2022年9月30日金曜日

高市氏が〝捨て身〟の告発!岸田内閣「中国スパイ」を野放しか 「セキュリティー・クリアランス」提出に圧力、政府内の親中派と暗闘を示唆―【私の論評】危機管理能力があまりに低い岸田政権は、短期で終わらせないと、自民党はおろか、日本国、日本国民が毀損されかねない(゚д゚)!

有本香の以読制毒

高市経済安全保障相は「闘う政治家」としての覚悟を決めたようだ

 高市早苗経済安全保障担当相が28日、「捨て身の告発」に打って出た。先端技術の流出を防ぐため、重要情報を取り扱う研究者らの身分の信頼性を確認する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」をめぐり、政府内の〝抵抗勢力の存在〟や〝親中派との闘争〟を示唆したのだ。「国葬(国葬儀)」で27日に見送られた安倍晋三元首相は生前、日本の国力を維持・発展させるため、欧米諸国では常識である「スパイ防止法」の制定にも意欲を持っていた。日本と中国は29日、国交正常化から50年を迎えた。岸田文雄政権の、国民と国家を守る気概が問われている。ジャーナリスト、有本香氏による緊急リポート。

 現役閣僚による爆弾発言が飛び出した。

 「大臣に就任した日に言われたのは、『中国』という言葉を出さないでくれというのと、来年の通常国会にセキュリティー・クリアランスを入れた経済安全保障推進法を提出するとは口が裂けても言わないでくれと言われました」

岸田首相

 高市氏が28日夜、「BSフジLIVE プライムニュース」に出演した際の発言である。これに岸田首相がどう対処するか〝見もの〟だ。

 経済安全保障については今年5月、経済安全保障推進法が成立したが、同法には最も重要な要素が欠落している。それがセキュリティー・クリアランス、「人の適格性の審査」だ。あえて簡単に言えば、外国のスパイを取り締まるルールである。

 同法成立の前から、筆者はこの欠落を厳しく批判していた。「仏作って魂入れず」のような経済安保法にどれほどの意味があるのか、ということである。国会提出前の今年2月には、自民党の政調会長だった高市氏と『月刊Hanada』で対談し、次のようなやり取りをした。

 高市氏「今年の大きな柱はやはり経済安全保障政策です。どのような事態になっても必要な物資を国内で調達できる環境、サイバー攻撃から国民の生命や財産を守り抜くこと、機微技術の国外流出を防ぐことなどを柱とする『経済安全保障推進法』の第1弾を今国会で必ず成立させたい」

 筆者「かねてより高市さんがおっしゃっていた外国人研究者などのスクリーニング(選別)は、その第1弾には含まれるんですか?」

 高市氏「外国人研究者のスクリーニングは第2弾でやります。これを入れると今国会では通りませんから」

正直に言うと、7カ月前、高市氏のこの答えにひどく失望したものだ。

 対談での高市氏は、「岸田政権をサポートする」「7月の参院選に勝利することが大事」という表明に終始した印象だった。それは政調会長という立場からすると当然ではあるが、あまりにも型通り、多くの読者の失望を誘うものでもあった。

 実は、筆者はこのときの失望を、安倍氏にもぶつけた。「人のスクリーニングを盛り込まないなら、意味のない法律です」と。

 筆者の怒りに対し、安倍氏は「人のスクリーニングを盛り込んだ法律は必ずやるから。こちらもプッシュしていく。ただ、容易でないことは理解してほしい」と答えていた。

 しかしいま、昨晩の高市氏の「告発」を聞き、生前の安倍氏の言葉を思い返すと、経済安保をめぐる自民党内の「闘争」、とりわけ「親中派との闘争」が実感を伴ってみえてくる。2月に筆者が抱いた強い失望は、こうした暗闘への筆者の不理解も少々手伝ったかと反省する。

 今般、高市氏が「捨て身の告発」に打って出たのには、安倍氏の国葬儀が無事終わったことも関係しているかもしれない。国葬儀には筆者も参列したが、かけがえのないリーダーを喪った悲しみ、反省を改めて深くする一方で、国難のいまこそ、「闘う政治家」だった安倍氏の遺志を、皆で継ぐべきという思いにもさせられた。

 高市氏は同じ28日、BS日テレの「深層NEWS」にも出演し、政府による国葬実施の決定過程について次のような苦言を呈している。

 「決定する少し前に国会の議院運営委員会の理事会とか、衆参両院の議長とか、そういったところに話がちゃんとあってもよかったのではないか」

 一連の高市発言を「岸田おろし」や「閣内不一致」というレベルの話題にして済ますべきではない。

 「中国のスパイ」一つ取り締まれない日本に明日はない。安倍氏の志を真に継ぐのは誰なのか―。はっきりさせるときである。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】危機管理能力があまりに低い岸田政権は、短期で終わらせないと、自民党はおろか、日本企業、日本国、日本国民が毀損されかねない(゚д゚)!

上の記事にある、高市氏が28日夜、「BSフジLIVE プライムニュース」に出演した際の発言については、昨日このブログに掲載したばかりです。高橋洋一氏のツイートに掲載された動画という形で掲載しました。昨日の記事のリンクを以下に掲載します。
短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”―【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!
昨日の記事から一部を引用します。
安倍元総理が暗殺された後の、内閣改造は、酷いものでした。露骨な安倍派の排除でした。この内閣改造は、論評にも値しない酷いものでした。

しかも、内閣改造の前には、「統一教会に関係があった人は閣僚から外す」として、旧統一教会と比較的関係が強いとみられていた、安倍派を外す旨を公表しての人事でした。

安倍派という多数派をないがしろにする岸田総理の人事をみて、他派閥も反発を強めたことでしょう。

しかも、内閣改造で頭がパンパンだったとみられる、岸田首相は、中国にミサイルを発射されても、国家安全保障会議 (NSC)を開催しませんでした。

旧統一教会に関しては、厳密な法律の適用や、新たな法律の検討などを飛び越して、憲法や法律に抵触するおそれさえある統一教会排除を宣言し、それこそ、魔女狩りに等しいような批判をした、野党やマスコミの土俵にみずから乗ってしまうようなことをやらかしてしまいました。

この2つのことによって、岸田総理には「危機管理能力」が欠如していることが明らかになりました。これは、歴代内閣の中でも最悪かもしれまません。

以上でもおわかりのように、この記事は、次の自民党内の政局を中心に述べたものです。その文脈で高橋洋一氏のツイートに掲載された高市氏の発言をの動画を掲載したものです。高橋洋一のツイートを以下に再掲します。

昨日の記事には、この動画に続けて以下のように述べました。
このようなことを、外部に漏らしてしまうということは、自民党内で相当不満が鬱積していることを示しているものと考えられます。そうでなければ、このような発言はできないと思います。

安倍元総理の「国葬儀」までは、こらえてきたのでしょうが、こらえきれなくなって高市氏は、このような発言をしたのでしょう。そうして、これは無論高市氏一人ということではないでしょう。
ただ、この発言は上の、有本香氏が語っているように、一連の高市発言を「岸田おろし」や「閣内不一致」というレベルの話題にして済ますべきではないです。

スパイに関しては、最近米国でもショッキングなことがありました。たとえば世界中の人々が利用する巨大SNS(交流サイト)で浮上した〝スパイ疑惑〟が波紋を呼んでいます。米国のSNS「ツイッター」の元セキュリティー責任者が、米議会上院の司法委員会で「ツイッターの従業員の中に中国の工作員がいた」と証言したのです。

不特定多数のユーザーの個人情報が筒抜けになり、工作活動に悪用される可能性があります。日本でも、企業や大学、研究所などにスパイが浸透して、非合法的手段による情報収集や、さまざまな工作活動を行う危険性が指摘されてきました。

これは決して対岸の火事ではありません。日本は最先端の科学技術を誇り、世界中の情報が集中していますが、「スパイ防止法」が存在しません。万が一、逮捕されてもスパイ行為自体については、犯罪ににならず、スパイ行為を実行する際に何らかの違法行為を行っていれば、はじめて犯罪が成立し、それを司法でさばくことができます。スパイ行為自体は、重罪になりません。まさに『スパイ天国』というしかないです。

もともと著名な「ハッカー」として知られたツイッターの元セキュリティー責任者、ピーター・ザトコ氏は米議会の公聴会で13日、重大なスパイ疑惑の存在を証言し、ツイッターが抱える問題点を指摘しました。


ロイター通信によると、ザトコ氏は公聴会で「FBI(連邦捜査局)がツイッターに対し、中国国家安全部(MSS)の工作員が従業員名簿に載っていると通知した」と説明。インド政府の意向を受けた人物も在籍していたと主張し、「(ツイッターは)外国情報機関を探し出し、追放する能力がない」などと批判したといいます。

ザトコ氏は今年1月、指導力の欠如と期待を下回る仕事ぶりを理由に同社を解雇されました。その後、米議会や米証券取引委員会(SEC)、司法省、連邦取引委員会(FTC)などに文書を送付し、告発に踏み切りました。

これに対し、ツイッターは「当社のプライバシーとデータセキュリティーに関する誤った主張で、矛盾点や不正確な点だらけだ。セキュリティーとプライバシーは当社の最優先事項だ」などと反論しました。

世界的企業を直撃したスパイ疑惑だが、日本でも機微に触れる情報や先端技術をターゲットに、海外の工作員が企業に近づく事件が起きています。

2020年には、大手通信会社「ソフトバンク」の元社員が、在日ロシア大使館幹部の男にそそのかされ、通信設備関連の機密情報を持ち出し、不正競争防止法違反容疑で逮捕されました。男の正体はロシア対外情報庁(SVR)のスパイで、他国の科学技術を狙うグループ「ラインX」の要員だったとみられますがが、警視庁公安部の出頭要請に応じず出国しました。

逮捕された合場邦章容疑者(45)

大手化学メーカー「積水化学工業」でも同年、スマートフォン関連技術を中国企業に漏らした元社員が書類送検される事件が発覚しました。中国企業側はSNSを通じ元社員に接触し、巧みに情報を漏洩するよう誘っていました。

日本企業を狙うスパイ事件ではこれまで、外国情報機関の要員らが日本人社員に接近し、漏洩をそそのかすケースが多かったそうですが、グローバル化で社員が多国籍となれば、スパイ本人が社員として浸透するケースも出てくることになるでしょう。

警察当局は、重要な情報が相手方にわたる「後手」を防ぎ、国益を守る観点から、不審な動向を把握した時点で、所属する企業側へ通報する方針にシフトしているそうです。

高市早苗経済安全保障担当相は先月、先端技術流出を防ぐため重要情報を取り扱う研究者らの身分の信頼性を確認する、「セキュリティークリアランス(適格性評価)」制度の検討を急ぐ意向を示しました。

高市氏は「機微情報や重要な技術に接する方々の信頼性を確保しなければ、日本で民生技術として研究してきたものが他国の先進的な兵器に使われる可能性もある」と懸念を示しました。

ただ、日本では工作員の存在や疑いを確認しても諜報活動そのものを取り締まる法律がありません。窃盗や背任、外為法、旅券法違反など、具体的な犯罪がなければ摘発は困難で、「スパイ天国」とも揶揄されています。

高市氏は今年5月、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、セキュリティー・クリアランスに言及したうえで、「これをしっかりやらないと日本が欧米のサプライチェーンから外される可能性もある」「スパイ防止法に近いものを入れ込んでいくことが大事だ」と強調していました。

日本は平和と安全、国民の生命と財産を守るため、スパイの浸透を阻止しなければならないはずです。

にもかかわらず、高市早苗経済安全保障担当大臣は、「大臣に就任した日に言われたのが『中国って言う言葉を出すな。来年の通常国会にセキュリティ・クリアランスを入れた経済安保法を提案すると口が裂けても言うな』と言われた」というのですから、これは一体どうなっているのでしょうか。

誰が高市氏対してそのような発言をしたのでしょうか。岸田総理なのでしょうか。

いずれにしても、岸田政権にはあまりに問題が多すぎです。特に、危機管理能力があまりに低レベルです。短期政権で終わらせないと、自民党はおろか、日本企業、日本国、日本国民が毀損されかねません。

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2022年9月29日木曜日

短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”―【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!

