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2019年5月23日木曜日

欧州議会選挙 きょう投票 EUに懐疑的勢力の議席焦点―【私の論評】欧州議会選挙より、EU理事会の動きに注目せよ(゚д゚)!




EU=ヨーロッパ連合の加盟国から議員を選ぶヨーロッパ議会選挙の投票が23日に始まります。選挙の結果は、EUの今後の重要政策を左右するだけに、支持を伸ばしているEUに懐疑的な勢力が、どこまで議席を増やすかが焦点です。

ヨーロッパ議会選挙の投票は23日に、イギリスとオランダで始まり、26日まで加盟国ごとに行われます。

選挙は5年に1度行われ、28の加盟国から合わせて751人の議員が選ばれます。

イギリスは、選挙までに離脱の手続きを終えることができず、参加することになりました。

今回の選挙は、EUが進めてきた統合の是非を域内およそ4億人の有権者に問う大きな節目となります。

ヨーロッパ議会は現在、EUの統合を支持する政党でつくる中道の2つの会派が401議席と、過半数を維持しているためEUは安定して政策を進めてきました。

しかし大手メディア「ポリティコ」の最新の世論調査によりますと、今回は315議席と、過半数に届かない見通しです。

一方、国の主権の回復などを目指すイタリアの右派やフランスの極右政党などEUに懐疑的な勢力は、各国で支持を伸ばしていて、最新の世論調査によりますと合わせて254議席と全議席の3分の1を獲得する勢いです。

こうした勢力が、EUの政策決定に大きな役割を担う議会で大幅に議席を伸ばせば、貿易や移民・難民をめぐる重要な政策などが停滞する可能性があるだけに、どこまで議席を増やすかが焦点です。

【私の論評】欧州議会選挙より、EU理事会の動きに注目せよ(゚д゚)!

EU加盟国では、移民排斥や国民主義を謳う極右政党が議席を増やしています。ドイツのための選択肢(独)、国民連合(仏)、同盟(伊)、国民党(デンマーク)、民主党(スウェーデン)など、その勢いは熱病のようにEU全域に広がっています。彼らは必ずしもEUからの離脱を目指しているわけではないですが、EUの現行制度に対する懐疑的な勢力として、各国で政権の座を争うまでに成長しています。

EU懐疑派が躍進している最大の理由は、2015年以降に急増した中東・アフリカからの難民問題です。100万人を越える難民が欧州に押し寄せ、治安の悪化や財政負担の増大が目立ち、人々の不満が爆発しました。加えて、債務危機の発生以降、EU各国で緊縮財政が続いていることも、人々の閉塞感につながっています。

そうした中、5年に一度の欧州議会選挙が5月23~26日に行われるのです。前回の選挙では極右・極左政党が議席を伸ばして衝撃を与えましたが、今回は前回をさらに上回る得票が見込まれており、結果次第ではEUの政治システムが大きく揺さぶられる事態も想定されます。

フランス、ストラスブールの欧州議会

EUの立法制度は、欧州議会、EU理事会、欧州委員会の3つの機関が重要な役割を果たしています。日本に例えるならば、それぞれ衆議院、参議院、内閣といったところでしょうか。

衆議院に当る欧州議会の議員は、EU圏5億人の市民から直接普通選挙によって選出される(定数751名)。議会では政治会派が結成されており、これまでは中道右派「欧州人民党(EPP)」と中道左派「社会民主進歩同盟(S&D)」の2大勢力が議席の過半数を握って、安定的に議会運営を行ってきました。

ところが最新の世論調査によれば、EU懐疑派が議席を伸ばすと予想されていて、EPPは最大会派を維持するものの、S&Dと合わせても過半数には届かない見通しです。そうなれば欧州議会の運営が滞り、ユーロの不安定化につながるのではないかと、つい先読みしたくなります。

