2017年1月15日日曜日

男性が結婚しない理由? 家庭を持つことができる年収ラインはいくらなのか―【私の論評】リーマン・ショック、リフレ派 という言葉は日本にしか存在しない(゚д゚)!

男性が結婚しない理由? 家庭を持つことができる年収ラインはいくらなのか

総務省が2016年10月発表した平成27年国勢調査確定値で、大正9(1920)年の調査開始以来、初の減少に転じた日本の総人口。厚生労働省がまとめる人口動態統計の年間推計でも2016年に生まれた子どもの数が1899(明治32)年の統計開始以来、初めて100万人を割り、98万1000人にとどまる見通しであることが明らかになりました。こうした少子化の最も大きい要因として挙げられるのが結婚しない男女の増加です。

人口減少時代

 未婚者が結婚しない理由には何が考えられるのでしょうか。平成28年版少子化対策白書(内閣府)から探っていきます。

9割弱が「いずれ結婚するつもり」…でも「結婚資金が足りない」未婚男性の3割

 白書によると、国立社会保障・人口問題研究所が実施した「出生動向基本調査(独身者調査)」では、「いずれ結婚するつもり」と考える未婚者(18~34歳)の割合は、2010年で男性86.3%、女性89.4%でした。1987年時の男性91.8%、女性92.9%よりは下がりましたが、結婚に対する意欲は高い水準にあるといえます。

 また、未婚者(25~34歳)に独身でいる理由を尋ねたところ、「適当な相手にめぐり会わない」の選択肢を選ぶ割合が男性46.2%、女性51.3%と最も多く、次いで「まだ必要性を感じない」男性31.2%、女性30.4%となりました。しかし一方で、男性は「結婚資金が足りない」(30.3%)も大きな理由になっています。(2010年第14回調査結果、回答は選択肢から3つまで選択可)

高年収ほど結婚している割合が多くなる

 では、収入の違いが、結婚に影響しているのでしょうか。25~29歳、30~34歳、35~39歳の各年代で年収別に配偶者がいる男性の割合を比べてみました(グラフ1)。すると、25~29歳の年収100万円未満の男性では、結婚している割合は1割を切りますが、500万円以上の年収がある場合、およそ半数が結婚している結果になっています。


 年収が高いと既婚者が増える傾向はほかの年代も同様で、30~34歳は年収500万円以上でおよそ7割が結婚、有配偶者率の最も多い年収800~899万円は、87.4%になりました。35~39歳の場合は、年収200万円未満の場合、配偶者がいる比率は4割に届きませんが、500万円以上になるとおよそ8割に。結婚している割合が最も多い800~899万円は88.8%にのぼりました(出典:労働政策研究・研修機構「若者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状」(2014年)。

 ちなみに平成27(2015)年国政調査によると、男性の有配偶者率は25~29歳26.3%、30~34歳50.8%、35~39歳は61.7%です。グラフ1を見ると、25~29歳と30~34歳は年収300万円以上、35~39歳は年収400万円以上になると、その割合より多く家庭を持っているとわかります。

若い世代の収入は20年前と比べ、低所得にシフト

 それでは若い世代(20、30代)はどのくらいの所得の人が多いのでしょうか。1997(平成9)、2007(同19)、2012(同24)年の所得分布を見てみます(グラフ2)。すると20代の雇用者では、1997年時は年収300万円台が最も多かったのに対し、2007、2012年になると300万円台の比率が低下、200万円台前半とほぼ同じ割合になっています。


 30代では、1997年には年収500~699万円台が4分の1近く占めていましたが、2007、2012年は300万円台が2割弱で最も多く、500~699万円の収入を持つ割合は15%前後にまで落ち込んでいます。1997年から10年間に20、30代の所得分布は低所得層にシフトし、その状態が続いている、と白書は指摘しています。

 また、正社員の男性は25~29歳31.7%、30~34歳57.8%が結婚していますが、パート・アルバイト雇用の男性は25~29歳7.4%、30~34歳13.6%と有配偶者率が大きく下がり、就労形態によって家庭を持つ割合に大きな違いが生じていることがうかがえます(出典:労働政策研究・研修機構「若者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状」(2014年)。

 国挙げて、働き方改革の取り組みが必要とされていますが、若い世代の雇用のあり方や収入を増やすことができるかが、未婚率に影響しそうです。

【私の論評】リーマン・ショック、リフレ派
という言葉は日本にしか存在しない(゚д゚)!

