ラベル 平時 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 平時 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年7月10日火曜日

トランプ米大統領、最高裁判事に保守派のカバノー氏指名―【私の論評】実は平時に世界最弱の権力者米大統領の権限強化に動くトランプ大統領(゚д゚)!

トランプ米大統領、最高裁判事に保守派のカバノー氏指名

トランプ米大統領は9日、最高裁判事候補に保守派の連邦高裁判事、ブレット・カバノー氏を指名した。

トランプ米大統領は、最高裁判事候補に保守派の連邦高裁判事、ブレット・カバノー氏(左)を指名

6月27日に退任を表明したアンソニー・ケネディ判事の後任となる。ケネディ氏は7月31日付で引退する。

53歳のカバノー氏を指名することで、トランプ大統領は最高裁での保守派優位を長年にわたり守る狙いがあるとみられる。トランプ大統領による最高裁判事指名は2人目で、昨年には保守派のニール・ゴーサッチ氏を指名している。

カバノー氏は共和党のブッシュ(子)政権下のホワイトハウスで高官を務めた後、2003年に連邦高裁判事に指名された。ただ、党派色が強すぎるとの民主党の反発で、承認まで3年を要した。



トランプ大統領はカバノー氏について「法律家の間で判事の中の判事、思想的指導者とみられている」と述べ、議会上院では「速やかな承認と超党派の強い支持」を得るべきだとの考えを示した。

上院では共和党と民主党の議席が51対49と拮抗する。ただ、共和党から造反が出なければ、民主党が承認を阻止することは困難となる。

 【私の論評】実は平時に世界最弱の権力者米大統領の権限強化に動くトランプ大統領(゚д゚)!

米国のトランプ政権の連邦最高裁人事に注目が集まっています。というのも際どい判断の雌雄を決めていた中道派判事アンソニー・ケネディ氏が引退し、任命次第では過去50年間の様々な多文化的な政策が覆されていく流れが出てくるためです。

7月9日には首都ワシントン連邦巡回区控訴裁判所のブレット・カバノー判事を指名されましたが、この人事が承認されるかどうかで、アメリカ政治・社会が一変していく可能性があります。

米国最高裁

米国最高裁は、違憲か合憲かの判断を日本の最高裁よりも積極的に行い、国の政策や社会的に重要な争点に介入する傾向があります。このため最高裁判事は、米国の政策の方向性を左右し、実質的な政治のアクターとして重要な役割を担っています。

なぜアクターになりえるのかといえば、判事の政治的傾向が極めて明確であり、憲法に基づいた司法審査(judicial review、違憲審査)も頻繁に行うためです。

高度な政治的な判断を要する争点については、司法独自の判断を控える日本などの諸国と比較すると、アメリカの裁判所は「司法積極主義」であり、国の政策や社会的に重要な争点について積極的な裁定者となる傾向があります。

最高裁判事は長官を含めて9人。トランプ政権下では保守派4人、リベラル派4人、中道派が1人でした。アメリカである程度のレベルの大学生なら、この9人の名前だけでなく、イデオロギー的傾向も言い当てることができるほど、政治に深く関与しているのが米国の最高裁判事なのです。

例えばオバマケアをめぐる2012年の最高裁判決の際には保守派のロバーツ長官がオバマケアを擁護したこともあるように、保守派やリベラル派といっても判決は判事一人一人の裁量が基本だが、それでも明らかに判決に傾向があります。

というのも、そもそも任命された過程が政治的だからです。最高裁判事は大統領が任命した後、連邦議会上院が承認します(憲法上は「助言と同意」で決めます)。つまり、大統領府と議会のバランス関係で決まってくるのです。

米国の現在の最高裁判事のうち、リベラル派の4人はいずれも民主党政権(ブライヤー、ギンズバーグがクリントン政権、ソトマイヨール、ケーガンがオバマ政権)、保守派の4人はいずれも共和党政権(トーマスがG・H・Wブッシュ政権、アリトー、ロバーツがG・Wブッシュ政権、ゴーサッチがトランプ政権)のときにいずれも任命、承認されています。

中道派のケネディは共和党のレーガン政権の1988年に任命・承認されましたが、比較的自由に裁定をする傾向で知られています。例えば、同性婚の裁判など、世論を二分する「くさび争点(wedge issue)」ではケネディがスイングボートになってきました。

