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2018年5月5日土曜日

【石平のChina Watch】中国製造業のアキレス腱―【私の論評】集積回路、ネジ・ボルトを製造できない国の身の丈知らず(゚д゚)!

【石平のChina Watch】中国製造業のアキレス腱

深セン市にある「中興通訊」の本社 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 中国に「中興通訊」という大手の通信機器メーカーがある。深センに本社をおき、従業員は9万人以上、通信設備・通信端末の開発および生産を事業としている。中興通訊の主力製品の一つであるスマートフォンは、中国と世界市場で大きなシェアを占めている。世界160カ国、地域でスマートフォンなどの携帯電話端末を発売しており、日本でも大手の3社に携帯電話端末を供給している。

 世界市場における「Made in China」の大半が低付加価値の「安かろう悪かろう」である中で、中興通訊の電子機器が世界市場を席巻している現象は、まさに奇跡的であり、このような先端企業こそが中国製造業の希望の星であろう。

ZTE(中興通訊)の携帯電話端末


 しかし今、中国の誇るこの代表的な先端企業が突如、存亡の機に立たされている。米商務省が中興通訊に対して米国製品の禁輸措置に踏み切ったからである。

 米商務省は4月16日、米企業に対し、中興通訊への部品輸出などの取引を7年間禁じる措置を発表した。イランと北朝鮮への禁輸措置に対する中興通訊の違反が、ことの発端だが、このタイミングで中国企業への禁輸措置が発表された背景には当然、今展開中の米中貿易戦争があろう。

 それを受け、中興通訊の殷一民会長は同20日に緊急の記者会見を行い、「このままでは中興通訊は生産機能停止の状態となり、9万人の従業員の仕事が奪われる」と訴えた。その一方で同21日付の「経済観察報」は中興通訊傘下の一部企業で生産ラインの停止、従業員の「臨時休暇」は既に始まったと報じている。

 つまり、米国製品の禁輸が発表されると、中国の代表的な先端企業が直ちに「生産機能停止」の危機に立たされてしまうという話なのだが、ここでキーワードとなっているのは、高度な工業製品である集積回路のことである。

 普段は「チップ」と呼ばれる集積回路は多くの電子機器の心臓部分としての役割を果たしており、ラジオ、テレビ、通信機、コンピューターなど、あらゆる電子機器に用いられている。中興通訊が主力製品のスマートフォンなどの末端機器を作るのにも当然、ハイレベルの集積回路を大量に必要としているが、中国国内企業はそれが作れない。中興通訊が使用する集積回路のほとんどはアメリカのメーカーから調達している。

 従って米商務省が中興通訊への米国企業の製品輸出を禁ずると、中興通訊の主力製品も作れなくなるのである。

 それは中興通訊だけの問題ではなく、中国製造業全体の抱える問題である。中国は今、海外から大量の集積回路を輸入しており、2017年の集積回路輸入数は3770億枚に上っている。中国製のラジオ、テレビ、通信機、コンピューターなどのあらゆる電子機器の心臓部分の集積回路は海外からの輸入に頼っているのである。輸入が一旦途切れてしまうと、中国企業はスマートフォンの一つも作れない。それがすなわち、先端領域における中国製造業の「寒い」現状である。

 しかし中国国内企業は今まではどうして、自国産の集積回路の開発と製造に力を入れてこなかったのか。

 集積回路の開発には莫大(ばくだい)な資金と時間が必要とされるが、金もうけ主義一辺倒の中国企業からすれば、それなら海外から部品を調達した方が早いし、知的財産権がきちんと保護されていない中国の状況下では、自力で開発した製品も競合業者によって簡単にコピーされてしまう。

 だから中国国内企業の誰もが自力開発に力を入れたくないのだが、その結果、集積回路のような、製造業が必要とする最も肝心な部品は外国企業に頼らざるをえない。中国製造業の最大のアキレス腱(けん)は、まさにこういうところにあるのである。