上の記事を読んでいると、いろいろと分析はしているのですが、肝心要の結論は、結局のところ若者の雇用を増やすことと、収入を増やすことができるかが、未婚率に影響することを言っているのですが、それに対する解決法に関しては何も触れていません。

なぜ、こういうことになるかといえば、この記事を書いている人の頭の中に、金融政策と雇用とは密接に結びついているという事実が全く欠落しているからです。

現在若者の雇用そのものについては、アベノミクスの一環であった金融緩和政策により、かなり改善されて良くなっています。

それについては、何度かこのブログにも掲載しています。その記事の最新のもののリンクを以下に掲載します。
人手不足は金融緩和による雇用改善効果 さらに財政政策と一体発動を―【私の論評】年頭の小さな変化に気づけない大手新聞社は衰退するだけ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 年末年始は人手不足などの事情で宅配便の遅配が生じたという。また、ファミリーレストランでは24時間営業をやめるところも出てきている。 
 筆者は日用品でも宅配便を利用しているが、たしかに筆者のところへの宅配便も遅れた。それほど緊急性のないものだったので別に気にしなかったが、到着予定日より2日ほど遅れたものもあった。 
 百貨店も昔は元日営業が当然だったが、元日は休みで2日から初売りも多くなり、一部では3日から初売りというところも出てきている。さらに三が日は休業し4日からの初売りを検討するところもある。これらの正月休業の動きは従業員に配慮する観点からとされている。 
 いずれも人手不足感が出てきた証拠であり、これまでアベノミクスで金融緩和を続けたことの成果だといえる。
そうして、これを裏付けるような統計資料もあります。そのグラフを以下に掲載します。


このグラフにも示されているように、昨春卒業した大学生の就職率は97・3%で、前年同期から0・6ポイント増え、調査を始めた1997年以来最高となった。高卒の就職率も同じような状況です。

さて、失業率が下がっていることについて、「生産年齢人口の低下によるものだ」と主張する人がいます。しかし、この議論は、「デフレの原因は人口減少だ」というのと同じくらい、間違った考え方です。

それは、生産年齢人口が増えていた以前の方が、失業率が低かったことからもすぐ分かります。こうしたトンデモない議論をする一部の識者や経済評論家は、統計データのリテラシーに欠けていると言わざるを得ません。

失業率と生産年齢人口の推移をみても、最近の失業率の低下は生産年齢人口の低下によるものだとの結論にはなりません。まともに統計分析すれば、生産年齢人口はコンスタントに減少する一方、失業率は景気によって上下するので、傾向を除去して考えれば両者は無関係であることが分かります。

失業率は、労働力人口から就業者数を引いたもの(完全失業者)を労働力人口(就業者数+完全失業者)で除して定義されるものです。労働力人口は15歳以上の人口で、生産年齢人口は15歳以上65歳までの人口であり、両者はパラレル(並列的)な概念です。労働力人口(生産年齢人口)が減少するとき、それを所与として経済状況によって就業者数が決まってきます。なので失業率は分子も分母も労働力人口の動きを見込んだものとなり、景気だけに左右されます。



マクロ経済の基本概念として、総供給と総需要の差である国内総生産(GDP)ギャップがあります。景気の良し悪しは、GDPギャップで計ることもできます。

金融緩和と財政出動はともにGDPギャップを縮めます。短期的な効果は財政出動の方が強いが中長期的には金融緩和も効果が出ます。となると、継続的に実施しやすい金融緩和の方が、失業率低下の累積効果は大きくなります。

財政出動は公的部門の有効需要を直接創出するので分かりやすいです。一方、金融緩和については、実質金利の低下、為替安などによる民間部門の有効需要への効果は、短期的には少ないが、長期的な累積額でみると大きく作用します。民間部門の有効需要創出なので、効果ラグ(時間のずれ)があって民間雇用に効いてきます。

こうしたマクロ経済学の理解があれば、金融緩和が失業を減らすということも分かるはずです。そうして、インフレ目標は緩和しすぎないための歯止めになります。

雇用を守るべき立場のはずの日本の左派系識者や経済評論家にはそうした常識が欠けています。しかし、実は右派にもそのような常識に欠る人が多いです。

金融政策と雇用の関係はマクロ経済学の基本中の基本です。日本では、金融政策を正しく理解している人がその知識に基づいて様々な主張をしているにもかかわらず、そのような主張をする特殊なグループであるかのように「リフレ派」と呼ばれ、特殊扱いされてしまいます。

私は、このブログでマクロ経済学の基本から、全くたり前の主張をしていたにもかかわらず、Twitterで「リフレ派」と呼ばれて批判されてしまい、釈然としなかったことが何度かあります。

そもそも、世の中に「リフレ派」なる派閥が存在し、日々会合を開き、意見を集約させているなどということは聞いたこともありません。

そして、もし、「リフレ派」なる集団が存在するとしても、彼らはただ「デフレ解消のためには大胆な金融緩和が必要である」という考えを共有するだけであり、その他の政策については必ずしも意見の集約はないようです。

デフレ対応をめぐって、いろいろ分析した方のブログ記事から、リフレ派、デフレ派の分類を以下に掲載します。


この分類では、広義リフレ派をいくつかに分類していますが、その共通項は結局、「デフレ解消のためには大胆な金融緩和が必要である」ということです。

そうして、気づいたことが一つあります。それは、「リフレ派」という言葉自体が、日本には存在しますが、日本以外の国には存在しないという事実てす。そうなのでは、「リフレ派」などという言葉は、米国にも英国にも、その他の国々にも存在しません。

