のミサイルの速度に依存して迎撃確率が変わるミサイル防衛よりも遥かに精度は高く、ミサイルの軌道さえ正確に把握できればほぼ確実に核弾頭の起爆前に破壊して、被害を最小化することができます。

この技術は核抑止力を概ね無効化する技術であり、現在の核保有による軍事バランス崩れることになるでしょう。また更に、戦争の様相も大きく変わることになります。

大型の飛翔兵器であるミサイル、砲弾などはこのレーザー兵器での破壊が可能となり、無意味なものになってしまいます。大型の戦闘機も、戦闘機対戦闘機などの空中戦になる以前にレーザーで破壊可能ですし、携帯式小型レーザーが出来れば、戦車などもあまり意味がなくなるでしょう。

この兵器の登場により、攻撃する側には不利に働き、防衛側には有利に働くようになります。敵を特定できれば勝負はつくので、ゲリラ戦や接近戦など、古典的、アナログ的な戦争が再び主流になるかも知れません。

その際、大規模な軍隊ではなく小規模な戦闘やゲリラ戦、テロ等が実質的な脅威となるでいしょう。生物・化学兵器の重要性が、高まるかもしれません。これらの戦闘は、従来の大規模な戦闘と異なり規模が小規模化するので、交戦開始のハードルは下がり、局所戦の発生確率は高まるかも知れないです。

たとえレーザー兵器の登場によって戦争の方式が変わったとしても、日本の場合は四方を海で囲まれているために陸続きで隣国と接する欧州などよりもかなり有利なことになるでしょう。

この防衛網を破り攻撃するためには、おそらく、潜水艦で日本の沿岸まで深く侵入し、隙を突いて核ミサイルで攻撃するというスタイルが予想されます。ところが潜水艦のステルス能力は日本はずば抜けて高い上に、中国等諸外国の潜水艦はステルス性が低くて探知が容易なのですから、敵潜水艦の接近を防ぐことは比較的容易です。しかも、日本の対潜哨戒能力世界トップクラスとなります。

その上に、上記のようレーザー兵器を日本が持っていれば、かなり日本の防衛はしやすくなります。すでに、防衛省はこの実験などにとりかかっています。

さらに、日本のレーザー技術もかなり進んでいます。2015年には、大阪大学の研究グループが、世界最強のレーザーの生成に成功したことを、主要各紙が報じていました。この「LFEXレーザー」は、全長100メートルほどの巨大装置で生成され、2ペタワット(1000兆ワット)の出力を誇ります。

2ペタワット(1000兆ワット)の出力を誇る「LFFXレーザー」
国際エネルギー機関によると、2012年度に全世界が一秒間に消費したエネルギーは約18テラワット(1.8兆ワット)である。そのため、阪大のレーザーはこの500~1000倍の出力を持つことになります。

なぜここまで高い出力を得ることが可能なのだろうか。阪大のレーザーは、電子レンジ2台を2分間作動させたエネルギーを、1兆分の1秒という短い時間内に放出できるのです。同じエネルギーを、より短い時間で放出すれば、瞬間的な出力を上げることができるというわけです。

それまでレーザー出力の記録を保持していた米テキサス大学のレーザーに比べて、出力は倍、エネルギーでは100倍であり、名実ともに世界最強のレーザーです。

ちなみに米軍が、5万ワットのレーザーによって1マイル(約1609メートル)の距離から無人機を撃墜させる実験に成功していますが、その無人機を撃墜させた5万ワットのレーザーのパワーは、大阪大学が成功したレーザーの100億分の1しかないものでした。日本はすでにスターウォーズのデス・スター搭載の、スーパーレーザー」を開発できる能力を有していると言っても過言ではないのです。

デス・スターのスーパーレーザー

このように考えると、20年後の世界は今とはがらりと変わっているかもしれません。日本の技術力は中国や北朝鮮に対しては圧倒的に有利であるのは間違いないです。日本は世界最大の高出力レーザーで核を無力化できるのです。それまでの年月をどう乗り切るのかが日本の課題となるかもしれません。

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2017年8月25日金曜日

北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道―【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない(゚д゚)!

北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道

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中国人にとって憧れの地でもある北海道
経済発展が続く中国では、人びとの購買意欲は止まるところを知らない。日本国内でも中国人投資家がマンションを購入するなどの事例は多く聞かれるが、中国メディアの今日頭条はこのほど、中国資本が北海道の不動産を購入していることを伝えつつ、「北海道が中国の省の1つになってしまうほど」の勢いだと伝えている。

 記事は、中国資本が北海道の自然の価値に目を付けていることについて、日本国内では「北海道はいずれ中国の北海省になってしまうのでは」と危惧する声があるとした。中国では「北海道」は映画のロケ地として使用されたことなどから、ブランドとして高い認知度を誇りる。また、年間を通じて観光資源が豊かという現実的な魅力もある。

 日本人だけでなく中国人にとっても北海道は「いつかは訪れたい観光地」であり、中国では北海道という言葉を商品に記載すれば売れるほど、「自然が豊かで、食べ物は安全で美味しい」というイメージが根付いている。

 記事は、中国資本が北海道の不動産や山林を購入していることに、日本では危機感を示す声があるとしながらも、「日本の不動産会社も買い手のいない土地を持て余すより、中国企業によって運用してもらうことを望んでいる」と主張。実際に中国企業が購入した温泉宿泊施設が日本の文化を体験したい富裕層の間で流行している例もあると主張し、中国資本が北海道の価値に目を付けたのは、中国における北海道人気に便乗し、利益を得るためだと論じた。

 農林水産省が2017年4月に発表した「外国資本による森林買収に関する調査の結果」によれば、2016年に外国資本が買収した日本の森林面積は202ヘクタールに及び、前年の約3倍になった。買収された森林の多くが北海道にあり、外国資本のうち8割が中国企業や中国資本だった。中国資本による買収に対し、日本では危惧の声があがっているが、購入の際に日本人の名前や架空の会社の名前を用いる中国企業が存在するために対策は難しいようだ。

【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない(゚д゚)!

北海道の土地の買い占めについては、このブログでも過去に掲載したことがあります。最近は、またその動きが顕著になっているので、本日はその話題について掲載します。

これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
防衛施設周辺で外国資本の土地取得規制に向け調査可能に 自民が通常国会に法案提出へ―【私の論評】オホーツク海を支那原潜の聖域にさせるな(゚д゚)!
以下に長いですが、支那資本による買い占めの実体を引用します。
こちらは、北海道の札幌市です。北海道というと、近年起きている最も由々しき事態は、外国資本、とくに支那系資本による不動産の買収です。支那の領土をめぐる問題といえば、尖閣諸島沖の活動がマスコミで取り上げられるので、国民はそちらにぱかり目を奪われていますが、その間、北海道では支那人たちが着々と土地を取得し、実質的な侵食が確実に進んでいます。
2016102202

海外資本による水源地の買収状況
森林や水源地の買収については、やっと外国資本の買収を監視・制限する条例を北海道が制定しましたが、今も支那系資本の動きは止んでいません。支那と関係のある日本企業が買収しているケースや、支那企業が日本企業を買収し、そのまま所有権を引き継ぐケースもあり、実態把握が困難なのが実情んのです。

支那の土地買収問題はさらに厄介な方向に進んでいます。今、道内ではおもにバブル期にニーズも考えずに建設されたリゾート施設やゴルフ場が、次々と支那系資本に買収されているのです。 
具体的な例を上げると、2003年、594億円の負債を抱えて民事再生法の適用を受けたゴルフ場が、2011年に香港を本拠とする投資会社BOAOに買収されました。このコースは、元々、東京のマンション業者が開発したゴルフ場でしたが、そこが2003年に民事再生法を申請したため、オープンには至らず、休眠状態となっていました。その後、香港、支那の投資家が出資してこのコースとその周辺の計210ヘクタールを約30億円を投じて取得、クラブハウスの建て替えとコース改修など開発を進め、「一達国際プライベートゴルフクラブ」と改名し、2014年にオープンしました。
「一達国際プライベートゴルフクラブ」のコース
買収した投資会社の役員は、「ここに将来、支那の五輪強化選手用の施設を作る構想がある」と語ったといいます。五輪級の選手が、最適な環境を求めて自国外で調整を行うケースは少なくありません。日本の選手らも外国で強化合宿を行っています。しかし、だからといってこの発言を「問題なし」として看過するのは間違いです。 
なぜなら、相手があの全体主義国家の支那だからです。投資会社役員の発言は、この施設買収が単なる一民間企業の投資行動ではなく、支那共産党との強いパイプがあることを物語っています。 
BOAOの元理事には蒋暁松という人物がいます。支那・海南島のリゾートを運営する支那人実業家です。過去に彼は、和歌山県の那智勝浦・太地町にあり2003年に事実上破綻した大規模年金施設「グリーンピア南紀」の跡地開発の疑惑に絡み、名前が挙がったことがあります。グリーンピア南紀の跡地開発が、通常の手続きを経ず、不明朗なままBOAOが請け負うと決められたからです。
蒋暁松(左)
この決定には、和歌山選出の自民党国会議員で親支那派と言われる二階俊博氏の強い後押しがあったとも報じられました。北海道内で、支那系資本による明らかに不自然な不動産買収の実態が多々あるにもかかわらず、地元の政官界からほとんど懸念の声が上がらない背景には、こうした日本の中央で力をもつ政治家らが暗躍しているという事情もあるのです。
自民党幹事長 二階俊博氏
支那マネーが道内ゴルフ場の買収に意欲を見せているのは、増大している支那人観光客を対象にした、ゴルフをセットにした旅行プランの需要が高まると見ているようです。中には、金に糸目をつけずにマイ・ゴルフ場としてコースを探している富裕層もいるといいます。 
さらにもう一つ、支那が道内の森林を買っているのは水資源が目的ですが、勝手に川や沢から水を採取することはできないため、牧場やゴルフ場を取得して地下水をくみ上げようという狙いもあるようです。実際、地下水のくみ上げに関しては規制がなく、水脈を探し当てれば自由に水を確保することができるのです。 
また、世界的な食糧不足が確実にやってくるとして、道内で農業ができる土地を確保しておこうという思惑もあるようです。ゴルフ場を農業用地に転用する目的で取得しようというのです。我々はゴルフ場といったらゴルフ場の価値しかないと思っていますが、彼らは木や池があって整地されていて開墾の必要もない農業用地として適していると見ています。水と農業は、支那系資本が道内の土地を買収する大きな動機になっているのです。