この中道派のケネディ判事が81歳という高齢を理由に退任を決めました。ケネディ判事の後任として今回、カバノー氏が指名されたことで、このバランスは一気に崩れるかもしれないです。

米国最高裁判事 クリックすると拡大します

カバノー氏が指名されたのには明らかな理由があります。カバノー氏は保守派として知られており、G・W・ブッシュ元大統領から高裁判事に指名される前は、同元大統領スタッフの事務方を務めたほか、人工妊娠中絶に否定的で、環境規制の緩和を支持してきたことでも知られています。

トランプ氏の支持母体であるキリスト教福音派は、最高裁がこれまで行ってきた同性婚、妊娠中絶などについてのリベラル的な判決に強い不満を表明してきました。それもあって2016年の大統領選の期間中から、減税などの政策以上に最高裁判事の任命人事は重要な争点でした。トランプ政権を生んだ原動力は国民の3割ともいわれるこの宗教保守の結束に他ならないのです。

前のオバマ政権下では保守派4人、リベラル派4人、中道派が1人でしたが、保守派のスカリア判事が2016年2月に死亡し、保守・リベラルのバランスが崩れていました。ただ、当時は、大統領は民主党だったのですが、上院は過半数が共和党であったという「ねじれ」があったため、オバマ氏が任命した判事は上院で承認されませんでした。

トランプ氏は大統領就任後、保守派のゴーサッチ氏を任命し、上院は僅差だったのですが、同氏を承認し、リベラルと保守のバランスを保ちました(ただ、その際、上院は慣例のフィリバスター制度=少数派が多数派を止めることができる制度=の適用を最高裁判事の人事を例外にしたというルールの変更もありました)。

特筆したいのは、上述のケネディ判事以降もトランプ大統領が行う可能性がある判事任命はこれだけで終わらない点です。85歳のギンズバーグ氏や、79歳のブライヤー氏など、リベラル派の立場をとる現在の判事には高齢者が多いです。健康問題も取りざたされています。いずれも「近いうちに引退するのでは」という話も出ています。

トランプ氏の大統領任期中、さらにリベラル派から保守派への転換があれば、長期的には最高裁の判決が一気に保守化していくのは火を見るよりも明らかです。

ウォーレンが最高裁長官を務めた1950年代から60年代のいわゆる「ウォーレン・コート」(1953-1969)や、バーガーが最高裁を勤めた「バーガーコート」(1969-1986)においては、最高裁の9人の裁判官の多くが政治的にはリベラル派であり、最高裁は様々な判決で連邦政府による積極的な社会改革を先導していきました。

南部諸州の人種分離法に違憲判決を下し、公民権法制定への起爆剤となった「ブラウン対教育委員会」判決(1954年)、被疑者の人権を確保する「ミランダ対アリゾナ判決」(1966年)、人工妊娠中絶を合法化させた「ロウ対ウェード」判決(1973年)など、枚挙にいとまがありません。

一方、1980年代後半から2005年まで最高裁長官を務めたレンキスト長官の時代(「レンキスト・コート」)、そして、2005年から現在までのロバーツ長官の時代(「ロバーツ・コート」)には、保守派の裁判官の数が次第に増え、リベラル派と保守派の裁判官の数が拮抗しながらも、比較的保守的な判決が増えるようになってきました。 トランプ政権が導入した複数のイスラム圏からの入国規制措置を支持する判決を6月末に下したのは象徴的です。

この延長線上に今後の司法があります。

最高裁判事で保守の勢力が強まれば、これまでのリベラルな政策が訴訟を通じて覆される可能性があります。具体的には、上述の「ロウ対ウェード」判決以来認められてきた妊娠中絶や、2015年の最高裁判決で合法化されている同性婚の容認、医療保険制度改革(オバマケア)などが争点になってくるでしょう。

妊娠中絶などの問題で女性の権利よりもキリスト教的な生命倫理を大切にすることを意味し、キリスト教的な倫理観の地域性を重視し、連邦政府ではなく州レベルの裁定を支持する「州権主義」も顕著になるとみられます。今後同性婚だけでなく、人工妊娠中絶が一部の州では非合法となる可能性すらことがかなり現実味を帯びてきました。

「小さな政府」を好む共和党の意向を受けて、政府の経済や社会活動に関する介入を控える動きが顕著になるとみられます。連邦から州への権限委譲や、企業に対して規制緩和を進める政策が認められることも考えられます。言葉を変えれば、規制緩和や小さな政府などの政策には追い風です。

