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2019年1月15日火曜日

中国、カナダ人死刑判決 薬物密輸で差し戻し審―【私の論評】外務省は日本国民に対して中国からの退避勧告を出すべき(゚д゚)!

中国、カナダ人死刑判決 薬物密輸で差し戻し審

カナダ人男性に死刑判決を言い渡した中国遼寧省の大連中級人民法院

 中国遼寧省の大連市中級人民法院(地裁)は14日、薬物密輸罪に問われたカナダ人男性、ロバート・シェレンベルク氏の差し戻し審で、同氏に死刑判決を言い渡した。判決は、同氏が2014年、共犯者とともに覚醒剤約222キログラムを密輸したと認定した。

 シェレンベルク氏の公判は16年3月に大連市の地裁で始まり、昨年11月に懲役15年の判決が言い渡された。

 同氏が上訴したが遼寧省の高裁は同12月、1審判決を「不当に軽い」とする検察側の意見を採用、審理を1審に差し戻していた。

 中国当局は通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)幹部を逮捕したカナダ政府に対し、報復として在中カナダ人を相次いで拘束。シェレンベルク氏の裁判もカナダ政府への圧力の一環とみられる。

 2審で検察側は、1審判決が同氏を「従犯」と認定し、犯罪も未遂だったとして刑を軽減したことは不当だと主張、高裁も認めた。一方、差し戻し審の判決によると、共犯のうち1人は2年間の執行猶予付き死刑、もう1人は無期懲役を言い渡されている。

 差し戻し審は判決で、シェレンベルク氏が国際的な薬物密売組織の活動に加担していたと認定。その犯罪は「社会に著しい危害を与えた」として、同氏に死刑と全財産の没収を言い渡した。

【私の論評】外務省は日本国民に対して中国からの退避勧告を出すべき(゚д゚)!

中国の司法はかつて、2年半以上の時間を使ってこのカナダ人の公判を行なって15年懲役の判決を下しました。しかし華為の孟晩舟氏がカナダで拘束されると、わずか2カ月足らずの二審で死刑判決となりました。そのようなものは判決というよりも故意殺人です、中国とは本当に恐ろしい 言葉通りのテロ国家です。

カナダ当局がファーウェイ創業者の娘、孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を逮捕した後、中国はカナダへの報復措置とみられる動きを強めています。カナダメディアによると、既に元外交官などカナダ人13人を拘束し、うち8人を釈放しました。

大連市中級人民法院(地裁)は14日、薬物密輸罪に問われたカナダ人男性、
ロバート・シェレンベルク氏の差し戻し審で、同氏に死刑判決を言い渡した

このような状況では、米国とその同盟国は、自国民を中国に安易に入国させるべきではないです。

米国務省は現地時間の3日、自国民に対し、中国に渡航する際の警告情報を更新しました。いわば、「中国では法が恣意的に適用され、出国できなくなることがある」、「中国国内の争いに巻き込まれたり、中国政府の政治的な動きに利用されたりする」といった警告です。

そんなリスクがあることはかなり以前から明らかなのですが、翻ってわが国を眺めてみると、残念ながらわが国の外務省は、この期に及んで中国に対する警戒レベルを引き上げていません。

米国の国務省(U.S. Department of State)は3日、米国民に対し、中国に旅行する際の注意喚起の内容は以下のようものです。
China Travel Advisory / China – Level 2: Excercise Increased Caution(2019/01/04付 米国務省 Travel Advisoryより)
記事タイトルにある “Excercise Increased Caution” とは、「通常時と比べてより一層注意してください(注意喚起レベル2)」のことです。

リンク先の記載の要点は、次のとおりです。
Exercise increased caution in China due to arbitrary enforcement of local laws as well as special restrictions on dual U.S.-Chinese nationals.(中国では国内法を恣意的に適用したり、米中二重国籍者に対する特別な規制がかけられたりしているため、通常時と比べ一層の注意が必要である。) 
Chinese authorities have asserted broad authority to prohibit U.S. citizens from leaving China by using ‘exit bans,’ sometimes keeping U.S. citizens in China for years.(中国の当局者は米国市民に対し、「出国禁止規制」などを使って中国国外への出国を禁止することもあり、ときどき、米国市民が何年も中国国外に出られないことがある。) 
China uses exit bans coercively:(次のような事例で中国への出国規制がかけられることがある) 
to compel U.S. citizens to participate in Chinese government investigations(米国市民に対し中国政府の捜査協力を強要するため) 
to lure individuals back to China from abroad(海外から中国の個人を呼び戻すため) 
to aid Chinese authorities in resolving civil disputes in favor of Chinese parties(中国の民間人との民事紛争を解決するのを中国当局が支援するため)
とくにこの箇条書きの部分は、中国が法治国家ではないことを如実に示しています。

「海外から中国の個人を呼び戻すため」とは、昨年、華為(ファーウェイ)CFOの孟晩舟(もう・ばんしゅう、Meng Wanzhou)氏がカナダで拘束されたことに対する意趣返しとして、中国当局が複数のカナダ市民を拘束した事件を指していると考えられます。

また、中国共産党の権力者などと癒着した中国の個人・企業が、自己のビジネスを有利に進めるため、国家権力の助けを得て米国人や日本人などを拘束するなどの嫌がらせを仕掛ける、という話は、中国ビジネスに携わる人の間では有名なチャイナ・リスクの1つです。

米国務省の注意喚起には、まだ続きがあります。
In most cases, U.S. citizens only become aware of the exit ban when they attempt to depart China, and there is no method to find out how long the ban may continue. U.S. citizens under exit bans have been harassed and threatened.(多くの事例では、米国市民は中国を出国しようとして初めて出国できないことに気付く。そして、たいていの場合、こうした出国禁止措置がいつまで続くかを知る方法もない。出国規制を受けた米国市民は嫌がらせと脅迫を受ける。)
ほかにも、「いったん拘束されると領事との面会が制限されることもある」、「中国共産党を批判すると拘束されることもある」など、さりげなく恐ろしいことが色々と書かれています。国務省のホームページの英文はそれほど難しくないので、もし興味があれば、是非、読んでみてください。

普通の法治国家の場合、なにか犯罪をした(あるいはその嫌疑がかけられた)場合でもなければ、拘束されることは絶対にありません。

隣国韓国でも、産経新聞の記者が「大統領に対する名誉棄損」で出国禁止措置を受けたという事例がありましたが、中国も韓国も「法治主義が期待できない国」といえます。ただし、韓国はいわゆる「国民情緒法」で法治が形骸化さているところがありますが、一応形式的には法治国家ではあります。

