職を失ったために、帰郷する列車を待つ出稼ぎ労働者ら=2008年12月29日、北京(Photo by Guang Niu/Getty Images) |
厳冬の中国経済(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)
文・程 暁農
【大紀元日本12月30日】最近中国経済は明らかに衰退現象が起こっている。その衰退の原因について述べたい。中国は著しい経済発展を見せてきたが、最近、急に衰退現象が起こってきた。失業の視点から、中国経済の状況を解析していきたい。
香港や台湾の商工会議所は去年から、今年の後半にかけて中国大陸での香港企業、台湾企業の活動について調査を行った。調査結果として、今年に入り、香港 系企業の2割、台湾系企業の2割、欧米系企業の2割が操業を停止し、中国から撤退する可能性があるという調査結果を発表した。この調査結果はほぼ欧米投資 家の分析と一致している。
こうなると、沿海地域では外国企業に就職した約五分の一の労働者は仕事を失うことになるが、中国政府はこの事態を重視していない。一部学者はこれをきっかけに、労働集約型の産業を淘駄し、ハイテク産業により多く投資してもらいたいと考えている。
大卒7割が就職困難
実際今年に入ると、外国企業の撤退と共に、中国の経済はいろいろな問題が現れてきた。現在、2割以上の外国企業が撤退し、残った企業でも操業停止か、一 時操業停止状態になる企業は少なくない。多くの企業は経営悪化のため、労働者の賃金を下げ、解雇した。出稼ぎ労働者は生活が苦しくなり、故郷に戻り始め た。旧正月の一時的な帰郷ではなく、故郷に完全に引き上げるのである。
実際に広州、上海などで、出稼ぎ者が故郷に引き上げる現象が起きている。安徽省阜陽市当局はこの現象を重視しており、駅に職員を派遣し、帰郷者の人数、各市町村が占める割合を統計しているという新聞報道があった。
大量な出稼ぎ者は例年と違い、地方で旧正月を楽しみ稼いだお金を地元に残し、再び出稼ぎに行くことではなく、今回は完全に地方に残ることになる。地方は大勢の労働者を吸収できないため、大きなプレッシャーを感じている。
また、今年卒の大学生の就職は厳しい状況に直面している。過去のデータから見ると、就職できない大学生は年々増えている。5、6年前は、大卒のおよそ 2、3割が仕事を見つけられないということだが、現在は7割が就職できないと言われ、今後はさらに厳しくなると予想されている。各地の大学生は皆専攻と関 係なく、就職の機会は難しくなっていることを懸念している。
それだけではなく、仕事を見つけたとしても、賃金はとても低く、せいぜい千数百元の月収だが、大学生にとっては給料よりも仕事があればひとまず安心だ。 しかし、千数百元の収入で広州、上海、北京で生活するのは困難で、通常の生活費や交通費をまかなうのが精一杯で、家賃さえ払えなくなる。普通の賃貸として は千五百~二千元が相場なのだ。そのため、よく5、6人で賃貸を借り、平均の個人スペースは数平方メードルしかない。つまり、北京、上海などの都市では新 卒の大学生は就職しても、給料は通常の生活を維持できない状況にあると言わざるを得ない。
仕事への不安を思っているのは大学卒業生だけではなく、ハイテク企業、外国企業に勤めているホワイトカラーの人々にも影響し始めた。最近、減給、残業手 当の削減を行った企業が増えてきた。上海における外国企業は住宅手当ての削減、大規模なリストラにより、上海の富裕層居住地である湖北小区で、住宅契約の 解約や転居が続々現れてきた。雇用の不安、給与の削減の動きはこれから、さらに拡大すると予想され、中国経済は厳しい冬に入った。
通常の考え方として、冬の次は春になる。暫く我慢して中国経済は春になるだろうと期待する人は多いかもしれないが、実際のところは相当厳しいものだ。中 国のマスコミ報道を見慣れた人々は現在の中国経済の問題は一時的なことで、問題があっても暫く我慢して再びよくなると期待しているが、中国共産党政権の宣 伝方式は良いことを過大に宣伝し、悪いことを隠ぺいしてきた。実際に、中国経済は抱える問題はマスコミの報道より、かなり深刻になっている。
今年の経済のいくつかのマクロデータを見ると、11月の電力使用量は大いに落ち込んだが、これは生産の減少で、電力使用量は大幅に減少したことを意味し ていると考えられる。また、鉄道運輸量は大幅に縮小となる。貨物別を見ると、石炭、鉱石、鉄鋼材料、綿花などの大口の依頼は大幅ダウンとなり、貨物車の稼 動率は下がる一方だ。
世界的な金融危機との直接関連は薄い
ご存知のように中国の株価指数は今年始め、6千ポイントがあったが、僅か数ヶ月で千数百ポイントまで落ち込んだ。その中のオリンピック期間中、中国政府はいろいろな手を使って、なんとか株価を上げようとしたが、効果はほとんど見られない。
それどころか、各都市の不動産価格は続々下落し、バブル崩壊が始まった。北京、上海などの地方政府の財政収入は不動産業に寄与する割合が多く、また、銀 行の融資は不動産で占める割合が相当多い、不動産バブルが崩壊すると、地方財政の悪化、銀行の不良債権の増加に直接につながることになるため、地方政府、 銀行、不動産業界は連携して、様々な対策を施したが、ほとんど効果なしだった。
なぜ、こうした結果になるのか。私の見方としてはこうした結果になるのは偶然ではなく、必然的と言える。ご存知のように中国の経済改革は膨大な貧富の差 をもたらした。アメリカのポストンにある会社は06年、全世界の富に関する報告を発表した。中国に関する報告によると、中国金融資産の70%を占めている のは、わずか約0・5%の官僚が有していることが分かった。当時、アメリカのメリルリンチ証券会社はほぼ同様な調査結果を示した。元北京大学教授・李強氏 は3年前、中国の人口構造についての論文を発表した。李教授の結論は中国の社会構造は逆さまの英語文字の「T」となっていると説明した。逆さま「T」の下 のバーは約人口の8割を示し、細く立つバーの頂上は人口の0.5%の官僚、次に国家公務員、利益集団はそれぞれ10%に近いという割合で示している。
