2013年11月19日火曜日

【経済学101】ラルス・クリステンセン 「ヒットラーを権力の座に押し上げたのはハイパーインフレではなくデフレである」―【私の論評】日本も過去の歴史を学んでいない、政治家・官僚・マスゴミ・似非識者が多すぎ!過去を学ばない、ないがしろにする者には創造性は育まれず、馬鹿の壁をさらに高くするだけ!

【経済学101】ラルス・クリステンセン 「ヒットラーを権力の座に押し上げたのはハイパーインフレではなくデフレである」

デフレがヒトラーを生み出した!ファシズムの温床、デフレ!

2か月ほど前のことだが、マシュー・オブライエン(Matthew O’Brien)がアトランティック紙で次のように語っている。

ハイパーインフレーションからヒットラーの台頭に至るまでは一直線を引くことができる ことは誰もが知っていることだろう。しかし、この件に関しては誰もが知っていると思い込んでいることは間違いなのである。ナチスが権力の座に就いたのは物価が4日ごとに倍になったハイパーインフレの時期(1923年)-この時期にもナチスは権力の獲得を目指していたが、その試みはうまくいかなかった-ではなく物価が下落していたデフレの時期(1933年)なのである。

オブライエンの言う通りである。しかしながら不幸なことに、ヨーロッパの政策当局者らの中には過去の(経済や政治に関する)歴史をきちんと学んでいる人物がほとんどいないようである。加えて、自由市場に基づく資本主義体制を擁護する者の中で次のことに気付いている人物もまたほとんどいないようである。すなわち、資本主義体制に対する最大の脅威は過度の金融緩和ではなく過度の金融引き締めなのであり、過度の金融引き締めこそが反動的なポピュリスト―右か左かを問わず―が権力の座に就く土壌を形成することになるのだ。

(追記) ドイツのシュピーゲル紙が次のように語っている。

1922年から1923年にかけてドイツ全土を襲ったハイパーインフレはついにはアドルフ・ヒットラーの台頭を促したのであった。

・・・ドイツのメディアの中にも自国(ドイツ)の歴史からきちんと教訓を学ぶ必要のある人物がいるようである。

オブライエンの記事の存在を教えてくれたことを含めPetar Siskoに感謝。

P.S. スコット・サムナー(Scott Sumner)が直近のブログエントリーの中で自由市場の擁護者の多くが金融政策に関わる問題を巡っていかに間違った考えを抱いているかを話題にしている。

もう一つP.S. デフレ圧力に晒されているユーロ圏で進行しているこの新しいニュースにも要注目である。

【私の論評】日本には過去の歴史を学んでいない、政治家・官僚・マスゴミ・似非識者が多すぎ!過去を学ばない、ないがしろにする者には創造性は育まれず、馬鹿の壁をさらに高くするだけ(゚д゚)!

1938年9月1日、ベルリンの「アドルフ・ヒトラー
広場」で行進中の兵士たちに敬礼するヒトラー。

おそらく、ドイツの歴史について忘れ去られていることで、重要なことがもう一つあります。それは、ドイツの当時の空前のハイパーインフレの原因は何であったかというものです。これも日本はもとより、ほとんどの国の政策担当者や、マスコミに忘れ去られています。特に、日本は酷いです。

第一次世界大戦後のドイツがハイパーインフレになった原因としてはいくつもありますが、その大きな直接的な原因の一つは当時のドイツ連邦銀行の独立性によるものです。

この当時のドイツにおける中央銀行(ドイツ連邦銀行)の独立性とは、現在世界各国で標準となっている独立性とは異なります。

現在の世界標準の中央銀行の独立性とは、国の金融政策はその方針を政府が定め、中央銀行はその方針に従い、専門家的な立場から、その方針を実現するための手段を自由に選択できるというものです。国の金融政策の方針はあくまで、政府が定めるということです。

ドイツ連邦銀行

当時のドイツ連邦銀行は独立性を有していましたが、その独立性の中身は、現在の世界標準の独立性とは異なるものでした。どのようなものであったかといえば、国の金融政策は、方針まで含めて中央銀行であるドイツ連邦銀行が定めるというものでした。

政府は、選挙で選ばれた議員などもその構成員の中に含まれ、民意も直接的に反映されるものですが、中央銀行は政府の一下部機関に過ぎず、そんなところが、国の金融政策を独自で決定するのは本来あってはならないことです。しかし、その当時のドイツはそうではなく、結果としてドイツ連銀が、政府の意向とは関係なく、貨幣を大量に刷り増すことになり、ハイパーインフレになってしまいました。