アメリカの最高裁判事の場合、地位の安定の保障のために、引退や議会で罷免されない以外は「善い行いをしている間は職務につくことができます("shall hold their offices during good behavior")」。つまり、終身制です。日本のような国民審査もありません。一度就任した判事は30年以上勤める場合が多いです。トランプ大統領は45代だが、ロバーツ長官は17代です。

終身制のため、かなり長期的にアメリカ社会を変える可能性があります。これはトランプ大統領にとっては自分の政治的遺産を長く残すことができることを意味します。トランプ大統領にとっては、自分の任期を大きく超え、最高裁を通じた永続的な「保守革命」を達成できる機会でもあるのです。

これに対して、過去50年間の様々な多文化的な政策が覆されていくのは不可避であると憂慮するリベラル派も少なくないです。そもそも連邦政府を改革するために公民権運動に代表されるような市民運動などの政治活動の第一歩として、裁判闘争戦術が採用されてきたのですが、これも難しくなるでしょう。

それにしても、なぜトランプ大統領がこのような行動をとるのか、日本と米国では制度が異なるので、理解しにくい面があると思われますので、以下に簡単に解説します。

平時においては、極端に厳格な三権分立が障害となり、米国大統領にはほとんど権限がありません。それどころか、その結果として平時には司法が最も強力になるという歪な構造になっています。司法が強いというアメリカの特殊事情は、アメリカ映画などご覧になっていれば、いわゆる「司法取引」が頻繁に行われていて日本とは異なることでもお分かりになると思います。

これは、以下の図をご覧いただければ、良くお分かりになると思います。

米国完璧な三権分立と、イギリス・日本の議院内閣制度の非核

米国ではがんじがらめの三権分立で大統領の権限を著しく弱めている

アメリカは、完全な三権分立となっており、日本のように議会と内閣が協力関係にはありせん。これが、平時のアメリカ大統領の権限を極端に弱くしています。これは日本ではなかなか理解しがたいところだと思います。なぜなら、多くの日本人には、戦中終戦直後の米国の強力な権限のある大統領のイメージがあるからです。

しかし、同じ大統領であっても、平時と戦争時において米国の大統領の権限は大きく異ることを理解しなければ、米国の大統領の権限について理解でないです。米国では、戦争権限法により議会が大統領の戦争遂行を認めると、大きな権限が大統領に集中するようになっています。

これに関しては、さらに以下の動画を参照していただれれば、良くご理解いただけるものと思います。この動画は2015/06/04 に公開されたものです。



もともと、このように平時では権限がかなり制限されているのが、米国大統領なのです。だからこそ、トランプ大統領はこれから先様々な課題に挑戦していく上でも、最高裁の保守化を何としてもすすめたいと考えているのです。

私自身は、米国の厳格な三権分立に基づいた、司法制度はいずれ改めるべきとは思いますが、それにしてもすぐには変えることはできませんから、トランプ大統領上記のような行動をとるのは当然のことと考えます。

特に中国との対決は、軍事にはよらず、貿易戦争や金融制裁によって行われることになるでしょう。米国ではドラゴンスレイヤー(対中強硬派)でさえも、中国と直接軍事対決することは現実的ではないとしています。

そうなると、トランプ政権が中国と対決する際に、最高裁が最大の障害となる可能性もあるわけてす。トランプ大統領としては、それだけは避けたいと考えているのだと思います。

アメリカの政治や社会を一変させる可能性がある最高裁判事人事は今後、どうなるのでしょうか。カバノー氏に続く、トランプ大統領の任命、さらには承認を進める上院の動きが大きく注目されます。

【関連記事】

中国の急所は人民元自由化 米制裁を無効化する通貨安、トランプ政権が追及するか―【私の論評】米国の対中貿易戦争は始まったばかり!今後金融制裁も含め長期間続くことに(゚д゚)!

「トランプ氏の顔に泥」ポンペオ氏が正恩氏を“叱責”か 核・ミサイル温存の疑念―【私の論評】北の崩壊は、中国の崩壊も早める!ドラゴンスレイヤー(対中強硬派)達にとって最高のシナリオ(゚д゚)!

2015年6月7日日曜日

【日曜経済講座】ウォール街・中南海コネクション遮断へ オバマ政権の対中政策に変化 編集委員・田村秀男―【私の論評】厳格な三権分立で平時に極端に権力のないアメリカ大統領、米中はすぐにも戦争状態に入ったほうが良いかも(゚д゚)!

