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2020年6月26日金曜日

笑えぬ現実。米が朝日新聞「中国の宣伝機関」として認定する日— 【私の論評】中国を不当に利する企業は、ある日ふと気づくと、事業継続不可能という悪夢のような事態に見舞われる!(◎_◎;)

笑えぬ現実。米が朝日新聞「中国の宣伝機関」として認定する日

朝日新聞本社
アメリカ政府が中国メディアを相次いで「外国の宣伝機関」に認定し、合計9社が米国内で様々な制約を受ける状態となっています。この決定に中国当局は「政治弾圧だ」として強く反発していますが、そもそも中国メディア自体が中国共産党のプロパガンダ機関であることは明白とするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは今回、自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』にその証拠を記すとともに、朝日新聞が米国から「中国の宣伝機関」に認定される可能性についても言及しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年6月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【米中】朝日新聞が「中国の宣伝機関」としてアメリカに認定される可能性

米政府、中国メディア4社を「外国の宣伝機関」に追加で認定

アメリカの国務省は、中国の中央テレビ局(CCTV)、人民日報、中国新聞社(CNS)、環球時報の4社を、「外国の宣伝機関」に認定しました。2月に新華社、中国国際テレビ(CGTN)と中国国際放送(CRI)、英字紙チャイナ・デーリー、米国海天発展の5社を「外国の宣伝機関」に認定したことへの追加措置であり、これで同認定を受けた中国メディアは9社になりました。

これらのメディアは原則的に中国の外交官と同じ扱いを受け、アメリカ政府に従業員のリスト提出が義務づけられ、またビザ(査証)や財産取得も制約を受けることになります。保有資産の届け出や新規物件取得前の事前認可なども義務付けられるそうです。

これに対して中国外務省は、「中国メディアへの政治的弾圧だ。誤ったやり方をやめるよう促す」と強く反発し、対抗措置も辞さない考えを示しました。

4社を「宣伝機関」 米政府認定で中国反発

しかし、中国のメディアが中国共産党の宣伝機関であることは、子どもでも知っている周知の事実です。中華人民共和国の建国以降、中国のメディアは、中国共産党の「喉と舌」とされてきました。つまり、プロパガンダということです。

それを統括しているのが、中央宣伝部です。報道の統制を行い、国内世論をコントロール、さらには中国共産党に都合の悪い情報は隠し、都合のいいニュースだけを海外にも発信しています(対外工作機関には統一戦線工作部もある)。

そもそも、習近平は2017年の第19回党大会において、「党政軍民学、東西南北中、党是領導一切的」という、文革時代に毛沢東が使った言葉を引用して、すべてを中国共産党が指導することを強調しています。自ら、メディア統制を行っていることを公言しているわけです。

毛沢東時代から、中国では「公正、公平な報道」は、ブルジョワ階級によるプロレタリアへの攻撃であり、敵視されてきました。そのことを理解していない日本の知識人などは、中国メディアの実態を見誤ってしまうわけです。

たとえば、かつて劉少奇は外国記者が客観的で公正な報道を求めるのに対して、中国では自らの立場を強調する主観主義の報道が蔓延していると発言しましたが、これに対して毛沢東思想教育を主導した文革派は、「(劉少奇の)こういった考えこそが外国のブルジョワ階級の記者に対する全面降伏であり、プロレタリア階級の報道機関に資本主義の考えを全面的に持ち込もうとするものだ」として切り捨て、劉少奇を「外国の奴隷」だと断罪しました。そのことは、樋泉克夫氏の以下の寄稿に詳しく書かれています。

昔も今も変わらない!中国共産党のメディア戦略

毛沢東は中国を統治するためには「搶杆子(鉄砲)」と「筆杆子(ペン)」という2つの「両杆子」が必要だと主張し、それを実践してきました。軍事力とメディアによって人民を押さえつけてきたというわけです。

そして「筆杆子(ペン)」については、外国のメディアにも強要してきました。よく知られているのが、「日中記者交換協定」です。1968年、中国側と、田川誠一ら日本の親中派政治家によって、それまでの日中記者交換協定が破棄され、新たな日中記者交換協定が結ばれましたが、そこでは、「中国を敵視しない」「2つの中国をつくる陰謀に加担しない」「日中国交正常化を妨げない」という「政治三原則」の厳守が求められました。

