2017年1月28日土曜日

台湾に米軍駐留、ボルトン元米国連大使の衝撃論文 琉球新報は報道するも…―【私の論評】支那共産党政府を弱体化することがトランプ大統領の狙い(゚д゚)!


ジョン・ボルトン元米国連大使

 米国はカーター政権下の1979年1月、中華人民共和国(PRC)と国交を樹立し、対日戦の同志だった中華民国とは断交した。支那大陸の支配権は49年から共産党に移っており、米国はついに、現実に屈服したのだ。

 54年12月に調印した米台軍事同盟である「米華相互防衛条約」も、同じ時期に失効し、在台米軍は撤退する。あらゆる周辺国と衝突してきた人民解放軍が、いずれ台湾を軍事進攻することは確実と思われた。

 だが、米国は台湾関係法を整備した。米軍駐留は終了するが、武器売却や沖縄などの在日米軍の力で、自由主義陣営である台湾を守れるようにしたのだ。沖縄(日本)はそれ以来、米国の台湾防衛政策に、片務的貢献を果たしてきた。

 17日のウォールストリート・ジャーナル紙に、ドナルド・トランプ政権での国務副長官(日本で言えば外務副大臣)起用が取り沙汰されるジョン・ボルトン元米国連大使が、素晴らしい論文を寄稿した。台湾に再び米軍基地を設置して、沖縄の戦力の一部を移すべきという内容だ。

 在日米軍基地が沖縄に集中した唯一の理由は、地政学上有利な位置に沖縄があるからだが、台湾は沖縄と同等か、それ以上の地政学的価値がある。

 ボルトン氏の提言が実現すれば、沖縄の基地負担を減らしつつ、南シナ海や尖閣諸島周辺でのPRCの横暴を、今より効果的に牽制(けんせい)できる。

 民主党政権の鳩山由紀夫元首相が無責任に言い放った「最低でも県外」を通り越し、国外移転が実現するかもしれない。在沖米軍基地への反対運動を行う勢力にとって、これ以上素晴らしい提言はないはずだ。

 ネットで調べると、産経新聞、毎日新聞、時事通信、琉球新報などのメディアは、この提言を取り上げていた。

 驚いたのは琉球新報の記事である。事実報道に徹しており、バイアスが感じられないのだ。立ち位置に困った揚げ句の観測気球かもしれないが。

 在沖米軍基地を「諸悪の根源」のように報じてきた一部の新聞やテレビ局が、ボルトン氏の提言を報じた形跡は、ネット検索では見つからなかった。

 その原因が、彼らの情報収集力不足のせいなのか、「報道しない自由」を行使した結果なのかは不明である。

 沖縄の自然環境保護と、オスプレイなどの騒音や事故発生の危惧を理由に、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対してきた市民団体や、翁長雄志知事の口から、ボルトン氏を大絶賛する声が上がることを期待していたが、今のところ聞こえてこない。

 複雑な心中、お察しいたします。

 ■ケント・ギルバート

【私の論評】支那共産党政府を弱体化することがトランプ大統領の狙い(゚д゚)!

ボルトン氏のウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿した内容の要旨は以下のようなものです。
  • 米軍の台湾駐留によって東アジアの軍事力を強化できる
  • 台湾は地政学的に東アジアの国に近く、沖縄やグアムよりも南シナ海に近い
  • 日米摩擦を起こしている基地問題をめぐる緊張を和らげる可能性がある
  • 海洋の自由を守り、一方的な領土併合を防ぐことは米国の核心的利益であり、台湾との軍事協力の深化は重要なステップだ
ボルトン氏の発言、東アジア情勢にとって大変良い発信だと思います。もともと、在沖縄米軍は朝鮮半島情勢への対応と同時に、台湾防衛の意味も持っていました。支那は、トランプ氏が『1つの支那』に疑義を示したことに反発し、空母『遼寧』を台湾周辺に派遣して牽制しました。

これに対する、トランプ氏の『強烈な反撃』かもしれません。ボルトン氏は現在民間人ですが、トランプ政権に近い人物であり、支那に対する極めて強い抑止力になります。

まさに、台湾ならば、沖縄のように激しい基地反対運動などしないでしょうから、基地も構築しやすいです。これが実現されれば、沖縄の基地も軽減され、これほど沖縄にとって良いことはないと思います。

