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2020年5月10日日曜日

中国はWHOにコロナウイルス隠蔽の協力を求めた、と独情報機関が結論―【私の論評】コロナ禍を奇貨に日本は、侵略されかねない隣人がいることを前提として非常時の対策を練り直せ(゚д゚)!

中国はWHOにコロナウイルス隠蔽の協力を求めた、と独情報機関が結論

<引用元:デイリー・コーラー 2020.5.9

中国の習近平主席は自ら、コロナウイルス発生に関する重大情報の公開を遅らせるようWHOに求めた、とドイツ情報機関は結論付けた。

独シュピーゲル誌によると、習はWHOのテドロス事務局長と1月21日に面談し、ヒト・ヒト感染に関する情報を伏せ、世界的パンデミックの宣言を遅らせるよう求めた。中国はパンデミックに経済的な責任を負うべき、という意見が高まる中でのニュースだ。

1月21日に面談したWHOのテドロス事務局長(左)と、習近平

「BND(ドイツ連邦情報局)が下した裁決は厳しいものだ。ウイルスとの戦いにおける北京の情報政策において、6週間とまではいかなくても少なくとも4週間が失われたとしている」とシュピーゲルは報じた。

独情報機関による進展は、同様に中国のコロナウイルス対応を調査する米国政治家の注目を集めた。

「我々はまだこの報道の確認作業中だ。だがもし事実であると分かれば、テドロス事務局長が中国共産党の隠蔽で彼らと共謀したことを示す一層の証拠となり、WHOのトップには不適格ということになる」と、テキサス州の共和党下院議員で、下院中国タスクフォース委員長を務めるマイケル・マコールは本紙に語った。

BNDは連邦情報局を意味するドイツ語の頭文字だ。3月初めに発表されたある研究によると、4週間から6週間の追加準備期間があれば、世界的なパンデミックを完全に回避できた可能性がある。サウサンプトン大学の研究者は、中国がわずか3週間だけ早く行動を起こして情報を公表していれば、感染拡大を95パーセントは縮小できていたことを発見した。

米情報機関は同様に、中国が武漢や他の場所でのコロナウイルス発生において感染者数と死者数の両方を改ざんしたという結論を3月中旬までに出した。

中国政府の公式集計では、武漢での死者数をおよそ3,500人としているが、本当の数字は4万人であることを示す証拠がある

ドナルド・トランプ大統領の政権は、中国のパンデミック対応を痛烈に批判しており、「認識しながら」コロナウイルス拡大の一因となっていたことが分れば、処罰を受けるべきだとしている。

ホワイトハウスは本紙からのコメントの要求に直ちに回答しなかった。

【私の論評】コロナ禍を奇貨に日本は、侵略されかねない隣人がいることを前提として非常時の対策を練り直せ(゚д゚)!

1月21日の習近平とテドロスの面談については、当初から「習近平がコロナウイルス発生に関する重大情報の公開を遅らせるようWHOに求めた」のではないかという疑惑がありました。

今回は、BNDが実際そうであったと、結論付けたわけです。今後もこのような調査は、米国をはじめあらゆる世界の国々の情報機関が調査を継続し、同じような結論達すると考えられます。

そうなるとどうなるかといえば、WHOのような国際機関を中国が意のままに動かせることが明らかになったのですから、世界はグローバリズム一辺倒というか、グローバリズム=善という単純な考えは、間違いであり、ナショナリズム的な考え方が、強くなっていくことが予想できます。

「ナショナリズム」というものを定義することは、われわれの想像以上になかなか難しいことのようです。アーネスト・ゲルナーはナショナリズムを「実際のところ近代世界でしか優勢とならない特定の社会条件の下でのみ普及し支配的となる愛国主義」と述べています(『民族とナショナリズム』岩波書店)。エリ・ケドゥーリーは「ナショナリズムは19世紀初頭にヨーロッパで作り出された教義である」と述べました(『ナショナリズム』学文社)。

ナショナリズムとは何かということについては、「自分たち国民、民族を重視する考え」ということの他は、多くの議論があり、なかなかその本質をつかまえることはできないようです。

ナショナリズムは、自給自足が基本の農耕社会から、現代のような産業社会へと移行するうえで必然的に産まれたもの、と考えているのがゲルナーという人です。産業社会の進展は市場を広げ、閉鎖的な「むら」からできていた「くに」を、国民による1つの「国民国家」に変えていきました。

国家の産業を発展させるためには、文化、特に言語の統一が必要です。話し言葉がばらばらでは効率性はあがりませんからね。なかにはイギリスのようにわりと自然に統一されていった国もありましたが、日本のように「富国強兵」「殖産産業」をスローガンに、国家をあげて中央集権的な教育を行い、文化・言語の統一を行っていった国も少なくありませんでした。

こういうなかでナショナリズムが育まれていったというのがゲルナーの基本的な考えです。実際、ナショナリズムによって国民の団結、教育の発達が生まれ、産業化が進んだ例は、日本をはじめ多くの国であることでした。

『五箇条の御誓文』(明治元年3月14日に明治天皇が天地神明に誓約する形式で、公卿や諸侯などに
 示した明治政府の基本方針には、天皇を中心とする国民国家を目指すことが示されている

50年間で2度の世界大戦を経験した欧米諸国を中心に、現代世界の軸足はナショナリズムから、脱ナショナリズム、すなわち「トランス・ナショナリズム」へと移行しつつあるといわれました。

その象徴がEU(欧州連合)です。13の国で共通の通貨・ユーロが流通していますが、近代国家にとって通貨はネーションを象徴するものの1つだったはずです。そういった意味でEUはネーションを越えたトランス・ナショナリズム、あるいは「スープラ・ナショナリズム(超国家主義)」を体現しています。
しかし、この状況は変わりつつありました。イギリスのEU脱退や、米国でトランプ氏による「米国第一主義」の標榜などでした。そうして、現状では、コロナ感染がさらに、ナショナリズムに拍車をかけつつあります。

ここで、最近の興味深い記事を掲載させていただきます。その記事では、米国の戦略家、ルトワック氏が、新型コロナはいわば「真実を暴くウイルス」であり、EUが機能しないこと、イタリアの無秩序ぶり、中国は虚言の国であることも暴き白日の下にさらしたとしています。

ルトワック氏は、コロナ危機が「世界の真実」を暴いたとし、国際秩序は多国間枠組みの機能不全を受け、「国民国家の責任」が増す時代に回帰すると予言しています。その記事のリンクを以下に掲載します。

エドワード・ルトワック

【コロナ 知は語る】多国間協調が機能不全 国民国家の責任増す-エドワード・ルトワック氏 - 産経ニュース

2020.5.9
 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は第二次世界大戦以来の危機と形容される。世界はどこへ向かうのか。戦略論研究の世界的権威として知られる米歴史学者のエドワード・ルトワック氏は危機が「世界の真実」を暴いたとし、国際秩序は多国間枠組みの機能不全を受け、「国民国家の責任」が増す時代に回帰すると予言した。 
 --新型コロナが世界に与えた地政学上の影響は 
 「第一は、欧州における(政治的な流れの)断絶だ。欧州連合(EU)は欧州諸国間の戦争を予防するために設立されたが、EUが直面した初の戦争並みの不慮の事態である新型コロナへの対応に失敗した。共有された医療情報や共通の医療戦略は存在せず、被害の少ない国が被害の多い国を助けるなどの相互支援もあまりなかった」 
 「EUの連携した外交政策も皆無だった。例えばイタリアは中国からの支援を喜んで受け入れた。他方、ドイツやスウェーデン、オランダなど他の欧州諸国は中国の支援を拒絶した。融合を目指したEUは役割を見失った。今後は英国に続き、多くの加盟国が静かに脱退していくはずだ」 
 「米中関係は悪化の一途をたどり続けるという意味で一貫している。わずか十数年前、米国は『パンダ・ハガー』(媚中派)に席巻されていた。違っていたのは国防総省だけだ。風潮は変わりつつあるが、新型コロナが人々の対中意識の変化を加速させるだろう。誰もがウイルスが中国由来であり、中国当局が対応を誤ったことを知っているからだ」 
 --米中による「大国間競争」はどうなる 
 「トランプ米政権に有利に働くだろう。これは、米国の(自由民主主義的な)政治制度と中国を統治する(共産党独裁)体制とのせめぎ合いだが、中国の同盟国はパキスタンとイランの2カ国だけ。イタリアも中国に征服された。イタリアは歴史上、間違った側について、後から態度を変えることで有名だ」
 「一方、他の国々は中国に背を向け、米国に付いている。ラーブ英外相が4月16日、『対中関係を全面的に見直すべきだ』と語っているのが良い例だ。中国の習近平国家主席は、ウイルスなど全ての事態への対処には独裁制が適していると主張して強権手法を正当化する。さらには世界を率いる指導者になる用意があるとの立場を示すが、世界各地で拒絶されている」 
 --製造業のサプライチェーン(調達・供給網)への影響は 
 「日本政府は企業が中国の拠点を国内に回帰させるか、第三国に移転させるのを後押しする費用として総額2435憶円を緊急経済対策に盛り込んだ。他国の企業も、自国政府の支援の有無とは無関係に、中国との縁を完全に切りたい思惑から脱出を進めている。中国の実業界も同様だ。彼らは資産をニューヨークに移そうと血眼になっている」 
 --国際機関や多国間枠組みの役割はどうなる 
 新型コロナはいわば「真実を暴くウイルス」だ。EUが機能しないことを暴き、多数の死者を出したイタリアの無秩序ぶりを暴いた。中国は虚言の国であることも白日の下にさらした。日本については『日本は中国とは違うから安全』といった意識が間違っていたことを思い知らせた」 
 「新型コロナ危機を受けて起きているのは、グローバル化の揺り戻しとしての『脱グローバル化』だ。グローバル化は国際機関の台頭と連動してきた。EUや世界保健機関(WHO)などの機能不全が明白となったことで、世界はグローバル化や多国間枠組みから後退し、国民国家が責任をもって自国民を守る方向に回帰するだろう」 
<中略>