さて、北海道ではこれ以外にも大きな問題があります。それは、自衛隊駐屯地の近隣の支那人による土地購入です。その事例をあげておきます。

千歳市では、2010年、約17棟の別荘が建設されましたが、購入したのはすべて支那人。住宅には不釣り合いなパラボナアンテナがいくつも設置されています。ここは、航空自衛隊の千歳基地、陸自の千歳・恵庭演習場から2、3キロメートルしか離れていないません。
パラボラアンテナが設置された別荘
上の写真は、2014年8月撮影したものです。場所は新千歳空港や陸上自衛隊・航空自衛隊の近くの北海道千歳市文京1丁目です。 
家のベランダではなく共用部に受信のためだと思われる大きなアンテナが設置されているのが4つ程確認できました。車庫は見当たりませんでした。 
またどのような用途かはわかりませんが、窓に外からは電気が点いているか確認しづらく見えるフィルムが標準装備されていました。 
登記情報を調べたところ17棟中16は支那人の所有でした。残りの1つはニトリ家具の取締役の名前で所有されていました。ただそこの表札の名前は、姓はニトリの取締役でしたが名は支那人の様な名でした。 
岩内町(いわないちょう)では、泊原発の原子炉3基が目視できる高台に支那人が別荘を購入しているといいます。ここへは、札幌から車で3時間近くかかります。こんなところに、わざわざ別荘を買う理由は、一体何なのでしょう。 
倶知安町(くっちゃんちょう)自衛隊駐屯地から3キロメートル以内に外資が所有する土地が3件、トータル109ヘクタールあります。そのうちのひとつは香港資本のものですが、買収から8年近くたってもそのままです。 
北海道・俱知安町で売りに出されれている山林
こうした支那人による、日本国内の土地の所有に関しては、常に大きな危険が伴っています。

多くのみなさまがすでにご存知の通り、2010年7月に支那共産党政府が成立させ、施行した国家総動員法(国防総動員法)は、同国の国防に関わる有事にいたった場合に、国内外の支那(China)国籍者の財産の接収(没収)、同国籍者の徴兵(国内・在外を問わない同国籍者の徴兵(兵員化)と、および、同国内での外国資本の没収まで含まれています。

何故、このような法律を性急なまでに施行したのでしょうか。その目的は、支那共産党政府がごく近い将来に有事(および戦争)の発生を想定してのことで、たとえば、対日政策の上では、侵攻による沖縄県尖閣諸島、さらには沖縄本島の収奪・領土化とそのための有事を視野に入れてのことであろうことは疑いの余地も有りません。もとより、沖縄の領土化は日本本土を次の視野に入れてのことで、日本の属国化、ひいては「日本自治区化」を想定していることでしょう。 
注目すべきは、在日支那国籍者もこの法律の動員対象となっていることです。登録されている同国籍者だけでも「687,156人(2010年12月末時点の統計)に上り、その他“観光”などで一時的に渡航して来ている者や15万人を超えたとされる同国の留学生も、「有事」発生時点での動員対象になります。さらに、後者の一時的渡航者、留学生の中から絶えない「法律上は日本に存在していない」はずの不法残留(オーバーステイ)者や、さらには、数値ではその掌握が測りかねる不法滞在者(密航者)もその例外ではありません。

さらに、民間偽装での入国の末に偽装帰化した“元支那国籍者”(その正体は人民解放軍の民間偽装の兵員であったり、対日工作員であったりとの指摘も絶えない)要員で、実質的に支那共産党に忠誠を誓っている者も、いざ同法が適用となる際は上記に準ずることになるでしょう。

結果、総動員法のもとで兵員化し得る人員数では、トータルで百万人を超える可能性も否定できません。高齢層や幼年層、亡命者の数を差し引いたとしても、相当の「兵力」になるはずで、支那本国が擁する二百万人を超える人民解放軍に実質合流することになります。 
これは、支那共産党政府のスイッチ「ON」一つで、それまでの“文化交流”や“経済交流”“観光”などの名目下で、巧みなまでに日本に埋め込まれて来た時限装置が一気に同時多発的に爆発することを認識すべきです。その時には、自ずと支那人の所有する日本国内の土地建物は、日本攻略の前進基地になることはいうまでもありません。

北海道は、自衛隊を削減する動きもあります。尖閣、沖縄を含む南西諸島付近には支那艦船が出没したり、支那航空機が出没したりするので、それに対する対抗措置として、この方面での自衛隊を強化するという意味があるのでしょうが、北海道の現状をみれば、これはあまりに無防備です。
このような実体を把握するため、産経新聞の連載「異聞 北の大地」(産経ニュースでは「北海道が危ない」で掲載)の筆者、宮本雅史編集委員が案内役として同行し、外国資本に買収された北海道の森林や水源地などをめぐる特別ツアー(産経新聞社主催)が7月23、24の両日開催されました。

8市町村を中型バスで走破し、2日間の総移動距離は約900キロに達した。住宅地、ゴルフ場跡地、大学、山林など10カ所以上を訪ね歩き、外資による「国土侵食」が加速している事実を確認しました。

ツアーは記事と連動した新しい試み。募集期間は実質20日間と短かったのですが、最終的に計20人が応募。定員を満たし、出席率は100%でしたた。

年齢層は30~70代と幅広く、職業も、自営業、公務員、地方紙社長、住職、タクシー運転手、主婦などさまざまでした。国会議員も「個人」で申し込み、山谷えり子元拉致問題・領土問題担当相、山田宏参院議員が駆けつけました。男女の内訳は男性13人、女性7人でした。

この詳細については、産経新聞に掲載されています。その記事のリンクを以下に掲載します。詳細については、この記事をご覧になって下さい。
【北海道が危ない・特別編】外資の「国土侵食」が加速 “中国人自治区”誕生の可能性も「武器を持たない戦争を仕掛けられている」
以下に、このツアーの日程などを示した、地図を掲載します。


以下に実際にこのツアーに参加した、山田宏参議院議員の参加体験談の動画を掲載させていただきます。



このような危機的状況にあるのですが、では政府や北海道はこれに対して何かをしていたのかを調べていましだか、他にとんでもなことがわかりました。

北海道議会議員の小野寺まさる氏が本日以下のようなツイートをしていました。
このようなことを実施しようとして、計画をしていた国交省や北海道開発局は一体何を考えているのでしょうか。全く危機感がありません。

さて、このような中国資本の北海道の土地の買い占めに対して、日本は何もできないのでしょうか。

実は、日本にもこれに対応するための法律は、上の山田宏参議院議員の動画にもでてくる法律があります。以下にこの法律の概要を掲載します。

日本には、この「外国人土地法」があります。ただし、GHQによりこの法律の細則が削除されてしまったので、事実上、施行できない法律になっています。 この法律、かなり強力です復活させるべきです。

しかし、これで問題のすべてが、解決するわけではありません。根底には、さらに深い闇があるのです。

こうした森・水・土地をめぐる動きの根底にある問題は何なのでしょうか。「外資の森林買収」という事象を契機に我々が考えるべき根本課題は何なのでしょうか。

2011年11月の北海道北部。林道さえ入っていない奥地の天然林200ヘクタールを求め、不動産関係者が現地を訪れました。

「この辺鄙な地を選んだのは、水源地の売買規制が始まった道央・道南を避けるためだ。不在村地主の山を中心に購入したい」

仲介したこの業者は、道央の山を中国資本に売却した実績を持っていました。

狙われた山はかつて70数戸の集落があったのですが、1962(昭和37)年の台風災害で全戸離村し、以来、無人になっている奥山でした。林業が成り立つ場所ではありません。同行した関係者が、目的不明の買収話を不審に思って役場に連絡したことにより、その地は地元篤志家が私財を投じて購入することで決着しました。

仮に、現地視察に同行した関係者が役場に情報を伝えなければ、どうなっていたでしょうか。恐らくこの無人の土地は、役場も地元住民も知らない間に、仲介者 を通じて売却され、将来的に役場は所有者情報を追いきれなくなっていた可能性が高いです。無人の奥山が知らぬ間に国際商品になりかけていた事実に衝撃を受けて、役場はこの4月から不在地主所有の森林についての実態把握に乗り出しましたた。

なぜ役場が土地所有の実態を正確に把握できないのでしょうか。そこには、この国の特異性があります。

日本の土地制度は、
(1)地籍調査(一筆ごとの面積、境界、所有者などの確定)が未だ50%しか完了していない 
(2)不動産登記簿の仕組みが旧態依然で、土地売買届出などの捕捉率も不明 
(3)農地以外の売買規制はなく、利用規制も緩く、国境離島、防衛施設周辺など、安全保障上重要なエリアの土地売買・利用にかかる法整備も不十分である一方、 
(4)土地は占有者のもので「時効取得」(民法第162条)もある*2。 
(5)土地所有権(私権)が現象的には行政に対抗し得るほど強い*3。
という点に特徴があります。