短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”

“最悪の自民党政権”と呼ばれた政権

 岸田文雄政権の支持率が急落している。岸田政権の前の菅義偉内閣は1年1か月で崩壊した。岸田政権はまもなく1年を迎える。岸田政権は大丈夫なのだろうか。永田町では「政権の存続の指標」と言われる“青木方程式”で分析した。なお、内閣支持率、政党支持率はすべてNHK世論調査による。

 “青木の法則”とも呼ばれる「青木方程式」は、自民党の青木幹雄元参院議員会長が経験に基づき提唱したもので、「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を下回ると政権は倒れる」という法則だ。

 確かに、近年の政権が倒れた時の状況を見ると、青木方程式が当てはまるケースは多い。(表1)


 第1次安倍政権以降、8人の首相が誕生しているが、このうち5人の政権は青木方程式が50%を下回り倒れている点を考えれば、青木方程式はある程度は信頼に値すると考えられる。

 ただ、福田康夫政権は青木方程式が50%を下回ってから4か月間生き延びたし、麻生太郎政権は月1度の世論調査で4回も青木方程式が50%を下回り、“最悪の自民党政権”と言われた。

 菅直人政権は4か月連続で50%を下回った後で倒れ、野田佳彦政権は1年4か月の政権期間のうち、12か月も50%を下回っていたことから、青木方程式は50%を下回ったからと言って、すぐに政権が倒れるというものではない。

 一方で、第1次安倍晋三政権以降で青木方程式が50%を下回らなかったのは、安倍政権(第1次から第4次まで)と菅政権だけだが、それでも政権は倒れる。青木方程式が50%を下回っていないから“安泰”というものでもない。

 安倍元首相の長期政権を引き継いだ菅政権は、不十分な新型コロナウイルス対策とワクチン接種対応への遅れに加え、衛星放送関連会社「東北新社」に勤務していた長男と総務省幹部らとの接待会食が明らかになったことが“引き金”となり、支持率の低下を招いた。

 菅政権を引き継いだ岸田政権は、新型コロナ対策以外の政策に対して不満や批判が多く、加えて、旧統一教会と自民党議員の関係に対する説明不足や対応不足を指摘する声、安倍元首相の「国葬実施」に対する反対意見が支持率低下の原因となっている。

 では、岸田政権の支持率と自民党支持率、青木方程式はどのように推移しているのだろうか。

 内閣支持率がもっとも高かったのは、22年5月と6月の59%。自民党支持率がもっとも高かったのは、22年2月の41.5%だった。内閣支持率と政党支持率の合計である青木方程式がもっとも高かったのは、22年6月の99.1%だ。(表2)


青木方程式が急落

 安倍元首相が銃撃によってお亡くなりになったのは7月8日。その後、7月16日から18日にかけて行われたNHKの7月世論調査では、内閣支持率は59%、自民党支持率は38.1%、青木方程式は97.4%だった。

 調査時点ではすでに、安倍元首相を襲撃した犯人と旧統一教会との関連が報道され、さらに、複数の自民党議員と旧統一教会の関連も報道され始めていたことで、自民党支持率は6月世論調査の40.1%から38.4%へ1.7ポイント低下した。

 だが、8月調査では自民党議員と関係が大きく広がり、岸田首相や自民党の対応に対する批判が強まった。加えて、安倍元首相の国葬が決まったことへの批判もあり、内閣支持率は7月の59%から一気に46%へ13ポイントも低下し、自民党支持率も38.4%から36.1%に2.3ポイント低下したことで、青木方程式は97.4%から82.1%へと15.3ポイントと大幅低下した。

 青木方程式が1か月で15ポイントを超えて低下することは“非常に稀”で、菅政権では一度もなかった。ただ、麻生政権では31.0ポイント低下したケースがある。

 そして、直近の9月世論調査では、内閣支持率は46%から40%に6ポイント低下、自民党支持率は36.1%から36.2%に0.1ポイント上昇し、青木方程式は82.1%から76.2%に5.9ポイント低下した。

麻生・菅政権はどうだったか

 安倍元首相襲撃事件が引き金となって、自民党議員と旧統一教会との関係、安倍元首相の国葬が内閣支持率、自民党支持率の低下に結び付いたことは明白だ。

 とは言え、岸田政権の9月世論調査での青木方程式は76.2%と危機ラインの50%を上回っている。それでも、政権が “安泰”ではないことは前述した。加えて、筆者には何点か気にかかる点がある。

 第1次安倍晋三内閣以降、ほとんどの政権が1年程度、長くても約1年半で政権が崩壊している。福田康夫政権は365日、麻生太郎政権は358日、鳩山由紀夫政権は266日、菅直人政権は452日、野田佳彦政権は482日、菅義偉政権は384日といった具合だ。そして、岸田政権は21年10月4日発足なので、まもなく1年を迎える。

 そこで、過去の政権の青木方程式を見ると、青木方程式が当てはまった典型例の麻生政権は、青木方程式がもっとも高かったのが発足時の08年9月の85.3%で、この時の内閣支持率は48%で自民党支持率は37.3%だった。

 その後、内閣支持率、自民党支持率とも急激に低下し、政権発足の4か月後の09年1月に青木方程式は危機ラインの50%を割り込み、48.4%に低下した。麻生政権の1年1か月の間に青木方程式の50%割れは6か月もあった。(表3)


 一方、青木方程式が50%を割り込むことなく倒れた菅政権の青木方程式は20年9月の発足時の102.8%がもっとも高い。この時、内閣支持率は62%。自民党支持率は40.8%で、共にもっとも高かった。

 その後、菅政権は支持率を下げ続け、21年9月には内閣支持率が29%と発足時から33ポイントも低下、自民党支持率も33.4%と発足時から7.4ポイント低下し、青木方程式も62.4%と発足時から40.4ポイント低下して最低となった。(表4)


3つの政権の共通

 この麻生、菅、岸田の3つの政権の青木方程式には、何の共通項もないように見える。そこで、3つの政権の発足後の青木方程式の動きを1つのグラフにまとめてみた。(表5)


 各内閣の青木方程式の水準は違うものの、1つの共通する動きは政権発足から9か月、10か月で青木方程式の数値が低下し始めることだ。この共通項は安倍政権を除く、多くの政権でも見られている。

 そして、麻生、菅の両政権では、内閣支持率が自民党支持率を下回ると、青木方程式が大きく低下を始めている。前述のように、岸田内閣の直近9月の内閣支持率は40%、自民党支持率は36.2%と両者はかなり接近している。

 さらに、麻生、菅政権とも、政権期間中に青木方程式が前月よりも“7回低下”した後に倒れている。他の政権でも同様の傾向が見られ、どうやら青木方程式の7回の低下というのは、政権にとっては一つの“鬼門”のようだ。現在、岸田政権の青木方程式は“6回低下”している。

 このように、岸田政権は(1)10月に発足1年を迎える、(2)政権発足10か月目から青木方程式が低下している、(3)内閣支持率と自民党支持率が接近している、(4)青木方程式が6回低下している―という状況にある。

 従って、10月の世論調査で内閣支持率、自民党支持率、そして青木方程式がどのように変化するのかは、岸田政権の存続を占う上で大きな意味を持ちそうだ。

鷲尾 香一(ジャーナリスト)

【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!

上の記事、青木率の部分は非常に参考になります。その他の部分では、あまり参考にはならないです。ただ、青木率については詳しく分析し、グラフにしていたため、ブログに掲載することになしました。

まず、麻生政権のときの状況はどうだったかといえば、この頃からすでに日銀は金融引締を継続し、政府は緊縮財政を繰り返し、日本はいわゆる「失われた30年」に突入していました。


日本経済はデフレあったにも関わらず、日銀は金融引き締めを行い、政府は緊縮財政を継続していました。そのため、日本経済は低迷するばかりで、これでは自民党の誰が総理大臣になって新たな政権をつくっても、短期で終わったことでしょう。麻生政権崩壊の原因は、これが第一の原因ですし、他の原因もあるかもしれまんせんが、それは大勢に影響はなかったと思います。

これは、その後民主党政権になっても、日銀の金融政策、政府の財政政策は変わりなく、結局民主党政権も崩壊し、安倍政権に変わりました。民主党政権の崩壊も、失われた30年を終わらせるために、金融政策や財政政策を変更しなかったことが原因でしょう。

このことは、十年くらい前までは、なぜかマクロ経済的な考え方が日本では普及していなかったので、このようなことを語ってもほとんど顧みられなかったのですが、多くの心ある経済学者らが、日本でもマクロ経済的な見方を普及してきたので、最近ようやっと理解されるようになってきました。ただ、いまなお政治家の中には、昭和の頭で、経済対策=公共工事だと思いこんでいる古いタイプの政治家も多いようです。

その後、安倍政権になってから、日銀は、黒田総裁により異次元の包括的金融緩和に取り組みました。政府も、積極財政に転じました。そのため、雇用も改善し、経済も良くなりつつありました。これも、以前には理解されなかったのですが、マクロ経済学上では、当たり前すぎる雇用=日銀の金融政策という考え方も随分普及してきたようです。

ただ、さすがの安倍政権でも三党合意を崩すことはできず、2度の消費税増税を実施することになりました。そのため、デフレから完全脱却するには至りませんでしたが、安倍政権は二度にわたり消費税増税を延期したことと、日銀による金融緩和は継続されたので、雇用は劇的に改善されました。

この雇用の劇的な改善は、安倍長期政権の原動力になったことはいうまでもありません。他にも、安倍政権が長期となった原因もあるでしょうが、もし雇用の劇的な改善がなければ、安倍政権は長期政権にはなり得なかったことでしょう。ただ、この考えは、今でも理解されいないようで、特に民主党の議員らは全くこれに対して理解を示してないようです。

二度の増税によってデフレから完全脱却をしていなかった日本は、その後コロナ禍に襲われました。これに対して安倍・菅政権は、両政権において合計で100兆円の真水の経済対策を実施し、他国にはない日本独自の雇用調整助成金も活用して、大型の経済対策を実施して、他国ではコロナ禍によって、失業率が大幅に上昇したにも関わらず、日本では失業率を現在に至るまで、2%台で推移させるという大偉業を達成しました。