 「グローバル化が独裁制と親和性が高いのは、国際機関が非民主的だからでもある。EUとは選挙で選ばれた各国政府の権限を欧州委員会に移管するものだ。欧州中央銀行(ECB)の運営も非民主的だ。欧州諸国の民主体制が弱体化したのも、各国の権力が(EUという)非民主的な体制に移されたせいだ。グローバル化が民主主義に何ら寄与しなかった以上、脱グローバル化によって民主主義が損なわれることはない」(聞き手 ワシントン=黒瀬悦成)
中国の習近平国家主席は、ウイルスなど全ての事態への対処には独裁制が適していると主張して強権手法を正当化しました。さらには世界を率いる指導者になる用意があるとの立場を示したのですが、世界各地で拒絶されています。

日本でもマスクや医療用品、自動車部品、トイレなどの住宅建築用品などの中国への依存度の高さが露呈し、安全への危惧が高まり、脱中国・チャイナプラスワン、国内回帰が検討され始め政府の支援策も出されています。

いずれにせよ、これらの動きは、脱グローバル化、ナショナリズムへの回帰への前兆です。国民国家の安全保障は、国家存亡に関わる産業を支えるための最低限の製造供給能力を推し量って非常時への備えをすることから始まります。

ところが、日本では多くの財務官僚等のエリートや企業経営者の頭の中身が、この未曾有の惨禍でも未だに平時の思考のままです。コロナ禍で判ったことは、真の非常時には自国のみで生き抜いていくリソースと能力=技術力を平時から備える計画立案であることです。

産業界においては欧米風の「MBA」を崇めてその言説に囚われ、日経ビジネス電子版の「逆・タイムマシン経営論」で指摘されているような「トラップ」が我国の優位性をことごとく踏み潰してきました。

米国MBA卒のエリートらが80年代から盛んに主張し、必ず推奨したアウトソーシング戦略は、多くの大企業経営者が無思考的に採用してしまいました。エンロン問題で破綻したアーサー・アンダーセン(AA)は、自社生産は止めて外注への転換一点張りでした。自社の内製技術ノウハウ、サプライチェーン保全など、無視されました。

AAのにとっては、商品は中身の優劣ではなくマーケティングでしかありませんでした。BCP(事業継続計画=Business Continuity Plan)は生産を複数・多国にして凌げば良いという論理でした。

今回のコロナ禍で中国が露骨に示した西側諸国に対する「潰し戦略」はかなり前から行われていました。その一例としてマグネシウム産業をあげます。

マグネシウムは精錬に高度な技術を要するのですが軽量かつ他の金属の改質に重要な元素なので、航空宇宙を始めとした国防先端産業用部品から日常生活にわたり重要です。

日本マグネシウム協会(2017)まとめでは、マグネシウムインゴット生産の85%が中国、以下、米国6%、ロシア5%、イスラエル2%です。



1980年以前は日本を含めた西側諸国とソ連で生産されていたのですが、中国はコピペ工場で市場価格より30%安い価格、実質ダンピングで市場供給を開始しました。

当然、西側諸国メーカーは赤字になり淘汰されました。米露イスラエルは市場価格に見合わないにもかかわらず、国防上の理由から各1社ずつ保有しています。

我国ではマグネシウム合金を大量に製造しているのですが、インゴット95%と大量の合金を中国から輸入しています。この輸入品が無いと自動車も作れません。

更に、肥料に添加するマグネシウム塩類、食品加工用(例えばニガリ)、薬品、難燃剤など、マグネシウムは生活の隅々まで入り込んでいる元素です。

つまり、中国と対峙しようとすると、武器弾薬から豆腐カニカマに至るまで製造できなくなるのです。「マスクが足らない」どころの騒ぎでは済まないのです。戦う前から負けなのです。

コロナ禍以前から鳩山元総理大臣の様に中国と東アジア経済共同体を目指す人々が多数います。友好善隣は絶え間ない努力が必要であることは自明です。

しかし、首に縄をかけられた状態で対等の外交などありえないです。だから、彼らは矛盾しています。中国共産党との友好的関係を保ちたいなら、まず、国家の安全保障の足枷となる材料と技術のサプライチェーンの再構築を検討すべきなのです。

日経新聞を始めとする経済関係論議ではコロナ禍後の世界経済について種々意見が喧しくなってきました。多くは株価を議論しますが、平時の感覚でコロナ禍以前の世界秩序に戻ることを考えているようです。

しかし、株価ではなく本当の国家の足腰強さは重要物資を自前で供給できることに依存します。コロナ禍後に向けて小手先のBCP(事業継続計画)を体裁よく作るのではなく、前例踏襲を止めて、侵略されかねない隣人がいることを前提として非常時の対策を練り直すことが必要です。

以上はマグネシュウム産業についてですが、日本は自力でできるものまで、価格が安い等の理由だけで、中国に安易に依存している産業が他にも多くあります。これらについては、自国で生産するのか、あるいは信頼できる同盟国から輸入するかを検討すべきです。

現在の世界は、ナショナリズムが強まっていますが、一度グローバリズムの良さを知った世界は、完璧にナショナリズムにもどる ことはないと思います。同じルールで貿易ができる国々同士では、これからも自由貿易を続けていくでしょう。

ただし、先進国は従来のように安易にルールを守れそうもない体制の国々まで、同じルールで貿易をしようとする従来のグローバリズムに戻ることはないでしょう。

【関連記事】

2019年8月15日木曜日

「南北協力で日本に勝つ」文大統領の荒唐無稽な精神論に韓国紙ですら呆れ…「世界最悪の貧困国家・北朝鮮と協力して日本に追い付く?どんな魔法だ」 ―【私の論評】韓国民は、朴槿恵よりもはるかに始末におえない妄想大統領文在寅を放逐すべき(゚д゚)!


妄想に取り憑かれた文在寅韓国大統領

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、「北朝鮮との経済協力で平和経済が実現すれば、一気に日本の優位に追い付くことができる」と述べた。

 この発言は、韓国大統領府での会議において、日本による輸出管理見直しを批判した際に行われた。

 南北統一や南北経済協力は、文大統領の金看板で、これまで何度も繰り返されている。国難を自分の支持率向上に結びつけようとする戦略だろう。

 しかし、その実現性やロジックは荒唐無稽である。

 すでに韓国国内でも批判されている。朝鮮日報は社説で、北朝鮮は「技術も資源も市場もない世界最悪の貧困国家」なので、「低賃金労働力の利用以外に何ができるのか。そんな国と経済協力して世界最高の技術大国(日本)に一気に追い付くとはどんな魔法か」としている。

 これが世界の常識だ。1989年のベルリンの壁崩壊で、東西ドイツが統一されたが、旧東ドイツの支援のために旧西ドイツは長年負担にあえぎ、低成長を余儀なくされた。

 この苦境を救ったのは、99年にスタートした共通通貨ユーロだ。ユーロの導入によってドイツは、ユーロ域外に対し相対的に有利な為替レートとなるとともに、域内では為替変動がないため、ドイツ経済の競争力が他の欧州諸国に対して相対的に強化されることとなった。

 当時の旧東ドイツは社会主義国の中では優等生であり、今の北朝鮮よりはるかに経済は良かった。そして、欧州では長い期間かけて共通通貨の議論がなされていたことからユーロ創設に結びついたが、今のアジア圏で共通通貨の話はまったくない。東西ドイツの統合は恵まれた環境の中で行われたが、今の朝鮮半島をめぐる環境とはあまりに違いすぎる。

 経済的に考えてもあり得ないが、政治的にもまったく勘違いだ。北朝鮮を何よりも大切にする文大統領は、北朝鮮以外、何も見えていないのかもしれない。ただ、日本は輸出管理の強化についても、国連の制裁対象である北朝鮮への横流しを懸念しているとみられる。

 そうした状況で、韓国が北朝鮮との協力で乗り越えられるとは、悪いジョークにしか思えない。

 ここまで文大統領が北朝鮮優先の考えであると、北朝鮮の非核化に本気で取り組むとは思えない。前述したように、韓国がいくら北朝鮮と協力しても、日本経済には到底太刀打ちできない。

 しかし、軍事的には、北朝鮮を非核化せずに、そのまま核開発を続ければ、南北統一の暁には、核保有国となって、日本の脅威になるだろう。その脅威を使えば、軍事的に日本に勝てると考えているのかもしれない。

 文大統領の北朝鮮推しは、もともと左派思想によるものだが、経済的でなく軍事的な意味があるとすれば、北朝鮮を非核化せずに、そのまま核保有国にすることを意味しているのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】韓国民は、朴槿恵よりもはるかに始末におえない妄想大統領文在寅を放逐すべき(゚д゚)!

