2014年12月12日金曜日

増税「先送り」解散でメンツ失った財務省 安倍首相に「グレートリベンジ」仕掛ける?―【私の論評】故中川昭一氏の遺志は実現されるか?増税を遮二無二に進める、財務省の背景にあるのは日本を便利なキャッシュ・ディスペンサーにしたい欧米の意図(゚д゚)!

増税「先送り」解散でメンツ失った財務省 安倍首相に「グレートリベンジ」仕掛ける?

衆院解散の威力はすさまじかった

マスコミが一斉にネガティブな情報を垂れ流しにすると、耳タコになって、一般の人のイメージ形成をすることがある。その一例に、「選挙に大義がない」があった。

総選挙は最終局面だが、いまでもそう言う人がいる。知識人ぶって、消費増税附則18条にある景気条項で安倍総理が決断すれば、消費増税はストップ(先送り)できるのだから、解散は不要であるというテレビ・コメンテーターもいる。総選挙は、国民が衆院議員を選ぶとともに、こうしたエセ知識人のウソを暴き出すこともできる場だ。

「ご説明」は、国会議員のみならず、マスコミ、学者・・・

消費増税附則18条では「・・・その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」と書かれている。一般の人であれば、これで総理が決断すれば「施行の停止」が出来ると思うだろう。しかし、それは間違いだ。安倍総理が「講ずる」ことができるのは、増税ストップ法案の国会への提出までだ。その法案の成立は国会議員の仕事だ。

それでも、安倍総理は自民党のトップであり、その自民が国会で多数を占めているから、出来るだろうという反論があり得る。これは、今回の消費増税での答えはノーである。財務省が、自民党の多数、民主党まで「ご説明」して、増税ストップ法案は否決されるように根回ししていたからだ。そのとき、財務省は、増税に賛成してくれれば、予算をつけるという懐柔策も示して、増税賛成議員を増やしていた。財務省の「ご説明」は、国会議員のみならず、マスコミ、学者、エコノミスト、知識人まで広範に渡っていた。

そこで、安倍総理は、衆議院を解散して総選挙で、国民から意見を聞いてこい、と言ったわけだ。これは、安倍総理自らが、財務省の動きを示唆する発言をしている。

この解散の威力は、凄まじかった。あれほど増税を叫んでいた国会議員らも、ぴたっと黙ってしまった。

新聞が「今回の解散に大義がない」という理由

新聞各社は、軽減税率に賛成なので、消費増税に賛成というスタンスだった。だから、消費増税をストップさせる今回の解散に大義がないと、おかしなことを言ってしまう。

消費増税は、財務省の悲願なので、政権を潰してもかまわないとさえ思っているかのようだ。そして、財務省の言うとおりにして法案を成立させた竹下内閣(創設)、村山内閣(3→5%)、野田内閣(5→8→10%)は潰れた。安倍政権は、初めて財務省のいうことを聞かなかった政権だ。

今回の解散で、財務省のメンツは大きく失われた。おそらく、グレートリベンジを考えているだろう。実際、そうした声は筆者のところまで聞こえてくる。

実は、財務省のいうことを無視した政治家は、これまで一人いた。故金丸信氏だ。筆者が財務省入省した1980年、当時のグリーンカード法が金丸氏によって執行停止、その後廃案にされた。成立した税法を金丸氏が葬り去ったのは事実だ。金丸氏はその後、税法違反で政治家生命を絶たれた。その両者に関係があるのかどうかは定かでないものの、政治家は財務省権力の強大さを思い知ったはずだ。

財務省のグレートリベンジがどうなるかも、今回の選挙結果に依存する。

高橋洋一
この記事は要約です。詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】故中川昭一氏の遺志は実現されるか?増税を遮二無二に進める、財務省の背景にあるのは日本を便利なキャッシュ・ディスペンサーにしたい欧米の意図(゚д゚)!