リフレ派もそうなのですが、「リーマン・ショック」という言葉も外国には存在しません。これは、純然たる和製英語です。

リーマン・ブラザーズが破綻して、経済に悪影響を与えた直後各国の中央銀行の動きを振り返ってみると、直後に景気が落ち込み、これに対処するために、各国の中央銀行は、大規模な金融緩和に踏み切りました。

緩和の量的規模や、期間はまちまちにしても、ほとんどの国が大規模な金融緩和に踏み切ったのは事実です。しかし、唯一例外がありました。それは、日本です。日銀だけは、大規模な金融緩和に踏み切らなかったため、どうなったかといえば、強烈な円高と、当時日本はデフレだったのですが、さらに強烈なデフレスパイラルに見舞われることになりました。

そのため、震源地であるアメリカや、かなり大きな影響を被った英国など含め金融緩和に踏み切った国々が、いちはやく不況から脱したにもかかわらず、日本はなかなか不況から脱却することができず、世界の中でひとり負けの状態になりました。

しかし、この時いわゆるリフレ派と言われる人々は、無論私も含めて、日銀は大規模な金融緩和に踏み切るべきだと主張しましたが、他の人々はそうではありませんでした。

そのため、リーマン・ブラザーズ破綻の悪影響が、日本にだけ長期間にわたり深刻な事態をもたらしました。その悪影響があまりに大きかったので、日本では「リーマン・ショック」という言葉が生まれたのでしょう。

しかし、現実には、日本はサブプライムローンの悪影響などほとんなかったので、本来はリーマン・ブラザース破綻の悪影響はなかったはずなのですが、日本以外の他国がこぞって大規模な金融緩和に走ったにもかかわらず、日本だけはそうしなったため、あれだけ深刻な状況を招いてしまったのです。

こうして、考えてみると、「リーマン・ショック」の原因は、金融緩和すべきときにしなかったこと、「リフレ派」は「デフレ解消のためには大胆な金融緩和が必要である」と主張する人々のことであり、両方とも金融緩和という共通項があります。

そうして、「リーマン・ショック」「リフレ派」という言葉が、日本には存在するものの、日本以外にはないというこの事実から、はっきりわかることは、やはり日本では「金融政策」の重要性が日本以外の国々のようには理解されていないということです。

そうして、日本でほとんど未だに理解されていないのが、雇用と金融政策の関係です。

さて、ブログ冒頭の記事の、未婚率を減らすために、「若者の雇用を増やすことと、収入を増やす」ことのうち、若者雇用を増やすことはもうすでに実現されていることを述べました。もう一つは、収入を増やすという部分です。

これは、実質賃金などが未だ上昇してないという事実があり、まだ達成されていません。のでは、これを達成するにはどうすべきかということになりますが、それを実現するには、マクロ政策的に観点からは、やはりさらなる量的金融緩和が必要なのです。無論、積極財政もすべきですが、これは比較的短期間で効き目が薄れてきます。

本格的に賃金をあげるためには、やはりさらなる量的金融緩和が必要なのです。その根拠として、このブログでは、過去に完全失業率について掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀の資金供給 8か月連続で過去最高を更新―【私の論評】金融緩和政策は限界でなく、まだまだ不十分なだけ(゚д゚)!
過去の失業率の推移

さて、詳細はこの記事をご覧いただくものとして、このブログでは、上の過去の失業率の推移のグラフから、日本の完全失業率は2.7%程度あろうということを掲載ました。

そうして、現在の日本は、物価目標2%も達成されておらず、さらに完全失業率も3%を切っていない状況なので、追加の量的緩和が必要であることを主張しました。

しかし、このことはいわゆる「リフレ派」以外の人にはなかなか理解不能のようです。しかし、本来的にマクロ経済的な観点からすれば、これはきわめてまともな主張です。

日本では、そもそも「リフレ派」とか、「リーマン・ショック」という和製英語があるように、他国と比較すると、マクロ経済の基本的なことが理解されていないのです。

それにしても、特に若者は、若者の雇用状況が新卒の就職率の良さによって、かなり改善されたことを理解している人もかなり多いことですから、20・30代の所得をあげるには、まずはさらなる量的金融緩和を実施し、2%物価目標を達成するのは、無論のこと完全失業率を2.7%台にもっていくことが、前提条件であるということを理解して頂きたいです。

そうして、理解するだけではなく、そのような主張をするとともに、選挙のときには、まともにマクロ経済を理解している政治家に投票するように行動すべきです。

若者かそのように率先して行動すれば、やがて日本からも「リフレ派」なる言葉は消えて、マクロ経済に関してまともになり、政府がデフレを長期間放置して、若者を苦しめるということはなくなると思います。

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