朴槿恵が大統領府を追われた2017年、大統領選挙を経て文在寅が新大統領に任命された。政権交代から1年後の2018年8月29日。ソウル市龍山区に「植民地歴史博物館」という施設がオープンしている。

この新たな反日活動の牙城となっている施設について、韓国メディア配下のように報道しています。

植民地歴史博物館

「植民地歴史博物館は民族問題研究所という市民団体が中心となって設立されました。この民族問題研究所は韓国の左派政権と関係が深く、盧武鉉政権時代には多額の国費補助を受けたとされ、現在の文在寅政権と深いつながりがある。植民地歴史博物館の設立にも現政権のバックアップがあったと囁かれています」

植民地歴史博物館の紹介文にはこうあります。
日本帝国主義による侵奪の歴史と、それに加担した親日派の行為、輝かしい抗日闘争の歴史を記録し、展示する韓国初の日帝強占期専門歴史博物館です。
同館がオープンした同年8月29日は韓国では「庚戌国恥日(キョンスルククチイル)」として知られた日です。1910年に「韓国併合に関する条約」が発効した日が8月29日であり、韓国民の国辱の記憶を呼び起こす日が開館日には選ばれたのです。

民族問題研究所は、現在問題となっている徴用工裁判を支援している団体として知られ、博物館と同じビルには民族問題研究所の事務所も入居しています。

この植民地歴史博物館が現政権下でオープンしたことには深い意味がありました。

文在寅は大統領就任後、事ある毎に植民地時代の独立運動を日本が弾圧した問題を指弾しており、「親日残滓(ざんし)の清算はあまりに長く先送りされた宿題だ」との主張を繰り返しています。こうした言説が、先に紹介した植民地歴史博物館の趣旨と合致する思想であることは言うまでもありません。

館内を散策すると「親日派人名辞典」のコーナーが目に飛び込んできます。親日派人名辞典は盧武鉉政権政権時代に編纂されたもので、日本統治時代に親日活動を行った人物の名簿を発表したものです。

親日派辞典には朴正熙元韓国大統領をはじめとした多くの韓国保守派や著名人の名前が掲載されています。これは親日派のレッテルを貼り社会的に糾弾対象とする魔女狩り活動で、呆れたことに中学、高校にも広く配布されました。ソウル市で問題になっていた戦犯企業ステッカーにも繋がる“日本ヘイト”活動の原点ともなった運動でした。



ちなみに、戦犯企業ステッカーとは、韓国で、戦争犯罪を起こした日本企業の製品にステッカーを貼ろうとの動きです。条例案は、地元の小中学校や高校で使われている備品のうち、約2万円を超えるものに義務化していました。しかし、結局この条例は成立しませんでした。

盧武鉉政権が時代錯誤とも思える親日派人名辞典を重要視したのは、当時、人気を集めつつあった朴槿恵の存在があったことが理由とされています。朴槿恵の父親である朴正熙を親日派と糾弾することで政敵達の人気を削ごうと狙ったのです。つまり政権保持のための策略として、親日派人名辞典は作成されたのです。

盧武鉉とは弁護士時代の同僚で、盧武鉉政権では大統領秘書室長を務めた文在寅もその意図を受け継いでいるであろうことは容易に想像がつきます。

そうして朴槿恵の失墜後、文在寅は再び“親日派狩り”を行おうと、「親日残滓の清算はあまりに長く先送りされた宿題だ」という言説を繰り返すようになったのです。

「共に民主党は、今後100年政権を担うとの構想を口にしています。そのために“親日派狩り”を行うことで保守派の殲滅と、今も国内に残る根強い朴正熙支援者への牽制を行おうとしているのです。つまり政敵潰しでしかない。反日のスローガンは民族主義的な意味にも聞こえますが、その本音は極めて打算的な意図を持った政治運動なのです。

文政権になってから歴史問題、いわゆる慰安婦問題や徴用工問題が再燃しました。文大統領は2015年の日韓合意によって慰安婦問題を解決するために設立された「和解・癒やし財団」の解散を発表。不可逆的に解決されたはずの慰安婦問題を蒸し返しました。また、日本企業への財産差し押さえまで行われた徴用工裁判についても、文政権は「政府は関与しない」という声明を発表しています。

徴用工裁判等国民は勿論のこと、メディアの誰も関心がなかった問題でした。それが文在寅政権に交代した途端いきなり動き始めました。これは文大統領が北朝鮮と繋がっている証左であり、文大統領は本気で南北統一を目指しているとも受け取れます。

なぜかといえば、こうした一連の動きが意味することは、文政権は歴史問題を“解決させない”という明確な意志を持っているとか考えられず、それはなぜかと考えれば、自ずと理解できます。

韓国内の一部からは「38度線を対馬海峡に移動せよ」という言論が出るほど、文政権になってから反日思想は過激化しています。こうした背景には北朝鮮の存在があることは間違いないでしょう。

一昨年、11月19日にソウル市内で挺対協が北朝鮮の慰安婦問題専門家を招いてシンポジウムを開きました。そこで「南北が協力して慰安婦問題で共闘しよう」という言葉が出たといわれています。

挺対協とは韓国挺身隊問題対策協議会(現・日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)のことで、慰安婦問題を支援する市民団体です。代表の尹美香(ユン・ミヒャン)は、和解・癒やし財団が元慰安婦に対して償い金の支給活動を始めるにあたっても、元慰安婦を集めて、「日本のお金を受け取ってはいけない」と圧力をかけたと言ったとされるほど生粋の反日活動家として知られています。

尹代表は、近親者に北朝鮮の内通者がいるという疑いもある人物だけに、彼女の「慰安婦問題で北と共闘する」という言葉に、韓国内のメディアにも危機感が広がっているようです。しかし、韓国メディアでは反日活動を批判することはタブーなのです。それだけに、批判の声は表に出づらいようです。

挺対協や民族問題研究所といった市民団体は、左派政権である文政権の支持母体でもあるのです。左派政権、反日活動、北朝鮮というキーワードから見えてくるものがある。彼らが一様に歴史問題の解決を妨げようとしているのは、北朝鮮との南北統一までの時間稼ぎをしている可能性が高いです。

現在、韓国経済は失速気味です。そうしたなかで、南北統一のコストを抱えきれるのかという不安が常に付きまといます。そうしたなかで文政権が日韓関係を犠牲にしてまで反日活動を行うのは、戦後補償問題を再び日本側に突きつけようとしている思惑があるように思えます。統一の暁には、北朝鮮は元慰安婦、徴用工の補償問題を持ち出すでしょう。

韓国政府は戦後補償の旨味を体験的に知っています。1965年、日韓基本条約で日本政府から無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドル(当時のレートで約1800億円)を韓国政府は得て、それを原資として“漢江の奇跡”と評された経済成長を遂げました。“頭の中の八割は北朝鮮で占められている”と評される文大統領が統一プランを練っていないはずはないです。

文政権が執拗に反日や歴史問題に拘る理由も、そこにあるのではないかという分析もあります。要は日本を金ヅルにしたい、という思惑を感じさせます。 

この戦後補償金を現在の価値に置き換える計算を以下に掲載します。
・(円換算)3億ドル×360円(当時1ドル=360円)=1080億ドル
・(物価換算)1080億円×10(当時の大卒初任給が約2万円)=1兆800億円
日本は、現在の価値で置き換えると、2兆円近くの戦後補償金を支払っているのです。これは、当時の韓国の国家予算の2倍にものぼる金額です。

韓国の全国経済人連合会(全経連)は2010年、北朝鮮との南北統一には約3500兆ウォン(約250兆円)が必要になるとの見方を示していました。

北朝鮮が戦後補償問題を持ち出してきたとき、パンドラの箱は開かれることになるかもしれません。戦後70年以上経過した現在、北朝鮮の慰安婦問題、徴用工問題、その実態を正確に語れる証言者や物証はほとんどないといわれています。つまり北朝鮮側の言い値による補償となる公算が大きいです。おそらく、200兆円はくだらないのではないかと思われます。

文政権が掲げる反日思想。その本質は自らの「権力」と「金」を得るためのための所業でしかないのです。

しかし、これは文在寅の妄想に過ぎません。そもそも、日韓基本条約が締結され、日本が韓国に多額の戦後補償金を支払ったときには、朝鮮戦争からまだあまり時を経ておらず、韓国は反共の砦として、北朝鮮に対峙していて、この状況は変わらないとみなされていました。

さらに、米国としても韓国の経済が発展すれば、米国も韓国内に兵站を展開でき軍事的に有利になると考えており、この戦後補償には肯定的だったはずです。

しかし、現在は状況が違います。南北統一があくまでも、韓国の北朝鮮併合という形ですすめられるなら、日本が統一朝鮮を支援するということ考えられますが、どうもそうはなりそうもありません。

それに、文在寅がすっかり忘れていることがあります。それは、韓国以外の国々は、日米・中露そうして、北朝鮮も朝鮮戦争後の状況の現状維持を望んているということです。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載しますので詳細はそちらをご覧になってください。
日・ロ・中・朝から袋叩きの韓国 米韓同盟の終焉を周辺国は見透かした―【私の論評】周辺国の本音も理解せず、舞い上がったピエロのような文在虎はこれからも叩き続けられる(゚д゚)!
最近北朝鮮から発射された短距離弾道ミサイル
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、とにかく周辺国は朝鮮半島の現状維持を望んでおり、南北を統一しようなどと本気で考えているのは文在寅だけです。

金正恩は、南北統一などすれば、チュチェ思想とは無縁で、金王朝を尊敬することのない大量の韓国人が北朝鮮にも大量に入ってくることになるので、統一など望んでいません。

ただ、制裁逃れをしたいので、文在寅に良い顔をして見せていただけです。それにすっかり、文在寅はまい上がってしまったのです。

最近の北朝鮮による短距離弾道ミサイルの発射に関して、トランプ大統領は寛容であることに多くのマスコミや識者は驚いていますが、それはこの記事にも書いたように、北朝鮮およびその核が、結果として中国の朝鮮半島への浸透を防いでいるからです。

北の核ミサイルは、日米にとってだけ脅威というわけでなく、国境を接している中国やロシアにとっても脅威なのです。特に中国にとっては脅威です。中朝国境は、中国の火薬庫になりかねないといわれるほど不安定な、東北部だからです。

中国東北部が不穏な動きを見せた場合、当然のことながら、中国政府はこの地域に軍を覇権することでしょう。その軍を北は短距離弾道弾で攻撃することができます。

この状況は米国にとっては決して悪い状況ではありません。最悪の状況は、朝鮮半島全体が中国の覇権の及ぶ地域になることです。

現状を冷静に見回してみれば、韓国が軍事的に弱くなったとしても、北朝鮮が中国の朝鮮半島全体への浸透を防いでいる状況は変わらないでしょう。さらに、北朝鮮は中国の干渉を極度に嫌っています。

この状況を理解していれば、文在寅の「南北統一」や、「南北協力で日本に勝つ」などは妄想に過ぎないことがわかります。

金正恩も南北統一により、日本から莫大な戦後補償金を得るなどということは到底不可能であると考えていることでしょう。もしそれが可能だと考えているなら、今でも文在寅に良い顔をしていたことでしょう。

妄想にとりつかれた文在寅は最悪の事態を招きかねません。それは、このブログにも最近掲載した通り、在韓米軍撤退に伴う、韓国経済の焦土化です。

韓国民は、朴槿恵よりもはるかに始末におえない妄想大統領文在寅を放逐すべきです。

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2019年7月3日水曜日

中国との競争に欠かせない米欧日協力―【私の論評】米国ができるのは、日欧と協力して中国経済の弱体化を早めること(゚д゚)!

