2017年5月6日土曜日

【メガプレミアム】もはや危険水域か、韓国庶民の「家計」…富める者に向けられる「国民感情」―【私の論評】安全保障の面から日米は韓国に強力に金融緩和を迫るべき(゚д゚)!


グラフ、写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 韓国庶民の家計が“爆発寸前”になっているという。韓国銀行(中央銀行)が発表した昨年末の家計負債が、1344兆3千億ウォン(約133兆円)に上り、前年末比11.7%増と関連統計を取り始めて以来で最大規模となったのだ。さらに、家計の実質所得は7年ぶりに減っており、韓国メディアは「水があごまで上がってきた」と表現している。朴槿恵(パク・クネ)大統領の疑惑では政経癒着がやり玉に挙がっているが、韓国で法律よりも優先されるといわれる国民感情にも影響しているとみられる。

 尋常でない増加速度

 韓国紙・中央日報(日本語電子版)によると、韓国銀行が2月に「2016年第4四半期の家計信用」を発表し、家計の金融機関からの借り入れとクレジットカードの使用残高が昨年12月末で1344兆3千億ウォンで、1人当たりで換算すると約2600万ウォン(約259万円)を超えた。

 これに対し、ハンギョレ新聞(同)は社説で「昨年の家計負債の増加速度からして驚異的」と問題提起した。家計貸付金残高は、過去1年間で11.7%増となり、増加率は経済成長率の3倍近く、統計を取り始めた2002年以来の最高値だった。

 同時にこの社説は「家計の質が悪くなったことが、特に大きな関心事だ」と強調した。昨年の家計向け銀行融資残高が9.5%増加する間に、利率が極めて高い第2金融圏(ノンバンク系)の融資残高が17.1%も増加。政府の家計融資抑制対策が銀行だけに集中したため、ノンバンク系への風船効果になった。

 つまり、銀行からの借金増に歯止めをかけるため、銀行の与信審査を強化した結果、銀行融資の敷居が高くなった人たちが高金利のノンバンク系へと流れたという。

 中央日報(同)によると銀行圏の家計融資は、昨年7~9月期に17兆2千億ウォンから同10~12月に13兆5千億ウォンに失速。一方で、保険会社や相互貯蓄銀行など第2金融圏と貸付業者の家計融資は、同じ期間に19兆8千億ウォンから29兆4千億ウォンへと大幅に増えている。

 同紙は「低所得・脆弱階層が償還延滞に陥るなど困難にぶつかる可能性がある」と警鐘を鳴らす専門家の声を掲載した。

 実質所得は減少

 一方、韓国では昨年、世界的な金融危機の余波が深刻化した2009年以降で7年ぶりに初めて実質所得が減少している。

 ハンギョレ新聞(同)によると、韓国統計庁が2月24日に発表した「2016年第4四半期および年間家計動向」では、昨年の世帯当たり月平均所得が439万9千ウォン(約43万円)と、前年の0.6%増に終わったことが分かった。

 物価上昇分を差し引いた実質所得基準でみれば0.4%減となった。とくに低所得層ほど体感苦痛は大きくなるとみられ、所得下位20%世帯の月平均所得は144万7千ウォン(14万4千円)で前年より5.6%減と史上最大幅の減少を記録している。所得下位20~40%世帯も291万4千ウォン(29万円)で0.8%減だった。

 ところが、所得上位20%世帯の所得は、834万8千ウォン(83万円)で2.1%増となっており、貧富格差が鮮明になっている。

 富める者に厳しくなる世論
 こうした家計の逼迫(ひっぱく)状況が韓国銀行の金融政策の選択肢を限定的にしている。

 聯合ニュース(同)によると、韓国銀行は2月23日に政策金利を年1.25%を据え置くことを決めた。急増し、過去最高水準となっている家計負債が重荷となり、利下げは家計に新たな借金に踏み切らせる要因となる。逆に利上げすれば借金の負担が大きい世帯が破綻しかねないからだ。

 ハンギョレ新聞(同)は社説で「今後金利が上がれば、限界家計の破産が急増せざるを得ない」と指摘する。

 朴氏の友人で女性実業家の崔順実(チェ・スンシル)被告らをめぐる一連の疑惑が国家を揺るがす事態となっている韓国。最大財閥、サムスングループの経営トップである李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の逮捕を認めた地裁の判断も、政経癒着を批判する世論に配慮した側面があるといわれる。

 韓国の国内総生産(GDP)と輸出額のそれぞれ約20%を占めるといわれるサムスングループの総帥の逮捕をも迫る世論は、韓国の庶民が直面する生活苦が影響し、既得権を持つ富める者に厳しくあたるように形成されているのかもしれない。(3月16日掲載)



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【私の論評】安全保障の面から日米は韓国に強力に金融緩和を迫るべき(゚д゚)!

 ブログ冒頭の記事は、3月16日のものです。現状も経済状況はほとんど変わらないでしょう。本日韓国の経済に関するニュースを検索すると、朝鮮日報に以下のような記事が掲載されていました。
たんす預金急増、日本と同じ道歩む韓国
 韓国中部・大田市の有名飲食店の経営者Nさんは先月、現金8億4500万ウォン(約8300万円)を自宅のたんすに保管していて、盗難被害に遭った。全て最高額紙幣の5万ウォン札ばかり1万6900枚だった。Nさんは5万ウォン札を100枚ずつゴムで束ね、10束ずつ新聞紙に包んでいたという。泥棒は米袋2枚に現金を詰めて持ち去った。重さは20キログラムあった。 
 クレジットカードの利用が決済額全体の半分を超え、「キャッシュレス社会」を迎える中、巨額の現金をたんすに積み上げていたのはなぜか。Nさんは「現金を集める楽しみで自宅に保管していた」と警察に説明したが、果たして本当だろうか。 
 韓国よりも先に超低金利時代を迎えた日本では、そうした現金を「たんす預金」と呼ぶ。たんす預金は韓国にどれだけあるのか。また、たんす預金は経済にどんな影響を与えるのか。 
■家計の保有現金6.7兆円 
 韓国銀行(中央銀行)によれば、昨年末現在で韓国の家計が保有する金融資産のうち現金は68兆2610億ウォン(約6兆7000億円)だった。預金、保険、債券、株式、投資信託などに入れた資金を除き、純粋な現金だけを計算した額だ。 
 家計の現金資産は年々増えている。2013年の39兆ウォンから14年には47兆ウォン、15年には58兆ウォン、昨年には68兆ウォン台となり、年間10兆ウォン前後のペースで膨らんでいる。家計の現金資産が金融資産全体に占める割合は同じ期間に1.4%から2%台へと上昇した。 
 保管の便利さを考えると、家計が保有する現金の大半は5万ウォン札だとみられる。現在流通している紙幣で最高額の5万ウォン札は2009年に発行された。昨年末までに韓銀が発行した5万ウォン札は総額135兆ウォンで、発行以来韓銀に戻ってきた5万ウォン札は60兆ウォン足らずだ。つまり、市中に75兆ウォン以上の5万ウォン札が流通していることになる。
■個人用金庫の販売15%増 
 自宅での現金の保管方法はさまざまだ。国政介入事件の中心人物、崔順実(チェ・スンシル)氏はトイレットペーパーの芯に5万ウォン札を300万ウォンずつ挿してあるのを取り出して使っていたという。ただ、個人用金庫に現金を保管するケースが多いはずだ。崔氏も自宅に金庫2個を置いていた。

 韓国の金庫市場で70%以上のシェアを占めるソンイル金庫の今年1-3月の金庫販売は前年同期を15%上回った。昨年の年間伸び率(12%)に比べると、最近金庫の売れ行きが好調なことが分かる。同社関係者は「金庫販売が増えているが、容量が大きい金庫が売れるようになっている」と述べた。金庫の中に何かを詰め込んでいることの証だ。

 ソウル市の江南地区に住む主婦(45)は「金庫に現金、金塊、結婚時の記念品、高級腕時計など高価なものを保管する近所の人が増えている。米トランプ政権発足で北朝鮮リスクが浮上し、不安感が高まり、金融商品よりも現金を保有する傾向が高まったのではないか」と話した。

■日本式のたんす預金 
 日本のたんす預金は銀行など金融機関には預けず、自分で保管する現金という意味だ。日本のたんす預金は昨年末現在で43兆2000億円を超えた。高額紙幣の1万円札の需要も急増した。マイナス金利、徴税強化、資産関連の情報公開拡大、今後の景気に対する不安感が現金人気の主因と言える。

 韓国でも似たような現象が起きている。40代の弁護士Kさんは100万ウォンを超える決済も必ず現金払いにしている。なじみの飲食店では月末に代金を現金で一括払いする。Kさんは「預金金利や投資収益がいくらにもならないのに、あえて課税収入を明らかにする理由はない」と話す。ソウルの有名百貨店の地下にあるスーパーマーケットでは、数十万ウォン相当の買い物をして、現金で支払う人が珍しくない。朴槿恵(パク・クンヘ)政権の発足後、地下経済に対する課税が強化され、5万ウォン紙幣の回収率が60%台から20%台にまで低下した。

 延世大の成太胤(ソン・テユン)教授は「日本では中産階級の消費縮小に伴いたんす預金が増えた。韓国でも家計が現金保管が消費低迷を伴えば、経済全体にマイナスの影響を与えかねない」と懸念した。

琴元燮(クム・ウォンソプ)記者
この記事によれば、韓国銀行(韓国の中央銀行、日本の日本銀行にあたる)政策金利を年1.25%に据え置くということで、これは確かに低金利ですが、未だ日本の水準には及んでいません。日本の政策金利は、0.1です。

日本の場合、あまりにも長い間経済が低迷したため、このような結果を招いてしまいました。

韓国も日本ほどではありませんが、日本と似たようなところがあります。ブログ冒頭の記事のように、これだけ景気が悪いのですから、これは常識的に考えればすぐにでも大規模な金融緩和をすべきなのでしょうが、なぜか金融緩和をせよという声は起こらず、なぜか構造改革論ばかりが叫ばれています。

これは、日本で失われた20年の直前から日本でも構造改革が叫ばれていたのと似たような状況です。日本では、ご存知のように構造改革ばかりが叫ばれ、景気循環的対策である金融緩和が実行されなかったため、強烈なデフレを招いてしまいました。

韓国も似たような状況にあります。ただし、韓国ではデフレ状況ではないですが、それにしても、もう数年前から雇用環境は最悪で、特に若者の雇用がとんでもない状況になっていました、このような状況になれば、まずは大規模な金融緩和をすべきです。

しかし、このブログでも一昨年あたりから、韓国は大規模な金融緩和に踏み切るべきという内容の記事を掲載したのですが、これには以下のような反論を述べる人がいました。

まずは、韓国の経済は腐敗がまかり通っていて、金融緩和しても経済は良くならない。そうして、金融緩和するとキャピタルフライトが発生するというものです。

ちなみに、キャピタルフライトとは国内から海外へ資本が一斉に流出する資本逃避のことです。

私は、いくら韓国の経済活動には不合理なことがまかりとおっていたにしても、構造改革をしてそれが効果をあらわすまでには、最低でも5年、長ければ10から20年もかかる場合もあります。しかし、現状の経済がブログ冒頭の記事にもあるようにとんでもない状況にあるわけですから、構造改革はするなとはいいませんが、その前にまずは金融緩和をすべきです。

それに、金融緩和をして、ある程度経済が上向けば、構造改革も実行しやすいはずです。日本でも、かつて、構造改革至上主義のようなものがあり、遅れた経済構造のまま、金融緩和をしても効果がないとか、もっと極端な例では金融緩和をすれば構造改革を妨げるから、すべきではないという主張もありました。

民主党から自民党への政権交代の直前に当時の安倍晋三氏が政権交代後に金融緩和政策を実行する旨を公表したときに同じようなことが言われていました。

しかし、現実には、目立った構造改革の成果もないまま、2013年から金融緩和に踏み切り、その結果は間違いなく成功し、そのような主張はことごとく外れています。その成功については、このブログでもつい先日掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
アベノミクス、完全に成功…戦後3番目の長期好景気突入、「失われた20年」を脱出―【私の論評】経済認識に関しては、国民に負けた民進党(゚д゚)!