しかし実際には、仮にEU懐疑派がEPPを凌ぐ最大勢力になったとしても、過半数に届かないのであれば混乱は限定的と思われます。まず、小数与党の立場になった彼らは、過半数を取るために他の会派と連立協議を行う必要があります。ところが、彼らは既成政党と激しく対立しており、議会内で孤立する可能性が高いです。

また、反EUを掲げて選出された議員と言えども主義主張は様々で、彼らが一枚岩になれる保証もないです。そう考えると、結果的に既成政党が大連立を組んで過半数を確保し、EU懐疑派が最大野党として対峙するシナリオが有力になります。

確かに、EU懐疑派の躍進は議会運営を複雑にするでしょう。しかし、彼らが野党に甘んじる限り、議会運営が直ちに停滞するわけではないです。

一方、参議院に相当するEU理事会は、加盟国の閣僚から構成されています。当然ながら政権が代わる度に閣僚も入れ替わるので、各国で行われる1つ1つの総選挙が理事会メンバーの改選時期ということになります。

ブリュッセルにあるEU理事会

今年はエストニア、フィンランド(ここまで実施済み)、スペイン、ベルギー、デンマーク、ポルトガル、ギリシャ、ポーランドで総選挙が行われます。EU懐疑派の目覚しい躍進を考えると、これらの国の中から新たな反EU政権が誕生する可能性は十分にあるでしょう。

私は、理事会メンバーに反EU派が増える方が、ユーロにとってリスクが高いと考えています。理事会は3つの機関の中で権限が最も大きく、内部分裂を起した場合、EUの求心力低下を招きかねないからです。

どれだけ反EU派が増えると、EU理事会は内部分裂してしまうのでしょうか。その警戒ラインを考える上で、理事会の意思決定プロセスが参考になります。

EU理事会では一部の重要案件を除き、ほとんどの案件が「特定多数決」という方式で決議されまか。これはリスボン条約で定められた方式で、28加盟国の55%に相当する16ヵ国以上が賛成し(加盟国基準)、かつ賛成国の人口の合計がEU全体の65%以上である(人口基準)、という2つの要件を満たす必要があります。

幸い、反EU政権と既に目されているイタリア、ギリシャ、デンマークの3ヵ国が反対に回ったとしても、現時点では加盟国基準で25ヵ国、人口基準で86.4%となり、特定多数決の要件を満たしています。しかし仮に、これから総選挙が行われる6ヵ国全てで反EU政権が誕生すると、人口基準が64.2%まで低下し、特定多数決の要件を満たさなくなります。

ただし、一般的な市民の極右政党に対する不信感や嫌悪感は根強く、理事会で決議できなくなるほど反EU政権が急拡大すると考えるのは、現実的ではないです。したがって、加盟国基準か人口基準のいずれかが未達にならない限り、ユーロ崩壊といった過度な悲観論は封印すべきものと思います。

反EU勢力の拡大や英国のEU離脱問題など、今のEUはいくつもの難題を抱えています。このようなときこそ、域内1位と2位の大国であるドイツとフランスの安定が何より重要なのですが、この両国も苦境に立たされています。

ドイツでは与党のキリスト教民主同盟(CDU)が昨年の州議会選挙で歴史的な大敗を喫し、メルケル首相は2021年までに首相職を辞すると発表しました。フランスではマクロン大統領の政策に抗議する「黄色いベスト運動」が、いまだ収束の兆しを見せていません。

メルケル首相

こうした状況で各国の不満を和らげるには、欧州中央銀行(ECB)の金融政策に頼らざるを得ないです。これは欧州債務危機のときに何度も繰り返された光景で、今回もドラギ総裁は年内の利上げを見送る考えを示し、新たな資金供給制度(TLTRO3)の導入も決定しました。

そのドラギ総裁も今年10月で任期満了を迎えます。今後のEU懐疑派の台頭によっては、ドラギマジックが消えた後の欧州が、再び市場のチャレンジを受ける展開を覚悟しなければないでしょう。

いずれにせよ、当面EUの動きは余程のことがない限り、欧州議会選挙よりも、EU理事会の動きに注目すべきでしょう。

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2018年1月21日日曜日

トランプ政権のアジア担当要職に反中のベテラン―【私の論評】米国で「強い日本」を志向する勢力が主流になった(゚д゚)!

