2013年11月16日土曜日

重要なのはアベノミクスの第1の矢だ:JBpress (日本ビジネスプレス)―【私の論評】第三の矢などずっと後回しで良い!そんなことよりも、デフレ脱却が最優先課題であり、そのために一番重要なのは金融緩和である!似非ケインジアンにだまされるな(゚д゚)!

(2013年11月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

安倍晋三首相が日本の経済的活力を取り戻す計画を公表してから1年経った今、大規模な金融拡張という首相の第1の矢は、誰も想像できなかったような早さで飛んでいる。急激に円安が進み、株価は上昇した。インフレの炎がどれだけ続くかについて疑問はあるものの、消費者物価上昇率は1%に向かってじわじわ上昇している。

今年上半期には、日本経済は年率4%という見事なペースで成長した。誰も、何年もこんなことは見たことがない。

アベノミクスの推進者安倍首相

第3の矢は別問題だ(「機動的」な財政政策という第2の矢は、支出を拡大した後、縮小することになるため、ここでは除外する)。第3の矢である構造改革は、仮に放たれたとしても、身が入らない状態で放たれた。そして、本当に重要なのは第3の矢だ、というのが大方の意見だ。潜在成長力を高めるための改革や規制緩和がなければ、アベノミクスは次第に弱まり、経済は振り出しに戻ってしまう、というわけだ。

だが、大方の意見に反して、安倍首相の第3の矢は矢筒の中にある最も重要な武器ではない。その栄誉は第1の矢のものだ。誤解のないように言えば、日本が構造改革を通じて生産性を向上させる必要があることを疑う人は誰もいない。それが必要のない国などない。

15 年のデフレから脱却することこそがアベノミクスの神髄

しかし、アベノミクスについて本当に急進的なのは、日本を15年に及ぶデフレから解放するための大胆――無謀と言う人もいる――な賭けだ。

日本は初めて、中央銀行は特定のインフレ目標を達成できる――そして達成する――と話す総裁をいただいている。日銀は長年、中央銀行にはそうするだけの力がないと強く示唆し、日本の救いは構造改革にあると言ってきた。

言い換えれば、アベノミクスの斬新さは、金融政策を取り戻すところにあるのだ。

2%のインフレを達成することは万能薬ではない。債券利回りが制御不能なほど上昇し、債務の返済を難しくするようであれば、この目標達成は危険を伴う可能性もある。インフレがそれだけで、いかにして労働参加率を押し上げ、コーポレートガバナンス(企業統治)を改善し、女性を自由にし、日本をもっとオープンにするのかという、根本的な問題を解決するわけではない。

だが、デフレ退治は最低必要条件だ。デフレは20年近くにわたり、有害な影響を及ぼしてきた。過去の債務、特に公的債務は、債務を軽減する物価上昇という魔法がなかったために、ずっとシステムにまとわりついていた。

デフレは、アニマルスピリッツを籠に閉じ込め、銀行に融資を思いとどまらせる一方、企業と個人に借り入れや投資を思いとどまらせてきた。デフレ退治よりも構造改革を優先することは、たった今心臓発作で倒れた人に向かって、低脂肪の食事療法にすることが先決だと言うようなものだ。

重要だが、時間がかかる構造改革

この見方には反論がある。1つは、これが二者択一の問題ではないというものだ。第1の矢と第3の矢は、同時に配備できる。安倍首相は、政治的資本を持っている今のうちに、矢を放つべきだという。

外国人は、安倍首相が真剣であることを示す証拠として構造改革の兆候を見たがっている。これが、大衆薬をインターネット上で販売する計画が骨抜きにされたことに非常に大きな失望が広がった理由だ。

マウスをクリックして風邪薬を注文できることが経済を回復させることになると真面目に考える人は誰もいない。だが、投資家は象徴的なものを重視する。安倍首相が、リスクを嫌う医師や従来型の薬局と戦うことができなければ、もっと幅広い改革について、どんな望みが持てるだろうか?