アベノミクスは、特に雇用において、完璧に成功しています。個人消費もこれから伸びていくことが予想されます。詳細は、この記事をご覧になって下さい。

さらに、現在の韓国経済は確かに遅れた面がありますが、それにしても韓国ではキャピタルフライトは起こりにくいはずなので、やはり大規模な金融緩和をなるべく早く実行すべきです。

なぜ韓国において、キャピタルフライトがおきにくいかといえば、それは我が国と同じく、韓国は変動相場制の国であるからです。

通常変動相場制の国であれば、 金融緩和をすれば自国通貨安になり、外貨流出を抑えることになります。さらには、高金利政策をとりキャピタルフライトをおきにくい状況にすることもできます。変動相場制の国であれば、政府の外貨準備は通常市場とは直接関係しません。したがってキャピタルフライトは固定相場制の国とは違って発生しません。なぜなら極端な通貨安に振れる理由がないからです。

現に1997年のアジア通貨危機では被害国は固定相場でした。韓国は、80年から変動相場制への移行をはじめ、97年アジア通貨危機後に完全変動相場制になりました。現在では完全変動相場制です。

無論、変動相場制の国の場合でも、キャピタルフライトは起こり得る場合もあります。それは、まずユーロなどの共通貨幣を用いている国ではあり得ることです。しかし、韓国は共通通貨を用いている国ではありません。

さらに、変動相場制の国でもキャピタルフライトがおこる可能性もあります。それは、対外債務が極端に多い場合です。

「キャピタルフライト(capital flight)」の代表例は、2008年の世界金融危機前後のアイスランドが挙げられます。

人口約32万人にすぎないアイスランドは外国資本に大きく依存し、銀行を中心とした金融業を中心に発展してきました。しかし2008年にサブプライムローン問題に端を発する世界金融危機と前後して外国資本が"資本逃避"を開始しました。

通貨クローナの価値は急落し、銀行もGDP(国内総生産)の10倍にも膨らんだ対外債務の返済に窮すなど、アイスランドは国家破綻の危機に見舞われました。

当時のアイスランドの財政状況は、政府の財政だけをみていると日本財政破綻論者が夢に見るような理想的な状況にあったのにもかかわらず、アイスランドは破綻しました。

その秘密はアイスランドの経常収支赤字にあります。


このグラフはアイスランドの経常収支対GDP比の推移ですが、破綻した2008年までにアイスランドは実にGDP比で15%以上の赤字を計上していました。

ただし、勘違いしないで下さい。経常収支の赤字がすべて悪いというわけではありません。ただし、アイスランドの場合は経常収支のマイナスのほとんどが対外債務だったのです。以前から、このブログでは経常収支が赤だからといって、必ずしも悪いというわけではないということを主張してきました。

経常収支の赤字は分析してみないと、それが当該国にとって良いことなのか、悪いことなのか、ただ赤字だから、黒字だからといって良い悪いということはいえません。ただし、アイスランドの場合は、赤字のほとんどが対外債務だったので、これは典型的な悪い例です。

これを日本に当てはめてみますと、GDPが500兆円としてその15%はなんと75兆円です。つまりアイスランドは日本に換算すると、毎年75兆円もの対外債務を積み上げていたことになります。

以下に当時の新聞から引用します。
アイスランド:外貨建て債務再編交渉、数週間以内の開始準備-WSJhttp://www.bloomberg.co.jp/news/123-K9YHPR0UQVIT01.html 
11月7日(ブルームバーグ):米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、オンライン版)は7日、アイスランド政府当局者が、総額750億ドル(約7兆3000億円)近くに上る同国金融機関の外貨建て債務の再編を目指し、債権者との交渉を今後数週間以内に開始する準備を進めていると報じた。関係者の話を引用して伝えた。 
RBCドミニオン・セキュリティーズのリサーチノートによれば、アイスランドの金融サービス機構(FSA)が設立した委員会のアドバイザーとして、大手会計事務所デロイト・アンド・トウシュが採用されたという。750億ドルの外貨建て債務は、アイスランドの国内総生産(GDP)の700%を上回る規模であり、永久に完済されない可能性があると同紙は指摘している。
なんと、アイスランドは実にGDP比で700%もの外貨建ての借金をしておりました。しかし、当時のアイスランドの政府債務対GDP比は29%しかありません。この700%もの債務は一体誰が負っていたのでしょうか。

アイスランド政府の借金でないのであれば、あとは民間しかありません。この膨大な対外の外貨建て債務は国内の金融機関が負っていた負債です。

このような国であれば、当然のことながらキャピタルフライとは起こりえます。そうして、実際アイスランドではそれが起こったのです。

では、韓国の対外債務はどうなっているのでしょうか。韓国銀行は2月22日、韓国の対外債権が前年比638億ドル増の7843億ドルとなったのに対し、対外債務は151億ドル減の3809億ドルだったと発表しました。

対外債務では長期対外債務が160億ドル減少し、短期対外債務は8億ドル増えました。外貨準備高(3711億ドル)に占める短期対外債務(1052億ドル)の割合は28.3%で前年と同じでした。同割合は2013年の32.3%、14年の32.0%、15年の28.3%と年々低下してきました。1997年の通貨危機当時(283.1%)、2008年の金融危機当時(79.3%)に比べるとはるかに低い水準です。

この程度の対外債務であれば、どう考えても金融緩和したからといって、キャピタルフライトが起こるということは考えられません。

以上のことから、韓国はすみやかに大規模な金融緩和をすべきです。

もう、数年前から行うべきでした。もし数年前から大規模な金融緩和を行っていれば、今頃韓国はまずは、現在の日本と同じように、雇用それも若者雇用がかなり良くなっていたことでしょう。

そうして、もし韓国が日本のように金融緩和実行後、まだその影響があまり出ていないうちに増税するなどという、マクロ経済的に見て悪手中悪手を行なわなければ、家計債務も減っていた可能性が十分にあります。減らなくて、少なくと増加はしなかったと考えられます。

そのような状況であれば、赤化勢力もあまり台頭することもなく、国民の不満もあまりなく、朴槿恵政権も続いていたかもしれません。

文在寅氏が大統領なら「赤化統一」
しかし、今後も金融緩和をすることなく、構造改革一辺倒で、経済の悪化を放置しておけば、韓国の赤化に拍車がかかることになります。

現在の北朝鮮の脅威が迫っている中での韓国の有様を見て、正気の沙汰ではないと批判する人々も大勢います。私も、到底納得できないこともあります。

しかし、考えてみて下さい。日本が現在の韓国のような状況であれば、どのようなことになるでしょうか。現在の韓国の状況は、日本がデフレ・スパイラルの底に沈んでいたことろよりももっと酷い状況にあります。そんな状況に追い込まれたら、いかなる国の国民も、何をするにも八方塞がりで、正気の沙汰とはいえない行動に出るかもしれません。

ちなみに、日本がデフレスパイラルのどん底に沈んでいた頃ですら、家計負債が極端に増えるということはありませんでした。

2012年6月時点では、地方を含む一般政府の金融負債は4.2%増の1123兆9187億円と過去最高となったにもかかわらず、家計金融資産は、現・預金が当時過去最高の844兆円となっていました。やはり、日本は韓国と違ってかなり経済的にはかなり底力があるのです。

韓国の場合は、本格的なデフレに至っていなくても、元々の経済の脆弱性から、ブログ冒頭のような様相を呈しています。

日本では、池田内閣の所得倍増計画が成功して、本当に所得が倍増した頃から、日本国内におけるソ連の影響がほとんどなくなりました。経済が良くなったので、わざわざソ連のプロパガンダにのる必要性がなくなったからです。やはり、経済が良くなければ、どの国の国民だって、容易に扇動されやすくなるのです。

今後、韓国経済がデフレになり、デフレが進化していけばとんでもないことになります。それこそ、赤化どころか、北に統一すべきという過激な意見も出てくる可能性も高いです。

そのようなことを防ぐためにも、韓国は速やかに金融緩和に踏み切るべきです。これは、安全保障の観点からも、日米は韓国に強力に迫るべきです。そうして、金融緩和が功を奏するまでには、タイムラグがあります。だから、日米はしばらく、韓国に緩和を迫り続けるべきです。安全保障は武力だけで成就できるわけではありません。今の韓国では、強力な金融緩和を実行することが、安全保障につながることになるのは確かです。

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2017年5月5日金曜日

ルペン氏、偽ニュースも利用=挽回に必死―仏大統領選―【私の論評】ローマ帝国が瓦解したように、EUもいずれ崩壊する(゚д゚)!

ルペン氏、偽ニュースも利用=挽回に必死―仏大統領選

国民戦線のルペン候補
 フランス大統領選の決選投票が7日に迫っている。

 世論調査では中道系独立候補のマクロン前経済相(39)が優勢を保ち、極右政党・国民戦線(FN)のルペン候補(48)は足踏みが続く。挽回に必死のルペン氏は、偽ニュースさえ利用してマクロン氏を批判したり、事実に基づかない主張を繰り返したりするなど、なりふり構わない姿が目立っている。

 「あなたが租税回避地に口座を持っていると後で判明しないことを願う」。ルペン氏は3日のテレビ討論で、金融機関勤務時代に巨額の報酬を得たマクロン氏の「税逃れ疑惑」に言及した。マクロン氏は「中傷だ」と直ちに否定している。

 仏メディアによると、ルペン氏がこの発言のために参照したのは、トランプ米大統領の支持者とみられる人々が3日に英語で配信した偽ニュースとされる。この記事は「マクロン氏脱税か」と題し、同氏の偽造サインが書かれた租税回避地の口座運用に関する偽の契約書まで掲載していた。

 親ロシア的な考えを持つルペン氏の当選を狙い、ロシアが情報操作を仕掛けた可能性も取り沙汰される。マクロン氏は4日、虚偽情報流布の疑いで当局に被害届を出し、検察が予備捜査に着手している。

 また、ルペン氏は3日の討論で「ユーロ導入を機に物価が上昇した」と主張した。しかし、仏紙ルモンドは「ユーロ導入以前から物価上昇は始まっている」と反論。同紙は、事実誤認に基づくルペン氏の発言が19に上ったと指摘した上で、昨年の米大統領選で誇張や放言を繰り返したトランプ氏の手法と類似していると分析した。

 ルペン氏は自国通貨復活や移民受け入れ制限を通じ景気や治安を改善すると主張。失業やテロの不安におびえる人々の支持を集める。しかし、ルペン氏の思想は排他的だとして危険視する層も多い。仏紙レゼコーが4日発表した世論調査結果では、マクロン氏が61%の支持を得て39%のルペン氏を引き離している。

【私の論評】ローマ帝国が瓦解したように、EUもいずれ崩壊する(゚д゚)!