こうしたことの反省もあり、現在の世界の中央銀行の独立性とは、先ほども述べたように、政府の決めた金融政策の方向性に従い、専門的な立場からその方法を自由に選ぶことができるというように制限されたのです。

日本銀行

このことも、忘れ去られています。特に、現在の日本では忘れ去られています。日本でも、従来は日本銀行の独立性はごくまともなものでしたが、平成9年(1997年)6月18日の日銀法改正により、日銀の独立性は拡大され、日銀が国の金融政策の方針を定めることができるようになりました。

この次の年、1998年より日本は完璧にデフレに突入し、それから15年以上もの年月がたっています。その間、ほんのいっとき金融緩和をした例外の期間をのぞき、日銀はデフレであるにも関わらず、ずっと金融引き締め政策を継続し、日本はデフレスパイラルの泥沼に落ち込むこととなりました。安倍政権が誕生することになり、安倍総理が金融緩和をすると約束し、実際に4月から異次元の包括的金融緩和を実行したところ、未だデフレから脱却はできないものの、景気は確実に良くなりました。

過去の日銀の金融政策は全くの間違いであることが、実証されました。15年もの長きにわたって、日銀は誤謬を繰り返していたことが白日の元に晒されることになりました。

以上に述べたことからも、現在の日銀法による、日銀の独立性はあまりに強大すぎます。日銀は、政府の一下部組織に過ぎません。そんな下部組織の、金融政策会議により、日本国の金融政策が定められるという今日の方式は明らかに間違っています。

しかし、特に日銀黒田体制ができあがるまでは、国会議員などが日銀を批判すると、馬鹿なマスコミ、似非識者などは、日銀の独立性を楯にとって「批判するのはおかしい、日銀の独立性に反する」などとはやしたてました。これは、全くおかしなことです。たとえ、現行の日銀法の範囲内で考えたとしても、政府の一下部機関に過ぎない日銀が失敗すれば、批判されるのは当然のことであり、独立性があるからといって、全く批判してはならないなどということにはなりません。

過去の歴史を学ばないのは、何もドイツの政策担当者やマスコミだけではありません。多くの国の政策担当者、マスコミにみられる現象です。しかし、日本では過去の栄光ともいうべき自国の歴史がすっかり忘れ去られ、デフレを長期間にわたって放置するということが平然として行われてきました。

高橋是清

日本の過去の栄光とは、世界恐慌(日本では昭和恐慌)を世界で一番早く脱却したという世界に誇る日本の英知を示す輝かしい歴史です。これは、高橋是清による金融緩和、積極財政政策によるものです。これに関しては、以前のこのブログにも掲載したことがありますので、以下のその記事のURLを掲載します。
ポール・クルーグマンの新著『さっさと不況を終わらせろ』−【私の論評】まったくその通り!!
ポール・クルーグマン博士

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事の【私の論評】においては、高橋是清の金融・財政政策についてその概要を解説させていただきました。是非ご覧になってください。

世界恐慌の原因は、深刻なデフレでした。デフレのときには、金融緩和、積極財政を実施し、早期に経済を立て直すという現在のマクロ経済学上では、当たり前のど真ん中を、日本では昭和恐慌からの早期脱出という形で理論だけではなく、実際に実行してみせたわけです。

この事実は、あまり語られることはありませんでした。それは、様々な原因があるものの、やはり第二次世界大戦に日本が負けたということが大きく影響していると思います。

アメリカは、日本のような政策をとらなかったため、戦前にデフレから脱却することはできませんでした。アメリカがデフレから脱却できたのは、戦争を遂行するための金融緩和政策と、積極財政が効いてきた大戦の最中のことです。もし、戦争がなかったら、回復は相当遅れたことと重います。20~30年か、もっと長く続いたかもしれません。なぜなら、アメリカは、デフレであっても、リフレ政策をするという考えは全くなかったからです。戦争により、戦時国債を乱発することによる結果としての金融緩和、戦争を遂行するため、大量の兵士に給料を支払い訓練して、兵器・要員を大量に生産、戦地まで運ぶという事業による結果としての積極財政がリフレ政策と同じような効果をだしたため、ようやくデフレから脱却できたのです。

そもそも、深刻な世界恐慌から敗戦国の日本が世界で一番先に脱却していたという事実は、アメリカなどの戦勝国からすれば、とても容認できないことだったと思います。実は、戦勝国よりも敗戦国である日本のほうが、知恵があり、経済的には優れていたなどという事実はあまり公にしたくない事実だったと思います。

