ラベル 急接近 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 急接近 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年10月23日火曜日

一帯一路で急接近、日本人が知るべき中国の思惑―【私の論評】日本は対中国ODA終了とともに、対中関与政策をやめ攻勢を強めていくことになる(゚д゚)!

一帯一路で急接近、日本人が知るべき中国の思惑

日中平和友好条約発効40周年の今年、中国の日本に対する柔軟姿勢が目立つ。今月25日には安倍首相が北京を公式訪問し、翌日、習近平・国家主席らと会談する予定だ。中国に向き合っていく上で、欠かすことのできない視点は何か。元海上自衛隊司令官で、安全保障問題が専門の香田洋二さんが解説する。

◆失速する巨大経済圏構想

中国海南省で開かれたボーアオ・アジアフォーラムで演説する習近平国家主席。
「一帯一路」などによる中国主導の新国際秩序作りの推進へ意欲を示した(今年4月)

 中国の巨大経済圏構想「一帯一路」における多数の途上国のインフラ整備計画のいくつかが挫折し、一部の参加国は中国に疑念を持ち始めるとともに、対中債務に起因する自国社会・経済の崩壊が現実のものとなってきた。一帯一路構想は、中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)とセットで中国の国家威信をかけて推進されてきたが、この5年の経緯を振り返れば、参加国、周辺国そして国際社会に不安と混乱をもたらした面が強い。

 ジャーナリストの福島香織氏が論評しているように、中国にとって本構想は、(1)先進諸国からの新植民地主義との非難、(2)途上国からの悪徳金融業者に例えられる遺恨、そして、(3)中国の銀行や企業の利益回収の見込みがない投資の継続と債務不履行の恐怖、という三重苦の提供元、本音は「厄介者」になりつつあると推察される。

カンボジア南西部の空港建設予定地に立てられた巨大
な看板。「一帯一路」の漢字表記もある(今年8月)

 中国指導層も「現下の好ましくない事案の連鎖反応」は承知していると考えられるが、昨年秋に一帯一路構想を党規約にまで盛り込んだ中国共産党と習近平国家主席(党総書記)が、自らの威信を犠牲にしてまで、現在の路線を変更する公算は皆無と言える。その上、現在の米国との厳しい経済と貿易の対立は解決策さえ見いだせないことも影響し、中国経済の将来に暗雲が漂い始めたことは明白である。オウンゴールとも言える一帯一路構想の失速と、米中の厳しい経済対立がもたらす中国経済へのストレスは、中国を抜き差しならない窮地に陥れさせ始めている。最悪の場合、トランプ米政権は、中国経済を再起不能になるまで追い詰める公算さえ否定できない現状である。
◆米国を孤立させ、覇権狙う

東方経済フォーラムの全体会合で握手を交わす安倍首相(左)
と習近平国家主席(今年9月、ロシア・ウラジオストックで)

 一帯一路構想が行き詰まり、米中貿易摩擦に苦しみ、その影響で人民元が急落する中で中国が起死回生の望みをかけた国が、日本である。それを裏付けるかのように、昨今の日中関係の改善は目覚ましく、両国とも具体的な協力策を模索している。その線上で安倍首相は「今年5月の李克強首相の来日により、日中関係は完全に正常な軌道に戻った」とまで述べている。今月の安倍首相の訪中とあわせ、経済界から大型代表団も訪中するとのことであり、その一部からは我が国企業の一帯一路構想への参画とビジネスチャンス獲得への期待が早くも漏れ聞こえてくる。

 仮に、我が国政府が一帯一路構想への参画を決定するとすれば、それは、瀕死とは言わないまでも、三重苦に苦しみ急速に症状の悪化が進んでいる中国自身及び一帯一路双方の窮状を救うカンフル剤になることは確実である。更に「清廉潔白」な我が国の一帯一路構想への参画が、急速に広がった同構想に対する国際社会の不信感の緩和に大きく貢献する公算は大きい。

