最近、左派系の新聞では立憲民主党と共産党を含めて「左派・リベラル」と称している。
だが、「リベラル」は、もともと「自由主義」からきている言葉であり、右の保守、左の共産主義・社会主義の中間・中道の政治スタンスを指す。経済政策でみると、雇用重視、市場重視、社会福祉に力点を置いている。人権重視で非宗教でもある。
ソ連の崩壊後、左の共産主義・社会主義は中国を残して世界中でほぼ消えかかっている。そこで、そうした勢力の逃げ場として「リベラル」が台頭してきた。これは日本も同じで、いまや世界的にも珍しい名称である「共産党」は、政権批判で何とか生き延びているが、「社会党」の名称は消えた。左派系新聞も居場所がなくなりつつあるなか、「左派・リベラル」という言葉で、なんとか「左」を残したいのだろう。
立憲民主党は「リベラル」を標榜(ひょうぼう)しており、絶滅種である左の共産主義・社会主義を目指しているわけではないだろう。ただし、問題は立憲民主党の主張する政策が、世界基準の「リベラル」に値するかどうかだ。
まず、外交・安全保障で集団的自衛権を否定するのでは絶望的だ。そもそも世界的には集団的自衛権は当たり前のことなので、左でも右でも主張する。これを否定すると、どこか別世界の人とみられてしまう。
日本では、安倍晋三政権が、経済政策や憲法改正で「リベラル」のお株を完全に奪っている。本コラムで繰り返して述べてきたが、金融緩和政策を使って雇用を伸ばすのは、世界的にはリベラルの政策である。安倍政権は、日本の政治では初めてそれを使って目覚ましい成果を出してしまった。その勢いで、市場重視、社会福祉でも矢継ぎ早に政策を出しており、立憲民主党(や民進党)は後れをとってしまった。
アベノミクスを超える金融緩和を訴えるなどして対抗すればいいものを、「反アベノミクス」と言ってしまったので、立憲民主党は経済政策でリベラル色を出せなくなっている。
憲法改正でも、今回の第9条に第3項を加えて自衛隊を合憲化するというのは、本来のリベラル、立憲主義の立場から出るべき意見だ。実際、枝野幸男代表や民進党の前原誠司代表はそうした主張をしたこともある。それも、安倍政権に先んじられてしまった。今では、「安倍政権での憲法改正に反対」と、ここでも「反安倍」しか言えない情けなさだ。
経済政策論争ができないので、「モリカケ」に走らざるをえないのが、立憲民主党だろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】国会対策は「モリカケ」だけ!次の選挙では姿を消す(゚д゚)!
上記の高橋洋一の主張は概ね賛成です。今回、希望の党、無所属、立憲民主党と3つの形で、立候補した旧民進党議員のうち、希望の党から奈良一区から立候補した馬渕澄夫氏は今回落選しました。
ブログ冒頭の高橋洋一氏が「アベノミクスを超える金融緩和を訴えるなどして対抗すればいいものを」としているのですが、旧民主党の衆議院議員の中で、これができるのはおそらく馬淵澄夫議員だけだったと考えられます。
敗戦の弁を述べる希望の党の馬淵澄夫氏 =23日午前 |
他にも、金融政策を理解している衆議院議員もいるようではありますが、アベノミクスを超える金融緩和を訴えることができるのは、馬淵氏以外には存在しないでしょう。
実は、旧民進党には参議院にも馬渕氏に匹敵するような議員が存在していました。金子洋一氏です。しかし、彼も昨年の参院選で落選しています。
金子洋一氏 |
金子洋一氏は、今回の衆院選の直前に自身のブロクで「私が野党の党首ならこんな経済政策を掲げます」という記事を掲載していました。
この内容は、ここでは詳細は説明しませんが、かなりまともな内容であり、確かにこの政策を掲げれば、経済対策としては十分に与党に対抗できるものですし、実際このような政策が運用されれば、日本経済もかなり良くなるであろうと思える内容です。
馬淵氏と金子氏に共通するのは、マクロ経済の理解です。政府・日銀が行う経済対策は、マクロ経済的な政策です。政府・日銀の行う経済対策は、家計や企業の実施するような経済対策とは当然違います。これをしっかり、理解して政策提言にまでまとめられるのは、旧民進党の中ではこの二人しか存在しないです。