これは、大偉業なのであるにもかかわらず、マクロ経済に疎い、野党やマスコミはほとんど評価しませんが、実際に就職などで、雇用の劇的改善したことを身を以て体感した、若い人たちや、就職に関わった学校の先生や、企業の人事に関わった人たちは、これを高く評価しています。無論、市場関係者もこれを好感し、株価なども上がりました。

評価していないのは、野党とマスコミ関係者、リベラル派、左翼などだけだと思います。

菅政権に関しては、このブログでも指摘した通り、ワクチン接種は公約通りに実現し、日本に巣食う、鉄のトライアングル医療版である、尾身会長ですら抗えない医療村の大抵抗にあったために、病床確保には失敗したものの、医療崩壊も起こすことなく、大勢では大成功したと思います。

それに先程指摘したとおりに、失業率も上昇させることはなく、そのため失業が深刻な社会問題にもなることはありませんでした。実際、皆さん、思い返してください、 2008年あたりから見られた、派遣村のような、コロナ派遣村のようなものが設営されたといことは、聴いたことがないです。

無論、相談の受付とか、食料などの援助というものはありましたが、大規模な年越し村のようなものは設営されませんでした。

菅政権が崩壊した理由など後付でいろいろいう人がいますが、私はこれはほとんどが間違いだと思っています。一番の理由は、自民党内で、菅政権の支持率が下がっているので、菅政権では次の選挙では、戦えないという声が巻き起こり、菅総理はもともと一年の短期政権と決まっていたので、総裁選に出ずに自ら政権を終わらせたというのが主な原因だと考えられます。

そもそも、菅政権を続けようという意思があれば、続けられた余地は十分あったと思います。私としては、続けたほうが、岸田政権になるよりは、はるかにまともだったと思いました。そうして、テレビの印象操作などで漠然と菅総理では駄目だなどと考えていた人たちの多くも、今「どうして菅氏に反対したのか」と問われれば、満足に答えられない人も多いのではないかと思います。実際、少し前から、菅前総理の見直しの動きがあるそうです。何を今更という気がします。

ただ菅氏が政権を自ら終わらせることができた背景としては、安倍元総理という、実績もあり最大派閥のトップという強力な政治家が存在していたということが大きいでしょう。誰が次の総理大臣になっても、派閥の均衡が大きく崩れることはないし、政策の大きな変更もないだろうという安心感からか、結局総裁選で岸田氏が勝ち、総理大臣になりました。

ただ、安倍元総理が暗殺された、後の内閣改造は、酷いものでした。露骨な安倍派の排除でした。この内閣改造は、論評にも値しない酷いものでした。

しかも、内閣改造の前には、「統一教会に関係があった人は閣僚から外す」として、旧統一教会と比較的関係が強いとみられていた、安倍派を外す旨を公表しての人事でした。

安倍派という多数派をないがしろにする岸田総理の人事をみて、他派閥も反発を強めたことでしょう。

しかも、内閣改造で頭がパンパンだったとみられる、岸田首相は、中国にミサイルを発射されても、国家安全保障会議 (NSC)を開催しませんでした。

旧統一教会に関しては、厳密な法律の適用や、新たな法律の検討などを飛び越して、憲法や法律に抵触するおそれさえある統一教会排除を宣言し、それこそ、魔女狩りに等しいような批判をした、野党やマスコミの土俵にみずから乗ってしまうようなことをやらかしてしまいました。

この2つのことによって、岸田総理には「危機管理能力」が欠如していることが明らかになりました。これは、歴代内閣の中でも最悪かもしれまません。

そうして、無派閥の議員や、各派閥にも多く存在する保守派の議員は、財務省に近く、親中派でもある宏池会に対して、安倍元首相が亡くなった現在では、何をやらかすかわからないと疑心暗鬼になり反発していることでしょう。

実際、無派閥で保守派の高市早苗経済安保担当相は「FNNプライムライン」で不満を公表しています。
このようなことを、外部に漏らしてしまうということは、自民党内で相当不満が鬱積していることを示しているものと考えられます。そうでなければ、このような発言はできないと思います。

安倍元総理の「国葬儀」までは、こらえてきたのでしょうが、こらえきれなくなって高市氏は、このような発言をしたのでしょう。そうして、これは無論高市氏一人ということではないでしょう。

自民党の大勢は、統一教会関連のことが今後どのように推移していくのかを見守った上で、自民党を毀損しないようにしたうえで、どのように岸田政権を短期政権にするかという方向で政局が動いていくものと思います。

このような動きを理解したうえで、青木率の推移をみていけば、次の政局の動きがみえてくると思います。

ただ、安倍元総理が亡き現在、安倍元総理の政策を継承できる有力政治家は限られています。高市氏や安倍派の幹部たちも残念ながら、今はまだ非力です。

岸田総理は、「国葬儀」で安倍路線を引き継ぐことを約束しましたが、残念ながら先に述べたように、党内政治においても、党外政治や、外交・安全保証に関しても、危機管理能力が欠如していることがはっきりしました。このような人が、総理大臣を長く続けていれば、日本はいつ、どのような危機に見舞われるかわかったものではありません。

自民党には、危機管理を適切に行い、安倍路線引き継ぎつつ、若手を育ている政治家が必要です。ただ、これは一人の政治家では無理だと思います。複数の政治家が協力して、このようなことを実行していくべきです。改めて、安倍元総理の偉大さが理解できます。

そうして、数の力を知る自民党は、今回は、慎重に自民党を毀損しない形で政局をすすめていくでしょう。そのため、現在は自民党内には目立つた岸田おろしの動きはみえていません。

ただ、自民党保守派には相当不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力になるのは、間違いないようです。

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2022年9月28日水曜日

安倍氏死去/安倍氏国葬、「台湾」読み上げ献花 「非常に深い思い感じた」対日機関会長―【私の論評】岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるな(゚д゚)!

安倍氏死去/安倍氏国葬、「台湾」読み上げ献花 「非常に深い思い感じた」対日機関会長

安倍晋三元首相の国葬に参列した(左から)蘇嘉全・台湾日本関係協会会長、謝長廷駐日代表、王金平元立法院長

安倍晋三元首相の国葬が27日、東京・日本武道館で行われ、台湾は献花の際、国名や国際機関名などを読み上げる「指名献花」の対象とされた。これについて、台湾からの代表団のメンバーとして参列した対日窓口機関、台湾日本関係協会の蘇嘉全(そかぜん)会長は、「日本各界の台湾に対する思いが非常に深いと感じた」と語った。

台湾からは蘇氏の他、謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)、王金平(おうきんぺい)元立法院長(国会議長)の3氏が蔡英文(さいえいぶん)総統に指名され出席した。

謝氏は、台湾の代表団として参列したメンバーはいずれも安倍氏と親交があったとし、中国から「とやかく言われる筋合いはない」との考えを示した。

蘇氏は今回の訪日について、日本側から手厚くもてなされ、尊重を感じたとも話した。

中国は、日本が台湾を指名献花の対象に加えたことに反発している。

▽李登輝氏次女、安倍氏の生涯に「父の姿重なった」

安倍氏の国葬には、李登輝(りとうき)元総統の次女、安妮(あんじ)さんも参列した。

安妮さんは27日、都内のホテルで開かれた記者会見に出席。国葬で上映された安倍氏の歩みを振り返る映像について、安倍氏は日本人として自信を持つよう国民を鼓舞し、日本に貢献したと言及。李登輝氏も過去20~30年にわたり、台湾人を励まし、自信を取り戻させたことを思い出したと語った。

国葬を通じ、「父と安倍氏の関係がありありと目に浮かんだ」という安妮さん。国葬の前、両氏の交流について「師弟であり友人であり、父子のようでもあった」と話していた。
安倍晋三元首相の国葬が27日、東京・日本武道館で行われ、台湾は献花の際、国名や国際機関名などを読み上げる「指名献花」の対象とされた。これについて、台湾からの代表団のメンバーとして参列した対日窓口機関、台湾日本関係協会の蘇嘉全(そかぜん)会長は、「日本各界の台湾に対する思いが非常に深いと感じた」と語った。

台湾からは蘇氏の他、謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)、王金平(おうきんぺい)元立法院長(国会議長)の3氏が蔡英文(さいえいぶん)総統に指名され出席した。

謝氏は、台湾の代表団として参列したメンバーはいずれも安倍氏と親交があったとし、中国から「とやかく言われる筋合いはない」との考えを示した。

蘇氏は今回の訪日について、日本側から手厚くもてなされ、尊重を感じたとも話した。

中国は、日本が台湾を指名献花の対象に加えたことに反発している。

▽李登輝氏次女、安倍氏の生涯に「父の姿重なった」

安倍氏の国葬には、李登輝(りとうき)元総統の次女、安妮(あんじ)さんも参列した。

安妮さんは27日、都内のホテルで開かれた記者会見に出席。国葬で上映された安倍氏の歩みを振り返る映像について、安倍氏は日本人として自信を持つよう国民を鼓舞し、日本に貢献したと言及。李登輝氏も過去20~30年にわたり、台湾人を励まし、自信を取り戻させたことを思い出したと語った。

国葬を通じ、「父と安倍氏の関係がありありと目に浮かんだ」という安妮さん。国葬の前、両氏の交流について「師弟であり友人であり、父子のようでもあった」と話していた。

記者会見に臨む(左から)李安妮氏、王金平氏、蘇嘉全氏、謝長廷氏

【私の論評】岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるな(゚д゚)!

安倍元総理の国葬を巡って中国は日本に対し、「一つの中国」の原則に基づき、台湾からの代表団の招へいを控えるよう牽制(けんせい)していましたが、台湾外交部は「日本から正式に招待をされた」と発表していました。

代表団の派遣にあたり蔡英文総統は「安倍元総理の台湾に対する貢献に心から感謝を表す」とコメントを発表しています。

安倍元総理の国葬を受けた「弔問外交」はきょうも続いていますが、国葬への参列をめぐって、中国と台湾が複雑な“駆け引き”を繰り広げていました。

中国が政府代表として派遣したのは、国政の助言機関・全国政治協商会議の万鋼副主席でした。閣僚経験者とはいえ、エリザベス英女王の国葬に出席した国家副主席と比べるといわゆる“格下”です。

ちなみに、台湾外交部は、エリザベス女王の国葬においては、英国における台湾の事実上の大使館「台北代表処」の謝武樵代表が、18日に女王の公式弔問名簿に記帳したと発表しています。英国は台湾と外交関係はないですが、他国と同様の待遇が得られるように「特別に招待した」といいます。

実は、7月、台湾の副総統という、日本が台湾と断交して以降、最高位の政府関係者が安倍元総理の自宅を弔問に訪れ、中国は反発しました。

中国は国葬に台湾から誰が訪れるのか、出方を見極めていたといいます。

結局、台湾側が派遣を決めたのは高官ではない台湾日本関係協会会長らでした。

台湾の判断も受け、中国は国葬の4日前というタイミングで万鋼氏の派遣を決定しました。一方で、きのうの国葬では、はっきりと「台湾」とアナウンスされ、台灣の「指名献花」が行われたのです。これは、国として承認していない台湾に対して日本政府が初めて行ったものです。

