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2019年10月24日木曜日

トランプのシリア撤退は勝利のない中東紛争から米国人の命を救う―【私の論評】国防に真剣に取り組まなけば、日本は特ア三国・露の理不尽な要求に屈服し修羅場を見る(゚д゚)!

トランプのシリア撤退は勝利のない中東紛争から米国人の命を救う

トニー・シェーファー中佐

<引用元:サン・センチネル 2019.10.22>トニー・シェーファー中佐による寄稿

米国の軍隊の男性と女性たちに対するトランプ大統領の気遣いを、大統領を中傷する人たちが完全に理解することはない。というのも、政治エリートの栄光の展望が戦争の厳しい現実に取って代わられる時に責任を負うのは大統領だけだからだ。その上――保有領域に足止めされることで兵士が標的となり、機敏さを保ち主導権を維持することができなくなることを大統領は理解している。

トランプ大統領がトルコによる軍事攻撃前にシリア北部から米国兵士を移動する決断を発表した時、民主党とワシントンの外交エスタブリッシュメントは激しい怒りの声を上げた(オバマ政権下での何年も無為と懸念の後のことであり、その無為のせいで50万人の罪のない人々が殺害される結果となったことに注目して欲しい)。

その人たちは単に、トランプが、米国の国益が直接危機にさらされていない、世界の反対側の地政学的な紛争を細かく管理するために米国人の命を危機にさらそうとしない理由を理解できなかった。これまでのそうしたアプローチは、タカ派が数十年かけて入念に米国の事実上の外交政策の立場として設定したものあり、今では民主党の戦争賛成派の進歩主義勢力がそれを採用している。

トランプ大統領には別の考えがある。ミネアポリスでのトランプ集会で最近、「米国よ、勝利を勝ち取れ。兵士たちを家に帰せ」と語ったように。

我々の目の前では「トランプ・ドクトリン」が始まっている。以下の4点から成る方針だ。
  • 米国民に対する具体的な脅威、軍事力の使用を正当化するための利益を確認すること。
  • 既定の期間内に割り当てられた軍事目的達成のための軍に対する明確で簡潔な助言。
  • 軍事作戦で同盟国と地域パートナーの主導を認めて彼らを活用すること。
  • 勝つための自由と政治的な意志――軍が勝利を獲得できるようにするための指針を出す。
こうした単純だが明確な方針がレーガン時代以降、米国の戦略的思考に不在だった・・・だが今それは戻ってきた。

大統領は、米国を終わりがなく、勝利のない外国での戦争に陥らせないと約束した。米国はすでに、中東での政権交代をもたらそうとする不幸な取り組みで血を流しすぎており、多くの財産を浪費しすぎている。トランプ大統領が頻繁に指摘しているように、その地域での行動は何千名もの命と何兆ドルもの税金を掛けたにもかかわらず、米国を少しも安全にしていない。

ISISを抑え続ける試みは継続する――縮小することはないだろうが――が、この取り組みを継続するために、我々は彼らを打倒するための「地上軍」を隣の村に駐留させる必要はない。

また別の長期化する中東の紛争から軍隊を解放するチャンスを提示された時、大統領は賢明にも米国兵士を損害の道から移動させた。明らかに政治エスタブリッシュメントの好む別の手段を取れば、国のない反政府武装集団にその目論見を追及させるために、NATO同盟国に戦争を仕掛けると脅迫することになっていたいだろう。

ISISに対する我々の作戦でクルド人に共通の利益があったのは事実だが、ジハード主義者のカリフの国はもう戦いに敗れ、米国の国益は、現在トルコ、シリア、イラクが所有する領域で独立国家を樹立しようというクルド人の野望に収束しない。マルクス・レーニン主義者の政治的ルーツを持つPKKについていえば、トルコを不安定にしようというその取り組みを支援するのは米国の利益にならない。

最高司令官、トランプ大統領は、外交政策決定による人的損失が非常に実質的なものだと考えている。結局、戦死した米国人の家族に手紙を送り、息子や娘が最終的に国旗で覆われたひつぎに入って帰宅する時に、悲しみに沈む父母に慰めの言葉をかけなければならないのは大統領だ。文民政治家、専門家、ジャーナリストが戦争をあおる――彼らには死傷者報告書を中傷的なデータ点として見るだけの余裕がある――一方で、トランプ大統領は米国軍人の命に責任を持っているのであり、主戦論者はけっしてそれを理解しようとしない。

ありがたいことに、大統領はその責任を真剣に受け止めている。大統領は最近の記者会見で自身のシリア戦略を弁護し、亡くなった兵士の家族への手紙に署名することは「やるべき事の中で最も困難な事」だと記者団に述べた。

大統領は最近のミネアポリスでのキープ・アメリカ・グレート集会で再びそれを話題にし、軍人の家族が愛する故人のひつぎを受け取るのを見守るゾッとするような場面を詳細に説明した。

今年1月米国で身寄りのない孤独な退役軍人ジョセフ・ウォーカー氏の葬儀に数千人が参列した

「(飛行機の)扉が開き国旗で覆われたひつぎが見えた。扉が開いて、この美しい兵士たち、5,6人が両側にいて、ひつぎを持ち上げて滑走路を歩いてくる・・・すると両親は声を上げ・・・今まで聞いたことのないような叫び声と泣き声だ」と大統領は感情を隠すことなく回想した。

そのような瞬間は明らかに大統領の心に重くのしかかっており、米国の軍事力を思慮深く使用するという決断を満たしている。親に息子や娘がこの国のための尊い犠牲となったと知らせる時、トランプはその犠牲が単に価値あるものだというだけでなく必要だったと伝えることができることを望んでいる。