 そのような現状の下で我々が認識すべきは、中国が中華思想の下で「中華民族の偉大な復興」を実現するための手段が一帯一路構想であるという現実であり、その結果、生ずる関係国の債務超過による従属国家化などは意に介さないことも明白である。さらに、開発途上国に対する債務によるコントロールに加え、世界規模の一大経済圏を構築することにより、米国と張り合える経済力を獲得して米国と欧州の分断を図り、米国を孤立させて中国が世界の覇者となる有力な手段が一帯一路構想であることも忘れてはならない。
◆「急場しのぎに日本を利用」が本音か

中国漁船を追跡する海上保安庁の巡視船(2013年2月、沖縄県宮古島沖で)=海上保安庁提供

 中国の一帯一路とは全く異なる、自由と民主主義を共通の価値観とする米国、豪州、インドに代表される国々と手を携え、アジア諸国と共に「自由で開かれたインド太平洋」の構築を目指す我が国は、近視眼的な経済上の利益にのみ目を奪われ、国家の本質と目的が水と油以上に異なる中国、特にその一帯一路構想に肩入れすることは,国家百年の計において取り返しのつかない禍根を残すこととなる。同様に米国は、一連の貿易問題を通して明らかになった中国固有の異質性を強く認識したからこそ、先日のペンス副大統領の演説に代表される、妥協のない新たな対中政策を発表したものと考えられる。

 中国の対日接近は、長年の日中対立案件の基本まで立ち返った中国の我が国に対する厳しい立場、つまり、歴史認識や尖閣諸島領有に関わる一方的な主張を根本から変更するものではないことは明白である。それは、中国が陥っている現下の政治と経済の窮状から抜け出るために最も効果的な切り札としての日本を、便宜的かつ一時的に使うことを狙ったもの以外の何物でもない。

 最後に、最近筆者が参加した国際会議における経験を紹介すると、ある中国人パネリストは、「中国は一帯一路構想において何ら困っていない。但(ただ)し、日本が構想に参画を希望するのであれば一切拒まない。それは『アベノミクス』の失敗で低迷し、苦しむ日本経済を救済するビジネスチャンスを日本に与える中国の親心と思いやりである」という趣旨の発言をした。「何をかいわんや」であるが、ここに中国の本音が垣間見えるとともに、これが極めて正直な中国の思惑の表れであろう。

香田洋二氏

元海上自衛隊自衛艦隊司令官 香田洋二

【私の論評】日本は対中国ODA終了とともに、対中関与政策をやめ攻勢を強めていくことになる(゚д゚)!

冒頭の記事の香田洋二氏の記事は、的を射たものと思います。このようなことは、なぜ米国が中国に対して経済冷戦を挑んでいるのか、考えればすぐに理解できると思います。

米国では、歴代政権が保ってきた中国への関与政策が失敗だと認識され、中国に対する警戒心が高まり、トランプ大統領が開始した中国への貿易戦争は、今や超党派による議会レベルの経済冷戦にまでたかまり、これはトランプ政権がどうのこうのという次元を超えて、かなり長期にわたり継続されることになるでしょう。

米国では、米中国交樹立以来40年近く、歴代政権が保ってきた関与政策が失敗だったという判断が超党派で下されたのです。

関与(Engagement)とは、中国が米国とは基本的に価値観を異にする共産主義体制でも、米国が協力を進め、中国をより豊かに、より強くすることを支援し、既成の国際秩序に招き入れれば、中国自体が民主主義の方向へ歩み、国際社会の責任ある一員になる-という政策指針でした。

このブログでも過去に掲載してきたのですが、中国が豊かになれば、先進国並みに民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされると米国はみていたのです。

ところが習近平政権下の中国は米側の関与での期待とは正反対に進んだことが決定的となりました。その象徴が国家主席の任期の撤廃でした。習氏は終身の独裁支配者になることになったのです。

