2015年3月14日土曜日

【日本の解き方】「経済成長よりも成熟社会を」は人を殺す 半可通の議論に騙されるな―【私の論評】今の日本は成熟社会ではない!20年もデフレ・円高を放置した原始社会である!今こそ当たり前の現代社会に復帰して、過去20年間成長できなかったその遅れをなるべくはやく取り戻すべきだ(゚д゚)!


そもそも、一国の経済・社が生物の一個体のように、成長、成熟、老化などというパターンが成り立たない。
写真はブログ管理人が挿入 以下同じ

日本の経済成長率がこのところ伸び悩んでいることやインフレ目標にまだ届いていないことについて、一部マスコミで「消費者の節約志向」「金融緩和マネーは株や資産価格を上げるだけ」などと解釈している記事を見かけた。

データを見よう。消費者物価指数総合の対前年同月比をみると、2014年4月の消費増税までは順調に上昇していた。量的緩和がスタートした13年4月には0・7%下落だったが、14年5月には1・7%上昇(消費増税による見かけ上の影響を仮に2%として差し引いた数値)となった。ところが、消費増税の影響で消費が減退し、15年1月には0・4%上昇(同)と低下している。

成長率でも、消費増税前の13年4~6月期から14年1~3月期の平均実質国内総生産(GDP)成長率は2・1%増であったが、増税後の14年4~6月期から15年1~3月期では2・6%減と急落している。

マスコミの経済関係記者は、こうしたマクロのデータを見ないで、半径1メートルの世界の印象から「消費者の節約志向」という結論を出しているのだろうか。

「緩和マネーは株や資産価格を上げるだけ」というのも、マクロ経済への無理解からくるものだ。

金融緩和によって実質金利が下がり、これがGDPを増加させ、就業者数が増えるのを、株価が先取りするだけだ。つまり、株価上昇と就業者数増加は同時に進行しているが、株価の方が先に現象として出てくるわけで、株価と就業者の間に因果関係があるわけではない。

このような無理解の上に、一部のマスコミでは、「経済成長よりも成熟社会を」という論調もしばしば見受けられる。これは戦後のヘタレ左翼思想に過ぎず、そもそも1990年代以降の低成長ではシャレにもならない。90年代以降の日本の経済成長率は、先進国では最低ランクだった。この間、経済成長しなかったことでさまざまな問題が出てきた。とりわけ社会問題として顕著なのは自殺率の増加であろう。

低成長が続く社会で損をするのは、結局、社会の底辺にいる人たちである。トマ・ピケティ氏の著書によって有名になった「The World Top Incomes Database」を使って、それを確かめてみよう。同サイトでは、トップ1%だけではなく、ボトム10%の平均所得のデータ(物価上昇分を除いた実質値)もある。ここ20年間の伸び率をみると、日本では、平均1・6%減だ。米英仏独の4カ国平均は0・4%減。これも日本が低成長だったためだ。

低成長は、全体のパイを減らす。全体のパイが大きければ分配も容易であるが、パイが小さいともともと少ない人はより苦しくなる。成長を否定したら何もできない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今の日本は成熟社会ではない!20年もデフレ・円高を放置した原始社会である!今こそ当たり前の現代社会に復帰して、過去20年間成長できなかったその遅れをなるべくはやく取り戻すべきだ(゚д゚)!

デニス・ガボール

成熟社会とは、元々はイギリスのデニス・ガボールの著した『成熟社会新しい文明の選択 』(1972)からの転用語で、一種の未来社会についてのビジョンを指します。ガボールは1971年にノーベル物理学賞を受賞した高名な物理学者で、かたわら未来学者としても活躍しました。

彼のいう成熟社会とは、これまでの物質万能主義を排し、ひたすら量的拡大のみを追い求める経済成長やそれに支えられた大量消費社会のかわりに、高水準の物質文明と共存しつつも、精神的な豊かさや生活の質の向上を最優先させるような、平和で自由な社会を意味しています。

そこでガボールが提示している未来社会像は、かならずしも新奇なものではなく、高成長から低成長への転換期にあたり、自然との闘いから人間性との闘いへ、物質的・手段的価値から精神的・表出的価値への推移(=成熟)を可能にし促進するような政治、経済、社会、文化全般の見直しを提唱したものです。

