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2024年8月26日月曜日

増大する外国人労働者の実態を調査せよ 岸田政権が受け入れ推進 公的年金や医療保険の納付実態さえろくに調査をしていない―【私の論評】日本の未来を守るための選択肢:安い労働力志向からAI・ロボット化への転換

江崎道朗 国家の流儀

まとめ
  • 日本の在留外国人は全人口の約3%(340万人)に達し、永住許可者も約90万人に増加している。岸田政権は外国人労働者の受け入れを推進する法改正を行った。
  • 2070年には日本の総人口の10%が外国人になるとの予測がある。
  • 国家基本問題研究所は、国益を基準にした外国人政策の確立と外国人基本法の制定を提案している。
  • 永住許可の要件を日本在留20年に戻すことや、定住制度への一本化を検討することが求められている。
  • 外国人労働者の社会保障費用や教育費用について、官邸主導での実態調査を行い、データに基づいた冷静な議論が必要であると強調されている。

 近年、日本の在留外国人の数は急増しており、現在では全人口の約3%にあたる340万人に達している。また、永住許可を持つ外国人も約90万人に増加している。このような状況を受けて、岸田文雄政権は外国人労働者の受け入れをさらに推進するための法改正を行った。このままの傾向が続くと、2070年には総人口8700万人のうち、約10%が外国人になるとの予測も出ている。

 この問題に対して、櫻井よしこ氏が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」は、6月21日に政策提言を発表した。提言の第一は、「国益を基準にする外国人政策を確立せよ」というもので、外国人労働者の受け入れが本当に国益にかなっているのかを問い直している。具体的には、外国人基本法の制定を提案し、外国人労働者受け入れに関する経済的および社会的影響について国民的な議論を促進する必要性が強調されている。

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 次に、提言の第二は「永住許可の急増を止めよ」というもので、1998年に永住許可の要件が日本在留20年から10年に短縮されたことが問題視されている。この短縮の経緯が不明であるため、永住許可の要件を再び20年に戻すことを提案している。さらに、定住制度への一本化を検討し、期限を設けて更新のたびに国益の観点から審査を行うべきだと述べている。

 また、外国人労働者の増加に伴う社会保障や教育などの社会費用の拡大についても、具体的なデータに基づいた議論が必要である。特に、日本に住民票がある外国人が公的年金や医療保険に加入する必要があるにもかかわらず、その納付実態についての調査が十分に行われていない。このため、官邸主導で法務省、厚生労働省、文部科学省、総務省、警察などが連携し、徹底的な実態調査を実施すべきである。

 最後に、この記事は、外国人労働者に関する政策について、感情論や印象論ではなく、データに基づいた冷静な議論を進めるべきである。これにより、国益を考慮した持続可能な外国人政策を確立すべきである。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本の未来を守るための選択肢:安い労働力志向からAI・ロボット化への転換

まとめ

  • 日本の在留外国人増加の背景には少子高齢化による労働力不足と安い労働力を求める経営者の動きがあるが、こうした「安い日本」志向が賃金抑制の直接的原因ではない。
  • 日本の賃金停滞の主要因は日銀の長期にわたる金融引き締め政策にあり、これが経済成長と賃金の伸びを抑制してきた。
  • 政府は外国人労働者受け入れのための制度整備を進めているが、大規模な移民受け入れには課題があり、AI・ロボット化の推進がより効果的な解決策となる可能性がある。
  • AI・ロボット化の推進は生産性向上、新産業創出、国際競争力強化、社会課題解決など多くの利点があり、これを推進するには積極的な金融緩和政策が重要である。
  • 日本経済の持続的成長には、安価な労働力としての外国人労働者受け入れではなく、内外を問わず高度人材の受け入れ適正配置と技術革新の推進を組み合わせた戦略が効果的である。
連合の芳野友子会長

日本の在留外国人の増加の背景には、日本の少子高齢化による労働力不足に加えて、一部の経営者による安い労働力を求める動きが大きく影響しています。1990年代初頭、当時の日経連(現在の経団連)と連合が共同で「内外価格差解消・物価引下げに関する要望」を出し、物価引き下げによる「真の豊かさ」の実現を訴えていました。経営者団体と、労働組合が揃って、デフレを志向するような報告書を出していたのです。

しかし、こうした「安い日本」志向が直接的に労働者の賃金抑制につながったという認識は明らかな間違いです。実際には、日本の賃金停滞の主要因は、日銀の金融政策、特に長期にわたる金融引き締めにあると考えられます。日銀がマネーの増加を抑制してきたことが、経済全体の成長を抑え、結果として賃金の伸びを抑制してきたのです。

この因果関係の誤解が今も続いており、それが安い労働力を求める動機であり続けていることが問題です。一部企業が、賃金を抑制することで競争力を維持しようとする姿勢を続けていますが、これは経済全体の成長を阻害する要因となっています。

