2015年5月26日火曜日

人民解放軍に激震 習政権が軍部のカネの流れを徹底調査 聖域を破壊 ―【私の論評】習の戦いは、中国の金融が空洞化し体制崩壊の危機状況にあることを露呈した(゚д゚)!

2015.05.26

今度は人民解放軍にメス。習氏のもくろみは吉と出るか。写真はブログ管理人挿入。以下同じ。
腐敗官僚の撲滅を進める中国・習近平国家主席が人民解放軍への攻勢を強めている。取り締まりを主導する党中央規律検査委員会が、胡錦濤政権時の制服組トップ、郭伯雄・前中央軍事委員会副主席の身柄を拘束するなど、軍幹部を次々と粛清。会計検査を断行し、これまでタブー視されてきた軍部内のカネの流れまでも暴こうとしている。「赤い帝国」で繰り広げられる“聖域破壊”の衝撃を富坂聰氏がリポートする。

軍幹部の収賄額が桁違いであることは中国では常識だ。その実態を報じた「財経網」(4月1日)の記事のタイトルは、《谷俊山の収賄事件で収賄額は200億元(約3860億円) 軍の資産一つ売って1億元のリベート》という驚くべきものだった。

日本では習近平国家主席がライバルを追い落とす目的ばかりが注目される反腐敗キャンペーンだが、ターゲットの規模はすでに権力闘争だけでは説明できないほど広範だ。

中国社会科学院が3月18日に公表した「法治青書(15年版)」をもとに「人民網」が分析した記事によると、14年の中国では1日平均500人の官僚が双規(規律検査委員会による規律違反の取り調べ)を受けていた計算になるという。

現在までに省級・大臣級の“大トラ”幹部が80人以上、同じクラスの軍幹部が30人以上も規律違反を問われて処分されている。

反腐敗キャンペーンが打ち出された直後、「トラもハエもたたく」とのスローガンが唱えられたが、昨年7月からはこれに「キツネ(主に海外に逃亡した官僚と政商)」が加わり、いまは「デブネズミ(公金で飲み食いして太った官僚)」を官僚組織から追い出すことを目的にしている。

トラ、ハエ、キツネ、ネズミとターゲットを広げてくるなかでは、国家のダイエットと名付けられた無駄遣いへの攻撃から、親族を幽霊職員にしている問題に対して大々的にメスを入れ、大量に首を切ってみせた。

中国の国民は周永康、徐才厚、令計画の3氏といった共産党の大物の落馬の裏でこうした社会の変化を目の当たりにしている。この劇場型の手法が習政権の人気を支えている。

検査の対象は上官から下士官まであらゆる階級に及ぶ。経費をすべて洗い出し、不正なカネの流れがなかったかを調べる。この調査によって、軍部の腐敗の詳細が白日の下にさらされることになるだろう。検査結果が出るころには大量の処分者が出るはずで、人民解放軍に激震が走るのは間違いない。

まさに聖域破壊の連鎖だが、国民はより大きな刺激を求めてくる。その欲求に習氏がどこまで応えられるのか。今後の一つの焦点だろう。

■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】習の戦いは、中国の金融が空洞化し体制崩壊の危機状況にあることを露呈した(゚д゚)!

上の記事で、人民解放軍にまで反腐敗キャンペーンが及んでいるということは、人民解放軍の特殊性を理解していないと、十分理解できないかもしれません。普通の国の軍隊であれば、反腐敗キャンペーンとは言っても、幹部の一部を逮捕すればそれですむと思います。

しかし、人民解放軍は違います。人民解放軍は、軍隊ではありません。これは、正確には各地の共産党組織の配下の私兵です。そもそも、人民を守るための、軍隊ではありません。私兵というだけでもありません。

実は、軍備をしていながら、日本でいうところの商社のような存在なのです。軍備をしながも、様々な事業を展開しているという普通の国では考えられないような特異な組織なのです。そうして、こういう特異な組織の中には、核兵器で武装しているものもあるという、とんでもない組織です。ですから、普通の軍隊でなら考えられないような様々な利権が存在します。だから、人民解放軍の幹部にも大金持ちが存在します。