財務省が、国民生活など無視して、どこまでも増税推進に走るのか、単に省益とする人もいますが、それだけでは説明のつかないところがあります。特に、今年4月からの8%増税がやすやすと決まったことの背景に、何があるのか・・・・・。この疑問に上の記事は応えてはいないと思います。

増税一色だったマスコミや、政治家、識者などはこのことには応えていません。しかし、ヒントとなることはあります。

さて、昨年の9月には、安倍首相は10月1日を待たずして、早くも増税を決断したかのように執拗に報道されていました。マスコミも、識者も、そうして自民党の政治家たちの発言からも、外堀を埋められて増税に踏み切る事はもはや疑う余地はないという状況でした。

そんななか、アベノミクスの最大の支援者の一人であり、消費税増税に反対する産経新聞の田村秀男編集委員が今朝の「日曜経済講座」で、日本にとって9月は魔の季節だと説いていました。

田村秀男氏

本日はそれについて掲載させていただきます。この記事は、もう産経新聞のサイトからも消えています。そのため、全文引用させていただきます。
産経新聞(2013/9/22)
日曜経済講座(田丸秀男編集委員)「現金支払機」の増税デフレ中川元財務相の「遺言」に思う
 18日展、安倍晋三首相が苦悩の末、消費税増税を決断したと聞いたとき、ふと、「9月は日本にとって因縁の月か」と思った。「平成バブル」へと日本を導いたプラザ合意(昭和60年)、米中が裏で示し合わせてアジア通貨危機対策での日本の主導権を葬り去った国際通貨基金(IMF)・世界銀行香港総会(平成9年)、そして日本のデフレ不況を加速させたリーマン・ショック(20年)も9月の出来事である。日本はそのつど、国運を狂わせた。 
 リーマン・ショック直後に財務相に就任したのは故中川昭一氏で、20年10月10、11の両日にはワシントンで先進7力国(G7)財務相・中央銀行総裁会議などを精力的にこなした。 
 以下は氏から直接聞いた秘話のメモである。 
 10日、ポールソン米財務相、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長らに対して公的資金投入による金融危機対策を厳しく迫った。11日にはブッシュ大統領主催のホワイトハウスでの歓迎パーティーに出席。そこに飛び込んできたのは、北朝鮮に対する米国の「テロ国家指定解除」という重大ニュースだった。中川さんはそれを耳にするや、前日にも会って面識のあるブッシュ大統領に走り寄った。「大統領、どうしてですか。日本人などの拉致問題をどうするのか」と詰め寄る。大統領は「あそこにいるコンディ(コンドリーザ・ライス国務長官)に聞いてくれ」と逃げ出した。 
 中川さんは帰国後、訪ねてきた米共和党の要人に向かって、口頭でホワイトハウスヘの伝言を託した(筆者はこの場に居合わせた)。 
内容は、 
「いくら世界のためだ、黙ってカネを出せと言われても、日本はキャッシュ・ディスペンサー(CD、現金自動支払機)になるつもりはない」。 
 遺言だな、と今思う。 
 筆者が知る限り、国際金融の舞台での致命的とも言える日本の弱さにいらだちを強く感じ、激しく行動した政治家は、中川さんしかいない。 
 消費税増税問題を国際金融の次元でとらえ直すと、日本は増税によって米欧のための「キャッシュ・ディスペンサー」の役割を確約したといえるかもしれない。 
 日本は世界最大の外国向け資金の提供国であり、その基本的な担い手は家計である。 
 家計金融資産の多くは銀行など金融機関に預け入れられる。金融機関は資金の多くを日本国債や外国証券に投資して運用する。財務省は外国為替資金特別会計を通じて金融機関から円資金を調達して米国債を購入、運用する。 
  家計は10年以来の「15年デフレ」の聞、消費を抑えてひたすら金融資産を増やし続けてきた。今年6月末、名目国内総生産(GDP)は9年末比で44兆円減だが、家計金融資産は305兆円、対外金融資産は398兆円増えた。