実際には、安倍首相の構造改革はこれまでの政権の改革案を焼き直したものだ。首相自身は改革の重要性を強調しているが、これは部分的には、アベノミクスが本当は何なのかということから注意をそらせる狙いがある。つまり、紙幣を増刷し、円を切り下げることだ。

小泉純一郎元首相は10年前、経済活性化の名の下に「聖なる牛を虐殺した(聖域にメスを入れた)」が、今でも多くの牛がまだ楽しく反芻している。

48ページに及ぶロードマップと37項目にわたる産業再生などでいっぱいの全94ページの安倍首相の計画は、あらゆる政策手段を網羅している。ただ、悲しいかな、これは壮大なビジョンを示すものでもない。

・・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・・

アベノミクスにできる最善の貢献

日本社会を変えるための強力な後押しが出てくる可能性は小さい。社会的保守派の安倍首相は19世紀への郷愁の念が強すぎて、日本を猛然と21世紀へと推し進めることはないだろう。それを除くと、目の前にある根本的な課題は、デフレを退治し、日本をより持続可能な財政の軌道に乗せることだ。

それが日本の問題をすべて解決するわけではない。だが、絶対不可欠な第一歩になる。恐らくそれがアベノミクスにできる最善の貢献だろう。

【私の論評】第三の矢などずっと後回しで良い!そんなことよりも、デフレ脱却が最優先課題であり、そのために一番重要なのは金融緩和である!似非ケインジアンにだまされるな(゚д゚)!

上の記事、ほぼ正解なのですが、なにやらヌタヌタした書き方で、あまりはっきりしません。要するに、まともなマクロ経済学的な立場からいえば、デフレなどの不況のときは、まずは何といっても金融緩和政策が最重要だということです。煎じ詰めれは、上の記事はこれだけの内容です。

当たり前のど真ん中です。何も新しいことはありません。現状の日本は、デフレなのですから、成長戦略、構造改革などよりも、まずは大々的金融緩和を行わなければならないです。その次に財政政策を実施すれば、成長戦略や構造改革などすぐにしなくても、デフレは回復します。というより、政府主導、すなわち官僚主導でへんてこりんな、構造改革など大々的に実施しても、何も良いことはなく、かえってデフレ脱却の足をひっぱるだけです。まずは、金融緩和をしてデフレから脱却すべきです。

上の記事、日本の来年の4月からの増税についての内容が全くないのが、バランスを欠いていると思います。イギリスは、2011年に財政赤字を縮小することを目的として付加価値税の大々的な増税を行いました。その結果、景気がさらに落ち込み、若者の雇用が極端に悪化して、暴動などが発生しました。この若者雇用を改善すべく、イングランド銀行(イギリスの中央銀行)は、大々的な金融緩和を行いましたが、それでも景気は回復せず、結局現状では税収が減り、財政赤字の縮小も目処がたたない状態です。

結局、イギリスの付加価値税増税は、大失敗でした。日本でも来年の4月からの増税が決まりました。イギリスは、増税の後金融緩和をしました。日本は、金融緩和の後デフレから脱却していないうちの増税ということになり順番は違いますが、いずれも、増税しながらの金融緩和ということでは共通点があります。であれば、上のフィナンシャル・タイムズでは日本の、増税+金融緩和というやり方は、全くの間違いであることを掲載すべきでした。実際、増税は、金融緩和の効果を削ぎ、デフレ脱却の時期を遅らせるだけのことになります。無論、税収も減ることになり、デフレを長引かせ、その結果として雇用状況も悪化、ブラック企業が増え、良いことは一つもありません。

それにしても、日本ではまだ十分にやりもしないうちから、金融政策や財政政策だけでは今の日本は、経済成長できず同時もしくは、早期に構造改革や成長戦略を実施しなければならないと信じ込んでいる超ド馬鹿な識者といわれる人々、政治家や官僚が大勢いるといことが驚きです。デフレの現在、成長戦略をやったり、構造改革をやっても、砂上の楼閣です。まずやるべきは、確実に一刻も早くデフレからの脱却です。成長戦略や、構造改革などその後じっくりやっても良いものです。あるいは、やらなくても済んでしまうことも十分考えられます。

