2015年4月3日金曜日

AIIB不参加を批判するリベラル派マスコミは、大勢順応、軍国主義時代と同根―【私の論評】新聞などのメディアは、戦前・戦中から売上第一で今も報道の使命を忘れたままである(゚д゚)!


長谷川 幸洋
中国が提唱したアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加問題をめぐって「日本は孤立した。いつまでも米国追従でいいのか」といった批判が出ている。欧州はじめ50ヵ国近くから参加表明が相次ぐ一方、日本は米国とともに参加を見送ったためだ。この問題をどう考えるか。
不参加批判は大勢順応主義

私は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42638)で「左翼勢力はかつての軍国主義者たちの思考様式とそっくりだ」と指摘したばかりだが、日本のAIIB不参加を批判するリベラル左派の論調も似たようなものだ。上っ面だけをみて、厳しい現実をきちんと見ようとしない。それから大勢順応主義である。

また東京新聞の社説をとりあげて恐縮だが、典型的で分かりやすいから、仕方ない。東京は社説で次のように書いている。

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米国偏重で「アジアで孤立化」した日本が、アジアのリーダー的な地位を中国に奪われつつあることは明らかである。(中略)懸念があるのなら、参加して他の国々と連携しながら改善の道を探るべきである。(中略)対中国の緊張関係にとらわれ、世界の動きが見えていなかったのではないか。米国とともに行動すれば大丈夫という時代ではなくなったことを理解すべきである(3月31日付。http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015033102000149.html)。
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もう1つ、毎日新聞も紹介しよう。

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政府は参加を全面否定しておらず、将来的な加盟の余地を残している。それなら、組織の枠組み作りから関与し、自国の提案が反映されるよう、内から発言する作戦の方が賢明だったのではないか。(中略)米国とは違い日本はアジアの国である。AIIBに限らず、今後このような中国やインドが主導する構想と向き合わざるを得なくなろう。「慎重」だけでは戦略にならない(4月1日付。http://mainichi.jp/opinion/news/20150401k0000m070155000c.html)。
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ようするに両紙は「日本は世界の流れが見えていない、米国と歩調をそろえるだけではダメだ。AIIBに参加せよ」と主張している。リベラル派の2紙が同じ主張であるのは偶然ではない。後で述べるように、思考パターンが同じだからだ。

脅威としての中国か、中国とウィンウィンの関係か

私自身がどう考えるかといえば、『四国新聞』(3月29日付)と『週刊ポスト』(同30日発売号)の連載コラムで、日本は「米国と歩調をそろえて中国の挑戦を受けて立つ以外にない」と書いた(http://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20150329.htm)。念のために言えば、コラムを執筆したのは、2本とも政府が不参加方針を表明する前の時点だ。私が政府方針に意見をそろえたわけでは、まったくない。鍵は中国の安全保障上の脅威をどう見るか、である。

中国は日本にとって脅威であり、欧州にとっては脅威ではない。今回のAIIBをめぐる対応が欧州と日本で分かれたのは、それが理由である。先に書いたコラムにもぜひ目を通していただきたいが、ここではマスコミの問題を含めて指摘しておきたい。

まず、中国には欧州に軍事侵攻する選択肢がない。中国が欧州に侵攻しようとすれば、核大国のロシアを陸から越境するか、テロの戦火が吹き荒れる中東を横切るか、それとも大艦隊を率いてインド洋から南アフリカを回って欧州に向かうかしかない。中国にとって、そんな選択肢はどれもありえないのだ。

しかし、日本はどうかといえば、日本の領土である尖閣諸島に中国が領土的野心をみなぎらせているのは、言うまでもない。米国はというと、南シナ海で岩礁周辺の埋立工事を急ぎ、軍事基地建設を目論んでいる中国に警戒心を高めている。

中国が南シナ海のど真ん中にいくつも基地を築いて南シナ海全域を事実上、自国の勢力圏にしてしまえば、米国にとって中国はビジネスパートナーである以上に、中国は戦略上の潜在的な脅威である。