磯崎官房副長官は、きょうの会見で「全ての代表団が指名献花を行った」としたうえで、「日本政府の立場に変更はない」と政府の見解を強調しました。

一方、中国外務省は「台湾独立分子に、政治利用の場や機会を与えてはならない」と日本の対応を強く批判しました。

岸田首相は、周囲に以下のように語ったとされています。

「中国からEEZにミサイルが撃ち込まれているわけで、それでこちらから“日中”というわけにもいかない。中国も(10月の)党大会が終わるまでは身動き取れないんじゃないか」

まさにこのとおりだと思います。

防衛省統合幕僚監部によると、中国とロシア両海軍のミサイル駆逐艦やフリゲート艦など計7隻が26日から27日にかけて、伊豆諸島付近など太平洋側を航行しました。ロシアが実施を公表している両国による太平洋での合同パトロールの一環とみられます。うち6隻は今月初め、北海道沖の日本海で機関銃射撃を実施し、オホーツク海に移動していました。

中国は国葬自体にも難癖を付けてきた。台湾が「指名献花」の対象に加えられたことに反発し、中国外務省の報道官は27日、「台湾独立分子に対し、政治的なもてあそびの舞台や機会を提供してはならない」と批判しました。

さらに、中国海警局の船3隻が28日午前3時15分ごろから、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に相次いで侵入した。第11管区海上保安本部が確認しました。 国葬が終わると29日に「日中国交正常化50年」を迎えます。 岸田政権には、毅然とした外交姿勢が期待されますが、岸田外交を担当するのは「政界屈指の親中派」である林芳正外相です。

米首都ワシントンで開かれた日米「経済版2+2」会合に出席した林芳正外相(2022年7月29日)

林氏は「建設的で安定的な日中関係を双方の努力で構築する」「こうしたときこそ意思疎通が重要。対話は常にオープンだ」などと繰り返し、日中の首脳クラスの会談実現に前のめりでした。 

「安倍さん、安倍総理。お疲れさまでした。そして本当にありがとうございました。どうか安らかにおやすみください」 岸田首相は追悼の辞をこう締めくくりましたが、安倍路線をを継承できるのでしょうか。 岸田首相の国葬での哀悼の辞「言葉」は良かったのですが、行動がともなうかどうかが問題です。台湾問題を中心とする対中外交は、クアッドの連携がカギです。

インドのナレンドラ・モディ首相が日帰りの強行日程でも国葬に出席したのは、安倍氏との関係だけでなく、中国の台頭を見据えて岸田首相との連携を表明する意思があったのだとみられます。生前の安倍氏の発言にもあったように「台湾有事は日本有事」です。岸田総理は、現実を直視して、抑止力強化に取り組むべきです。

会談を前にインドのモディ首相(左)と握手する岸田首相(27日午前、東京・元赤坂の迎賓館で)

岸田首相は東京・元赤坂の迎賓館での日印首脳会談で、安倍氏とモディ氏が「日印関係の新たな地平を切り開いた」と伝えました。その上で「外交的な業績をさらに発展させ、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、緊密に連携していきたい」と強調。モディ氏は「安倍氏は初めて『インド太平洋』を語り、クアッドを作った」と応じました。

同席者によると、モディ氏は安倍氏の思い出を語る際、感極まって泣きそうになる場面もあったとされています。

岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるべきではないです。間違っても、親中路線を歩むべきではありません。

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2022年9月27日火曜日

【安倍元首相国葬】菅義偉前首相「真のリーダーでした」 友人代表の追悼の辞全文―【私の論評】追悼の辞でわかった、実はコミュニケーション能力がかなり高い菅前総理(゚д゚)!

動画

安倍晋三元首相の国葬で追悼の辞を述べた菅義偉前首相=27日午後2時48分、東京都千代田区

 27日に営まれた安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)で、自民党の菅義偉前首相は友人代表として追悼の辞を述べた。菅氏は安倍氏との出会いや第2次安倍政権時代の日々を振り返り、「あらゆる苦楽を共にした(第2次安倍政権での)7年8カ月。私は本当に幸せでした」と述べた。菅氏の追悼の辞の全文は次の通り。


 7月の8日でした。

 信じられない一報を耳にし、とにかく一命をとりとめてほしい。あなたにお目にかかりたい。同じ空間で同じ空気を共にしたい。その一心で現地に向かい、そしてあなたならではの温かなほほ笑みに、最後の一瞬、接することができました。

 あの運命の日から、80日がたってしまいました。

 あれからも朝は来て、日は暮れていきます。やかましかったセミはいつのまにか鳴りをひそめ、高い空には秋の雲がたなびくようになりました。

 季節は歩みを進めます。あなたという人がいないのに、時は過ぎる。無情でも過ぎていくことに、私はいまだに許せないものを覚えます。

 天はなぜ、よりにもよってこのような悲劇を現実にし、生命(いのち)を失ってはならない人から生命を召し上げてしまったのか。

口惜しくてなりません。悲しみと怒りを交互に感じながら、今日のこの日を迎えました。


 しかし、安倍総理とお呼びしますが、ご覧になれますか。ここ武道館の周りには花をささげよう、国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。

 20代、30代の人たちが少なくないようです。明日を担う若者たちが大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています。

 総理、あなたは今日よりも明日の方がよくなる日本を創りたい。若い人たちに希望を持たせたいという強い信念を持ち、毎日、毎日、国民に語りかけておられた。そして、日本よ、日本人よ、世界の真ん中で咲き誇れ。これがあなたの口癖でした。

 次の時代を担う人々が未来を明るく思い描いて初めて経済も成長するのだと。いま、あなたを惜しむ若い人たちが、こんなにもたくさんいるということは、歩みをともにした者として、これ以上にうれしいことはありません。報われた思いであります。

 平成12年、日本政府は北朝鮮にコメを送ろうとしておりました。私は当選まだ2回の議員でしたが、「草の根の国民に届くのならよいが、その保証がない限り、軍部を肥やすようなことはすべきでない」と言って、自民党総務会で大反対の意見をぶちましたところ、これが新聞に載りました。

 すると、記事を見たあなたは「会いたい」と電話をかけてくれました。

 「菅さんの言っていることは正しい。北朝鮮が拉致した日本人を取り戻すため、一緒に行動してくれればうれしい」と、そういうお話でした。

 信念と迫力に満ちたあの時のあなたの言葉は、その後の私自身の政治活動の糧となりました。

 そのまっすぐな目、信念を貫こうとする姿勢に打たれ、私は直感いたしました。この人こそはいつか総理になる人、ならねばならない人なのだと、確信をしたのであります。

 私が生涯誇りとするのは、この確信において、一度として揺らがなかったことであります。総理、あなたは一度、持病が悪くなって、総理の座をしりぞきました。そのことを負い目に思って、二度目の自民党総裁選出馬をずいぶんと迷っておられました。

 最後には2人で銀座の焼鳥屋に行き、私は一生懸命、あなたを口説きました。それが使命だと思ったからです。3時間後にはようやく、首をタテに振ってくれた。私はこのことを「菅義偉、生涯最大の達成」として、いつまでも誇らしく思うであろうと思います。

 総理が官邸にいるときは欠かさず、一日に一度、気兼ねのない話をしました。今でも、ふと一人になると、そうした日々の様子がまざまざとと蘇ってまいります。

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に入るのを、私はできれば時間をかけたほうがいいという立場でした。総理は「タイミングを失してはならない。やるなら早いほうがいい」という意見で、どちらが正しかったかは、もはや歴史が証明済みです。

 一歩後退すると勢いを失う。前進してこそ活路が開けると思っていたのでしょう。総理、あなたの判断はいつも正しかった。

 安倍総理。日本国はあなたという歴史上かけがえのないリーダーをいただいたからこそ、特定秘密保護法、一連の平和安全法制、改正組織犯罪処罰法など難しかった法案を、すべて成立をさせることができました。どの一つを欠いても、わが国の安全は確固たるものにはならない。あなたの信念、そして決意に、私たちはとこしえの感謝をささげるものであります。

 国難を突破し、強い日本を創る。そして真の平和国家日本を希求し、日本をあらゆる分野で世界に貢献できる国にする。そんな覚悟と決断の毎日が続く中にあっても、総理、あなたは常に笑顔を絶やさなかった。いつもまわりの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ。

 総理大臣官邸で共に過ごし、あらゆる苦楽を共にした7年8カ月。私は本当に幸せでした。私だけではなく、すべてのスタッフたちがあの厳しい日々の中で、明るく生き生きと働いていたことを思い起こします。何度でも申し上げます。安倍総理、あなたはわが国、日本にとっての真のリーダーでした。

 衆議院第1会館1212号室の、あなたの机には読みかけの本が1冊、ありました。岡義武著『山県有朋』です。

 ここまで読んだという最後のページは、端を折ってありました。そしてそのページにはマーカーペンで、線を引いたところがありました。しるしをつけた箇所にあったのは、いみじくも山県有朋が長年の盟友、伊藤博文に先立たれ、故人をしのんで詠んだ歌でありました。

 総理、今、この歌くらい、私自身の思いをよく詠んだ一首はありません。

 「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」

 「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」

 深い悲しみと寂しさを覚えます。総理、本当にありがとうございました。どうか安らかに、お休みください。

令和4年9月27日 前内閣総理大臣 菅義偉

【私の論評】追悼の辞でわかった、実はコミュニケーション能力がかなり高い菅前総理(゚д゚)!

私は、今回の安倍元総理への追悼の辞の中で一番心を打ったのは菅前総理の辞ではなかったかと思います。これは、一人ひとり感じ方も違いますし、人それぞれだとは思いますが、それにしても、素晴らしい内容だったと思います。

だかこそ、本日は菅前総理の追悼の辞全文と、動画も掲載させていただきました。

これだけ、人の心を打つ菅前総理ですが、総理在任中はやれ「口下手」だとか「コミュニケーション能力」が低いなどと批判されました。

私は、これは事実ではないと思います。これについては、先日もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
岸田首相「万事休す」…物価高騰、国葬、旧統一教会問題「八方ふさがり状態」が10月にいよいよヤバくなる―【私の論評】岸田政権が長期政権になる道は絶たれた、最長でも来年5月のサミットまでか(゚д゚)!
この記事より、少し長いですが、一部を引用します。
岸田政権と菅政権を比較すると、菅政権はかなりまともだったと思います。少なとも、岸田政権よりは、はるかに危機管理能力は高かったと思います。

菅首相の所信表明演説をあらためて見返してみると、こと新型コロナワクチンに関してはすべて達成していることが分かります。菅前首相は、ワクチン接種のペースに関して「1日100万回」と発言し、テレビや雑誌で「非現実的だ」などと叩かれに叩かれたましたが、結局これも実行しました。

「明かりは見え始めている」発言もなぜか非難囂々でしたが、その後の感染者数の激減をみると菅前首相の認識は間違ってはいませんでした。菅政権に関しては、少なくとも新型コロナワクチンに関しての結果だけは認めるべきです。 

病床確保については、尾身会長も抗えない、いわゆる医療村に阻まれて、失敗はしたものの、それでも医療崩壊を起こすこともなく、コロナをかなり収拾させたというのは、間違いなく大きな成果です。