家族や友人が地図の上で見つけることもできないような場所で、あまりにも多くの米国人兵士が死んだ。彼らをそこに送った政治家たちは、その理由を決して的確に声に出していうことができないだろう。1カ月で終わるはずの作戦は10年続く戦争となった。それでもトランプが、その地域での命を懸けた窮地に兵士たちを関わらせるのを拒否した時、ワシントンの政治エスタブリッシュメントは無責任な行動だとして非難した。

戦うなら、勝つために戦う。

勝とうとするなら、米国人の命と利益を守るためであるべきだ。

曖昧な、あるいは存在しない軍事目的で終わりのない戦争をすることは利益にならない。

だがタカ派は、親がなぜ自分の子供に生きて再び会えなくなるのか説明する手紙を書く必要がない。そうした親が泣きすがる棺桶に付き添う必要はない。それはトランプ大統領の責務であり、大統領はそれを平然と果たす。大統領を批判する人たちは、意味のない死を終わらせ兵士たちを損害を受ける道から逃れさせようという大統領の取り組みを非難する前に、そのことを考えてみるべきだ。

トニー・シェーファー中佐は元情報将校であり、London Center for Policy Researchの所長である。

【私の論評】国防に真剣に取り組まなけば、日本は特ア三国・露の理不尽な要求に屈服し修羅場を見る(゚д゚)!

冒頭の「トランプ・ドクトリン」からすると、日本の防衛は米国にとってどうなのかという疑問がわいてきます。

トランプ大統領は、以前「日米安保は不公平。米国は日本を守るのに日本は米国を守らない。こんな条約は破棄してもいい」と語りました。この報道は日本国内で大きな波紋を呼びました。

「対米従属から脱出する好機」という勇まし意見から、米国に捨てられたと思って落胆する者まで、日本での反応はさまざまでした。



しかし、左翼から右翼まで入り乱れて収拾のつかないことになる前に、以下の事実を冷静に心得ておくべきです。

まず第一に。まだ安保条約破棄を検討するような事態には全く至っていません。日米安保は米国にとっても実は大変有意義なのです。日本の基地があるから、米軍の艦隊は西太平洋からペルシャ湾までの広い海域で活動できるのです。

横須賀基地を使えなければ、米国の空母は点検・修理のために遠路、米国西海岸の基地まで帰らなければならなくなります。しかも日本は年間約2000億円もの「思いやり予算」で米軍の駐留を助けています。米軍が日本以外に点検・修理の拠点をつくるということになれば、莫大な投資が必要になります。だからこそ、トランプ自身も、破棄は考えていないと付言しています。

日本にとっても、日米安保は非常に有意義です。いくつかの基地を提供し、思いやり予算を付けることで、世界最強の米軍を後ろ盾(抑止力)として保持できるのです。これにより、日本のタンカーを攻撃することは、即米国に攻撃を与えたものとみなされるので、そのようなことを敢えてすることなどあり得ないです。だから、石油の輸送路も安泰です。

もう1つ、日本は経済で米国市場への依存性が強いため、対米貿易黒字の約620億ドルがないと、日本は約360億ドルの貿易赤字になってしまいます(2017年)。安保面での日本の選択肢も限られることになります。つまり日本が「自分は中立だから」と言って、米国による中国等への制裁に加わらないと、自分自身が制裁を食らって米国市場を閉じられたり、ドル決済ができないようにされ、経済的存立の道を閉ざされてしまうことになりかねません。

トランプ氏の車列に中指立てて解雇された米女性、地方選立候補で再チャレンジ

では日本はどうすべきなのでしょうか。トランプの言動の多く、特に過激な言動は、大統領選挙で再選されることを目的としています。つまり日本を脅しつけて「何か」日本から獲得したことを、選挙民に示したいのです。それも、大統領選挙が本格化する前、年内くらいには欲しいところでしょう。

そうであれば、あまり正面から考え込まず「何か目立つ」成果を日本の役にも立つ形で作れば良いのです。安保面では「日本を守るために作戦中の米軍を自衛隊は守る」こと、つまり集団的自衛権を日本が行使することをアメリカにもっと明確に伝えるのです。

14年の閣議決定でこの点は可能になったのですが、さまざまな但し書きが付いているため、米国はどういうときに自衛隊に守ってもらえるのか理解できないでしょう。

次にホルムズ海峡がこれからずっと危険になることはないとは思いますが、自衛隊の護衛艦は既にアフリカのジブチを根拠地としてアデン湾で海賊対策をしているのですから、ホルムズ海峡にまでその活動範囲を広げれば良いです。中国やインドにも呼び掛けて、ホルムズ海峡を守る国際構想を日本が示せば、それは米国での日本のイメージを一変させることになります。

思いやり予算も増額が必要でしょう。2000億円は一見多額に見えるますが、米国防費6391億ドル(約71兆円、18年度)に比べるとインパクトは弱いです。ただ日本は思いやり予算増額の見返りを米国に要求するべきです。日本が米国から戦闘機などの兵器を購入する際、技術情報を米側がもっと開示し、日本が事故防止や部品生産ができるようにしてもらうべきです。そうして北朝鮮などの核ミサイルを抑止する手段をもっと整備してもらうべきです。

「日本を守る米軍を自衛隊は守らない」という不公平や、安保における対米依存は、米国に押し付けられたものではありません。日本が集団的自衛権の行使を自らに禁じていたため生じた結果であり、自縄自縛(じじょうじばく)なのです。

日本は現行の「日本国憲法」のもとで、「国防」は米国に委ねて、自衛隊は米軍を補助して「防衛」に当たることになっています。米国が日本の国防の主役であって、日本は傍役にしか過ぎないのです。

