2009年9月15日火曜日

山中教授「受賞こんな早いとは」…ラスカー賞 喜びの会見―今回の成果が素晴らしいことの理由

山中教授「受賞こんな早いとは」…ラスカー賞 喜びの会見(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)
京都大学 山中伸弥教授の研究グループ、iPS細胞を効率よく作成する方法を発見

 米国で最も権威ある医学賞とされ、多くのノーベル賞受賞者を輩出しているラスカー賞の受賞が決まった京都大の山中伸弥教授(47)は14日午後、同大学で記者会見し、「身に余る光栄。30、40年後の受賞はあるかなとは漠然と思っていたが、まさかこんな早いとは」と驚いた様子で喜びを語った。

 山中教授は、共同受賞する英ケンブリッジ大のジョン・ガードン博士(75)について、「我々の研究分野の父とも呼ぶべき方で、尊敬しており、共同受賞は格別の思い」と緊張の面持ちで報告した。

 一方で、「何十人、何百人の成果を基礎にして研究を行い、多くの人がさらに研究を発展させてくれた。私だけが受賞するのはフェアではない」と戸惑いも見せ、「この気持ちを忘れず、粛々と研究を進めて患者さんの役に立つ成果を達成したい」と強調した。

 高まるノーベル賞への期待については、「賞よりも、どうやって研究を進め、自分の責任を果たすかを考えている。それで頭がいっぱい」と話し、「研究は競争が激しいが、(ライバルとも)国内外で協力態勢ができつつある。患者さんを治すという目的に向け、競争と協力のバランスを取りながら走っていきたい」と表情を引き締めた。

今回の成果が素晴らしいことの理由

ips細胞とは?
ヒトの皮膚の細胞に4つの遺伝子(Oct3/4, Sox2, c-Myc, Klf4)を導入すると、皮膚細胞の形態が変わり、ES細胞(embryonic stem)(※2)のように分化(※3)する能力を獲得した細胞が樹立されました。これがiPS細胞です。同様の方法でマウスの皮膚細胞からiPS細胞をつくったことが山中教授により2006年に発表されましたが、マウスの場合はiPS細胞由来のマウスから生殖細胞をつくりえたので、今回のヒトの細胞も生殖細胞をつくりうる可能性があり、機能的にはES細胞と同等であると考えられます。すなわち「万能」細胞です。

これまでのES細胞は受精卵から作成しなくてはなりませんでした。そのことはすなわち、すでに個体として成長してしまった我々の体からは、自分と同じ染色体をもつES細胞の作成をおこなえないことを示しています。これはつまり、ある女性が卵子を提供し、他人からもらった精子で受精卵をつくったとします。この受精卵からつくるES細胞の染色体の半分は精子由来であるから、免疫的にはその女性の染色体とは一致せず、この細胞を女性に移植しても拒絶されてしまうことになるのです。

その点を回避するために、単為生殖させた卵子からのES細胞の樹立について特にマウスでは研究がすすんでいますが、充分な量の卵子を提供できるヒトは限られているので、ヒトでの研究は容易にはすすみませんでした。

韓国ソウル大学でのデータねつ造事件が記憶に新しいですが、韓国のグループがめざしていたのは、卵子の核だけをいれかえて、移植されるヒトと同じ染色体をもつES細胞を作ろうというものでした。しかし、この研究はデータのねつ造という問題のみならず、卵子を誰が提供するのか、という問題にも発展し、ヒトの系を用いた研究でその後追随する成果は聞いたことがありません。

※1 幹細胞:様々な形態や機能を持つ細胞に分化することができる多分化能力と、細胞分裂をするときに自分とまったく同じ性質の細胞をうみだすことができる自己複製能力をもつ未分化な細胞のこと。
※2 ES細胞(胚性幹細胞):マウスの受精卵は、受精後3~5日で胎盤などの組織に発生していく部分と、マウスの体そのものに発生していく内部細胞塊という部分にわかれるが、この内部細胞塊を体外で未分化なままに培養する細胞株として樹立したものが ES細胞であり、あらゆる細胞に変化する性質・能力をもつ。ヒトのES細胞は1998年に樹立された。
※3 分化:他の細胞に変化すること。

今回の成果が画期的である理由
 今回のiPS細胞は、次の二つの問題、自分と同じセットの染色体をもつES細胞をつくる、しかも、倫理的に問題のある材料をもちいない、という点が極めて重要です。さらに、皮膚の細胞であれば、医者でないものでも細胞の採取が容易であろう、と想像がつきます。すでに分化を終えた細胞がもとの未分化な状態に戻ること、脱分化、という現象は発生学の古くからある概念であり、多くの研究が蓄積されています。しかし、最終分化し体の一部として機能している細胞が、もっとも未熟な細胞に脱分化する、ということがありえるのだろうか、と考える研究者は多かったと思います。山中教授はこのことをマウスの皮膚の細胞を材料にまず示し、大きな話題となりました。しかし、これまでのES細胞はマウスとヒトとでは性質が異なることが報告されており、同じ方法がすぐにヒトの細胞に応用できるのかどうか疑問視する考えもありました。