独立候補のマクロン前経済相
上の記事を読んでもわかるように、相変わらず日本のマスコミの報道は浅薄です。このブログでは、もっと根本に遡り、EUが今後どうなるのか、私の考えを掲載させていただきます。

マクロン氏もルペン氏も既存政党出身ではないという共通点があり、それが選挙の帰趨をわかりにくいものにしています。そうして、両者の経済政策は好対照です。マクロン氏は、欧州連合(EU)や単一通貨ユーロの枠組みを堅持し、合法的な移民についても受け入れるとしています。内政では、公務員・議員定数削減を行いつつ、法人税減税や失業保険創設などを訴えています。

他方、ルペン氏は、自国優先主義を主張しています。具体的には、ユーロからの離脱と旧通貨フランの復活、外国人を雇用する企業への追加課税、輸入品への3%関税-といった政策を掲げています。

両者の違いは、フランスの「失業率10%」をどう見るかで異なってきます。フランスの失業率は、1970年代初めは3%台を切る水準でした。それが急速に上昇し、9%台がほぼ定位置になってしまいました。そうして、最近では10%の水準です。

フランスの失業率の推移
隣国ドイツはの失業率は、3・9%です。ドイツにとっては、失業率を下げるための金融緩和は不要であり、フランスの高失業率は構造失業率が高いためで、構造改革して失業率を下げるべきだという理屈になります。

しかしフランスにとっては、金融緩和すれば10%の高失業率を下げる余地がまだあるのに、フランスは単一通貨のユーロ圏でもあるので、金融政策は自国の自由にはならず、ドイツの事情をくむ必要があるため実施できません。そこでユーロを離脱してフランスの事情だけで金融緩和できるようにすれば雇用を確保できることになります。

さらに、財政政策についても問題があります。フランス経済は簡単にいえば、より積極的な財政政策を必要としていることは明白です。しかし、EUの中心国であるドイツは相変わらず財政規律を重視するスタンスを崩していません。また積極的な財政政策もEUの制約に服さなければいけません。マクロ経済政策的には金融政策も財政政策も自由度がかなり限られているのです。

そうしてやっかいなことに、ドイツにはもともと財政規律を重んじる土壌があります。この秩序(オルド)を重んじる経済思想の風土は、戦後のドイツ経済思想の根幹といって良いものです。

このオルド自由主義は、ルペン氏や米国のトランプ政権を支えているようなポピュリズム的傾向を否定しています。例えば、大衆消費、大衆向きの生産が拡大し、それが産業の独占化を招き、経済を閉塞(へいそく)してしまう、というのがオルド自由主義の見方です。全く理解に苦しむ、謎と言っても良い理論です。

オルド自由主義は、20世紀ドイツで生まれた社会思想で、自由主義思想の一つです。オルドー自由主義、秩序自由主義ともいいます。オルド自由主義に基づいて社会的市場経済がつくられた。また、新自由主義の源流の一つとされる。独占・寡占を導く古典的自由主義(自由放任主義)と計画経済はともに全体主義や経済の破綻を導くと批判し、消費者主権の経済を主張しました。そのため再分配を支持し、カルテルやコンツェルンを否定している。

オルド自由主義の創始者ヴァルター・オイケン
このオルド自由主義は、債務(政府の借金)を否定的にとらえている倫理的な価値判断も強く、そのため積極的な財政政策を嫌い、財政的な秩序を重んじる傾向にあります。簡単にいうと、大衆の欲求よりも、道徳的な秩序を最優先に考えるものです。このオルド自由主義の経済思想が、ドイツの経済政策や世論さえも拘束しています。

このように、国内の雇用確保で考えればルペン氏の政策のほうが分がいいです。しかし、対外関係重視だとマクロン氏の政策にも一理あり、これはフランス国民の選択に委ねられることになります。

ルペン氏が勝利すると、短期的にはユーロの動揺が起こることでしょう。これはギリシャ危機の時に、ユーロがかなり混乱したことの二の舞いです。

もっとも、長期的にみれば、ユーロという単一通貨で複数の国を縛り付けておき、さらにはオルド自由主義により他国の財政政策を縛り付け、結果としてドイツだけが独り勝ちになるというデメリットよりも、複数通貨によって各国で最適な金融政策と財政政策をするメリットの方が上回ります。

マクロン氏が勝利すれば、今の体制が維持されるので、短期的には大きな混乱はないはずです。しかし、フランス国内の高い失業率を下げるのは容易ではないです。しかも移民受け入れにも支障が出て、長期的には問題含みになることは必定です。

私自身は、EUはいずれ破綻するものと思っています。人為的にたとえ一つの経済圏を作ったとしても、それを構成している各国の経済レベルがあまりにも違います。少し考えれば判ることですが、ポルトガルとスゥエーデンの経済はかなり異なります。ポルトガルの経済は未だ労働集約的ですが、イギリス、ドイツ、イタリアなどの先進国では資本集約的な経済になっています。

そのため、EU圏内で、不振対策をしようということになると、ごく標準的なものにならざるを得ず、一旦不況に陥れば、回復するまで結構時間がかかります。

EUのように、ヨーロッパ全体が団結して、大きな影響力を持とうという試みは、大昔からありました。その起源はローマ帝国にまで遡ります。ローマ帝国が栄えていたころは、現在のイギリス、スペイン、フランス、ドイツなど現代のEU圏にある経済大国がすべてローマ帝国の版図に編入されていました。

だから、ヨーロッパの人たちには、大昔からローマ帝国への憧憬の念や、憧れの念がありました。そのため、ローマ帝国滅亡より、機会があれば一致団結しようとしました。これは、古くは神聖ローマ帝国にまで遡ります。

ナポレオンのヨーロッパ征服、ヒトラーのナチスドイツによるヨーロッパ征服なども、ことごとく失敗しました。

おそらく、これからも無理だと思います。だから、私は、EUも結局は成功しないと思います。長い間には必ず失敗し没落していくものと思います。

過去のローマ帝国は、強力なローマ軍団による他国に抜きん出た軍事力があったからこそあれだけ版図を広げて、維持することができたのであり、現代では過去のローマ帝国の再現など単なる幻想に過ぎません。

それと、 現在のEUは過去のローマ帝国とは違い、意思決定にあまりにも時間がかかりすぎます。ローマ帝国の意思決定は、ローマ帝国の元老院(皇帝による場合もあった)によって行われました。しかし、現在のEUは欧州会議によるものです。元々は別の国だった数々の国の代表者からなる会議を運営するのは至難の技です。

そうして、当のローマ帝国も瓦解しているわけですから、EUが将来どうなるかなど、推して知るべきです。

ローマ帝国の重装歩兵
さらに、経済対策も、EUの経済対策は、必ずしも個々の国にとって良いことばかりではありません。EU全体の経済という考え方で行うため、この経済対策では経済が良くならない国には、不満が鬱積することになります。

EUは、いずれ滅ぶでしょうが、最近その予兆として、イギリスの国民投票によるEU離脱の表明、今回のルペン氏の躍進など様々な綻びが目立って来ているのだと思います。

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2017年5月4日木曜日

アベノミクス、完全に成功…戦後3番目の長期好景気突入、「失われた20年」を脱出―【私の論評】経済認識に関しては、国民に負けた民進党(゚д゚)!

アベノミクス、完全に成功…戦後3番目の長期好景気突入、「失われた20年」を脱出

官邸ホームページより 
 2012年12月に始まったアベノミクス景気が、バブル期を超えて戦後3番目の長さになった。現在の景気は、安倍政権の経済政策が功を奏しているのか。

 これについて日本経済新聞は、景気回復の実感が乏しいとして、その理由に潜在成長率の低下を挙げている。マクロ経済分析の問題であるにもかかわらず、金融緩和に触れていないのは不思議だ。

 景気の動向は、内閣府が作成する景気動向指数によってみることができる。景気動向指数の一致系列指数によって、景気が改善または悪化しているかにより、回復期か後退期なのかが判定されている。

 景気動向指数の一致系列指数としては、以下が挙げられる。
・生産指数(鉱工業)
・鉱工業用生産財出荷指数
・耐久消費財出荷指数
・所定外労働時間指数(調査産業計)
・投資財出荷指数(除輸送機械)
・商業販売額(小売業、前年同月比)
・商業販売額(卸売業、前年同月比)
・営業利益(全産業)
・有効求人倍率(除学卒)

 これらをみてもわかるが、幅広い経済部門から経済指標が選ばれている。

 一致系列で指数は、生産面に重点が置かれている。筆者は経済を分析する際、第一に雇用、第二に所得をみる。つまり、雇用が確保されていれば経済政策は及第点であり、その上で所得が高ければ、さらに満点に近くなる。それ以外の指数、例えば輸出や各産業別の景気分析、所得の不平等などは、人それぞれの価値判断が入るので、評価の対象外にする。経済をシンプルに考えているので、景気判断に必須な経済指標としては、失業率(または有効求人倍率、就業者数)とGDP統計でだいたいの用は足りる。

 こうした筆者の立場から見ると、景気動向指数の一致系列指数は、生産面の指標が重複し、雇用統計が足りないと考える。今の失業率2.8%はバブル景気以来なので、及第点を与えられる。ただし、14年の消費増税以降は消費が伸び悩み、GDPはそれほどでもないので満点とはいえない。

 前出の日経新聞のように雇用を重視しない解説をみていると、経済がわからなくなってしまう。同紙読者は大企業正規雇用者が多いと考えられるので、雇用など確保されていて当然というスタンスなのかもしれない。その立場からみれば、雇用政策たる金融政策には関心がなく、金融市場に影響を与える金融政策にしか興味がないのかもしれない。

 雇用を経済政策のミニマムラインとする筆者からみれば、アベノミクス景気は実感できる。筆者の勤務する大学はいわゆる一流校ではなく、そのときどきの「景気」によって、就職率が大きく変化する。4、5年前には卒業生の就職率が芳しくなく、なんとか学生を就職させるのに四苦八苦だった。ところが、今や就職で苦労することはかなり少なくなった。この間、学生の質が向上したとはいえないにもかかわらずだ。これは、アベノミクスの金融緩和によって失業率が低下したことの恩恵である。

アベノミクスの勝利
 以上は経済的な分析であるが、アベノミクスの成否は政治的には決着済みである。どのように野党が批判しようが、アベノミクスの勝利である。経済的には、「景気がいいのはアベノミクスと無関係」という方便も使えなくもない。しかし、政権交代とともに景気回復が始まり、その後、野党は国政選挙で惨敗が続いているので、政治的には勝負ありだ。

 名目経済成長率について、IMFデータによって1980年代、90年代、2000年代、10年代の平均の世界ランキングをみてみよう。日本のランキングは、以下のとおり。

・1980年代:138国中下から28位
・90年代:150国中最下位
・2000年代:188国中最下位
・10年代:190国中下から15位
 日本の場合、下から20位くらいであれば十分にやっていける。名目経済成長率は、マネー供給量の伸び率と7割程度の強い相関がある。この伸び率は人為的に動かせるので、マネー供給量を増やせば名目経済成長できるといってもいい。ちなみに、1990年代、2000年代の日本のマネー伸び率は世界で最下位だった。これが失われた20年の原因である。

 アベノミクスによって、日本は失われた20年からようやく脱出しようとしている。これこそが、野党がなんだかんだと批判しても、打ち破れない真理である。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

【私の論評】経済認識に関しては、国民に負けた民進党(゚д゚)!