日本国民は非常の場合には、どんな場合でも協力な米国が守ってくれると思い込んでいるようですから、国防意識が低いです。

緊張が高まっているのは、日本がある東アジアだけではないです。ヨーロッパでは、いつロシア軍がバルト三国や、北欧を奇襲するか、緊迫した状況が続いています。中東も予断を許さないです。もし、イランがペルシャ湾の出入り口を封鎖すれば、米軍が出動するでしょう。

そうして当の米国は、はもはや同時に二正面で大規模な作戦を実行する能力を持っていません。もし、不測の事態が生じて、米軍の主力がアジア太平洋からヨーロッパか、中東に移動せざるをえなくなった場合、日本の周辺は手薄になります。それこそ、「トランプ・ドクトリン」に従って、日本の防衛は二の次ということになるかもしれません。

その機に乗じて、中国やロシア、北朝鮮が本格的に日本に侵略してくるか、そこまでもいかなくても、揺さぶりをかけてくるのは必定です。揺さぶりならあの韓国も当然かけくるでしょう。そのようなときに、日本はこれらの要求に屈服せざるを得なくなる立場になるでしょう。

今まで米国に守られて平和だった日本は、平和ボケでそのような経験はなく、日本は、恥辱に塗れることになるかも知れません。そのようなことは、日本人にとっては、久しくなかったことなので、多くの日本人が強い強い憤りを覚えることになるかもしれません。


そうなってしまってからでは、手遅れです。日本が平和を享受し続けるためには、国防に真剣に取り組まねばならないのです。

憲法を改正して、自衛隊を他の先進国と同じような軍として扱えるようにすること、世界中のほとんどの国では当たり前の、自国は自国の軍隊で守れるようにすることを急がなければならないです。

トランプ大統領の圧力を良い機会として日米安保を破棄するのではなく、もっと公明正大なものとし、それによって対米依存度を減らし、日本人としての自尊心も回復すべきです。

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2018年7月19日木曜日

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い―【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか
F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い

NATO首脳会議開始前の編隊飛行を見上げるNATO加盟国首脳

 トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求している。先週のNATO総会でも「NATO諸国が国防費の目標最低値として設定しているGDP比2%はアメリカの半分であり、アメリカ並みに4%に引き上げるべきである」と主張した。

 特にドイツへの姿勢は厳しい。ドイツはNATO加盟国の中でも経済力も技術力もともに高く、実際にアメリカの一般の人々も「メルセデスやBMWのような各種高級機械をアメリカに輸出している先進国」と認識している。そんなドイツの国防費がGDP比1%にすぎないことに対して、トランプ大統領は極めて強い不満を露骨に表明した。

 一方、日本に対する姿勢は異なる。日本はNATO加盟国ではないものの、ドイツ同様に経済力も技術力も高く、アメリカの一般の人々も「自動車や電子機器などをアメリカに輸出している先進国」と認識しており、やはりドイツ同様に第2次世界大戦敗戦国である。このようにドイツと日本は共通点が多いが、これまでのところ(トランプ政権が発足してから1年半経過した段階では)、日本に対しては、「日本の国防費はGDPのたった1%と異常に低い。少なくとも2%、そして日本周辺の軍事的脅威に目を向けるならば常識的にはアメリカ並みの4%程度に引き上げなければ、日米同盟の継続を見直さねばなるまい」といった脅しは避けてきている。

 なぜドイツに対しては強硬に国防費の倍増どころか4倍増を迫り、日本に対しては(これまでのところ)そのような強硬姿勢を示さないのであろうか?

 その原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題である。

F-35への関心が高いトランプ大統領

 トランプ大統領は2016年の大統領選挙期間中から、将来アメリカ各軍(空軍、海軍、海兵隊)の主力戦闘機となるF-35の調達価格が高すぎるとロッキード・マーチン社を非難していた。2017年に政権が発足した後は、さらに強い圧力をかけ始めたため、結局、F-35の価格は大幅に値引きされることとなった。

 F-35最大のユーザーとなるアメリカ軍は、合わせて2500機近く(空軍1763機、海兵隊420機、海軍260機)を調達する予定である。トランプ大統領がその調達価格を値下げさせたことにより、国防費を実質的に増額させたことになったわけである。

 このほかにも、トランプ大統領はこれまで数度行われた安倍首相との首脳会談後の記者会見などで、必ずといってよいほど「日本がF-35を購入する」ということを述べている。

 米朝首脳会談直前のワシントンDCでの日米首脳会談後の共同記者会見においても、「日本は(アメリカから)莫大な金額にのぼる、軍用ジェット(すなわちF-35のこと)やボーイングの旅客機、それに様々な農産物など、あらゆる種類のさらなる製品を購入する、と先ほど(首脳会談の席上で)安倍首相が述べた」とトランプ大統領は強調していた。

 要するに、F-35という戦闘機はトランプ大統領にとって大きな関心事の1つなのだ。

F-35の共同開発参加国が機体を調達

 F-35統合打撃戦闘機は、アメリカのロッキード・マーチン社が開発し、アメリカのノースロップ・グラマン社とイギリスのBAE社が主たる製造パートナーとしてロッキード・マーチン社とともに製造している。

 F-35のシステム開発実証段階では、アメリカ政府が幅広く国際パートナーの参画を呼びかけたため、イギリス、イタリア、オランダ、オーストラリア、カナダ、デンマーク、ノルウェイ、トルコが参加した。後に、イスラエルとシンガポールもシステム開発実証に参画したため、F-35は11カ国共同開発の体裁をとって、生み出されたことになる。