だから、習近平が反腐敗キャンペーンをするなら、ある意味、人民解放軍はいずれ必ず実施しなければならないものだったと思います。

人民解放軍の招待は武装する商社

しかし、こうしたキャンペーンを実行する中国の習近平国家主席が反腐敗対策を宣言する一方で、当の習主席のファミリーが海外のタックスヘイブン(租税回避地)に蓄財している一端が、昨年のはじめに国際調査報道協会(ICIJ)のジェームズ・ボール記者と英紙ガーディアンの報道で明らかになっています。

ICIJのボール記者らはタックスヘイブンとして有名なカリブ海の英領バージン諸島の2社から200ギガバイト以上のデータを入手、約2年にわたって分析し、裏付け取材を進めてきたといいます。

英領バージン諸島

第一報で名前が挙げられているのは習、温、李3氏のほか胡錦濤前国家主席、トウ小平、中国人民解放軍創設者の1人、葉剣英、同大将の粟裕、戴相竜・元中国人民銀行総裁、「八大元老」の1人に数えられた王震、彭真・元全国人民代表大会常務委員会委員長のファミリー計13人でした。

国際会計事務所プライスウォーターハウスクーパース、スイス銀行大手クレディ・スイス、UBSなど欧米の銀行や会計事務所がバージン諸島での会社設立を仲介していたといいます。

中国と香港の2万1千人以上が海外会社のオーナーや株主になっており、2000年以降、1兆~4兆ドル(約104兆~約417兆円)の隠し資産が中国から流出したとボール記者は指摘しています。

中国では高度経済成長とともに貧富の差も拡大。100人の富豪が3000億ドルの資産を独占する一方で、推定3億人が毎日2ドル未満の生活を強いられています。ボール記者らが入手したデータでも、16人の資産を合わせた金額は450億ドルにのぼっていたといいます。

たった2社のデータでこの数字です。しかも、タックスヘイブンはバージン諸島だけではありません。タックスヘイブンを使う目的は租税回避、不正蓄財、国内資産の海外移転などが考えられます。中国共産党、中国人民解放軍幹部ファミリーによる海外蓄財は一体どれぐらいの規模に及ぶのか、想像もつかないほどです。

日本国内のサイトなどから、習近平ファミリービジネスについて、以下にまとめます。

習近平の父である、習仲勲は新中国建国の元勲であり、これらの長老指導者グループとして知られるのが80年代から90年代にかけて権力を振るった「8大元老」です。習仲勲氏のほか、改革・開放路線を推進した鄧小平氏、副首相を務めた陳雲、全国人民代表大会(全人代)委員長だった彭真、国家主席の李先念、副首相だった薄一波らで、彼らの子弟のなかには習近平のように党や政府の最高幹部になったり、有力企業のトップなど中国各界で活躍している名士、有力者が多数います。

1997年10月、84歳を迎えた習仲勲の家族写真。前列左から、斉心、
習仲勲、習冬英。後列左から、習近平、習安安、習正寧、斉橋橋、習遠平。
習近平の弟の習遠平は一時、北京の不動産会社『羽白(ユイバイ)』の社長を務め、土地開発やマンション建設に熱心でした。この会社の名前の『羽』と『白』は習という字を分解して、企業名として付けたものです。

また、習遠平氏はその後、香港に拠点を移し、欧米諸国を中心に、さまざまなコネクションを使ってビジネスを展開すると同時に外資を誘致しています。彼は現在、北京に本部を置く国際環境団体の会長に就任していますが、それは多分に名誉職的な肩書きであり、兄から得た内部情報をもとに事業を展開しています。

また、習近平の姉の習橋橋も夫の家貴氏と共同で不動産会社などを幅広く経営し、首都の北京や経済特区の深センの土地開発を手掛けています。不動産バブルに沸く大都市の一等地を優先的に開発できるのは、父の習仲勲や、やはり最高幹部の習近平氏の強い影響力があるからです。

次女の安安夫妻はカナダに居住しカナダ国籍も取得していながら、中国の携帯電話事業に出資し巨利を得ているといます。

金融・経済情報専門通信社「ブルームバーグ」や香港メディアなどの情報を総合すると、習近平ファミリーの総資産は少なくとも日本円で565億円を下りません。

最も活発なビジネス活動を展開しているのが習近平ファミリーの斉橋橋と家貴夫妻です。夫妻は2人で11社の企業のオーナーであり、そのほか、少なくとも25社の重役として経営に携わっています。夫は、投資会社の会長を務め、この資産が18億3000万元(約311億円)。さらに、同社の関連会社の資産が5億3930万元(約91億円)に上ります。彼はこれらの企業を通して、江西省にあるレアアースを生産・販売している江西レアアースの株式の18%を所有しており、それだけで4億5000万元(約77億円)に上ります。