「土地は公のもの」という理解が社会の基底にある先進諸外国では類を見ないものです。中でも(2)における行政基盤、行政精度の問題は大きいです。

現在、我が国の土地情報は不動産登記簿(法務省)のほか、土地売買届出(国土交通省)、固定資産課税台帳(総務省)、外為法に基づく取引報告(財務省)、さらに森林調査簿(林野庁)や農地基本台帳(農林水産省)など、目的別に作成・管理されています。しかし、その内容や精度はばらばらで、国土の所有・利用についての情報を国が一元的に把握できるシステムは整っていません。

通常、土地を相続すれば登記簿の名義変更を行うが、変更手続きのコストの方が高くつくケース*4では、差し迫った必要性がなければ元の名義のまま放置されることも少なくないです。そもそも不動産登記(権利登記)は義務ではなく、登記後に転居した場合の住所変更も通知義務はありません。

国土利用計画法による届出情報も万全ではありません。売買契約締結後、2週間以内に届出することを義務づけているのですが、実際の取引現場での認識は低いです。国はその全国情報を毎年集計し公表しているものの、届出の捕捉率は把握できていません。この届出業務が自治体の仕事(自治事務)だからです。

国土利用計画法の体系
海外からの投資という面で見ると、外資による投機的な土地買収は全国で約3700ヘクタール(2007年度~2010年度)です*5。ただ、外為 法で規定されたこの報告ルールも、その捕捉率は不明です。しかも外為法の体系では、非居住者(外国に住む人)が他の非居住者から不動産を取得した場合は、報 告義務の対象外です(外国為替の取引等に関する省令第5条第2項10)。

国交省・農水省は外資による森林買収情報を集めており、2010年までに全国で約800ヘクタールが買収されたと公表しました。定義がそれぞれ異なるため、数値は一致しないのですが、北海道は独自調査を進めており、道内で57件、1039ヘクタールが外資に買収されたと公表していました。今後、こうした物件がさらに外資へ転売 された場合、所有者情報は追えなくなるでしょう。

日本では国土の所有実態を行政が把握しきれないのです。「外資の森林買収」で露呈した根本問題はここにあります。

固定資産税の不納欠損処理全国で過疎化が進みゆく中、今後は土地所有者が村外、県外、さらに国外在住というケースも増えていくでしょう。鳥根県の旧匹見町(人口約1400人)では、固定資産税の納税義務者の所在が全国26都府県にわたっています*6。このうち、林地の約7%(面積比率)、農地の約3%(同)は納税義務者の居所が不明と見られます。かつては当たり前だった「土地所有者=在村住民=管理者」や「納税義務者=在村住民」という図式が成り立たなくなってきています。

固定資産課税台帳は登記簿情報を元に更新されていくのですが、前述のとおり、その登記簿が十分ではありません。所有権者の転居や金融商品としてグローバル化していくことを想定した設計にもなっていません。制度にひずみが出はじめています。

不思議なのは、こうした時代の変化と制度上の問題があるにもかかわらず、固定資産税の徴税が表立って大きな問題にならないことです。総務省によると固定資 産税を含む市町村税の徴税率は93.3%(2010年度)。固定資産税は市町村税収の43.7%(同)を占めるるのですが、土地所有者の不在化、不明化によって、 課税・徴税に支障が出ていないのでしょうか。

探っていくと、徴税率の高さの背景には、実は「不納欠損処理」という数字のマジックがあることがわかります。地方税法では、所有者の居所不明などで徴税ができなくなった場合、徴税が無理だとわかった時点での即時欠損処理(第15条の7第5項)や5年の時効(第18条)などによって消滅させる仕組みがあります。本来なら滞納繰越額は毎年雪だるま式に膨らみ続けるはずですが、この不納欠損処理によって滞納事案が「消滅」していくのです。つまり、徴税率計算の際の分母(課税対象)から滞納事案の大部分を消すことで、計算上の高い徴税率を保っているのです。

市町村税総額の中の「不納欠損処理」は、全国で1103億円(2010年度)。全体の0.5%程度で、一見少ないようにも見えます。だが、徴税すべき対象から外した「1年間」の額がそれです。固定資産税は累積していきます。税がとれずに債権放棄した額は、いわば再生産されていく負債です。

加速していく土地所有者の不明化は納税義務者の不明化でもあるのです。不納欠損処理によって、徴税不可能な事案を「消滅」させることで、その問題もまた表面上見えなくしているのです。一見高い徴税率の陰で、土地所有者の不明化により、地方財源の重要な柱である固定資産税の税収が漸減していく恐れがあります。

行政基盤や行政精度の劣化を示す事象として「消えた年金」「消えた高齢者」が従来から大きな問題になっていましたが、「消えた土地所有者」は、それらに続く可能性があります。

日本では団塊の世代が相続する時代を迎えています。資産価値が低く管理が難しい土地は、子供たちから敬遠されます。子供に負担をかけまいと、「相続の前に土地を手放したい」「買ってくれるなら誰でもいい」と苦渋の思いで仲介ブローカーに売却し、その後どう転売されたか、地元では誰も知らないという事例が、今後じわじわと増えていくでしょう。国境の離島や奥山の水源地など、安全保障や国土資源保全上、重要でありながら、人の目や手入れの行き届かない地域が増加していく恐れもあります*7。

グローバル化時代の開かれた経済活動の中、国レベル、自治体レベルそれぞれにおいて、土地情報の風通しをよくしていくルールを早急に整える必要があります。

国レベルでは、まず安全保障の観点から国が「重要国土」(防衛施設周辺、国境離島、空港・港湾、水源地など)の指定を行い、対象地域の所有実態の調査や、売買・利用にかかる法整備を行うことです。長崎県五島市は、福江港沖の無人島が不動産会社のホームページで売りに出された問題をきっかけに、市内全52の無人島について所有状況の確認作業を行い、2011年12月、結果を公表しました。

国は「重要国土」について、こうした基礎調査を進め、一定の売買・利用規制を講ずるべきです。国益上、とくに金融商品とすべきでない土地については、国有化や公有化のための財政措置も検討すべきです*8。

また、民間のインターネット入札などを利用した国公有地の売却が進められていますが、日本の土地法制の特異性を再認識する必要があります。収入確保のための拙速な国有地売却など、顔の見えないインターネット入札を無差別に進めていくことには、慎重であるべきです。

自治体レベルでは、上記の「重要国土」に準じた保全対象地域(環境、水源、生態系、景観、文化財など)を指定し、所有実態調査と条例による売買・利用ルールの整備を図っていくことが必要です。

昨今、「当県(当市)では外資による買収事例は確認されておらず、今のところ特段の措置をとる予定はない」という自治体が少なくありません。しかし、行政が知らないだけではないでしょうか。土地売買・所有の実態を行政が十分に把握できていないことこそが問題なのです。

土地所有者の不在化、不明化の問題は、固定資産税の徴税のみならず、防災・治安、地域づくりのための合意形成、公共事業のための用地取得など、日常の 様々な活動に問題が波及していきます。北海道のある自治体は、外資が所有する水源地2カ所を公有化するため、長期にわたって交渉を行っていましたが、未だ決着していません。地域の「守るべきところ」「守るべきこと」を明確化し、問題を未然に防ぐことが何より重要です。

諸外国を見ると、欧米では厳格な利用規制などによって個人の土地所有権に一定の制約を課しています。ドイツのB-planが最もわかりやすいです。英国も土地 所有者は保有権(hold)は持つものの、それは土地利用権に近く最終処分権までは持ちません。フランスでは公的機関による強い先買権が存在します。

海外からの投資という観点では、米国では農業外国投資開示法(1978年制定)や外国投資国家安全保障法(2007年制定)など、国の重要なインフラや 基幹産業に対する投資について、政府がいつでも情報把握や公的介入ができる制度を整えています。オーストラリア、ニュージーランドを含めた近隣アジア太平洋14カ国において、土地売買における外資規制が皆無なのは日本だけです。

日本でも、たとえば不動産登記を義務付け、登記の際にはマイナンバーも登録するように仕組みを変えるべきです。一方で、戸籍とマイナンバーを連動させる是非について法務省の「戸籍制度に関する研究会」で検討が進んでいます。マイナンバーによって戸籍と不動産登記が連結されれば持ち主や相続人の特定が容易になります。マイナンバーというツールを上手に活用していくように政治はリーダシップを発揮し、不動産登記の改革につなげてほしいです。

マイナンバーにより戸籍と不動産登記を連結すへき

土地とは、暮らしの土台であり、生産基盤であり、国の主権を行使すべき国土そのものです。経済のグローバル化と地域の高齢化・人口減少が同時進行する時代だからこそ、開かれた経済活動の前提として国内法制度をしっかりと整え、「守るべきところは守る」ことが不可欠です。

土地所有者の不明化対策に乗り出し、制度の見直しと底上げを図ることが急務です。そうして、忘れてならないのは、現在の土地の集合である国土は私達の父祖が長い間かけて開拓してきたものであり、徒や疎かに扱うべきものではないということを私達自身が再度認識すべきです。
*2 民法第162条は、20年間、所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有することによって(占有を始めた時に善意・無過失であった場合は10年で)、所有権を時効により取得したと主張できると定めている。 
*3 首都圏の外環道(東京外かく環状道路)は、計画樹立以来40年以上経過しているが、未だ一部の地権者の合意が得られず完成していない。成田空港も、地権者の合意が得られず、滑走路が1本のままである。 
*4 山林価格は実勢で1ヘクタール20万円以下になるケースも少なくない。評価額が免税点30万円に届かなければ固定資産税も請求されないため、山林所有者の所有意識は弱まる一方だ。 
*5 外為法に基づく非居住者による本邦不動産の取得に関する報告実績(財務省資料、2011年2月)。 
*6 島根県中山間地域研究センター「中山間地域の現状・課題と今後の展開戦略(抄)」(2006年)。国土交通省は、森林所有者数約324万人のうち、所在の把握が難しい所有者を約16万人(約5%)と推計している(国土交通省「農地・森林の不在村所有者に対するインターネットアンケート調査結果概要」2012年)。 
*7 国土交通省は、日本の国土のうち、人が居住する地域は全体の約48%、1800万ヘクタール(2010年)だが、2050年には国土の約4割、約1400万ヘクタールまで減少すると予想している(国土交通省国土計画局「国土の長期展望に向けた方 向性について(2010年12月)」)。 
*8 東京財団「国土資源保全プロジェクト」提言書
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2017年8月24日木曜日

【阿比留瑠比の極言御免】民主主義破壊するメディア 安易な「報道しない自由」の行使―【私の論評】ネットでの情報収集に慣れていない世代の人たちへ朗報(゚д゚)!