しかし、中国ではそもそも憲法が中国共産党の下に位置づけられています。法律は憲法に基づき作成されるわけですから、すべての法律が中国共産党の下に位置づけられるわけです。

これが、意味するのは、中国共産党が直接関わることない、事件・事故などに関しては、法律通りに裁判などが行われますが、中国共産党が直接関わる、事件・事故などに関しては、中国共産党が恣意的に裁判の結果を自由に捻じ曲げられるということを意味しています。

だからこそ、今回のようにカナダ人の死刑が短期間で判決されたのでしょう。これは、本当に恐るべきことです。

ちなみに米国務省がある国に渡航するかどうかを巡って注意喚起をする際、その水準は、次の4階層に分けられます。
レベル1:通常の注意を払ってください(Excercise normal precautions)
レベル2:通常時と比べてより一層注意してください(Excercise increased caution)
レベル3:渡航を再考してください(Reconsider travel)
レベル4:渡航しないでください(Do not travel)
米国は中国を「レベル2」に設定しているのですのですが(下図でいう黄色)、北朝鮮については「レベル4」(下図でいう赤色)だそうです。


このマップの詳細を知りたい方は、以下をクリックしてください。

https://travelmaps.state.gov/TSGMap/

この、「自国民に対して注意喚起を促す」という制度は主要国が導入しており、たとえば日本の場合も外務省の『海外安全情報』のページで次の4段階にわけて注意喚起をしています。
レベル1:十分注意してください
レベル2:不要不急の渡航は止めてください
レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)
レベル4:退避してください。渡航は止めてください(退避勧告)
しかし、日本の場合は「注意喚起」自体が出ていないケースもあるため、事実上、レベルは5階層ということです。あえて私の責任で日米の注意喚起対応表を作成すれば、次の図表のとおりでしょうか。


この点、日本の外務省の対応は非常に甘いと言わざるを得ません。というのも、中国に関しては新疆ウイグル自治区とチベット自治区を「レベル1」に設定していますが、それ以外の地域については注意喚起が出ていないからです(つまり米国でいうレベル1)。

しかし、中国では日中で何らかのトラブルが生じた際に、日本人を拘束したという事例が過去にいくつもあります。実際、菅直人元首相が2010年に尖閣諸島沖で発生した漁船衝突事件の取扱いを間違えた際にも、日本企業の関係者4人が中国本土で拘束されたという事件が発生しています。

このあたり、日本も米国を見習う必要があるように思えてなりません。

米国は中国全体を「レベル2(通常時と比べてより一層注意してください)」、北朝鮮全体を「レベル4(渡航しないでください)」に設定していますが、日本もこれに倣い、北朝鮮については「渡航を自粛してください」ではなく、「レベル4」とすべきですし、中国については「レベル1」以上が相当です。

ついでに、日本に対してレーダー照射事件や徴用工判決など、さまざまな無法行為を仕掛けてくる韓国についても、「レベル1」が相当ではないかと思います。

日本の外務省の役割は、まず第一に、日本国民の利益と安全を守ることにあります。「日中友好」「日韓友好」を大切にするのは結構ですが、くれぐれも優先順位を間違えないでほしいです。

その上で、中国、韓国に対しては厳しい制裁を課すべきです。

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2017年11月3日金曜日

「日本を信頼」91% 前回から18ポイント増加 外務省のASEAN世論調査―【私の論評】今日の評価は安倍総理の外交努力の賜物(゚д゚)!


ASEAN諸国
外務省は3日までに、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国で行った対日世論調査の結果を発表した。日本を「とても信頼できる」「どちらかというと信頼できる」と回答した人は91%に達し、平成27年12月に実施した前回調査の73%から18ポイント増加した。

 対日関係について聞いたところ「友好関係にある」との答えが89%で前回を14ポイント上回った。平和国家としての日本の歩みを「評価する」との回答も88%で6ポイント増えた。

 20カ国・地域(G20)の中で過去50年間にASEANの発展に最も貢献した国・地域(複数回答可)の質問では、日本が55%でトップ。中国(40%)、米国(32%)、韓国(24%)、オーストラリア(23%)が続いた。

 調査は今年3月、ASEAN10カ国の18~59歳の男女を対象に、面接とインターネットを通じて実施。約3千人から回答を得た。

【私の論評】今日の評価は安倍総理の外交努力の賜物(゚д゚)!

冒頭の記事にある、外務省の調査結果は以下のリンクからご覧になることができます。



このが調査結果を外務省が簡潔にまとめた内容を以下に掲載します。
1 対日関係については,ASEAN全体で,89%(前回調査75%)が「とても友好関係にある」又は「どちらかというと友好関係にある」と回答しており,日本との関係に関し肯定的なイメージが広範に定着していることが示されました。 
2 対日信頼度は,ASEAN全体で,91%(前回調査73%)が「とても信頼できる」又は「どちらかというと信頼できる」と回答しており,日本に対する評価が高いことが確認できました。 
3 戦後70年の日本の平和国家としての歩みについてどう思うかとの質問については,ASEAN全体で88%(前回調査82%)が評価すると回答しました。 
4 日本の対ASEAN支援について,日本政府の開発協力(ODAによる経済・技術協力等)が,対象者の住む国の開発に役立っているかという質問に,87%(前回調査84%)が「とても役立っている」又は「どちらかというと役立っている」と回答し,日本のASEAN諸国に対する貢献が評価されていることが確認できました。 
5 日本の青少年交流(JENESYS等)を含む人的交流における取組についても,90%(前回調査84%)が評価すると回答しました。 
6 また,G20諸国の中で,この50年間最もASEANの発展に貢献してきた国(地域)を選ぶ質問(複数回答)では,55%の回答者が日本を選択し,日本の貢献がASEAN諸国から最も高い評価を得ていることが確認できました(今回調査のみ実施)。
 ASEAN 諸国がこのように今日日本に友好的であるのは、安倍総理の度重なるこの地域への訪問とその後の外交努力による成果であると考えられます。

安倍首相は、平成13年からASEAN 諸国を何度も訪問しています。日本のマスコミはほとんど報道せず、野党の議員らは評価しませんが、最初の訪問で安倍総理は日本外交の原則をを発表し、その後その原則にのっとり我が国とASEAN諸国との外交をすすめています。