つまり、これらの3つの項目に抵触するような記事は、日本の新聞は書かないということを、中国に約束したわけです。もしそれを破れば、中国に支局を置くことができなくなり、記者は追放されることになります。

こうして、日本のメディアは中国批判がまったくできなくなってしまい、中国のプロパガンダ機関に堕してしまったのです。「なんでも戦前の日本が悪い」とする自虐史観も、こうした中国のプロパガンダに乗って、日本に広まりました。いまだ一国の首相が靖国神社に参拝できないでいるのも、そのためです。

作家の曽野綾子氏は、『この世の偽善』(金美齢氏との対談、PHP研究所)において、次のように語られています。

曽野綾子氏
この40年あまり、産経新聞と時事通信を除く日本のマスコミは、絶えず中国の脅しを受けながら、特派員を受け入れてもらうために、完全に中国政府の意図を代弁する記事を書き続けてきということです。

『朝日』『毎日』『読売』などの全国紙、東京新聞他のブロック紙などは、中国批判はただの一行たりとも書かず、私たちにも書くことを許さなかった。私が少しでも中国の言論弾圧を批判すれば、その原稿は私が内容表現を書き直さないかぎり、ボツになって紙面に載らなかったのです。

ちゃんと曽野綾子という署名を入れた小さな囲み記事ですら、印刷中の輪転機を止めてまで掲載を許さなかった新聞もあります。
さて、アメリカが中国メディアを「宣伝機関」と認定したことで、何が起こるでしょうか。参考になるのはファーウェイです。アメリカ政府は安全保障上の理由から、アメリカ企業に対して、ファーウェイとの最先端技術を使用する製品の取引を禁じました(米国輸出管理改革法=ECRA)。

さらには、ファーウェイに対してアメリカの先端技術を含む製品を取引する外国企業との取引も禁じました。つまり、日本企業であっても、ファーウェイに対して、アメリカの先端技術を含むパーツやソフトを提供すると、アメリカ企業と取引できなくなるわけです。

当然、アメリカの銀行が取引を停止しますから、ドル取引ができなくなります。また、そのような日本企業と取引をしている日本の金融機関もまた「同罪」と見なされ、アメリカの銀行と取引ができなくなりますから、国内銀行はそうした日本企業とは取引停止せざるをえなくなります。

要するに、アメリカ企業のみならず、日本国内のどの企業からも縁を切られることになるわけで、そのような企業は倒産するしかなくなるわけです。だから2019年5月、グーグルはファーウェイへのOS提供を停止し、日本のメーカーはファーウェイへの製品出荷を一時的に停止せざるをえなかったわけです。ドコモなどの通信キャリアもファーウェイの新製品の発売を延期しました。

その後、アメリカの意向を見ながら、恐る恐るファーウェイとの取引は続けられてきましたが、今年5月、アメリカ商務省がファーウェイへの輸出規制強化を打ち出したことで、世界最大の半導体デバイス企業である台湾のTSMCがファーウェイへの部品供給を停止することが決まり、半導体業界に衝撃が走りました。

半導体の歴史に重大事件、ファーウェイは“詰んだ”

このアメリカのやり方を見れば、前述の中国メディアと協力関係にあるメディアもまた「中国の宣伝機関」と見なされる可能性が高いと言えるでしょう。つまり、アメリカで取材活動をしたいならば、その構成員リストをアメリカ企業に提出し、さまざまな取引についても、制限を加えられるということです。

さらにアメリカの規制が強まれば、ファーウェイ同様の措置が取られる可能性も否定できません。すなわち、アメリカでの取材活動も禁じられるばかりか、内外の銀行や企業との取引が規制される可能性があるわけです。

人民日報のホームページを見ると、朝日新聞、日経BP社、日経QUICK、みずほ銀行などとニュース提携を結んでいることが書かれています。

人民網日本株式会社へ ようこそ!