これは、手術がすぐに必要な慢性病患者に対して、塩分の低い食事、栄養失調にならないように、肉をある程度以上食べるようすすめているようなものです。ちなみに、従来はコレステロール過多などの弊害のため、肉の食べすぎは、控えるようにいわれていましたが、最近は、特に高齢者でさっぱりした野菜中心で肉をほとんど食べない食事が健康に良いとの錯誤から、栄養失調になり病気や老化を促していることから、肉を食べるようにさせるキャンペーンが行われています。確かにこのような配慮は重要なのですが、手術が必要なまでに悪化した患者に、もっと肉を食べろといっても全く意味はなく、まずは、手術をすべきでしょう。その後に、健康維持のための方法を生活指導して、病気の再発を防いだり、予防行為をすべきです。

は? 超ド馬鹿の政治家代表?そもそも、似非ケインジアンでもない?

このにような愚かな主張をする人々は、日本があまりにも長い間デフレスパイラルの泥沼に落ち込んでいるため、デフレが通常の状態だと思い込み、特に金融政策などまだ十分に効果をあげないうちから、あるいは金融緩和だけでは不十分として、成長戦略や構造改革が必須であると信じ込んでしまうのだと思います。この考えは全くの間違いです。デフレは経済の癌です。しかもインフレよりも始末が悪いです。インフレの場合は、とんでもないインフレで年率100%とか、とんでもないハイパーインフレになり、すぐに生活に大きな支障がでるため、誰もが度を超したインフレは大問題だといことがわかります。

しかし、デフレは最大でも年率2%くらいのものにしかならず、ハイパー・デフレなどありません。2%くらいだと、1年くらいでは誰もその弊害に気づきませんが、3年、5年、10年となるとじわじわと雇用や消費に悪影響を及ぼします。そもそも、デフレは異常な経済であり、通常の経済循環の景気が良い、悪いという状況を逸脱したものです。これは、何をさておいても、デフレから脱却して、すくなくとも景気が悪いという状況にもどするのが王道中の王道です。特に変動相場制の国では、金融緩和が効き目が強いということもすでに、わかっていることです。

しかも、その悪くなり方が少しずつのためであるため、まるで多くの人々が茹で蛙のようになり、悪化していること気づきません。現在の日本はまさに、その状況にあります。GDPデフレーターはここ20年右肩下がりに下がりっぱなしです。そうして、この状況を脱却するには、一番重要なのは、金融緩和です。アベノミクスの、三つの矢のうち、もっとも効果があるのは、金融緩和であり、その次は、財政政策であり、一番効果が薄いのは、成長戦略です。

デフレはゆでガエルを醸成する?

現在の日本では、デフレを脱却するだけで、かなりの経済成長が期待できます。

上の記事では、この当たり前の事実をもってわわって、グタグタと書いていますが、これは、マクロ経済学上の常識であり、当たり前のど真ん中です。

これに関して、経済評論家の上念司氏司会による、経済史家の田中秀臣氏と、塚本ひかりさんの対談があります。以下に掲載しますので、是非ごらんになってください。



この動画の補足が、上念氏のFBに掲載されていましたので、下に引用しました。これもあわせて、是非ご覧になってください。
似非ケインジアンに告ぐ(補足説明) 
「似非ケインジアン」の定義は「ケインズは金融政策を否定し、財政政策の効果しか認めていない」と思い込んでいる人です。これは検定教科書の記述を丸暗記する事の弊害でもあり、次元を越えた日教組との闘いでもあります。財政派の一部(バカな人)も該当しますがもっと広い概念です。 
「似非ケインジアン」には①意識的なものと②無意識的なものがあります。
①はケインズの権威を利用して自説を強化するための意図的な剽窃、プロパガンダ。
②は単なる無学、無知が原因です。 
ケインズの著作やイギリス政府への提言を読めば、彼がどれほど金融政策に関心があったかはわかるでしょう。金本位制復帰に関する議論などは、まさに「デフレは貨幣現象である」という認識に立っています。これは「似非ケインジアン」には不都合な真実でしょうが、事実なんで受け入れなきゃだめ。 
変動相場制においては、「金融緩和>>>>>>>財政政策」であるという事実を認めるかどうかです。敢えて言わせてもらえば、財政政策だけ、というのは完全に間違いですが、金融政策だけなら半分ぐらい正解になっちゃいます。 
金融緩和+財政政策+その他の政策で、デフレ脱却に向けて百点満点だと仮定すると、その内訳は金融緩和で80点、財政政策で10点、その他で10点ぐらいのイメージです。(あくまでイメージです) 
財政政策の効果は否定しませんが、限定的であると言うだけの話です。
似非ケインジアンには、いろいろなタイプがいますが、私が思うに一番悪質なのは、金融緩和政策を全く否定し、財政政策しか効果がなく、しかもその財政政策を成長戦略および構造改革を結びつけ、成長戦略、構造改革を大々的に行うことが最も効果があるとする人たちだと思います。 全く見当違い、方向違いです。