2013年1月16~18日、安倍晋三首相は、首相就任ごの最初の外遊先として、ベトナム、タイ、インドネシアを歴訪しました。

2013年ベトナムを訪問しサン国家主席と握手する安倍総理
ベトナムではグエン・タン・ズン首相と会談、原発建設計画や高速道路などのインフラ整備、レアアース開発などの貿易投資で協力を進展させることを合意するとともに、尖閣諸島問題、南シナ海の領有権問題で圧力を強める中国を念頭に「全ての地域の紛争と問題を、国際法の基礎に基づき平和的交渉を通じて解決すべきだ」という点で一致しました。

そして南シナ海問題では「力による現状の変更に反対する」との認識を共有するとともに、政治・安全保障分野でも協力を進めることを確認しました。安倍首相はまた、「日中関係は日本にとって最も重要な2国間関係のひとつだ。引き続き冷静に対応し、中国との意思疎通を維持・強化して、関係をしっかりマネジメントしていく」と述べました。

安倍首相は翌17日にはタイのインラック・チナワット首相と会談しました。インラック首相は共同記者会見で、安倍首相がタイの治水事業、高速鉄道計画、ミャンマーのダウェイ経済特区開発といったインフラ事業への日本企業の参入に関心を示したと述べ、ダウェイについて、タイ、ミャンマー、日本の3カ国で近いうちにハイレベルの協議を行うべきだとしました。

安倍首相はさらに18日にはインドネシアでスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領と会談を行いました。安倍首相は共同記者会見で、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係を日本外交の「最も重要な基軸」と確認するとともに、「日本外交の新たな5原則」について述べました。

これは日本のASEAN外交、さらには東アジア外交の原則として非常に重要ですので、以下、少し長くなりますが、当初予定されていた安倍首相による演説の原稿から引用させていただきます。(残念ながらこの演説は、アルジェリア人質事件により、安倍首相が急きょ日本に帰国したため、実現しませんでした。)
日本外交の新たな5原則
第1に、2つの海(編注=太平洋とインド洋)が結び合うこの地において、思想、表現、言論の自由――人類が獲得した普遍的価値は、十全に幸(さき)わわねばなりません。 
第2に、わたくしたちにとって最も大切なコモンズである海は、力によってでなく、法と、ルールの支配するところでなくてはなりません。 
わたくしは、いま、これらを進めるうえで、アジアと太平洋に重心を移しつつある米国を、大いに歓迎したいと思います。 
第3に、日本外交は、自由でオープンな、互いに結び合った経済を求めなければなりません。交易と投資、ひとや、ものの流れにおいて、わたくしたちの経済はよりよくつながり合うことによって、ネットワークの力を獲得していく必要があります。 
メコンにおける南部経済回廊の建設など、アジアにおける連結性を高めんとして日本が続けてきた努力と貢献は、いまや、そのみのりを得る時期を迎えています。 
(中略) 
第4に、わたくしは、日本とみなさんのあいだに、文化のつながりがいっそうの充実をみるよう努めてまいります。 
そして第5が、未来をになう世代の交流を促すことです。 
(中略) 
いまから36年前、当時の福田赳夫総理は、ASEANに3つの約束をしました。日本は軍事大国にならない。ASEANと、『心と心の触れ合う』関係をつくる。そして日本とASEANは、対等なパートナーになるという、3つの原則です。 
ご列席のみなさんは、わたくしの国が、この『福田ドクトリン』を忠実に信奉し、今日まできたことを誰よりもよくご存知です。 
いまや、日本とASEANは、文字通り対等なパートナーとして、手を携えあって世界へ向かい、ともに善をなすときに至りました。 
大きな海で世界中とつながる日本とASEANは、わたくしたちの世界が、自由で、オープンで、力でなく、法の統(す)べるところとなるよう、ともに働かなくてはならないと信じます。
この演説の原稿は、無論ASEAN諸国の各々の政府はもとより、 各々の国々のマスコミにも公開されました。

念のために確認しておきますと、安倍首相の東南アジア歴訪に先立ち、1月3日には麻生太郎副総理がミャンマーを訪問し、テイン・セイン大統領と会談して、ミャンマーの対日債務5000億円の一部を放棄する意向をあらためて示すとともに、ティラワ経済特区開発支援の意思を確認した。

また、1月9~14日には、岸田文雄外相がフィリピン、シンガポール、ブルネイ、オーストラリアを訪問しました。岸田外相は、1月10日付のフィリピン地元紙への寄稿で「ASEANとの関係強化を重視する」と述べるとともに、フィリピンとの連携強化の重要性を強調、海洋安全保障分野において「支援と協力は惜しまない」と表明しました。

2013年フイリピンを訪問しデル・ロサリオ外務大臣と会談した岸田外務大臣
また、ブルネイでは、安倍総理は、同国が2013年のASEAN議長国であることから、「ブルネイが議長国の責任を果たし、成果につながるよう日本も努めたい」と述べました。さらに13日には、オーストラリアでボブ・カー外相と会談し、安全保障分野などにおける関係強化を確認するとともに、日豪経済連携協定(EPA)交渉の早期妥結を目指すことで合意しました。

まとめて言いいますと、安倍政権は、政権発足1カ月以内に、総理、副総理、外相がASEAN加盟10カ国中7カ国(ベトナム、タイ、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、ブルネイ)とオーストラリアを訪問し、日本が、日米同盟と並んで、ASEAN、オーストラリアとの連携を重視していることを行動で示すとともに、外交の原則を明らかにしたのです。

当時、特に3年余りの民主党政権下、日本外交が漂流していただけに、これは重要であり、ASEAN諸国にも大いに歓迎されたのです。

そうしてこの外交5原則の方針を貫いてきたからこそ、今日世論調査で、ASEAN諸国の調査対象の人々の91%もの人々が、日本を信頼すると回答するに至っているのです。

安倍総理は、インドにも足繁く通い、今年もインドの国民から絶大な支持を受けています。

今年インドで大歓迎を受けた安倍総理
21世紀の東アジア/アジア太平洋の秩序づくりのため、日本はこうした原則にのっとり、日米同盟を基軸としつつ、地域協力のハブとしてASEANを重視し、その統一性を支持するとともに、ASEANの国々、さらにはオーストラリア、インドなどのパートナーの国々と協力していくのです。

そして中国が国際的に責任ある役割を果たすよう、中国に関与していきます。それが、当時安倍総理による東南アジア訪問で示された日本外交の方針なのです。 

先日もこのブログで述べたように、以上の外交努力によって安倍総理は、ASEANやインドと関係が深いため、これらの諸国とトランプ氏と仲介役をしたところ、米国とこれらの国々の関係が飛躍的に良くなったという経緯があるからです。

だからこそ、安倍総理はトランプ大統領から全幅の信頼を得ているのです。

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2017年6月22日木曜日

【守旧派官僚の闇】「加計問題は何が悪いか分からない」外務省や宮内庁もたがが外れていないか 八幡和郎―【私の論評】加計問題を日本の政治主導の夜明けにつなげよ(゚д゚)!

