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2019年7月3日水曜日

中国との競争に欠かせない米欧日協力―【私の論評】米国ができるのは、日欧と協力して中国経済の弱体化を早めること(゚д゚)!

中国との競争に欠かせない米欧日協力

米中2国間取引には限界がある

岡崎研究所

米中貿易戦争は、米中両国の報復関税のかけ合いとなっている。その影響は、米中両国のみならず、少なからず国際情勢に影響を及ぼしている。


 トランプ大統領は、貿易に関しては、中国のみならず、同盟国を含む他諸国にも関税をかけているか、かけようと脅している。鉄鋼・アルミニウムに関しては、日欧も例外ではなかったし、移民問題では、メキシコからの輸入に関税をかけるとした。

 そんな中、米国でも、トランプ政権は、中国と対峙して勝ちたいならば、欧州を味方に付けなければならないという論調が出て来た。例えば、6月12日付のニューヨーク・タイムズ紙に掲載された、バイデン元米国副大統領の補佐官を務めたジュリアンヌ・スミスの論説がそうである。筆者は、中国との競争に当たって、米国は同盟国と協調して対処すべきで、米欧の足並みを揃え、日本等に連携を拡大すべきだ等と主張している。米欧が結束して中国に当たるべきとの指摘は正にその通りだ。

 トランプ大統領は、中国と二国間で貿易取引しようとしているが、それには限界がある。欧州や日本などを含め有志連合を作って中国と交渉するほうが余程効果的だと思う。中国には頼るべき友好関係は余りない。圧力も集団の方が大きくなる。但し、今のような関税乱用のアプローチでは、なかなか連合も容易でないかもしれない。

 最近、欧州が経済、政治など中国のリスクに覚醒してきたことは、やや遅い感はあるが、歓迎すべきことである。2015年3月、英国が突如アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の構想にG7で初めて参加を決定し、直ちに、ドイツ、フランス及びイタリアがこれに追随したことは大きな驚きだった。英国のオズボーン財務相の決定は理解に苦しんだし、英国など欧州諸国の説得をしていた米国は当然不満を露わにした。すなわち、トランプ政権以前から、欧米の対中政策ギャップは存在していた。米国からの働きかけにもかかわらず、欧州は聴く耳を持たなかったと言うことである。日米両国とカナダは不参加を貫き、AIIBの外から、透明性の確保やプロジェクトの審査基準などについて、種々中国へ働きかけた。

 「一帯一路」構想についても、日米両国は慎重に対処し、受け入れ国の債務負担や環境の重視などを指摘した。その後、中国は若干変化したようにも見える。今年4月に開催された北京の会議で、習近平は、財政の持続性などを確保する、国際基準に則って進める、入札や資材調達の手法を見直すなどと言及した。

 米欧などの連携による対中政策について問題となるのは、依然として欧州である。欧州は英国のEU離脱問題やポピュリズムの台頭などで結束を欠いている。独仏などの中国観は現実的になってきたが、南欧や東欧のEU加盟国の対中姿勢は未だ問題である。例えば、イタリアは、今年、G7諸国の中で、初めて「一帯一路」プロジェクトの受け入れに署名した国となった。また、EU加盟国以外も含んだ東欧諸国と中国が「17+1会議」を開催している。今の欧州の状況は、依然注意を要する。

 中国に対する政策に関しては、日米欧の継続的な対話が重要である。中国に限らず、共通の関心事項について、議論する三極の首脳会議を考えても良いかもしれない。幸い日米関係は旨く運営されているが、日欧関係の強化にも努めていくことが重要である。

【私の論評】米国ができるのは、日欧と協力して中国経済を弱体化を早めること(゚д゚)!

トランプ政権は、覇権国として中国が米国を抜くことを甘受するつもりはありません。あらゆる手立てを講じて中国の台頭を遅らせ、中国に抜かれないようにし、中国に対抗し、中国を抑え込む意思を固めています。そうして、これはもうトランプ政権の姿勢ではなく、米国の意思になっています。

トランプ政権はもとより、議会も超党派で中国に対抗しようとしています。なぜここまで、対抗心を顕にするかといえば、まずは中国の台頭はかつてのソ連がそうだったように、技術の窃盗によるものだからです。ファーウエイの技術は確かに進んでいますが、5Gを含めて、通信技術などは元々米国が主導で開発されてきました。