不景気には、何をさておき、金融緩和です。これに関しては、イギリスを含むEUについてクルーグマン博士は、以下のような記事を書いています。
クルーグマン「欧州に必要なのは穏やかなインフレだ」


詳細はこの記事をご覧いただくものとして、金融緩和に関わる部分を掲載します。
欧州のインフレ問題:それは,低すぎるってこと 
実のところ,穏やかなインフレは現代経済にとっていいことだ.理由は2つある――1つは需要にかかわり,もう1つは供給にかかわる. 
需要の方について言うと,インフレは金利のゼロ下限問題を弱めてくれる:名目金利はマイナスになりようがないけれど,穏やかなインフレが予想に定着しているかぎり,実質金利の方はマイナスまで下がりうる. 
供給の方について言うと,インフレは名目賃金の下方硬直性の問題を軽減してくれる:人々は賃金切り下げを要求したり受け入れたりするのにすごく抵抗する.これは,大勢の労働者の相対的な賃金が下がる「必要がある」ときに深刻な制約になる. 
どちらの問題も,アメリカで大いに生じている.でも,欧州ではいっそう事態はひどい.あちらでは,財政政策がきわめて縮小的になっっている――ユーロ圏周辺地域の国々でえげつない緊縮策が,そして中核的な国々で予防的な緊縮策がとられたおかげだ.これにより,頼りになるのが金融政策しかなくなってしまった――それに,周辺国は大幅な内的な通貨切り下げも必要となっている. 
このことを踏まえると,欧州のインフレに関する最新の数字 は,とにかく悲惨だ:昨年のコアインフレ率はたった 0.8 パーセントでしかない. 
ところが,欧州の当局では,欧州中央銀行が金融市場をなだめて一部の国ではわずかな経済成長が見られるので,危機は終わったと考えている始末だ.
インフレ率を高める政策といえば、無論金融緩和策です。このような記事を読むと、いわゆる茹で蛙状況は、日本だけではなく、欧米にもみられる現象であることが良くりかいできます。

とにかく、デフレからの脱却ということになれば、日本はもとよりいずれの国でも、まずは何をさておいても、金融緩和ということです。無論、積極財政政策もやるべきです。両方とも実行することが、最も効果があるってことです。そうして、増税は積極財政ではなく、緊縮財政であり、本来はやってはいけないということです。これに反することを言う人は、間違いってことです。本当の経済の原則というのは、それを実施対策レベルに移すということは難しいとは思いますが、その原則は単純です。

様々な、小さな現象にわずらわされることなく、現実を直視すれば誰にでも理解できるシンプルなものです。こういうシンプルな原則を、上のフィナンシャル・タイムズの記事のような語り口調でヌタヌタと説明するのは、幸いなことに上の記事自体はおおむね正しいのですが、たいていは間違いと捉えて良いです。当該国の、インフレ率など問題にせず、当該国の景気の悪さは、もっぱら海外の影響によるものと主張するのは典型的な間違いです。今の日本、いくら海外の経済がどんなに好転したとてしも、日本国内のデフレの基となっている事柄が、解消されない限り、永遠に解消されません。この当たり前のど真ん中を理解しなければ、似非ケインジアンにも簡単にだまされることになってしまいます。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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