 パートナーとして開発に参加した国々は、それぞれ巨額の開発費を分担することになるため、当然のことながらF-35を調達することが大前提となる。要するに、共同開発として多数の同盟国を巻き込むことにより、アメリカ軍以外の販売先も確保する狙いがあったわけである。

 開発参加国は、分担金の額や、調達する予定のF-35の機数などによって、4段階に分類された。最高レベルの「レベル1」パートナーはイギリスであり、F-35Bを138機調達することになっている。

(F-35には3つのバリエーションがあるため、正式にはF-35統合打撃戦闘機と呼称されている。3つのバリエーションとは、主としてアメリカ空軍の要求に基づいて開発された地上航空基地発着用のF-35A、アメリカ海兵隊の要求に基づいて短距離垂直離発着能力を持ち強襲揚陸艦での運用が可能なF-35B、アメリカ海軍の要求に基づき設計された航空母艦での発着が前提となるF-35Cである。このほかにもカナダ軍用にはCF-35、イスラエル軍用にはF-35Iが製造される予定となっているが、基本的にはA型、B型、C型ということになる。)

「レベル2」パートナーはイタリアとオランダであり、それぞれ90機(F-35Aを60機、F35Bを30機)85機調達することになっていた。その後、オランダは調達数を37機へと大きく削減した。

「レベル3」パートナーは、オーストラリア(F-35Aを72機)、カナダ(F-35AベースのCF-35を65機、F-35の大量調達に疑義を呈していたトルドー政権が発足したため、選挙公約どおりにF-35の調達はキャンセルされ、現在再検討中である。)、デンマーク(F-35Aを27機)、ノルウェイ(F-35Aを52機)、トルコ(F-35Aを100機)である。遅れてシステム開発に参加したイスラエル(F-35AベースのF-35Iを50機)とシンガポール(調達内容検討中)は「SCPパートナー」と呼ばれている。

F-35を買わないドイツ、気前よく買う日本

 以上のように、現時点でパートナーである同盟諸国は合わせて600機前後のF-35ステルス戦闘機を購入する予定になっている。

 しかしながらNATOとEUのリーダー的存在であるドイツもフランスも、ともにF-35を購入する予定はない。ドイツ空軍ではF-35に関心を示したことがあったが、F-35推進派の空軍首脳は更迭されてしまった。

 このようにF-35ステルス戦闘機を購入する予定がないドイツに対して、トランプ政権は強烈に国防費増額を迫っている(65機が予定されているF-35の購入をキャンセルしたカナダのトルドー首相とも、トランプ大統領は対立を深めている。)

 一方、NATO加盟国ではないもののやはりアメリカの同盟国である日本は、ドイツ同様にF-35の開発には協力しなかった。しかし、ドイツのメルケル政権と異なり、安倍政権はF-35の購入に積極的であり、すでに42機のF-35Aの調達が決定し、すでに引き渡しも開始されている。F-35開発パートナー諸国以外でF-35の購入、すなわち純然たる輸入を決定した国は日本と韓国(F-35Aを40機調達予定)だけである。

 そして、日本は調達する42機のうち最初の4機を除く38機は日本国内で組み立てる方式を採用した(ただ組み立てるだけであるが)。その組み立て工場(三菱重工業小牧南工場)は、今後世界各国で運用が開始されるF-35戦闘機の国際整備拠点となることが、アメリカ国防総省によって決定されている。

 上記のように「安倍総理が日米首脳会談の席上でF-35の追加購入を口にした」とトランプ大統領が述べているということは、すでに調達が開始されている42機のF-35Aに加えて、かなりの数に上るF-35を調達する約束をしたものとトランプ大統領は理解しているに違いない。首脳会談で一国の首相が述べた事柄は、一般的に公約とみなされる。さらに米軍内では、日本国内で流布している海兵隊使用のF-35Bを調達する可能性も噂として広まっており、アメリカ側では期待している。

 日本はドイツと違って、トランプ大統領が関心を持っているアメリカにとっての主力輸出商品の1つであるF-35を気前よく購入している。したがって、安倍政権がトランプ大統領に対してF-35を積極的に調達する姿勢をアピールしている限りは、トランプ政権も「日本に対して国防費を4倍増しなければ日本防衛から手を退く」といった脅しはかけてこないだろうとも考えられるのだ。

【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのかその原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題であり、日本は気前よく購入するがドイツは購入しないからだとしています。

では他には、どのような原因があるのでしょうか。本日はそれについて掲載したいと思います。

まず第一にあげられるのが、ドイツと中国との蜜月関係でしょう。メルケル・ドイツは中国との蜜月関係を持ち、それがお互いに大きな利益をもたらしてきました。10年余りの就任期間でメルケル首相が中国を訪問したのは実に9回です。

ドイツと中国との距離を考えると異常な回数です。ちなみにメルケル首相の日本訪問はわずかに3回です。しかもそのうち2回は洞爺湖サミットと伊勢志摩サミットのサミット参加で、残りの1回はエルマウ・サミットに向けた事前調整のためというから、サミット絡みだけといって良いです。メルケル首相の親中のスタンスは明らかです。

ドイツと中国の貿易は拡大し、ドイツ経済の成長の柱となりました。中国は生産拠点としても、大市場としても魅力のある国でした。経済の発展が素晴らしい時には様々な不平等的な問題も隠されてきました。

ドイツと中国は密接なパートナーとして活動し、中国はEU、つまりヨーロッパへの参入権を得た形になりました。しかし、中国経済の成長が鈍ると、問題が噴出してきました。

中国との貿易が停滞しながらも、ドイツ企業は撤退しようにも撤退できにくい状況に置かれています。しかし、中国の企業はドイツの優良企業を買収していきました。中国家電大手の美的集団は、ドイツの産業用ロボット大手クーカを買収しました。