とくに朝日新聞は「人民日報日本支社」と揶揄されるほど、人民日報と同じような主張を展開することでも有名です。朝日新聞元北京特派員だった人物が人民日報海外版の日本代理人を務めたこともあります。

朝日新聞がアメリカから「中国の宣伝機関」と認定される可能性も、揶揄や冗談ではなく、現実になる可能性があるわけです。

【私の論評】中国を不当に利する企業は、ある日ふと気づくと、事業継続不可能という悪夢のような事態に見舞われる!(◎_◎;)

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は24日、西部アリゾナ州フェニックスでの経済会合で「中国共産党のイデオロギーと世界的野望」と題した対中政策演説を行いました。オブライエン氏は「中国は米国民と米政府を操作しようとし、米国の経済に打撃を与え、主権の侵害を図っている」と非難し、「同盟・パートナー諸国と手を携えて中国に対抗していく」と強調しました。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

オブライエン氏はまた、国防総省が米国内で経済活動をしている中国企業のうち、人民解放軍と関係が深い企業のリストを作成し、週内に議会に提出すると明らかにしました。国防総省によるとリストは24日に完成しました。

国防総省のリストによると、対象企業は20社。中国航空工業集団、中国兵器工業集団(ノリンコ)などの国有企業に加え、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、監視カメラ大手のハイクビジョンなど日本で事業展開している複数のハイテク企業も含まれています。

ニューヨーク証券取引所に上場している中国電信と中国移動通信もリストに含まれました。

リストの作成と提出は、1999会計年度の国防権限法に基づく措置ですが、実施されるのは初めてです。

議会はこれらの企業に関し、制裁をかける権限を大統領に付与できます。20社は「米国の安全保障へのリスクがある」と名指しされた形で、米国内で資金を調達したり米企業と取引したりすることが困難になると見込まれています。

オブライエン氏は「中華人民共和国に対して受け身で甘い考えを抱いていた時代は終わった」と指摘。中国による知的財産の窃取、少数民族ウイグル族などの人権侵害、ソーシャルメディアを通じた政治宣伝や偽情報工作といった中国の行動を列挙し、「米国人は懸念すべきだ」と訴えました。

オブライエン氏によると、この日の演説はトランプ政権高官らが今後数週間で相次ぎ行う中国演説の第1弾で、ポンペオ国務長官やバー司法長官、レイ連邦捜査局(FBI)長官も近く演説するとしています。

トランプ氏は11月の大統領選に向け、高官らによる演説を通じて対中強硬姿勢を改めて打ち出し、「中国に弱腰」との評判が付きまとう民主党のバイデン前副大統領への攻撃を強めていくとみる向きもありますが、多くの米国人の中国への見方は厳しくなっており、これは世論に合わせた動きと見るべきと思います。

対中強硬姿勢により、大統領選挙を有利にしようとするよりは、世論を汲み取り、それを実行することにより、大統領選挙で不利にならないようにするための措置と言えるでしょう。

大統領選挙の候補は、トランプ氏の限らず、バイデン氏や他の候補者たちもかなり厳しい対中政策を公約としなければ、選挙戦に不利なるでしょう。

トランプ氏は今選挙をすると負けるが、まだ予断は許されない情勢

何しろ、米国の対中強硬姿勢は、米国議会の意思であり、それは多数の米国民の意思でもあるからです。このブログにも何度か触れたように、米国は中共が、中国の中共一党独裁制をやめて別の民主的な体制に移行するか、中共が現在の中国の体制を変えないなら、大国に影響力を行使できなくなる程度まで、中国の経済を弱体化させることになります。

その途上で、米国内での中国関連企業への制裁が一巡すれば、その後は米国内の中国を不当に利する米国企業が対象になるでしょう。それが一巡すれば、米国内の中国を不当に利する米中以外の外国企業が対象になるでしょう。それも一巡すれば、その後米国外の中国を不当に利する外国企業企業に対しても制裁が課されることになるでしょう。

この流れはもう止まることはありません。米国は、最後の段階まで、詰将棋のように進めることになるでしょう。そうして、これはトランプ氏が次の大統領になるならないなどのことは全く関係なく、米国の意思として行なわれることになります。

その時には、黄文雄氏が語るように、朝日新聞が米国の制裁の対象になるかもしれません。そのようなことがあれば、無論それ以外の中国を不当に利する日本企業も対象になるでしょう。

この米国の対中制裁の方針に関する方向性は2018年あたりには、しっかりと決まっていたのですが、それを実行に移す段階では結構時間がかかっていました。ここまで具体的で厳しくなるには、コロナ以前だと、5年から10年もかかったでしょうが、コロナ後では、米国の対中制裁の実行速度がかなりはやくなっています。同じことが、短ければ、2年、遅くても4年で起こる可能性が高いです。

朝日新聞などの中国を不当に利する企業は、ある日ふと気づくと、事業ができなくっているという悪夢のような事態に見舞われる可能性も十分あります。

そのようなことにならないように、あらゆる組織や個人が、中国との関係を見直すべきです

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2019年8月31日土曜日

通貨戦争へも波及する米中対立―【私の論評】中国「為替操作国」の認定の裏には、米国の凄まじい戦略が隠されている(゚д゚)!

