2026年1月23日金曜日

ウクライナ戦争の核心は依然として未解決──虚構の平和と決別できるか、高市政権と今度の選挙


まとめ
  • ウクライナ戦争は「終わりに向かっている」という演出だけが先行し、領土問題という核心は何ひとつ解決されていない。ダボスでの首脳会談は和平の儀式にはなったが、戦争の根は手つかずのままだ。理念と外交ショーが、現実の戦争を覆い隠している。この構図は、やがて必ず次の危機を生む。
  • この「虚構の平和」は、日本と無関係ではない。台湾海峡、北朝鮮、中国、 北方領土。日本はすでに同じ構造の危機の中にいる。戦争を起きてから止める国で居続けるのか、それとも起こさせず、起きた問題すら解決する国に転じるのか。ウクライナは、日本の未来を映す鏡である。
  • そして、その分水嶺が「今度の選挙」であり、高市政権の行方である。内閣支持率は高いのに、自民党支持率は低い。この乖離は、「高市路線は支持するが、自民党のリベラル・左派は支持しない」という有権者の意思を示している。今回の選挙は、政権を選ぶ選挙ではない。日本が解決国家に転じるかどうかを決める選挙でもある。
世界経済フォーラム2026年会議の舞台、スイス・ダボスで、2026年1月22日、アメリカのドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が会談した。外形上は友好的な話し合いだったと報じられたが、会談直後、ウクライナ側は明言した。戦争の核心である領土問題は、何ひとつ解決されていない。

この一言が、今回の会談のすべてを物語っている。

これは単なる外交ニュースではない。現在の国際秩序が抱える根本的な欠陥を、これほど端的に示した出来事は、そう多くない。理念と演出で覆われた平和外交の空洞が、ここではっきりと露呈したのである。

1️⃣平和外交の限界──ダボスで何が起きなかったのか

ダボス会議でのトランプ・ゼレンスキー会談

トランプ政権は発足以来、ウクライナ戦争を終わらせる平和構想を掲げ、ガザ問題も含めた包括的枠組みを国際社会に提示してきた。ダボスという舞台は、その演出に最適の場所だった。

だが、現実は冷酷である。

クリミアと東部ドンバスという戦争の核心は、依然として未解決のままだ。戦争終結につながる具体的工程表は存在しない。三者協議も、ようやく準備段階に入ったに過ぎない。それにもかかわらず、国際社会では「和平は前進した」という物語だけが独り歩きする。

私はこれまで、ダボス会議が理念と演出を過剰に重ね、現実の力関係と安全保障を軽視してきたことが、かえって世界の不安定化を招いてきたと書いてきた。今回の会談は、その評価を改めて裏づけるものだった。

だが同時に、トランプの動きを単なる外交ショーと切り捨てるのも正確ではない。

トランプ外交の本質は、ショーと実務を意図的に分離する点にある。表では派手な演出を行い、裏では制裁と軍事圧力と経済圧力を積み上げ、最終的に相手に選択肢のない取引を迫る。この手法は、北朝鮮でも、中国でも、中東でも一貫して用いられてきた。

今回の会談も、領土問題をあえて棚上げし、まず停戦枠組みを作るという、きわめて現実主義的な発想に基づいている。それは理想主義ではない。戦争を終わらせるための冷酷な技術である。

問題は、その技術が、ウクライナ戦争の核心に本当に到達できるかどうかだ。

2️⃣国家は現実をどう扱うか──日本に突きつけられた問い

 日本周辺で中露が行う不穏な動きを示したちず クリックすると拡大します

戦争終結も、国際秩序の再構築も、理念では決まらない。結局は、領土という現実の問題をどう扱うかに尽きる。

今回の会談が示したのは、外交的演出は成立しても、核心は未解決のままであり、多国間フォーラムは実効的な調停の場にはなり得ず、平和構想や保証の約束は軍事現実を抜きにしては意味を持たない、という単純な事実である。

これは日本にとって他人事ではない。

日本は今、台湾海峡、北朝鮮、中国、エネルギー安全保障という複数の戦略課題に同時に直面している。これらはいずれも、理念や演出では解決できない問題だ。現実の力関係と抑止に根ざした戦略判断が不可欠である。

ウクライナ戦争の領土問題は、その象徴だ。どれほど和平演出を重ねても、現実を抜きにした平和構想は、紙に書いた絵に過ぎない。世界は今、表面的な合意を積み重ねながら、核心を先送りし続けている。そして日本もまた、理念の空中戦では勝てない現実に直面している。

3️⃣解決国家への転換──選挙と権力構造の問題

だが、ここで終わってはならない。

この不確かな世界だからこそ、我が国は起こってから対応する国家であってはならない。しかしそれは最低限の条件にすぎない。真に問われているのは、すでに起きてしまった問題すら、解決してしまう国家になれるかどうかである。

北方領土問題は、戦後から続く未解決の現実だ。拉致問題も、長年放置されてきた現実の悲劇である。これらは、記憶と訴えだけで終わらせる問題ではない。解決の方法を探り、現実に解決すべき対象である。

