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「デフレだからこそ増税が必要だ」。消費増税ありきで設置された「政府・与党社会保障改革検討本部 成案決定会合」の場で、与謝野馨氏は驚天動地の珍説を力説しました。
対して民主党の税調責任者は「デフレで震災後の今は、時期的にちょっと」と腰が引けた条件闘争。上げたい側も上げたくない側も、労使のベア交渉レヴェルの小手先議論なのです。
歴史に類を見ない超少子・超高齢社会ニッポンの社会保障を如何に抜本改革するかの議論とは対極。財務省の手の平の上。俎板(まないた)の鯉なのです。
そもそもが羊頭狗肉です。「社会保障改革検討本部」なのに終始一貫、増税議論。デフレ脱却の方策を議論する訳でもなく、遊休国家資産の有効活用を示す訳でもなく、消費増税せねば年金も医療も破綻不可避、と配付資料も“説教強盗”状態。他方で、受給者が200万人を突破し、年間総額3兆円を超えた生活保護制度を如何に再構築するかの提言は、何処にも記されていません。
二百歩譲って、税制改革の議論だとして、古今東西、増税で景気浮揚した国家は何処にも存在しません。
フェア・オープン・シンプル・ロジカル=公正・透明・簡素で理に叶った徴税制度に不可欠な5条件。即ち、きめ細やかな税率設定の付加価値税への転換。中小事業者が泣き寝入りしない為のインヴォイス導入。脱税や二重課税を防ぐ為の納税者番号導入。給与所得者にも確定申告を導入。企業の利益でなく支出に課税する法人税の外形標準化。これらの導入こそが大前提です。
「国民新党・新党日本」の反対を押し切り、菅直人氏出席の下、政府・与党案ならぬ政府・民主党案「了解」に至った6月30日、僕は発言を求め、96年前に与謝野晶子女史が詠んだ詩歌「駄獣の群」を引用し、「君、日本国家を殺し給う勿(なか)れ」と諫言(かんげん)しました。与謝野馨氏は宙を見詰め、驚く勿れ、仙谷由人氏は発言を撤回・謝罪せよ、と激高しました。
「ああ、此国の怖るべく且つ醜き議会の心理を知らずして、衆議院の建物を見上ぐる勿れ。禍なるかな、此処に入る者は悉(ことごと)く変性す」。「われわれの正義と愛、われわれの血と汗、われわれの自由と幸福は最も醜き彼等駄獣の群に寝藁(ねわら)の如く踏みにじらるる」。
烏合の衆以下の、まさに堕落した獣の群と、全国の国民は悲憤慷慨しているでしょう。僕も恥じ入るばかりです。
【田中康夫】
(日刊ゲンダイ2011年7月6日掲載)
【私の論評】日本のデフレに終止符を打つのは、オバマか?
田中康夫氏の言っていることは、ほぼ正論です。デフレで、震災復興の時に、増税するなどということは、どこの国でも、そんなことを言うことはあり得ません。デフレのときは、減税するというのが、まともな主張です。最近は、デフレが収束する傾向もみられますが、それは、原油・食料品の根上げによる、コスト・プッシュ型インフレによるものであり、決して良い形での収束ではありません。
これによる、デフレの収束では、経済にとって何も良いことではありません。この形で、デフレが仮に解消したとしても、実体経済は回復したことにはなりません。
やはり、日本経済がもっと回復するまでは、増税などすべきではありません。私は、何もいつまでも、増税すべきではないなどと言っているわけではありません。もともと、どんな時でも、増税する、どんな時にも減税するということはあり得ません。
もともと、増税の減税の論議は、経済の循環にあわせてやるべきものです。そうです。物の値段が、下がっているとき、すなわち、デフレのときは、減税をしたり、政府が財政出動をしたり、日銀がお金を増刷したり金利を下げたりして、通貨量を増やし金融緩和をするのが、当たり前のことです。
そうこうして、経済が回復し、さらに加熱し今度は、インフレ傾向になった場合は、増税し、政府は、緊縮財政をしたり、日銀が、お金をすらないようにしたり回収して、通貨量を減らし金融引き締めを行うのが当たり前のことです。
これは、高校生あたりでも、理解できる簡単なことです。与謝野さんをはじめとする民主党の面々は、こんな簡単なことも理解できない馬鹿だということです。