トランプ政権のアジア担当要職に反中のベテラン

シュライバー氏の起用でトランプ政権は共和党保守本流路線へ


ランディ・シュライバー氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 米国のトランプ政権が、国防総省のアジア担当の要職にランディ・シュライバー氏を任命した。シュライバー氏は歴代政権のアジア専門ポストで活躍してきたベテラン戦略家である。共和党保守本流と位置づけられる同氏の起用によって、トランプ政権の対アジア政策は保守、現実志向へと向かうことが予測される。

中国に対する抑止政策の必要性を主張

 2017年12月、トランプ政権はランディ・シュライバー氏を国防総省のアジア太平洋問題担当の次官補に任命し、この1月、連邦議会に正式に通告した。議会では上院外交委員会が主体となって人事を審議し、そこで承認されれば最終的な就任が確定する。

 現在、民間のアジア安全保障研究機関「プロジェクト2049研究所」の所長を務めるシュライバー氏は、ワシントンのアジア安全保障の関係者の間できわめて知名度が高い。

プロジェクト2049研究所」のサイトのバナー

 シュライバー氏はハーバード大学で中国研究の修士課程を終えて海軍士官となった後、民主党クリントン政権下の国防長官補佐官、国務省中国部員や国防総省中国部長、在北京米国大使館武官などを歴任した。その後、共和党のジョージ・W・ブッシュ政権では、政治任命の次官補代理(東アジア太平洋担当)や国防次官補代理(同)を務めている。

 シュライバー氏は、ブッシュ政権で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージ氏との絆が強く、両氏が共同で2005年に創設した民間のアジア関連コンサルタント機関、「アーミテージ・インターナショナル」の副代表も務める。

 政治面では一貫して共和党支持を表明し、共和党議員のアジア政策への助言を続けてきた。自ら創設した「プロジェクト2049研究所」でも、中国の軍拡や領土拡張を主要な研究テーマとして、中国に対する厳しい抑止政策の必要性を主張してきた。同時に対日関係の重要性を強調し、日米同盟の強化を一貫して訴えてきた。また、台湾への支持も顕著だった。こうしたシュライバー氏の基本政策は、共和党保守本流の見解と一致する部分が多い。

それでもシュライバー氏を任命した大統領

 ただし、シュライバー氏が親しいアーミテージ氏は、2016年の大統領選挙中に共和党員であるにもかかわらず、トランプ候補を支持せず民主党候補のヒラリー・クリントン氏に投票する意向を宣言していた。当時、共和党主流派の間ではトランプ氏に反対する動きが顕著だった。また、アーミテージ系の共和党の専門家や活動家の間には、トランプ氏の大統領就任後もトランプ政権への参加を拒む向きが少なくなかった。

 そんな背景の中で、シュライバー氏は反トランプ宣言こそしなかったが、アーミテージ氏とのつながりからトランプ政権への起用が疑問視される時期があった。

 それでもなお、トランプ大統領はシュライバー氏の任命に踏み切った。その背景としては、政権のアジア政策部門を充実する目的に加えて、昨年12月の「国家安全保障戦略」で打ち出した中国への強固な抑止政策の遂行にシュライバー氏のような専門家が必要だったことが挙げられるだろう。

 いずれにせよ、この人事は、トランプ政権の対アジア政策、対中政策が保守本流の方向へ確実に舵を切る動きだといえそうだ。

「歴史を悪用しているのは中国」

 シュライバー氏は、歴史問題を持ち出して日本を非難する中国に対して手厳しい批判を表明してきたことでも知られる。たとえば2015年10月に「プロジェクト2049研究所」がワシントンで開いた、中国の対外戦略についての討論会では、次のような諸点を指摘していた。