リベラル3紙はなぜ間違えるのか

AIIBに参加した国々は、あきらかに「脅威としての中国」ではなく「ビジネスパートナーとしての中国」との関係を優先した。実は中国にとっても欧州は魅力がある。国際金融取引の拠点である欧州は、人民元の国際化を進めるうえで役に立つからだ。中国は人民元国際化に一役買ってもらう見返りに、AIIBのインフラビジネスで欧州に「多少の分け前を与えてもいい」と思っているだろう。まさにウインウイン関係だ。

ロシアは内心、中国の勢力伸長を警戒しているが、米国をけん制するうえで中国との連携は役に立つ。だから付き合った。豪州は中国に警戒心を抱いてはいるが、地理的に遠く海をはさんでいるので、日米ほど直接的な脅威にさらされていない。ブラジルにとって中国はまったく脅威ではない。遠すぎる。

アジアの途上国はどうか。たしかに中国は脅威であるが、インフラ整備を進めるマネーは喉から手が出るほど欲しい。

中国が脅威でないなら参加、脅威ではあっても実利が大きいなら参加、逆に明白な脅威であるなら不参加、という具合に各国の対応が分かれたのである。

ところが、東京や毎日新聞は「世界は雪崩を打って参加した。日本は乗り遅れてしまったら孤立する」と言うだけだ。各国は脅威と実利を天秤にかけたうえでの判断なのに、単に「大勢に従え」と言っているにすぎない。

両紙には、そもそも「中国が日本にとって脅威である」という認識がない。その点は「関与は十分だったのか」と題した朝日新聞の社説(http://digital.asahi.com/articles/DA3S11681087.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11681087)も同じである。ちなみに朝日は参加すべきとも、すべきでないとも言っていない。「国民によく説明せよ」と言うのみで、どっちつかずの姿勢だ。ぶれている。

リベラル3紙に共通するのは、AIIBをもっぱら経済問題としてのみとらえて、外交安保上の戦略的視点が欠落している点である。
「バスに乗り遅れるな」

加えて、リベラル派は「最初に結論ありき」で日本の集団的自衛権行使に反対である。そのためには、できるだけ中国を脅威と認識したくない。中国を脅威と認めてしまえば、直ちに日本はどう対処するのか、が問題になるからだ。そうした思考様式から(脅威ではない)中国が主導するAIIBになぜ参加しないのか、という結論が導かれる。現実の脅威には目をつぶり、理想論で世界を眺めて結論を下すのだ。

中国もときにウインウイン関係という言葉を使う。だが、中国の言うウインウイン関係とは相互依存ではなく、単なる「縄張りの相互尊重」程度ではないか。それがはっきりしたのは、2013年6月の米中首脳会談だった。

習近平国家主席はオバマ大統領に「太平洋は米中両国を受け入れるのに十分、広い」と言った。それは「太平洋は十分に広いから米中両国で分割しよう」という意味のエレガントな外交的表現にすぎない。これは事実上、縄張り分割の提案である。

日本政府はAIIB不参加の理由に「融資の持続可能性や銀行統治(ガバナンス)が健全に保たれるか」といった懸念を挙げている。ここで指摘したような外交安保上の懸念はけっして口にしない。それは当然だ。

そんなことを言ったら、中国に面と向かって「お前は敵だ」と言ったも同然になってしまう。言った瞬間に、あとはどっちが勝つか、力で戦うだけという話になってしまうからだ。

軍国主義時代には「バスに乗り遅れるな」論こそが戦争拡大の鍵になった。欧米が中国や東南アジアを植民地にしていたのを見て、まさに新聞が「日本も大東亜共栄圏を」と旗を振って、仏印(現在のベトナム、ラオス、カンボジア)に進駐したのだ。

いまリベラル派が唱える「バスに乗り遅れるな」論は、日本が置かれた厳しい現実に目を背けて、大勢に順応せよと主張している点では、軍国主義時代とまったく同根ではないか。

長谷川 幸洋

この記事は、要約です。詳細は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】新聞などのメディアは、戦前・戦中から売上第一で今も報道の使命を忘れたままである(゚д゚)!

