2015年8月16日日曜日

【中国・天津倉庫爆発】世界4位の貿易港が機能不全…中国経済にダメージ なお爆発音も―【私の論評】今回の天津大爆発事故の原因は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じく遅れた社会・政治体制に根ざすものだ!


天津市内の惨状

中国天津市で発生した大規模爆発で、市当局は15日、有害な化学物質が流出した恐れがあるとして、付近住民や消防や警察などの救援部隊に爆発現場の半径3キロ以内から緊急に退避するよう命じた。当局の発表などによると、同日までに確認された死者は104人にのぼる。近接する天津港は世界4位の貨物取扱量を誇るが、爆発の影響で機能不全の状態に陥るなど、景気減速が続く中国経済にもマイナスの影響を与えかねない情勢となってきた。

15日の中国国営新華社通信などによると、現場周辺では基準を大きく超える有害なシアン化合物などが検出された。避難所となっている現場付近の小学校からは同日、住民らがマスクを着用して避難を始めた。付近住民の間には二次災害への不安が広がっている。

当局は14日の段階で火災はほぼ鎮火したと発表したが、15日も複数回の爆発音が聞こえ、黒煙が立ち上った。防護服にマスクを着用した軍の化学防護部隊が入り、現場に残留する有害物質を処理している。

原因究明や事故責任の所在は不明確なままで、インターネット上では、爆発を起こした企業が中国共産党の元幹部や天津市当局と密接な関係にあったとの情報が流れた。当局が危険物の管理などを十分に監督しなかった恐れがある。また、新疆ウイグル自治区の独立派が爆破に関与したなどとする未確認情報まで飛び交っている。

この記事の続きはこちらから!

【私の論評】今回の天津大爆発事故の原因は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じく遅れた社会・政治体制に根ざすものだ!

この大事故、世界的にも類を見ないような大きなものであり、政府の発表では死者が104人としていますが、それどころではないと思います。これから、どんどん増えていくものと思います。中国政府の詳しい発表がないのです、詳しくはわかりませんが、大都市の港湾における事故としては、過去最大もしくは、近年稀に見る大爆発事故ではないかと思います。

この大事故は、後で振り返ってみると、歴史の転換点といえわれるかもしれません。チェルノブイリ原発事故は、ソ連崩壊のきっかけにもなりましたが、今回の天津の大爆発事故は、中国崩壊のきっかけになるかもしれません。

この機会に、ソ連崩壊を振り返ってみたいと思います。

1986年の4月、ゴルバチョフ政権がスタートした一年後にチェルノブイリ原発事故がおこりました。世界の原発史上初の大事故であり、ゴルバチョフ政権にとって大変な打撃であったわけです。この事故では、事故で直接的に失われた人命、経済的な損失だけではなく、ソ連の政治的権威が低下し、ソ連の技術、社会組織にたいする信頼感がいっきょにくずれていきました。

ソ連最後の書記長となったゴルバチョフ氏

かつて帝政ロシアが追い詰められ、農奴解放のような社会改革をやらざるをえなくなりましたが、その直接のきっかけはクリミア戦争に負けたことでした。敗戦の原因は軍隊制度が遅れていることでした。その遅れは、結局のところ農村制度(=農奴制)が遅れていることでもありましたた。農奴解放によって、遅れた農村制度を改革しない限り、近代的な軍隊制度もできなかったのです。

それと同じようなことが、チェルノブイリ原発事故についてもいえます。ゴルバチョフは、これを国家的な敗北だと認識しました。この原発事故は、クリミア戦争の敗北と同様に、ソ連の技術体制と技術的な遅れを温存していた遅れた社会体制、政治体制に根ざしてたものでした。

チェルノブイリの事故を最初に知ったのはスウェーデンの観測所でした、ゴルバチョフはずっと後になって知らされました。そして、一番最後に知らされたのはチェルノブイリの周辺の住民でした。そこでゴルバチョフは、大改革をやらなければならないとして、ペレストロイカを提唱したのですが、すでに手遅れだったのです。