【守旧派官僚の闇】「加計問題は何が悪いか分からない」外務省や宮内庁もたがが外れていないか 八幡和郎

 官僚は不法な政治介入に屈すべきでないし、シンクタンク的に多様な選択肢を発信することも期待されている。しかし、国家組織として、たがが外れていると思うことは、文部科学省に限らずある。(夕刊フジ)

 外務省の韓国・釜山総領事が慰安婦像設置に抗議して本国召還されたことを、酒の席で批判して「事実上の更迭か」といわれている。


 そんな発言が外部にもれては、相手国に断固たる態度を示す効果が台無しになる。酒で酔っていて発言を覚えていないような人物は、あのポストには不適任だ。外務省には専門語学ごとのグループがあって、相手国に嫌われたら仕事にならないとはいえ情けない。

 天皇陛下のご譲位とか、秋篠宮家の長女、眞子さまがご婚約の準備を進められているといった重大ニュースが、NHKの特定記者のスクープという形で連続して流出し、宮内庁が追認する事態が続いている。立憲君主制の根本に関わる不祥事だと思う。

天皇陛下ご譲位、眞子さまご婚約準備のスクープを行った、NHK社会部の橋口和人・宮内庁キャップ
 私は、欧州の王室事情について『世界の王室うんちく大全』(平凡社新書)を出版しているが、欧州で同様のスクープが続けば、国政を揺るがすスキャンダルとして非難ごうごうとなるだろう。

 最後に「森友・加計学園」問題に戻る。霞が関OBの間で、ほぼ衆目一致しているのは、「森友問題はプチ・スキャンダルだが、加計問題は何が悪いか分からない」ということだ。

 ただし、私は国民が「怪しい」と思ったり、強い官邸に官僚の不満が鬱積する気持ちは理解できる。疑惑の原因になっている、日本的システムの問題は大改革すべきだと思う。

 まず、官僚の人事について、各省庁の仲間内順送り人事から、政治の意向も加味していこうとしたことは正しい。ただ、政治の意向も反映させる一方、公務員の専門職としての中立性と活力を保つためには、大臣補佐官など政治的ポストと、一般ポストの区別をすべきだ。

 また、時の政権と違う考えの官僚は重要ポストから外れるが、身分や待遇は失わないようなシステムが望ましい。欧州諸国ではそうなっている。

 行政には、政治的判断が入って構わないと思う。だが、日本では、基準や分析を政治的結論に合わせる悪弊がある。この文化を、客観的な分析をきちんと示したうえで、「政治判断としてこうした」と胸を張っていい。あとは、国民や住民の選挙や言論を通じての評価に立ち向かうという、透明性の高い文化に変えるべきだと思う。

 そうしたことが、政治主導を適切に実現していくために不可欠なのだ。

 ■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に『世界と日本がわかる 最強の世界史』(扶桑社新書)、『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社)など多数。

【私の論評】加計問題を日本の政治主導の夜明けにつなげよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、八幡氏が主張するように、官僚は不法な政治介入に屈すべきでないし、シンクタンク的に多様な選択肢を発信することも期待されています。ところが、各省庁は、国家組織として、たがが外れているとしか考えられないような行動をとることがしばしばあります。

そうして、それは八幡氏が主張するように、文科省だけではなく、外務省や宮内庁もたがが外れていますが、その最たるものは財務省です。

財務省は、従来から消費税増税をすべきとの主張を繰り返し、大増税キャンペーンを展開していました。政治家や識者に対しては、ご説明資料を持参した官僚が、増税すべきであるというレクチャーを徹底しました。新聞各社等には軽減税率をちらつかせ、増税キャンペーンに同調させるという荒業までやってのけました。

そうして2013年には、「8%増税による日本経済への影響は軽微」というキャチフレーズで、マスコミ、識者、野党政治家はもとより自民党政治家の大半も、増税推進派に取り込み、四面楚歌に追い込まれた安倍総理はやむなく「8%増税」を決断するに至りました。

ところが、実際に2013年に増税をしてみると、個人賞はかつてないほどのL字型の落ち込みをみせて、GDPはマイナスになり、8%増税による日本経済への影響は甚大なものとなりました。

2014年11月頃には消費税率の10%への引き上げをめぐって、永田町が大きく揺れていました。この問題はさすがに、8%増税の大失敗に懲りた安倍首相により、再増税の延期と衆議院の解散総選挙という形で決着をみました。

そうして、増税は延期されたのですが、その後も現在に至るまで、個人消費は伸びず、デフレに戻りかねないような状況です。今や8%増税は大失敗であり、その悪影響は甚大であることが誰の目に明らかになりました。

これについては、以前でもこのブログに掲載したことがあります。詳細を知りたい方は、以下のリンクをご覧になって下さい。
なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!

予算や税の取り扱いは時として内閣の命運を左右する大きな問題となります。あらためて言うまでもなく、かつての大蔵省は衆目の一致する「最強官庁」でした。しかし、バブル崩壊と政治改革の流れの中で、大蔵省は1990年代に大きな危機に直面することとなりました。

大蔵省はなぜ追いつめられたのでしょうか。その理由の一端は、不良債権問題への対応の過程で厳しい批判にさらされたことにあります。住専(住宅金融専門会社)処理のための公的資金の投入は、世論の強い反発を招きました。

東京協和信用組合と安全信用組合の二信組事件に関連して発覚した大蔵省幹部の過剰接待問題は、「最強官庁」の権威と信用を大きく傷つけました。もう一つの理由は、永田町に行革を旗印とするさまざまな「改革派」が出現し、大蔵省改革が大きな政治課題となったことです。こうした中で銀行局と証券局の所掌事務の大半を総理府(現内閣府)に移管する「財金分離」が行われ、大蔵省は「解体」されました。

