2013年9月17日火曜日

崩壊後の5年間の失策―【私の論評】リーマンショック後のアメリカの政策を失策というなら、日本の政策は愚策以外の何ものでもなかった!増税でまたぞろ愚策を継続するつもりか?

崩壊後の5年間の失策

ポール・クルーグマン氏

まもなく、リーマン・ブラザース崩壊の5周年がやってくる。あの日は、すでに最悪と思えた不景気が、さらに恐ろしい状態になった瞬間だった。突然、経済破局が現実のものとなる可能性を目の当たりにしたのだ。

そして、破局はやってきた。

人によっては「破局って一体何のこと? 当時、ささやかれたのは第2の大恐慌で、それは実際には起こらなかったでしょ?」と言うだろう。

確かに、起こったとも、起こらなかったとも言える。もっとも、ギリシャやスペインの人々は、起こらなかったということには同意しないだろう。いずれにしても、この惨事には程度の差がある。もう一歩のところで完全な経済崩壊をもたらしかねない、経済政策の途方もない失敗という事実を認識することが重要だ。この5年間の経済失策は、実際、途方もないものだった。

いまだ低水準の雇用

それがどれほど途方もないものだったのかは、金額で測れる。この5年間に米国で生産できたはず、そして生産すべきだったモノやサービスの価値と、実際に生産した価値の差である「生産高のギャップ」を妥当な形で測定すると、ゆうに2兆ドルを超える。「生産高のギャップ」を妥当な形で測定すると、ゆうに2兆ドルを超える

この経済的ムダの背後には、より痛ましい、人的潜在力のムダがある。経済危機前は63%あった米国人の雇用割合が、またたく間に59%以下に落ち込み、いまだ低水準のままである。

なぜ、こんなことになったのだろうか? 人々がいっせいに怠け者になったわけではない。右派の人々は、米国の失業者は(政府が生活保護者に発行する)食料配給券でいい暮らしができているので真剣に職探しをしていないとか、失業保険は受給者にそれなりの侮辱を加えて与えるべきだなどと主張する。

雇用率の低下は人口の高齢化による部分も少しはあるが、それ以外に関しては前述した通り、途方もない経済政策の失敗によるものだ。

この記事の詳細は、こちらから!!


【私の論評】リーマンショック後のアメリカの政策を失策というなら、日本の政策は愚策以外の何ものでもなかった!増税でまたぞろ愚策を継続するつもりか?

上の記事は、ニューヨーク・タイムズのサイトに掲載されているクルーグマン氏のブログの続きです。このブログをまとめた、「さっさと不況を終わらせろ!」という書籍については、このブログでも紹介したことがあります。そのブログのURLを以下に掲載します。
ポール・クルーグマンの新著『さっさと不況を終わらせろ』−【私の論評】まったくその通り!!
詳細は、このブログをご覧いただくものとして、このブログでは、クルーグマン氏の主張のほか、クルーグマン氏の主張と全く同じことをした、滝はし是清が、昭和恐慌(世界大恐慌での日本での呼称)を世界で一番先に脱却したことを掲載しています。世界恐慌の原因は、デフレであることとが今や明らかになっています。クルーグマン氏が主張したようなことは、昔の日本で実際にデフレのときにやって、功を奏しているわけです。その意味では、クルーグマン氏は全く当たり前のど真ん中を言っているわけです。

このブログでは過去に何度か、リーマンショック後の各国の中央銀行の量的緩和の実体を掲載したことがあります。日本以外の国の中央銀行では、ショック後徹底的に量的緩和を行いましたが、日本だけがそれを行わず、結局震源地であるアメリカや、直接的な影響をかなり蒙ったイギリスなども日本よりははるかに立ち直りがはやく、結局直接的にはほとんど影響を蒙るはずの日本だけが、立ち直りが遅く、独り負け状況になったことを掲載しました。その記事の代表的なものの記事のURLを以下に掲載します。
【日本の解き方】白川日銀総裁は“デフレ・円高大魔王” - 経済・マネー - ZAKZAK―【私の論評】財政ばかりでなく、金融政策にも目を向けよ!!
詳細は、この記事を御覧いただくものとして、この記事は、昨年の7月のものです。とにかく日銀の失策ではなく、愚策によって日本はリーマンショック後の不況から立ち直るに世界で一番時間がかかったことは間違いありません。とにかく、何があっても、頑なに金融引き締め政策を続けたおかげて、日本はリーマンショックどころか、過去15年にもわたってデフレ状況でした。

リーマン・ショック後の日銀マネーサプライは世界最低水準


そうしてこの記事では、さらに、財政政策ばかり目を向けて、とにかく財政赤字を減らそうということばかりに気を使っている政府のやり方を批判しました。

さて、話は変わって、上のブログの核心的な部分は以下の部分です。
この5年間に米国で生産できたはず、そして生産すべきだったモノやサービスの価値と、実際に生産した価値の差である「生産高のギャップ」を妥当な形で測定すると、ゆうに2兆ドルを超える。これは、決して取り返すことができない、何兆ドルにもおよぶ純粋なムダ金だ。 
この経済的ムダの背後には、より痛ましい、人的潜在力のムダがある。経済危機前は63%あった米国人の雇用割合が、またたく間に59%以下に落ち込み、いまだ低水準のままである。
さて、クルーグマン博士は、リーマン・ショック後のアメリカの政策をかなり痛烈に批判しています。しかし、アメリカは、過去15年間デフレではありませんでした。過去15年間どの期間も、かなり緩やかであった時代があったにしても、デフレではありませんでした。しかし、日本はどうだったのでしようか。日本は、不況どころか、15年もデフレが続きました。今もデフレが続いています。先日も示したように、コアコアCPIは、ずっと右肩下がりで下がっおり、一度も上がったことはありません。