この研究により、細胞移植により治療の道がひらける数々の重篤な病気、糖尿病、脳の神経系の脱落による疾病、心筋梗塞などにとって大きな希望がみえてきました。

同時に、毛髪、皮膚(しわとり)、歯など、生命機能には直接かかわらないが、再生医療のマーケットとして注目を集めている分野にもきわめて重要な発見です。なぜなら、これらの再生は生命にかかわらないだけに免疫抑制剤を使ってまでも機能回復したい、とは考えられず、他人からの移植はまずありえません。したがって、自己移植による再生、すなわち、自分の細胞、あるいは自分と免疫学的に同一の細胞を用いて再生する必要があるからです。もし少し皮膚を提供する程度で毛が生え、しわがとれるのであれば、気楽に再生を希望する人々が少なくないでしょう。

技術的な課題
今後の問題点は、まず遺伝子をより安全な方法で導入することです。今回はレトロウイルスというウイルスを用いて遺伝子を導入しました。レトロウイルスは、細胞の中に感染すると染色体のどこかに自分の遺伝子を挿入することができます。このシステムを使ってウイルスに挿入したい外来の遺伝子をいれておき(レトロウイルスの遺伝子と置き換えておき)、レトロウイルスが自分の遺伝子を挿入する力を使って外来の遺伝子、今回は前述の4つの遺伝子を導入したわけです。

ここで問題になるのは、レトロウイルスは細胞の染色体上で場所を選ばず遺伝子を挿入してしまうことです。したがって、大事な遺伝子の途中に挿入されてしまうと、その遺伝子は破壊されてしまいます。破壊された遺伝子ががん抑制遺伝子であれば、細胞はがん化してしまいます。また、もともとある遺伝子を破壊しないまでも、レトロウイルスの挿入箇所付近の遺伝子の発現の調節を変えてしまう可能性もあります。これらの問題を解決するためには、染色体上の安全な位置に遺伝子が挿入されるような工夫をすること、あるいは外から遺伝子を導入せず、細胞にもともと存在しているこれらの遺伝子の眠りをおこし遺伝子発現させてやることで解決することができるでしょう。

また、iPS細胞は、ES細胞がもつ性格「何にでもなれることによる危険性」については同様の問題を抱えています。すなわち、iPS細胞自身のがん化、分化転換により、一度分化した細胞が異なる種類の細胞にさらに分化する、という問題や、分化誘導したiPS細胞が再び脱分化して未分化な状況に戻るという可能性をもっています。これらの現象を完全にコントロールすることが必要です。

さらに、iPS細胞は個々の人に対して樹立されるわけですから、ことによると細胞にも個性があり、このコントロール方法はそれぞれの細胞により異なる条件設定が必要になるかもしれません。

倫理的な課題
多くの報道によるように、この細胞は生殖細胞に分化する可能性があるため、クローン人間の作成が技術的に可能であることが議論されています。この点は、 iPS細胞に限った問題ではなく、クローン技術の発展とともにすでに多くの議論が重ねられ、指針がだされているところです。これまでの議論の延長線上で、この細胞についても慎重な取り扱いが求められていくことになるでしょう。

基礎研究での期待もふくらむ
iPS細胞は、生物学的な意味でもこれから再生医学のみならず発生学の研究領域の大事な要になるであろう。4つの遺伝子がそれぞれどのような働きをもってこのような現象をひきおこすのでしょうか。これらの遺伝子の意義やメカニズムが明らかになれば、細胞の分化、脱分化を容易に人工的に操作することにより、組織幹細胞も自由につくれる日がくるかもしれません。このようにiPS細胞のもたらす知見は初期発生学、組織の発生を研究していくうえで、多くの重要な知見をもたらすことが期待されます。

ビジネス面でも考えられる素晴らしい将来性
上記の文面だけだと、医療方面とか、基礎研究に関係するだけであり、病気になったりしなければ、関係のない分野だともおもわれがちだと思いますが、将来的には、人間の臓器などはもとより、たとえば、さまざまな方面に有用な物質やシステムなどを大量に作り出すことも可能になることが予想できます。

たとば、人体に限らず、多くの生物のミトコンドリアにはTCA回路というものがあり、エネルギーを生み出しています。たとえば、大量のips細胞をミトコンドリアに分化させて、これを特殊なバイオリアクターにいれて、反応させ、エネルギーを効率的に取り出すシステムなども考えられます。もし、そんなことができれば、現在のエネルギー問題など一挙に解決するし、生物の回路を利用するわけですから、排出物などもほとんど出ず、出たとしても少量で環境に負荷与えることはほとんどないと思います。

さらには、大量の神経細胞を生み出して、これらを有機的に結合して、それこそバイオコンピュータなるものも生まれるかもしれません。そうなったら、かなり小さなものでも、現在のスーパーコンピュータ以上の演算速度を期待できます。しかも、エネルギーもほとんどいりません。倫理的にも、もともとは、人間の皮膚の細胞であること、一部の細胞のみを活用していることからほとんど問題はないと思います。

これはまるでSFのようで、ほとんど私の想像の産物ですし、これからかなり時間をかけなければできないことがらですが、将来的には十分ありえることです。ips細胞も研究から、応用工学、化学などの分野に進めばとてつもないことが起こりえるということです。その他、思ってもみなかったようなイノベーションが続々と発生してくる可能性があります。

最近、このブログにHTVの話題などイノベーションに関して掲載していますが、今回のこの会見も日本のまた別の面でのイノベーションの可能性の象徴として重要な意味を持つものです。




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