参院文科・内閣委員会連合審査会で、自由党の森裕子氏の質問を聞く前川喜平・前文部科学事務次官(右)と加戸守行前愛媛県知事=7月10日午後、国会・参院第1委員会室 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
22日付の産経新聞と読売新聞に、民間団体「放送法遵守を求める視聴者の会」による意見広告「異常に歪んだテレビ報道 視聴者の知る権利が奪われ続けています」が掲載されていた。ご覧になった読者も多いだろうが、そこに示されていた数字は、寒気すら覚えるものだった。マスメディアの現状を考えるうえで、非常に重要なポイントなので、改めて紹介したい。
22日付の産経新聞と読売新聞に、民間団体
「放送法遵守を求める視聴者の会」による意見広告
 
広告は、学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題をめぐる7日10日の国会閉会中審査について、テレビがどのように報じたかを検証している。

それによると、テレビ各局は10日から11日までにこの問題を計30番組で合わせて8時間36分23秒間、報じた。問題なのは、その内訳の極端な偏りである。

各局は、国会に招かれた参考人のうち「首相官邸によって行政がゆがめられた」と主張する前川喜平・前文部科学事務次官の発言については、計2時間33分46秒にわたり取り上げていた。ところが、前川氏に反論した加戸守行・前愛媛県知事の発言はわずか計6分1秒、原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員の発言はたったの計2分35秒しか放送しなかった。

加戸氏は実際に加計学園を誘致した当の本人であり、かつては前川氏の上司でもあった。原氏は獣医学部新設の是非を議論、審査した当事者である。

にもかかわらず、「岩盤規制にドリルで穴を開けていただいた。ゆがめられた行政が正された」との加戸氏の訴えや、「規制改革のプロセスに一点の曇りもない」との原氏の証言は、テレビでは事実上なかったことにされた。テレビ東京に至っては、加戸氏と原氏の発言を一切報じなかった。

まさに「歴史上最悪に属するとみられる偏向報道」(視聴者の会事務局長で経済評論家の上念司氏)だといえる。放送法4条は次のように定めているが、守る気はさらさらないようだ。

「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」

もっとも、これはテレビ局だけの問題ではない。放送法の縛りは受けないものの、7月10日の閉会中審査における加戸氏の発言に関しては、朝日新聞と毎日新聞も、記事本文中では1行も触れなかった。

テレビも新聞も、事実や読者・視聴者が考えるための材料をありのままに提供することよりも、自分たちの主義・主張に都合のいいことだけ熱心に伝えている。前川氏の意見と加戸氏らの反論のどちらに軍配を上げるかは本来、情報の受け手自身が選ぶべき話である。そんな当たり前のことが、前川氏の見解だけしか報じないメディアによって妨害されている。

今回、テレビ報道の偏向を調べた一般社団法人日本平和学研究所の理事長で文芸評論家の小川榮太郎氏は、筆者も同席したインターネットの「言論テレビ」番組(4日放送)で、こう指摘していた。

「報道機関の社会における存在意義は、報道による情報を基に国民が判断する(という)民主主義の根幹を担っていることだ。その情報がこんなに極端な虚報に彩られ、何カ月も是正されないとなれば、これはデモクラシーそのものが否定、毀損されていると言っても過言ではない」

マスメディアは今、率先して民主主義の根幹を壊している。そして、安易な「報道しない自由」の行使によって、自らの存在意義も失おうとしている。(論説委員兼政治部編集委員)

【私の論評】ネットでの情報収集に慣れていない世代の人たちへ朗報(゚д゚)!

何を伝え、何を伝えないかの選択権は、報道側にあります。だから民放と比べた場合、NHKのニュースで豊田真由子議員の「このハゲ―!」関連ニュースを扱う時間は短いです。これは、NHKなりの基準があるからだと考えられます。


あまりにも有名になったハゲ発言の動画

とはいいながら、参考人の重要な発言まで「報道しない自由」の範囲内ではないでしょう、というのが「偏向だ」と訴える側の意見です。たしかに特定のテレビだけを見て、新聞だけ読んでいる人にとって、加戸前知事はいなかったも同然になっていることでしょう。

メディア側の「偏向」では、「発言の切り取り」もしばしば問題とされています。東京都議選で安倍首相が発したとされる「こんな人たちに負けるわけにいかない」発言もその一例です。

選挙演説の妨害を組織的に行なう集団に対して「負けない」と言ったはずの話が、いつの間にか「自分に反対する人たちには負けない」と言った、という解釈が主流になってしまいました。それは「切り取り」のせいだ、というのが、偏向を問題視する側の意見です。

ここでは最近の政権絡みの話題を取り上げたのですが、こうしたメディアへの不信の声は、ネットが普及してからは特に多く見られるようになりました。

多くの人がチェック役や発信者になれる状況ゆえに、旧メディア側の手法が見透かされるようになったという面もあるのでしょう。

旧メディア側も、こうした指摘をまったく気にしていないわけではないのでしょうが、長い時間かかって蓄積した「垢」のような慣習は、なかなか簡単に消せるものではないでしょうし、消すつもりもないようです。

となると、受け手側はリテラシーを向上しなければならないということになります。特にネットでの情報収集に慣れていない世代の人たちには、どうしてもテレビや新聞に頼ってしまうので、「偏向」に気付かないということがしばしばあります。

ではどうすれば良いのでしょうか。

烏賀陽弘道氏
元朝日新聞記者で、現在はフリーで活動している烏賀陽弘道氏は、新著『フェイクニュースの見分け方』の中で、一般の受け手が情報の真偽を見抜くためのポイントを各章の最後にまとめています。そのうちのいくつかを紹介します。
・「何を書いているか」と同様に「何を書いていないか」に着目すべき。  
・ウソではないが本当でもない記事がある。 
・メディアは「わからない」と言いたがらない。 
・匿名発信者はモラルが下がる環境にいる。 
・引用の正確さで、発信者が事実の正確さにどの程度注意を払っているかがわかる。
これらが書かれた時点では、上記の加計学園問題も、都議選も想定されていませんでした。烏賀陽氏が記者としての経験をもとに抽出したものですが、一連の騒動を見る限り、普遍的なポイントであると考えて良いと思います。

確かに、この5つだけでも、気をつけていれば、フェイクニュースにやられることはあまりないと思います。しかし、この5つに気をつけて日本のメディアを見ると、ほとんどのメディアに問題ありということになります。

これでは、烏賀陽弘道氏のせっかくの主張もあまり意味のないものになってしまいかねません。

こんなときに、特にネットでの情報収集に慣れていない世代の人たちはどうすれば良いのでしょうか。

やはり、テレビに近いメディアが良いと思います。一昔前だと、動画はパソコンでないと見られない時代がありました。

しかし、現在なら、既存のテレビで簡単に動画をみられるようになりました。私自身も、AppleTV、クロムキャストを用いてテレビで動画を楽しんでいます。その他、有名なとものとしては、FireTVstickがあります。

ファイヤー・スティックTVの視聴
AppleTVは、付属のリモコンで操作できてるのですが、残念ながら現状ではスマホ等がないと、YouTubeを視聴できません。

クロムキャストは、ユーザーがタブレットPC、PC、スマホを所有していることを前提としています。

ファイヤースティックTVは、PCやスマホなどなくても、視聴が可能ですし無論YouTubeも視聴可能です。

これは、インターネット環境さえあれば、取扱に一度慣れてしまえば、楽に視聴することができます。

そうして、私は実際に近所の65歳以上の方々数人に、この使い方を教えさせていただき、視聴していただています。何人かの人は、「虎ノ門ニュース」などを視聴するようになって以来、人生観が変わったとまで言って喜んでいただくことができました。

このようなこと、民間団体「放送法遵守を求める視聴者の会」の設立者の一人でもある上念司氏は、ご自身のtwitterで、高齢者の方々に、テレビで動画をみられるようにしてあげることを推奨しています。

私は、これからも微力ながらこのような運動を地道に展開して生きたいと思います。そうして、多くの人が、ネットと既存メデイアの両方が情報源になれば、フェイクニュースを見分けられるようになると思います。

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2017年8月23日水曜日

イオンまた値下げ 「インフレ目標で価格決めない」 ―【私の論評】真摯に市場の声を聴けば今の日本経済が見えるはず(゚д゚)!