アメリカと日本との比較すれば、アメリカの経済政策が失策であれば、日本の政策は愚策であったといわざるをえません。

この愚策、今年4月の、日銀人事体制の変革と、それに伴う黒田総裁による、異次元緩和で、ようやっと終わったかのように見えました。

しかし、ごく最近では、新聞も多くの政治家も来年の4月からの増税をさも、既定路線であるかのように述べています。どう考えても、デフレから脱却していない、来年の4月のタイミングで増税してしまえば、またぞろしばらく、日本はデフレから脱却できません。

さて、日本のデフレ・ギャップはどのくらいのものだったかといば、これも以前このブログに掲載しています。その記事のURLを以下に掲載します。


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、日本のデフレ・ギャップは年間で37兆円もあるのですから、これを15年間も続けていたらどういうことになるかといえば、37兆円×15=555兆円です。無論、毎年37兆円なのかという話もありますが、少なくとも単位は間違っていないと思います。15年間で、500兆超のデフレギャップがあったということです。

上の記事では、クルーグマン氏は、「生産高のギャップ」を妥当な形で測定すると、ゆうに2兆ドルを超えると述べています。日本の生産高のギャップ(デフレ・ギャップ)も相当なものです。15年間で500兆円です。

もし、日本が過去15年間デフレでなかったとしたら、こんな巨額の金額に相当する商製品やサービスとして生産されて、それが販売されて、誰かに渡り、そのお金が誰かの懐に入り、国民経済は潤っていたはずです。日銀が金融引き締めを続けたせいで、こんな壮大な無駄遣い、無駄金が消えてしまったわけです。

しかし、現在の金融緩和をそのまま続けていれば、このデフレ・ギャップはいずれ消えることになるわけです。そうして、つい数ヶ月前までは、いずれ消えるだろうと多くの人々がそう思っていました。無論、私もそう思っていました。

しかし、最近の増税既定路線にしたがって、来年の4月に増税すれば、せっかくの金融緩和すなわち、アベノミクスが腰を折られる形となり、デフレからの脱却が遠のきます。そうなると、デフレギャップはそのまま温存され、GDPも増えることなく、結局税収も増えることはありません。デフレから抜け出せないばかりか、税収も減ったままで、財政再建もかなわないということになってしまいます。

それに、雇用の悪化もそのまま継続されます。何も良いことはありません。何も、未来永劫にわたって増税するなとはいいません。しかし、来年4月の時点での増税は悪いことばかりです。

それでも、増税派は、増税派は増税は既定路線だと言いはります。そうして、あろうことか、新聞や一部の官僚や政治家などでも、「安倍総理は増税の判断を決めた」などと、憶測をあたかも事実のように公言しているものがいます。

しかし、これは、どう考えてもおかしいです。本当に増税を決めたというのなら、安倍総理がそう決めたとはっきり言うはずです。

首相官邸のサイトでは、安倍総理、13日の経済財政諮問会議にて安倍さんの増税に関する肉声を以下のように伝えています。
安倍総理は本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「本日は、最近の経済情勢や集中点検会合の報告、民間議員による論点整理等を踏まえ、消費税率引上げ判断に関する議論を行いました。経済状況等を総合的に勘案するに当たって、有識者議員の提案及び本日の議論を踏まえて、諮問会議としての意見を取りまとめていただきたいと思います。10月上旬には、私が消費税率引上げについての判断をしたいと思います。・・・<増税とは関係ない部分>・・・・・・・」。
この時点では、増税派は「安倍総理は、増税を決めた」ということを言っていたのに、増税関して まだ何も言っていません。ちなみに委員から提出された資料は全部両論併記でした。

その後安倍総理の増税決定に関する、肉声の報道はされていません。増税派は、「オオカミ少年」になる可能性も十分あるわけです。増税すれば、最初に市場が懸念を抱き、すぐに株価が下がります。その時点で増税派にはかなり不利なことになります。そうして、半年もすば、実体経済が落ち込み、さらにデフレスパイルの泥沼にもう一度落ち込むことは、目に見えています。逆に増税しなければ、経済指標はさらに上向き、増税見送りは、正しかったことがはっきりします。安倍総理がどちらの道を選ぶのか、それは、はっきりしていると思います。


増税を決めてしまえば、金融引締めにより、経済の落ち込みがはっきりして、第一次安倍内閣崩壊したときのように、第二次安倍内閣の崩壊ということも十分にあり得ます。そうして、もし仮に、第二次安倍内閣が崩壊して、経済に疎い谷垣さんのような人が総裁になった場合、経済の落ち込みはさらひどくなり、何をやってもモグラたたきのようになり、何も解決できず、先に自民党が下野して、民主党に政権交代したように、自民党政権が下野する可能性だってあります。そうなったら、自民党は万年野党になってしまう可能性が高いです。安倍総理が、そのような危険を犯すとはとても思えません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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