上の記事で、長谷川氏は、「バスに乗り遅れるな」論の戦中と現在の主張は同根であることを主張しています。これは、新聞などのメデイアが過去においては、戦争を煽ったことを理解してないとなかなか、納得できないと思います。

戦時中の新聞紙面 以下同じ
実際、戦中の新聞などのメディアは戦争中には戦争を煽っていました。新聞が戦争報道に熱心だったのは、戦争の記事が良く売れたからです。戦争のことを書き、勝った勝ったと叫びたてればたてる程新聞は良く売れたのです。だから新聞各社は、軍部と結託して戦争熱を煽り、読者の熱狂を新聞の売り上げに結びつけようとしました。軍部もそれをよく理解していて、戦争遂行に最大限新聞を利用しました。

戦争記事が紙面を賑わすようになったのは、満州事変のすぐ後からでした。新聞各紙は毎日のように、戦争の状況を報道し、国民の熱狂を煽りました。新聞社は記事を派手にするために、巨額の金を使って現地取材を行い、また高級軍人に取り入って情報ネタを仕入れようとしくした。半藤一利氏の『昭和史』によると、新聞社の幹部が「星ヶ岡茶寮や日比谷のうなぎ屋などで、陸軍機密費でごちそうになっておだを上げていたようです」と書いています。

そうしたうわさは民間にも流れていたようで、永井荷風などはそれを日記の中で取り上げ、慨嘆しました。

「同社(朝日新聞社)は陸軍部内の有力者を星が岡の旗亭に招飲して謝罪をなし、出征軍人義捐金として金十万円を寄付し、翌日より記事を一変して軍閥謳歌をなすに至りしことありという。この事もし真なりとせば言論の自由は存在せざるなり。かつまた陸軍省の行動は正に脅嚇取材の罪を犯す者と云ふべし(昭和七年二月十一日)」

これは、朝日が一時期戦争に批判的だったことの根拠のひとつとして引合いに出されるものですが、ともあれその朝日も、陸軍の尻馬に乗って「売らんかな」のため「笛と太鼓」で扇動した事実を消すことはできません。



満州国の建国に際しては、朝日新聞は次のように書いて、祝福しました。

「新国家が禍根たりしがん腫瘍を一掃し、東洋平和のため善隣たる日本の地位を確認し、共存共栄の実をあぐるに努力すべきであろうことは、いうだけ野暮であろう」

癌腫瘍とは反日運動のことをさしました、そんなことはやめて日本と共存共栄しようと新国家に呼びかけているわけです。

満州事変をめぐって国際連盟での風当たりが強くなり、日本が孤立を深めるようになると、新聞は次のように言って、孤立を恐れるなと、発破をかける始末でした。

「これ実にこれ等諸国に向かって憐みを乞う怯惰の態度であって、徒に彼らの軽侮の念を深めるのみである・・・我が国はこれまでのように罪悪国扱いをされるのである。連盟内と連盟外の孤立に、事実上何の相違もない」(東京日日新聞・現在の毎日新聞)

そして国際連盟が日本軍の満州からの撤退勧告案を採択すると、新聞は連盟からの脱退に向けて、政府の方針を尻押ししました。

新聞はまた、日独伊三国同盟の締結に熱心であり、そのために反英世論を煽ることにも努めました。昭和14年におこった天津事件を巡って、日本軍はイギリスとの間で緊張状態に入ったのですが、その時に日本の新聞社は次のような共同社説を載せて、反英熱を煽りました。