イオンのチラシ
イオンは23日、グループのスーパー2800店舗で25日から、プライベートブランド(PB)の食品や日用品114品目を値下げすると発表した。値下げ幅は平均で10%程度。同社は昨秋と今春にも合わせて約520品目を値下げした。継続的な値下げで低価格をアピールし、節約志向の消費者の需要を喚起する。

 値下げの対象は食品88品目、酒類7品目と日用品19品目。パック入りのご飯を29円安い429円、レギュラーコーヒーを108円安い753円などに値下げする。

 イオンの三宅香執行役は値下げの理由を「低価格への意識が強い消費者のニーズに応えるため」と説明した。物流の効率化や店舗拡大のスケールメリットによる原価低減を値下げに充てたという。日銀は2%の物価上昇を目標に掲げるが、脱デフレの動きは鈍い。三宅執行役は「インフレターゲットを意識しながら価格を決める小売業はない。我々は顧客のニーズだけを見ている」と述べた。

【私の論評】真摯に市場の声を聴けば今の日本経済が見えるはず(゚д゚)!

イオンは今年4月11日にも、傘下のスーパー400店で、食品や日用品の最大254品目を4月17日から順次値下げすると発表していました。値下げ幅は平均で10%程度。全体の品目数からするとごくわずかにすぎないものの、同社は昨秋から順次、プライベートブランド(PB)とメーカー品を合わせて約270品値下げするなど、定番商品の価格引き下げを続けています。

4月に値下げしたのは、総合スーパー(GMS)のイオンリテールが販売するメーカー品が約240品目、グループ共通で扱うPBが15品目。メーカー品では税抜き98円で販売している菓子パンを88円に、同235円の歯ブラシを215円に引き下げました。PBでは「トップバリュ天然微炭酸の水」を税込み149円から105円ににしました。


イオンリテールの岡崎双一社長は昨年10月、子育て世代など、節約志向が強い層の客離れが起きているとして「強烈な売価訴求」を重要課題に掲げました。メーカー品の価格見直しは半年ごとなど定期的にしており、「社会保障負担などが高まる春に合わせ、日用必需品を買いやすくする」(広報)としていました。

この4月の値下げととともに、今回の値下げで、約520品目を値下げしたことになります。この動きは、イオンだけではありません。

今年の春以降に、大規模な値下げをした企業は他にもあります。 代表的なものを見るとセブン-イレブンでは、日用雑貨品61品目を値下げしました。 これは実に、8年ぶりとなりました。

最大手のセブン-イレブンでの値下げは、またたく間に小売りの現場に広がりました。 例えば、ローソンでは、「シャンプー」を21円値下げするなど、およそ30品目を5%前後下げました。ファミリーマートもこの「柔軟剤」など、25品目値下げしました。

「値下げの春」などと大きな話題になりましたね。 晩夏を迎える今、こうした春先から続いている値下げの動きは、さらに広がりを見せています。

イオンの三宅執行役は「インフレターゲットを意識しながら価格を決める小売業はない。我々は顧客のニーズだけを見ている」と述べたいますが、まさにそのとおりです。

先日は、数字的な裏付けから、日本では未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済の実情を掲載しました。上のような事実をみるとこの記事で主張したことがさらに正しかったことが裏付けられたものと思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった―【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!
以下に、この記事で掲載したグラフを再掲します。

この記事より、このグラフの解説を以下に再掲します。
今回は、実質成長が「6期連続」で、かつ、それが「11年ぶりだ」なのではありますが、だからといってこれだけで、すぐに、今景気は良いという判断にはなりません。
なぜなら、「実質成長率」は、「デフレが加速してデフレータ(物価)が下落」すれば、上昇するものだからです。つまり、「実質成長率は、デフレの深刻さの尺度」にすらなり得るのです! 
実際、上記グラフからも明白なとおり、消費増税以降、デフレータは下降し続け、今やマイナス領域を推移しています(黄色)。
これこそ、「6期連続、実質成長率がプラス」となった理由です。実際、このグラフに示した「名目成長率」(前年比・青線)は、今期こそ、僅かに上昇傾向を見せていますが、ここ最近、ゼロ近辺を推移しているということ、つまり、「成長していない」事を示しています! 
日本経済は、本格的な好景気状況からはほど遠い状況にあるのです。 
にもかかわらず、2017年4~6月期GDPは年率4.0%増、プラスは6四半期連続となったり、名目GDPの成長率も年率4.6%と好調となり、名目が2四半期ぶりにプラスになっています。

この理由は簡単に理解できます。その一部の理由は、「公共投資は5.1%増-補正予算の効果でプラスに寄与」というものです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-13/OUAL466S972801

一年前の昨年夏に調整した、アベノミクスにおける「大型景気対策」の効果がようやく効き始めた、と言うのが、「今期」における一部良好な数字の原因の一つです。

さらに、以下のよう要因もあります。
①ここ2、3年間、外需が伸びてきた事を受けて、外需関連企業の収益が改善した、 
②その影響を受け、ここにきてようやく、民間企業がトータルとして「内部留保」を縮小させ、消費と投資を拡大しはじめる程に景気が改善してきた。 
③これを受けて、ようやく(物価の力強い上昇は達成されていないものの──)「名目GDP」も上向き始めた──。
つまり、今の「よい数字」を導いた基本的な原因は「外需」だったわけであり、それがここにきてようやく、民間企業の力強い成長に結びついてきた、と言うことです

さらに、高橋洋一氏は、この記事の元記事で、日本の構造的失業率は2%半ばであり、まだ日本は完全雇用に達していないということを数字的裏付けをもとに主張しています。

この状況に対応して、イオンなどのスーパーや、コンビニなどの業態が値下げに次ぐ値下げ政策を実行しているというわけです。

日本銀行は7月20日の金融政策決定会合で、物価上昇2%達成時期を「2018年度ごろ」から「19年度ごろ」に先送りしました。

日本の経済の中身をみると、このようにまだまだ、物価目標も道半ばである、完全雇用の状況にもなっていないし、何よりもGDPデフレータがマイナスであることから、どう考えても未だデフレから脱却したとは言い難い状況です。

この状況では、増税などとんでもない悪手であり、減税をするか大型補正予算を組むなどで積極財政を実施するのは当然であり、物価目標すら達成できない現状では、追加の量的緩和も実行すべきです。

茂木敏充経済再生担当相
この状況で、茂木敏充経済再生担当相は、記者会見で今回のGDP速報について「率直にいい数字だと思っている」との認識を示し、「内需主導の経済成長が続くように万全の対応をしていきたい」と強調した。一方で、「現段階で具体的に新たな経済対策は想定していない」とも語っていました。

これは、全くの間違いです。これは、数値的な分析をさほどしなくても、ブログ冒頭の記事にあるように、イオンが値引きに次ぐ値引きをしているとか、イオンだけではなく、他のコンビニもそうしていることの意味を良く考えれば理解できることです。

政治家は本来このような声を読みとつていかなければ、ならないはずであり、それができないというのならいずれ有権者からそっぽを向かれてしまいます。

かといつて、現状の自民党以外の野党は、ほとんどが実体経済を理解していないという状況です。まだ、自民党のほうがましというお寒い状況です。だから、次に選挙があっても、受け皿になれる野党が存在しないという状況です。

民進党は、代表戦をする予定になっていますが、代表戦に出馬す前原氏も、枝野氏も経済にはうとすぎます。
民進党代表選の公開討論会で、記者の質問に答える枝野元官房長官。
左は前原元外相=22日午後、東京・内幸町の日本記者クラブ
そうして、若狭氏が立ち上げた政治団体「日本ファーストの会」ですが、正直なところ何をしたいのか分かりにくいです。「自民党対抗の受け皿」としての国政政党ということのようですが、若狭氏はほんの少し前まで自民党員でした。昨年10月の衆院補選では自民党公認として当選し、その後離党しました。

せめて補選の前に離党していれば、大義名分は立っていたのでしょうが、その意味では政治判断を誤ったといわざるを得ないです。こうしたことは、その後の政治活動に影響するので、若狭氏主導の「日本ファーストの会」の先行きは必ずしも明るいといえません。さらには、若狭氏も経済にはうといようで、経済対策とし具体的に何をやるのかなど目立った主張はありません。

何をしたいのか良く理解できない若狭氏
このまま日本経済が放置されれば、市場関係者や流通関係者から怨嗟の声があることになります。またデフレに舞い戻れば、自民党はさらに支持を失うことでしょう。

その時に、経済を理解した野党がでてくれば、それが受け皿になるのは必定です。

その意味では自民党も油断していれば、先はないです。一番良いのは、安倍首相が初心に立ち返って、追加金融緩和と積極財政を実施し、デフレから早期に脱却することです。そのことを少なくとも、自民党の幹部連中が理解すれば、安倍政権は一強どころか、特強状況になれると思います。

なぜなら、今後経済で目立った失敗がなくなるからです。これは、とてつもなく大きなことです。特に、過去にデフレで20年以上も苦しんできた日本です。

デフレにならないということだけでも、すごいことになります。しかし、これは本来そんなに難しいことではないはずです。不景気というならまだしも、デフレは経済の癌であって、異常事態です。本来このような状態が長く続くのは異常中の異常です。

にもかかわらず、どうして日本ではデフレが長期間続いてきたかとといえば、財政や金融政策が間違えていたからです。このことに一日もはやく政治家に気づいていたただきたいです。

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2017年8月22日火曜日

【〝キレる〟高齢者】暴行摘発10年で4倍 つえで殴る、小1男児首絞め…… 識者「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある」―【私の論評】背後にあるメディアの大問題(゚д゚)!