・中国の習近平政権は歴史を利用して日本を叩いて悪者とし、日米同盟を骨抜きにしようとしている。だが歴史に関しては中国こそが世界で最大の悪用者なのだ。中国ほど歴史を踏みにじる国はない。

・中国が歴史を利用する際は、1931年から45年までの出来事だけをきわめて選別的に提示し、その後の70年間の日本が関わる歴史はすべて抹殺する。日本の国際貢献、平和主義、対中友好などは見事に消し去るのだ。

・中国の歴史悪用は、戦争の悪のイメージを現在の日本にリンクさせ、国際社会や米国に向けて、日本は今も軍国主義志向がありパートナーとして頼りにならないと印象づけることを意図している。

・中国はそうした宣伝を、中国と親しく頻繁に訪中する一部の政治家らを巻き込んで日本の一般国民にも訴える。だがこの10年間、防衛費をほとんど増やしていない日本が軍国主義のはずはない。中国の訴えは虚偽なのだ。

・中国は日本に「歴史の直視」を求めるが、大躍進、文化大革命、天安門事件での自国政府の残虐行為の歴史は、教科書や博物館ですべて改竄し隠蔽している。朝鮮戦争など対外軍事行動の歴史も同様だ。

 こうした見解を堂々と表明してきた人物が、トランプ政権の国防総省のアジア政策面での実務最高責任者のポストに就く。日本にとって大きな意義があることは明白といえよう。

【私の論評】米国で「強い日本」を志向する勢力が主流になった(゚д゚)!

米国には、「強い日本」を志向する勢力と、「弱い日本」を志向する勢力があります。そうして、強い日本を志向するのは、無論保守派です。そうして、ランディー・シュライバー氏は、その急先鋒でもあります。

なお、ランディ・シュライバー氏は2015年、アメリカの外交専門誌「THE DEPLOMAT(ザ・ディプロマット)」(8月31日号)で、" >China Has Its Own Problems With History(中国は自分自身の歴史問題を抱えている)"として、「中国自身が中国共産党の歴史を捏造している」ことなどを指摘していました。2015年9月3日に軍事パレードを行い、「中国共産党こそが日中戦争時代に日本軍と勇敢に戦った」とする毛沢東神話をでっち上げていることに対する批判もこの論文には含まれていました。

このようなことは、過去の歴史を理解していれば、日本が戦ったのは中華民国(現台湾)であり、日本は戦後に建国した中華人民共和国とは戦いようもないし、いわゆる毛沢東の共産軍は戦中には大陸を逃げ回っていただけということは常識です。