中国との競争に欠かせない米欧日協力

米中2国間取引には限界がある

岡崎研究所

米中貿易戦争は、米中両国の報復関税のかけ合いとなっている。その影響は、米中両国のみならず、少なからず国際情勢に影響を及ぼしている。


 トランプ大統領は、貿易に関しては、中国のみならず、同盟国を含む他諸国にも関税をかけているか、かけようと脅している。鉄鋼・アルミニウムに関しては、日欧も例外ではなかったし、移民問題では、メキシコからの輸入に関税をかけるとした。

 そんな中、米国でも、トランプ政権は、中国と対峙して勝ちたいならば、欧州を味方に付けなければならないという論調が出て来た。例えば、6月12日付のニューヨーク・タイムズ紙に掲載された、バイデン元米国副大統領の補佐官を務めたジュリアンヌ・スミスの論説がそうである。筆者は、中国との競争に当たって、米国は同盟国と協調して対処すべきで、米欧の足並みを揃え、日本等に連携を拡大すべきだ等と主張している。米欧が結束して中国に当たるべきとの指摘は正にその通りだ。

 トランプ大統領は、中国と二国間で貿易取引しようとしているが、それには限界がある。欧州や日本などを含め有志連合を作って中国と交渉するほうが余程効果的だと思う。中国には頼るべき友好関係は余りない。圧力も集団の方が大きくなる。但し、今のような関税乱用のアプローチでは、なかなか連合も容易でないかもしれない。

 最近、欧州が経済、政治など中国のリスクに覚醒してきたことは、やや遅い感はあるが、歓迎すべきことである。2015年3月、英国が突如アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の構想にG7で初めて参加を決定し、直ちに、ドイツ、フランス及びイタリアがこれに追随したことは大きな驚きだった。英国のオズボーン財務相の決定は理解に苦しんだし、英国など欧州諸国の説得をしていた米国は当然不満を露わにした。すなわち、トランプ政権以前から、欧米の対中政策ギャップは存在していた。米国からの働きかけにもかかわらず、欧州は聴く耳を持たなかったと言うことである。日米両国とカナダは不参加を貫き、AIIBの外から、透明性の確保やプロジェクトの審査基準などについて、種々中国へ働きかけた。

 「一帯一路」構想についても、日米両国は慎重に対処し、受け入れ国の債務負担や環境の重視などを指摘した。その後、中国は若干変化したようにも見える。今年4月に開催された北京の会議で、習近平は、財政の持続性などを確保する、国際基準に則って進める、入札や資材調達の手法を見直すなどと言及した。

 米欧などの連携による対中政策について問題となるのは、依然として欧州である。欧州は英国のEU離脱問題やポピュリズムの台頭などで結束を欠いている。独仏などの中国観は現実的になってきたが、南欧や東欧のEU加盟国の対中姿勢は未だ問題である。例えば、イタリアは、今年、G7諸国の中で、初めて「一帯一路」プロジェクトの受け入れに署名した国となった。また、EU加盟国以外も含んだ東欧諸国と中国が「17+1会議」を開催している。今の欧州の状況は、依然注意を要する。

 中国に対する政策に関しては、日米欧の継続的な対話が重要である。中国に限らず、共通の関心事項について、議論する三極の首脳会議を考えても良いかもしれない。幸い日米関係は旨く運営されているが、日欧関係の強化にも努めていくことが重要である。

【私の論評】米国ができるのは、日欧と協力して中国経済を弱体化を早めること(゚д゚)!

トランプ政権は、覇権国として中国が米国を抜くことを甘受するつもりはありません。あらゆる手立てを講じて中国の台頭を遅らせ、中国に抜かれないようにし、中国に対抗し、中国を抑え込む意思を固めています。そうして、これはもうトランプ政権の姿勢ではなく、米国の意思になっています。

トランプ政権はもとより、議会も超党派で中国に対抗しようとしています。なぜここまで、対抗心を顕にするかといえば、まずは中国の台頭はかつてのソ連がそうだったように、技術の窃盗によるものだからです。ファーウエイの技術は確かに進んでいますが、5Gを含めて、通信技術などは元々米国が主導で開発されてきました。

そもそも、インターネットは米国が開発し、自由の象徴のようなインフラでした。ところが、中国は「サイバー主権」なる主張をして、インターネットを国家が人民を監視するものとしてつくりかえようとしています。そうして、ファーウェイは5Gを道具として、その尖兵の役割を果たそうとしていたのです。

河南省鄭州市で容疑者を顔認識で見分けられるサングラスをかけ、行き交う人々を見つめる警察官。
雲南省昆明市では同じ機能を持つ透明な眼鏡が採用されている

5G等の技術は、米国等が基礎を開発し、まさに時間と金をかけて、実用段階にもっていく直前に中国はこれを盗み、膨大な政府の補助金を投下して、世界に先駆けて実用化させようとしていたのです。中国のいわゆる最新テクノロジーとはほとんどがこのようなものです。これは米国としてはとても許容できないわけです。

さらに、中国と米国などの先進国の社会は全く異なるものです。一般には、全体主義と民主主義などということがいわれていますが、もつと詳しくいえば、中国は先進国とは異なり、民主化されておらず、政治と経済が分離されていないどころか、政府と経済はまさに表裏一体です。さらには、法治国家化もされていません。

中国と日米欧の価値観は全く異なるのです。もともと、人権などは欧米では白人だけのものとされてきましたが、日本が第二次世界大戦を戦ったことにより、世界中で植民地が独立して、人権などの観念は、白人だけのものではなくなりました。



現在の先進国と、中国とでは全く価値観が異なるのです。その中国が台頭すれれば、その価値観は世界に敷衍されていくことになります。新たな邪悪な世界秩序が出来上がりかねません。これも、米国とはじめとする先進国には耐え難いことです。

一方、中国は2050年に米国を抜いて世界一になる目論見を抱き、そのため技術大国を目指し、軍事力の増強しています。今のところ、この方向性に修正を加えている気配はありません。つまり米中関係の基本構図は、対立と緊張にあります。

しかし米中ともに世論ないし国内の雰囲気に強い影響を受けます。トランプ大統領にとり、次の大統領選挙への影響が最大の関心事であるように、習近平国家主席にとっても国内の安定が政権維持の前提条件です。特に、共産党内の覇権・派閥争いには、常に勝利をおさめ続けなければなりません。

中国には、選挙という民主的手続きがないため、中国共産党も、幹部自身も常に統治の正当性を主張し、それを確かなものにしなければなりません。そうでないと、正当性を失いすぐに滅びることになります。

米国政治には景気動向が世論に大きな影響を及ぼしますが、中国政治では経済動向に加え統治の正当性が影響力を持ちます。一方で、統治の正当性に気を遣いながら米国に毅然とした姿勢をとる必要があり、他方で経済にマイナスの影響が出ないように米国との妥協を考えなければならないのです。

統治の正当性を無視すれば政権基盤はすぐに弱体化し、経済がうまくいかなければ社会はすぐに不安定化します。

米中は、いやおうなしの現在の世界経済に完全に組み込まれてしまっており、しかも第1位と第2位の経済大国といわれています。簡単にぶつかり合って、それで終わりということにはなりません。現状では、貿易戦争の形をとっていますが、これは将来確実にかつての米ソ冷戦と同じように、米中冷戦の次元にまで高まります。

しかし、力関係は米国に有利です。交渉が米国優位に進むことも不可避です。現在の米中交渉は、中国がこれまでやってきた発展パターンの不可逆的修正を米国が求め、それに中国が抵抗する構図となっています。

しかし、昨年7月以来の制裁関税合戦は状況の変化を生み始めています。つまり当初、米国の制裁発動がどの程度の影響を及ぼすか確信が持てなかった中国当局は、その影響が現状では許容範囲にあることを見定めつつあるようです。

今回も民営企業の投資心理の冷え込みに気を配りつつ、政府の刺激策で乗り切ろうとするでしょう。そして農業、半導体、車といった分野で米国がさらに嫌がる対抗措置をとるでしょう。

トランプ大統領は、最後は中国からの輸入全てに関税をかけると脅しています。中国もそれに屈するわけにはいきません。いわゆるチキンゲームが続くということです。結局、それぞれの経済が受ける打撃の程度を判断しながら、どこかで落としどころを見つけることになるでしょう。

それには中国も譲歩するでしょうが、米国も譲歩せざるを得ないです。米国に不満が残ることになります。米国は再び新たな材料を見つけ出して中国たたきを続けることでしょう。次の段階では、金融制裁も発動するでしょう。米国は基軸通貨国であり、さらに世界の金融を支配しています。これには中国も対抗するのは不可能でしょう。