与謝野さんなどの、増税論の有力な根拠となっている、日本国借金論ですが、これは完全に間違いです。正しくは、日本政府の借金です。それも、900兆円もあるとされていますが、それも間違いです。実は、日本国政府は、世界で一番金融資産を持った政府です。これを相殺してみれば、日本政府の借金は、さほどのレベルではありません。それに、日本国としては、世界にもっともお金を貸しているいる金貸し大国です。日本の対外金融資産残高は、直近の数字で、266兆円で、これは、世界一です。しかも、その世界一の座を過去20年間も保ち続けています。こんな当たり前の簡単なことを今更、ここに掲載しなければならないこと自体が情けないです。
この点では、対外債務が国の経済規模からみれば、膨大にあったギリシャなどとは根本的に異なります。このあたりは、このブログで何回も掲載してきたことなので、ここで同じことを書くのは、面倒なので、過去に、このことについて、これ以上は分かりやすくは書けないというところまで、話を簡単にして掲載した内容がありますので、是非それを参照してください。
その内容を読んでいただいた後で、現在の増税論議など全く異常どころか、馬鹿げていることが良くお分かりになると思います。仮に、この簡単な内容をご覧になっても、まだ、疑問が残る方々は、是非私に質問してください。下の、コメント欄でも良いですし、メールでも受け付けます。私自身は、この単純明快な理屈を隅から隅まで、理解していますから、必ず納得のいく解答をさせていただきます。
上の論議、本当に田中さんがおっしゃっている通りの、労使のベア交渉レヴェルの小手先議論です。この程度のマクロ経済も理解できない連中が、増税論議するなど全くの的外れで、その点で、田中さんのいうことは、全く正論です。本当に困ったものです。こんな常識もわからない、連中が日本経済の舵取りをしようとしていると思うと、本当に、田中さんが「駄獣の群」を詠みたくなる気持ちが良くわかります。それに対して、仙谷由人氏が、激昂するとは、もう、二の句を継げませんナァ。もう、馬鹿という前に、悲しくなります。
しかし、この状況、このままでは、どう考えても、解消されそうもありません。このままでは、本当に、直近で増税されてしまいそうです。そうなれば、誰にでもわかることてずが、またデフレ傾向に落ち込み、経済は落ち込むのは、目に見えています。余計なことをせずに、黙って、当たり前のことをやっていれば、日本の景気は復活するはずです。震災復興は、この景気復活に弾みつけることは、あっても、妨げにはなりません。
しかし、与謝野さんをはじめとする、民主党の増税論者達は、日本経済にとって、最も危険な要素です。しかし、このままでは、彼らの言うとおり、増税に踏きり、日本は、失われた30年に突入するかもしれません。これは、野党の自民党が、政権交代に成功しても同じことかもしれません。もともと、与謝野さんは、自民党の人間でしたし、自民党の中には、与謝野さんと似たような考え方をする人も多いですし、あろうことか、総裁の谷垣さんその人が、増税論者です。
もう、日本経済は永遠に復活することができないかもしれません。しかし、ここにきて、様相が変わってきています。それは、何かといえば、アメリカ経済です。アメリカは、金融危機、リーマンショックなども、素早く公的資金などどんどんつぎ込み、立ち直りも早かったです。その後、多くの人が、アメリカ経済がよくなるだろうと、楽観的な見通しを持っていたようですが、そうではないようです。
8日に発表されたアメリカの先月の雇用統計によりますと、失業率は前の月に比べて0.1ポイント上昇し、9.2%と3か月連続の悪化となりました。また、景気の動向を敏感に映し出す農業以外の分野で働く人の数が1万8000人の増加にとどまって、10万人程度の増加を見込んでいた市場予想を大幅に下回り、景気の先行きに対する懸念が強まっています。
私自身は、経済の復元力の原則からいって、アメリカはここしばらく、内需主導型の景気浮揚はなかなかできないと思います。おそらく、ここ数年は無理でしょう。実は、この事実が、日本経済にとって、救世主となる可能性が大なのです。
このことに関しては、以前のブログでも掲載しましたので、詳細はそれを見ていただくきこととして、以下にその記事のURLを掲載しておきます。
復興需要本格化、新司令塔登場で「9月末にも1万1000円回復」との見方も―【私の論評】日本の景気回復の救世主は復興需要だけじゃない!!