新型コロナワクチンで大きな成果を上げた菅政権でしたが、在職日数384日で成し遂げた仕事はそれだけにとどまらないです。東京オリンピック・パラリンピックの開催、デジタル庁の創設や携帯電話料金の値下げ、不妊治療の保険適用、福島第一原発の処理水の海洋放出、2050年カーボンニュートラル宣言など、主に安倍元首相時代に積み残してきた問題や課題に次々とケリをつけています。

さらに、安倍・菅政権ともに、コロナが蔓延していた時期には、両政権あわせて100兆円の補正予算を組んだことと、日本には他国にはない「雇用調整助成金」という制度もあり、これも活用したことで、コロナが蔓延して、様々な規制が行われたときでさえ、失業率は2%台を維持していました。

そのせいですか、無論コロナで職を失った人もいましたが、だからといって、それが深刻な社会問題にまで発展したということはありませんでした。両政権のコロナ感染が続いていた期間においては、日本は世界で一番失業率が抑えられていました。これについては、マスコミなどはほとんど触れることもありませんが、安倍・菅政権の大きな成果です。

岸田政権においても、失業率の大きな変動はありませんが、これは岸田政権の成果でなく、安倍・菅政権によるものです。岸田政権は、これを引き継いだので、経済的にも安定しており、かなりやりやすかったと思います。ただ、岸田政権の決めた、補正予算は数兆円レベルであり、この秋にまともな補正予算を組んで、様々な経済対策をしなければ、今後は失業率も上がることになります。

確かに、菅前首相はやり方が強引に見えるところがあり、口下手で発信能力にも欠けいるとも批判されました。ただ、いまから考えると、こうした批判は、仕事師と異名をとる菅氏に対しては、総理としての仕事そのものには批判ができなかったので、このような批判をするしかなかったとも考えられます。

国会や記者会見での木で鼻を括ったような受けも批判されましたが、これも今から考えると、全く筋違いで見当違いな馬鹿げた、低レベルの野党議員や記者の質問に対して、このような態度をとったまでで、相手の土俵に乗ってしまう、岸田現総理と比べれば、至ってまともだったと思います。こうした点に不満を覚えて不支持に回った人も少なくないようですが、今一度菅前総理の仕事ぶりの、結果だけを見てみると、近年まれにみる「国民のために働いた内閣」と言っても良いです。
私は、安倍元総理も、菅前総理も近年になく「国民のために働いた総理」だと思います。

菅前総理のことを「口下手」だとか「コミュニケーション能力」が低いなどと批判していた人たちには、見過ごしているものがあると思います。

そもそも「コミュニケーション」とは何でしょうか。このブログにも以前掲載したことがあります。私は民主党政権時代に、会社で人事を担当していたことがあります。そのとき、多くの企業が採用の条件として「コミュニケーション能力」を筆頭にあげていました。

「コミュニケーション」という言葉にそれ以前から関心を抱いていた私は、あるとき比較的大規模な採用イベント開場に赴いたとき空き時間に、いくつかの会社の採用担当の人に、「御社におけるコミュニケーションとはどういう意味なのか」という質問をしてみました。

そのときには残念ながら、満足な答えはかえってきませんでした。どうやら、多くの会社でいうところのコミュニケーションとは「ホウレンソウ」という言葉に代表されるような、「報告・連絡・相談」をこまめにすることとか、調整を上手にするというくらいの意味のようでした。

特に、当時は不況でしたから、自己主張の強い人や、創造力に満ち溢れた人に入ってこられても困るので、いわゆる調整型の人を雇用したというのが本音だったのではないかと思います。ただ、「調整型」などというと格好や体裁が悪いので、定義が曖昧な「コミュニケーション能力」という言葉をつかったのではないかと思います。

残念ながらこれは、コミュニケーションの本質とは程遠いものです。コミュニケーションの本質に関しては経営学の大家ドラッカー氏がその著書で丁寧に解説しています。

これについては、以下の記事に完結にわかりやすくまとめてあります。コミュニケーションの原理については、ドラッカーの書籍にあたるのが一番だとは思いますが、それには時間も要します。以下の記事を読めば、それについて概要を知ることができます。
コミュニケーション能力を高める ドラッカー4の教え
この記事では、ドラッカー氏が語る、コミュニケーションの本質がまとめられています。以下にそれを箇条書きで掲載します。
  1. コミュニケーションは「知覚」である
  2. コミュニケーションは「期待」である
  3. コミュニケーションは「要求」である
  4. コミュニケーションは「情報」ではない
コミュニケーションという言葉を抽象的に捉えている人も多いですが、ドラッカーのこの4つの原則をご覧いただければ、コミュニケーションの本質がおわかりいただけるものと思います。

これを知った上で、菅前総理の過去の発言などをご覧いただければ、決して菅前総理はコミュニケーション下手とは言えないと思います。

そもそも、口数が多いとか、話しがうまいとか、話術に長けているとか、滑舌な人でも、ほとんどコミュニケーションが成り立たない人もいます。逆に、話し上手でもなく、おしゃべりでもなく、人付き合いが良くない人の中にも、コミュニケーション能力の高い人もいます。

そのようなことと、コミュニケーションとは全く別次元のことです。

実際、私は「コミュ障」などと揶揄されている人たちの中にさえ、決してコミュニケーション能力が低くはないという人に遭遇したことがあります。これには、揶揄する側にもかなり問題があることが多いです。

人は、育ってきた環境やものの考え方や、立場や癖などがあり、人それぞれに異なるのが普通です。異なるのが当たり前なのです。だからこそ、コミュニケーション能力が必要なのです。自分と異なっているからというだけで「コミュ障」などとすぐに揶揄するのは、間違いです。

私は、そういうひとたちこそ、コミュニケーション能力に欠けると思います。

私は、菅総理を「口下手」「コミュニケーション下手」と批判していた人たちこそ、本当は、相当コミュニケーショ能力が乏しかったのではないかと思います。コミュニケーションの本質がわかっていないければ、そもそも他者を「コミュニケーション下手」だと評価したとしても、その評価は間違っている可能性が高いと思います。

なお、ドラッカーのコミュニケーションの原則は、上の4つの他にもう一つ重要なものがあります。

それは、「コミュニケーションとは、わたしたちの中の一人から、わたしたちの中のもう一人に伝わるもの」というものです。

コミュニケーションが通じる仲とは、普段から「わたしたち」といえるような関係を築いている仲であるということです。

私は、コミュニケーションの原則の中で、一番重要なのは、この原則だと思っています。

菅前総理が人の心を打つ追悼の辞を述べることができたのは、まさに安倍前総理と普段から「わたしたち」といえる関係を築いていたからにほかならないからだと思います。

自民党の三原じゅん子参院議員(58)は27日、自身のツイッターを更新。この日、東京・日本武道館で行われた安倍晋三元首相(享年67)の国葬で菅義偉前首相(73)が述べた追悼の辞についてコメントしました。

三原氏は「菅先生の弔辞には涙を堪えきれなかった」と感動したことを記すと、「まるで恋文。菅先生らしい温かいお気持ちが溢れていた」とつづりました。

今年の参院選で選挙運動中の三原氏

まさに安倍元首相と、菅前総理との「わたしたち」という関係が、追悼の辞に溢れていたので、これを三原氏は「恋文」と称したのでしょう。

三原氏は、ドラッカーの書籍を読まれて「コミュニケーションの本質」をご存知なのかどうかは、知りませんが、読んだ読まないなど超えて三原氏はコミュニケーションの本質について体得していらっしゃると思います。

そうして、これを聞く私たちが深い感銘を受けるのは、安倍元総理や、菅前総理と、たとえ直接会って話したことはないとしても、この方たちの考え方や日々の行動に「わたしたち」といえる関係性を感じることができるからにほかならないと思います。

その背景には、「わたしたち」は日本の国民であり、「今日よりも明日の方がよくなる日本を創りたい。若い人たちに希望を持たせたいという」という理念を共有してるからではないでしょうか。

多くの人が、自分がそのために役にたつかどうかはわからないものの、この思いは共有していると思います。そうして、多くの人が日々真っ当に働いたり、働いたことや、親や子どもたちやお年寄りや仲間や、地域社会を思いやることで、知らず知らずのうちに、それに向けて貢献しているのです。

中にはそうでない人もいます。そのようなことはどうでも良いと考え、わたしたちと理念を共有できない人たちも存在します。

そもそも、そのような理念などどうでも良く、とにかく時の権力には反対し、あわよくば、倒閣に結びつけてやろうなどという人たちとは残念ながら、「わたしたち」という関係を構築するのは難しいです。

ただ、時の政府には反対しても、考え方や、やり方が違うにしても、根底ではこのような理念を共有している人となら、コミュニケーションを交わすことは可能なはずです。そうでない人とは残念ながら無理です。

ただ、本日の国葬儀においては、そういう人たちは少数派であることがはっきりしたと思います。

千代田区に設けられた一般向けの献花台に、午後1時の段階で1万人以上 長蛇の列は数キロに


そうして、追悼の辞において、菅前総理はコミュニケーション能力が高いことが実証されたと思います。菅前総理のことを「コミュニュケーション能力」が低いと批判していた人たちは、自分たちこそコミュニケーションが低いということを自覚すべきです。そうして、その原因は何なのか、よく考えるべきです。

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2022年9月26日月曜日

【速報】「国葬」差し止め 最高裁も認めず―【私の論評】国葬儀が厳粛につつがなく営まれ、故人の魂が安らかな眠りにつけますように(゚д゚)!

【速報】「国葬」差し止め 最高裁も認めず


27日に行われる安倍元首相の国葬をめぐり、市民団体が、関連する予算の執行差し止めなどを求めた仮処分の申し立てについて、最高裁は26日までに市民団体側の特別抗告を退ける決定をしました。国葬に反対する市民団体側の主張は、最高裁でも認められませんでした。

27日に行われる安倍元首相の国葬をめぐっては、市民団体が、国葬の実施には法的根拠がなく、また憲法にも違反するなどと主張し、関連する予算の執行差し止めなどを求め、仮処分を申し立てていました。

これに対し、東京地裁は先月、「国葬が行われるとしても、国民に対して安倍元首相に弔意を表すことなどを強制することになるとは認められない」などとして、市民団体側の申し立てを認めない決定をしていました。

その後、東京高裁もこの決定を支持したことから、市民団体側が特別抗告していましたが、最高裁第一小法廷は26日までに、これを退ける決定をしました。5人の裁判官、全員一致の判断です。

これにより、国葬に関連する予算の執行差し止めなどを認めないとした判断が確定しました。国葬に反対する市民団体側の主張は、最高裁でも認められませんでした。

【私の論評】国葬儀が厳粛につつがなく営まれ、故人の魂が安らかな眠りにつけますように(゚д゚)!