たとえば、消費社会の不毛と倦怠(けんたい)の克服、知能偏重から知能と倫理の調和へ、善意と幸福を周囲に広げる人間の形成、強制と支配ではなく自由と責任と連帯の拡充、多様な個性と価値観を尊重し許容する寛容な民主的社会の実現などが主張されています。

この立場は、生活の質の向上による社会の漸進的活性化を意図するもので、人間にとって真の豊かさとは何かを追求するポスト・マテリアリズムpost-materialismの立場にほかならないものですが、一方、伝統的な自由主義・民主主義の流れに棹(さお)さしながら、一種のエリート主義的な色調をも帯びています。

この言葉が日本で流通し始めたのは1973年に日本で『成熟社会』が翻訳されて、出版されてからであると考えられます。この書籍は、一時は、アマゾンで1円で買えるような古書にすぎなかったのですが、今では、成熟社会というキーワードに人気があるせいか、本日改めてアマゾンでみて、700円とか、1000円などと価格がついていて、改めて驚きました。

成熟社会―新しい文明の選択 (1973年)
デニス・ガボール
講談社
売り上げランキング: 125,866


やはり、この書籍今や古書でとしてしか購入できないのに加え、最近またこの成熟社会なる幻想が頭をもたげてきて、ブログ冒頭の記事で高橋氏が指摘するような状況になっているのだと思います。

この成熟社会なる言葉、もう本当は死語に近いものにすぎないはずです。特に、日本以外の国では、死語に近い言葉になっています。この書を世に送り出した、ガボールの最大の誤算は、出版された1973年当時、同時に変動相場制に移行した後訪れた本格的なグローバル経済を読めなかったということでしょう。

世界が、固定相場制なら多くの国々特に先進国が、それぞれ内々に「成熟」してしまったのかもしれませんが、グローバル経済が展開することで「成熟」などという言葉は浮世離れしてしまいました。世界全体から見れば、「成熟」など遠く離れた世界で、国境が低くなれば、「成熟」は拡散して流産してしまいます。

「成熟社会」というの言葉は、生物学からの安易な借用なのですが、生物の個体に見られる成長して成熟し、老化し死ぬというお決まりのコースをあてはまるほど世界はまだ「成熟」していません。

というより、混沌としていて、まだまだ安定した状況ではなく、ISISにみられるようなテロリストによる恐怖や、未だに世界的な宗教対立の火種はあちらこちらに見受けられます。それだけではなく、日ケティ氏などが指摘する前から、グローバルな視野から見た場合、政治システムや、経済システムなどまだまだ成熟の域に達しているとは言いがたい状況にあります。

恐らく今後も世界が「成熟」することはなでしょう。成長と破壊の繰り返し。シュムペーターの語った、創造的破壊がこれからも世界的な規模で繰り返されていくことでょう。もういい加減日本のマスコミや、似非識者なども「成熟社会」などという幻想からを卒業する程度には頭の中身を成熟するべきです。



さらに、直近の日本の状況をみていれば、デフレが20年近くも放置され続けました。このような状況に至った国など、古今東西例を見ません。誤った金融政策や、財政政策を実行し続け、このように長い間、是正もしなかった国が日本です。

しかも、このデフレの最中には、上でも高橋洋一氏が指摘したように、デフレ・円高政策が多くの人を殺してきました。

これについては、以前このブログでも指摘したことがあります。そのブログのURLを以下に掲載します。
【田中秀臣氏TW】財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない―【私の論評】政治主導を実現するため、財務省殺人マシーンは分割して破壊せよ!日銀殺人マシーンの亡霊を蘇らせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、最近は年間2万人台に戻ってはいるものの、デフレが顕著になった98年から自殺者が年間3万人台となり、多くの国民が塗炭の苦しみを味わったことを掲載しました。デフレと、自殺者数の相関関係に関しては、田中秀臣氏や、日銀の現副総裁の岩田規久男など、日本の著名な経済学者も指摘するところです。

そもそも、これだけの死者を出しても、20年近くも放置しておいたという稚拙な、経済対策しかできなかった日本が、とても成熟社会に入ったとは言えないと思います。

過去の日本は、成熟社会に入ったために経済が停滞したのではなく、デフレ・円高を放置し、マクロ経済学では常識とされている、その対応策である金融緩和政策や、積極財政などせずに、その反対の日銀による金融引き締め策や、財務省による増税という緊縮財政を実行したからです。