実質的に中国の皇帝となった習近平

近年の中国はそれでなくても侵略的な対外膨張、脅威的な軍事増強、国際規範の無視、経済面での不公正慣行、そして国内での人権弾圧の強化と、米国の関与の誘いを踏みにじる措置ばかりを取ってきました。こうした展開が米側でこれまでの対中関与政策の失敗を宣言させるようになったのです。トランプ政権も昨年12月に発表した「国家安全保障戦略」で対中関与政策の排除を鮮明にしました。
ここ数十年の米国の対中政策は中国の台頭と既成の国際秩序への参加を支援すれば、中国を自由化できるという考え方に基礎をおいてきた。だが中国は米国の期待とは正反対に他の諸国の主権を力で侵害し、自国側の汚職や独裁の要素を国際的に拡散している。
トランプ大統領も2月下旬、保守系政治団体の総会で演説して、米国が中国を世界貿易機関(WTO)に招き入れたことが間違いだったと強調しました。中国のWTO加盟こそ、米側の対中関与政策の核心だったのです。だからトランプ氏は関与政策を非難したわけです。

さらに注視されるのは野党の民主党側でも関与政策の破綻を宣言する声が強いことです。オバマ政権の東アジア太平洋担当の国務次官補として対中政策の要にあったカート・キャンベル氏は大手外交誌の最新号の「中国はいかに米国の期待を無視したか」という題の論文で述べていました。
米国歴代政権は中国との絆を深めれば、中国の国内発展も対外言動も改善できるという期待を政策の基本としてきた。だがそうはならないことが明らかになった。新しい対処ではまずこれまでの対中政策がどれほどその目標の達成に失敗したかを率直に認めることが重要である。
反トランプ政権のニューヨーク・タイムズも2月末の社説で主張しました。
米国は中国を米国主導の政経システムに融合させようと努めてきた。中国の発展は政治的な自由化につながると期待したのだ。だが習近平氏の動きは米国のこの政策の失敗を証明した。習氏は民主主義的な秩序への挑戦を新たにしたのだ。
米国の歴代政権の対中政策は失敗だったと、明言しているのです。

トランプ氏自身、北朝鮮への対処にからみ習近平氏への親しみを口にしたことはありますが、中国への対決の基本姿勢は既に明確にしました。米国のこの動きは総額6兆円以上の公的資金を供与して中国を豊かに、強くすることに貢献してきた日本の対中関与政策にも、決算の好機を与えました。

日本の対中ODAは1979年から開始されましたが、これまで円借款(有償資金協力)は約3兆2079億円、無償援助1472億円、技術協力が1505億円にのぼりました。一部には対中ODAはすでに終了したとの誤解がありますが、終わったのは円借款(08年度で終了)だけで、残りの無償援助と技術協力は今も続いています。

実はここまでは外務省のホームページを見ればわかるのですが、さらにその先には隠れODAとも言うべき対中援助があります。それが、ODAと同時に財務省が始めた低金利・長期間融資の「資源開発ローン」です。こちらもすでに廃止されたとはいえ、3兆円弱になりました。

日本の対中ODAは3兆円と公表されているのですが、それは外務省の関与する公的な援助だけであり、後者の資源開発ローンをカウントしていない数字であります。事実上は日本の対中公的援助は6兆円を軽く突破しているのです。

このODAの終了は、今月26日に行われる安倍総理大臣と李克強首相との首脳会談で合意する見通しです。このODA終了は、もう日中は対等の立場であるとの日本側からの中国側への表明でもあると思います。



私自身は、これは、安倍政権による対中関与政策の終焉を意味するものだと思います。私は、安倍総理は米国に次いで、中国に対して今後は日本も関与政策はやめると伝えるのではないかと思っています。

そもそも、私自身は日本はもっとはやく中国への関与政策をやめるべきでした。本当は、2012年の段階でそうすべきだったのです。2012年といえば、中国による対日本宣戦布告とも受け取れる発表があった年です。これについては、昨日の記事にも掲載しました。