1989年2月24日、この年1月7日に崩御した昭和天皇の大喪の礼が、小雨のなか東京の新宿御苑で挙行されました。

大喪には国内外から約9800人が参列しました。参列した国は164を数え、会場には、就任まもないアメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領、イギリスのエジンバラ公(エリザベス女王の夫君)ら元首クラス、また国連のデクエヤル事務総長など国際機関の代表が顔をそろえました。下の写真がそのときのものです。

古装束姿の楽師の後をゆっくりと武蔵野陵に向かう昭和天皇のひつぎを乗せた霊車

現在日本においては、国葬と国葬儀は混乱して語られています。日本においての国葬は、憲法7条と皇室典範25条による天皇の国事行為である大喪の礼だけです。当然ですが安倍元総理は対象になりません。内閣府設置法により国家に貢献した人を弔う儀式が国葬儀で別のものです。私は、このような混乱はいずれ収まるものとみています。

安倍氏の国葬儀に関して、司法以外で議論しても司法結果ほどには意味ないです。国葬儀差し止め請求が最高裁でも棄却ということで、裁判にできないという現実を国葬儀反対の方々は、真摯に受け止めるべきです。

最終的ともいえる、最高裁判所の司法判断が出たのですから安倍元首相の、国葬儀は平穏厳粛に執り行うべきです。

国葬儀に関しては、岸田政権は最初から、国葬儀は内閣府設置法4条に基づくと発表していました。これに関しては、平成12年の政府作成文書であるコンメンタール(逐条解説)にも詳しく解説されています。平成 12年といえば、末期ではありましたが、民主党政権の時代です。立憲民主党の方々など、本来このときに反対すべきであったはずです。以下にそのポイントのみ掲載します。


詳細を知りたい方は、実際にコンメンタールを読んでいただくと良いと思います。コンメンタールといえば、かなり大きな本屋だと置いていることもありますが、滅多にはおいていません。

私自身は、大学生の頃、大学生協の比較的大きな書籍で、みかけたことがあります。いくつかの法律で気になることがあれば、パラパラと斜め読みしたことはあります。私自身は法学部の学生ではなかったので、これを購入したことはありませんが、弁護士のように法律を生業にしている人は、購入する人もいると思います。

内閣設置法に関して、いろいろと語る人がいて、惑わされることもあった人もいるかもしれませんが、市民団体が、国葬儀に関連する予算の執行差し止めなどを求めた仮処分の申し立てについて、最高裁は26日までに市民団体側の特別抗告が棄却されたわけでし、当然のことながら内閣設置法についても申し立てていますから、これも棄却されたとみるべきでしょう。

橋下徹氏が「今回の儀式を国葬と言っている人は国家観がない。日本は共和制の国ではないのだから、内閣の決定で国葬をできる訳がない。天皇の国事行為にする必要あり」と語っていましたが、これは完璧な間違いです。戦前は勅令の国葬令があったのですが戦後廃止になりました。そのためもあって、吉田茂氏の国葬儀の時は揉めたわけです。それで内閣設置法を制定し、閣議決定で国葬儀ができるようにしたのです。

なお、吉田茂氏の国葬も「国葬儀」でした。これも「国葬」と勘違いしている人も多いようですから、以下に動かぬ証拠をあげておきます。


このようなことも知らないのか、TBS安住アナが「政府が最近になって国葬を国葬儀と言い始めた」。しかし、私ははっきり覚えていますが、岸田総理をはじめ、政府関係者は、最初から「国葬儀」と言っていました。

安倍元総理デジタル献花プロジェクトによりますと、安倍元首相のデジタル献花へのアクセスが集中しており、ページが適切に表示されない状態が続いるそうです。デジタル献花自体は問題なく届いているそうです。ブロジェクトは、安心してデジタル献花にご参加くださいと呼びかけています。現時点で17万人を超えているそうです。

いずれが、民意なのか見定めて行きたいです。明日は、「安倍さんありがとう」と心安らかに見送りたいです。

国葬儀が厳粛につつがなく営まれ、故人の魂が安らかな眠りにつけますように。

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2022年9月25日日曜日

安倍氏死去/台湾の廟、安倍元首相の銅像設置 除幕式に300人以上が出席―【私の論評】反対派は、国葬儀会場近く等で騒ぎまくるというような非常識な行動だけは慎しむべき(゚д゚)!

安倍氏死去/台湾の廟、安倍元首相の銅像設置 除幕式に300人以上が出席

台湾の廟、安倍元首相の銅像設置 除幕式に300人以上が出席

南部・高雄市の廟(びょう)、紅毛港保安堂で24日、安倍晋三元首相の銅像除幕式が行われ、陳菊(ちんきく)監察院長ら300人以上が出席して祈りをささげた。

同廟は太平洋戦争中にバシー海峡に沈んだ旧日本軍第38号哨戒艇を祭っていることで知られる。保安堂によると、銅像は台湾人の彫刻家2人が7月20日から約2カ月かけて制作したという。安倍氏を記念する庭園も設置され「台湾加油」(台湾頑張れ)と書かれた石碑もお披露目された。

会場では1分間の黙とうがささげられた他、参加者らは「花は咲く」、「千の風になって」などの楽曲が演奏される中で献花し「台日友好」、「台湾加油」などと声を上げた。

陳氏はあいさつで、安倍氏は台湾が最も苦しい時に、日本社会に対して「台湾有事は日本有事」と呼びかけ、台湾人を大いに感動させたと指摘した。

また「安倍氏の台湾に対する最大の貢献は台湾問題を国際的な問題にした」と強調。安倍氏は台湾の世界における戦略的地位を際立たせた上で、全世界に対して台湾問題に関心を持ち、自由や民主主義、尊厳、主権を追求する台湾人を守るべきだと訴えたと振り返った。

【私の論評】反対派は、国葬儀会場近く等で騒ぎまくるというような非常識な行動だけは慎しむべき(゚д゚)!

上の記事で、紅毛港保安堂の正式名称は、鳳山紅毛港保安堂(ほうざんこうもうこうほあんどう)です。

鳳山紅毛港保安堂

これは、中華民国台湾高雄市鳳山区紅毛港にあるです。旧日本海軍の第三十八号哨戒艇(旧称、樅型駆逐艦「蓬」)が祀られていることが特筆されます。

ちなみに廟とは、中国においては、祖先の霊を祀る場ですが、墓所は別に存在します。その為、仏教における仏壇のような位置づけですが、仏壇とは違い母屋の中には無く、霊廟専用の別棟があります。祖先を篤く敬う中国では、古代から家中で最も重要な場所とされていました。

また、孔子を祀る廟や関羽を祀る廟が各地に多数存在するように祖先の霊だけではなく民衆が敬愛する英雄や古くから信仰される神祇の廟を建立して祀っている事もあります。

三教合流(儒・道・仏の習合)の結果、寺院に神祇や聖賢が祀られていることもあり「寺廟」と総称されます。

日本では、特定な人物を祀る建物を、霊廟(れいびょう)、廟(びょう)、または霊屋(たまや)、御霊屋(みたまや・おたまや)といい、大きく、神式霊廟、仏式霊廟、儒式霊廟などに分けられています。また、各地の中華街には関帝廟が存在します。

鳳山紅毛港保安堂が、第三十八号哨戒艇を祀るようになり崇拝の対象が現在の形態となった経緯については、文献や語り手によって内容は異なりますが、整合を取るとおおよそ以下のようなものです。

第二次世界大戦が終結した翌年の1946年、出漁していた紅毛港の漁民の漁網に、一体の頭蓋骨が掛かりました。漁民は頭蓋骨を草葺の小屋だった祠の神棚に安置して「海府尊神」として祀りました。以降大漁が続いたため、霊験あらたかな神であるとして信仰されるようになり、1953年に保安堂を建立しました。

1968年、蘇某という老人が漁に出た船上で休憩していると海府尊神が現れて祠を建て替えて欲しいと語り、砂浜の「亀の穴なる場所」を指定しました。老人が実際にその場所に行くと果たして亀の卵が出てきたため、御神託であるとして拡張工事が始まりました。

1990年、タンキー(霊能者)が「私は日本第三十八号軍艦の艦長であり、太平洋戦争中に死亡した。日本の護国神社に帰りたい」「部下を郷里に帰すことができず悔やんでいる」と話せないはずの日本語で流暢に語ったそうです。

そこで信者たちが半信半疑ながらも指示に従って沖縄県護国神社を訪ねたところ、「日本海軍記念碑」に"日本第三十八号軍艦撃沈"の碑文を見出したそうです。旧日本海軍の軍人であったことを確信した信者らは鎮守を「海府大元帥」と呼ぶようになり、"日本第三十八号軍艦"とは1945年に米潜水艦アトゥルの雷撃によりバシー海峡に沈んだ第三十八号哨戒艇のことであり、海府大元帥は艇長であった高田又男大尉(熊本県出身)であると解釈されました。

第三十八号哨戒艇「蓮」

信者らは、海府大元帥とその部下たちが魂だけでも日本へ帰れるようにと、翌1991年に造船職人黃世秀氏に依頼して「日本の軍艦」の模型を作り、海府大元帥の御座船「38にっぽんぐんかん」として奉納しました。

保安堂では、農暦三、六、九、十三、十六、十九、二十三、二十六、二十九日の早朝6時と夜17時には君が代と軍艦マーチを流し、また第三十八号哨戒艇が撃沈された11月23日には慶典が開かれ、海府大元帥と「38にっぽんぐんかん」の英霊に奉祀しています。信者たちが神像を携えて日本詣でを行い、靖国神社や明治神宮を参拝することもあります。

海府大元帥像

「日本の軍艦」を祀る廟という特殊性から日本からの訪問者も頻繁にあり、その対処に当たる若手のボランティアグループが組織されるなど、保安堂は日台交流の場ともなっています。

今回設置された安倍元総理の銅像は高さは、安倍総理の身長と同じく175cmで、台座には「台湾の永遠の友人」と書かれています。 銅像のほかに、安倍元首相の直筆で「台湾頑張れ」と書かれた石碑も設置されました。 責任者によると、銅像は、有志から寄付を募り設立されたということで、「この銅像を日本と台湾の友好のシンボルとして後世に残したい」としています。

この除幕式の模様はテレビで中継されました。この銅像を建てるためにわざわざ庭をつくり、安倍元総理の揮毫された「加油台湾」の文字を刻んだ記念碑も銅像そばに設置しました。台湾人には、感謝ですが、非常識な日本の現状は恥ずかしい限りです。

台湾には、大陸中国出身の人たちや、そういう人々を先祖持つ人も少なからず存在します。そういう人たちの中には、安倍元総理が中国に反するような政策等を実行したきたことを快く思わない人もいると思います。しかし、だからといって、銅像建立に反対の動きなどみられませんでした。

27日に東京の日本武道館で実施される安倍元総理大臣の「国葬儀」においては、国葬儀に参加できるできいないは別に、喪に服したいと考える人も大勢いるはずです。

反対派はこういう人たちを罵ったり、国葬儀の進行を妨げる行為をしたり、国葬儀会場近くで大声で騒ぎ立てたりして、喪に服したいと考える内外の人達の人権を侵害することだけは、やめていただきたいです。特に、広島平和式典で毎年繰り広げられる、反対運動で騒ぎまくるように国葬儀開場近くでも拡声器などで「反対」と叫び、騒ぎまくるようなことは控えるべきです。

日本では、不可思議な議論が噴出しており、安倍総理の「国葬」反対などと騒いだり、法的に根拠がないと騒いでいる人も大勢いますが、日本においての国葬は、憲法7条と皇室典範25条による天皇の国事行為である大喪の礼だけです。当然ですが安倍総理は対象になりません。内閣府設置法により国家に貢献した人を弔う儀式が国葬儀であり別のものです。

実際、岸田総理も内閣府などの省庁も一度も正式な場では「国葬」ではなく「国葬儀」としています。マスコミやいわゆる識者と言われる人々もなぜか、これを曖昧にしています。

反対派の人々がどうしても「国葬儀」をやめさせたければ、日本は法治国家なのですから、合法的に実施するには、反対派の国会議員に陳情して、内閣設置法を改定してもらうしか、方法はありません。反対のデモ運動をしたり、いわゆる似非識者が奇妙奇天烈、摩訶不思議な憲法論や法律論を展開しても無駄です。

最後に、日本との友好のために安倍元総理の等身大の銅像を建てた台湾と、侮辱と嫌がらせのために偽慰安婦像や偽徴用工像を建てた挙げ句の果に、安倍元総理の土下座銅像を建てた韓国。 どちらと親しく付き合うべきか、明々白々です。韓国に時間や経費を割くぐらいなら、それをすべて台湾に割くべきです。


日米で「エネルギー・ドミナンス」確立せよ かじ切らなければ中国に打倒される 石炭生産で日本の2倍、原発の発電能力で米仏を追い抜く規模に―【私の論評】小粒な岸田・林には無理だが、安倍元総理なら、ポンペオ氏を凌駕する新概念を打ち出したかも(゚д゚)!