傷害や暴行などでの高齢者(65歳以上)の摘発人数が、人口増加を上回るペースで急増していることが20日、国の統計から分かった。特に暴行の摘発は10年前から4倍超に激増。些細(ささい)なトラブルから他人に手を出すケースが多発し、火炎瓶や爆弾などで無差別に他人を傷つける重大事件も起きている。専門家は、“キレる”高齢者が増えている背景に、社会の変化に伴う高齢者の「孤立」があると指摘する。

昨年3月、兵庫県加古川市の公園で、たばこのポイ捨てをとがめられた70代の男が「カッとした」として当時小学1年の男児の首を絞め、暴行容疑で逮捕された。京都府舞鶴市でも同年10月、電話を借りるため市民センターを訪れた70代の男が申し出を断られて激高、つえで男性職員を殴る暴行事件があった。

さらに同年8月に東京都杉並区の夏祭り会場に火炎瓶が投げ込まれた事件では、当時1歳の子供を含む男女16人が負傷。犯行後に自殺した当時68歳の男は、以前から知人に「サンバの音がうるさい」などと不満を漏らしていた。2カ月後の10月にも、宇都宮市の公園で元自衛官の男=当時(72)=が爆発物で自殺し、巻き込まれた無関係の3人が重軽傷を負った。

同年8月に東京都杉並区の夏祭り会場に火炎瓶が投げ込まれた事件
 攻撃的な高齢者の増加傾向は統計にも表れている。

28年版犯罪白書によると、刑法犯全体の認知件数が減少傾向にある一方、高齢者の刑法犯の摘発人数は高水準で推移。特に傷害や暴行などの粗暴犯は右肩上がりで、27年の摘発人数は傷害1715人、暴行3808人と10年前からそれぞれ約1・6倍、約4・3倍に増加した。これは同期間の高齢者の人口増加の割合(約1・3倍)を上回る。

新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は「加齢によるパーソナリティーの変化は大きく分けて、思慮深く優しくなる『円熟化』と、感情の抑制が利かなくなる『先鋭化』の2つがある。先鋭化では、感情を制御できずに些細なトラブルが暴力につながる」と説明する。

高齢者が先鋭化する背景には、核家族化や雇用の流動化、年長者を慕い敬う伝統の消失など社会構造の変化があるとされる。激高などの行動は孤立した状況で起こりやすく、女性に比べて変化への順応が苦手な男性で顕著になるという。

碓井教授は「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある。高齢者より若い世代にも同傾向が出始めており、日本の中高年は危機的状況だ」と指摘した。

【私の論評】背後にあるメディアの大問題(゚д゚)!

高齢者の感情の抑制が利かなくなる『先鋭化』がなぜおこるのかということに関して、上の記事では、社会心理学の専門家が「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある」とあります。確かに、そういう側面もあるのでしょうが、私はそれだけではないと思います。

高齢者と聴いて、まず頭に浮かぶのが、高齢者の情報源のほとんどが、テレビや新聞であるということが、若い世代との顕著な差であるということです。

私自身は、近所の65歳以上の高齢者とも付き合いがあり、これは本当に顕著に感じるところです。最近の高齢者は携帯電話を持っている人も多いのですが、まだまだガラケーが多いですし、仮にスマホを持っていたにしても、主に使用するのはメールと電話であり、スマホでネットを参照したり動画を見たりする人は少ないです。

パソコンを持っている人もいるにはいるのですが、それで動画を見たり、ニュースを検索する人は滅多にいません。

この状況については、ガベージニュースの以下の記事をご覧いただくと良くご理解いただけるものと思います。
これは気になる、高齢者の日常生活上の情報源とは!?(最新)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事からグラフを引用します。


他の多数のメディア関連の調査の結果同様、高齢者における常用情報取得源のトップはテレビ、次いで新聞。この2メディアの絶対優位性は疑う余地もないです。

そうして、この記事は以下のように締めくくっています。
先行する記事では「普段の楽しみ」としてテレビや新聞を挙げる高齢者が多いとの結果を確認したが、今件では普段の情報源として両者が圧倒的な支持を集めていることがつかみ取れる。しかもテレビに限れば、どの年齢階層でも変わるところが無い。高齢層がテレビ好きで大きな影響を受けるのも、納得がいくというものだ。 
なお今調査は5年毎に実施されているため、次の調査は2019年に行われる。その頃には高齢者が使える情報源はどのような変化を示し、そして高齢者は何を選択しているのか。特にインターネット・携帯電話の利用状況がどの程度変化するのか、調査結果が楽しみではある。
ガベージニュースには、以下のような記事もありました。
テレビはシニア、ネットは若者…主要メディアの利用時間をグラフ化してみる(最新)
この記事からも以下にグラフを引用します。


このグラフが、10代と60代ではテレビの生放送の視聴時間が2.9倍も違うことがわかります。無論60代のほうが2.9倍もテレビを視聴しているということです。
2016年の時点では10代と20代でインターネットの利用時間がテレビ(生放送)を抜いている。つまり「20代以下においてはテレビ<<ネットの時代」である。多分にスマートフォンの普及浸透によるところが大きく、この傾向は今後も続くものと考えられる(今件は各年齢階層毎の平均値であり、該当メディアを利用していない=利用時間ゼロの人も含めているため、普及率が高いほど平均値も底上げされる)。 
スマートフォンの普及がさらに進めば、将来は30代、そして40代でもテレビの利用時間をインターネットが抜くようになるかもしれない。
ここで、テレビの視聴率、新聞の購読率の高い視聴者の立場にたって見て下さい。 テレビ・新聞といえば、最近でいうと、いわゆる「もり・かけ」の偏向報道が顕著でした。

このブログにも以前掲載したことがあるのですが、「もり・かけ問題」に関しては、ネットなどの情報源があれば、いずれの問題も最初から全く安倍総理やそのご夫人には問題はなく、これで追求する野党やマスコミは、愚かという以外に何もありません。結局その目的は倒閣運動以外の何ものでもないということです。

実際、その後テレビや新聞のネガティブキャンペーンがある程度功を奏して自民党政権の支持率は落ちましたが、かといってこの問題で安倍総理が辞任するとか、安倍政権が崩壊するとか、しそうとであるなどのことも全くありません。

これをテレビ・新聞を主な情報源としている高齢者にとっては、「悪の安倍」が全く何のおとがめも受けず、結局世の中は何も変わらなかったと見ているのではないでしょうか。

実際、私の近所の高齢者らも、最初はテレビにかじりついて「もり・かけ」の顛末をみていたようですが、それも最初の一月くらいであり、それをすぎると視聴するのはやめたようです。

その理由を聴いていみると、ほとんどの人が「飽きた」というものでした。確かに、なにやらマスコミや野党はいかにも何かおこりそうな雰囲気でいろいろ御託を並べて追求したのですが、結局何も変えられませんでした。

高齢者の側からすると、野党やマスコミがいくら大騒ぎしても、世の中は変えられないんだという諦めムードになり、どうせ何も変わらないなのだから、見ても無駄と思い見なくなったのだと思います。

そうして、このようなことは何も「もり・かけ」問題ばかりではありません。2015年の集団的自衛権を含む安保法制の審議のときにも、これらを戦争法案として、野党は国会で乱闘騒ぎを起こし、国会前では日々デモ隊が反対デモを挙行しました。テレビも新聞も連日連夜これを報道しました。

このときも高齢者は「悪の安倍」が「戦争法案」を通過させようとしている、これが通過すれば戦争になると息巻いてテレビを見ていたことでしょう。

しかし、法案は通過し、この時は安倍政権の支持率が落ちることもありませんでした。これでは、高齢者はどうせ世の中なんて、みんなでさわいでも何も変わらないのだという考えを深めたことでしょう。

さらに、高齢者のほとんどは、本当は増税してもらいたくはないが、増税しなければ日本は大変なことになるから、増税せざるを得ないと考えている人が多いです。そうして、増税すればどのようなことになるかは、何となくは知っているようです。それでも、増税しなければならないと思い込んだ人はどうなるでしょう。

さらに直近では、北朝鮮がグァムにむけてミサイルを打つという考えを表明したことが、かなりあおり気味で、報道されています。これは自衛隊の退職したある元幹部の人が語っていたのですが、自分自身はそのようなことはないと思っているので、テレビなどの番組で、「北朝鮮のグァムへのミサイル発射はあり得るのか?」と聴かれて「ないと思います」というと、もう後が続かなくなってしまうので、その番組にはもう使われなくなってしまうと語っています。その発言の動画を以下に掲載します。(7:57あたりにその発言があります)



しかし、テレビではミサイル発射があり得るというということを前提して、報道をしないと話が続かなくなるので、あくまであり得るという前提する放送局がほとんどです。

そうなると、いつ日本にも火の粉が飛んでこないとも限らないということで、高齢者はかなり煽られるわけです。

以上は、最近の事例を出しただけで、高齢者は昔からテレビや新聞で日々煽られてきており、さらには政治家やマスコミが悪を暴いても悪いものが成敗されることもなく、この世にのさばっていると考えざるを得ない状況に追い込まれています。

このような状態が数十年も続いたとして、自らその情報の真偽を確かめる術を持たない高齢者がどうなってしまうのか、容易に想像がつきます。それは、モラルの低下です。彼らかられば、悪の安倍政権が滅びることも何もなく、そのまま続いているのですから、この世の中は巨悪がまかり通っていると考えるようになるのも無理はありません。

そうして、最近では高齢者の体力が昔と比較してかなり向上しています。昔だとたとえ、切れても体力的にどうにもできなかったものが、今の高齢者は、実力行使に訴えることもできます。

最近の〝キレる〟高齢者が増える背景には、このような背景もあると思います。これを防ぐには、高齢者に対して直接考え方を変えるように説得してもほとんど効果がありません。さらに、インターネットで検索せよと説いてもほとんど効果はありません。

グーグルクロムキャストやアップルTVなどで既存のテレビで動画を見る方法を教えてあげると良いと思います。

私は、何人かの高齢者にそれを教えてあげましたが、教えたほとんどの人が「虎ノ門ニュース」などをみるようになって、人生観が随分変わったと言っていました。

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2017年8月21日月曜日

日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった―【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!