だから、このブログでも現在の大陸中国が「対日記念軍事パレード」を行うことは、噴飯ものであると批判をしました。

米国内での強い日本と、弱い日本を巡る相克についてはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】安倍政権5年で何が変わったのか 雇用大幅改善、積極的外交で高まる発言権…課題は迫る半島危機―【私の論評】戦後レジームからの脱却は安倍首相にしかできない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から「強い日本」と「弱い日本」の相克に関わる部分を掲載させていただきます。
ルーズヴェルトは大統領に就任すると直ちにソ連と国交を樹立し、反共を唱えるドイツや日本に対して敵対的な外交政策をとるようになりました。 
「強い日本はアジアの脅威であるばかりでなく、アメリカの権益を損なう存在」とみて、「弱い日本」政策を推進する。博士によると、現代米国の保守主義者にとってルーズヴェルトこそ最大の敵であったといいます。 
他方で、「大陸国家(ロシアや中国)の膨張政策の防波堤として日本を活用すべきだ」とする「強い日本」政策を進めようとしたのが保守派の人たちです。 
ミスター共和党と呼ばれたロバート・タフト上院議員たちは「弱く、敗北した日本ではなく、強い日本を維持することがアメリカの利益となる」と主張しました。 
また、「勝者による敗者の裁判は、どれほど司法的な体裁を整えてみても、決して公正なものではあり得ない」し、「日本に対してはドイツと異なり、復讐という名目が立ちにくい」と、東京裁判を批判してきました。 
タフト上院議員が「ヤルタ協定」批判を行い広範囲の支持を得たきっかけは、元ソ連のスパイで「タイム・マガジン」誌編集者あったH・チェンバースが1948年に「ルーズヴェルト大統領の側近としてヤルタ会談に参加した国務省高官のアルジャー・ヒルはソ連のスパイだった」との告発でした。 
1950年以降、ジョセフ・マッカーシー上院議員の赤狩りで自殺者が多く出るようになると、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど代表的なリベラル派マスコミが「魔女狩りだ」と批判を強めていきました。 
戦前戦後を通じて米国にはこうした「草の根保守」が存在してきました。その数は1200万人とも言われ、真珠湾攻撃をめぐる「ルーズヴェルトの陰謀説」を支持してきました。
米の草の根保守の重鎮故フィリス・シュラフリー女史
しかし、新聞・テレビはリベラル派に牛耳られて「草の根保守」の意見はほとんど報じられないため、両国の総合理解を妨げてきたと言われています。
1995年以降、米政府が第2次世界大戦中のソ連諜報機関の交信を米陸軍秘密情報部が傍受・解読した機密のヴェノナ文書を公開し始めました。これにより、チェンバースの告発が正しかったことが論証され、保守派の勢いが盛り返してきたとされます。



ブッシュ大統領(当時)が2005年5月7日、バルト3国の一国、ラトビアの首都リガで行った演説はその延長線上にありました。 
ブッシュ元大統領は「安定のため小国の自由を犠牲にした試みは、反対に欧州を分断し不安定化をもたらす結果を招いた」と述べ、「史上最大の過ちの1つだ」とヤルタ会談を強く非難しました。 
第2次世界大戦の連合国であったルーズヴェルト米大統領、ウィンストン・チャーチル英首相、ヨシフ・スターリンソ連首相は1945年2月クリミヤ半島のヤルタで会談しました。 
この際、国際連合構想にソ連が同意する見返りとして、ポーランドやバルト3国などをソ連の勢力圏と認め、対日参戦と引き換えに満州の権益や南樺太・北方領土をソ連に与える「秘密協定」を当事国である東欧諸国や日本の同意を得ずに結びました。 
中国国共内戦の激化と共産党政権の樹立、朝鮮半島の分割、満州と北方領土の占領などは、その協定がもたらした結果です。 
ヤルタ会談が行われた時点では米国に原爆が完成しておらず、日本本土上陸作戦では50万人の兵士が犠牲になると予測され、大統領はソ連の参戦が必要とみていたとされます。また、大統領は病気で覇気を失っており、スターリンがルーズヴェルトの弱みにつけ込んだとの見方もあります。 
米国の保守派がヤルタ協定を批判するのは、ロシアの参戦は必要なかったとみているからであり、参戦が共産主義帝国構築への道を開き、朝鮮戦争をもたらし、また今日の北朝鮮における金一族の独裁体制へつながったという認識をもっているからです。
ヤルタ会談

以上のような「強い日本」を志向する、ランディ・シュライバー氏が米国国防総省のアジア担当の要職についたことは、日本にとって良いことです。

米国保守派は、ソ連に変わって共産主義帝国構築を目指すようになった中国に対しても、ブログ冒頭の記事にも掲載されているように、警戒心をもちこれに対抗しようとしています。

この動きは前から共和党保守派の中では顕著なものでした。そうして、今回のランディ・シュライバー氏の起用は、ブログ冒頭の記事にもあるように、トランプ政権の対アジア政策、対中政策が保守本流の方向へ確実に舵を切る動きであり、これによって日本の安全保障もかなりやりやすくなるのは目にみえています。

たとえば、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を履行するため、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が昨年12月から日本海や朝鮮半島西側の黄海で、外国船から北朝鮮船舶への石油などの移し替えがないか警戒監視活動に当たっています。