この米中の対立は経済・金融だけでは済まないでしょう。軍事安全保障面での対立はさらに強まり、グローバルガバナンス、つまり国際秩序の遵守、運営管理の問題にも及ぶでしょう。米中対立の構図は長期間続きます。ただし、この対立の構図は、米国が対中認識に修正を加え、中国が方向性を変えることによって、かなり穏やかなものになる可能性があります。

米国はそれを狙っているのかもしれません。米国は、中国がグローバルガバナンスの問題で、本当に実行するかどうかは別にして、現行の国際秩序を護持すると明言し、すでに修正し始めている点を正確に認識すべきなのかもしれません。米国が日欧と共同戦線を張ることさえできれば、基本はわれわれの望む国際秩序となると目論んでいるかもしれません。

米国側からみて、中国が方向性を修正すべきは、1つは経済であり、中国市場をより自由で公正なものとする方向で軌道修正することです。2つ目は、中国軍の問題です。今のままで軍拡を続ければ米国だけではなく近隣諸国とも衝突します。中国の安全保障戦略の方向性の修正が必要です。

ただし、これは言うは易し、行うは難しの典型のようなものです。おそらく、米国はこれを単独で中国に実行させることは不可能でしょうし、中国共産党もこれを受け入れるのは困難でしょう。

なぜなら、中国市場をより自由で公正なものとするのは、かなり困難だからです。これを実行するには、公共工事のように中国政府が人民に掛け声をかけ、大量の投資をすればできるというような生易しいことではないです。

かつての先進国が、長い時間をかけてときには流血もともなった革命や改革によってなしとげてきた、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を成し遂げなければならないからです。これができなければ、中国の市場だけが、米国などの他の先進国の都合の良いようにある日突然、自由で公正なものになるわけではありません。

実際これが非常に困難であることから、多くの国が中所得国の罠から逃れることができないのです。中所得国の罠には、無論例外もあることはありません。それは、日本とアルゼンチンです。


日本は、現在開発途上国から先進国になった唯一の国です。アルゼンチンは、現在先進国から開発途上国になった唯一の国です。日本は中所得国の罠から逃れ先進国になりました。アルゼンチンは、高所得の先進国から、中所得以下の発展途上国になりました。

他の発展途上の国々や、新興市場の国々はどうかというと、経済が従来よりも急速に発展しても、中所得国の罠から逃れられず、そこから一歩もあげれないか、元に戻ってしまっているのです。なぜ、そのようなことになるかといえば、やはり先進国を先進国にならしめている、民主化、政治と経済の分離、法治国家が困難だからです。

このような社会になっていなければ、中間層が自由に社会経済活動を行い、結果として富をを築くということはできないのです。

これを考えると、米国も中国に対して、中国市場を自由で公正なものにさせることは困難でしょう。そもそも、中国共産党自体がそれを実行しないでしょう。そのようなことをすれば、中国共産党自体が統治の正当性を失い崩壊することになります。中共として何が何でも、現在の体制を崩すことはないでしょう。

そうなると、トランプ政権ができるのは、中国経済を弱体化させて、経済的にも軍事的にも、無意味な存在にすることです。それは、米国単体でもできるかもしれませんが、やはり米欧日が協力したほうが、はやく実現することでしよう。

それにこの体制を築いておけば、他の先進国が中国にすり寄ることでもあれば、米国が厳しく制裁する措置をとることなどで、抜け道を塞ぐことができます。先進国のすり寄りがなければ、中共の体制崩壊もはやまります。中共崩壊後には、新生民主中国があらたに歩みだすときに、良いスタートを切ることができます。日本としては、米国等が過去に日本に対して実施したような一方的な軍事裁判や占領政策など明らかな国際法違反を未然に防ぐことができます。

目標としては、現在のロシアの次元にまで経済力を弱体化させることで良いでしょう。現在のロシアのGDPは韓国を若干下回る程度(韓国は東京都と同程度)です。無論ロシアは、ソ連の核と軍事技術を継承しており、侮ることはできませんが、それにしても世界に対する影響力には限界があります。米国に対抗して何かを実行するなどということはできません。ましてや、世界秩序をつくりかえることなどできません。これを本気実行すれば、米国に潰されるだけです。

ただし、経済の弱体化により、中共が崩壊した場合には、米欧日は新生民主中国の建国に協力すべきです。

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2019年3月25日月曜日

安倍首相、中国の一帯一路協力に4つの条件 「全面賛成ではない」―【私の論評】日本には中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどの潜在能力がある(゚д゚)!

安倍首相、中国の一帯一路協力に4つの条件 「全面賛成ではない」

参院予算委員会で答弁を行う安倍晋三首相。右は麻生太郎副総理兼財務相、
左奥は根本匠厚生労働相=25日午後

 安倍晋三首相は25日の参院予算委員会で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に日本が協力するには、適正融資による対象国の財政健全性やプロジェクトの開放性、透明性、経済性の4条件を満たす必要があるとの認識を示した。「(4条件を)取り入れているのであれば、協力していこうということだ。全面的に賛成ではない」と述べた。

 一帯一路では、対象国に対する中国の過剰融資が国際的に問題視されている。首相は「(対象国に)経済力以上に貸し込むと、その国の経済の健全性が失われてしまう」と指摘。

 首相は「アジアのインフラ需要に日本と中国が協力して応えていくことは両国の経済発展にとどまらず、アジアの人々の反映に大きく貢献をしていくことになる。(4条件)をやっていくことで、お互いより良い地域を作っていこうということだ」と語った。

【私の論評】日本には中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどの潜在能力がある(゚д゚)!

安倍総理が、条件づきで一帯一路への協力の可能性を述べたのは、何も今に始まったことではありません。以前から何度か述べています。

たとえば2017年都内で行われた国際交流会議の席上、安倍総理は中国の経済構想「一帯一路」に初めて協力の意向を表明しています。これを受け一部メディアはあたかも日本が中国に屈したかのように報じるなど、「中国の優位性」が強調され始めました。

安倍首相は同年6月5日に国際交流会議「アジアの未来」の夕食会で講演し、中国の経済圏構想「一帯一路」について、「(同構想が)国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合し、地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことを期待する。日本は、こうした観点からの協力をしたい」と述べました。

新聞各紙は、初めて安倍首相が「一帯一路」への協力を口にしたということをポイントとして強調しています。これだけ見ると、いよいよ日本も「一帯一路」に参加するかのような印象を与えました。

当時は、米国のTPP離脱で窮した安倍政権が、「一帯一路」に尻尾を振り始めたと見る向きもありました。しかし、その後日本は自らTPPの旗振り役となり、米国を除いた11カ国で昨年末に発効しています。

ただし、産経新聞は「安倍晋三首相、中国の『一帯一路』協力に透明性、公正性などが『条件』」という見出しで、中国が支援する国の返済能力を度外視して、インフラ整備のために巨費を投じることが問題化しつつあることを踏まえた発言だという内容となっています。むしろ中国を牽制する狙いがあるという論調です。私もそう思います。

本日の安倍総理による4条件①対象国の財政健全性、②プロジェクトの開放性、③透明性、④経済性も同じことであり、これは中国を牽制する狙いをより明確にしたものです。

中国が対外インフラ投資を利用して他国の土地を支配していることについては、このブログにも掲載したことがあります。


スリランカのコロンボにあるハンバントタ港は、中国からの融資でインフラ開発されましたが、6%を超える高利であるためスリランカ側の返済の目処がたたず、このハンバントタ港を中国企業に99年間貸与するという、「事実上の売却」に迫られました。

中国が主導するAIIBについては、これまでも麻生副総理をはじめとして、日本は透明性と公正性が重要だということを強調してきました。本日の安倍首相の発言も、「一帯一路」について、従来の政府の立場を踏襲したにすぎません。

よく語られるように、「一帯一路」と「AIIB」は中国が日米経済連携に対抗し、覇権を確立するための世界戦略です。しかし、中国中心の発想であり、自国のゾンビ企業の過剰生産と軍事拠点づくり、発展途上国の財政圧迫、そして資金不足で頓挫するプロジェクトが絶えないなど、さまざまな問題点が指摘されています。

最終的には日米主導の世界銀行やアジア開発銀行からの資金的協力が不可欠であり、外資頼りだった「改革開放」路線の延長としての「他力本願」であることは一目瞭然です。

同年5月14、15日に北京で開催された「一帯一路」国際会議では、米国が代表団を送り、安倍首相も二階俊博幹事長を特使として派遣して習近平主席に親書を渡しました。これに対して、人民日報は同年6月4日、「中日改善改善に日本は具体的行動を」という記事を掲載し、日中関係を改善したいなら、具体的な政策と行動を示せと、かなり上から目線で「命じて」いました。

記事では、文部科学省が「銃剣道」を中学「学習指導要領」に入れたことや、台湾と日本の交流窓口の名称を「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」に変更したことなどを挙げて、「日本は歴史問題で小細工を繰り返している」などと批判していました。

さらに、「日本は東中国海で緊張をつくり、南中国海問題に干渉し、朝鮮半島情勢を刺激してエスカレートさせている。こうした行動の背後には中国と主権・権益を争う私利があり、改憲・軍拡につなげる魂胆もある。中国は、地域の安全における消極的要素になってはならないと日本に警告する」とまで論じていました。東シナ海も南シナ海も、日本が緊張をもたらしているのだから、挑発をやめろと言ったわけです。

要するに、「一帯一路」に入りたいなら中国の言うことを聞け、ということをかなりあからさまに要求してきていたのです。これだけでも「一帯一路」に参加することは、日本の国益を犠牲にしなくてはならないことだということがわかりました。

ほとんど実績のない習近平

しかし、よく観察してみると、総書記になってから現在に至るまで、習近平にたいした実績はありません。経済成長率は年々減少していますし、南シナ海問題では米国に「航行の自由」作戦を行われてしまいました。ハーグの常設仲裁裁判所には中国が主張する南シナ海の領有権について「根拠なし」と言われてしまいました。