以下に、台湾と沖縄の地図を掲載しておきます。


この地図を見れば一目瞭然で、地政学的には、沖縄よりも支那本土に近く、また台湾は日本の、九州よりは小さいものの四国とは同じくらいですが、沖縄よりははるかに大きいです。

これだと、米軍基地用の用地も、みつけやすいことでしょう。台湾の現政権は、米軍駐留を望むことでしょう。

トランプとしては、南シナ海での軍事基地の展開をこれからもやめないというのなら、報復措置として、台湾の米軍基地を拡張すれば良いのです。

それでも、どうしてもやめないというのなら、最終的には戦術核を配備しても良いです。何よりも、これは支那の喉もとにあいくちを突きつけた格好になりますから、支那としてもかなり脅威に感じるはずです。

さて、発足から1週間を過ぎたたトランプ米政権に対し、対米関係を最重視する支那政府は、南シナ海問題や貿易問題を巡る批判に反論はしつつも、過剰反応は避けて出方を見極める慎重な構えを崩していません。その一方で、トランプ大統領の「自国中心主義」を好機とみなし、習近平国家主席は「開かれた経済」の重要性を訴えることで国際社会で存在感を高めようとしています。

支那が最も警戒するのは、台湾問題を交渉カードとされることです。トランプ氏は今月20日の就任直前まで、台湾を支那の一部とみなす「一つの支那」政策の見直しを示唆し、支那を慌てさせました。そうして、今回の米軍の台湾駐留という、ボルトン氏の寄稿は、さら支那を慌てさせたことでしょう。

習指導部は今秋に5年に1度の党大会を控えており、内政、外交の安定を最優先とする。台湾問題を巡って支那側が積極的に仕掛ける余地は小さく、あらゆるパイプを通じて米国に「一つの支那」政策の堅持を求め続けています。

特に今回の党大会は、5人の政治局常務委員が引退する予定であり、その後任が誰になるかで、現在の支那の権力闘争の趨勢が明らかになるということもあります。

以下に、次期党大会での有力候補者の名称などを含んだ図をあげておきます。


この図をみてもわかるように、習近平派の候補が二人しかいないということからも、現状の支那国内の権力闘争は、決して習近平に有利な状況で推移しているとはいえないことが理解できます。本来ならば、3人〜4人の候補者があがっていてしかるべきです。

次期党大会で、習近平派候補の二人が最高幹部になれば、7人のうち4人が習近平派ということになり、仮に一人も最高幹部になれなければ、最高幹部7人のうち、二人だけが習近平派ということで、これでは事実上の敗北です。

習近平は、実質上権力のない主席となります。しかし、この状況では、意思決定などに齟齬を生じることから、失脚に追い込まれる可能性が高いです。

一方で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を「日米による支那封じ込め」と捉えてきた中国にとって、TPP離脱を決めたトランプ政権の動きは大きな好機となりました。中国が加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP、東南アジア諸国連合と日中韓などの16カ国で構成)の実現を急ぎ、自由貿易圏構築で一気に主導権を握る絵図も描いています。

ダボス会議で演説する習近平
「保護主義は暗い部屋に閉じこもっているようなものだ。雨は防げるが、光や風をも遮断してしまう」。習近平は今月17日、スイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での講演で保護主義の拡大に「危機感」を表明し、自由貿易の「擁護者」を演じてみせました。

しかし、そういう支那こそ、もっとも保護主義的です。

トランプ大統領は、冷徹なビジネスマンでもあります。支那の今秋の5年に1度の党大会に向けて、習近平を揺るがすように、着々と次から次へと厳しい手を打っていくことでしょう。そうして、それは反習近平派を多いに勇気づけるでしょう。

しかし、習近平が失脚したとして、その後に誰が主席になったとしても、同じように権力闘争に巻き込まれて、支那共産党政府は弱体化することでしょう。それがトランプ氏の狙いです。

私は、トランプ氏の対中強硬路線の成果は、まず最初に習近平失脚という形で具現化されると思います。

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