この調査結果を見ると、この30年の改革は、政府公表した成長率ではほぼ世界一となっているが、僅かの利益集団だけが7割の富を所有している。国民の9割以上が残りの3割の富を分け合い、生活を維持するために必死になっているといえるだろう。
大半の人々は生活維持の消費
多くの外国企業は中国が13億人の大市場と思い込んでいるが、実際に13億人はすべて"成功した"の消費者ではないのだ。彼らは中流層と思われている が、商品を買う能力はないのだ。耐久商品から、衣類、果物、野菜、肉類にいたるまで決して贅沢などはできず、最も食べるという基本的な消費しかできないの だ。
中国の沿海地域では、およそ2億人の出稼ぎ労働者がいる。彼らは食事以外はほとんど消費しない。貯まった僅かのお金は故郷の家族や子供のために仕送りし ている。また、都市にも2億人くらいの低収入層がおり、彼らもほとんど食べる以外の消費能力はないのだ。さらに農村には5、6億人の老人や女性、子供がお り、農業を営んでいるが、収入は低い。
世界で最多の人口を有する中国で、このような変わった現象が起こっている。6、7億人は食べる以外の消費能力はほとんどない。5、6億人の労働者は僅か の収入で毎日十数時間、働いて大量の商品を生産している。しかし、彼らは生産した商品は、多くの労働者の収入からみれば、消費が限られている。生産された 大量の商品は欧米諸国や日本に輸出されている。
この30年間の経済改革は、毎年十数%の派手な成長を見せてきたが、本質的には一般の中国人たちはその成長の恩恵にあずかっていないのだ。中共政権と当 局の学者は長年の内需不足と言っているが、内需不足の本質的な原因を言及せず、国民の苦しみなどを全く意に介さなかった。
こうした極端の貧富の差と社会の富の分配の歪みが内需不足の根本的な原因だが、中共政権はあらゆる手段でこの0.5%集団の利益を保護し、全体の社会利 益の略奪に便宜を与えている。その結果、利益集団の富はさらに膨張する一方、大半の国民は貧しくなっていき、中国経済は永遠に内需不足になっていく。どん なに経済発展しても、国内の消費市場は限られている。企業が中国の国内市場に向けば、成長はできず、輸出がなければ、企業は倒産してしまう。これは中国経 済が今直面している最も深刻な問題なのだ。
(08/12/30 10:55)
中国は本当の共産主義を実践すべきだった?
それにしても、中国のGDPはかなり低いことがわかると思います。中国は現実には小さな国の連合体であり、連合体としての人口、GDPが大きいだけであって、小さな国、すなわち県単位でみれば、まだまだ、経済は小さなものです。
だからこそ、今回の金融危機のような状況になると、甚大な影響をこうむってしまうのです。今から30年前に、鄧小平氏が日本にやってきて、日本の経済発展の有様をみて、中国も経済発展させないければいけないと思ったようです。
しかし、当時の中国、そうして当の日本も気がついていなかった重大なことがあります。それは、当時の日本は、平等主義が行き届いていたことと、政府の規制が網の目のように張り巡らされていて、まるで共産主義といっても良いような状況だったことです。
まさしく、日本の銀行など護送船団方式などといわれ、競争はほとんどなく、すべて横並びで政府の強い規制下で事業を行っていました。この当時の金融機関は、競争がないため、ドラッカー氏からいわせると、世界の他の銀行から比較すると、赤子のようであったとも言われていました。最近、問題になっている派遣社員制度は存在せず、非常に硬直的な雇用環境となっていました。年功序列、終身雇用制は当たり前のようでした。
日本では、1990年代後半から、2001年にかけて行われた当時の橋本総理大臣によるいわゆる日本版ビッグ・バンともいわれた、様々な規制の緩和が実行されるまで、この状態が続き、後に崩壊直前の2年ほど前の当時のソ連の経済学者が、ソ連では達成できなかった理想の共産主義国家と評していました。
日本、80年代くらいまでは、こうした規制の多い、他国からみると共産主義と呼べるほどの国家体制で成長することができました。しかし、80年代以降は、これがかえって、日本の成長を鈍化させるようになってきたので、先のビッグ・バンで規制を緩和していき、共産主義国家から自由主義経済へと転換していきました。
しかし、中国では違います、鄧小平氏がかつて言った「富めるものから富め」として、経済発展一辺倒でやってきたことが、今日の過度な格差社会を形成してしまったと思います。
中国は、過去の歴史からみてもわかるように、いずれ形はどうであれ、いくつかの国に分裂します。一見いまの、中国共産党一党独裁に見えながら、実質上今の地方が一つの国のような存在になるとか、あるい完全に分裂してしまうかなど、いろいろ考えられますが、このブログの中でも過去に何回も主張してきたように分裂することは間違いないと思います。
いくつかに分裂した場合、やはり最初からやり直していく必要があると思います。まずは、日本型共産主義を導入して、国民全体の経済力など全体的に底上げをしていく必要があると思います。そうして、ある程度の底上げに成功した後に、それこそ日本のように、自由主義経済に移行していくような方式が望ましいと思います。
さて、来年中国はどうなってくのでしょうか?今のままでは済まないことは、確かです。
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