以下に一部昨日の記事から引用します。

日中関係が改善されるのは、良いことのようにもみえますが、決して油断することはできないです。中国は6年前、尖閣、沖縄を奪取するための戦略を策定しました。「広義」での「日中戦争」は、もう始まっているのです。
"
私自身「日中戦争が始まった」という事実に大きな衝撃を受けたのは2012年11月15日のことでした。
私はこの日、「ロシアの声」(現「スプートニク」)に掲載された「反日統一共同戦線を呼びかける中国」という記事を読みました(現在リンク切れ状態になっています)。この記事には衝撃的な内容が記されていました。
・中国は、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線」の創設を提案した。 
・「反日統一共同戦線」の目的は、日本の領土要求を断念させることである。 
・日本に断念させるべき領土とは、北方4島、竹島、尖閣および沖縄である。 
・日本に沖縄の領有権はない。 
・「反日統一共同戦線」には、米国も引き入れなければならない。
これを読み、私は「日中戦争が始まった」ことを確信しました。そうして、中国は米国を「反日統一共同戦線」に米国を引き入れようとしましたが、米国はそれに応じなかっために、米中もまもなく戦争状態に入りました。これは、はっきりしませんが、おそらく2016年か2017年頃だと考えられます。
"
「反日統一戦線」に関しては、今日米国がこれに加わらなかったことによって、中国は大きな誤算をしたと思います。

2012年当時の中国は、米国のあらゆる組織や個人に対して工作をして、いずれ米国は間違いなく「反日統一戦線」に加わると確信していたと思います。

しかし、米国はこれには結局加わらず、中国は米国との対立も余儀なくされることになりました。ロシアも韓国もこれに加わるとの発表は未だにしていません。

確かに、当時は米国内では、中国側に籠絡された個人や、組織などもありましたが、それは決して多数ではなかっのです。保守層は無論のこと、リベラル派の中にも中国の挙動に疑問を持つ人は大勢いました。

それが、2016年の米国大統領選挙により、さらに中国に対する疑問は大きくなり、中国をあからさまに非難するトランプ氏が米国大統領となり、昨年12月にトランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」で対中関与政策の排除を鮮明にしました。そうして、それが今日の米国による対中国経済冷戦となり具体的に実行されています。

こうした一連の流れをみていると、やはり日本はODA終了とともに、対中国関与政策をやめ、中国に対して攻勢を強めていくことになると考えるのが、妥当であると考えます。今回、安倍総理の中国訪問時にそれを公にするか否かは別にして、日本はそのような方向に進むだろうし、進まざるをえないと思います。

【関連記事】

2016年12月6日火曜日

【スクープ最前線】トランプ氏「中国敵対」決断 台湾に急接近、習近平氏は大恥かかされ…―【私の論評】トランプ新大統領が中国を屈服させるのはこんなに簡単(゚д゚)!

【スクープ最前線】トランプ氏「中国敵対」決断 台湾に急接近、習近平氏は大恥かかされ…

台湾の蔡英文総統との電話会談で中国を牽制したトランプ次期米大統領
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
ドナルド・トランプ次期米大統領が、中国への強烈な対抗姿勢を示した。台湾の蔡英文総統と電撃的な電話協議を行い、「経済、政治、安全保障面での緊密な結びつき」を確認したうえ、フィリピンのドゥテルテ大統領とも電話会談で意気投合したのだ。トランプ氏は「アンチ・チャイナ」の急先鋒(せんぽう)だっただけに、戦略的に行動した可能性が高い。習近平国家主席率いる中国は衝撃を受け、「対中激突」や「孤立化」を恐れている。

 「トランプ氏は間違いなく『対中強硬策』を決意した。一連の行動は、オバマ政権の救いがたい『対中弱腰外交』との決別宣言だ。違う言い方をすれば、中国に対する宣戦布告だ」