黄海・東シナ海などを常時警戒監視しているP3C哨戒機が不審船を発見した場合、護衛艦を現場に派遣します。政府関係者は「監視活動を顕示することで北朝鮮への石油製品の密輸を抑止することにつながる」としています。

ここで、黄海という言葉がでてきますが、黄海での海自による警戒監視活動は戦後はじめのことです。これは、中国側からすれば脅威だと思います。自分たちは尖閣付近の海域で船舶を航行させたり、最近では潜水艦を航行させたりしていたのが、日本の海自が黄海で監視活動を始めたのですから、彼らにとってみれば、驚天動地の日本の振る舞いと写ったかもしれません。

しかし、黄海初の日本の海自による監視活動に関して、日本のマスコミは当たり前のように報道しています。中国側も非難はしていなようです。中国としては、米国側から北への制裁をするようにと圧力をかけている最中に、監視活動にあたる日本を批判すると、さらに米国からの圧力が大きくなることを恐れているのでしょう。

このようなこと、少し前までのオバマ政権あたりであれば、「弱い日本」を志向する人々が多かったので、批判されたかもしれません。というより、そのようなことを日本に最初からさせなかったかもしれません。そうして、中国は無論のこと、大批判をしたかもしれません。そうして、日本国内では野党やマスコミが大批判をしていたかもしれません。

このようなことが、すんなりと何の摩擦もなくできるのは、やはり米国では「強い日本」を志向する勢力が大きくなっているからであると考えられます。

このような動きこれから、加速すると思われます。

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2016年4月17日日曜日

中国紙が社説で「尖閣に自衛隊派遣なら軍艦出動」「数、日本の比ではない」―【私の論評】中国が一番恐れるのは、日本の武力によって尖閣付近から中国の勢力が排除されること(゚д゚)!


2012年10月4日午後6時から7時にかけ、沖縄県の宮古島の北東海域で中国艦艇7隻が通過。写真は
そのうちの三隻。上より、ルージョウ級ミサイル駆逐艦(116)、ジャンカイⅡ級フリゲート艦(546)、
ダーラオ級潜水艦救難艇(864)
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は13日、日本政府が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺に海上自衛隊の艦船を派遣すれば、中国海軍の軍艦が出動すると強調する社説を掲載した。

日本政府が尖閣周辺の領海を念頭に「無害通航」に該当しない他国の軍艦に対し、従来方針通り自衛隊に海上警備行動を発令して対処する考えを示したことを牽制(けんせい)した形だ。

社説は「中国が派遣する軍艦の数は自衛隊の比ではない」と強調。日本が先に自衛隊の艦船を派遣した場合、東シナ海の摩擦が激化する道義的責任は「日本が負わなければならない」と主張した。

【私の論評】中国が一番恐れるのは、日本の武力によって尖閣付近から中国の勢力が排除されること(゚д゚)!

上の記事を読んで思うのは、やはり中国は、安倍総理が軍事力を用いて尖閣付近から中国を排除することを尤も恐れていることだということを再確認できたということです。

このことについては、以前このブログでも、習近平の側近が尖閣諸島に関する考えを示した論文に関する記事で掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日中軍事衝突なら「退路ない」と中国軍上将、尖閣で論文 「極力戦争を回避」と訴える―【私の論評】習近平が最も嫌がるのは、安倍総理が軍事力を用いて尖閣付近から中国を排除することだ(゚д゚)!

この記事は昨年10月21日水曜日に掲載したものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を以下にコピペします。
中国軍の上将で、国防大学政治委員の劉亜州氏は21日までに、沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題に関する論文を公表し、日本と中国が軍事衝突すれば「中国は勝つ以外に選択肢はなく、退路はない」と強調した。敗北すれば体制を揺るがす事態に発展しかねないとの危機感を示唆したものとみられ「極力戦争を回避」すべきだと訴えた。
中国艦船があまり傍若無人な真似を繰り返すなら、きちんと国際ルールにのっとった上で何隻か撃沈すべきものと思います。領海内であれば、そんなことをすれば、中国は吠えまくりますが、他の国はそれを軍事行動ではなく当然の警察行動こととして、何も非難はしないでしょう。もし、非難したとすれば、自国が日本と同じような状況に至った場合、対抗する術がなくなります。
実は、習近平が一番恐れているのはこれです。安倍総理が、軍事力をもって尖閣付近から、中国の艦船や航空機を排除することです。