【日曜経済講座】ウォール街・中南海コネクション遮断へ オバマ政権の対中政策に変化 編集委員・田村秀男



北京に対して柔弱との評判がある米オバマ政権が「ウォール街・中南海(中国共産党中枢)コネクション」の遮断に向け、重い腰を上げた。

直接のきっかけは米司法省と証券取引委員会(SEC)が捜査中の米金融大手、JPモルガン・チェースに対する米海外腐敗行為防止法(FCPA)違反容疑事件だ。その捜査対象の筆頭に挙げられたのが王岐山・党中央常務委員(66)である。

王岐山・党中央常務委員
米ウォールストリート・ジャーナル電子版5月27日付によると、当局はモルガンに対し、王氏とやりとりしたすべての情報の提出を求めた。当局は4月下旬、中国側の“贈収賄高官”35人をリストアップした。

王氏に次いで高虎城・商務相、王氏の配下で党幹部不正捜査担当の公安部長、中国銀行副行長、中信集団など国有企業大手のトップも含まれる。高商務相の場合、商務次官当時の08年、モルガンに在籍していた息子・高●(=王へんに玉)氏の雇用継続を条件に、同社のために「一肌も二肌も脱ぐ」と申し出ていたという。

王氏の場合は自身に子はなく、周囲の党幹部の子弟の就職で米金融大手に「口利き」した嫌疑で、立証は困難だが、最重点ターゲットに仕立てた。

米政府の対外情宣メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の中国語版「美国之音」は5月29日付インターネット番組で、反体制派の在米中国人専門家4人を登場させ、習氏や王氏の不正蓄財取り締まりのいいかげんさを余すところなく語らせた。同放送は中国本土では禁止だが、自由に視聴できる海外の中国人社会で瞬く間に評判になった。王氏と習氏のメンツは丸つぶれである。

オバマ政権は図らずも、ワシントンとウォール街の政治・金融複合体と王氏に代表される北京とのパイプにメスを入れる形になった。オバマ政権は中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)問題を機に、膨張する中国の脅威にやっと立ち向かう気になり始めたのだろうか。単なる政治的駆け引きのゲームに終わらせてはならない。

習政権の対外膨張戦略とは、実のところ、ドルとウォール街によって支えられてきた。そのからくりはこうだ。

リーマン・ショック後の米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和政策開始後、巨額のドル資金が中国に流れ込んだ。中国人民銀行はその外貨を全面的に買い上げ、それを担保に人民元資金を発行する。人民銀行の人民元発行と外貨資産の膨張に合わせて軍拡を進める。この推移をグラフが物語る。

統計学の回帰分析をしてみると、ドル発行量と人民元発行量の相関係数は0.95、人民元発行に対する中国の軍事支出の相関係数は実に0.99である。相関係数は1の場合、完璧な連動を示すのだから、増発されてきたドルが人民元資金と中国軍拡の源泉になったともいえる。

スプラトリー(中国名・南沙)諸島を例にとると、中国の本格的な軍事基地建設は12年秋に習氏が党総書記に就任して以来である。サンゴ礁の砂地に巨大な構造物を構築するには高度な土木技術が必要だが、中国はカネにものを言わせて外国技術を導入した。

中国の外貨資産はもとより、ウォール街にとっては垂涎(すいぜん)の的である。資産運用で難なく巨額の手数料が金融大手に常時、転がり込む。

中国は今、不況だ。資金の対外流出が激しくなり、人民銀行の外貨資産が減り始めた。AIIBは、習政権が進める対外戦略に必要な巨額の資金を国際金融市場で調達するためのダミー機関である。

事態の重大さにやっと気付いたオバマ政権は、「まず隗(かい)より始めよ」とばかり、王・米金融大手ルートの撤去に取りかかった。ウォール街出身者が要職を占めるオバマ政権だけに、どこまでやるか、気にはなるが。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】厳格な三権分立で平時に極端に権力のないアメリカ大統領、米中はすぐにも戦争状態に入ったほうが良いかも(゚д゚)!