このような馬鹿げたことをする国、それを支持する政治家や、似非識者が存在する国が、どうして成熟社会などということがてきるのでしょうか。

昨年の4月に8%増税をして、大失敗した直後に、さら10%増税など言い立てて、それに輪をかけて「経済成長よりも成熟社会を」という馬鹿げたことを言う、マスコミや識者、幼稚であり稚拙であると言わざるを得ません。このような、者共の言うことが、幅を効かせて、結局8%増税せざるを得ない状況に安倍政権を追い込んだ、社会などとても成熟社会とは呼べません。

金融・財政政策においては、成熟社会であるどころか、原始社会といっても良いくらいだと思います。

しかし、この原始社会が、まともな現代社会に復帰し、今後成長することになれば、日本はとてつもないことになると思います。

もう、その方向性は見えています。今は何がなんでも、物価目標も達成していないうちに、金融引締めをするとか、10%増税による緊縮財政を実行するなどという馬鹿真似をするような原始社会から、普通の現代社会に復帰して、過去20年間成長できなかった、その遅れをなるべくはやく取り戻すべきです。その先に、全世界が羨む日本が待っています。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

【田中秀臣氏TW】財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない―【私の論評】政治主導を実現するため、財務省殺人マシーンは分割して破壊せよ!日銀殺人マシーンの亡霊を蘇らせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!

日本と過去:消化されていない歴史―【私の論評】多くの日本人が、虚心坦懐に過去を評価しないから金融政策でも、震災復興でも、歴史問題でも間違いがいつまでも続くのだと心得よ(゚д゚)!

日本の国民負担率は低いのか 消費税に依存する欧州を持ちだす財務省の魂胆 ―【私の論評】正味国民負担率は、スウェーデンよりも高い日本の現実を直視せよ! この事実を糊塗して、詭弁を弄する騙し屋財務省に諜略されるな(゚д゚)!

経済の常識 VS常識 政策の非 人口減少は諸悪の根源か―【私の論評】人口現象などの自分以外のせいにするのは、戦前戦後とも馬鹿の言い訳! 奇妙奇天烈摩訶不思議な論調には吉田松陰先生のように理で勝負せよ(゚д゚)!

財務省の屈辱と安倍総理のリップ・サービス―【私の論評】今回の解散は、どんなに反対があっても総理大臣は、解散・総選挙という伝家の宝刀を抜くことができるということを示したことで大義は、はっきりしているのに「大義なし」といった輩はただの無能蒙昧の大馬鹿野郎(゚д゚)!

【関連図書】

日本がまともな社会になれさえすれば、まともな金融政策、財政政策ができるようになり、経済は大復活し、若者が将来に希望の持てる、明るい未来がやってきます! それらを解き明かすのが、以下の書籍です。今までのように、馬鹿なマスコミや、似非識者、財務省などの寝言を聞いて信じ込んでいては、遅れを取ります(゚д゚)!

世界が日本経済をうらやむ日
浜田宏一 安達誠司
幻冬舎
売り上げランキング: 124

これからの日本を読み解く 日本の将来はじつに明るい! (WAC BUNKO 215)
日下公人 上念 司
ワック
売り上げランキング: 587

世界の未来は日本次第
世界の未来は日本次第
posted with amazlet at 15.03.14
長谷川 慶太郎 渡邉 哲也
PHP研究所
売り上げランキング: 2,100

0 件のコメント:

経産省が素案公表「エネルギー基本計画」の読み方 欧米と比較、日本の原子力強化は理にかなっている 国際情勢の変化を反映すべき―【私の論評】エネルギー政策は確実性のある技術を基にし、過去の成功事例を参考にしながら進めるべき

高橋洋一「日本の解き方」 ■ 経産省が素案公表「エネルギー基本計画」の読み方 欧米と比較、日本の原子力強化は理にかなっている 国際情勢の変化を反映すべき まとめ 経済産業省はエネルギー基本計画の素案を公表し、再生可能エネルギーを4割から5割、原子力を2割程度に設定している。 20...