そもそも、インターネットは米国が開発し、自由の象徴のようなインフラでした。ところが、中国は「サイバー主権」なる主張をして、インターネットを国家が人民を監視するものとしてつくりかえようとしています。そうして、ファーウェイは5Gを道具として、その尖兵の役割を果たそうとしていたのです。

河南省鄭州市で容疑者を顔認識で見分けられるサングラスをかけ、行き交う人々を見つめる警察官。
雲南省昆明市では同じ機能を持つ透明な眼鏡が採用されている

5G等の技術は、米国等が基礎を開発し、まさに時間と金をかけて、実用段階にもっていく直前に中国はこれを盗み、膨大な政府の補助金を投下して、世界に先駆けて実用化させようとしていたのです。中国のいわゆる最新テクノロジーとはほとんどがこのようなものです。これは米国としてはとても許容できないわけです。

さらに、中国と米国などの先進国の社会は全く異なるものです。一般には、全体主義と民主主義などということがいわれていますが、もつと詳しくいえば、中国は先進国とは異なり、民主化されておらず、政治と経済が分離されていないどころか、政府と経済はまさに表裏一体です。さらには、法治国家化もされていません。

中国と日米欧の価値観は全く異なるのです。もともと、人権などは欧米では白人だけのものとされてきましたが、日本が第二次世界大戦を戦ったことにより、世界中で植民地が独立して、人権などの観念は、白人だけのものではなくなりました。



現在の先進国と、中国とでは全く価値観が異なるのです。その中国が台頭すれれば、その価値観は世界に敷衍されていくことになります。新たな邪悪な世界秩序が出来上がりかねません。これも、米国とはじめとする先進国には耐え難いことです。

一方、中国は2050年に米国を抜いて世界一になる目論見を抱き、そのため技術大国を目指し、軍事力の増強しています。今のところ、この方向性に修正を加えている気配はありません。つまり米中関係の基本構図は、対立と緊張にあります。

しかし米中ともに世論ないし国内の雰囲気に強い影響を受けます。トランプ大統領にとり、次の大統領選挙への影響が最大の関心事であるように、習近平国家主席にとっても国内の安定が政権維持の前提条件です。特に、共産党内の覇権・派閥争いには、常に勝利をおさめ続けなければなりません。

中国には、選挙という民主的手続きがないため、中国共産党も、幹部自身も常に統治の正当性を主張し、それを確かなものにしなければなりません。そうでないと、正当性を失いすぐに滅びることになります。

米国政治には景気動向が世論に大きな影響を及ぼしますが、中国政治では経済動向に加え統治の正当性が影響力を持ちます。一方で、統治の正当性に気を遣いながら米国に毅然とした姿勢をとる必要があり、他方で経済にマイナスの影響が出ないように米国との妥協を考えなければならないのです。

統治の正当性を無視すれば政権基盤はすぐに弱体化し、経済がうまくいかなければ社会はすぐに不安定化します。

米中は、いやおうなしの現在の世界経済に完全に組み込まれてしまっており、しかも第1位と第2位の経済大国といわれています。簡単にぶつかり合って、それで終わりということにはなりません。現状では、貿易戦争の形をとっていますが、これは将来確実にかつての米ソ冷戦と同じように、米中冷戦の次元にまで高まります。

しかし、力関係は米国に有利です。交渉が米国優位に進むことも不可避です。現在の米中交渉は、中国がこれまでやってきた発展パターンの不可逆的修正を米国が求め、それに中国が抵抗する構図となっています。

しかし、昨年7月以来の制裁関税合戦は状況の変化を生み始めています。つまり当初、米国の制裁発動がどの程度の影響を及ぼすか確信が持てなかった中国当局は、その影響が現状では許容範囲にあることを見定めつつあるようです。

今回も民営企業の投資心理の冷え込みに気を配りつつ、政府の刺激策で乗り切ろうとするでしょう。そして農業、半導体、車といった分野で米国がさらに嫌がる対抗措置をとるでしょう。

トランプ大統領は、最後は中国からの輸入全てに関税をかけると脅しています。中国もそれに屈するわけにはいきません。いわゆるチキンゲームが続くということです。結局、それぞれの経済が受ける打撃の程度を判断しながら、どこかで落としどころを見つけることになるでしょう。

それには中国も譲歩するでしょうが、米国も譲歩せざるを得ないです。米国に不満が残ることになります。米国は再び新たな材料を見つけ出して中国たたきを続けることでしょう。次の段階では、金融制裁も発動するでしょう。米国は基軸通貨国であり、さらに世界の金融を支配しています。これには中国も対抗するのは不可能でしょう。