「英国はシナ事変勃発以来、帝国の公正なる意図を曲解して援蒋(蒋介石を援助すること)の策動を敢えてし、今に至るも改めず。為に幾多不祥事件の発生をみるに至れるは、我等の深く遺憾とするところなり。我らは聖戦目的完遂の途に加えられる一切の妨害に対して断固これを排撃する敵信念を有するものにして、今次東京会談の開催せらるるに当たり、イギリスが東京における認識を是正し、新事態を正視して虚心坦懐、現実に即したる新秩序建設に協力もって世界平和に寄与せんことを望む。右宣言す」

随分と勇ましい宣言でしたが、その勇ましさに的確な現実認識が伴っていないことに、当時の大新聞をはじめ日本国民全体の不幸の原因があったわけです。

戦争末期になると、新聞は事実の報道と云う本質的な機能を全く果たさなくなり、国民に対して嘘の報道ばかりするようになりました。というより、軍部の傀儡となって、軍部のいうことを単に横流しするだけの、情けない存在に堕していったのです。



長谷川氏は戦時中の新聞報道と、戦後の新聞報道とでは内容は異なるものの、こうした傾向があることに警鐘を鳴らしているのです。

確かに、新聞をはじめとする今のマスコミは、戦中と変わりありません。長谷川氏が指摘する、今回のAIIBに関する報道もそうですが、他にもいろいろあります。

特に増税キャンペーンなどの記事はそうでした。大手新聞などマスコミのほとんどは、財務省や日銀などから発表される資料をそのまま報道しました。また、財務省や日銀のポチである似非識者らの意見を報道し、さもデフレ下の増税や、金融引締めが正しいかのように何の恥じらいもなく連日連夜報道を続けました。これは、本当に戦争中の戦争煽り記事と本質的に何も変わりません。

情報の入手先が、軍部から、財務省や日銀などに変わっただけのことです。

さらに、新聞などのメディアは、普段からいわゆる左翼的な意見などを頻々と報道していました。戦後しばらくは、左翼的な考えが幅を効かせ、言論人も左翼的なことをいえば、進歩的文化人として高く評価されました。今から考えると、退歩的野蛮人とでも読んだほうが、ふさわしいような言動でした。

そうして、慰安婦問題などの、歴史修正記事なども堂々と報道し続け、朝日新聞がその誤りを認めたのは、三十年以上もたってからという異常事態を招いてしまいしまた。

新聞などのメディアは、終戦直後からしばらくの間は、いわゆる左翼的な報道をすることにより、売上を伸ばすことができました。しかし、ここ10年くらいは、そうではなくなりました。実際新聞の売上は、毎年低迷しています。


これからも、新聞が戦中と同じく、「バスに乗り遅れ」論などを中心とした、報道を繰り返せば、行き着く先は、廃刊ということになると思います。

今のままであれば、そうなって当然ですし、そうなったほうが良いです。生き残りたいというのなら、自社の立場を明確にして、その立場から報道をするようにすべきものと思います。

私自身は、左翼系なら左翼系、右翼系なら右翼系でも良いと思います。それなら、それなりに自らの立場をはっきりと表明して、その立場から報道すれば良いのです。そうすることによって、読者すらすれば、同じ事象も左翼からはこう見える、右翼からこう見えるということで、物事の本質が見えやすくなります。

一番良くないのは、立場も何もなく、あるいは立場があってもそれを表明することもなく、さも公正中立を装っていながら、その実「バスに乗り遅れ」論のような、その時々の流行にのって部数を増やすことにのみ傾注するようなやり方です。

そのようなやり方は見え透いています、大手新聞はもう世の中はこの10年で随分変わってしまっていることに気づかず、惰性で左翼的な報道を繰り返しているに過ぎません。

このままでは、いずれこの世から消えることになるでしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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【関連図書】 

報道の使命を忘れたマスコミの酷さの原因はどこにあるかが、以下の書籍で明らかになります。




:現在のマスコミなどに一番欠けている視点は、大東亜戦争の総括ができていないというところにあります。以下の書籍をご覧いただければば、日本を含む本当の近現代史が見えてきます。これが見えないマスコミは、日々頓珍漢な報道を繰り返していても、そのことに気付きません。
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