 米軍関係者は語った。

 中国に2日、超ド級の衝撃が走った。冒頭で触れたように、トランプ氏が、台湾独立志向が強く中国が目の敵にしている蔡氏と、通訳抜きで10分以上、電話協議を行ったからだ。トランプ氏は、蔡氏を「The President of Taiwan(台湾総統)と呼んだ」ことも堂々と公表した。

 米国は1979年の米中国交正常化以来、中国の主張する「1つの中国」政策を受け入れてきた。表向き、台湾を国として認めず、米大統領も次期米大統領も台湾総統とは接触しない-という慣例を厳守してきた。

 トランプ氏はこれを一方的に破ったのだ。まさに中国にケンカを売ったかたちといえる。「中台統一」をもくろむ中国からすれば、驚天動地の裏切り行為だ。

台湾の蔡英文総統
 中国の王毅外相は3日、「台湾側のくだらない小細工だ」「米国政府が堅持してきた『1つの中国』政策を変えることはできない」と、蔡氏を批判したという。香港フェニックステレビが伝えた。中国外務省も同日、米政府とトランプ氏に厳重抗議した。

 だが、旧知の外務省関係者は次のように語る。

 「トランプ氏は確信犯だ。オバマ氏率いるホワイトハウスにも一切知らせなかった。中国の抗議も無視して、ツイッターで『米国は台湾に何十億ドルもの兵器を売りながら、私がお祝いの電話を受けてはいけないとは興味深い』と開き直った。蔡氏を、独立国家の元首に使用する『President』と呼んだのもわざとだ。トランプ氏は米中関係悪化を恐れていない。いかに習氏を攻撃できるか、周到に計算して動いている。

 実は、中国がトランプ、蔡両氏の電話協議に激怒した3日、中国共産党の機関紙「人民日報」は1面で、習氏とキッシンジャー元米国務長官が笑顔で握手する写真を掲載した。記事は前日の会談を報じたもので、習氏は『(トランプ政権と)安定した発展を継続したい』と表明を出していた。世界各国が注視するなか、笑い物だ。大恥をかかされた。

握手した習近平(左)とキッシンジャー(右)
 トランプ氏が将来の「中国制圧」に向けて仕掛けた工作は、これだけではない。以下、複数の米軍、米情報関係者から得た情報だ。

 まず、英国のキム・ダロク駐米大使が1日、日本に派遣している英空軍最新鋭戦闘機「タイフーン」を近々、南シナ海での「航空の自由」作戦に参加させると、ワシントンで開かれたシンポジウムで明かした。ダロク氏はさらに、2020年に就役する空母2隻を太平洋に派遣する意向を発表し、「米政府と目標(対中政策)を共有する」と宣言したのだ。

 「トランプ陣営の仕掛けだ。主役は、国防長官に指名したジェームズ・マティス元中央軍司令官(退役海兵隊大将)と、安全保障担当補佐官に指名されたマイケル・フリン元国家情報局長(退役陸軍中将)の2人だろう。ともに『戦場の英雄』で『対中強硬派』、そして強烈な『反オバマ』だ。オバマ時代、南・東シナ海で中国に好き勝手させた屈辱の8年間を取り戻すつもりだ」

 そして、トランプ氏は2日、フィリピンのドゥテルテ大統領とも電話会談をしていたのである。

フィリピンのドゥテルテ大統領
 ドゥテルテ氏はこれまで、オバマ氏を「売春婦の息子」と罵倒し、米国との決別宣言までしていた。そのドゥテルテ氏が会談後、「(トランプ氏に)親密さを感じた。われわれと米国の絆は確かなものだと伝えた」と大喜びして、態度を一変させた。なぜか。

 「トランプ氏が、ドゥテルテ氏の麻薬犯罪対策について『成功を祈っている』と語ったことが大きい。ドゥテルテ氏は、CIA(米中央情報局)の失脚・暗殺工作におびえていた。次期米大統領が直接電話したことで、それがなくなった。南シナ海の対中戦勝利のために、米国はドゥテルテ氏をとり戻す」