この米中の対立は経済・金融だけでは済まないでしょう。軍事安全保障面での対立はさらに強まり、グローバルガバナンス、つまり国際秩序の遵守、運営管理の問題にも及ぶでしょう。米中対立の構図は長期間続きます。ただし、この対立の構図は、米国が対中認識に修正を加え、中国が方向性を変えることによって、かなり穏やかなものになる可能性があります。

米国はそれを狙っているのかもしれません。米国は、中国がグローバルガバナンスの問題で、本当に実行するかどうかは別にして、現行の国際秩序を護持すると明言し、すでに修正し始めている点を正確に認識すべきなのかもしれません。米国が日欧と共同戦線を張ることさえできれば、基本はわれわれの望む国際秩序となると目論んでいるかもしれません。

米国側からみて、中国が方向性を修正すべきは、1つは経済であり、中国市場をより自由で公正なものとする方向で軌道修正することです。2つ目は、中国軍の問題です。今のままで軍拡を続ければ米国だけではなく近隣諸国とも衝突します。中国の安全保障戦略の方向性の修正が必要です。

ただし、これは言うは易し、行うは難しの典型のようなものです。おそらく、米国はこれを単独で中国に実行させることは不可能でしょうし、中国共産党もこれを受け入れるのは困難でしょう。

なぜなら、中国市場をより自由で公正なものとするのは、かなり困難だからです。これを実行するには、公共工事のように中国政府が人民に掛け声をかけ、大量の投資をすればできるというような生易しいことではないです。

かつての先進国が、長い時間をかけてときには流血もともなった革命や改革によってなしとげてきた、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を成し遂げなければならないからです。これができなければ、中国の市場だけが、米国などの他の先進国の都合の良いようにある日突然、自由で公正なものになるわけではありません。

実際これが非常に困難であることから、多くの国が中所得国の罠から逃れることができないのです。中所得国の罠には、無論例外もあることはありません。それは、日本とアルゼンチンです。


日本は、現在開発途上国から先進国になった唯一の国です。アルゼンチンは、現在先進国から開発途上国になった唯一の国です。日本は中所得国の罠から逃れ先進国になりました。アルゼンチンは、高所得の先進国から、中所得以下の発展途上国になりました。

他の発展途上の国々や、新興市場の国々はどうかというと、経済が従来よりも急速に発展しても、中所得国の罠から逃れられず、そこから一歩もあげれないか、元に戻ってしまっているのです。なぜ、そのようなことになるかといえば、やはり先進国を先進国にならしめている、民主化、政治と経済の分離、法治国家が困難だからです。

このような社会になっていなければ、中間層が自由に社会経済活動を行い、結果として富をを築くということはできないのです。

これを考えると、米国も中国に対して、中国市場を自由で公正なものにさせることは困難でしょう。そもそも、中国共産党自体がそれを実行しないでしょう。そのようなことをすれば、中国共産党自体が統治の正当性を失い崩壊することになります。中共として何が何でも、現在の体制を崩すことはないでしょう。

そうなると、トランプ政権ができるのは、中国経済を弱体化させて、経済的にも軍事的にも、無意味な存在にすることです。それは、米国単体でもできるかもしれませんが、やはり米欧日が協力したほうが、はやく実現することでしよう。

それにこの体制を築いておけば、他の先進国が中国にすり寄ることでもあれば、米国が厳しく制裁する措置をとることなどで、抜け道を塞ぐことができます。先進国のすり寄りがなければ、中共の体制崩壊もはやまります。中共崩壊後には、新生民主中国があらたに歩みだすときに、良いスタートを切ることができます。日本としては、米国等が過去に日本に対して実施したような一方的な軍事裁判や占領政策など明らかな国際法違反を未然に防ぐことができます。

目標としては、現在のロシアの次元にまで経済力を弱体化させることで良いでしょう。現在のロシアのGDPは韓国を若干下回る程度(韓国は東京都と同程度)です。無論ロシアは、ソ連の核と軍事技術を継承しており、侮ることはできませんが、それにしても世界に対する影響力には限界があります。米国に対抗して何かを実行するなどということはできません。ましてや、世界秩序をつくりかえることなどできません。これを本気実行すれば、米国に潰されるだけです。

ただし、経済の弱体化により、中共が崩壊した場合には、米欧日は新生民主中国の建国に協力すべきです。

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