オバマ大統領の及び腰については、このブログでも過去に何度か掲載してきました。それについては、この記事の一番下の【関連記事】のところに掲載しておきますので、是非ご覧になってください。

さて、オバマ大統領に関しては、外交問題に関してはいつも及び腰で、それがより問題を複雑化させてきました。日本にも関連するものとしては、あの尖閣問題があります。

尖閣諸島付近で、日本の巡視船に体当たりした中国漁船

尖閣問題が大きくなりはじめたころに、オバマが「尖閣諸島は、日本固有の領土であり、日中間に現状では領土問題は存在しない」とはっきりと言明して、それに対する具体的な対抗措置などを打っていれば、尖閣問題はあれほど大きな問題にはなりませんでした。

中国側としては、尖閣諸島付近で中国が領海・領空侵犯を繰り返すのは、どの程度やれば、日米がどのような行動をとるのかそれを試すという意味もあります。繰り返し、示威行動をして見せて、それでも日米、それも米国がそれに対して何も手を打たないのであれば、さらに示威行動をエスカレートしていくというのが、中国のやり口です。

そうして、中国の本音は、軍事的には日米には到底太刀打ちできないため、このようなことを繰り返し、あわよくば日米両国に「中国は面倒だから、尖閣などくれてやれ」という世論が巻起こり、それでも日米両政府が何ら具体的な手を打たなければ、いずれ南シナ海のように、領有権を主張するという腹積もりです。

ただし、南シナ海の問題と尖閣問題の違いは、南シナ海の周辺諸国とは異なり、中国の人民解放軍の空・海軍は、米国は無論のこと、日本の自衛隊にすら対抗できないくらい軍事的能力しかないということです。

しかし、上の田村氏の記事でも理解できるように、スプラトリー(中国名・南沙)諸島をではのサンゴ礁の砂地に巨大な構造物を構築するには高度な土木技術が必要ですが、中国はカネにものを言わせて外国技術を買い取ったという前科があります。

このまま放置しておけば、軍事的にも高度な技術を他国から買い取って、尖閣列島諸国付近で、日米に対抗しうるような軍事技術を入手する可能性もなきにしにもあらずです。

ただし、こと軍事技術となると、その流出には日米はもとより、他国もその流出にはかなり神経を尖らせていて簡単に流出するものではありません。それは、中国のあの空母「遼寧」を見ていてもわかります。

中国の空母「遼寧」

ロシアから買い入れて改造し、鳴り物入りで登場させた空母「遼寧」は、南シナ海で試運転を一回しただけで、エンジン主軸が壊れて使い物にならなくなってしまった。中国の工業力では、空母を動かす二十数万馬力のエンジンを製造できません。

また、遼寧には日米では大東亜戦争当時から空母に標準的に配備されていた、航空機を発射し、短い距離で発鑑させるための蒸気カタパルトが装備されていません。そのため、遼寧には垂直離着陸のできる航空機しか搭載できません。

米空母から蒸気カタパルトで射出される戦闘機

だから、当面は中国はどうあがいても、日米に軍師的に勝つことはできません。しかし、ウォール街の中南海コネクションを放置しておけば、10年後、20年後はどうなるかは保証の限りではありません。だからこそ、オバマはこれを遮断する動きにでたと考えられます。

それにしても、他の歴代の大統領と比較して、オバマは確かにかなり及び腰なのですが、オバマが及び腰になざるを得ないアメリカの特殊事情もあります。アメリカは議会が承認して、戦争に突入した場合には、その戦争を遂行するために、大統領には強力な権限があります。

しかし、平時においては、極端に厳格な三権分立が障害となり、大統領にはほとんど権限がありません。それどころか、その結果として平時には司法が最も強力になるという歪な構造になっています。司法が強いというアメリカの特殊事情は、アメリカ映画などご覧になっていれば、いわゆる「司法取引」が頻繁に行われていて日本とは異なることでもお分かりになると思います。

これは、以下の図をご覧いただければ、良くお分かりになると思います。


アメリカは、完全な三権分立となっており、日本のように議会と内閣が協力関係にはありせん。これが、平時のアメリカ大統領の権限を極端に弱くしています。

これに関しては、さらに以下の動画を参照していただれれば、良くご理解いただけるものと思います。



軍事力では日米には到底かなわない、中国がどのようなことをして、海洋進出を可能にしようとするのか、それははっきりしています。軍事が駄目なら金融と、情報戦です。そうして、当然のことながら、米国に対しては、平時の大統領の権限の少なさを活用して、日本に対しては、いわゆる平和憲法を活用して、最大限に自分たちが有利になるように動き回っています。