今回の天津の大爆発事故は、チェルノブイリ原発事故と比較すれば、その規模は小さなものかもしれません。しかし、事故の背景としては、非常に似ているところがあります。

結局今回の天津の大爆発事故も、中国の遅れた社会体制、政治体制に根ざしてたものだと考えられます。

さて、ここでソ連崩壊の原因について簡単に振り返っておきます。

その原因は主に三つあったと考えられます。一つは経済的要因、二つ目は政治的要因、三つ目は民族的要因です。

一つ目の経済的要因に関しては、まずは過去の共産主義・社会主義体制の国々にありがちであった、極度に低い労働生産性があげられます。これは、あまり説明の必要はないと思われますので、ここで詳しくは説明しません。

その次に、計画経済の非効率というものがありました。これから成長する産業、これから育てるべき産業など、民間企業ですら予測がおうおうに外れるのに、設計主任(ソ連の計画経済を主導する官僚のこと)には到底無理でした。

かつての社会主義国では、優秀な官僚を設計主任にして、計画経済を実施すれば、経済は良くなるとの信念に基づき、計画経済が運用されていたのですが、ご存知のようにこの試みはことごとく失敗しました。

これについては、このブログでも、かつての携帯電話の雄であった、ノキアを例にとって述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】あまりにヒドい政府の“日本再生戦略”―【私の論評】今の政府や政治家は、自分の頭の上のハエを追えない人が、他人の世話を焼いているようなもの、自分がやるべきことに専念せよ!!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、ノキアは実は、アップルに先駆けてiPhoneやiPadのプロトタイプのようなものを試作していたのですが、市場に投入する時期を間違え、結局のアップルに遅れをとってしまいました。

民間企業ですら、このような間違いをするのですから、ソ連の設計主任がいくら頑張っても到底無理です。というよりも、これから発展する産業など誰にも予測がつかず、民間企業がしのぎを削って、競争し、その時々の環境に最も適合した企業が次世代の産業を創造するというのが、現実です。

結局は、ソ連も計画経済で大失敗しました。ソ連末期にソ連のことで、驚いたことがひとつありました。それは、当時のソ連のアイロンです。普通の先進国なら、アイロン一つとっても、競争が激しいため、様々なタイプのデザインや機能が盛り込まれ、いくつもの種類が販売されているのが普通でしたが、当時のソ連では何と一種類のアイロンが販売されているだけであって、しかもそのデザインは30年間変わっていなかったそうです。

ノキアは、IPhone

このアイロンの事例でもわかるように、低い労働生産性と、計画経済のもと、すべては国家が優先であり、国民生活の向上は後回しにされました。

二つ目の政治的要因に関しては、様々なことがあるので、ここでは唯一最大のものをあげておきましょう。

労働生産性の低さ、計画経済の度重なる失敗によって、ソ連の経済は低迷していたのですが、それでも当時のソ連は強大な軍事力を維持し、宇宙開発を推進しました。そのため、これらに相当の投資が必要でした。しかし、これらを実行したからといって、経済的には失うもが大きいだけで、何ら寄与するところありませんでした。

にもかかわらず、なぜそんなことをしたかといえば、当時のソ連の幹部による政治的判断であったことは言うまでもありません。今から思えば、計画経済など捨て、産業の育成をはかれば良かったと思いますが、当時のソ連の高級官僚には及びもつかず、政治的判断で、巨万の富が軍事力と、宇宙開発に注がれたのです。

当時の強大なソ連赤軍

最後の民族的要因としては、ソ連邦が世界に例をみない連邦国家であり、多民族国家でったということがあります。その多民族国家――すくなくともいくつかの大きな民族集団を単位に形成していた連邦国家――が、ソ連崩壊にともない連邦国家としての存在をやめ、さらに社会主義を捨てたという事実を忘れてはなりません。