このような動きの底流には、1955年体制が崩壊していく過程で政と官の役割の再規定が行われ、官邸主導型の政治システムへの志向が強まったという政治環境の変化があります。

この流れに乗り、経済財政諮問会議を舞台装置として官邸主導の政策運営を体現したのが小泉純一郎内閣ですが、財務省はここで従来のビジネスモデルからの転換を迫られることになりました。

旧大蔵省の表札

それは、非公式の場での調整をもとに落とし所を探り、利害関係者への根回しを通じて政策形成を図る旧大蔵省の流儀から、公開の場で「財務省案」を提示して、世論の支持をバックに政策を実現させていく新たな手法への移行です。しかし、「大蔵官僚から財務官僚への試行錯誤と意識改革」は「官邸主導の波に煽られて、曲折をたどらざるをえなかった」。

民主党政権の誕生後、内閣や与党との間合いの取り方に苦慮していた財務省は、「財務省の組織内候補」と揶揄された野田佳彦首相のもとで政権との一体感を取り戻し、消費増税への具体的な道筋をつけることに成功しました。

しかし、財務省から距離を置く安倍晋三首相の登場で、再び試行錯誤を迫られています。2017年4月に予定されている再増税も、現時点では延期が確定しています。14年春からの8%増税では、財務省に負けた安倍総理ですが、現状では、選挙という手段に頼らず10%増税の延期を決めた安倍総理が勝利しているようです。官邸と「最強官庁」の関係は、この先どのように変化していくのでしょう。

こうした文脈の中で、いわゆる加計問題が発生したのです。加計問題では、簡単に言ってしまえば、天下り斡旋で責任をとって辞任した前川前文科次官が、憤懣やる方なく官邸に対して新聞社などのマスコミの力を借り反旗を翻しあわよくば、倒閣につなげようとしたことが発端でした。

前川前文科次官
これに民進党などの野党がのって、いわゆる怪文書(発信者も、発信番号もない、何の目的で発信されたかもわからない文書)をもとに、政府を追求しましたが、当然のことながら、民間会社などでもこのような文書で代表取締役を辞任に追い込むことは最初から全く不可能なことがわかりきっているのと同じように、もともと倒閣など全く無理筋というものです。

財務省をはじめとして、各省庁の官僚らは、これらの一連の動きを注意深く見守っていることでしょう。特に、天下り斡旋問題で、前川前文科次官が、責任をとって辞任せざるを得なくなったことには、多くの官僚が大パニックを起こしたことでしょう。これは、安倍政権による官僚に対する最初の大打撃でした。

その後の加計問題に関しては、実はのほとんどの官僚がいわゆる怪文書に関して、それなりに知識があるし、そもそも一般に公開されている戦略特区ワーキング・グループの議事録を読めば、文科省は課長級の会合でも官邸側に理屈や論理的に完膚無きまでに負けており、いわゆる怪文書の日付の頃には到底「総理のご意向」を発する必要性など全くなかったことを理解していることでしょう。

特に財務省の官僚などは、愚かなマスコミとは違い、WGの議事録を読んだ上で、文科官僚の無様な敗北に至った過程を理解し、やはり最低の官庁文科省であると優越感に浸っていたに違いありません。それほど、文科省の戦略特区WGでの敗北は無様なものです。とはいつつ、文科省官僚も官僚としては身内なので、財務省官僚としては複雑な心境だったに違いありません。

さて、この国家組織として、たがが外れた文科省ですが、加計問題が一旦沈静化したら、政府としては、やはり徹底的に追求すべきでしょう。この問題を放置しておけば、他の象徴の官僚たちにしめしがつきません。特に財務省はそうです。

これを機会に文科省の徹底的な組織改革をはかるべきでしょう。どの程度にするかは、政府の裁量のまかせるものとして、その過程で、国民にも十分説明を行い、国民の支持を受けた形で、実施すべきでしょう。

霞が関の省庁における組織的な天下りは、野党やメディアにとって「絶対悪」だったはずです。特に、今年1月に発覚した文科省の組織的天下り斡旋(あっせん)問題は、人事課や事務次官にまで再就職先の情報が共有される、非常に悪質な国家公務員法違反でした。

この事実を再度掘り下げ、このような体質が、本当は存在すらしなかった加計問題のような問題を生み出す温床になったことを多くの国民に理解させた上で、文科省の大外科手術に挑むべきです。

そうして、文科省の外科手術に成功したら、他の官庁の外科手術にも挑戦すべきです。特に、財務省に関しては、以前このブログにも掲載したような外科手術を実行すべきです。


財務省の狙いは10%増税でととまるものではありません。最終的には消費税20%を目標としていることでしょう。現在は安倍総理に負けたようにおとなしくはしていますが、あわよくば「アベノミクス失敗」の世論などを盛り上げ、安倍政権を死滅させ、次の政権で10%増税で、またかつて、民主党政権を飼い殺しにしたように、飼い殺しをし、そして次の政権も飼い殺しにし、20%増税を成就するまで飼い殺しを続けるつもりでしょう。

まるで、革命集団のような財務省を改革にするには、生易しいことでは不可能です。大蔵省を財務省と日銀とに分割したように、さらに財務省を分割するべきという意見もありますが、それでは手ぬるいです。

財務省は、単純に分割すると、10年くらいかけて他省庁に植民地を拡大する手段に使います。実際、白川元日銀総裁以前の日銀は、財務省の植民地のような有様でした。そうして、日銀は金融引締めを継続し、財務省は増税などの緊縮財政を継続し、日本経済をデフレ・スパイラルのどん底に沈めました。

このようなことを防ぐ意味合いで、まずは公的金融部門の廃止を実施し、つぎに財務官僚が目下においている他官庁の下部組織に財務省を分割の上に編入すべきです。こうすることにより、まで革命政治集団であるかのような財務省は、本来あるべき姿の政府の下部組織という本来の姿になると思います。



このように、財務省解体に成功したときに、はじめて日本の「政治主導」の夜明けが始まることでしょう。かつての民主党は政権の座にあったときに、「政治主導」を標榜して、「事業仕分け」などを実施しましたが、結局何もできませんでした。

それどころか、実はあの「事業仕分け」は財務省主導でした。民主党の政治家らが、国民の顔色を伺い、「財務省が作った資料を見ながら」仕わけ作業をしていたテレビを見たときには、私はテレビのやらせを番組を見ているようで苦笑してしまいました。