以下に直近の経済指標について、詳細に踏み込んで検証します。

1-3月期GDPでは、ついに消費主体の経済成長が実現しそうです。消費は、今期は高めの伸びが期待でき、ここ3期をならした速度は年率1.6%となることでしょう。それは、消費増税の大打撃の前の2012~13年の伸びと同レベルであり、日本経済の復調を意味することになります。失われた10期を超え、16兆円もの大損害を残しつつも、成長は戻ってきたのです。今後は、雇用数の増加に見合う年率2.0%成長へ更に加速できるかが焦点となります。

3月の商業動態の小売業は前月比+0.2であり、CPIの財が-0.3であったことを踏まえると、実質では、これを上回る伸びとなるでしょう。したがって、3月の日銀・消費活動指数は、若干のプラスが見込まれ、1-3月期の前期比が+0.8まで高まる可能性があります。前期が低迷した反動も含まれますが、ここ3期をならしても+0.6という高さになります。消費の復調と加速をうかがわせるのに十分な数字です。

また、3月の家計調査は、相変わらず不安定な動きを見せ、消費水準指数(除く住居等)が前月比-2.0もの低下となったものの、1,2月の「貯金」で、前期比は+0.2に収まりました。GDPの消費を占う内閣府・消費総合指数は、3月がそれなりの低下となるでしょうが、前期比で+0.7程を確保できそうです。ここ3期の平均は、先述の活動指数より下がるにせよ、+0.4くらいになると考えられます。

+0.4というのは、2012~13年にかけての民間消費の伸びと同レベルです。その後、消費増税による大打撃に対処するため慌てて日銀が異次元緩和第二弾を打ったのですが、輸入物価高で苦しめただけで、2015~16年は+0.1へと沈みました。そのため、増税前のトレンドとの差は広がり、今や16兆円に及びます。8兆円の税収を得るのに、2倍の消費を潰したのだから、度を過ぎた財政再建の愚かしさが分かるというものです。+0.4への復調は、この傷口が広がらなくなったことを示しています。


今後の焦点は、成長の基礎体力である消費がさらなる加速を見せるかいなかにかかっています。その可能性は十分にあります。なぜなら、毎月勤労統計の常用雇用は、消費増税後も、コンスタントに前期比+0.5~+0.6を保ってきたからです。雇用が堅調でも、消費が低迷したのは、消費増税や輸入物価高で実質賃金が低下したことによるものです。ここに来て、パート増による平均賃金や労働時間の押し下げにも歯止めがかかり、雇用増がストレートに所得と消費の増加に反映される環境が整ってきています。

3月の新規求人倍率は、除くパートが+0.06の1.87倍と、12月の1.90倍に次ぐ高水準になりました。他方、パートの求人は一服し、人手不足の現状ではパートでは人員を確保しがたくなってきたので、正社員を集めようとする形へ変化しているようですは。こうした形はバブル期にも見られました。求人は、医療・福祉が多いのは当然ながら、1-3月期は、建設、製造、運輸という、賃金が高めで男性の雇用に結びつく求人が加速しました。

他方、3月の労働力調査では、就業者数が前月比+13万人、雇用者数が+1万人でした。プラスではあるものの、1-3月期の増加には、やや陰りが見られます。完全失業率は、男性が3か月続けて低下して2.8%となり、女性は2.7%が続いています。一時的かもしれないのですが、次第に人材の供給力に制約が現れてきています。雇用量の動向については、連休明け公表の3月毎勤でも確かめたいところです。

先月参議院の来年度予算案審議でアベノミクスの成果を強調する安倍首相
景気の先行きについては、輸出は拡大トレンドを維持しており、住宅は小康を保ち、公共は底を打っています。これらで構成される追加的需要は、12月頃に下ブレしたものの、それを取り戻すように推移しています。鉱工業生産は、3月が前月比-2.1となり、1-3月期の前期比が+0.1にとどまったのですが、4、5月の予測指数は、+8.9、-3.7と非常に高水準であり、景気の加速を予感させる内容となっています。

鉱工業指数に関しては、設備投資の指標である資本財(除く輸送機械)の出荷は、1-3月期の前期比が、前期の急拡大の反動もあって-2.9となりました。建設投資の目安となる建設材出荷も、同様に-1.0にとどまりました。それでも、GDPの設備投資については、輸送用機械が堅調で、企業の建設投資が盛んだったため、寄与度0.0~-0.1と見られます。また、住宅と公共の建設投資の寄与度は、ほぼゼロでしょう。

GDPの在庫の寄与度は、7-9月期が-0.3、10-12月期が-0.2と成長率を下げてきたのですが、1-3月期は、プラスとなりそうです。鉱工業指数で分かるように、製品在庫はプラス、流通在庫は変わらず、原材料在庫の仮置きがマイナスというところで、寄与度は0.1弱と見られます。また、GDPの外需については、ニッセイ研の斎藤太郎さんによれば、寄与度0.1強のようです。以上を踏まえるなら、1-3月期GDPの成長率は2.0%前後が妥当でしょう。

一部に「今の景気の回復ぶりからすれば、この4月からの消費増税は可能だった」との声もありますが、それをしていれば、増税幅と同じ5兆円の消費減に見舞われた上、失速状態が更に長く続いたでしょう。経験には学ばねばならいです。そうして、この半年の回復局面は、財政出動も、金融緩和も、成長戦略も、大してないまま達成されています。つまり、角な緊縮財政をしなければ、放っておいても日本経済は成長する。まさに8%増税は、百害あって一利なしの悪手中の悪手だったことがわかります。

以上ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事とあわせて、ご覧いただければ、アベノミクスの金融緩和策は大成功、一方8%増税は大失敗でしたが、相対的には成功していることがご理解いただけると思います。

昨年夏の参院選で民主党(現民進党)代表岡田氏が掲げた公約
高橋洋一氏は、「アベノミクスの成否は政治的には決着済み」としています。それは、昨年7月10日の参院選ではアベノミクスが最大の争点となり結局与党側が勝利したことを指しています。無論のその前の衆院選でもアベノミクスの継続をあげた与党が勝利しています。

野党側が「アベノミクスが限界にぶち当たっており、新しい経済政策を展開しなければならない」(岡田克也民進党代表=当時)などと批判したのに対し、安倍晋三首相は熊本県熊本市での第一声で「問われているのは、(現在の)経済政策を前に進めるか、低迷した時代に逆戻りするかだ」と反論しました。野党側はアベノミクスの現状を一時的に大企業の業績を回復させたものの、国民の所得増につながらず、失敗に終わったと考えました。

これに対し、与党側は長年、デフレ下にあった日本経済を回復へ向かわせているとみたわけです。選挙戦は与党側の勝利に終わり、アベノミクスが国民の信任を得た形になりました。そうして、その当時はこの与党側の主張が正しいのか否かは、予測としては正しいとはいえたものの、まだ経済統計などでははっきりとはしていない状況でした。

しかし、直近の数字を見ていると、明らかにこの国民の審判が正しかったことが理解できます。野党よりも、国民の目のほうが確かだったわけです。

民進党などの野党は、与党どころか国民に追いつかなければ正しい経済状況の認識ができなくなったのです。情けない限りです。

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2017年5月3日水曜日

【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!




 ご来場の皆さま、こんにちは。自由民主党総裁の安倍晋三です。

 憲法施行70年の節目の年に、「第19回公開憲法フォーラム」が盛大に開催されましたことに、まずもって、およろこびを申し上げます。憲法改正の早期実現に向けて、それぞれのお立場で、精力的に活動されている皆さまに、心から敬意を表します。

 憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です。自民党結党者の悲願であり、歴代の総裁が受け継いでまいりました。私が総理・総裁であった10年前、施行60年の年に国民投票法が成立し、改正に向けての一歩を踏み出すことができました。しかし、憲法はたった一字も変わることなく、施行70年の節目を迎えるに至りました。

 憲法を改正するか否かは、最終的には、国民投票によって、国民が決めるものですが、その発議は国会にしかできません。私たち国会議員は、その大きな責任をかみしめるべきであると思います。

 次なる70年に向かって日本がどういう国を目指すのか。今を生きる私たちは、少子高齢化、人口減少、経済再生、安全保障環境の悪化など、わが国が直面する困難な課題に対し、真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。

 憲法は、国の未来、理想の姿を語るものです。私たち国会議員は、この国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための具体的な議論を始めなければならない。その時期に来ていると思います。

 わが党、自由民主党は、未来に、国民に責任を持つ政党として、憲法審査会における具体的な議論をリードし、その歴史的使命を果たしてまいりたいと思います。

 例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命がけで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く。その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、いまなお存在しています。「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。

 私は、少なくとも私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置付け、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきであると考えます。

 もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けてしっかりと、堅持していかなければなりません。そこで、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。

 教育の問題。子供たちこそ、わが国の未来であり、憲法において、国の未来の姿を議論する際、教育は極めて重要なテーマだと思います。誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる「1億総活躍社会」を実現する上で、教育が果たすべき役割は極めて大きい。

 世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、経済状況にかかわらず、子供たちが、それぞれの夢に向かって頑張ることができる、そうした日本でありたいと思っています。

 70年前、現行憲法の下で制度化された、小中学校9年間の義務教育制度、普通教育の無償化は、まさに戦後の発展の大きな原動力となりました。

 70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子供たちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います。これは、個人の問題にとどまりません。人材を育てることは、社会、経済の発展に、確実につながっていくものであります。

 これらの議論の他にも、この国の未来を見据えて議論していくべき課題は多々あるでしょう。

 私は、かねがね、半世紀ぶりに夏季のオリンピック、パラリンピックが開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきました。かつて、1964年の東京五輪を目指して、日本は大きく生まれ変わりました。その際に得た自信が、その後、先進国へと急成長を遂げる原動力となりました。

 2020年もまた、日本人共通の大きな目標となっています。新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っています。私は、こうした形で国の未来を切り拓いていきたいと考えています。

 本日は、自由民主党総裁として、憲法改正に向けた基本的な考え方を述べました。これを契機に、国民的な議論が深まっていくことを切に願います。自由民主党としても、その歴史的使命を、しっかりと果たしていく決意であることを改めて申し上げます。

 最後になりましたが、国民的な議論と理解を深めていくためには、皆さま方、「民間憲法臨調」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のこうした取り組みが不可欠であり、大変心強く感じております。

 憲法改正に向けて、ともに頑張りましょう。

【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!

自民党安倍政権は憲法改正を目指しています。私自身は進駐軍軍に銃剣を突きつけられて、与えられたような憲法はいずれ改正すべきだとは、考えています。

現憲法の制定手続きが正当であり、合法的というならば、ナイフを突きつけてセックスを強要することも強姦ではなく、合意の上の行為となります。このようなことは、文明社会で許されるものではありません。

このような「強姦憲法」を不磨の大典かのごとく崇め奉っているいる日本のマスコミ、リベラル・左派、左翼の皆様は、強姦を是とするのでしょうか?
 