ソ連時代には、連邦の組織の要職のほとんどを占めていたのは、ロシア系です。これが、あの広大な領土を占める、ソビエト連邦のあらゆる組織の多くを占めていたのですから、他民族から反感をかってしまいました。

ロシア人の女の子たち
ゴルバチョフが、主導したソ連末期のペレストロイカ(ロシア語で改革という意味)は、もともと経済の改革からはじまったのですが、打ち出した政策がつぎつぎと裏目にでて、地方ほどツケがまわってくることになってしまいました。

これに、何十年間の蓄積された中央へのつもるうらみと重なり、国民の不満は爆発しました。しかも、ペレストロイカ失敗による、国民生活の後退というのは国民にとってがまんすることができませんでした。

当時は、特に地方では、日に日に生活がわるくなっていきました。これはには、当時の庶民は、絶望感苛まされねことになりました。さらにソ連の国民の10人1人はかつての戦争で亡くなっていました。また5人に1人は多かれ、少なかれ、大粛清の経験をし、あるいは身内・縁者にそのために犠牲になった人がいたという状況でした。この歴史を考えてみると、選択肢はソ連からの、分離独立及び脱社会主義ということになって、民衆の支持を最終的に失ってしまったてのです。


さて長々とソ連の崩壊の原因について、述べてきましたが、結局何が言いたかったかというと、ソ連の末期と現在の中国は非常に良く似た常態になっているということです。

確かに中国はもう随分前から、実質上共産主義からは脱して、国家資本主義に移行しています。ソ連とは異なり、いっときはかなりの経済成長をみましたが、最近では不動産と株のバブルが崩壊して、経済はふるわず、生産性もさほど高くはなくなりました。これについては、最近では中国の製造業の生産性とアメリカの製造業の生産性が大体横並びになったことをこのブログに掲載したばかりです。

政治的には、中国はあいかわらず、政治的判断で、軍備を強化していますし、未だに民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていません。

民族問題も、チベット、ウイグル、内モンゴル自治区で噴出しています。これ以外の、他の省でも民族問題があります。

先にも述べたように、今回天津の大爆発は、チェルノブイリよりは規模が小さいかもしれませんが、最近では毎年暴動が年平均で10万件をこえるともいわれている現状では、旧ソ連のように崩壊しないほうがおかしいとさえいえます。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

 【関連記事】


中国、成長目標下げへ 15年7%前後 安定軌道狙う ―【私の論評】保八を捨てるのではなく、捨てざるをえなくなった中国に将来はないものと心得よ!体制の崩壊と、それに伴う天下の大乱は必定(゚д゚)!







【関連図書】

今回の天津大爆発事故の原因は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じく遅れた社会・政治体制に根ざすものです。この大爆発は、その結果として生じたものです。中国の遅れた社会と政治体制が何をもたらすのか、それを知ることができる書籍を以下にチョイスさせていただきました。

中国壊滅
中国壊滅
posted with amazlet at 15.08.03
渡邉哲也
徳間書店
売り上げランキング: 44

「アジアインフラ投資銀行」の凄惨な末路
宮崎 正弘
PHP研究所
売り上げランキング: 1,261

チャイナ・リスク (シリーズ 日本の安全保障 第5巻)

岩波書店 
売り上げランキング: 294,413

0 件のコメント:

<社説>ワシントン駐在問題 県民へ説明責任を果たせ―【私の論評】琉球新報ですら批判するワシントン駐在問題が日本の安保・外交に与える悪影響

 <社説>ワシントン駐在問題 県民へ説明責任を果たせ まとめ 「オキナワ・プリフェクチャー・DCオフィス」(DC社)の設立・運営に関して、県議会への報告が怠られ、株式会社設立の決定文書が残されていないことが問題視されている。 県議会はワシントン駐在費用を含む2023年度一般会計決...