台湾では蔡英文政権が誕生してしまうし、北朝鮮も言うことを聞かないし、AIIBの起債も単独起債は未だ数件しかありません。

腐敗追及運動だけは、周永康を逮捕するなど進展がありましたが、中国官僚は誰もが腐敗していますから、逆に習近平への憎しみが増加しただけです。経済成長の衰退から人民解放軍を再編して兵力削減を目指していますが、同年2月には、退役軍人が反腐敗運動の拠点である北京の党中央規律検査委員会の前で、待遇改善を求めて大規模デモを起こしました。

しかも肝煎りの「一帯一路」にしてもインドは自国に敵対的と見ており、モディ首相は中国からの「一帯一路」国際会議への招待を拒否しました。おまけに代表団を送った北朝鮮は開幕日に弾道ミサイルを発射して、習近平の面子を潰しました。

ロシアは一帯一路で中国から欧州までを結ぶインフラ建設のルートがほとんどロシアを通っていないことに不満を高めています。

要するに、習近平の実績はゼロなのです。

当時、安倍首相から条件付きでも一帯一路についての「協力」の言葉がもらえたとなれば、習近平にとっては国内にアピールする良いチャンスだったはずです。もちろん中国は内外に向けて、「東夷が天朝の恵みを求めてきた」という尊大なポーズを取っていますが、習近平にとってはありがたかったでしょう。少なくとも北戴河、そして共産党大会までは、日本と対立して余計な波風を立たずにすみました。

しかも、習近平は次の2018年の共産党大会で、中国憲法を変更したうえで、終身主席となったのです。

もちろん、中国の権力闘争は複雑怪奇ですから、日本の反発心を高めて習近平の実績をゼロにしようと動く勢力もいます。最初からゼロならば問題にならないことでも、いちどプラスに持ち上げておいて、そこからゼロに転じれば、それは汚点となります。

そういう意味で、習近平は安倍首相の対中発言や動向に神経を尖らせているはずです。日中関係は、これまでも胡耀邦総書記が失脚する原因の一つとなったり、あるいは天安門事件に対する国際的制裁解除のキーポイントとなってきました。

日本人が考える以上に、中国にとって日本の存在は大きく、他国との関係以上の特別なものがあります。

最近は中国政府の規制で全く行われなくなった反日デモ

中国人はよく「小日本」などといって、ことさら日本の存在の小ささをアピールしますが、そのわりには無視するのではなく、わざわざ「5・4運動記念日」「7・7抗日戦争記念日」「抗日戦勝記念日」「柳条湖事件記念日」「南京大虐殺追悼日」など、かつての日本と関連する記念日を数多く作っています。

26ある記念日の約5分の1が日本関連であり、「マルクス」「レーニン」に関する記念日より多く、中国が意識する外国としては、他の追随を許しません。それほど日本を意識しているということなのです。

つまり、中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどのポテンシャルが日本にあるわけです。安倍総理が「一帯一路に協力する気は全くない」と表明すれば、習近平は窮地に追い込まれるでしょう。一方、安倍総理が「一帯一路に積極的に関与していく」と表明し、本当に実行すれば、これは習近平大きな実績となり、習近平の立場は盤石となります。

ただし、習近平が失脚したとしても、現状の中国は何も変わらず、日本にとって良いこともないでしょう。だから、安倍総理は様子見で、従来の主張を繰り返してみせただけなのです。しかし、これは無論、ここぞというときに外交カードとして使えます。

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2019年2月6日水曜日

南シナ海問題はもはやグローバルな問題である ―【私の論評】COCの前にASEANは域内での軍事経済的結束を強め、域外の国々の協力も仰ぐべき(゚д゚)!

南シナ海問題はもはやグローバルな問題である

岡崎研究所

1月17、18日にタイのチェンマイでASEAN外相会議が開催され、ミャンマーのロヒンギャ問題、南シナ海問題などが話し合われた。ここでは、南シナ海問題を取り上げる。18日に発出された議長報道声明のうち、南シナ海に関する部分は次の通り。

東南アジア

 我々は、南シナ海における、平和、安全、安定、航行と上空飛行の自由を維持・促進することの重要性を再確認し、南シナ海を平和、安定、繁栄の海とすることの利益を認識した。我々は、2002年の「南シナ海行動宣言(DOC)」が完全かつ実効的な形で実施されることの重要性を強調した。我々は、ASEANと中国との継続的な協力強化を歓迎するとともに、相互に合意したタイムラインに沿って実効性のある「南シナ海行動規範(COC)」の早期策定に向けた中身のある交渉が進展していることに勇気づけられた。我々は、ASEAN加盟国と中国が単一のCOC交渉草案に合意していることに留意し、2018年11月にシンガポールにおける第21回ASEAN首脳会議で発表された通り、2019年中に草案の第一読会を終えることを期待する。この点に関して、我々は、COCの交渉に資する環境を維持する必要性を強調した。我々は、緊張、事故、誤解、誤算のリスクを軽減する具体的措置を歓迎する。我々は、相互の信用と信頼を高めるため、信頼醸成と予防的措置が重要であることを、強調した。

 我々は、南シナ海に関する問題を議論し、地域における埋め立てへの一部の懸念に留意した。我々は、相互の信用と信頼を高め、自制して行動し、事態を複雑化させる行動を避け、国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法に沿って紛争を平和的に解決することの必要性を再確認した。我々は、全ての領有権主張国、あらゆるその他の国による全ての行動において、非軍事と自制が重要であることを強調した。

出典:‘Press Statement by the Chairman of the ASEAN Foreign Ministers’ Retreat’(17-18 January 2019)

南シナ海をめぐっては、2017年11月にフィリピンが議長国を務めたASEAN首脳会議の際に「懸念」の文言が削除されたが、シンガポールが議長国となった昨年に同文言が復活し、タイが議長国を務める今年も維持された。今回の外相会議では、ベトナムとマレーシアが南シナ海への懸念を表明したと報じられている。ベトナムは一貫して対中強硬姿勢を維持してきた国であり、マレーシアは昨年マハティールが首相に復帰して以来、前政権の対中傾斜を大きく強く軌道修正している。「懸念」の文言は、中国による南シナ海の軍事化の加速の前では無力と言わざるを得ないが、こうした国々が、南シナ海問題をめぐりASEANの中でどれだけ声を上げていくのか、行動を示していくのか、今後とも注目される。

 COCについては、早期策定に向けた具体的な日程が示された。声明では「相互に合意したタイムライン」とあるが、中国の李克強首相は昨年11月のASEAN首脳会議に際する関連会議で2021年までに妥結したいと表明している。今回の議長を務めたタイのドン外相は記者会見で、早期妥結が可能である旨、述べている。2021年よりも早く妥結もあり得るという話もある。

 しかし、ASEANと中国との間で昨年8月に合意されたとされるCOC草案は公表されていない。法的拘束力を持たないものになるのではないかとも言われている。中国は軍事活動通告のメカニズムも提案している。域外国と合同軍事演習を実施する場合、関係国に事前通告しなければならず、反対があれば実施できない、という内容である。例えば、ASEAN加盟国が米国と合同演習をしようとしても、中国が反対すれば、実施できないことになる。仮に、こういう内容のCOCになってしまっては、かえって有害と言えるかもしれない。

 南シナ海問題は、もはや地域の問題ではなくグローバルな問題である。航行と上空飛行の自由を確保するための主要各国の取り組みが重要であり、実際に、そのようになってきている。米豪だけでなく英仏など欧州の国も「航行の自由作戦」(あるいはそれに準ずる行動)を実施し始めた。英国のウィリアムソン国防相は、最近、シンガポールあるいはブルネイに基地を置くことについて言及した。南シナ海における英国のプレゼンスを維持するため、補給・維持修理の要員と補給艦を配備するということのようである。また、フランスも、インド太平洋の海洋秩序維持のため、日本との協力を進めつつある。

【私の論評】COCの前にASEANは域内での軍事経済的結束を強め、域外の国々の協力も仰ぐべき(゚д゚)!

まずは、COCについて簡単に説明しておきます。南シナ海の領有権問題をめぐって、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は紛争を予防するための仕組みとして南シナ海行動規範(COC)の策定を進めています。

2002年にASEANと中国が南シナ海行動宣言(DOC the Declaration on the Conduct)に合意したが、実効性を書きました。このため法的拘束力を持つ「行動規範(COC)」の策定を目指すことになりました。

13年のASEAN拡大国防相会議から4年越しの交渉の末、17年8月の中国・ASEAN外相会議で枠組み合意し、具体的な条文の策定への協議を開始することになりました。しかし、法的拘束力の有無さえ明確にしない骨抜きの内容で、策定交渉が長引き、結局は中国が軍事拠点化を進めるための時間稼ぎに使われてしまいました。

実際この間にも中国は、実効支配している南沙諸島の岩礁や暗礁を埋め立てて人工島の建設を進めており(→「スプラトリー諸島(南沙諸島)の人工島」)、埋め立て面積は16年5月までに13平方キロ以上になりました。

中国により軍事基地化された南シナ海の環礁

16年末までに各島に対空砲や地対空ミサイル等の防空システムを配備、主要な島には3000メートル級の滑走路や大型船が寄港できる港湾施設、通信・偵察システムなども整備して軍事拠点化を進めています。

このような過去の経緯を考えると、COCに期待はできないです。中途半端なことはせずに、現状のまましばらく放置するのがASEAN諸国にとっても得策であると考えます。

とはいいながら、中国を相手にASEAN諸国が一致強力し、様々な要求をつきつけたり批判していくというのはやぶさかではないです。

なお、南シナ海の中国の軍事基地に関しては、多くの人々がどの程度のものか理解していません。これに関しては、産経新聞のインタビューで米国の戦略化ルトワック氏が答えています。その記事の内容を以下に掲載します。
「米中冷戦は中国が負ける」 米歴史学者ルトワック氏