しかも、民主党は先にものべたように、「財務省の組織内候補」と揶揄された野田佳彦首相のもとで政権との一体感を取り戻し、消費増税への具体的な道筋をつけることに成功しました。

そうして、この体質は、今の民進党にも受け継がれています。民進党の新代表選のときに、候補者であった、蓮舫氏、前川氏、玉木氏の三人は、三人とも増税を強調していました。これでは、「政治主導」どころか、「財務省主導」です。ですから、私は、民進党を以前から「財務省の使い捨て政党」と揶揄しているのです。

そうして、これは当たり前のど真ん中の話なのです。国民の信託を受けた政治家による政府が、政治の中心になるべきであり、政治家が日本国の方針を定めるのが本筋であって、官僚は、それに直接関わってはいけないのです。

官僚が日本国の方針を定めることに関わるとしたら、それはあくまでシンクタンク的に多様な偏りのない選択肢を発信し政治家を補佐することです。これは、許されることどころか、奨励されるくらいですが、官僚は絶対に日本国の方針を定めることに直接関わってはいけないのです。

この当たり前のど真ん中を当たり前にやろうということが、「真の政治主導」なのです。

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2017年2月27日月曜日

【金正男氏殺害】容疑者4人は国家保衛省出身、2人は外務省所属 韓国情報機関が説明―【私の論評】動機は金正恩の統治の正当性の低さにあり(゚д゚)!

【金正男氏殺害】容疑者4人は国家保衛省出身、2人は外務省所属 韓国情報機関が説明



北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏殺害事件は、発生から27日で2週間となった。 だが、正男氏の親族のマレーシア入りはまだ実現していない。マレーシアのスブラマニアム保健相は26日、親族によるDNA型鑑定が困難な場合、歯型や顔のほくろによる照合も遺体の身元を確認する方法になり得る、との考えを示した。

一方、韓国の情報機関、国家情報院は27日、正男氏殺害について「北朝鮮の国家保衛省(秘密警察)と外務省などが直接主導した国家主導のテロ事件である」との見方を示した。国会情報委員会で報告した。

同委出席者が会議後、メディアに明らかにしたところによれば、国情院は事件の容疑者8人のうち4人が国家保衛省出身で、2人が外務省所属だったと説明した。

犯行には2つの暗殺グループが関与。2つのグループは外国籍の女を含む3人1組で別々に行動していたが、マレーシアで合流し13日に犯行を実行した。

また、駐マレーシア北朝鮮大使館のヒョン・グァンソン2等書記官(保衛省所属)ら4人の支援グループが、正男氏の動向追跡などの役割を果たしたという。

【私の論評】動機は金正恩の統治の正当性の低さにあり(゚д゚)!

日本のメディアでは、暗殺方法、暗殺にかかわった組織などについて、時間の経過とともに報道されています。しかし、暗殺の動機は何だったのかということについてはあまり触れられていません。本日にそれについて掲載しまする

これについては、日韓の複数のメディアが、"北朝鮮の金正恩党委員長の異母兄・金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害されたのは、脱北者による「亡命政府構想」がきっかけだった"と報じていますそれによると、韓国政府も、昨年4月29日にソウルで開かれた世界中の脱北者の結束を訴える集会で同構想が浮上したことが、正男氏殺害の契機になったとみているそうです。

では、亡命政府とは一体どのようなものなのでしょうか。

一般的には、他国の侵略やクーデターによって自国の政治から排除された旧政府メンバーや国民が、外国に脱出してその地で作る仮の政府組織を言います。今回のケースでは、北朝鮮の金正恩体制への対抗勢力を組織することを目的に、脱北者の求心力となる組織を作ろうということです。

北朝鮮が、本当に亡命政府への警戒から正男氏を殺害したのだとしたら、「喜び組」など体制の恥部を暴露したことに対する報復として実行された20年前のロイヤルファミリー暗殺とは、だいぶ性格を異にしていることになります。


2013年の夏ごろには、韓国で脱北者による亡命政府構想の動きがありました。すでに国旗の案もあり、元北朝鮮官僚を当てた主要な「閣僚」名簿もあったと思います。

記憶があいまいなのは、当時私は、この話をさほど真剣に受け止める気がしなかったからです。脱北して韓国入りした北朝鮮の人々は昨年末までの間に3万人を超えました。この間、様々な脱北者団体が人権運動で成果を上げている事実はありますが、3万人どころか千人単位の脱北者を束ねるような党組織はいまだに生まれていません。

そのような状況で亡命政権の看板だけを掲げてみても、無意味だと思われたからです。

そうした状況は、北朝鮮当局も把握していることでしょう。先の脱北者集会では、金正恩政権に対抗できる指導者として正恩氏の叔父の金平一(キム・ピョンイル)駐チェコ大使や正男氏の名前が挙がったといいますが、彼らにも、広範な反体制運動を率いることのできる政治的パワーはありません。

金平一氏
しかしそれでも、指導者としての「正統性」において何かとツッコミを受けやすい正恩氏が、こうした動きを放置できなかったということは考えられます。

北朝鮮の指導者は、先代の思想と教えを独占的に解釈することで独裁を保っている部分があります。そういう意味で、正恩氏にとって平一氏や正男氏は「煙たい存在」だったことでしょう。なぜならこの2人は、同じ金王朝の血を引いている上に、正恩氏の知らない祖父・金日成主席や父・金正日総書記の姿や教えを、たくさん知っているからです。

核武装を成し遂げ、そう簡単には外部から攻撃を受けにくくなった正恩氏にとっては、国内での権力をより完璧なものにすることをより重要であると考えている可能性があります。そう考えれば、たとえ実質的な力のない亡命政権であっても、北朝鮮国民に向け、それなりに意味ある言葉を語れる「指導者」が現れることは、阻止すべき課題だったのでしょう。

しかし、これだけだと、今回のような暗殺劇はなかったかもしれません。もう一つ忘れてはならない、大きな動機があります。それは支那の存在です。

歴代の支那政府が「兄弟国」の金王朝に配慮してきた目的は、属国化することにありました。

そのため、支那の改革開放政策を支持する正男氏を、正日氏の後継者候補と見据えて、義理の叔父、張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長を後見人とする体制の実現を目指してきました。

粛清された張成沢氏 紺色を服装の男性
ところが、金王朝の3代目に指名されたのは3男の正恩氏でした。「支那に近づきすぎた」張氏は13年12月、無残な最期を遂げました。支那政府は以来、正男氏の身辺警護をより強化してきましたた。