自民、旧統一教会と決別宣言 守れなければ離党も―茂木幹事長―【私の論評】法律の厳格な適用や新設の検討を飛び越して、旧統一教会との決別を厳命した岸田内閣に明日はない(゚д゚)!

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2022年9月24日土曜日

マスコミ大騒ぎも...円買い介入の効果は「限定的」 本当に切り込むべき仕組み―【私の論評】この秋の補正でみすぼらしい予算しか組まないのなら、岸田首相には来年5月のG7広島サミット後にご勇退いただくべき(゚д゚)!

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
マスコミ大騒ぎも...円買い介入の効果は「限定的」 本当に切り込むべき仕組み



政府は2022年9月22日、為替介入を行った。同日、日本銀行は金融政策決定会合を開いて、大規模緩和の継続を発表した。

22日の動きを時間を追ってみてみよう。12時少し前に、日銀の金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持というニュースが流れた。為替は二国間の金融政策の差でほとんど決まるので、この日銀の決定は事前の予想通りとしても、円安要因だ。1ドル144円前半で推移していたが、17時少し前には145円後半まで円安にふれた。

そこで、政府(財務省)による為替介入が行われた。一挙に円高方向に動き、一時140円後半まで円高になった。その後、すこしずつ円安に戻り、日付が変わるころには142円前半になっている。要するに、日銀の金融政策決定会合で1円円安になり、介入で3円円高になったわけだ。

フローの為替売買のごく一部でしかない為替介入

もっとも、この介入の効果は、これまでの事例では数日するとなくなるともいわれている。今回の介入は、日本単独で世界各国との協調でもないので、効果はそのうち消えるだろう。というのは、今の為替相場は、大量の資金取引が行われており、フローの為替売買のごく一部でしかない為替介入では効果は自ずと限定的だ。

このような介入に、マスコミは24年ぶりと大騒ぎだ。そもそも介入といっても、具体的には外国為替資金特別会計(外為特会)における外貨証券の売買である。円安是正には保有している外貨証券を売却する。

筆者は、為替介入で大騒ぎするより、この外為特会の仕組みそのものに切り込むべきだと思う。

政府は外為特会で外貨証券を120兆円ほど保有しているが、2021年3月末でのその円貨換算レートは1ドル104円程度だ。となると、単純計算では今の為替レートでは4割程度の数十兆円程度となる評価益がでている。

為替介入が為替相場に与える影響は一時的であるが、円安是正介入による外貨証券売却で巨額の売却益が期待できるので、その財源化には大きな意味がある。

為替市場への影響を避けるために、市中への売却ではなく、対日銀や他の特別会計などの広義の政府内へ売却する方法もあり得る。

外貨証券を売却し、名実ともに正々堂々と変動相場制の国になったほうがいい

そもそも、先進国つまり変動相場制国で日本ほど外貨証券を保有している国はない。恒常的に外貨証券を保有していることで、常に外貨証券購入との「為替操作」をしているとみなされても反論出来ず仕方がない。

あらぬ誤解を招かないように、この際、外貨証券を売却し、名実ともに正々堂々と変動相場制の国になったほうがいい。そして、二国間の金融政策の差で自ずと為替が決まるようにしたほうがいい。

そもそも円安は国全体としてはGDP増加要因だ。これは古今東西、自国通貨安は近隣窮乏化政策として知られて事実だ。その一方、輸入業者等にはマイナスである。しかし、政府が一番利益を享受しているのは知られていない。であれば、政府の利益を困った人に還元するのは当然だ。

2022年9月23日金曜日

岸田首相「万事休す」…物価高騰、国葬、旧統一教会問題「八方ふさがり状態」が10月にいよいよヤバくなる―【私の論評】岸田政権が長期政権になる道は絶たれた、最長でも来年5月のサミットまでか(゚д゚)!

岸田首相「万事休す」…物価高騰、国葬、旧統一教会問題「八方ふさがり状態」が10月にいよいよヤバくなる


「火だるま」の岸田首相

 10月4日、岸田文雄首相は第100代内閣総理大臣に就任してから1年の節目を迎える。

 従来であれば、番記者たちが、朝、官邸入口で岸田首相を待ち構え、「総理、就任1年の感想は?」と質問を浴びせ、岸田首相も気軽に応じるはずが、「国民の声に耳を傾けながら、1つ1つ結果を出してまいりたい」と、9月20日、報道陣の前で述べたフレーズを眉間にしわを寄せながら繰り返すしかないのではないか。

 参議院選挙での圧勝からわずか3ヵ月足らず。岸田首相は今、安倍晋三元首相の国葬問題、次から次へと新たな関係が明らかになる旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題で、「10月を乗り切れるのか」(自民党菅グループ中堅議員)と危惧される状況下にある。

 おまけに10月は、食料品や生活必需品など約6500品目で値上げが想定されている。これに、1ドル=150円近くまで下落するとの予測もある円安、OPECプラス(石油輸出国機構加盟国とロシアなど産油国の枠組み)で合意された原油の減産が追い討ちをかける。

 新型コロナウイルスこそ、新規感染者の数が頭打ち傾向にあるが、10月から水際対策を大幅に緩和し、入国の上限撤廃を撤廃したり、個人旅行を解禁したりすれば、第8波を招く可能性も否定できない。

 そうした中、国会では臨時国会が始まり、岸田首相は、野党からの厳しい追及に防戦一方となることを余儀なくされる。

 そこで説得力のある答弁ができなければ、NHKや全国紙などが毎月中旬に公表する世論調査では、内閣支持率が、9月の毎日新聞調査(9月17日、18日実施で内閣支持率29%)と同程度の水準にまで下落することも予想される。そうなれば、危険水域だ。

内閣支持率が上昇する材料はゼロ

 問題なのは、この先、岸田内閣への支持率が上昇する材料が見当たらないことだ。

 岸田首相は、国連総会での一般演説で、ウクライナ問題をめぐって国連改革を強く訴え、ロシアを名指しで批判してみせた。また、英国のトラス首相と会談するなど、外交日程も予定どおりこなしているが、支持率を回復させるような材料にはならない。

 それ以上の課題が山積しているからである。改めて整理しておこう。

■国葬に伴う弔問外交は極めて短時間
 ・9月27日に開催される安倍元首相の国葬。国葬にした根拠、約16億6000万円もかかる費用の問題に、二階俊博元幹事長の「国葬やらなかったらバカ」「黙って手を合わせて見送れ」発言が火に油を注ぎ、東京では当日まで大規模な抗議集会が続く。

 ・安倍元首相の業績に懐疑的な村上誠一郎元行革相が欠席を決め、「国民の半数以上が反対している国葬を強行したら国民の分断を助長する」と述べたことは、自民党内にも波紋を拡げている。

 ・海外からは、アメリカのハリス副大統領、カナダのトルドー首相、インドのモディ首相、オーストラリアのアルバニージー首相、それに韓国の韓悳洙首相など現職の首脳級700人が来日する予定で、岸田首相は50か国の首脳級とそれぞれ短時間でマラソン会談を実施する。ただ、1か国当たり10分~15分程度の会談で、成果が上がるかは微妙。第一、巨額の国費投入への批判は、弔問外交の成否に関わらず当面続く。

■旧統一教会問題での相次ぐ“報告漏れ“
 ・自民党が9月8日に発表した党所属国会議員の調査結果で氏名が公表されなかった木原誠二官房副長官らの関わりが新たに浮上。山際大志郎経済再生相も旧統一教会のイベントに出席していたことを認めた。

 ・相次ぐ“報告漏れ“には、筆者も含め、国民の不信感が募る。茂木敏充幹事長が再度、調査結果を公表したとしても焼け石に水。

■物価高対策は付け焼刃
 ・政府は低所得者層への5万円給付を決定。しかし、対象となるのは住民税非課税世帯の約1600万世帯のみで全体の3割程度。値上げが相次ぐ10月に大胆な対策が打てるのか疑問。

■観光支援策は両刃の剣
 ・円安のメリットとなる部分を活かし、海外旅行客の増大を図ったり、「全国旅行支援」を実施すれば、観光業にはのプラスになるが、新型コロナウイルスの感染拡大を招く恐れも。また「全国旅行支援」は、都道府県判断のため、コロナ患者の全数把握同様、混乱する可能性もある。

■衆議院選挙区の「10増10減」で与党内は泥仕合
 ・140選挙区で区割りが見直しになる。自民党は、選挙区が大幅に増える東京や神奈川などでは新たな支部長を決め、「この区は自民、ここは公明」と割り振る必要性が生じる。区割り変更は議員にとって政治生命に直結するため、大もめになる。言葉は悪いが、泥棒に刑法をいじらせるようなもの。合意形成には骨が折れる。

 ・とはいえ、これらを解決しなければ、岸田首相は解散もできない。調整に失敗すれば、その不満や怒りは総裁の岸田首相や茂木幹事長に向けられる。

思い起こされる「青木率」

 こうした中、思い起こされるのが「青木率」だ。「青木率」とは、かつて「参議院のドン」と呼ばれた元自民党参議院議員会長、青木幹雄氏が唱えた方程式で、「内閣支持率と政党支持率の合計が60%を切ると黄信号が灯り、50%を切ると政権運営がおぼつかなくなる」というものだ。

 その点からすれば、岸田内閣の場合、どの世論調査を見ても、「内閣支持率+自民党政党支持率=70%以上」という状況であるため、行き詰まるまでには至っていない。

 ただ、筆者は別の見方をしている。

 「内閣支持率+自民党内での岸田首相支持率<50%」になれば、岸田首相は極めて厳しい状態に追い込まれると見ている。

 それは、岸田首相の党内基盤がぜい弱だからである。

 総理・総裁派閥の岸田派は、衆参合わせて43人の党内第4派閥だ。安倍派(97人)、茂木派(54人)、麻生派(51人)には数の上で及ばず、自民党所属国会議員(衆参議長含め381人)の中で言えば、その割合は11%にすぎない。

 つまり、他派閥から見放され、岸田交代論が強まれば、急降下している内閣支持率との足し算で、比較的早い時期に50%を切る可能性があるということだ。

何しても首筋寒し秋の風

 「このまま行けば、来年春の統一地方選挙はボロ負けになる。そうなると我々は、地元で市議会議員や県議会議員を失うので次の国政選挙への打撃も大きい。来年5月の広島サミットで花道を…では間に合わない」(自民党安倍派若手議員)

 「岸田さんは『聞く力』を、国民ではなく安倍派に向けて発揮してしまった。安倍派に配慮して国葬実施に走り、旧統一教会問題に関しても、安倍派の重鎮、細田博之氏を衆議院議長だからという理由で調査対象にしなかった。この先、東京五輪汚職事件で、事実上、安倍派をとりまとめてきた森さん(森喜朗大会組織委員会元会長)にまで捜査の手が及べばアウトだ」(前出の自民党菅グループ中堅議員)

 自民党内からはこのような声が聞こえてくる。「物言えば唇寒し秋の風」(松尾芭蕉の句)などと言われるが、岸田首相にとっては、「何しても首筋寒し秋の風」といったところだろうか。

清水 克彦(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師)

【私の論評】岸田政権が長期政権になる道は絶たれた、最長でも来年5月のサミットまでか(゚д゚)!