【プロフィル】石平

 せき・へい 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

【私の論評】集積回路、ネジ・ボルトを製造できない中国の身の丈知らず(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にあるように、中国は集積回路を製造することが出来ません。その中国が、南シナ海で暴挙に出たり、米国に貿易戦争を挑もうとしている姿は、滑稽であるとしか言いようがありません。

中国が製造できないのは集積回路だけではありません、多少とも先端技術などを要するものは製造できません。たとえば、中国はネジやボルトに関しては日本からの輸入に頼っています。

中国メディアの捜狐は昨年11月10日、空母や戦闘機、高速鉄道に使われているボルトはどれも輸入品という「直視しなければならない現実」に関する記事を掲載しました。

中国の機械工業の進歩は目覚ましく、利益率・輸出額ともに増加しているといいますが、戦闘機などに使用されるねじ・ボルトなどの部品は「ほぼ100%輸入」に頼っているというのです。記事は、中国で生産されている部品はいずれも精度の低いものばかりで、高速鉄道などに求められる精度や耐久性の高い部品は、日本や他国に頼るしかないと指摘しました。

日本製のネジ

例えば、中国の戦闘機「Jー20」のボルトはどうしても最高級の水準が求められ、ねじはすべて高温・腐食にも耐えるチタン製でなければならないといいます。しかし、中国にはこうした高いレベルのねじの生産技術も生産ラインもないと嘆きました。軍事分野以外でも、高速鉄道、長征7号ロケットにも海外から輸入した高品質のボルトが大量に使われているといいます。

では、なぜ中国国内では生産できないのでしょうか。記事は、化学工業、冶金、鍛造の技術が遅れていることが原因だと分析。日本などのように「専門分業」ができておらず、製品システムや品質が不健全で、専門分野での研究が不足しており経験も足りないため、製造能力が低いのだとしました。

こうした現状に、中国のネット上では「作れないのではなく作りたくないだけ」、「ボルトなどの部品は買えば良い」などの意見があると紹介。しかし、これらの意見はいずれも現実を直視していないと切り捨てました。

以上のように、中国の基礎工業が弱いのは確かであり、中国製品が精緻さに欠けるのは事実です。量から質への転換は時間がかかりますが、いずれは日本の部品を使用せず、すべて中国産を使用する日を目指すべきだと伝えています。

日本からネジ・ボルトを輸入しないとジエット戦闘機も製造できず、高速鉄道も走らせることができないというのが現在の中国の実体なのです。このような中国が米国に貿易戦争を挑んだにしても、全く勝ち目はありません。

米国の対中貿易の輸入額は輸出額の約4倍です。その赤字額は2016年実績で3470億ドル(約38兆円)に上ります。ちなみに米国の対日貿易赤字額は同じく2016年実績で689億ドル(約7.6兆円)です。

米中貿易の中身を見ると中国の対米輸出品が労働集約型製品なのに対して、米国の対中輸出品は集積回路などの技術集約型製品です。

米国が対中輸入品に高関税を課して輸入が途絶えたとしても、米国内で生産するのは可能です。その場合、中国の労働力と米国の労働力の格差がそのまま製品価格にスライドして製品価格高騰に繋がると考えるのは早計です。

なぜなら米国内で労働集約型の生産を行う場合、かなりの部分で機械化され省力化された生産ラインで製造するからです。米国の製造業における製造に占める人件費の割合はかなり落ちています。これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
アメリカでの製造コストが中国と同レベルに減少、その理由とアメリカが持つ「強み」とは?―【私の論評】中国もう終わりました!中国幻想はきっぱり捨て去ろう(゚д゚)!