中国との貿易は好調な時には問題が隠されますが、不調になると問題が噴出してきました。中国との貿易拡大で成長してきたメルケル・ドイツは方向転換を迫られています。


そうして、メルケル首相が出した結論は、結局中国寄りのものでした。ドイツのメルケル首相と同国を訪問した中国の李克強首相が9日、会談を開き、200億ユーロ(235億1000万ドル)規模の取引で合意しました。両首脳は米国との貿易戦争が本格化する中、多国間の貿易秩序に関与していく姿勢を強調しました。

これは、11日のブリュッセルでのNATO首脳会談の直前のことです。米国が、対中国貿易戦争をはじめたばかりのこの時期に、ドイツがこのようなことをしたわけですから、トランプ大統領としては、ドイツに対して恨み節の一つも言いたくなるのは、当然といえば当然です。

今回中国側との契約に合意したドイツ企業は、総合エンジニアリングのシーメンス(SIEGn.DE)、自動車のフォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)、化学のBASF(BASFn.DE)などです。

メルケル氏は李克強氏との共同会見で、両国が世界貿易機関(WTO)の規則に基づくシステム維持を求めているとし、「すべての国がそのルールに従えば、さまざまな国がウィン・ウィンの状況となるのが多国間の相互に依存するシステムだ」と述べました。 

李氏は、保護主義に立ち向かう必要性を強調し、自国が一段と発展するために安定的で平和的な枠組みが必要で、自由貿易でのみ実現可能と説明。「一国主義に反対する」と述べました。 

ドイツのショルツ財務相は、中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁と、ドイツの銀行に中国金融部門への市場アクセスを速やかに認めることで一致しました。経済紙ハンデルスブラットが、関係筋の話として伝えました。
 
同紙によると、中国政府は、同国内でドイツ企業・団体が近く人民元建て債券を発行できるようになるとも表明したといいます。
 
欧州連合(EU)と中国は今月16、17日に北京で首脳会議を開催しました。メルケル氏は首脳会議について、投資の保護のほか、世界的な貿易紛争の拡大防止につながるよう求めると述べました。

メルケル氏は、中国について「実にタフで非常に野心を持った競争相手」と指摘しました。
李氏は、中国が海外からの投資にさらなる門戸を開くと表明。保険や債券市場を海外投資家に開放する用意があるとし、ドイツ企業が中国で事業を行うに当たり自社技術を失うと懸念する必要がないよう、知的財産権の保護を保証するとしました。 メルケル氏は、中国金融市場の開放を歓迎しましたが、一段の取り組みも求めました。

しかし、現状はG7は中国の横暴に対して、結束すべき状況にあります。それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の横暴に甘い対応しかとらなかった日米欧 G7は保護主義中国に対して結束せよ―【私の論評】最大の顧客を怒らせてしまった中国は、その報いを受けることに!虚勢を張れるのもいまのうちだけ?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事から一部を引用します。
 今月8日から2日間、カナダで先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開かれる。鉄鋼・アルミなどの輸入制限を発動した米国に対して欧州が強く反発し、トランプ米大統領が孤立する情勢だが、仲間割れする場合ではない。 
 正論は麻生太郎財務相の発言だ。麻生氏は先に開かれたG7財務相会議後の会見で、中国を名指しに「ルールを無視していろいろやっている」と批判、G7は協調して中国に対し国際ルールを守るよう促す必要があると指摘した上で、世界貿易機関(WTO)に違反するような米輸入制限はG7の団結を損ない、ルールを軽視する中国に有利に働くと説明した。
G7財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後、記者会見する
麻生財務相(左)と日銀黒田総裁=2日

 WTOについて自由貿易ルールの総本山と期待するのはかなり無理がある。麻生氏に限らず、経済産業省も外務省もWTO重視で、世耕弘成経済産業相も、米鉄鋼輸入制限をめぐるWTOへの提訴について「あらゆる可能性に備えて事務的作業を進めている」と述べているが、WTOに訴えると自由貿易体制が守られるとは甘すぎる。 
 グラフは、WTOの貿易紛争処理パネルに提訴された国・地域別件数である。圧倒的に多いのは米国で、中国は米国の3分の1以下に過ぎない。提訴がルール違反容疑の目安とすれば、米国が「保護貿易国」であり、中国は「自由貿易国」だという、とんでもないレッテルが貼られかねない。事実、習近平国家主席はスイスの国際経済フォーラム(ダボス会議)や20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際会議で臆面もなく自由貿易の旗手のごとく振る舞っている。


 実際には中国は「自由貿易ルール違反のデパート」である。知的財産権侵害は商品や商標の海賊版、不法コピーからハイテクの盗用まで数えればきりがない。おまけに、中国に進出する外国企業には技術移転を強要し、ハイテク製品の機密をこじ開ける。共産党が支配する政府組織、金融機関総ぐるみでWTOで禁じている補助金を国有企業などに配分し、半導体、情報技術(IT)などを開発する。 
 習政権が2049年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目標に掲げている「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」は半導体などへの巨額の補助金プログラムだらけだ。 
 一連の中国の横暴に対し、日米欧はとにかく甘い対応しかとらなかった。理由は、中国市場でのシェア欲しさによる。「中国製造2025」にしても、中国による半導体の国産化プロジェクトは巨大な半導体製造設備需要が生じると期待し、商機をつかもうと対中協力する西側企業が多い。 
 ハイテク覇権をめざす習政権の野望を強く警戒するトランプ政権の強硬策は中国の脅威にさらされる日本にとっても大いに意味がある。G7サミットでは、日米が足並みをそろえて、欧州を説得し対中国で結束を図るべきだ。米国と対立して、保護主義中国に漁夫の利を提供するのはばかげている。(産経新聞特別記者・田村秀男)
中国の現在の体制では、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家が十分なされておらず、これらがある程度整備されている日米やドイツをはじめとする先進国との間で、貿易をすると仮に中国にはそのつもりがなかったにしても、構造的に自由貿易にはなりません。