正恩氏の支那国内のカウンターパートは劉氏(江沢民派)ですが、習一派は劉氏を含む江沢民派を完全に敵視していました。そのうえで、習氏は、オバマ米政権時代からの密約とされる「北朝鮮の核開発無力化」へ舵を切りました。この1年、北朝鮮の核開発を支援する支那企業の摘発と責任者の逮捕、東北3省の幹部の首のすげ替えなどに邁進(まいしん)してきました。

習氏は、正男氏の“出番”をひそかに伺っていたのです。このような動きにも金正恩は、神経を尖らせていたことでしょう。

こうしたなか、習一派らに江沢民派が一掃されれば、正恩体制そのものが危うくなります。

だとすれば、正恩氏にとって最大の不安要因である正男氏を、是が非でも抹殺するしかありません。

いずれにしても、正男氏が支那の野望の中で擁護され、その揚げ句、犠牲となったことは確かです。

これら、二つの動機が重なって、正男氏は暗殺されたのです。どちらか一方だけであれば、暗殺されなかったかもしれません。

そうして、この根底には無論のこと、支那や北朝鮮に共通する、国やリーダーの統治の正当性の低さということもあるでしょう。支那や北朝鮮などの政府に統治の正当性の低い国々は、日本等を悪者にしたてて、人民の憤怒のマグマが自分たちに降りかからないようにして、統治の正当性を主張するのです。

正男氏が亡命政府のリーダーになり、江沢民派が一掃されるということになれば、習近平は亡命政府の正男氏の北朝鮮への復帰を画策したことでしょう。

仮にそうなったにしても、北朝鮮が少なくとも韓国なみの民主国家であったとすれば、選挙によって選ばれるなどの正当な手続きを経て統治の正当性がある程度裏付けされたリーダーが、亡命政府のリーダーにとって替わられるなどという危険は微塵もありません。

しかし、支那や北朝鮮はそうではありません。統治の正当性が極端に低いので、いつどうなるかなど何の保証もありません。だからこそ、正恩は自らの統治の正当性を主張するためにも、意図して、意識して正男氏を暗殺する必要があったのです。

統治の正当性の低い、政府や指導者、幹部などはその低さを補うために、時には暗殺などを手がける必要があるのです。恐ろしいことです。

統治の正統性とは、本来統治するものが現実に社会に貢献するとき、初めて手にすることのできるものです。貢献しないものは、選挙で選ばれようと、そうでなかろうと、統治の正当性を獲得することはできず、いずれ滅ぶのみです。


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2015年2月8日日曜日

テレビ朝日、報ステの放送事故で日本政府が世界的テロ組織認定の公安監視対象に?捏造報道に外務省が怒りの申し入れ!―【私の論評】悔しかったろう、無念だっただろう、口惜しかったろう・・・・! 護憲派には永遠に理解できない、後藤さんの今わの際の本当の気持ち(゚д゚)!

テレビ朝日、報ステの放送事故で日本政府が世界的テロ組織認定の公安監視対象に?捏造報道に外務省が怒りの申し入れ!



2月2日放送 テレビ朝日「報道ステーション」の報道(総理中東訪問関連)に関する申し入れ外務省平成27年2月3日
2月3日午後5時頃,テレビ朝日に対し,同社が2日に報道ステーションにおいて,総理の中東訪問やエジプトにおいて行われた政策スピーチが外務省の意に反して行われたかのごとく報じられたことにつき,外務報道官及び中東局長の連名で,以下の内容につき,文書及び口頭で申し入れを行いました。
【文書による申し入れ】 
貴社は,平成27年2月2日放送の「報道ステーション」において,シリアにおける邦人人質殺害事件につき報じる中で,総理の中東訪問に関し,「そもそも外務省関係者によれば,パリのテロ事件もあり,外務省は総理官邸に対し中東訪問自体を見直すよう進言していた」旨報じ,また,エジプトで行われた総理の政策スピーチに関し,「外務省幹部によると,この内容についても総理官邸が主導して作成されたという」と報じるなど,あたかも外務省の意に反して,中東訪問が行われ,スピーチの当該部分が作成されたかのような報道がありました。 
 この報道内容は事実と全く異なるものです。 
 総理の中東訪問については,同2日の参議院予算委員会で総理も述べられているとおり,様々な観点を総合的に判断して決めたものであり,貴社のように社会的に影響力の大きい報道機関が,このように事実に反する報道を行うことは,国民に無用の誤解を与えるのみならず,テロリストを利することにもつながりかねないものであり,極めて遺憾と言わざるを得ません。 
 当該報道に関し強く抗議するとともに,本日の番組の中で速やかに訂正されるよう強く求めます。
 なお,同番組のその他の部分については,申し入れの対象としておりませんが,外務省としてそれらの内容について確認したものではありませんので,念のため申し添えます。

【私の論評】悔しかったろう、無念だっただろう、口惜しかったろう・・・・! 護憲派には永遠に理解できない、後藤さんの今わの際の本当の気持ち(゚д゚)!

上の動画でも解説されていた、佐藤優氏の主張するすでに戦争は始まっているという主張に関する記事のURLを以下に掲載します。
【イスラム国事件】すでに「戦争」始まっている…「敵」国内にも 佐藤優氏
佐藤優氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみを以下に引用させていただきます。
 日本とイスラム国との戦争はすでに始まっており、敵は日本国内にもいる。昨年にはイスラム国の戦闘員に加わろうとシリア渡航を企てたとして、北海道大学の男子学生らが家宅捜索を受けた。こうした法規違反に関し、日本政府は厳正に対処していくべきだ。 
 日本国民は勝つか、消し去られるかという戦争をしている。この戦争には勝たないといけない。今回の事件にひるむことなく、中東支援を続け、イスラム国の壊滅に向けた行動を続けていくべきだろう。(談)
佐藤優氏の主張にしたがえば、テレビ朝日の「報道ステーション」などは、日本国の敵ということになると思います。

それから、後藤健二さんに関しては、亡くなったこともありキレイ事ばかり報道されているような気がします。もっとまともな報道もされるべきと思います。これについては、週刊文春の記事などがかなり参考になると思いますので、以下にその記事の内容が記されているブログの記事を掲載させていただきます。
週刊文春・「10分300万円」に命を賭けた 後藤健二さん書かれざる数奇な人生