夫妻は北京で不動産会社の北京中民信房地産開発を経営しており、橋橋が会長に納まっています。同社のホームページによると、同社は2001年8月9日創設で、資本金5000万元(約8億500万円)。同社が開発した北京の一等地に建つマンションのうち、面積が189平方㍍で、3ベッドルームの物件は1500万元(約2億5500万円)で売りに出されています

さらに、夫妻の一人娘夫婦が北京の電機会社の株式1億2840万元(約22億円)を所有しているほか、夫妻とその娘夫婦は香港に、3150万ドルの豪邸のほか、6件の不動産物件計2410万ドルを所有していることが分かっています。このほか、他の名義で中国有数の不動産会社、大連万達商業地産の株式を3000万元分保有。これらの資産をすべて合わせると、中国人民元分では約29億9770万元(約510億円)、米ドル分は5560万ドル(約55億円)で、合計565億円に達っします。

また、習近平氏の2番目の姉である安安の夫の呉龍氏は「広州新郵通設備」の社長を務めており、中国最大の携帯電話事業を展開する中国電信集団(チャイナテレコム)と密接な関係を持ち最近、数億元の事業を受注したと伝えられています。

習近平の姉が巨額の資産を持っていることを伝える日本の新聞
習氏は党中堅幹部の教育機関である中央党校で、「配偶者や子女、親戚、友人、部下が権力を濫用して私利を図ることがないよう管理しなければならない」などと述べてと特権を利用してのビジネスに強く注意を促しているが、習近平ファミリーの実態は、彼の言動とはまったく相反しているといえます。

文書で読むと長ったらしくなるので、以下に習近平のファミリービジネスを図にまとめておきます。以下は、2012年現在のものです。


さてこれだけ、不正蓄財を匂わせる情況証拠があります。習近平を含む大幹部の娘や息子らは、幼馴染みの遊び相手だったこともあって結束が固いです。また、不動産開発や政府の機密情報などに通じており、太子党仲間で情報交換をしては、自身のビジネスに生かしています。とくに、習近平ファミリーはその傾向が強いです。

中国の幹部連中は、習近平の不正蓄財のことは、誰もが知っている事実です。どのように蓄財したかも詳細を知っているはずです。

にもかかわらず、習近平が反腐敗キャンペーンを執拗に実施するのは、それだけ中国は今までにないほどの、危機に見舞われているということです。

どんな危機かといえば、かつてのように海外に中国から流出した巨額の金を含めて、海外から流入する資金が枯渇しているからです。この状況では、過去に中国が発展したモデルである、海外から流入した資金を元手に、インフラ整備をして発展するという方式が成り立たなくなるからです。

習近平は、中国から海外に大量に不正マネーが流出することを防ぎ、何とか過去の発展モデルを維持しようとしているのです。

習近平国家主席のこの振る舞いは、反腐敗キャンペーンにより失脚した者や、その親族などにとっては、結局習近平自らの蓄財を守るため。利権を巡る命がけの闘争に身を置いている、としか見えないことでしょう。

自らも、不正蓄財をしながら、他者を不正撲滅キャンペーンで失脚させるなど、失脚されだ側のファミリーからすれば、恨み骨髄です。不正撲滅をするなら、まずは身内からやれといいたいことでしょう。



中国では、建国以来毎年2万件もの暴動が発生していたとされています。それが、2010年からは10万件になったとされています。中国の一般人民の憤怒のマグマは頂点に達しているということです。

それでも、今までは幹部や、富裕層は少なくとも、巨万の富を蓄えさせてくれたということで、中国の現体制を支持してきたと思います。しかし、習近平の反腐敗キャンペーンにより、幹部や富裕層も現体制を支持しなくなることが考えられます。

そうなると、様々な不満分子が乱立し、現体制を変えるか、潰そうという動きが本格化する可能性が高いです。そうなれば、現体制は崩壊します。その日は意外と近いと思います。

習のこの戦いは、中国の金融が空洞化し現体制の崩壊も含む危機状況にあることを露呈したとみるべきです。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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