ルトワック氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に南シナ海に関連する部分のみ引用します。
 一方、中国が南シナ海の軍事拠点化を進めている問題に関しては、トランプ政権が積極的に推進する「航行の自由」作戦で「中国による主権の主張は全面否定された。中国は面目をつぶされた」と強調。中国の軍事拠点については「無防備な前哨基地にすぎず、軍事衝突になれば5分で吹き飛ばせる。象徴的価値しかない」と指摘した。

 ルトワック氏はまた、中国の覇権的台頭を受けて2008年以降、米国と日本、オーストラリア、ベトナム、インドなどの国々が「自然発生的かつ必然的な『同盟』を形成するに至った」と指摘。これらの国々を総合すれば人口、経済力、技術力で中国を上回っており、「中国の封じ込めは難しくない」とした。 
 ルトワック氏はさらに、これらの国々が中国に対抗するための能力向上を図る必要があると指摘。日本としては例えばインドネシアの群島防衛のために飛行艇を提供したり、モンゴルに装甲戦闘車を供与するなど、「同盟」諸国の防衛力強化のために武器を積極的に輸出すべきだと提言した。
ルトワック氏が語るように、南シナ海の中国の軍事基地は、米国にとっては「無防備な前哨基地にすぎず、軍事衝突になれば5分で吹き飛ばせる。象徴的価値しかない」のです。

さらにASEAN諸国が結束すれば、人口、経済力、技術力で中国を上回っており、「中国の封じ込めは難しくない」としています。

であれば、ASEAN諸国が何をすべきか、自ずと浮かび上がってきます。中国を含めたCOCというよりは、まずはASEAN諸国の結束をはかり、域内を防衛するための軍事協定を結ぶとともに、域内の経済の活性化を図ることです。できれば、共通の軍隊を持つべきです。

さらに、南シナ海問題は、もはや地域の問題ではなくグローバルな問題なのですから、ASEAN諸国だけではなく、日米豪や英国なども含めて、軍事的にも経済的にも他国にも協力を仰ぎ、この地域で中国を囲い込むとともに、徹底して動きを封じ込めることです。

なお、この地域では、米・英・豪などに対しては、警戒心や恨みの感情がのこつています。このあたりは、日本が大きな橋わたしをすることができるでしょう。

昨年東アジアサミット前に、記念撮影する安倍首相(右端)ら

今後の課題は、COCプロセスをどの程度速やかに進める事ができるかという事、さらにはこの新たな文書にどれほど権利主張諸国の行為を抑制する効果があるかという事です。

まずは、こうした中国封じ込め政策をASEAN域内と域外の国々よって実行し、現在米国が挑んでいる対中国冷戦の趨勢を見守ることです。

そうして、中国の体制が変わって、民主化、政治と経済の分離、法治国家がある程度なさるか、あるいは中国が経済的に疲弊し、他国に対する影響力を失った時には、本気でCOCを考えるべきです。

南シナ海の長期的な平和と安定にとって重要なことは、COCが実効性を獲得し、これによって確実に関係国が自制を働かせ、信頼醸成措置を促進させて、配慮が不要な領域での協力活動を実施する事です。

COCを実効力あるものとするには、DOCの欠陥やDOCの実施を遅らせてきたいくつかの要因を克服しなければなりません。

実行的なCOCができた暁には、南シナ海の中国の軍事基地を排除すべきでしょう。できれば、中国に実施させるべきでしょう。中国ができないというなら、COCの内容を中国にとってかなり厳しいものとして、2度と南シナ海等に進出しないように因果を含めた上で、ASEANならびに友好国がこれを担うべきです。

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2014年1月11日土曜日

細川氏、小泉氏の協力頼み 猪瀬氏より決定的な“過去”も 都知事選 ―【私の論評】細川氏は立候補してもほとんど当選する見込みはない!これは、選挙妨害でもなんでもなく事実だ!やるんならまともなNPOでも設立しみろ(゚д゚)!

細川氏、小泉氏の協力頼み 猪瀬氏より決定的な“過去”も 都知事選 
細川元首相が提出していた「領収証」。
誰かの「借用証」とよく似た簡素さだ。
東京都知事選(1月23日告示、2月9日投開票)で、細川護煕元首相(75)が出馬を模索している。「脱原発」で一致する小泉純一郎元首相(71)と来週前半にも会談し、最終決断するという。ただ、細川氏は75歳という高齢に加え、猪瀬直樹前都知事と同様、金銭スキャンダルで職場を放棄した弱点を抱えている。出馬すれば再燃は避けられない。

「真面目にどうするか考え始めた。(出馬は)半々だ。数日後には結論が出ると思う」

細川氏の妻の佳代子さんは9日、夫の都知事選対応について、取材にこう答えた。関係者によると、細川氏周辺は、都内に選挙事務所用の物件を確保するなど、準備を進めているという。

最終決断のカギは、小泉氏の全面支援が得られるかどうかだ。細川氏と小泉氏は昨年10月、会談した。小泉氏は新党結成には「あり得ない」と否定的だったが、都知事選で“元首相連合”を構築し、街頭演説などでアピールできれば、「勝算がある」(細川氏周辺)と分析している。

小泉氏が「細川氏支援」を打ち出せば、生活の党の小沢一郎代表(71)も賛同し、「脱原発」を掲げて出馬表明している宇都宮健児・日弁連前会長(67)=共産、社民推薦=との一本化が進むとみられる。

ただ、細川氏には決定的な弱点がある。

まず、75歳という高齢だ。次の都知事は、2020年東京五輪を成功させる使命があるが、細川氏は五輪開催時には日本人男性の平均寿命(79・59歳=厚労省2013年発表)を超える82歳だ。

加えて、金銭問題で首相を辞めた過去がある。細川氏が1994年4月、たった8カ月で政権を投げ出したのは、東京佐川急便からの1億円借り入れ問題やNTT株購入疑惑を追及され、野党やマスコミの証人喚問要求が過熱していた最中。

細川氏は辞任直前、国会に1億円を返済したとする資料を提出したが、「発行社(者)も判も押してない領収証」や「大晦日の12月31日に利息を払ったとする貸付金台帳」などズサン極まるものだった。医療グループ「徳洲会」側から5000万円を借りたとして、猪瀬前都知事が辞任直前に公開した不可解な「借用証」とまさに重なる。

自民党幹部は「徳洲会はダメだが、東京佐川急便はいいのか。金額や疑惑だらけの資料など、猪瀬氏より悪質な部分もある」といい、細川氏が出馬した場合、徹底追及する準備を始めた。

【私の論評】細川氏は立候補してもほとんど当選する見込みはない!これは、選挙妨害でもなんでもなく事実だ!やるんならまともなNPOでも設立しみろ(゚д゚)!

上の記事など読んていると、細川さんは、立候補すべきではないということが理解できます。立候補して、小泉元首相の支援を受けたとしても、とても当選はおぼつきません。特に、原発ゼロなどを争点としたとしても、全く無駄です。小泉さんや、細川さん、ならびに細川さんを支持する人々は、あまりに忘れっぽいのではないでしょうか。

そうです、昨年の参議院議員選挙で、原発を争点にしようとした動きがあれだあったにもかかわらず、結局争点にはなりませんでした。いまさら、原発を争点にしても、同じことになる確率がかなり高いです。

なぜ争点にならかったかは、明らかです、左翼系やそれに先導された山本太郎のような馬鹿ものどもを中心に原発反対運動はそれなりにかなり高まったようにみえました。メディアもこれを大々的に報道しました。しかし、現実はどうだったかといえば、結局原発はほとんど争点にはならず、自民党の大勝利でした。選挙結果だけからみれば、本当にかすりもしませんでした。

なぜ、原発は争点にならなかったのでしょうか。それは、原発問題が明らかになったときには、事情を飲み込めないまま、多くの人が原発は廃止すべきと考えたりしたのが、時がたつにつれて、様々な情報がはいってきて、確かに原発は危険には違いないですが、今更原発を全部廃炉にしてしまっても、絶対安全かといえばそんなことはなく、さらには、原発を完璧にやめてしまえば、電気量を大幅に上げざるを得ないことが明らかになってきたらです。

さらに、ドイツでは、風力・電力発電が喧伝されていたものの、結局は電気料金が従来の倍になっていことなどのことが明らかにされたからです。

また、原発安全神話のいびつさも、明らかになったからです。3.11の震災が発生する前までは、原発は何が何で安全であるとされるどころか、その安全性に関して、神経症ではないかと思われるほど、何が何でも安全で一部の隙もないような言われ方をされてきました。

そんな状況のとき、原発に関して「もしも」と言い出す人がいると、「原発は絶対安全なのではないか!もしもなどということは、安全ではないということか!」と批判されて、言い出せないような雰囲気すらありました。しかし、震災以来それがもろくも崩れたため、「もしも」という内容のことにも、誰かが言い出し、それに対して対処をするということができるようになってきました。実際、最近の改修後の原発には、たとえば、10数メートルの津波にも耐えられる防潮堤を構築したとか、それでも、その防潮堤を超えて津波が押し寄せたと仮定して、さらに安全措置を講ずるなどのことが行なわれています。

このことについて、マスコミは報道しませんが、良く調べてみると、随分と改善がはかられつつあります。今やどんな産業においても、電気は欠くことができず、このまますぐに原発を全部廃炉にすれば、とんでもないことになることが明らかになっています。そのことを参院戦の前あたりから、多くの国民が理解するようになりました。マスコミがいくら煽っても、どのような産業でもリーダー的な立場にいる人であれば、すぐに原発廃止ということになれば、とんでもないということになることが理解されるようになりました。