その一方で、保守改憲論者の言動をみていると不安になります。自衛隊を巡る法整備やら、予算の問題やらなにやらの諸問題が憲法それも憲法典(文書に書かれた憲法)を改正すればたちどころに解消するかのようなことを主張しています。

しかし、憲法(典)改正は魔法の杖ではありません。憲法を変えなくとも、法律や予算を変えるだけでも可能なことも多々あります。

かつての有事法、国民保護法の制定でも一部それが、実現しました。さらには、2015年には、集団的自衛権を含む安保法制が国会を通りました。ですが、彼らは憲法改正をしなくてもできる、地道な法改正や予算の増額などを主張することはあまりなく、とにかく憲法を変えればすべては劇的に解決するとファンタジーを主張しているようです。

さらには、現行憲法でさえ憲法の解釈を変えればできることはいくらでもあります。実際、このブログでも憲法9条の解釈を変更すれば、自衛隊は違憲ではなくなるし、防衛戦争も可能になることを主張したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」―【私の論評】安保法制=戦争法案としてデモをする人々は、まるで抗日70周年記念軍事パレードをする人民解放軍の若者と同じか?
佐々木惣一
以下に、佐々木惣一氏の憲法9条に関する考えを簡単にまとめた部分のみ引用します。
法によれば、国家は、戦力、武力による威嚇及び武力の行使については国際紛争を解決する手段としてではなく、自衛などの国際紛争を解決する手段以外では、日本国が戦争をし、武力による威嚇をし、武力を行使することを禁じているのではない。 
交戦権については、「第一項は戦争するという事実上の行動に関する規定であり、第二項は、戦争に関する意思の活用に関する規定である」として、国際紛争を解決する手段としての戦争をする意思を活用することを表現している。そのためこの交戦権も自衛権を放棄していることではない。 
この佐々木による解釈は純粋な法理論のモノであり、現実の政策とは分けて考えるべきであり、どんなに憲法解釈が純法理的にすばらしくても、現実に平和が維持されないでは意味をなさない。
そうして、この考えは、他国の憲法を検討すれば、正しいことがわかります。憲法・比較憲法学を専門とする西修氏によると、現行の憲法典182のうち、なんらかの平和主義条項を有する憲法典のある国は、 150カ国もあり、これは全体の82%超です。

なかには、核兵器や生物兵器、化学兵器を持たないことを明記したり、外国の軍事基地を設けないことなど、日本よりももっと徹底した平和主義条項を持つ国があるのです。

世界には、日本のように平和憲法を持ちながら、防衛軍などの名称で軍隊を保有し、自衛のためであれば、戦争することを是とする国も多数存在するのです。であれば、日本も憲法解釈を変えることによって、自衛戦争を可能にすることもできるはずです。

しかし、まずは憲法解釈を変えるとか、予算や法律を整備することにはあまり熱心でなく、とにかく憲法典の条文を変えれば、それで事が足りると無邪気に信じる護憲派もおおいです。

しかし、現状の憲法を変えなくても、できることはあるのです。たとえば、陸上自衛隊には2012年までファーストエイドキットもまともにありませんでした。その後採用されたキットも国内用と国外用(PKO用)があり、特に国内用は包帯と止血帯しか入っていません。これは現代の軍隊ではありえないお粗末さです。

ここで陸自の「個人携行救急品」の海外用(国内用は3アイテム)と米陸軍の「IFAK(Improved First Aid Kit) II」の構成品の違いを検証します。

IFAK IIは従来のIFAKよりも収納力を増やし、個人用アイテム整備の効率化や経済化を図ることを改良の主眼にしており、「米陸軍が専用に装備するアイテム」「米陸軍全員に使用法を習熟させるべきアイテム」として選定した12品目を「基準アイテム」として常備しています。

そしてこれを全員に支給しておき、静脈路確保用留置針、留置針固定用テープ、胸腔減圧用脱気針などの病院であればどこでも備蓄しているアイテムは必要の都度調達し、最大18品目まで補完することで、携行品数に柔軟性を付与するようになっています。

これは管理することが難しく、使用期限のある医療資材を効率的に整備すると共に教育が不十分な兵士が誤用するケースを防ぐ目的もあるといいます。IFAK IIの構成品は12品ではなくその最低基準アイテムが今は12個ということです。

以下に図表で説明します。


以下に自衛隊の個人傾向衛生品の詳細を掲載します。驚くべきことがわかります。


国際活動等の装備としては8つのアイテムがあるのですが、平素の装備(国内用)は3つのアイテムしかありません。何と救急品袋、止血帯、救急包帯だけです。震災のときなど、米軍をもうならせるほどの展開能力をみせたほどの、底力を見せつけた陸上自衛隊ですが、普段の個人傾向のファースト・エイドはこのようなお粗末さです。

東日本大震災の時も、個人が携行したのはこのような貧弱な装備だったと思います。無論、他の装備は別に持たせたのでしょうが、それにしてもあまりに貧弱です。

これは、ほんの一例ですが、現在の自衛隊の置かれて立場を象徴的に現していると思います。他にも自衛隊装備の貧弱さをあらわすものがあります。

たとえば、トイレットペーパーです。全国の自衛隊駐屯地でトイレットペーパーは2ロール目から自腹です。


上の写真は、陸上自衛隊駐屯地のトイレのものです。 悲しいのですが、これが現状なのです。これでは、緊急時に対処できません。常に有事に備えるのが自衛隊のはずです。憲法改正も、有事法制も必要ですが、もっと切迫した有事にも備えて欲しいです。 自衛官自身が有事に常に備えてトイレットペーパーを携行せよという事なのでしょうか?

さらには、射撃訓練をするために予算を削られている陸上自衛官は、平均して年間200発も射撃訓練をしていないそうです。これはアメリカ軍楽隊以下の水準です。

以上のようなことは、他にもいくらでもあります。代表的な例をあげただけです。これに対処するにはどうしたら良いのでしょうか。それは、無論のこと予算を多くすることです。

これらのことは憲法を変えないとできないことなのでしょうか。

訓練費も定足数も、同じ話です。これらを充足するためには、憲法どころか、法律の改正すらいらないです。

必要なものを必要と主張すればよいのです。堂々と財務省主計局に予算請求すればよいのです。しかし、防衛省自衛隊関係者の前では、予算の話はタブーなのです。どこの省庁も、もはや錦の御旗と化している「財政健全化」を持ち出されたら、予算支出の増額を言いにくくなるのですが、官界では最弱小官庁の防衛省自衛隊は主計局の前では蛇に睨まれた蛙に等しいのです。

安倍内閣で防衛費が5年連続増額しているのを、評価する向きもあるでしょう。しかし、防衛費1%枠などという何の根拠もない霞が関の掟を頑なに守っている枠内での話に過ぎません。

トランプ米大統領は、「同盟国は義務を果たすべきだ。せめて防衛費を文明国水準のGDP2%にまで引き上げよ」と訴えています。

これは大きなチャンスです。増やせば良いのです。これだけ北朝鮮が暴れまわり、中国やロシアといった不安定要だらけの隣国に囲まれているのです。日本が防衛費をGDP2%に増やしたとて文句を言うのは敵国だけです。

しかし、国内には防衛費増額を拒む勢力がいます。財政支出抑制を金科玉条とする財務省主計局、彼らに唯々諾々と従う防衛省自衛隊、そしてそれを是とする政治家。

防衛費増額と憲法は何の関係もありません。それとも、自衛隊が、「米軍並のファーストエイドキット携行できるにようにするとか、軽武装をできるだけの人数を充足させる、アメリカ軍楽隊よりもマシな訓練を行えるようにする、トイレットペーパーの減り具合を気にしないで済むようになする」というような、これらの予算請求もすべて憲法改正をしなければできないのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずがありません。

平成27年度自衛隊音楽まつりに参加した米軍の軍楽隊
本気で戦争に備えているのであれば、防衛省は予算の拡大を要求するはずです。現状を見るに、自日本の本気で戦争する気は無いように思えます。このような現状は仮想敵国には見透かされているでしょう。であれば、自衛隊の抑止力はかなり低いと考えられます。

憲法を改正する以前に、努力してより自衛隊を実戦的に変えることは可能なはずなのです。ところが威勢のいいことを言う「保守の論客」はこのような小さな問題をコツコツと掘り起こし、解決しようという地道な努力をしようとしません。

世論を煽り、新しい玩具を買え、防衛費を増やせ、自衛隊の定員を増やせ、憲法を変えろと叫ぶだけです。まあ、その方が楽だし人気もでるのかもしれません。しかし、いくら喰うためとはいえ、そんなことで良いのでしょうか。

できるかどうかもわからない、非常にハードルが高い憲法改正を叫び、それが出来れば世の中は変わると主張し、小さな努力はしない。それでは沖縄で反基地闘争をやっている連中と同じではありませんか。

彼らは沖縄の戦略的な重要性を知っており、米軍が撤退しないことも知っています。仮に撤退しても自衛隊が代わりにその隙間を埋めることを知っています。しかし、憲法典が代わると、途端に日本は侵略戦争を開始し、国内では憲兵隊が個人の自由を著しく制限するようになるというファンタジーを信奉しているようです。

沖縄の基地反対運動
右も左も、手間がかかり、地味な改革には見向きもせず、簡単には実現しもそうもないことを実現しようと、大きなスローガンを掲げて、声を張り上げているほうが楽だし、楽しいし、金が儲かるのでしょう。民進党などの野党にもそのような傾向があります。

やっていることや主張は少なからずプロ市民や観念に凝り固まった非現実的な左翼と大同小異です。こういう手合いに限って自衛隊を美化礼賛し、自衛隊は常に正しい、という無謬論を唱えます。

防衛省、自衛隊に問題があるとするならばそれは憲法が悪いからだと、問題を矮小化してしまいます。このようなことで、本当に憲法が改正できるのでしょうか。いろいろなできることをやった上で、これ以上変えるためには憲法を変えるしかないと主張するのが筋なのではないでしょうか。

このように、無邪気に憲法が変わればすべてが変わると、主張する単純な人たちが憲法を変えようと主張することは極めて危険です。憲法典が変われば、すべてが変わると考えるのは、ファンタジーに過ぎません。

憲法改正ももちろん大事でしょうが、我々はもっと地道な努力をすべきです。ブログ冒頭の、安倍総理のビデオメッセージは確かに、立派です。しかし、安倍総理が憲法を改正するにしても、その前にできることをしなければ、無意味になってしまいます。

憲法典が改正されたとしても、自衛隊のトイレットペーパーの個人負担や、ファーストエイドキットがまともになったり、射撃訓練がまともにできるようならなければ、何も変わらないのです。

安倍総理には、これらの地道な努力を重ねていった上で、最終的に憲法を改正するという道を歩んでいただきたいです。

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2017年5月2日火曜日

北完全包囲!海自最強「いずも」出撃、日米英仏の海軍結集 強引な海洋進出続ける中国けん制の狙いも―【私の論評】在日米軍は、中国牽制のため日本国内再編も実行中(゚д゚)!

北完全包囲!海自最強「いずも」出撃、日米英仏の海軍結集 強引な海洋進出続ける中国けん制の狙いも

海上自衛隊最大の新型ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」の引き渡し
式を終え、飛行甲板に整列し敬礼する乗組員ら
2015年03月25日
 朝鮮半島の高度な緊張状態が続くなか、強固な「日米同盟の絆」が示された。海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」が1日午前、海自横須賀基地(神奈川県)を出港、米海軍補給艦の防御を行った。昨年3月に施行された安全保障関連法に基づく米軍の「武器等防護」は初めて。加えて、日米英仏4カ国による初の合同訓練も3日から実施される。核・ミサイル開発を強行する北朝鮮に圧力を加える一方、東・南シナ海で強引な海洋進出を続ける中国を牽制(けんせい)する狙いだ。

 「いかなる事態にも、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くことは、政府の最も重要な責務だ。そして、大切なことは『有事を事前に防ぐこと』だ」「平和安全法制(安全保障関連法)では、あらゆる事態に隙間のない対応ができる態勢を完備した」

 安倍晋三首相は先月末、夕刊フジ「GW特別号」(2日発行)の単独インタビューでこう語った。その強い信念と覚悟が表れたといえるのが、海自史上、最大級の護衛艦である「いずも」の動きだ。

 政府関係者によると、「いずも」は、護衛艦「さざなみ」とともにシンガポールで今月開かれる国際観艦式に参加するため、1日に横須賀基地を出港。東京湾を出たところで、米海軍補給艦と合流して西へ向かう。補給艦は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮に対する警戒で、日本周辺に展開している米軍艦艇に燃料などを届ける。

 「いずも」は基準排水量1万9500トン、全長は248メートルと、東京都庁(243メートル)より大きい。最大14機のヘリコプターを搭載できる。多くの哨戒ヘリを一気に投入することで、潜水艦捜索能力が強化される。米補給艦に近づく他国軍潜水艦の警戒・監視に当たる。

 ただ、防空能力や攻撃能力を必要最低限しか装備していない。このため、「いずも」以外の護衛艦も米艦防護に加わる可能性もある。日米の連携を実際の任務でも示し、「世界規模の脅威」となった北朝鮮の暴発を阻止する。