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 リーマン後の増減が本グラフである。名目GDPはマイナスが続くのに、金融資産増に加速がかかっている。しかもその増分相当がそっくり海外での金融資産に充当されている。ドル換算すると、対外金融資産総額は今年6月末時点で約1兆7千億を増えた。 
このカネは米連邦準備制度理事会(FRB)が増刷したドル資金約1兆5千億をしのぐ。FRBマネーは紙切れでいくらでも刷れるが、しょせんはあぶく銭だ。日本が出すのは本物のカネであり、国民の勤勉な労働の産物である。 
 FRBが量的緩和政策の縮小に動く中で、勤揺する米欧の株式や債券市場にとって、これほど頼りになるカネはない。日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう。米欧の国際金融マフィアが牛耳る国際通貨基金(IMF)は2年以上前から日本の消費税増税をせき立ててきた。G7、G20(新興国を含む20力国)もそうだ。 
 英フィナンシャル・タイムズ紙(FT、アジア版)は13日付の社説で、消費税増税を「挑戦するに値するギャンブル」、「さいは投げられた」として安倍首相の増税決断を先回りして褒めたたえた。ウォール街など国際金融市場の利害を反映する他の金融中心の米欧メディアも同様だ。 
 今の日本には中川さんのような「国士」が見当たらない。それどころか、得体のしれない「国際世論」を重視し、国内世論を無視し、増税を「国際公約」同然とうそぶいて恥じない風潮が言論界や政界に蔓延している。中川さんがもし健在なら、首相にどう助言するだろうか。
中川夫妻
中川氏が存命であれは、なんとかして昨年の8%増税を見送りさせた可能性も大きかったと思います。中川氏とそれに近いグルーブ、これにブラスして、安倍総理とこれに近いグルーブが合わされば、自民党の中でも大きな勢力になっていたに違いありません。

しかし、現実には増税反対勢力は安倍総理とこれに近いグルーブのみであり、欧米・日本国内の反対派に対峙しても勝ち目はなく、多勢に無勢という状況であり、結局安倍総理は、安定政権を樹立するためにも、昨年は増税に踏み切らざるを得なかったのです。

この8%増税によって、日本は欧米にとって、最も良いキャッシュ・ディスペンサーになりました。デフレが継続して消費は滞り、家計は今までどおり、消費ではなく貯蓄に励むようになり、結局それらの金が、海外投資に回るということです。

実際に、日本の対外金融純資産(外国に貸し付けているお金)は、過去20年以上にわたって、世界一です。本来これらの金は、デフレでなけば、日本国内の消費や投資に回っていたものです。これについては、このブログでも掲載したことがあるので、そのURLを以下に掲載します。
対外純資産、過去最大の296兆円 2位中国の2倍、22年連続「世界一の債権国」―【私の論評】対外金融資産が世界一の国日本が、財政破綻すると思い込むのは狂気の沙汰、そんなことをいい触れ回る輩は大馬鹿かスパイに決まり(゚д゚)!

そうして、家計は、意的預金などのまわり、その金を預かっている銀行は、日本国内にめぼしい投資先がないため、欧米への投資へとまわり、さらに、これらの金を返す頃には、特に米国がお金を刷り増してインフレにして、ドル安円高にすれば、帳消しにするか、そこまでいかなくても、かなり軽減することができます。

こういう背景がなければ、財務省が増税推進を強力に推し進め、政治家や、マスコミから識者まで、あの非常識な増税に両手をあげて大賛成という状況にはならないはずです。

このようなことを掲載すると、アメリカが10%増税には反対したいたことと、矛盾するではないかと指摘する人もいるかもしれません。

しかし、それは十分に説明がつきます。8%増税くらいなら、日本はアメリカにとって、良いキャッシュ・ディスペンサーになるのでしょうが、さすがに10%増税を実行してしまえば、日本経済に及ぼす破壊的な悪影響ははかりしれず、そうなれば、日本の家計にかなり悪影響を及ぼすことになるは、必至です。

だからこそ、アメリカも8%増税で暫く様子を見ることにしたということでしょう。アメリカ内部では、8%増税でも、かなり悪影響があり、家計に悪影響を与える可能性もあるとの指摘もあったものと思います。

日本の家計に悪影響を及ぼし、目減りなどしてしまえば、あるいはもしも日本が本当に財政破綻でもしてしまえば、アメリカにとっては便利なキャッシュ・ディスペンサーが使えなくなるという危惧があるため、さすがにアメリカもこの時期の10%増税には、懸念を示したのです。

この懸念については、このブログでも掲載したことがありますので、以下にそのURLを掲載します。
消費増税 米もダメ出し 財務長官が「失望」表明―【私の論評】日本のマスコミが伝えない真実!ルー米財務長官吠える!日本の増税DQNどもをそのまま放置するな(゚д゚)!
リー米国財務長官