中国は、必ず「自由貿易ルール違反のデパート」にならざるをえないです。であれは、中国も、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進すればよいのですが、それを推進すれば、中国の一党独裁もとより、最近の習近平の独裁政権は成り立たなくなってしまいます。

それは、ドイツとても同じです。いくら、李克強が口約束をしても、中国はドイツに対しても「自由貿易ルール違反のデパート」にならざるを得ません。中国との関係を維持すれば、ドイツも国益を失います。

こうした中国に対して、米国としては、対中国戦略として、貿易戦争を発動したのです。そうして、この貿易戦争は、中国が現体制をある程度変更してまで、度民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進するか、現体制のままかなり弱体化するかのいずれかが達成できるまで継続されることでしょう。

7月6日、米中貿易戦争が開戦しました。中国内外の多くのメディアが「開戦」の文字を使いました。つまり、これはもはや貿易摩擦とか不均衡是正といったレベルのものではなく、どちらかが勝って、どちらかが負けるまでの決着をつける「戦争」という認識です。

この戦いは、たとえば中国が貿易黒字をこれだけ減らせば終わり、だとか、米大統領選中間選挙までといった期限付きのものではなく、中国が貿易戦争に屈しなければ、米国は次の段階に進み、厳しい金融制裁を課すことになり、どちらかが音を上げるまで長引くでしょう。

この貿易戦争がどういう決着にいたるかによっては、独裁者習近平が率いる中国の特色ある現代社会主義強国なる戦後世界秩序とは全く異なる世界が世界の半分を支配する世の中になるかもしれないですし、世界最大の社会主義国家の終焉の引き金になるかもしれないです。

まさに、米国を頂点とする、日本やEUも含めた戦後の秩序を維持できるか、それとも半分を中国に乗っ取られるかを決める争いであり、軍事力は伴わないものの、世界大戦に匹敵する大戦なのです。だからこそ、トランプ大統領は米国の国防予算を拡大したのです。


オバマ政権で削られた国防予算をトランプ大統領は拡大した

それをドイツが理解しておらず、NATOの首脳もあまり理解していないようです。だかこそ、トランプ大統領は、NATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求しているのです。

彼らに対して、現状は彼らが考えているような甘い状況ではなく、世界の半分が中国という闇に覆われるかどうかの天下分け目の大戦に突入したことを理解されるために、あのような発言をしたのです。

その中でもドイツに対して、F-35への関心が高いトランプ大統領がさらに苛立つ実態があります。

何と、ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したのですが、その有効性は疑問視されるばかりです。

ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。

こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。

ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」

一方、ショルツ財務相は、昨年の総選挙で第2党となった中道左派のドイツ社会民主党(SPD)の臨時党首を務めるなど、選挙後の大連立において存在感を示してきたましたが、そもそもSPDは総選挙で戦後最低の得票率となり、野党に転じる予定でした。財務相という重要ポストをSPDが得たのも、大連立をなんとしてもまとめたいメルケル氏率いるCDU・CSUの譲歩と見られています。

自国どころかユーロ圏全域に緊縮財政を突きつけてきたメルケル首相と、じり貧の中道左派の財務相による予算編成に国防予算「2%」はハードルが高すぎたのかもしれません。19年度予算を本格的に議論するのは7月で、国防省はそれまでに防衛費の“改善”を求めていくとしています。

一方日本は、いくら自衛隊の予算が低いといわれつつも、これほど酷い状態にはありません。もともと、日本の経済の規模はドイツより大きいですから、GDP1%であっても、ドイツよりはまともな国防予算なのでしょう。

それに、若干ながら、最近は防衛費を上げています。自衛隊の航空機の稼働率は、米軍よりも高い状態にあります。日本としては、低予算ながら、何とか工夫して、最新鋭の潜水艦を配備したり、準空母ともいえる護衛艦を配備したりしています。

日本の防衛関係費の推移

さらに、日本の安倍政権は、中国に対抗するため「インド太平洋戦略」と称して東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などと経済、安全保障、外交の3つの分野で関係を強化しています。そもそも、安倍総理は安倍政権成立直前にはやくも、「安全保障のダイヤモンド」という対中国封じ込め戦略を発表しています。これは、米国のドラゴンスレイヤー達も高く評価しています。

いくら中国から地理的に離れているとはいえ、ドイツも含まれる戦後秩序を崩し世界の半分を支配しようとする中国に経済的に接近するとともに、緊縮財政で戦闘機の運用もままならないという、独立国家の根幹の安全保障を蔑ろにするドイツは、まさにぶったるみ状態にあります。ドイツの長い歴史の中でも、これほど国防が蔑ろにされた時期はなかったでしょう。

このような状況のドイツにトランプ大統領は活をいれているのです。ドイツにはこのぶったるみ状態からはやく目覚めてほしいものです。そうでないと、中国に良いように利用されるだけです。

そうして、ドイツを含めたEUも、保護主義中国に対して結束すべき時であることを強く認識すべきです。

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2016年7月9日土曜日

【7・10参院選 私はこれで投票する】国防に無知な政党・個人には投票しない KAZUYA氏―【私の論評】明日の選挙では、中国の顕な野望を無視する政党、個人には投票するな(゚д゚)!