 韓国で行われていた米軍と韓国軍による合同野外機動訓練「フォールイーグル」は4月30日に終了したが、朝鮮半島の緊張状態は続いている。

 朝鮮人民軍の創建85年の記念日「建軍節」(同25日)に合わせて、南東部にある元山(ウォンサン)一帯で、300門余りの長距離砲などを投入した過去最大規模の火力訓練を行った。同29日には、平安(ピョンアン)南道、北倉(プクチャン)付近から弾道ミサイル1発を発射した。

 米韓両軍は警戒態勢を緩めていない。

 世界最強の米原子力空母「カール・ビンソン」と、韓国海軍の共同訓練は同29日から始まった。韓国からはイージス駆逐艦「世宗(セジョン)大王」などが参加。巡航ミサイル「トマホーク」を154発も搭載する、米海軍最大の原子力潜水艦「ミシガン」も、半島周辺にとどまっている。

カールビンソン
釜山港に入港した「ミシガン」
 アジア太平洋地域の平和と安定を守る、新たな動きも明らかになった。

 日米英仏4カ国による合同訓練に参加するため、フランス海軍の強襲揚陸艦「ミストラル」も先月29日、海自佐世保基地(長崎県)に寄港したのだ。訓練は3日から22日まで、米領グアムなどで実施される。

フランス海軍の強襲揚陸艦「ミストラル」
 「ともに手を携えて訓練することで、相互運用性を高められる」

 艦長のスタニスラス・ドゥ・シャルジェール大佐は、こう語った。

 「ミストラル」には、英海軍ヘリコプターを搭載しており、水陸両用作戦を担う陸上自衛隊の西部方面普通科連隊員や、米海兵隊員らも乗せて5日に佐世保を出港する。海自の輸送艦「くにさき」と、共同訓練を行いながら南下し、グアム周辺では4カ国で上陸訓練などを行う。

 ドナルド・トランプ米大統領は4月29日、米CBSテレビのインタビュー(同30日放映)で、北朝鮮が「6回目の核実験」を強行した場合、軍事行動に踏み切るのかと聞かれ、次のように答えた。

 「分からない。そのうち分かるよ」

 軍事的選択肢を排除しない考えを明確にした。

【私の論評】在日米軍は、中国牽制のため日本国内再編も実行中(゚д゚)!

以前このブロクで北朝鮮有事の8つのリスクについて掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮有事が日本に突きつける8つのリスク【評論家・江崎道朗】―【私の論評】 森友学園問題で時間を浪費するな!いまそこにある危機に備えよ(゚д゚)!
先月終了した米韓合同演習「フォールイーグル」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、朝鮮半島リスクのうちの中国がらみのリスクをこの記事から以下に引用します。
 日米韓三か国が朝鮮半島有事対応に追われている隙をついて中国が例えば尖閣諸島に海上民兵――米軍はLittle green menと呼ぶ――を送り込んでくる可能性がある。日本としては、朝鮮半島からの避難民対応で海上保安庁の巡視船を日本海に配備しなければならず、尖閣諸島周辺はがら空きになる。もちろん自衛隊も朝鮮半島対応に追われている。 
 その隙を衝こうと中国なら考えているはずだ。正規軍を送れば国際社会から非難されるが、漁民を装った「民兵」が荒天を避けるために尖閣諸島に避難し、そのまま居座るケースが考えられる。
このリスクに関しては、あり得ると私は思っていましたが、朝鮮半島付近にこれだけまるで武器の展覧会のように、空母などの艦船や潜水艦が集結しているのですから、仮に中国がこのような野望を抱いていたとしても、実行するだけの勇気はないことでしょう。

これだけの大量の武装集団が控えているそのすぐそばで、そのような素振りでも見せれば、まずは激しく牽制されるだろうし、本当に尖閣付諸島に海上民兵でも送り込むようなことをすれば、日本側もこれに厳しく対処するでしょう。

それにこれはどの国からみても、火事場泥棒のように見えますから、米国などもこれに対処しやすいでしょう。米国も南シナ海の中国への牽制として、これを見過ごすことしないでしょう。

そうして、北朝鮮有事でも米軍はこれだけの武装集団を送り込んでくるわけですから、これが中国有事ともなれば、とんでもないことになると、考えていることでしょう。

それと、在日と米軍は、現在の北朝鮮への対応そのものとは直接関係なく、日本国内の米軍の再編を勧めていました。

在日米軍は、元々海兵隊や海軍の最先端航空戦力を中国と北朝鮮に近い日本の西部地域に集中させる再編作業を今年中に終える予定でした。この改編作業が終われば、山口県に位置する米海兵隊の岩国基地は、日本本土から中国と北朝鮮を牽制する前哨基地として生まれ変わることになります。

F35B戦闘機が到着し、関係者らによる式典が行われた=今年1月20日午後、山口県岩国市
昨年8月23日、武井俊輔・外務大臣政務官や宮沢博之・防衛大臣政務官などが、山口県岩国市で福田良彦・岩国市長に、来年1月から米国の最新鋭ステルス戦闘機F-35Bを在日米軍岩国基地に配備する計画を伝えたと公表しました。この計画に基づき、来年1月に10機、8月に6機のF-35Bが岩国に追加配備されます。この機種は一般空軍用F-35A、艦載機用F-35Cとは異なり、垂直の離着陸が可能です。

さらに、日米両国はこれまで進めてきた在日米軍の再編計画に基づき、現在、米第7艦隊の母港である横須賀に配備された空母「ロナルド・レーガン」などで運用される艦載機59機(FA-18ホーネットとスーパーホーネットなど)を神奈川県厚木基地から岩国に移転します。
FA-18スーパーホーネット
在日米軍はこれまで横須賀に近い厚木基地において艦載機の整備と訓練のための陸上基地として活用してきたのですが、中国や北朝鮮などに近い西部地域に拠点を移すことになります。これに先立ち、在日米軍は2014年8月に沖縄に配備されていた航空給油機KC-130の15機を岩国に移転しました。

こうした一連の動きは、北朝鮮の核・ミサイルの脅威と中国の海洋進出への対抗を迫られている日米同盟にとって、自然な選択と言えます。米国は、日本の集団的自衛権について初めて「歓迎」の立場を明らかにした2013年10月、日米安全保障協議委員会(2+2会議)で、当時開発がまだ終わっていなかったF-35Bを「2017年に(米)国外では初めて日本に前方配備する」計画を明らかにしました。

現在も岩国には米海兵隊のFA-18ホーネットとAV-8ハリアーなどが配備されています。F-35Bはこれらの機種に代わるものとして、昨年1月から新たに配備されました。

岩国基地へのF-35Bの配備は日米同盟と中国の激しい力比べが続けている東アジア情勢に複合的な影響を及ぼすものとみられます。F-35Bは、高いステルス性能を備えている上、行動半径が1000キロメートルを超えます。

また、機体に射程距離が370キロメートルに達する「空中発射巡航ミサイル」(JASSM)を搭載できます。F-35Bが岩国から発進した場合、日本海の公海上で北朝鮮の弾道ミサイル発射基地を原点打撃する能力を備えることになります。


さらに、F-35Bは、有事の際、いずもなど日本の軽空母に離着艦し、弾薬の提供と給油を受けることもできます。日本政府は、米国に対するこのような後方支援ができるように、一昨年9月、安保関連法を改正しました。実際このようなことが行われる可能性も十分にあります。

F-35Bは、中国牽制にも活用されます。この戦闘機を運用する予定の米海兵隊の強襲艦LHD-6 ボノム・リシャールは、長崎県佐世保に駐留しています。米海兵隊の強襲艦がF-35Bを乗せたまま、東シナ海と南シナ海の広い領域を監視し、中国の海洋進出を牽制できるのです。さらに、岩国にはKC-130空中給油機が15機も配置されており、F-35Bの活動範囲は飛躍的に拡大することになります。
強襲艦LHD-6 ボノム・リシャール
現在の北朝鮮有事に備えた行動とは別個に、米国は日本国内でこのような軍事的な再編を行っているのです。

さらに、最近の北朝鮮に備えての日米の緊密な連携ぶりは、中国にとってはかなりの脅威だと認識されていることでしょう。

北朝鮮有事に備えてでさえ、現状の規模の展開がなされているわけですから、これが中国に対するとなれば、この数十倍になることも予想できます。日米英仏どころか、世界中の武装集団が集結することになるかもしれません。

ただし、尖閣の危機が完璧に去ったというわけではありません。沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で先月30日、中国海警局の船3隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。尖閣周辺で中国当局の船が確認されたのは2日連続でした。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載していました。領海に近づかないよう巡視船が警告した。29日は4隻が確認されましたが、1隻は同日午後6時半ごろに接続水域の外に出ました。

日本側としては、中国が火事場泥棒のような真似をしたら、排除や逮捕するなどして、すぐにこれに対処した上で、全世界に向かって中国の火事場泥棒的行動を非難し、その無法ぶりを世界に強く印象づけるべきでしょう。占拠された後で、これを非難しても後の祭りです。

2017年5月1日月曜日

やっぱり「教育の無償化」は、国債発行で賄うのが正解―【私の論評】国債の原理を理解できない進次郎は顔を洗って出直してこい(゚д゚)!

やっぱり「教育の無償化」は、国債発行で賄うのが正解だ
  進次郎発言のズルいところ

教育無償化について、維新の党が「憲法を改正して実現させよう」と問題提起したら、自民党・公明党でも本格的な検討が行われるようになった。自民党内の動向はどうなのか。

3月29日、自民党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」(小泉進次郎小委員長代行、村井英樹事務局長)は、幼児教育無償化の財源を保険料で賄う「こども保険」を提唱した。さすがの小泉進次郎氏、発信力は大きく、これは多方面で話題になった。

この問題は、小泉氏も含めた教育再生本部の「恒久的な教育財源確保に関する特命チーム」で検討されることとなっている。

確かに小泉氏の発信力はたいしたものであるが、「保険」というのは詐称に近い話だ。政治家たるもの、言葉をもっと大切にしたほうがいい。学生時代に「保険数理」を勉強した筆者からみれば、これは保険でないものを保険といっているようにしか見えないのだ。

まず「保険」の意味をはっきりさせよう。

保険とは、偶然に発生する事象(保険事故)に備えるために多数の者が保険料を出し、事象が発生した者に保険金を給付するものだ。

さて、自民党若手が提唱した「こども保険」であるが、こどもの保育・教育のためなので、この場合の偶発事象(保険事故)はこどもが生まれること、になるだろう。公的年金の加入者、つまり20歳から60歳までの現役世代の人がこの保険に加入し、子育てする人が保険給付を受け取る仕組みになるだろう。

となると、矛盾が出てくる。子育ての終わった現役世代の人には、偶発事象がまず起こりえない。これらの人は「こども保険」に入るメリットはなく、保険料を取られるだけになってしまう。

すると、被保険者はこれから子育てをする若い人にならざるを得ない。しかし、それでは保険にならない。一般的に、若い人の多くがこどもを持つからだ。仮に、そういう保険を作ると、こどものいない人に大きな保険料負担を強いることになってしまう。

本音を言えば子育て支援について税金を財源にしたいが、税金では世間の反発が起こるので、「保険料」に名前を変えて国民から徴収しよう…そういう意図があるのだろうが、バレバレである。

おそらく「保険」という名称にしたのは、日本人の保険好きを悪用したのだろう。これまでの保険会社の営業努力の賜物であるが、保険契約額対国民所得比をみると、日本は2倍程度であり、先進国の5倍程度と比べるとかなり大きく、日本人の保険好きは国民性なのだ。

では、保険という名称ではなく、「こども税」ならどうか。これは政策論としてはありえる。ただし、筆者の提唱する「教育国債」との比較で、どちらがいいかを有権者がしっかり見定める必要があろう。