 トランプ氏の大統領就任は来年1月20日だが、すでに経済問題や、外交・安保問題などで、激しく動いている。

 私(加賀)は、夕刊フジ(11月22日発行号)で、トランプ氏について《中国との『通貨戦争』『貿易戦争』『全面戦争』も辞さない、対中強硬政策を決断した》という最新情報を報告した。

 国際情勢が予想以上に緊迫化している。日本は総力を挙げて情報収集に努め、万全を期さなければならない。休んでいる暇などない。 

 ■加賀孝英(かが・こうえい)

【私の論評】トランプ新大統領が中国を屈服させるのはこんなに簡単(゚д゚)!

トランプ氏まだ大統領に就任していませんが、着々と対中国封じ込め戦略の準備をすすめています。上に掲載されているのはまさにその事実です。

トランプ氏は続々と反中派と連携を深める行動をしていますが、中国とは一切そのようなことはしていません。

これまでの、オバマや民主党の中国接近、宥和政策、二国間関係を重視する政策とは180度転換したため、中国政府は恐慌状態に陥っていることでしょう。

しかし、中国はさらにこれからとてつもない末路が待っていることにまだ気づいていないかもしれません。


超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

これに関しては、一昔前にある中国の高官が穀物の需要が増えたり、減ったりする中国の状況を「中国人の胃はゴムボールのようである」と語っていたことがあります。要するに、穀物需要がかなり減ったり、増えたりしても、中国は何とかなることを強調したかったのでしょう。

現実には、そんな馬鹿な話があるはずもなく、貧困層は穀物が手に入らず飢え死にしていたというのが実情でしょう。しかし、それは今から数十年も前のことで、今ではそのようなことはあり得ないでしょう。現状では、中国の貧困層でも何とか食欲を満たす穀物は手に入れられる状態になっていることでしょう。


実際最近では中国が突如、近年世界の穀物輸入国上位に躍り出てきました。2013年~14年期、中国の穀物輸入量は2,200万トンという膨大な量になりました。2006年の時点では、ま中国では穀物が余り、1,000万トンが輸出されていたというのに、何がこの激変をもたらしたのでしょうか?

2006年以来、中国の穀物消費量は年間1,700万トンの勢いで増大し続けている年間1,700万トンというと、大局的に見れば、オーストラリアの小麦年間収穫量2,400万トンに匹敵します。

人口増加は鈍化しているにもかかわらず、穀物の消費量がこれほど増加しているのは、主に、膨大な数の中国人の食生活レベルが向上し、より多くの穀物が飼料として必要な肉や牛乳、卵を消費しているからです。

2013年、世界全体で推定1億700万トンの豚肉が消費されました。そのうちの半分を消費したのが中国でした。人口14億人の中国は現在、米国全体で消費される豚肉の6倍を消費しています。

とはいえ、中国で近年、豚肉消費量が急増しているものの、中国人一人当たりの食肉全体の消費量は年間合計54キロ程度で、米国の約107キロの半分にすぎません。しかしながら、中国人も世界中の多くの人々と同じように、米国人のようなライフスタイルに憧れています。

中国江蘇省の豚肉売り場、価格は上昇し続けている
中国人が米国人と同量の肉を消費するには、食肉の供給量を年間約8,000万トンから1億6,000万トンへとほぼ倍増させる必要があります。1キロの豚肉を作るにはその3倍から4倍の穀物が必要なので、豚肉をさらに8,000万トン供給するとなると、少なくとも2億4,000万トンの飼料用穀物が必要になります。

それだけの穀物がどこから来るのでしょうか。中国では、帯水層が枯渇するにつれて、農業用の灌漑用水が失われつつあります。たとえば、中国の小麦生産量の半分とトウモロコシ生産量の1/3を産出する華北平原では、地下水の水位が急激に低下しており、年間約3メートル低下する地域もあるほどです。

その一方で水は農業以外の目的に利用されるようになり、農耕地は減少して住宅用地や工業用地に姿を変えています。穀物生産高はすでに世界有数レベルに達しており、中国が国内生産高をこれ以上増やす潜在能力は限られています。