【7・10参院選 私はこれで投票する】国防に無知な政党・個人には投票しない KAZUYA氏

京本和也氏
これまでは20歳以上だった選挙権が、今回の参院選から18歳以上に引き下げられる。新たに有権者になる約240万人の票の行方が注目されているところだ。

最近の若者は新聞を読まないと揶揄(やゆ)される。確かに、その通りなのだろう。だが、裏を返せば、必死に「雰囲気」で世論を誘導しようとする新聞の影響をあまり受けないと見ることもできる。読まないことがプラスに働くこともあるのではないかと思う。

日本は危機の時代を迎えている。その原因の1つとして挙げられるのが、中国の膨張である。

中国海軍の軍艦が、鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)沖の領海を侵犯したとの話題も記憶に新しい。今年4~6月に日本領空に接近した中国軍機に対する航空自衛隊戦闘機の緊急発進(スクランブル)の回数が、昨年の同時期に比べて80回以上増え、過去最多の約200回となった。

ネットでは中国の行き過ぎた行動が盛んにシェアされている。新聞を読まなくても、こうした情報は入ってくる。

虎視眈々と沖縄県・尖閣諸島を狙い、領海・領空への揺さぶりをかけて着実に侵略の歩みを進める中国。しっかりと、わが国の領土・領海・領空を守りぬく気概が求められているのだ。

しかし、今回の参院選において、民進党や共産党、社民党、生活の党などは徒党を組んで、まったく真逆の方向のことを訴えている。4党といっても、実際の主力は民進党と共産党だろう。岡田克也代表と志位和夫委員長をもじって、ネットでは「岡志位(おかしい)コンビ」などと揶揄(やゆ)されることもある。

岡志位コンビ
共産党は「自衛隊を段階的に解消していく」などと公言し、国防に対する無知からか「防衛費=人を殺すための予算」などと共産党特有の本音が飛び出している。この危機の時代にあって、いや危機の時代でなくても時代にそぐわないのは間違いない。

「戦争になる」などと扇動家が煽り、安全保障法制にしても反対の論調を多くとる一部メディアにだまされることなく、私たちは現実的な視点で判断しなければいけない。

国防は国家の根幹だ。まず外敵から身を守ることができなければ、私たちの安心な生活も何もない。家もまず雨風をしのぎ、防犯をしっかりやってこそ、インテリアをどうするという話になるのは当然だ。

しかし、野党連合の国防観は、雨風・防犯を無視してインテリアをどうするか議論するようなものではないのか。吹きっさらしで泥棒が自分の資産を狙って侵入するような状態では、インテリアも何もない。

国防に対し、まったくの無知をさらす政党、個人には投票しない。これが基本だろう。国防観・国家観がある上で、どういった政策をするかに注目する。自分はこういう基準で投票したい。 =おわり

KAZUYA(かずや)

【私の論評】明日の選挙では、中国の顕な野望を無視する政党、個人には投票するな(゚д゚)!

京本和也氏といえば、youTuber として有名な若者です。私も、時折その動画を視聴させていただいています。このブログにも動画を何度か掲載させていただいたこてともあります。彼の動画は視聴者が35万人ともいわれているので、その意味では、上の記事は、多くの若者に受け入れられるものと思います。登録者が35万人なのですから、時々見るひともあわせると莫大な数になると思います。

私自身は、一度倉山満氏と京本和也氏の二人の講演会に行ったことがあります。京本氏は、保守的な内容とともに、自らの動画の運営の仕方などについて熱心に語っていました、自ら開拓してきたノウハウをいろいろと開陳していました。その中で自分は、いろいろな保守的な内容のうち入門的なものを専門に扱っているしていました。

しかしこれをそのまま真似たとしても、京本氏のように35万人もの視聴者が登録するようなチャンネルなどなかなかできないと思います。

そもそも、京本氏の選んだ保守的なテーマが多くの人に注目を浴びたことと、その内容がかなり平易で噛み砕いたもので、誰にでも理解できるものであったこと、そうしてタイミングもあったことでしょう。まさに、彼の動画は、多くの人の疑問に応えるものであったし、それに視覚・聴覚に訴える動画でありながら、既存のテレビとは全く違う媒体ということが、何よりも革新的でした。彼は、既存のテレビ・新聞・雑誌などのメデイアとは異なる媒体であるインターネットの動画がこれだけ多くの人にアピールをするということを実証した、一人ということもできます。

若者こそ、これからの日本を担っていくわけですから、若者である和也氏がこのような記事を書いているのですから、和也氏以外の日本の若者の多くも日本の将来についてしっかり考えているのだと思います。SEALDsやそれに同調する若者など、ごく一部なのでしょうが、マスコミが喧伝するので、いかにも影響力があるようにみえるだけで、とても京本和也氏ほどの影響力はないでしょう。

私は、SEALDsは若いころ、新左翼運動をしたか、しないまでもそのシンパであった老人たちのアイドルにすぎないと思っています。明日選挙に初めて行く若者の中にも、京本氏の動画を日常的に視聴している若者も結構いるものと思います。

以下に、京本和也氏の明日の選挙がらみの本日の動画を掲載します。


上の記事で、京本和也氏は、「国防に対し、まったくの無知をさらす政党、個人には投票しない。これが基本だろう。国防観・国家観がある上で、どういった政策をするかに注目する。自分はこういう基準で投票したい」と結んでいますが、まさにその通りです。