上の記事、間違いもあり、掲載するかどうかは迷いましたが、現在の政局を表しているという点では、わかりやすいのであえて掲載しました。

旧統一教会問題に関しては、そもそも発端は、安倍派潰しだったと考えられます。今から振り返ってみると旧統一教会と関係が深い閣僚などを排除するという趣旨のことをあらかじめ発言した上での内閣改造でした。

その結果をみると、岸防衛大臣を外すなどの、安倍派外しの人事が目立ちました。これに、統一教会問題を利用したようですが、なんと蓋をあけてみると、岸田派閣僚にも統一教会と関係があることが明らかになったものも存在しており、特に安倍派だけが、統一教会との関係のある議員が多いということもありませんでした。

岸田派も含め、多くの自民党派閥に統一教会との関係ある議員が存在したことが明らかとなりました。

特に、旧統一教会との「関係」というあいまいなところで線を引こうとしたことに無理があり、新閣僚にも統一教会との「関係」がある人が出てしまったのです。

統一教会問題については、霊感商法などについては、安倍政権時代に法律が整備されて、かなり減っていることが明らかになっています。寄付金に関しては、たしかに問題にあるケースもあるのですか、これに対しては新たな立法で対処する旨を丁寧に説明すべきでした。

いかにマスコミや、野党から批判されようとも、岸田総理の得意な「検討中」であると言っておけば急場しのぎができて、しかも後で本当に寄付金を防ぐための、税法等の改正をすれば、批判も収まった可能性も十分あります。

ただ、機械的に統一教会と関係のあった議員を事実上、排除するとい発言をしてしまったことが、本当に不味かったです。そうなると、多くの議員が、関係者に対して「あなたは統一教会と関係がありますか」と質問しなければならなくなり、これは憲法にも保証されている「信教の自由」を侵害することになり、それこそ人権侵害になるからです。

労働局などでは、就職差別になるので以下のような質問を面接時にしてはならないとしています。

就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例
  1. 本籍に関する質問 あなたの本籍地はどこですか。 ...
  2. 住居とその環境に関する質問 ...
  3. 家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問 ...
  4. 資産に関する質問 ...
  5. 思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問 ...
  6. 男女雇用機会均等法に抵触する質問
企業などの就職の面接では宗教や尊敬する人物を質問してはいけないのです。面接でこのようなことをしてはいけないのですから、議員が自らの関係者にそのような質問をすることも、かなり問題があることは明らかです。魔女狩りといわれても仕方ありません。

このようなことを自民党の議員に要求したわけですから、これはある意味、野党やマスコミ等の挑発に見事に乗ってしまい、相手の土俵にあがった形になってしまいました。そのせいか、いつの間にか、安倍元総理の国葬儀と統一教会問題が関連づけられて、マスコミや野党が語るようになってしまいました。そうして、岸田政権はそのブーメランで、支持率がかなり下がってしまいました。

現在日本においては、国葬と国葬儀も混乱して語られています。日本に於いての国葬は、憲法7条と皇室典範25条による天皇の国事行為である大喪の礼だけです。当然ですが安倍元総理は対象になりません。内閣府設置法により国家に貢献した人を弔う儀式が国葬儀で別のものです。私は、このような混乱はいずれ収まるものとみています。

上の記事で、村上誠一郎元行革相が、国葬儀に参加しないことを表明したり、安倍氏を批判してみせたようなことは、全くの問題外です。これは、自民党としては何らかの処分をすべきです。

安倍派幹部の萩生田光一政調会長と世耕弘成参院幹事長は21日、総務会メンバーの発言との理由で遠藤利明総務会長に事実確認と「けじめ」を要求。萩生田氏は茂木敏充幹事長とも意見交換しました。

岸田総理は信じがたいことに、魔女狩り発言中に中国のミサイルが日本のEEZ 内に着弾してもすぐに国家安全保証会議(NSC)を開催しないなど、危機管理能力がないことがはっきりしました。おそらく、この時岸田総理の頭の中は、内閣改造でパンパンになっており、会議を開催するという考えも及ばなかったように見えます。


岸田内閣は、危機管理能力が全くないということがこれで暴露されてしまったといえます。

岸田政権と菅政権を比較すると、菅政権はかなりまともだったと思います。少なとも、岸田政権よりは、はるかに危機管理能力は高かったと思います。

菅首相の所信表明演説をあらためて見返してみると、こと新型コロナワクチンに関してはすべて達成していることが分かります。菅前首相は、ワクチン接種のペースに関して「1日100万回」と発言し、テレビや雑誌で「非現実的だ」などと叩かれに叩かれたましたが、結局これも実行しました。

「明かりは見え始めている」発言もなぜか非難囂々でしたが、その後の感染者数の激減をみると菅前首相の認識は間違ってはいませんでした。菅政権に関しては、少なくとも新型コロナワクチンに関しての結果だけは認めるべきです。


病床確保については、尾身会長も抗えない、いわゆる医療村に阻まれて、失敗はしたものの、それでも医療崩壊を起こすこともなく、コロナをかなり収拾させたというのは、間違いなく大きな成果です。

新型コロナワクチンで大きな成果を上げた菅政権でしたが、在職日数384日で成し遂げた仕事はそれだけにとどまらないです。東京オリンピック・パラリンピックの開催、デジタル庁の創設や携帯電話料金の値下げ、不妊治療の保険適用、福島第一原発の処理水の海洋放出、2050年カーボンニュートラル宣言など、主に安倍元首相時代に積み残してきた問題や課題に次々とケリをつけています。

さらに、安倍・菅政権ともに、コロナが蔓延していた時期には、両政権あわせて100兆円の補正予算を組んだことと、日本には他国にはない「雇用調整助成金」という制度もあり、これも活用したことで、コロナが蔓延して、様々な規制が行われたときでさえ、失業率は2%台を維持していました。

そのせいですか、無論コロナで職を失った人もいましたが、だからといって、それが深刻な社会問題にまで発展したということはありませんでした。両政権のコロナ感染が続いていた期間においては、日本は世界で一番失業率が抑えられていました。これについては、マスコミなどはほとんど触れることもありませんが、安倍・菅政権の大きな成果です。

岸田政権においても、失業率の大きな変動はありませんが、これは岸田政権の成果でなく、安倍・菅政権によるものです。岸田政権は、これを引き継いだので、経済的にも安定しており、かなりやりやすかったと思います。ただ、岸田政権の決めた、補正予算は数兆円レベルであり、この秋にまともな補正予算を組んで、様々な経済対策をしなければ、今後は失業率も上がることになります。

確かに、菅前首相はやり方が強引に見えるところがあり、口下手で発信能力にも欠けいるとも批判されました。ただ、いまから考えると、こうした批判は、仕事師と異名をとる菅氏に対しては、総理としての仕事そのものには批判ができなかったので、このような批判をするしかなかったとも考えられます。

国会や記者会見での木で鼻を括ったような受けも批判されましたが、これも今から考えると、全く筋違いで見当違いな馬鹿げた、低レベルの野党議員や記者の質問に対して、このような態度をとったまでで、相手の土俵に乗ってしまう、岸田現総理と比べれば、至ってまともだったと思います。こうした点に不満を覚えて不支持に回った人も少なくないようですが、今一度菅前総理の仕事ぶりの、結果だけを見てみると、近年まれにみる「国民のために働いた内閣」と言っても良いです。

昨年26日、BSフジのプライムニュースに出演した菅前首相は以下のように語っていました。
(衆議院選挙の応援に行った時のことを聞かれ)私自身は、総理を辞めての選挙でしたし、街頭遊説は非常に怖かったですよね。行っても非難されるんじゃないか、批判されるんじゃないかと。しかし、行く先々で見たこともないような光景が続きましたね。本当に多くの人に足を運んでいただいて、あるいは通りすがりの人のほとんどが足を止めていただいて、『ワクチンありがとう』って声がかかったんですね。政治家冥利に尽きましたよね。

結局自民党は、マスコミや野党の挑発に乗ってしまい、このような仕事師内閣とも呼べるような、菅内閣を一年で終わらせてしまいました。現在仮に、菅政権が今も続いていれば、良かったと思います。 

それが、結局派閥の力学などで、菅政権は一年あまりで終わってしまいました。以下に、菅政権と岸田内閣の支持率の推移を掲載します。菅内閣の支持率も高くはありませんが、政権末期には、菅内閣の仕事ぶりが評価されたのが、上昇しつつありました。

岸田内閣の現在の支持率は29%であり、不支持率は64%です。これは、毎日新聞の調査です。他の調査も似たりよったりです。


私は、岸田政権は危機管理能力が欠如しており、短期政権で終わらせるべきだと思います。ただ、現在は安保・外交・補正予算などの懸案事項が多数あります。岸田政権でこれが、できるなら、今年あたりには岸田政権を継続し、これらの懸案事項を片付け、来年に入ってから、派閥の話し合いなどを行い、5月のサミットを終了した段階で、総裁選などのスケジュールにスべきと思います。

自民党は、菅内閣という仕事師であり、安倍路線を忠実に継承する内閣を短期政権で終わらせたという、前科があります。

今年あわてて、来年4月の統一地方選のためだけに、解散などに踏み切れば、混乱する可能性が大きいです。ここは、自民党自体をなるべく毀損しない方向で、来年5月のサミット終了時に花道解散という形にすべきと思います。

解散後には総裁選を行い、候補者には菅氏も含めるべきだと思います。これが、当面安倍路線を継承できる最上の策だと思います。

どのみち、岸田政権が長期政権になる道は絶たれたとみるべきでしょう。次の自民党総裁として、高市氏や安倍派の議員を待望する人たちも多いようですが、未だ残念ながら政治家としては、力不足です。仮に総理になれたとしても、何も成就できず漂流し、かつての民主党政権や岸田政権のようになってしまうでしょう。

当面は、菅前総理のような人が、総理として安倍路線を引き継いだ上で、自民党の中の誰か有力な人がメンター的な役割も果たし、次の総理候補者を育てていただきたいものです。

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