この記事は、2015年8月3日のものです。以下から一部を引用します。
世界的なコンサルティング企業であるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の調査によると、アメリカ国内で製品製造コストは減少を続けていることが明らかになっています。以下のグラフのように、アメリカを100とした場合の製造コストは中国が95とほぼ変わりなく、さらに主なEU各国と比較するとすでに10%から20%程度も低い状態であることがわかったとのこと。さらにBCGの予測では、2018年ごろにはアメリカの製造コストは中国よりも2%~3%も低くなるだろうとみられています。
これにはいくつかの要因が考えられており、中国国内での人件費の高騰やアメリカでの生産効率が向上していることなどが考えられていますが、BCGによると最も大きく関与しているのが新たに開発されたシェールガスによるエネルギーコストの減少とのこと。BCGの試算によると、アメリカ国内での産業用電力価格は他国に比べて30%から50%も低いとみられており、特に鉄やアルミニウム、製紙や石油化学製品など多くのエネルギーや石油を必要とする産業分野への影響が大きく現れているといいます。
 ただし、ご存知のように米国のシェールガス産業は衰退しています。しかし、それはなぜかといえば、原油価格がかなり低くなったからです。したがって、米国のシェールガス産業が衰退したにしても、2015年頃のこの構造は変わっていないわけです。

とはいいながら、米国製造業が生産コストを低下する努力を行ったにしても、中国の場合は、以前よりは賃金が上がったものの、社会構造そのものが、米国や日本などの先進国と比較すれば、ブラックなので、米国よりは安く製造できるのです。

とはいいながら、その差は中国の賃金上昇と米国製造業のコスト削減努力によりかなり縮まっているのです。

このような状況のなか、中国が米国輸入製品に関税制裁を発動して輸入が途絶えた場合、技術集約型製品を中国内で製造できません。いや上記でも述べたように、中国内で製造出来ないから米国から輸入していたという方が正しいです。当然、制裁する米国製品に代替する製品をやや割高になっても、日本や欧州から輸入するしかなくなります。

関税戦争によって打撃をこうむるのは中国側です。労働集約型製品製造には多くの労働者雇用によって成り立っています。その製品輸出が途絶えることは多くの失業者が出ることを中国政府は覚悟しなければならないです。

それに対して米国は中国からの輸入が途絶えても、国内生産できるものばかりですから、やや価格が上昇したところで国内労働雇用が改善されるプラス効果の方が遥かに大きいです。

とはいいながら、中国の対米制裁により中国内で展開している米国企業の現地生産部門が打撃を受けるとみるむきもあるかもしれませんが、中国内に展開する外国企業は必ず中国企業との合弁でなければならず、その場合外国人経営者は49%以上の株式を保有できない決まりになっています。

確かに中国で展開している企業から米国内の投資家たちに配当される利益が減少するでしょうが、外国投資企業といっても厳密には中国企業ですから、この場合でもより損失を被るのは中国の割合の方が大きいです。

中国皇帝を目指す習近平

従来なら中国政府は「米国債を報復として売却するゾ」と脅すことが可能だったかもしれません。それは中国が保有する米国債が世界一だった当時の話です。現在では中国は国内金融の悪化から既に米国債を売却して、中国政府は外貨不足に陥っています。対米輸出が激減して外貨(ドル)が入って来なくなるデメリットは中国経済を打ちのめすことになるでしょう。

現在、中国政府はバブル崩壊を押し止めるために死力を尽くしています。財政赤字を表面化させないために全国に百を超える巨大な鬼城(ゴーストタウン)を「棚卸資産」として放置し、赤字垂れ流しの新幹線をさらに延伸せざるを得ない状態です。

そこに外賀が払底して海外投資した事業の1000を超える現場で休止している状態が、ついに撤退する事態となれば対外債務の赤字が確定して中国の国家予算を食い潰すことになります。それらを支払う外貨は既に中国政府にありません。そうすればどうなるのか、結果は火を見るよりも明らかです。デフォルトするしかありません。

習近平氏は現代中国の皇帝に即位しました。しかし、それは盤石な政権を背景にしたものではなく、崩壊する経済・金融を一手に掌握して、一日でも先延ばしするためのものでしかありません。米中貿易戦争は始まる前から勝敗は決しています。

集積回路が作れない、戦闘機や高速鉄道のネジやボルトも作れない国が、背伸びに背伸びを重ねて、南シナ海や尖閣諸島、中印国境で挑発をしてみたり、米国に貿易戦争を挑もうとしたりする姿は滑稽としかいいようがありません。いつから、中国はこのような身の丈知らずの国になってしまったのでしょうか。

【私の論評】


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