そのためか、戦後の教育の基本は、ソ連のコミンテルンが大勢を占めた、アメリカGHG(事実です、GHQの構成員のほとんどはソ連のスパイか、馬鹿のいずれかでした)によって創られたこともあり、この事実は日本では学校でもあまり教えられることもありませんでした。しかし、私たち日本人は、この事実を日本の英知を示す素晴らしい一つの事例であることをしっかりと記憶にとどめるべぎです。特に政治家・官僚、政策担当者、マスコミの特に経済記者の方々はその詳細まで含めて、学ぶべぎてす。

日本でも、政治家、官僚、政策担当者が、しっかり学んでいれば、15年間もデフレを放置するなどということにはならなかったはです。過去を学ばない、ないがしろにする者には創造性は育まれせん。

それは、アインシュタインの言葉でも理解できることです。これについては、以前のこのブログても掲載したことなので、以下にそのURLを掲載します。
BOOK REVIEW 『これからの思考の教科書』- ビジネススキルとしての思考法を順を追って学べる良書―【私の論評】常に革新的であるために、一つの思考方法に凝り固まるな!!アインシュタインと菅総理大臣から真摯に学ぼう!!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にアインシュタインの発言などを抜粋して掲載します。
このことを端的に示しているのが、アインシュタインです。アインシュタインといえば、あの相対性理論で有名です。特にその中でも、「E=MC2」という式は、統合的思考の産物です。わずか、この一行の式の持つ意味はまるで、広大な宇宙のようです。 
こうした、アインシュタイン自身が自分の業績について語った言葉が印象的です。「私の理論は、すでに先人がそのほとんどすべてを開拓したものです。私が付け加えたのは最後のほんの!%程度くらいにすぎません」。これは、かなり、謙遜した言葉と受け取られるかもしれません。しかし、真実です。 
アインシュタインは、先人が開拓した物理の理論を情報として、徹底的に、頭の中にインプットしたのだと思います。そうして、そこから、様々な知識を生み出し、その過程で、無論、論理的思考と、水平的思考を駆使し、最後の最後で、統合的思考方法を適用して、壮大な理論を「E=MC2」という、単純な公式としてまとめあげたのです。わずか、!%といいながら、その1%は、偉大であり、人類の金字塔となったのです。
アインシュタインは、科学の分野の人であり、先人が開拓した物理の理論を情報として、徹底的頭の中にインプットしました。金融、経済でも同じことです、高橋是清の実施した事柄や、ケインズなどの理論については、政治家や政策担当者は真摯に勉強すべきです。

アインシュタイン

また、私たち一般人も、詳細までは知らなくても、歴史的事実として概要は知っておくべきものと思います。そのようなことが実際に実行されていれば、デフレが15年も続くだとか、来年の4月に増税するなどのことはなかったものと思います。

一人のリーダーだけがそのような姿勢であっても、世の中は変えられません。大勢の人がそのようにしなければ、馬鹿なことはこれからも何度となく繰り返されると思います。私は、安倍総理は過去を真摯に学んでおり、本当は増税などしたくなかったのでしょうが、自民党の中でも、過去の歴史を学んでいる人はほんの一握りであり、それに抗って増税を見送った場合には、安倍長期政権は実現することはかなわず、結局は大事を成すチャンスすらなくなってしまうので、妥協せざるを得なかったのだと思います。残念なことです。平成15年の総裁選には是非勝利をおさめて、これから馬鹿なことが繰り返されないよう頑張っていただきたいものです。

アインシュタインのいうように、日本の過去の政策担当者らが、高橋是清などの先人の研究を徹底的に調べ、それに何らかの新しい1%の新しいことを付け加えるようなことができていたら、デフレになるどころか、今頃日本は大躍進していたかもしれません。

結局、過去を学ばず、ないがしろにする者には創造性は育まれず、馬鹿の壁をさらに高くするだけなのだと思います。何事においても、過去の歴史を真摯に学び、それに新たな1%を付け加えることができたら、天才になれるということかもしれません。ただし、その1%が難しいということだと思います。しかし、その前にまずは、過去の歴史を真摯に学ばない者には、何も新しいことはできないということです。

過去を学ぶ手段としては、何も社会科学、自然科学を学ぶだけではなく、歴史や文学などもあります。この分野もある程度は齧らないと、馬鹿の壁がさらに積みあがるだけになります。読書にはこうした役割もあるということです。どんなに科学が発展したといっても、人間の生きている時間など限られており、生きているうちに自ら直接体験できることなどたかが知れています。古今東西の先達の考えたこと、感じたことなど学べば、自ら直接体験できないことにまで視野は広がります。視野の広がりが、馬鹿の壁を崩してくれます。しかし、そのようなことをしない人は、馬鹿の壁をうず高く、積み上げて馬鹿な人生を送り、一生を終えることになります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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