そして重要なのは、これが空想ではないという点だ。国際秩序は転換期に入り、大国間の力関係は流動化し、ロシアも中国も内部に不安定要因を抱え、米国も対外戦略の再構築を迫られている。領土問題や拉致問題が永遠に解決不能である必然性は、もはや存在しない。

必要なのは奇跡ではない。解決を国家目標として明示し、現実的な交渉戦略と圧力手段を組み合わせ、時間を味方につけて実行する持続的な国家意思である。台湾有事は抑止によって起こさせない。同時に、北方領土と拉致問題を、奪還という結果で終わらせる。その積み重ねによってこそ、日本は秩序に従う国から、秩序を更新する国へと転じ得る。

宇宙から見た日本列島

そのために避けて通れないのが、今回の選挙の意味である。

日本が解決国家へ転じるためには、外交・防衛・領土・拉致について明確な方向性を持つ政治体制が不可欠だ。しかし現実には、長年、安全保障を理念論に矮小化し、対中・対露・対北政策を先送りし、抑止を語らない勢力が政治の中枢に居座ってきた。その帰結として、北方領土交渉は凍結し、拉致問題は、2002年から四半世紀近く、実質的に動いていないし、憲法改正は具体化しないまま放置されている。

ここで決定的に重要な現実がある。

高市内閣はすでに誕生し、政権を運営している。そして、内閣支持率は高い水準を維持している一方で、自民党そのものの支持率は低迷している。この異例の乖離は、偶然ではない。

有権者は、高市内閣の対中姿勢、安全保障重視、拉致と領土への明確な姿勢には支持を与えている。しかし同時に、自民党内部に居座るリベラル・左派勢力には、明確な不信と忌避を示している。

内閣支持率は高いが、与党支持率は上がらない。これは、「高市路線は支持するが、自民党のリベラル・左派は支持しない」という、有権者からの明確なメッセージである。

にもかかわらず、この勢力が選挙でも党内人事でも温存され続けるなら、この乖離は必ず政権の足を引っ張る構造的危機に転化する。

今回の選挙は、単に高市内閣を支える選挙ではない。高市内閣の路線と、自民党の内部構造とを、意図的に一致させるための選挙である。

そしてこれは、有権者だけに委ねられる課題ではない。高市内閣自身が、公認、人事、ポスト配分を通じて、自民党リベラル・左派の主導的議員を、意図的に党の中枢から外していかなければならない。

国家戦略の転換とは、政策の変更ではない。人事と権力構造の変更である。

最終結語

不確かな世界に秩序をもたらす国とは、理念を語る国ではない。拍手を集める国でもない。危機を未然に防ぎ、すでに起きた危機すら解決し、現実の力で秩序を実装する国である。

ウクライナ戦争が示したのは、戦争は起きてから止めるものではなく、起きる前に止め、起きてしまった戦争すら終わらせなければならない、という冷酷な教訓だ。

日本は、被害者であり続ける国であってはならない。傍観者であってはならない。台湾有事を起こさせず、北方領土を取り返し、拉致被害者を奪還し、東アジアに新たな秩序をもたらす国。

それこそが、虚構の平和に終止符を打ち、現実の秩序をつくる国家としての我が国の使命である。


【関連記事】

高市解散は「政局」ではない──予算と政策、そして世界秩序の転換点を読み違えるな 2026年1月20日
「解散=政局」という見方を切り捨て、選挙の本当の争点を“予算の思想”と“世界秩序の転換”から描き出す一編だ。今回の記事の「分水嶺は今度の選挙」という結論を、国内政治の現実として裏づけてくれる。

今年のダボス会議でトランプが主役になる──世界秩序は、すでに次の段階へ移っていた 2026年1月19日
人物ニュースに見える出来事を、秩序の更新として読み替える視点が手に入る。なぜ“虚構の平和”が量産され、日本の常識が危うくなっているのか。その答えが、この一編に凝縮されている。

世界経済フォーラムの警告 ──グローバリズムが壊れた世界でこそ日本が必要とされる 2026年1月15日
「最大リスクは戦争ではなく大国間の経済対立」という視点から、世界が本当に恐れているものを整理する。ウクライナ、台湾、日本を“感情”ではなく“構造”で理解したい読者に最適の一本だ。

来るべき衆院選の最大争点は「対中」だ──決められない政治を終わらせる選挙 2026年1月12日
給付や物価の話に流れがちな選挙論を、「対中」という現実に引き戻す。安全保障と経済と政治が一本の線でつながる瞬間を、読者自身が確認できる記事である。

停戦直前に撃つという選択──ロシアが示す戦争の文法は、なぜ許されないのか 2025年12月28日
「停戦」と「終戦」を混同する危険を、ロシアの行動様式から解き明かす。ウクライナ、北方領土、台湾が同じ原理で結ばれていることに、読み終えたとき気づかされる一編だ。

0 件のコメント:

ウクライナ戦争の核心は依然として未解決──虚構の平和と決別できるか、高市政権と今度の選挙

まとめ ウクライナ戦争は「終わりに向かっている」という演出だけが先行し、領土問題という核心は何ひとつ解決されていない。ダボスでの首脳会談は和平の儀式にはなったが、戦争の根は手つかずのままだ。理念と外交ショーが、現実の戦争を覆い隠している。この構図は、やがて必ず次の危機を生む。 こ...