米国も南シナ海で、中国が不穏な動きをみせれば、国際ルールに沿った形で、攻撃を加えるなどのことをすべきです。そうなれば、習近平の面目は丸つぶれですし、それにせっかく日本を悪者にしたてても、中国国内の求心力を高めるということができなくなります。

そんな馬鹿なことなどとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際ロシアはそのような対応をしています。尖閣で中国の船が日本の海上保安庁の船が中国の漁船に体当たりされる前の年に、ロシアは中国の船を機関砲で銃撃しています。その結果数人の死者が出た模様ですが、日本国内では報道もされず、他の国からも一切非難されるようなことはありませんでした。無論、警告をするなどして、国際法にのっとった措置でした。
中国としては、尖閣付近から安倍総理が力づくで排除されては、非常に困るわけです。もし、中国海軍がなすすべもなく、負けてしまい尖閣付近から完璧に排除されてしまえば、中国国内の求心力は弱まり、習近平政権はもとより、中国共産党の中国統治の正当性も弱まることになります。

そもそも、海外からの評価では、日本の海軍力は世界第二位とも、世界第五位ともいわれていますし、中国海軍よりは数段上とされています。海軍力は見方によって、いろいろ変わりますが、それにしても日本二位から五位であり、中国海軍よりははるかに優っています。

日中海軍を対比すると、最大の違いは、対潜哨戒能力と潜水艦の攻撃力です。これらが、中国は日本に比較すると全く劣っています。日本の潜水艦が、中国側に知られることなく、隠密行動ができるのですが、中国の潜水艦はすぐに日本の潜水艦や哨戒機に発見されてしまいます。

そうなると、最初から中国側にはほとんど勝ち目がありません。航空兵力もそうです。中には、いやそうではない、中国の最新鋭の、殲31はステルス機であり、どの日本の航空機より強力であると信じてる人もいるようですが、現実にはそうではありません。米国の軍事専門家の中には、殲31 は実質第三世代戦闘機の域を出ていないと酷評する人もいます。いずれにせよ、まだまだ実験段階で実用にはほど遠いという代物です。

中国の現状の航空機など、まだまだ技術的に劣っています。特にレーダーなどの電子機器はかなり遅れていて、日本の航空自衛隊と実際の戦闘になった場合、かなり非力です。

「空母遼寧」も、海上自衛隊の哨戒機P3Cがいとも簡単に捕捉して、出港した途端に魚雷かハープーンの餌食になってしまいます。他の中国の艦艇や潜水艦も同じことです。


このことは、中国の人民解放軍の幹部は誰でも知っていることで、軍事的にまともに戦ったのでは全く勝ち目がないため、これを牽制するために、ブログ冒頭のように、環球時報で吠えて見せたのでしょう。日本の艦船や潜水艦などと比較するとはるかに旧式のものを多数尖閣付近に派遣してきたとしても、日本の海上自衛隊に勝ち目はありません。

唯一中国が、日本より上回っているとすれば、核兵器を用いることができることでしょうが、現実問題としてこれを使えば、米国による反撃も予想されし、核兵器を用いた後は、あの天安門広場事件の後の世界のほとんどの国からの制裁を受けたことと同じようなことが起こることも予想され、中国としてはこれは避けたいので、これを使用することはほぼ不可能です。