これは、政治の世界でも、産業界でも同じことです。今では、リーダー的立場よりももっと低い立場の人も理解しつつあります。どこまでも原発反対と野放図に叫ぶ人は、マスコミの一部と、左翼的立場の人などに限定されるようになりました。今や、デフレに対処するために、コスト削減に勤しむ多くの職場では、原発を即廃止にしたらどのようなことがおこるか、具体的に想起されるような雰囲気になっています。普通のまともな職場で、大声で「原発即廃止」などといえるような雰囲気ではないはずです。野放図に言える人は、余程空気を読めないか、全く責任のない人くらいなものです。

それから、小泉さん原発廃止論に関しては、背景がありますが、それについてはこのブログでも紹介したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
小泉氏「反原発」発言の背後にある「組織」―【私の論評】最低30年くらいは原発は止められないことはわかっている!次世代エネルギーの先鞭をつけることは意義深いこと!しかし小泉氏はこれに先鞭をつけられない!それは、次世代の消費者が決めること(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、あくまでも私の憶測ではありますが、憶測とはいってもかなり現実に近いものと思われる、小泉氏が原発廃止などを言い出す背景など掲載しました。それに関係する部分のみを以下にコピペさせていただきます。
小泉氏は、いずれ次世代エネルギーの時代は間違いなく来るものとして、これに日本が先鞭をつけるべきであり、そのために、余生を捧げようと考えているのだと思います。 
しかし、バイオエタノールの教訓をみてもわかるように、あるいは、過去の化石燃料である石炭から、石油への転換が行なわれた歴史をみてみれば、小泉氏はエネルギー転換に先鞭を付けらる人にはなり得ません。 
小泉氏と、その背後の組織が次世代エネルギーへの先鞭をつけらるということを信じるに足る、エビデンスはありません。もし、頭の良い人間が、設計してエネルギー転換を計画的に実現できるというのなら、共産主義も成功しているはずです。しかし、共産主義による設計主義は、全くの間違いであったことが今日明らかになっています。 
とにかく、小泉氏は、一大ムーブメントを起こそうとしているようですが、それは現状では無理です。それは、過去の歴史が厳然としてそれが不可能であることを実証しています。 
エネルギーだけではなく、世界で大成功を収めている産業はすべて、共産主義のように、頭の良い人や、組織が計画して実現したものは一つもなく、様々な民間企業が、互いに他社を出し抜こうといろいろ研究していて、最初がどの企業のものが成功するのかどうか全くわからず、しばらくやっているうちに、結局どれが一番かということが消費者が継続的に購入することが明らかになり、そうなった時にはじめて、その産業が成り立つことがわかり、その産業が勃興することになります。 
そうして、過去の化石燃料の中でも、最初は石炭エネルギーなどが使われていて、石油エネルギーへ転換したときの事を考えていただきたいと思います。特に、移動の手段としての、車の普及にともない、石油エネルギーが一番の座を占めていきました。しかし、それでも他の化石燃料などもまだ、用いられていましたが、車の普及により、石油が手に入りやすくなると、それが暖房などにも一般に用いられ、さらに消費量が増え、今や何からなにまで石油ということになりました。 
これは、私たちも、その一部を実際に見てきた変化です。石炭などが、石油に転換するにも、最初から現在までの道のりをたどれば、軽く30年以上はたっています。 
これから、次世代エネルギーに転換していくには、過去の歴史のように、原発、石油、その他がいろいろ使われ、いずれどれかが、長い時間をかけて、消費者に選ばれ続けるようになり、転換していくものと思います。30年以上もかかるということであれば、とても小泉氏などが今の時点で先鞭をつけるなど、夢物語であり、とても無理です。この動き、いずれ時がたてば、多くの人に忘れ去られると思います。
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数年前に開発していたという。民間企業ですら、このような間違いがある。
ましてや、政府やシンクタンクのような組織がいくら頑張っても次世代産業
やエネルギーを開発することはできない。
石油メジャーなども、いくら小泉氏をもちあげたとしても、日本に4兆円も毎年石油代金をさらに支払わせるなど、なかなかできるものではありません。やはり、消費者が選ぶエネルギーが一番です。しばらくは、現在原発に反対している人でも、今すぐ廃炉にしても、安全性は確保されないことなどを理解すれば、原発も使用するということになると思います。 
それに、30年もすれば、危険な核融合ではなく、核分裂による比較的安全な核エネルギーを使用できる条件が整うかもしれません。これ以外も、かなり多くのエネルギー源が見つかっている可能性も大です。 
今から50年前の、世界の大都市で最大の問題は、馬糞の処理でした。そのようなものは、今日では、全く問題ではありません。30年後以降の世界を今と同じように考えれば、そこに誤謬が生まれます。 
小泉氏はもとより、私たちもそのような誤謬にとらわれるべきではありません。小泉氏がこれからできることといえば、次世代エネルギーの開発に先鞭をつけることではなく、現在使用中や、使用済みの核燃料の安全で合理的な処分方法の開発です。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
小泉氏は、また前のように小泉劇場などをつくりだし、うまくやれば、細川氏を知事にすることも可能で、そうなれば、自らが次世代エネルギーに先鞭をつけた人間として、名を残せると思っているのかもしれませんが、それは無理です。

それにしても、小泉氏や、細川氏や鳩山氏など、いつまでも政治の世界に未練があるとみえます。私は、こういう人たちに提案したいことがあります。小泉氏はどうかは、わからないですが、細川氏も、鳩山氏も、随分お金持ちだと思います。であれば、NPOでもおこして、本格的な社会事業にでも取り組み、本当の意味で、人のため世のために役立つことをすべきではないでしょうか。

日本は、西欧諸国に比較すると、本当の意味でのNPOはまだまだ遅れています。NPOというと、日本では、まだまだ奇特な人が、手弁当で行う奇特な事業という位置づけです。しかし、欧米ではそのような考えはありません。立派な社会の一セクターという捉え方です。

優秀な人間が、多く目指すセクターでもあります。アメリカでは、国家予算と同じくらいの予算がNPOに割り当てられています。イギリスでは、ブレア首相の時代に、NPOのイギリスの福祉における立場が法律的にはっきり定められました。

とにかく、日本と比較するとかなり充実しています。アメリカなどでは、随分前から、貧困層の住宅を提供し続けてきました。それも、住宅を提供するだけでなく、職業訓練も含めた包括パッケージとして提供して成功してきました。アメリカのNPOなど、NPOの構成員として、銀行や、大手建設会社が入ってりして、本当に本格的に実施しています。サブプラム・ローンの問題があったときも、成功しており、このような分野に民間企業である、投資銀行が参入してももうまくはいかないことを実証した形になりました。アメリカのデトロイトのような都市では、都市計画のすべてをNPOが実施しています。役所は、それを管理監督するだけです。

このように欧米では、NPOが大規模な活動をしているのに、日本ではできない理由があります。それは、税制です。欧米では、NPOに寄付するとかなり控除がありますが、日本ではそうはなっていません。だから、寄付する人も少ないです。どうして、そうなっているかといえば、財務省が財務の公平性という立場から、そのようなことをさせないからです。しかし、NPOへの寄付による税の控除は、イギリスなどでもごく一般的に行なわれてることから、屁理屈にすぎないです。

一般の人が、お金を税として収めないで、寄付をするようになれば、その分財務省の配賦額が減ることになり、省益が損なわれるという考えなのだと思います。

このような体質を変えるためにも、たとえば、お金のある細川さんや、鳩山さんが、NPOを起こして、何か有意義な社会事業を行い、それも、ある程度は利益がでるものを運用してみせて、それに少しの政府の補助金でもつけば、かなりのことができるということを実証してみせるようなことをやってみればなどと思ったりします。

しかし、このようなこと、ある程度の商売の才覚がないと、いかにNPOといってもできません。特に、マーケティングというか、実際に社会に生きている人の切実な問題を感じ取り、それを解消する事業としなければならず、これは、とても細川さんや、鳩山さんなどにできることではないのだと思います。

鳩山さんは、民主党にいたときには、新しい公共などということを語っていたので、多少期待したこともあったのですが、所詮、ブロ市民的な新しい公共に過ぎず、欧米型のものとは根本的に考え方が違ったようです。

日本と異なる欧米型の、NPOなど以前はこのブログにも良く掲載したものですが、とくかく、日本はデフレなので、今はデフレ解消が最優先課題ということで、最近はあまり掲載しなくなりました。

それにしても、細川氏や、鳩山氏などこそ、本当は欧米型の大規模な、実際に低所得者住宅をたくさんたてて、それだけではなく、本当にそこに低所得者を住まわせ、職業訓練もするというような、ものを起こしほしいです。

そうすれば、デフレから日本が脱出できた頃に、格好のモデルができあがっていて、日本の社会にも取り入れられやすくなっているかもしれません。そうして、そのほうが、日本の社会、日本の政治にも変革をもたらせるかもしれません。そういうことを一生懸命にやれば、総理大臣としては駄目だったかもしれないですが、世のため人の為努力した人として、そちらで名前を残せるではありません。

しかし、そんなことには目もくれず、従来型の政治に未練ばかりがつのるのが、細川氏であり、鳩山氏のような人たちなのだと思います。細川氏ももっと早めにNPOなどに興味を持って動いていれば、かなりのことができたかもしれません。鳩山氏なら、まだ十分できると思います。NPOの起業も大変ですが、政治活動もかなりのものであり、どちらも大変なことだと思います。

やはり、このような柔軟な考えができるのは、若い世代なのだと思います。実際、暫く前から、日本でも、若い世代による社会事業熱が高まってきています。やはり、欧米型NPOなどは、頭の柔らかい、しなやかな若い世代のほうから、でてくるのかもしれません。

なにやら、寂しい話しです。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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