通貨戦争へも波及する米中対立

岡崎研究所

 米中間の貿易戦争は、今や通貨戦争にも拡大しつつある。これは、世界的な経済成長に新たなリスクをもたらし、世界経済にも米国自身の経済にも悪影響を及ぼし得る。


 8月5日、トランプは3000億ドルの中国からの輸入品に10%の追加関税をかけると発表した。これを受けて、中国は同日、人民元の対ドルレートを2008年以来最低となる1ドル7元以上にすると決定した。これに対し米国は中国を「為替操作国」と認定、さらなる関税措置を取り得ることを明らかにした。

 中国人民銀行は5日の声明で今の人民元のレートは「合理的で均衡のとれた水準」であり、為替操作ではないと述べた。元安は、米国による関税で対米輸出が減り、中国経済が減速し、元に対する需要が減るために起こる面があるので、人民銀行の声明は、あながちこじつけとは言えない。トランプは関税によって、彼が望まないと主張する弱い人民元を作り出しているとも言える。もっとも中国が元安を容認することには、米国による関税をカバーし、輸出企業を支援して対米輸出の減少を減らそうとする側面のあることも否定できない。

 ただ、元安は中国からの資本逃避を招きかねない。中国には資本逃避を防ぐため、これ以上の切り下げを防ぐインセンティブがある。中国は多額のドル負債を抱えており、元安はこれらの負債の人民元ベースでの増額を意味する。国際金融研究所によると、非金融企業は8000億ドル(GDPの6%)のドル負債を抱えており、中国の銀行のドル債務は6700億ドル(GDPの5%)に上るという。中国としては、大幅な元安は対外債務不履行を招く恐れがあるので、何としてでも避けなければならない。2015-16年に起きた資本逃避の際、中国政府は人民元を守るために4兆ドルの外貨準備のうち、1兆ドルを費消した。あまりに元安になると、中国の借り手が切り下げられた人民元で外貨債務を返済するのに苦労し、債務危機を引き起こす可能性もある。従って、いざとなれば2016年に実施したような海外送金の規制を含め必要な措置を取るだろう。

 しかし、通貨安は元にとどまらない。米中の貿易戦争を契機とする世界経済の減速の中、南アフリカの通貨ランドは7月末から5%、韓国のウォンも直近で1.8%下落した。7月31日に米連邦準備理事会(FRB)が10年半ぶりの利下げを行ったにもかかわらず、世界的な金融緩和で世界中に行き渡ったドルが逆流している。国際金融協会(IIF)の調べでは、8月1日から6日までに新興国から流出した資金は64億ドルに上ったと言う。逆に、日本円については、人民元の下落が、投資家が安全を求め、円高につながっている。これは、日本経済にマイナスの影響を与え得る。

 トランプの関税攻勢と元安の波及により世界経済は減速の傾向を示しているが、実は米国にも景気減速の兆候が見られる。米国経済はトランプ政権の減税と規制緩和で絶好調といわれてきたが、ここにきてGDPの成長率が3%から2%に落ち、投資も減少している。世界経済のみならず米国経済自身にも悪影響を及ぼしつつあるとなると、トランプにとっても問題である。特に来年の大統領選挙を控え、トランプは何としてでも米国経済の好況は維持したいところであろう。一時的であれ、トランプが対中強硬姿勢の軌道修正を余儀なくされる可能性はある。9月1日に新たに追加関税の対象となる商品のうち、パソコンや携帯電話など一部の品目への追加関税を12月15日まで延期、「クリスマス商戦で米国の消費者に影響が及ばないように」という説明をしている。

 ただ、米国の中国に対する貿易戦争は、単に貿易赤字の問題にとどまらず、ハイテク分野における覇権争いが絡んでいるため、米中対立の構図自体に変化があるとは考え難い。トランプがすんなり矛を収めそうにはない。通貨戦争にまで拡大した米中経済対立が、今後とも世界経済に様々な波紋を広げていくことを覚悟する必要がある。

【私の論評】中国「為替操作国」の認定の裏には、米国の凄まじい戦略が隠されている(゚д゚)!