いまこそ財政支出の「ダメ押し」が必要だ

 消費増税すべき、だと…?

内閣府が14日に発表した2017年4~6月期GDPは年率4.0%増、プラスは6四半期連続となった。名目GDPの成長率も年率4.6%と好調だった。名目は2四半期ぶりにプラスになった。

これに対して日経新聞は、「4%成長は追い風参考記録だ」というの社説を出した( http://www.nikkei.com/article/DGXKZO20027630W7A810C1EA1000/)。社説では「1.0%未満とされる日本経済の潜在成長率を大きく上回った」としたうえで、「成長率を大きく押し上げたのは、個人消費と設備投資という民間需要の2本柱だ」という。

そして、「2016年度補正予算の執行が本格化し、公共投資が成長に寄与した面も見逃せない」と書いていた。公共投資は主役扱いでない、ということのようだ。最後に、記事は「政府は労働市場や規制緩和などの構造改革の手を緩めてはならない」と締めくくっている。

GDP速報の公表後、筆者のところに、これだけ内需が伸びているのだから、秋の補正では経済対策は不要であり、この流れのなかで消費増税もやらなければいけない、という声が聞こえてきた。そこで、

<GDP速報。これで消費増税(が必要)とかいっている人もいるが。これはZ(財務省)のささやきだろう。ただ16年の2次補正が効いたとしか読めないぞ。要するに緊縮しなければ成長するという当たり前の話だろう。だから秋の補正でも(経済対策をやれ)ということだ>

とツイートした(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/897284790029754368 なお、書き損じなどを修正)。その際、以下の表も添付した。


改めてGDP速報(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf)をみたら、公共投資が大幅に伸びて、その結果、消費と設備投資への波及効果があったのだと筆者は思った。これが、普通の見方だろう。

ところが、日経新聞は社説のように、公共投資が伸びて、それが波及したことを前に出さないように書いている。おそらく財務省関係からささやかれていた話に従うかのように、記事や社説を書いたのだろう。そこには、「秋の補正での経済対策は不要である」という財務省の意図が滲み出ている。

そうした空気は、政府内にもあるようだ。茂木敏充経済再生担当相は、記者会見で今回のGDP速報について「率直にいい数字だと思っている」との認識を示し、「内需主導の経済成長が続くように万全の対応をしていきたい」と強調した。一方で、「現段階で具体的に新たな経済対策は想定していない」とも語った。

はたして茂木経済再生担当相の認識・方針は正しいのか。それを考えるために、今回のGDP速報について詳しく見てみよう。

 「完全雇用」と早合点してはいけない

需要項目別に見ると、民間消費3.7%、民間住宅6.0%、民間設備投資9.9%等で民間需要5.3%。政府消費1.3%、公共事業21.9%で公的需要5.1%。民間と公的を合わせた国内需要は5.2%だった。一方、輸出▲1.9%、輸入5.6%であったので、外需のマイナスを内需でカバーした形である。

公共事業の伸びが大きかったのは、16年度第2次補正予算に盛り込んだ経済対策が寄与したからだ。今回のGDP速報は、適切な補正予算によって、個人消費が牽引され、内需主導の望ましい経済成長が可能になったことを示している。

総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比▲0.4%だった。1-3月期には▲0.8%であったので、改善の方向であるが、依然としてデフレから完全に脱却したわけでないことが明らかだ。

これを指摘しても、茂木経済再生担当相や日経新聞は、日本経済の潜在成長率が低いことを主張して、現時点で経済対策は不要であるというだろう。

ちなみに、内閣府は、2017年1-3月期GDP2次速報後のGDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの乖離)を+0.1%としている。今回のGDP速報では、さらにプラス幅が拡大するはずだ。プラスということは、需要超過なので、これで有効需要をさらに増やす経済対策は不要、というロジックである。

日経新聞も、潜在GDP成長率は「1.0%未満」と社説に書いているので、すでに「需要超過」という内閣府と同じ意見を有しているのだろう。というか、このあたりの話になると、マスコミでは自分で検証できないので、役所のいいなりである。

さて、GDPギャップについては、重要な経済データなので、内閣府だけではなく日銀でも算出しており、GDPギャップは実際のGDP(国内総生産)と潜在GDPの差の、潜在GDPに対する比率と定義されている。

問題なのは、潜在GDPである。一般的には、経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で、資本や労働力などの生産要素を投入した時に実現可能なGDPとされているが、GDPギャップの大きさについては、前提となるデータや推計方法によって結果が大きく異なるため、相当の幅をもって見る必要がある。このことはGDPを推計している内閣府や日銀でも注意事項として認識されている。

内閣府の数字は0.1%となっているが、この結果をもって、「GDPギャップがないからすでに完全雇用だ」「経済対策は必要ない」と早合点はできない。潜在GDPについて、これまでの実現GDPをベースに算出するが、その結果、これまで完全雇用が実現されていないような水準に引きずられて、完全雇用水準から過小評価になる傾向があるからだ。

つまり、潜在GDPは必ずしも完全雇用を意味していないのだ。その理由を簡単に言えば、まだインフレ率が上がっていない以上、失業率はまだ下がる余地があり、インフレ目標達成とさらなる失業率の低下を進めるために、経済対策の余地はあるということだ。

ただしGDPギャップについては、その変化はおおいに参考になる。内閣府のデータは公表されている(http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html)ので、それを活用してみよう。それを使って、完全雇用水準からどの程度、過小評価になっているのか考えてみよう。

 構造失業率は2%程度

まず、失業率とインフレ率の関係(フィリップス曲線)を整理しておこう。それを仔細に見ていくと、ちょっと違った姿が見える。失業率とインフレ率は、逆相関になっているが、実は、両者の間に、GDPギャップが介在している。

例えば、GDPギャップがマイナスで大きいと物価が下がり、失業率が大きくなる。逆にGDPギャップがプラスで大きいと物価が上がり、失業率が小さくなる。

下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっている。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係がある。


ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度である。

それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になる。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度である。

また、この財政出動はGDPギャップを縮小させるので、インフレ率の上昇とともに、これ以上は下げられない「構造失業率」まで失業率の低下をもたらすはずだ、

下の図2は2000年以降の、四半期ベースで見たGDPギャップと失業率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸に失業率をとっている。図をわかりやすくするために、左軸は反転させて表示しているが、GDPギャップはやはり半年後(2四半期後)の失業率とも、かなりの逆相関関係がある。


GDPギャップと失業率の関係式から見た、GDPギャップ+4.5%程度に対応する失業率は2%半ば程度である。筆者は、2016年5月30日付け本コラム(「消費増税延期は断固正しい! そのメリットをどこよりも分かりやすく解説しよう」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48779)において、これ以上下げられないとされる構造失業率を2%半ばと推計している。

一般的に、構造失業率の推計には、UV分析と潜在GDPによる分析の二通りがある。昨年の本コラムでは前者のUV分析を使ったが、今回は後者である。

いずれにしても、二つの異なる分析によっても、日本の構造失業率が2%半ばと同じになっているのは興味深いことだ。数学の問題では、二つ以上の別の解法により解けば、その命題はより正しいとされるが、経済学でも別の二つの方法で同じ結果であれば、よりもっともらしいといえるだろう。

 デフレ論者は否定するだろうが…

以上の分析を総合すると、構造失業率は2%半ば程度であろうとともに、それに対応するインフレ率はインフレ目標の2%である。その状態は完全雇用なので、内閣府の潜在GDPは4.5%程度過小評価になっている。

であれば、現実のGDPをその「完全雇用水準」まで引き上げるためには、有効需要25兆円、財政出動に換算して20兆円規模となる。逆にいえば、そこまでGDPを高めれば、インフレ目標2%を達成し、同時にこれ以上下げられない構造失業率2%半ばを達成することになる。この意味で、適度なインフレの下で、回避できない失業を除いて完全雇用を実現する合理的な政策となる。

さて、本題に戻ろう。今回のGDP速報結果を分析すれば、公共事業に支えられて、民間需要が誘発された形である。ここで、すでに民間需要に火がついたと勘違いして、経済対策の手を緩めれば、元の木阿弥になるだろう。というのは、現在は実際には完全雇用にほど遠い状態であり、賃金上昇に本格的な火のついていない状態だからだ。

実際、安倍政権下について考えれば2013年度は公共事業が活発で経済も良かった。しかし、2014年度以降公共事業が低調だった。消費増税の影響も相まって、緊縮財政傾向になり、GDP成長率は今一歩だった。

現時点で財政問題は気にする必要はない。これは、2015年12月28日付け本コラム(「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか… http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)などで繰り返してきたので、読者ならばおわかりだろう。

むしろ国債市場では国債「玉不足」が言われている状況だ。今の低金利時代に、将来投資を行い、同時に、インフレ目標2%、構造失業率2%半ばを達成するのが正しい経済政策である。そうすれば、民間需要に本当の火がつくだろうし、過去20年間以上苦しんだデフレ経済からも本当に脱出できるだろう。

このように書くと、デフレ論者から、「金融政策だけではインフレ目標が達成できなくなったから、また別の手を出してきた」という批判が出てくるだろう。それは違う。上にも書いたが、2014年度以降は消費増税の影響もあり、緊縮財政だったので、それが金融政策の足をひっぱってきた。だから、それを改めよという話をしているのだ。

デフレ論者は消費増税・緊縮財政指向なので、彼らの主張が日本経済のためにならないのは、改めていうまでもない。

【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!