今日本は熊本地震で対応中です。ブログ冒頭の、環球時報の記事は13日に公表されものであり、地震発生の前の日であり、特に地震を意識したものではありません。

しかしながら、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海外側にある接続水域で16日、中国海警局の船3隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しています。中国当局の船が尖閣周辺で確認されたのは3日連続です。これは、熊本の地震の後です。中国側としては、地震の影響があるかどうかを見極めてるのだと思います。まるで火事場泥棒のような、行動です。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、3隻は海警2101、海警2307、機関砲のようなものを搭載した海警31241だそうです。領海に近づかないよう巡視船が警告していました。

巡視船「あぐに」
ところで、海上保安庁は16日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の警備を専門とする「尖閣専従体制」が整い、拠点となる沖縄県・石垣島の港で披露式を開きました。石垣海上保安部に配備された1500トン級の最新型巡視船10隻を含む12隻が専門で任務に当たります。

人員は約600人で、港周辺には新たに桟橋や船艇基地、宿舎、倉庫が整備されました。平成24年の尖閣国有化後、領海警備で全国から巡視船などの応援を受けていたが、原則不要になります。

石垣海上保安部の宮崎一巳部長は中国公船に対する警備に関して、記者団に「不測の事態を避けて事態をエスカレートさせないのを基本に冷静かつ毅然として対応したい」と話しました。式典に合わせて、20ミリ機関砲や遠隔放水銃、停船命令表示装置を装備した巡視船「あぐに」を公開しました。

日本の海上保安庁も中国の海上民兵や、海警など互角に戦えるようになりました。海軍も日本には到底勝てないので、中国としては八方塞がりです。南シナ海でも、手詰まり感がはっきりしています。だからこそ、ブログ冒頭のようの記事のように、中国海軍の軍艦が出動すると強調したのです。

インドネシア海軍が火曜日からインドネシア領海で拿捕した中国漁船
35隻の撃沈を開始したと当局が発表(8月18日dpa.international)
私としては、中国側は、本当に軍艦を出せば良いと思います。そうしてそのような場合は、日本側としては、領海や領空を侵犯した場合、撃沈、撃墜すれば、それで良いと思います。そうしたからといって、当の中国は屁理屈をつけて吠えるかもしれまんせんが、中国と日本が本格的な総力戦をはじめたりすることもないでしょうし、世界中のどこの国も中国に同調することはありません。

というより、アジアの中国、北朝鮮以外の国々は、これを歓迎することでしょう。それに、中国が尖閣付近で、前々から度重なる挑発行為を繰り返してきたこと、日本と中国の間にはもともと、領土問題など存在しないことをアピールすれば、アジア以外の国々も、歓迎することでしょう。

ロシアなどは異議を唱えるかもしれませんが、そのあたりは、このブログにのべたように、従来から比較するとかなり北方領土の交渉がやりやすくなっていますから、意外と唱えなくなることも考えられます。いずれにせよ、圧倒的多数の国々が、異議を唱えるなどということはしないでしょう。

さらに、南シナ海での米軍もこれに勇気づけられ、南シナ海の中国の軍事基地に対しても、艦船や潜水艦で包囲し、それを妨げようとする艦船、航空機に攻撃を加え、南シナ海からの中国の軍事基地の排除に踏みきる良いきっかけになることでしょう。

そうなると、もともとは中国にとっては外国であるはずの、チベット、ウイグル、内モンゴルなどの自治区の中国に対する反対運動が勢いづくことでしょう。

そうして、現在中国は、経済が低迷していて、これから良くなる見込みもなく、今のままであれば、このブログでもたびたび掲載したように、中進国の罠にすでにはまりかけています。そんな中国には、世界中の国々は従来のように期待することもなくなります。

そうして、いずれ図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国に成り果てるか、分裂することになりますが、日本が尖閣から中国を排除すれば、それに拍車をかけることになります。

このようなことから、中国としては、安倍総理が、軍事力をもって尖閣付近から、中国の艦船や航空機を排除することなどして欲しくないのです。

しかし、日本としては、中国が嫌がることを徹底的に実行することです。間違っても、中国という異質な国に褒められるような国になるべきではありません。嫌われるという、その道こそ正しい道です。

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