  「未来への投資が大事」というなら…

新聞などでは「教育国債」という言葉自体はよく出てくるが、まとまった考察は筆者くらいしか書いていないようだ。本コラムの読者であれば、2016年10月10日付け「日本がノーベル賞常連国であり続けるには、この秘策を使うしかない!」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49906)を覚えているだろう。

そこでは、「知識に投資することは、常に最大の利益をもたらす(An investment in knowledge always pays the best interest.)」というベンジャミン・フランクリンの名言を引用しながら、教育を投資として捉えると、社会的な便益もコストより高いことを紹介し、そうであるなら、国債で教育の財源を賄うのがいいと書いた。

実は、この考え方が以前から財務省の中にも存在していたことをバラしてしまったコラムでもあった。

簡単にいえば、有形資産も無形資産も、経済発展のためには欠くことができないものだ。しかし、今の財政法では有形資産の場合にしか国債発行を認めていない。政治的な議論をするのであれば、この財政法を改正して、無形資産の場合にも国債発行を認めるべき、というわけだ。

しかも、統合政府の考え方を用いれば、日本の財政再建はほぼ終了という段階であり、国債発行を気にする状況でない(この統合政府の考え方は、先日ノーベル賞学者のスティグリッツ氏が来日して経済財政諮問会議の場で安倍首相の前で披露しており、筆者の思いつきではなく、世界の常識であることが明らかだろう)。

いずれにしても有形資産と無形資産を差別するなというのは、強力な正論である。財務官僚は「無形資産はうまく計れない」などという小言を言うが、後に述べるように、教育の投資効果はかなり大きく、有形資産を凌駕するので、あまり細かいことを考えなくてもいい。

財務官僚は、官僚社会で裁量的に自分たちに都合良く振る舞いたい。これは、本コラムで指摘してきた森友学園問題の本質を見てもわかるだろう。

その財務官僚がもっとも嫌うことは、「財政法」の改正である。ここだけは、政治家には決してふれられたくない世界なのだ。もちろん、政治家はローメーカー(lawmaker)であるが、そんな建前はお構いなく、立法も事実上支配したいといのが官僚社会の本質である。

ただし、政治はそれではダメだ。しっかりと未来をみて、必要な法改正を行うべきである。

以下では、無形資産を有形資産と差別せずに同じように扱うべきという単純な正論以外にも、教育を「良質な投資」と考えるべき理由を挙げよう。

幸いにも、安倍政権は、未来投資が重要だという立場をとっている。であれば、教育を未来投資と捉えなかったら、画竜点睛を欠く議論になってしまう。

  将来への付け回し」では断じてない

OECD(経済協力開発機構)では、いろいな教育に関するデータを国際比較の形で毎年公表している(Education at a Glance 2016 http://www.oecd-ilibrary.org/education/education-at-a-glance_19991487)。

その中で、先進国における高等教育投資の便益とコストを私的・公的に算出したものがある。私的な便益は、高等教育を受けると所得が高くなることなどである。公的な便益は高くなった所得から得られる税収増などが基となる。

私的な便益コスト比(B/C)と公的な便益コスト比をみると、ほとんどの国で私的B/Cのほうが公的B/Cより大きい。ところが、一国だけまったく逆に、私的B/Cよりはるかに公的B/Cのほうが大きい国がある。それが日本だ。




これほど、公的B/Cが大きいのであれば、日本は高等教育に公的資金をどんどん投入すべきである。

なぜ、日本だけが公的B/Cが大きいのであろうか。それは、日本の高等教育における公費負担が少ないからである。公的負担が少ないので、その便益は限界効用が低減する前であり、便益が大きいのだ。

ちなみに、初等中等教育では日本は他の先進国と比べて遜色ない公費負担になっているが、高等教育ではかなり低くなっているのだ。

公的資金投入にあたって、なにを財源にすればいいのか。


もちろん、税を財源としてもいい。しかし、将来への投資であり、社会的なリターンが期待できる場合には、便益が及ぶ将来にわたって税財源を均等化できる国債発行が理にかなっている。ここで、税財源に頼るのは、東日本大震災で復興財源を復興税に依存したような経済理論の誤りである。

国債発行というと、すぐに「将来へのつけ回し」「財源の先送り」という議論が出てくる。しかし、これは、経常経費と投資性経費を混同したものであり、投資性経費であれば、国債発行のほうが合理的である。潔いのはどっちだ?

実際、世界をみれば、教育を投資として捉えて、国債発行で財源を賄った例がある。この点、大災害の時に復興を増税で賄った例は、筆者の知るところではない。先例がないことがいかにデタラメであるか、先例のあることには一定の合理性があると思っていいだろう。

教育投資のための国債発行では、フランスの「サルコジ国債」が有名である。

2009年6月、サルコジ大統領は、両院(上院:元老院、下院:国民議会)合同議会において、大規模な特別国債の発行を発表した。

演説の中で大統領は、

「国土整備や教育、研究、技術革新など、我々の未来にとって極めて重要な分野が多くあり、年間予算の厳しい枠組みの中では対応できない。我々がやり方を変えない限り、優先課題を掲げるだけで実現できない状態が続く。私は投資を犠牲にしない。投資なくして未来はない」

と述べ、未来への投資のための国債発行の重要性を強調した。

まさに、安倍政権の未来投資と同じものだ。

サルコジ大統領の意向は、未来のための投資プログラム(Programme d’investissements d’Avenir:PIA)とされ、5つの優先分野(①高等教育:110億ユーロ、②研究:79億ユーロ、③産業・中小企業:65億ユーロ、④持続的な発展:51億ユーロ、⑤IT:45億ユーロ)を対象として投資することとなった。通常の予算とは別途管理し、未来のための投資プログラム委員長を任命し、実施等をフォローされている。

教育国債は決して奇策ではなく、未来投資のための王道である。しかも、今の日本は、統合政府で見れば財政再建が終了したようなものである……ということは、裏返せば、マーケットでは国債不足になっているともいえる。

そのため、先日、日銀は買いオペではなく売りオペをせざるを得なくなった。東京市場をまともな金融市場とするためにも、一定量の国債は必要である。その意味からも、教育国債が望まれる。

教育国債を否定する人は、「負担の先送りになる」というが、逆に言えば税財源で行うことは親の世代にせびっているようなものだ。

教育国債は出世払いであり、後で働いて返すという方が潔い。これは受益者負担原則にもかなっている話でもあるのだ。

【私の論評】国債の原理を理解できない進次郎は顔を洗って出直してこい(゚д゚)!

さて、上の記事で教育国債について述べていましたが、そもそも小泉進次郎氏などは国債そのものに対する考え方が完璧に間違えているようです。以下に、国債について掲載します。

国債の発行は、そもそも国民の資産を増やします。現在のように不況ゆえに金融緩和を行っている状態では、金利も上がらないのでクラウディングアウト(民間投資の追出し効果)も起こりません。

国債の発行については、財政法4条により厳しい制限が課せられています。現在の財務省が「財政法四条は、負担の世代間公平という考え方に立って公共事業費等に限って公債発行又は借入れを認めるという形で健全財政の原則を定めたものと解される」と、国債の発行は世代間の不公平に繋がると考えていることは明らかです。

(小村武「予算と財政法」(新日本法規出版、初版昭和62年(1987年)、四訂版平成20年(2008年))

しかし、そもそもこの考え方そのものが大きな間違いです。

財政法の立法当時の議論に戻れば、同時に、世界恐慌後の1930年代の北欧の財政論を参考にして、不況期には積極財政を採るべきであるという趣旨も含まれていたことが分かってきました。

さて、ここで話を本筋に戻します。小泉進次郎氏らの主張は、教育の無償化などは、国債ではなく「こども保険」はっきり言ってしまえば、実質上の増税によって賄うべきだというものです。

小泉進次郎
「教育無償化の原資は当代から徴収し、国債は次世代から徴収す構図に見える。年金も減額される中で、次世代はどんな負担を強いられるのか?」というものです。この主張は、財務省が唱える、世代間の公平の観点から、基礎的財政収支を均衡させるべきという原則に基づいた主張です。

しかし、そもそも、本当に基礎的財政収支を均衡させることが、本当に世代間の公平に繋がるのでしょうか。結論からいうと繋がりません。

むしろ、誕生期から成人期にかけて人材育成にしっかりと国が投資をすることによって、国力を増大させていくということが投資対効果という意味で適切です。また、人の能力を引き出させるような機会を提供した上で、インフレとなり金利が上がるような経済状況の好転が実現した時に、増税をすれば、増税される世代は、過去の投資の結果によって生じた担税力で担税するので、こちらの方が公平です。

日本が仮に対外純負債国、経常収支も赤字という国であれば、「世代間の公平の観点から、基礎的財政収支を均衡させるべき」という原則はある程度は妥当であると考えられます。(この場合も、原則であって米国・英国などの例外はあります)

しかし、日本は対外純債権国、経常黒字国です。国債を発行しても、自国内で消化できますし、そもそも自国通貨建てなので対外的に取り立てにあうこともありません。さらに、ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が主張しているように、統合政府府の考え方(政府と日銀の連結決算の考え方)を用いれば、日本の財政再建はほぼ終了という段階であり、国債発行を気にする状況ではありません。

日本は過去においては増税と、金融引締めなどによってデフレが続いていました。現在でも、増税の悪影響があり、デフレ一歩手前の状況にあると言っても良い状況です。そんな国では、金融緩和と、財政出動を大規模に継続的に行って初めて、経済状況を好転させ、デフレから脱却することができます。

つまり、多額の国債発行→財政拡張政策→経済状況の好転→資金需要の増加→金利の上昇という順番となります。国債償還時に得た資金が民間投資へ回るような状況になるということは、景気が良くなっているということなので、将来世代にとっても良いことになります。

また、現在の政府支出の構造が、子ども手当や高校無償化など、次の世代が競争力を持つ分野に力を入れている点が、世代間の公平性を議論する上で、更に重要な要素となります。

今まで、国債を発行して未来への投資をするということは、建設国債を発行して公共事業を行うということしかないと考えられてきました。しかし、この考え方は、ハードウェア中心の投資の考え方、分類すれば「産業革命期末期」の考え方だと言えます。

現在は、コンピュータの発明と電気通信網の整備により、情報通信革命期(IT革命期・ICT革命期)の初期にあります。投資については、人間の能力にどれだけ投資するかが国家の帰趨を決めるような時代になっています。

国債を発行して「人への投資」を行うことは、日本の経済力を更に拡大し、相対的な通貨の価値を維持することができるので、更に国債を発行する余力を持つことができるようになることに繋がります。


財務省の頭の中、もしくは政治家などを説得するためのご説明資料の中には、上記のような構図があるのでしょう。そうして、無論小泉進次郎氏の頭の中にも・・・・。しかし、結局のところ国債を発行せずに、実質上の増税で教育の無償化をしてしまえば、現代世代と将来世代の格差ならびに現在世代内の格差の両方をさら助長してしまうことになります。

今度は、逆に人への投資をしないとどうなるのか、という観点で見ていくことにしましょう。

同じ様なことは、クルーグマンが「さっさと不況を終わらせろ」でも述べていたことですが、大切なことなので、私の言葉で書かせていただきます。

最近では、ある程度緩和されてきましたが、わずか数年前までは、皆様の周りにも、大学院に行っても就職先がないというような人がいらっしゃったと思います。また、二十代、三十代に正規社員として仕事につくことができず、「安定したところでしっかりと働くゆえに自分の成長に取り組める場」を持てない若者も大勢いました。二十代、三十代にきちんとした成長を遂げなければ、四十代、五十代の働き盛りの時に、高い生産性を持つことはできません。

そのため、若年期には、できれば完全雇用が達成できるようになるくらい、仕事を提供することが必要です。それには、雇用状況が良くなるようにに、金融緩和策をとり、さらに経済状況が好転するように持っていく経済政策や社会保障の分野等で公的雇用を増やす政策が必要になります。それゆえ、若者の雇用状況を改善できるような経済状態になるまでは、公平の観点から見ても国債の発行を行い、政府支出を拡張することは正当性があるわけです。

そうして、このようにして育てられた若年層は将来大きく花を咲かせ、投資した分よりもさらに大きな富を将来の日本にもたらしてくれることになるのです。

国債の原理を理解しない小泉進次郎氏には顔を洗って出直してこいと言いたいです。

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2017年4月30日日曜日

民進党が没落すればするほど、日本経済が「命拾い」する理由―【私の論評】自民党は人の振り見て我が振り直せ(゚д゚)!