確かに、「年率実質4%成長」という数字は、「良い数字」であることは間違いありません。そして、実質成長が6期連続のプラスなのも、それが11年ぶりであることも、事実です。

しかし、それら数字についての「解釈」は、いずれも著しく「不適切」であるとしか言いようがありません。

なぜなら、「いい数字」もある一方で、日本経済が未だにデフレであることを明確に示す「わるい数字」も存在しているからです。

ついては以下、現状の経済状況がいかなるものなのかを、客観的視点から確認してみることにしましょう。

まず、上記の報道における「景気が良い!」という論調の根拠はいずれも「実質成長率」(前期比)に基づくのですが、景気判断は下記のような多様な尺度を参照せねばなりません。
・実質成長率(前期比、対年前年度比)
・名目成長率(前期比、対年前年度比)
・デフレータ変化率(前期比、対年前年度比)
こういった尺度が全て良好になったときはじめて、本格的な成長軌道にのったと判断できるのです。それはまさに、健康診断の時の「血液検査」と同じようなもの。健康な人は全ての尺度が「良好」なのです。不健康な人は、これらの内、複数の尺度が「不健全」なのです。

さて、その視点で、今回公表された各数値を確認しますと以下となっています。
・実質成長率———–前期比年率3.9%——前年比2.1%
・名目成長率———–前期比年率4.6%——前年比1.7%
・デフレータ変化率—–前期比0.2%———-前年比-0.4%
ご覧の様に、成長率は「前期比」に比べれば随分と「景気の良い数字」なのですが(実質、名目共に年率4%前後以上)前期比でみれば、たいしてよい数字とは言えません。

何よりも深刻なのは、デフレータ(物価)がほとんど改善していないという点(前期比の増加率0.2%という数字は到底力強い上昇とは言えません)です。むしろ「前年比」で見れば「マイナス」の状況にあります。

そもそも、実質成長3%と名目成長4%(つまり、デフレータ1%増)を目指している我が国政府の基準を踏まえれば、これら数字は以下の様に判定することもできるでしょう。
・実質成長率     前期比年率3.9%(○)  前年比2.1%(△)
・名目成長率     前期比年率4.6%(○)  前年比1.7%(△)
・デフレータ変化率  前期比0.2%  (×)  前年比-0.4%(×)
これでは、「景気は良好!」とは決して言えません。

つまり、「前期比」の年率「実質」成長率だけを見て、「かなりよい景気だ、だから、もう対策は不要だ!」というマスコミ論調は、まさに「木を見て森を見ず」というか、「森の中の一本の木だけを見て、森どころか隣の木すら見ていない」、極めて愚かな論調に過ぎません。

確かに、今回は、実質成長が「6期連続」で、かつ、それが「11年ぶりだ」なのではありますが、だからといってこれだけで、すぐに、今景気は良いという判断にはなりません。

なぜなら、「実質成長率」は、「デフレが加速してデフレータ(物価)が下落」すれば、上昇するものだからです。つまり、「実質成長率は、デフレの深刻さの尺度」にすらなり得るのです!

実際、下記グラフからも明白なとおり、消費増税以降、デフレータは下降し続け、今やマイナス領域を推移しています(黄色)。


これこそ、「6期連続、実質成長率がプラス」となった理由です。実際、このグラフに示した「名目成長率」(前年比・青線)は、今期こそ、僅かに上昇傾向を見せていますが、ここ最近、ゼロ近辺を推移しているということ、つまり、「成長していない」事を示しています!

日本経済は、本格的な好景気状況からはほど遠い状況にあるのです。

とはいえ、「今期」は、少なくとも「前期比」で見れば、デフレータ、名目成長率、実質成長率が全てプラスという、(他の国なら当たり前の)「正常」な数字も、久々に一部において見られたわけですが、これがなぜもたらされたのかをしっかり認識する必要があります。さもなければ、誤診に基づいて間違った治療を施すヤブ医者のように、日本経済を完全に治癒する(=デフレ完全脱却させる)ことが不可能となるからです。

その一部の理由は、「公共投資は5.1%増-補正予算の効果でプラスに寄与」というものです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-13/OUAL466S972801

つまり、ちょうど一年前の昨年夏に調整した、アベノミクスにおける「大型景気対策」の効果がようやく効き始めた、と言うのが、「今期」における一部良好な数字の原因だったのです。この事を踏まえれば、この景気回復基調を確実なものにするためにはやはり、政府の経済対策の当面の継続が必要であることが見えてきます。

ただし、これ以外にも、「個人消費や設備投資など内需が堅調」という点も、事実です。今期は消費も投資も双方、おおよそ6000億円(名目値)ずつ前期から拡大しています。

この消費と投資の回復は一体なぜもたらされたのか──その根拠は、下記のグラフから読み取ることができます。


このグラフは、日本経済を構成する「四主体」の内の三つ、「民間」「政府」「海外」の「貯蓄態度」を示すもの(日銀資金循環統計から)。

この「貯蓄率」という数字は「貯蓄額の対GDP比」ですから、各主体が「ケチ」になって「金づかい」が悪くなって貯金ばかりするようになると「上がり」ます。一方、各主体が「豪気」になって「金づかい」が良く(=荒く)なると、は「下がり」ます。

ご覧のように「民間」の貯蓄率は、この1年ほど「下落」してきています。これは、民間企業が「ケチ」な態度から「豪気」な態度にシフトし始めた事を意味しています。

別の言い方をすると、「内部留保する傾向を弱めてきている」という事を意味します。つまり、民間企業が、儲けたオカネを貯金する(=内部留保する)のでなく、消費や投資に使うようになってきたということを示しているのです。これこそ、「今期の消費と投資の拡大」を意味する統計値です。

では、なぜ、民間が貯蓄率を減らし、投資や消費を拡大し始めたのでしょうか。それは、海外の貯蓄率が下がってきた」という点に求められます。

ご覧の様に、この3年ほど、海外の貯蓄率は下落し続けています。これはつまり、外国人が日本で使うカネの量が、過去三年の間、増えてきた事を意味します。これは要するに、(相対的に)「輸出が増えてきた」ということを反映したもの。実際、ここ最近景気の良い企業の多くが、「輸出企業」だったのです。

http://datazoo.jp/w/%E8%BC%B8%E5%87%BA/32830318

さて、これらのデータを全て踏まえると、我が国のここ最近の経済動向は、次のようなものだ、という「実態」が見えてきます。
①ここ2,3年間、外需が伸びてきた事を受けて、外需関連企業の収益が改善した、 
②その影響を受け、ここにきてようやく、民間企業がトータルとして「内部留保」を縮小させ、消費と投資を拡大しはじめる程に景気が改善してきた。 
③これを受けて、ようやく(物価の力強い上昇は達成されていないものの──)「名目GDP」も上向き始めた──。
つまり、今の「よい数字」を導いた基本的な原因は「外需」だったわけであり、それがここにきてようやく、民間企業の力強い成長に結びついてきた、と言う次第です。

さて、この実情を踏まえれば、確かに、(金融緩和→円安→外需拡大をもたらした)アベノミクスは着実に、一定成功していることが見て取れるのですが、それと同時に、未だ、我が国経済の「成長の兆し」はとても確実で安定的なものだとは言えない、という姿も同時にくっきりと見えてきます。なぜなら我が国の現時点の成長の兆しは、「外需頼み」のものに過ぎず、したがって、極めて不安定なものと言わざるを得ないからです。

つまり今後、例えば朝鮮半島の緊張の高まりを受けて世界経済の成長が鈍化して外需が冷え込んだり、あるいは、円高で輸出企業が厳しくなったり、あるいは、石油価格が高騰したりすれば、この好景気への僅かな兆しも、瞬く間に失われ、完全デフレ状態に舞い戻ってしまうことになる、という事が危惧されるのです。

そうなる前に一刻も早く、デフレを終わらせ、「外需頼み」で回復し始めた日本経済を、力強い確実な成長軌道に乗せるべく、徹底的な景気対策を図る必要があります。

そもそも、我が国政府は、消費増税以降、徹底的な「緊縮」政策を、ここ数年継続させていた、という事実を忘れてはなりません。改めて先に紹介したグラフの「青線」をご覧ください。

これは政府の貯蓄率。ご覧の様に、我が国政府は、貯蓄率を「拡大させ続けて」いるのです。

これはつまり、増税をして緊縮財政にして、カネをマーケットから吸い上げ続けている、という事を示しています。すなわち我が国政府は、外需が改善してきているのを良いことに、自分だけカネをため込んで、マーケットで使わず、景気の足を引っ張り続けている、と言うことです。

この緊縮的な態度を辞めない限り、デフレ脱却なぞ、絶対にあり得ません。

デフレを完全脱却させるために、外需と一緒に、政府もまた、貯蓄率を引き下げ、民間がさらにさらに投資と消費を拡大できる状況を作らねばならないのです。

アベノミクスの成功、すなわち、デフレ完全脱却は、確実に私達に近づいてきています。そのチャンスを手にするか否かを決めるのは、もちろん、政治の判断です。

我が国内閣の、客観的な情報に基づく理性的判断を、心から祈念したいと思います。

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