2008年の朝まで生テレビで、高橋洋一氏が当時のデフレ対策に関連して「財政政策による景気刺激は1回限りで借金が残るだけであり金融政策を優先した方が良い」という趣旨の発言をしたところ、枝野氏は「財政政策に効果がないのは同意だが、金融緩和はバブルを生むだけだ。それより、銀行の預金金利を上げるべき」と発言しました。
高橋洋一氏も呆れて「今、テレビで流れちゃったけど、見た人はかなりびっくりしてると思う。預金金利を上げて景気回復するなんてことはありえない。こういう発言が出るようじゃ民主党はまだまだだ」と語っていました。
昨年から、今年にかけて旧民進党勢は、この二人の貴重な人材を活用しなかったばかりか、結局議員ですらなくしてしまっているわけですから、この二人のことを人材としても認識していなかったのでしょう。
民進党の議員のほとんどは、幹部を含めて本当にマクロ経済音痴です。枝野氏など金利をあげると経済が良くなるなどという奇妙奇天烈、摩訶不思議な理論を信奉しています。
高橋洋一氏も呆れて「今、テレビで流れちゃったけど、見た人はかなりびっくりしてると思う。預金金利を上げて景気回復するなんてことはありえない。こういう発言が出るようじゃ民主党はまだまだだ」と語っていました。
朝まで生テレビで「量的緩和」効果を理解せず、「利上げで景気回復」という珍説を披露する枝野氏 |
この枝野氏の奇妙奇天烈な理論の源流を正すと、仙谷由人氏のようです。そうして、千谷氏の経済ブレーンは、エコノミストの中前忠氏とコンサルタントの篠原令氏の2人でした。誰が、枝野氏に利上げが景気回復につながると教えたのか知りませんが、いずにせよ、教えた人はかなりのマクロ経済音痴です。
前原氏も枝野氏に負けず劣らず、マクロ経済音痴です。2013年1月13日の報道2001で「デフレ原因は人口減、円高原因は震災によるサプライチェーンの寸断」だと発言していました。
枝野、前原氏に限らず、旧民進党の議員はほとんどがマクロ経済音痴で、まともな経済対策を提言することはできません。
となると、これから野党の再編がおこり、希望の党に合流して当選した議員が立憲民進党に合流したり、旧民進党の無所属で出馬し当選した議員が、立憲民主党に合流したりしても、誰もまともな経済政策を提言できませんから、立憲民主党がまともな経済対策を提言することは不可能ということです。
それでも、本来ならば、馬淵氏と金子氏を経済ブレーンとみて、その提言を聴くなり、参考にするなどということはできるはずですが、枝野氏はそれもしないでしょう。
それどころか、枝野氏は純化路線に走り、立憲民主党以外の旧民主党の議員を全く受け入れないか、受け入れるにしても自分の考えに近い人たちしか受け入れないと考えられます。
希望の党の小池百合子代表(東京都知事)の「排除の論理」に反発して結成された立憲民主党は、衆院選でも「分断と排除の政治が行われ、立憲主義が壊されている」(枝野幸男代表)と訴えていました。
遠藤氏は「(小池氏と)同じことをしているのではないか。『自分たちと同じ考え方でなければだめだ』というのは、ちょっと違う」と語りました。
遠藤氏は「(小池氏と)同じことをしているのではないか。『自分たちと同じ考え方でなければだめだ』というのは、ちょっと違う」と語りました。
京都のお蕎麦屋さんのメニューから |
いずれにしても、まともな経済対策も語れず、安全保障も外交も与党に及ばず、結局高橋洋一氏がブログ冒頭の記事で語ったように、「モリカケ」に走らざるを得なくなるでしょう。そればかりでは、飽きられるのでまたスキャンダルを追いかけることになります。しかし、そのような話と、何でも反対という姿勢を続ければ、立憲民主党は弱体化します。そうなると、立憲民主党も旧民進党のように崩壊するしかなくなります。
次の選挙の頃には、姿を消しているか、有名無実になるしかないです。
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