トランプ政権は中国を「為替操作国」に認定し、米中貿易戦争の段階がモノからカネに移ったようにみえます。しかし、米国の意図はそれだけなのでしょうか。

米国は、為替自由化や資本取引の自由化をてこに、中国の共産党体制を揺さぶろうという戦略が隠されているのではないでしょうか。



「為替操作国」とは、米国財務省が議会に提出する「為替政策報告書」に基づき、為替相場を不当に操作していると認定された国を指します。

1980年代から90年代には台湾や韓国も為替操作国に認定されましたが、1994年7月に中国が為替操作国として認定されて以降、為替操作国に指定された国は1つもありませんでした。

「為替操作国」の認定の基準は次の通りです。
(1)米貿易黒字が年200億ドル以上あること
(2)経常黒字がGDP(国内総生産)の2%以上あること
(3)為替介入による外貨購入額がGDP比2%以上になること
この3つに該当すれば、原則的に為替操作国として認定され、米国政府との2国間協議で為替引き上げを要求されたり、必要に応じて関税を引き上げたりされることになります。

 今年5月に提出された米財務省の報告書では、中国、韓国、日本、ドイツ、アイルランド、イタリア、ベトナム、シンガポール、マレーシアの9ヵ国が3条件のうち2つを満たすとして、「為替監視国」としてリストアップされていた。
 ただし、「為替操作国」の要件は形式的に決められていても、実際にはアメリカ大統領のさじ加減だ。
 世界の国の為替制度はどうなっているのかを見てみよう。
 IMF(国際通貨基金)では、各国の為替制度を分類しており、2018年時点で、「厳格な国定相場制」が12.5%、「緩やかな固定相場制」が46.4%、「変動相場制」が34.4%、「その他」が6.8%となっている。
 この分類によれば、米国の為替監視国リストに入っている国のうち、中国、ベトナム、シンガポール以外の国は変動相場制とされているので、よほど大規模な為替介入をしない限り、為替操作国として認定されることはないだろう。
 一方で中国の場合は「緩やかな固定相場制」だ。IMFも中国政府が為替介入していると判断しているので、中国が米国に「為替操作国」とされても文句は言えない面がある。
今年5月に提出された米財務省の報告書では、中国、韓国、日本、ドイツ、アイルランド、イタリア、ベトナム、シンガポール、マレーシアの9ヵ国が3条件のうち2つを満たすとして、「為替監視国」としてリストアップされていました。

ただし、「為替操作国」の要件は形式的に決められていても、実際には米国大統領のさじ加減です。

世界の国の為替制度はどうなっているのかを見てみます。

IMF(国際通貨基金)では、各国の為替制度を分類しており、2018年時点で、「厳格な国定相場制」が12.5%、「緩やかな固定相場制」が46.4%、「変動相場制」が34.4%、「その他」が6.8%となっています。

この分類によれば、米国の為替監視国リストに入っている国のうち、中国、ベトナム、シンガポール以外の国は変動相場制とされているので、よほど大規模な為替介入をしない限り、為替操作国として認定されることはないでしょう。

一方で中国の場合は「緩やかな固定相場制」です。IMFも中国政府が為替介入していると判断しているので、中国が米国に「為替操作国」とされても文句は言えない面があります。

中国の言い分は、為替介入はしているますが、市場で決まる水準より人民元の水準を高めに設定しているということでしょう。

最近5年間で、中国が公式に発表している外貨準備は1兆ドル程度減少しています。人民元の価値を高めるためには、ドルを売って人民元を買う必要があるので、外貨準備が減っていることは、中国政府が人民元高に誘導しているという根拠にはなり得ます。

ところが、中国の場合、そもそも外貨準備の統計数字が怪しいので、中国政府の言い分をうのみにするわけにはいかないです。

国際収支は複式簿記なので、毎年の経常収支の黒字の累計は、対外資産(資本収支と外資準備)に等しくなります。また、資本取引の主体は民間であり、他方、外貨準備は政府の勘定です。

日本をはじめとする先進国では公的セクターと民間セクターが区別できるので外資準備の統計数字に疑義はないです。しかし、中国の場合は、国営企業が多く、公的セクターと民間セクターの判別が困難で、外資準備の減少だけで人民元高への誘導を信じるのは難しいです。