その一環として、中国は金融においては増発されてきたドルが人民元資金と中国軍拡の源泉となるように、ウォール街に中南海コネクション築きあげてきました。日本に対しては、日銀が金融引き締めを政策を実施して、中国に有利になるように、働きかけてきました。

情報戦においては、多く人々が認知しているのは、いわゆる中国のサイバー攻撃です。また、中国の日米両国に仕掛けるハニートラップも多くの人が知っていると思います。

中国にある上海駐在の韓国領事館の3人の男性が同一の女性と交際していた
ことが報道されたことがある。これは完璧に中国のハニートラップである。

しかし、それだけではありません。日本に対しては、尖閣にでの示威運動も含めた、体系的組織的な反日活動があります。米国に関しては、オバマをはじめ、リベラル派に対する親中派転向政策です。

中国は、あらゆる方面で、日米両国に金融戦争、情報戦を仕掛けてきています。日本の安部総理は、アベノミクスの第一の矢である、金融緩和によって中国の金融に大打撃を与えました。

軍事面では、就任当初に掲げた安全保障のダイヤモンド構想を実現すべく、外交に力を入れ着実に成果をあげてきました。さらに、最近では、米国議会の演説で公言した安全保障法制関連法案の閣議決定をして、現在国会で審議中です。

安部総理の中国に対する金融戦争は、2013年から日本の金融緩和として実行され、現状では中国の金融は混乱状況が続いていて、大打撃を与えることに成功しました。

上に述べたように、安部総理は、対中国政策を着実に実行しつつありますが、米国はそうではありません。今頃になって、ようやっとアメリカの安全保障から見て当然のウォール街の中南海コネクション遮断をしようと動き出したというような有様です。

米国の中国対策はあまりにテンポが遅すぎです。それは、やはりオバマ優柔不断が大きく影響していると思います。それに、もともと平時ではアメリカ大統領の権限は小さいということもあります。

しかし、こんなことてば、アジアの平和と安定は中国の海外進出の野望により、脅かされるのは明らかです。そんなことは、米国も許すことはできないはずです。であれば、アメリカ議会は、中国と戦争する議決をするしかなくなります。そうすれば、中国に対して大統領はあらゆる手段を講じることができます。

中国海軍の女性水兵

そうなれば、軍事的に脆弱な中国はどうすることもできません。おそらく、すぐに戦闘能力がなくなり、国内では内乱がおこり、幾つかの国に分裂し、海洋進出どころではなくなるでしょう。これで、完璧現在の中国のとんでもない体制は破壊することができます。

しかし、そうなれば、中国側の被害は甚大となるでしょうが、米国側にもわずかながらも被害が出るのは明らかです。そんなことになる前に、アメリカ議会も司法当局も、たとえ大統領が及び腰であっても、中国への対抗措置ができるようにし、そうして日本のように着実に実行して欲しいものです。

そうして、アメリカ国民は、アジアにおける中国の海洋進出は、当然のこととして米国の利益を損なうものであるとの認識を持ち、次の大統領選挙でぱ"Yes, We can"等の掛け声に騙されることなく、まともな大統領を選出していただきたいものです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】



米国防長官が辞任 シリア政策で大統領と対立―【私の論評】レームダック化したオバマの振る舞いは危険ではあるが、アメリカ議会が超党派で動き出しているし、日本にとってはアジアでの存在感を高め「戦後体制から脱却」を推進する良いきっかけになると心得よ(゚д゚)!


【関連図書】
中国の野望を知っていただくための書籍をチョイスしました。

日本人なら知っておきたい 中国の侵略の歴史 (別冊宝島 2226)
黄文雄
宝島社 (2014-08-05)
売り上げランキング: 145,819

南シナ海 中国海洋覇権の野望
ロバート.D・カプラン
講談社
売り上げランキング: 34,812

なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか (PHP新書)
石 平
PHP研究所
売り上げランキング: 19,738

トランプ氏の「お客様至上主義」マーケティングから学べること―【私の論評】真の意味でのポピュリズムで成功した保守主義者の典型トランプ氏に学べ

トランプ氏の「お客様至上主義」マーケティングから学べること まとめ トランプ元大統領は、テレビタレントとしての経験を活かし、有権者のニーズを理解した明確なメッセージを発信している。 彼のマーケティング力とキャラクター演技力が、選挙戦での成功に寄与している。 対立候補陣営は、高額な...