「シロアリ演説」を覚えていますか?

 ひとり、ふたりと辞めていく

民進党代表である蓮舫氏の求心力の低下が止まらない。

4月10日に長島昭久元防衛副大臣が離党届を出したのに続き、13日には細野豪志氏が代表代行を辞任する決意を固めた。

蓮舫氏は7月に控える都議選に向けて、共産党と共闘する姿勢を崩さないが、これに対して長島氏と細野氏は強い反感を抱いたのだ。

民進党の支持率は今年に入ってひとケタ台で低迷していて、「自民一強」体制はますます色濃くなってきている。

振り返れば、民主党時代の'12年も消費増税をめぐって党内がバラバラになり、勢力を落とした。今回もまるで同じ様相を呈しているが、民進党は仮にも野党第一党だ。民進党の「没落」は、今後の政局および日本経済にどれほどの影響を与えるのだろうか。

民主党時代の消費増税騒動のとき、当時の首相は野田佳彦氏であった。

その野田氏は政権交代選挙となる'09年8月の衆院選の街頭応援演説において、有名な「シロアリ演説」をしている。

天下り官僚をシロアリにたとえて、「シロアリを退治しないで増税はおかしい」と宣言した。さらにこの演説では、「マニフェストは命がけで実行する。書いてないことはやらない」とも言った。

野田佳彦氏の有名な「シロアリ演説」 写真はブログ管理人挿入以下同じ
ところが政権交代後、野田氏はすっかり変わってしまった。

鳩山由紀夫政権で藤井裕久財務相の下で副大臣になったのだが、実はこのとき、財務省OBである藤井氏が後輩の財務省官僚に対して野田氏を「財務省色に染めろ」と指示。結果、野田氏は完全に財務省の操り人形になり、「シロアリ演説」での意気込みはどこかへ飛んで行ってしまったのだ。

かくして党内の意見がバラバラになった民主党は政権を手放すことになるが、その「戦犯」の一人は野田氏であり、その野田氏がいま民進党の幹事長を務めていることからも低迷の理由は推して知るべし、である。

 日本経済は命拾い

もともと民主党が仕込んだ消費増税は、自民党に政権交代したあとに実施された。

'14年4月、税率は5%から8%になったが、10%への再増税はすんでのところで止まっている状態だ。'14年の増税は、日本経済にとっては爆弾が爆発したようなもので、アベノミクスで上げ調子の兆しがあった景気が一気に停滞した。

もし再増税という「2発目の爆弾」が立て続けに爆発していたら、日本経済はとっくに沈没していたかもしれない。

民進党は依然として、財源の確保に増税は不可避であるとの方針を持っているが、いまの蓮舫代表・野田幹事長の体制で民進党が勢いを取り戻したら、2発目の爆弾が炸裂するのは秒読みとなる。

逆にいえば、民進党の分裂が進むだけ再増税の可能性が減り、日本経済は「命拾い」することになる。

今後の政局を見るうえで気にかかるのはマスコミの動向である。

新聞を中心とするマスコミのなかには、消費増税に関して賛成の立場を取るものもある。というのも、増税が達成されれば、新聞への軽減税率が適用されることになるからだ。

だからマスコミは「野党分裂」の現状よりも「自民一強」を強調することで、消費増税の議論を読者の目につかないようにしているふしがある。マスコミがやたらと野党を持ち上げているような報道が出たときは、一歩引いて見たほうがいい。

【私の論評】自民党は人の振り見て我が振り直せ(゚д゚)!

野田佳彦氏の有名な「シロアリ演説」の動画を以下に掲載します。



この演説素晴らしいです。現在聴いても素晴らしいです。この演説の通りの政策を実行したら、今頃民主党は未だ政権の座についていたかもしれません。そもそも、一部のパヨクを除く多くの一般国民はまずは経済がまともであれば、政府に対してさほど不満はいだきません。多少悪かったにしても、さほどではないならば、許容します。しかし、経済が悪ければ他がどのように良くても、許容しません。

さらに、野田氏は当時の民進党の中では、保守派とみられた人です。2012年、10月14日に海上自衛隊の観艦式に出席した当時の野田総理大臣は、自衛官に向けた訓示の中で、「一層奮励努力」等の旧日本海軍が第二次世界大戦前に使用した用語を用いていました。観艦式は神奈川県沖の相模湾で行われ、護衛艦「くらま」に乗艦した首相らが、艦艇の洋上パレードや潜水艦の潜航浮上などを観閲しました。

これは、当時の中国に対しては、かなりの脅威でした。何しろ、この観艦式には実質空母と言っても良いような、「ひゅうが」が参加していました。

これは、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)と呼ばれる艦です。最大積載機数は11機です。これは、当時というか現在でもまともな「空母」を作ることができない中国にとっては、かなりの脅威でしたし、さらには旧海軍の用語も用いた当時の野田総理の旧帝国海軍の用語を用いた訓示は、中国にとっては日本海軍の復活を想起させ、かなりのプレッシャーを感じていたはずです。

まさに、この動画の通りの政策をしていたら、野田政権は長期政権になった可能性すらあります。

しかし、そうはなりませんでした。それは、野田氏がすっかり財務省色に染まり、その結果、野田氏は完全に財務省の操り人形になり、「シロアリ演説」での意気込みがどこかに飛んでしまったからに他なりません。

デフレの最中に、消費税増税は経済政策として、悪手中の悪手であることは言うまでもありません。これについては、ここでは詳細は説明しません。これについては、以下の記事をご覧になって下さい。
1000兆円の国債って実はウソ!? スティグリッツ教授の重大提言―【私の論評】野党とメディアは、安保や経済など二の次で安倍内閣打倒しか眼中にない(゚д゚)!
ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ教授
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではスティグリッツ氏が「国の借金が1000兆円ある」という主張を鵜呑みにしてはいけないと警告していることを掲載しました。

この記事には、他の記事のリンクも含んでいます。これらの記事も読んでいただければ、日本政府の借金は、政府の資産を考慮に入れ、さらに日銀をも含む連結決算でみれば、今年からは、借金どころか黒字になり財政再建は終了するであろうことが理解できます。

この状況では全く増税する必要はないばかりか、8%増税を実施した2014年度にもその必要性はなかったことがご理解いただけるものと思います。

野田氏の財務省色への染まり具合は相当酷いものがあります。その実体を示すような内容もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
臨時国会も安倍政権VS財務省 民進党の本音は消費増税優先か―【私の論評】元々財務省の使い捨て政党民進党にはその自覚がない(゚д゚)!
参院本会議で、民進党の蓮舫代表の代表質問を
聞く安倍晋三首相(左奥右)=昨年9月28日午前
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、いかに野田佳彦氏が財務省色への染まったているかを示す部分のみ以下に引用します。

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民進党と財務省といえば、民進党が民主党だったときの民主党政権の最後の、2012年の野田総理による衆院解散に関して、当時みんなの党の代表であった渡辺喜美氏が会見で興味深い話をしていました。その動画を以下に掲載します。



この動画の7:30あたりのところから、渡辺氏が記者になぜこのタイミングでの解散になったのか、問われて以下のように話しています。
「これは、財務省の路線そのものなのであって、とにかく新製権で、予算編成をしたいと・・・。旧政権でつくった予算をグタグタにされるのは困るという財務省の路線が、そっくりそのまま、野田総理を動かしたというだけのことですね。 
党首会談をやったときに、もう自分は財務省に見放されているということを、はっきりと言っていました。その見放された総理が、最後まで財務省路線に乗っからざるをえないと、まあー、非常に情けない内閣ですね」。
民主党政権時代には事業仕分けなど実は民主党時代のかなりの政策が、財務省によって計画され実行されたものです。民主党政権時代には、財務省がすすめたものは、何とか前進することができましたが、その他の政策はほとんどが頓挫したため、民主党政権は3年3ヶ月漂流していたようなものだと批判する人も大勢います。

現在の民進党も、民主党時代のように財務省におんぶに抱っこという姿勢はあまり変わっていないようです。それは、蓮舫代表をはじめとして、党幹部の全員が10%増税に賛成なことでも十分にうかがえます。

上の高橋洋一氏の記事では、「民進党は依然として、財源の確保に増税は不可避であるとの方針を持っているが、いまの蓮舫代表・野田幹事長の体制で民進党が勢いを取り戻したら、2発目の爆弾が炸裂するのは秒読みとなる」としています。

現在の民進党でまともな経済観を持っているのは、馬渕議員だけです。実は、もう一人金子洋一氏もまともな経済観をもつているのですが、残念ながら直近の参議院選挙で落選してしまいました。

自民党ですら、安倍総理と一部の側近とその他のほんの一部の議員だけが、まともな経済観を持っているのですが、その他は民進党の議員とさほど変わりません。だから、こそ安倍総理大臣自信は8%増税には反対だったにもかかわらず、財務省をはじめ与野党の議員のほとんどが8%増税推進派であったばかりか、マスコミから識者まで諸手を挙げて推進しました。

しかも、彼らは8%増税しても日本経済への影響は軽微であるとしたため、安倍総理は8%増税を決断せざるを得なくなり、実施した結果が大失敗でした。


2014年4月に行われた8%増税の影響で、日本経済が大打撃を受けてました。1997年の増税時と比較してみると、倍以上も消費が落ち込んだのです。これはかつて無いほどの事態で、リーマンショックや東日本大震災というような外的要因を除けば、戦後史上最悪の値となりました。その後も、個人消費は十分に回復せず、GDPの低迷は続いています。

これに不信感を抱いた安倍総理は以降、10%増税は絶対にしないという方針で臨んでいます。

しかし、以上にあげたように現在の自民党の状況は、安倍総理とその側近と一部の議員だけが増税に反対であり、その他の議員は、民進党の愚鈍な議員と同じく増税推進派です。無論、安倍総理が増税反対なので、内心は増税賛成なのですが、安倍総理に従っているだけです。

このままでは、ポスト安倍とはいっても適切な人材が存在しません。自民党の議員らも、現在の民進党の危機的状況はどうして発生したのか真摯に受け止め、勉強し、まとも経済観を持つか、それができないまでも、こと経済に関しては、予測が当たっていない財務省や官僚の言うことなどは無視して、とにかく過去の経済予測があたっている人の意見を尊重するようにすべきです。

そうでないと、いつ自民党も民進党と同じく衰退するかわかりません。実際、自民党は民主党に政権交代されているではありませんか。第一次安倍政権の時にも、経済を重視しなかったために、安倍政権は崩壊しました。

その時のことを真摯に反省した安倍政権は、第二次安倍政権では経済を最優先させています。

今のまま、安倍総理が辞任したとしてら、たちまち自民党も衰弱します。おそらく、また短期政権が何度か続き、政権交代前の民主党のように、10%増税はしない、官僚を退治することを主張する政党に負け再び下野することになります。

まさに、今の自民党は人の振り見て我が振り直せという格言を思い出すべきなのです。

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