【コラム】米国の経済回復、日本の生産増加がカギ―【私の論評】米国の野心を満足させるためには不可欠の日本の景気回復が遅れた場合に備えた下準備か?
詳細は、上記の記事を読んでいただくものとして、下にその一部分をコピペしておきます。
しかし、最近のアメリカから出された景気の統計などをみると、その楽観的な見通しは間違いであることがはっきりしてきました。そうです。GDPの予想はもとより、雇用も改善されていません。
これは、アメリカの経済の復元力からいって、ここ数年は、景気、特に、アメリカの国内の景気は、悪くなるとみるのが妥当です。要するに、ここしばらく、やってきたアメリカの内需拡大策は効果がでていないし、これからも、難しいということです。
だからこそ、オバマ大統領は、ここ数年、外需主導でアメリカの経済を短期間でも良いから、底上げしたいのです。そうなれば、現在、その可能性がある国は、日本です。震災による需要は、期待できるし、経済の復元力による内需の拡大が期待できます。そうして直近で内需拡大で景気の浮揚が期待できるのは日本だけです。
・・・・・・・日本が、外需主導型ではなく、内需主導型での景気浮揚をして、本来の姿を取り戻せば、海外からの輸入も増え、世界経済に良い影響を及ぼします。そうなると、アメリカも輸出しやすくなります。アメリカが輸出を増やすためには、ドル安、円高の状態が望ましいわけです。そのため、アメリカは、ドル安傾向にもっていくため、アメリカのデフォルトを演出するなどの手を打っています。このへんのところも、前回のブログを参照してください。
現在日本の政局は、最低の状況で、菅内閣に任せておけば、復興も、景気回復もままならないなどということがいわれており、私自身も、このままでは、せっかくの千載一遇のチャンスに恵まれているのに、このままでは、さらにデフレ状況が続き、失われた30年、50年ということが続くかもしれないという危機感をいだいていましたが、今度ばかりは、そうではありません。
菅内閣、あるいは、次の内閣が、復興や、日本の景気回復にもたついていれば、いままでは、野党の攻撃にさらされるだけですみました。しかし、今度ばかりはそうではないということです。
もし、景気回復がもたつけば、オバマが黙ってはいません。そんなことになりそうであれば、今後、アメリカは、内政干渉ぎりぎりの圧力をかけてくることになることでしょう。そうなれば、日本政府は、なぜアメリカがこんなことを言い始めたのかを判断しかねて、丁度尖閣での、中国漁船の日本巡視艇の体当たりのときのように右往左往し、慌てふためくことでしょう。
場合によっては、それが、政局にかなりの影響を与えるかもしれません。しかし、結局はアメリカ側の意図を受け入れることなります。そうなれば、景気を落ち込ませるようなバカ真似は簡単にはできなくなります。
さて、今回ばかりは、与謝野さんを初めとするマクロ経済音痴が、珍妙なことをいって、日本経済をダメにするようなことがあれば、オバマが黙っていないでしょう。なにせ、オバマには、来年の大統領選挙には、必ず勝たなければならなからです。そのためには、アメリカ国内の内需主導型がだめであれば、アメリカ製品の輸出を増やすなどの外需主導型であろが何であろうが、一時的にでも、経済を良くして、何がなんでも雇用を回復しなければならならないわけです。
そういった意味では、オバマは日本のデフレに終止符を打つ人物になる可能性が大です。それにしても、情けないです。このような偶発的な外圧でもない限り、日本の経済の回復が期待できないなんて。もう、いい加減に、マスコミも、財務省も、それに政治家も目覚めて欲しいです。無論、政治家も全部が増税論者というわけではないですが、少なくとも、外国の大統領に内政干渉されて、はじめて、日本国内の経済がまともになるなんて情けないことだけは、やめていただきたいものです。復興に伴う日本の新しいビジョンや、景気回復のビジョンなど高らかにあげていただき、それこそ、外国の手本になるように日々の仕事にまい進していただきたいものです。
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