2013年に中国のコングロマリットが世界最大の養豚・豚肉加工企業、米国のスミスフィールド・フーズ社を買収したのは、まさに豚肉を確保する手段の一つでした。

また、中国政府がトウモロコシと引き換えに30億ドル(約3,090億円)の融資契約をウクライナ政府と結んだのも、ウクライナ企業と土地利用の交渉を行ったのも、その一環です。こうした中国の動きは、私たち人類すべてに影響を与える食糧不足がもたらした新たな地政学を実証したものです。

このようなときに、米国に金融制裁を実施されたら、食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

資源を買うことができなければ、軍艦を出動させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が終わらなければ、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるだけです。

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られきましたが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなることでしょう。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

そうして頼みの綱の軍事力は、米軍と対峙できるような力はありません。このブログにも何度か掲載してきたように、日本の自衛隊が中国本土に侵略することにでもなれば、中国本土決戦ということになり、中国が勝つ見込みはあります。

しかし、例えば尖閣諸島などのように、中国側が海軍力や空軍力を用いて尖閣のような他国の領土に侵略しようとした場合、軍事的には、中国が勝つ見込みは全くありません。そのなことは、中国政府の幹部らが一番良くわかっているので、尖閣で日本と本格的に対峙することはいまのところ避けているです。そうでなければ、今頃尖閣はとうに中国のものになっています。

かつて中国が、チベットやモンゴル、トルキスタン国などに侵略したときとは、全く事情が異なります。どの地域に侵攻しようとしても、必ず米国、日本とその他周辺諸国が、連携して中国を牽制してそのようなことはさせません。
支那建国当時の版図 満州、ウイグル、内蒙古、チベットも外国だった
軍事的にも勝つ見込みは全くなく、さらに強力な金融制裁などされてしまえば、現代中国の人民はかつの人民のように穀物需要が減っても、それを甘受するなどということはありません。

ただでさえ、中国では建国以来毎年暴動が2万件あり、2010年あたりからは、平均10万件に達していといわれている国です。

その時には、暴動ではすまないでしょう。内乱になり、収拾がつかなくなり、いくつかの国に分裂するしかなくなります。

トランプ新大統領は、このようなことも視野に入れていると思います。まずは、軽い金融制裁により様子見をして、それでも中国の態度が改められなければ、さらに強化し、中国はとんでもない状況に追い込まれることになります。それでも、態度が改められなければらなる金融制裁の強化、最後の最後には軍事力に訴えることになります。

それも、段階を踏んてすこしずつ強化していくことでしょう。


中国は、早めにこのようなことを自覚して、南シナ海や東シナ海での暴挙をやめるべきです。そうでないと、本当にとんでもないことになります。

オバマと違って、トランプ大統領にとっては、中国を屈服させるのはこんなに簡単なのです。というより、米国の実力をもってすれば、元々かなり簡単なことなのですが、オバマ大統領がそれを実行してこなかったため、中国が増長したというのが現状です。ごく最近の中国を一言で表現すれば、「身の程知らず」だったということです。大統領就任中に、かなりのところまでこれを実施するというのがトランプ氏の腹です。

【関連記事】


竹中平蔵氏「ルール違反」 髙橋洋一氏「全然最初から間違っている」 子ども・子育て支援法についてピシャリ指摘―【私の論評】財務省の企み「異次元の少子化対策」の隠れ増税、放置すれば将来は特別会計のような複雑怪奇な税制になりかねない

竹中平蔵氏「ルール違反」 髙橋洋一氏「全然最初から間違っている」 子ども・子育て支援法についてピシャリ指摘 まとめ 4月17日、慶應義塾大学の竹中平蔵氏と数量政策学者の髙橋洋一氏がラジオ番組に出演し、子ども・子育て支援法の改正案について議論した。 竹中氏は、この改正案が保険制度の...