この記事は、夕刊フジのサイトであるZAKZAKに掲載されているものですが、本日は、以下のような記事もありました。
【緊迫・南シナ海】中国が南シナ海でミサイル・魚雷の実弾演習 仲裁裁定前に実効支配を誇示 100隻の軍艦と数十機の航空機が参加
南シナ海の西沙諸島付近の海域で実弾演習する中国海軍=8日
 中国海軍は8日、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近の海域で、約100隻の軍艦と数十機の航空機、ミサイル部隊が参加して実弾演習を行った。新華社電などが9日、伝えた。ミサイルや魚雷数十発を発射したという。
南シナ海の西沙諸島付近の海域で実弾演習する中国海軍=8日
 中国による南シナ海の大半の管轄権主張を巡り、フィリピンが申し立てた国連海洋法条約に基づく仲裁手続きの判断が12日に示されるのを前に、軍事力を誇示して実効支配をアピールする狙いとみられる。 
南シナ海の西沙諸島付近の海域で演習する中国海軍兵士=8日
 演習は、赤と青のチームに艦船などが分かれて対抗する形で行われ、制空権確保や海上作戦、対潜水艦作戦に重点が置かれたという。中国海事局は軍事演習のため南シナ海の一部海域で5~11日、船舶の進入を禁止している。
それに本日は、午前中には、北朝鮮がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験を行ったことも伝えています。最近では、北朝鮮がしょっちゅうミサイルを発射するので、多くの人は麻痺してしまったようでもありますが、これも脅威であることには変わりありません。

北朝鮮の国営朝鮮中央通信が配信した、SLBMの発射実験の写真(2016年4月24日配信)

 中国がここまでして、南シナ海の実効支配に拘りつづけ、さらに強めるのはなぜでしょうか。それには、いろいろな見方ができますが、私は中国の核戦略のためであるという記事をこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!
中国によるスプラトリー諸島にあるファイアリー・
クロス礁の完成した飛行場(昨年9月20日撮影)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、趣旨のみ元記事を再構成して以下に掲載します。

ICBM(大陸間弾道弾)と、SLBM(潜水艦発射弾道弾)を比較すると、ICBMは地上あるいは、サイロに格納されているものですので、最近では衛星写真などから、その位置を比較的容易に敵に察知されやすく、いざ核戦争になった場合、先に敵に破壊される可能性が高いです。

しかし、SLBMの場合は、深海に深く潜行すると、敵からは容易には発見されません。そのため、最近ではSLBMが各戦略において重要な役目を担うようになってきています。

そうして、中国も当然のことながら、SLBMに力を入れています。ところが、中国大陸の近くの海域は比較的水深が浅いので、中国の潜水艦は日本や米国などの対潜哨戒機にたやすく捕捉されてしまいます。

これでは、SLBMを有効に使うことはできないわけです。しかし、南シナ海の海域では、水深が深いので、ここに戦略型原潜を深く潜行させることができれば、ここから比較的アメリカの近くまで深く潜行したまま航行し、いざという場合核攻撃ができるわけです。

中国としては、南シナ海に複数の戦略型原潜を潜行させておき、交代でアメリカの射程距離内まで定期的に航行させることができれば、常時アメリカ全土を中国のSLBMの標的にすることができるわけです。

中国が、南シナ海にこだわるのは、こうした核戦略を成就させるという狙いがあるということです。

そうして、最初中国は、戦略型原潜を中国本土から南シナ海まで航行させ、そこからさらにアメリカへの射程距離内に航行させ、そこにしばらく滞在して、次の戦略型潜水艦と交代して、南シナ海に戻り、さらに中国に帰還するという方式をとるのだろうと思います。

しかし、わざわざ南シナ海を毎回経由するというのでは、いろいろと不都合も生じると思います。原潜を修理したり、補給するのに、わざわざ南シナ海を毎回通過するのはいかにも不経済です。それに、中国大陸の基地に戻るということは、中国の戦略型原潜の行動をその都度日本や、米国に知られてしまうことになります。さらに、大陸付近の東シナ海などは比較敵水深が浅いので、簡単に敵に捕捉され、撃沈されることになります。

であれば、中国はいずれ、南シナ海の環礁埋立地に原潜基地を移すことが考えられます。ただし、中国本土であれば、中国が戦略型原潜の基地を置いても、どこの国もクレームをつけることはないですが、南シナ海だとそういうわけにはいきません。だからこそ、中国は

それに、さらに恐ろしいシナリオもあります。南シナ海に中国が原潜基地を設置した場合、残念ながら中国は通常兵力では、とても米国や日本などには勝つことができません。これにインドや、オーストラリア場合によっては、タヒチに駐屯するフランス海軍もくわわることになれば、全く勝ち目はなく、原潜基地を守ることはできません。

そうなると、中国が是が非でも、南シナ海の戦略型原潜の基地を守ろうとした場合、通常兵力ではかなわないので、戦術核を配備する可能性もあります。

そうなると、南シナ海の中国の実効支配はより強固になります。そうなってからでは、これを翻すことはかなり困難になります。

そうなる前に、日米や南シナ海の近隣諸国はこれを阻止する必要があります。

このような状況のなか、明日の選挙では、京本和也氏のように"国防に対し、まったくの無知をさらす政党、個人には投票しない。これが基本だろう。国防観・国家観がある上で、どういった政策をするかに注目する"というのが当然のことと思います。

実はわたしは、昨日期日前投票をしてきました。私は、当然国防に対して、まったく無知をさらす政党、個人には投票しませんでした。また、マクロ経済に関しても無知をさらす政党、個人には投票しませんでした。真逆の政党、個人に投票しました。

明日投票に行かれる方は、是非ともこの京本和也氏の基準も考慮に入れて投票していただきたいものです。

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