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、「10分300万」という言葉がひとり歩きしているようで、中には、危険地帯に入ると10分間にこれだけのギャラがもらえると勘違いしている人もいるようです。そのため、これに関連する部分についてのみ以下にコピペさせていただきます。
 後藤さんは昨年六月頃の段階では、『イスラム国なんてどうでもいい』と言っていた。 ただ、その後、イスラム国が大きなニュースになっていくのを見て、『でかいネタになる』と考えたのかも知れない。 もし救出できれば世界的なニュースですし、映像が番組で流されれば、10分間で200万円から300万円 ほどのギャラをもらえますから」 
 命の危険も伴う取材だけに、それは相応な対価だろう。 実際、後藤さんはイスラム国に入る直前、「 何が起こっても責任は私自身にあります」という動画のメッセージをガイドに託している。 だが結果として、その決断は人質交換交渉にヨルダン政府も巻き込む外交問題に発展してしまった。
この文面を見ている限りにおいては、映像が流されなければギャラはゼロ、流されれば10分間で200万円から300万円ほどのギャラになるということのようです。

このような映像が1時間も2時間もぶっ続けで流されることもないと思います。それに、実際に放映され部分が10分にしても、この動画を作成するためには、通常は数倍から数十倍の映像を撮影するのが普通です。

それを考えると、決して良い商売ともいえません。まさに命がけで、この程度ですから、こういう危険地帯まで自分の命とひきかえに取材に行く人は滅多にいないということなのだと思います。

それにしても、テレビ朝日の報道ステーションは、上記のような放送にとどまらず、 4日放送で上間明彦氏は、「ISIL周辺国に住む日本人の数」を 地図入りで具体的に示しました。これは、明らかにテロリストへの情報提供といえるのではないかと思います。この件は、現在マスコミ監視委員会で 重大問題として取り上げています。

さて、このような状況なのに、本日は、シリアへの渡航を計画していた人間が、外務省から旅券を取り上げられたという自体も生じています。
「渡航の自由」か「邦人保護」か 写真家の旅券返納命令

シリアで取材活動を続ける意義を話す杉本祐一さん=新潟市中央区 

シリアへの渡航を計画していた新潟市の男性フリーカメラマンが外務省から旅券の返納を命じられ、男性が命令に応じて提出していたことがわかった。邦人の生命保護を理由にした返納命令は初めて。同省は過激派組織「イスラム国」による人質事件を受け、シリア全域に退避勧告を出しているが、「渡航制限」という踏み込んだ対応は論議も呼びそうだ。 
【写真】返納命令の理由を記した旅券返納命令書=7日午後11時21分、新潟市中央区(個人情報保護のためにモザイクをかけています)

過激派組織「イスラム国」による邦人人質事件を受け、外務省や与党内では、邦人保護の観点から危険地域への渡航を制限する必要性を訴える意見が強まっていた。 
 「イスラム国」に殺害されたとみられるフリージャーナリストの後藤健二さんがシリアに渡航する前、外務省は9、10両月、電話と面談で計3回にわたり渡航中止を要請したが、受け入れられなかった経緯がある。このため、同省内では「あれだけ止めてだめなら、ほかの強い手立てが必要になる」(同省幹部)との声が出ていた。
この人は、北海道新聞のウエブによれば、北海道小樽市出身の方だそうです。この人結局何が言いたいのでしょうか。自分が彼の地に赴いて、テロリスト集団「イスラム国」に拉致されたらどういうことになるのか、ほとんど意識が及んでいないようです。拉致されれば、後藤さんのときと同じく、さらに問題を拡大し大きな外交問題などをひきおこしてしまいます。

自由には責任が伴うという大前提を理解しなければ、自分勝手な自由しか頭にない人間が大勢でてきてしまいます。これを平和ボケといいます。

「政府は湯川さんと後藤さんを見殺しにした」と騒いでた連中は、今回は「政府はカメラマンの命を救った」と褒め称えるのでしょうか。
 カレル・フォン・クラウゼヴィッツ曰く、「戦争は外交の手段だ」と。だから、この立場にたてば、しないですむ戦争はしません。しかし、我が国の平和ボケの多くの人々は「外交の失敗が戦争である」と信じ込んでいます。だから誰とも外交ができません。あるいは、自分たちの言動が結局安倍総理に誰とも外交するなと言っているに等しいことに気付きません。だから、安倍総理の安全保障のダイヤモンドの意味するところを理解できません。

このあたり、昨日の産経抄が、非常に良く伝えていたと思います。以下にその記事を掲載します。


後藤さんは、最後の最後に本当に無念と感じたことでしょう。結局テロリストの犯人側のメッセージを伝えなければ、拷問されてとんでもないことになっていたはずです。彼らの拷問は、凄惨そのもので、通常に人間なら耐えられないレベルだと思います。そうして、悔しいかな、自分の死そのものが、テロリストのメッセージにもなっているということです。

さらに、後藤さんも遺族の方々も最初から覚悟してはいたでしょうが、遺体は遺族のもとには戻らないということもあります。それに、多くの日本人は、「葉隠」などにも影響された美意識により死に際を美しくしたいという願望も強いと思います。後藤さんは、このようなこともままならず、テロリストたちに自分の意図とは関係なしに、自分の死を穢されたのです。

これほど、悔しくて、無念な死はないと思います。しかし、悲しいかなこれはこの世の現実です。護憲派は、この現実を目の前にしても、憲法9条を守りぬけと言っているのです。何という不条理でしょう。これは、これからも、テロリストの好き放題にさせろと言っているに等しいです。

産経抄の記事では、「護憲信者のみなさんは、テロリストに"憲法を読んで"とでも言うのだろうか。命の危険にさらされた日本人を救えないような憲法なんて、もういらない」。などと、穏健な言い方をしていますが、私としては護憲派の皆さんを武装は憲法9条のみで、彼の地に赴かせ、テロリストに対して「話し合い」攻撃をさせて、玉砕していただければ良いのではないかと思います。

というより、テロリスト相手に「話し合い」攻撃だけであれば、玉砕するのは目に見えています。それも、すぐに拉致されて、苦しい拷問の末、彼らのメッセージを代弁して、むごたらしい殺されかたをするだけです。

そのとき、後藤さんの今わの際の本当の気持ちが理解できると思います。その程度のことでも、ない限り彼らには、永遠にわからない真実だと思います。ただし、現状では、護憲派が少数派になっていることが、唯一のなぐさめかもしれません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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