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、10%増税を実行してしまえば、家計も直撃し、家計が目減りすれば、元も子もなくなるわけで、今のタイミングでの10%増税には反対しているわけです。

しかし、日本の経済状況か良くなれば、日本政府が再度増税して米国のキャッシュディスペンサーとしての地位を揺るがないものにしたいという考えがあることは間違いないと思います。

だからこそ、安倍総理は、増税推進派に対して「1年半後」に間違いなく増税するというリップ・サービスをしたのです。
財務省の屈辱と安倍総理のリップ・サービス―【私の論評】今回の解散は、どんなに反対があっても総理大臣は、解散・総選挙という伝家の宝刀を抜くことができるということを示したことで大義は、はっきりしているのに「大義なし」といった輩はただの無能蒙昧の大馬鹿野郎(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして。安倍総理のリップサービスに関連する部分のみ以下に掲載させていただきます。
安倍総理が増税延期を決断したのは歓迎すべきことだが、どうして「1年半後」に増税することを、合わせて断言したのか、その狙いがよくわからないという人もいる。これは、端的に言えば、財務省およびそのカネに群がる人たちへのリップ・サービス。政治的にどうしても我慢できない人たちに向けて、「1年半後」と言って納得してもらったのである。あくまでリップ・サービスという点が重要だ。 
「1年半後」というのは、消費増税の引き上げ時期を'15年10月から1年半後の'17年4月にするということだが、これは今から2年4ヵ月先である。政治では予測不可能である。ただし、それまでの間、'16年7月頃には参院選挙が確実にある。となると、そのときに、衆院選とのダブル選挙があっても不思議ではない。要するに、「1年半後」というのは、財務省らの増税勢力に対する懐柔策であると同時に、安倍政権側が増税勢力に対して総選挙という伝家の宝刀を抜くかも知れないというオプションを持つことなのだ。
このように、今回の解散が、「安倍政権vs.増税勢力(財務省とその「ポチ」たち)」の構図になっていることがわからないと、本当の意味が見えてこない。 
今回の解散は、戦後おそらく初めて、時の総理が財務省の言うことを聞かなかったものだろう。その意味で、政治史として特筆すべき出来事なのだ。プライド高く、政治家を見下してきた財務省にとって屈辱のはずだ。国民は、安倍政権か財務省のどちらを選ぶだろうか。
そうして、このリップサービスは、財務省に対するだけのものではなくて、欧米に対しても、日本はよりよき、キャッシュ・ディスペンサーであり続けますというものでもあります。

いずれにせよ、安倍総理は日本銀行を何とか、日本政府の金融政策にもとづき金融政策を実行できるようにしました。こうなると、欧米諸国にとっては、いくら自分たちがお札を刷り増しても、日本が金融緩和策を実行すれば、国内がインフレになるだけになってしまいます。

そうなると、財務省などが増税などで、緊縮財政を実行すれば、日本はデフレであり、これにより、欧米諸国がインフレになる状況を防ぐことができるわけです。実際、欧米諸国は、リーマン・ショックのときに、自分たちがお金を大量に刷りましすることでも、日本が大幅な金融緩和をしなかったことにより、国内のインフレを抑えることができました。

結局リーマン・ショックの震源地でもないし、サブプイラム・ローンなども関係なかった日本が、一人負けの状態となりました。そうして、日本は、欧米諸国の便利なキャッシュディスペンサーであり続けたわけです。

安倍総理は、リップサービスなどで、アメリカの様子をうかがい、次の増税に関しては、自らのイニシアチブで導入か見送りをできるように、今回の選挙には全力あげて取り組むことでしょう。

私たち、日本国民も、故中川氏の意志を引き継ぎ、日本国を欧米諸国の便利なキャッシュディスペンサーにすることなく、とはいいつつ、適度に投資もして、日本も欧米も互いに良くなる道を選ぶべきものと思います。

それが、まともな国際環境であり、秩序だと思います。日本は、日本の意志でこうした新しい国際秩序を樹立し、世界に貢献する道を選ぶべきであって、「戦後体制」のまま、かつての戦勝国の思惑に流されることなく、それを実行することが「戦後体制」からの脱却につながります。

私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?

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