そもそも、外資準備などを算出するベースの国際収支統計での誤差脱漏が中国は大きすぎます。経常収支に対する誤差脱漏の比率を見ると、中国は日本の4倍程度もあります。

ただ 仮にきちんとした統計が整備されていたとしても、そもそも、為替の自由化は、資本取引が自由化されていないと、実現は難しいです。中国のアキレス腱はまさにこの点にあります。

私は、米国が中国を為替操作国に認定したのは、資本自由化をてこに中国に本格的な構造改革を迫ろうという思惑からだと思います。

その鍵は、「国際金融のトリレンマ」です。

これは、(1)自由な資本移動、(2)固定相場制、(3)一国で独立した金融政策の3つを同時に実行することはできず、せいぜい2つしか選べないということです。


先進国の場合、2つのタイプになります。1つは日本や米国のように、(1)と(3)を優先し、為替は変動相場制を採用する国です。もう1つはEUのようにユーロ圏内は固定相場制だが、域外に対しては変動相場制をとるやり方です。

いずれにしても、自由主義経済体制では、(1)自由な資本移動は必須なので、(2)固定相場制をとるか、(3)独立した金融政策をとるかの選択になり、旧西側諸国をはじめとする先進国は、固定相場制を放棄し、変動相場制を採用しています。

これに対して、中国は共産党による社会主義経済体制なので、(1)自由な資本移動は基本的に採用できません。

もちろん実際には市場経済を導入している部分はあるのですが、基本理念は、生産手段の国有化であり、土地の公有化です。

外資系企業が中国国内に完全な企業を持つこと(直接投資)は許されません。必ず中国の企業と合弁会社を設立し、さらに企業内に共産党組織の設置を求められます。

中国で自由な資本移動を許すことは、国内の土地を外国資本が買うことを容認することになり、土地の私有化を許すことにもつながります。

中国共産党にとっては許容できないことであり、そうした背景があるので、中国は必然的に、(1)自由な資本移動を否定し、(2)固定相場制と、(3)独立した金融政策になる。

米国はこうした中国を「為替操作国」というレッテルを貼り、事実上、固定相場制を放棄せよと求めるつもりなのでしょう。これは中国に、自由主義経済体制の旧西側諸国と同じ先進国タイプになれと言うのに等しいです。

中国が「為替操作国」の認定から逃れたければ、為替の自由化、資本取引の自由化を進めよというわけですが、為替の自由化と資本移動の自由化は、中国共産党による一党独裁体制の崩壊を迫ることと同義です。

今回の措置は、ファーウェイ制裁のように、米国市場から中国企業を締め出すための措置だと見る向きもありますが、それだけにとどまらない深謀遠慮が米国にはあるのでしょう。


資本の自由化が実現すれば、今でも逃げ出しつつあるのですが、中国からさらにかなりの富裕層が国外に逃げ出し、資産を移す可能性があります。中国にとっては、共産党独裁体制の崩壊につながりかねないです。

かつて日本は米国に迫られ、資本や金融の自由化を受け入れました。日本が安全保障を米国に委ねていたので、米国と決定的に対立することはできなかったし、自由化を受け入れれば国内の体制は守られました。

しかし、米国との覇権争いを繰り広げる中国にとってはこの話を絶対にのむことはできないもでしょう。

もっとも「取引(ディール)」が大好きなトランプ大統領は、中国の国家体制をつぶすつもりはないでしょう。来年の大統領選に有利になるように、中国問題を使えればいいということだと考えられます。

「為替操作国認定」という高すぎるハードルを突き付け、徐々に条件を緩めながら、貿易や安全保障などの交渉で譲歩を迫っていこうとしているのでしょう。

北朝鮮との非核化交渉で、金正恩体制の維持をカードとして使ってきたように、中国に対しても「国家体制の保証」をカードに使うことも考えているのかもしれないです。

中国の「為替操作国」の認定の裏には、こうした凄まじい戦略が隠れているとみるべきと思います。

そうして、議会はそれ以上のことを考えているでしょう。すでに、米国議会は超党派で、中国と対峙しています。彼らにとっては、中国の「為替操作国認定」は、願ってもないほどの強力な武器になります。

私は、今回のこの措置は、トランプ大統領の選挙などと言う次元を超えて、米国の中国に対するかなりの圧力になることは間違いないと思います。トランプ氏の意図などをはるかに超えて、中国を揺り動かすことになると思います。

どのように中国が対抗してくるのか見物です。

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