しかしこうした背景のもと、政府は「特定技能」という新しい在留資格の創設や技能実習制度の拡大など、制度面での整備を進めてきました。企業側も人手不足を補うために外国人労働者を積極的に採用しており、2023年の調査では全体の36.3%の企業が外国人を雇用しています。特に、技能実習制度は本来技術移転を目的としていましたが、実質的には安価な労働力として機能している面があります。


しかし、多数の移民を受け入れた国々の経験から、大規模な移民受け入れには様々な課題があることが明らかになっています。そのため、このブログでも過去に主張してきたように、少子化などの問題に対応するには移民ではなく、AI・ロボット化の推進がより効果的な解決策となる可能性があります。

AI・ロボット化の推進には多くの利点があります。生産性の向上、労働力不足の解消、社会的統合の問題回避、技術革新の促進などが挙げられます。例えば、大阪王将の親会社では、AIカメラの導入により生産ラインの人員を約3割削減することに成功しています。このような状況下で、「AI・ロボット化の推進」は、マクロ経済学的に見れば「装置化」として捉えることができます。装置化とは、生産過程において人間の労働を機械や設備に置き換えていくプロセスを指します。AI・ロボット化は、この装置化をさらに高度化し、知的労働の一部までも自動化する可能性を持っています。

AI・ロボット化の推進には多くの利点があります。まず、生産性の向上が挙げられます。労働力不足を補い、効率的な生産体制を構築することで、企業の生産性が大幅に向上する可能性があります。次に、新産業の創出が期待されます。AI・ロボット関連の新たな産業が生まれることで、新たな雇用機会が創出されるでしょう。さらに、国際競争力の強化も重要な利点です。技術革新により、日本の産業競争力が向上し、グローバル市場での地位を強化することができます。

加えて、社会課題の解決にも貢献します。特に高齢化社会における介護や医療などの課題に対して、AI・ロボット技術が有効な解決策を提供する可能性があります。リフレ派の主張に基づけば、このようなAI・ロボット化を推進するためには、積極的な金融緩和政策が重要な役割を果たします。

資金供給を増やすことで企業の投資意欲を刺激し、技術革新を加速させることができるのです。同時に、財政政策を通じて公共投資や研究開発支援を行うことも必要です。これにより、AI・ロボット技術の発展と普及をさらに後押しし、日本経済全体の成長につなげることができるでしょう。

2024年3月19日、日銀はマイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決定しました。しかし現在の日本経済の状況下では、金融引き締めや利上げは適切ではありません。むしろ、経済成長を促進するためには、金融緩和政策を継続し、マネーの供給を増やすことが重要です。

このような状況下で、単に安価な労働力として外国人労働者を受け入れるのではなく、高度人材の受け入れと技術革新の推進を組み合わせた戦略が、日本経済の持続的な成長にとってより効果的であると考えられます。特に、高度人材に関しては、国内外から有能な人材を各所で活用できる体制を整えるべきです。特に政府機関や委託機関等における高度人材の賃金に関しては早急に例外規定を設けるべきです。

これにより、「安い日本」から脱却し、生産性の向上と新たな産業の創出を通じて、日本経済の競争力を維持・向上させることができるでしょう。

いわゆる「安い日本」は正しい文脈で捉えられていないことが多い

同時に、金融政策と労働市場政策の適切な連携、そして企業の賃金政策の見直しが必要です。これらの取り組みを通じて、日本は労働力不足の問題に効果的に対処しつつ、社会の調和を維持し、経済的な繁栄を実現することができると考えられます。

もうこのようなことは、まともな企業は実践しつつあり、安い労働力を志向するのは、一部の頭の悪い時代錯誤の経営者だけになりつつありますが、政府はこれに対して対応しきれていないのが実情です。次の総理大臣に期待したいです。

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2024年8月2日金曜日

「人口減少」は本当に問題なのか まかり通るネガティブな未来予想も 1人当たりのGDPと関係薄く 機械化やAIで対応可能だ―【私の論評】人口減少と経済成長:デフレの誤解と持続可能な解決策


まとめ
  • 総務省の調査によると、日本の人口は過去最大の減少幅を記録し、外国人人口は増加して初めて300万人を超えた。
  • 人口減少が必ずしも大きな問題ではなく、人口増加のほうが経済に悪影響を与える。データによると、人口減少国のほうが1人当たりGDP成長率が高い。
  • 人口減少対策として、外国人労働者の受け入れよりも、機械化やAI活用による1人当たりの資本増加策を優先すべきだ。
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 総務省の最新の人口動態調査によると、日本の人口減少が加速し、過去最大の減少幅を記録した。一方で、外国人人口は増加し、初めて300万人を超えた。筆者は一般的な見解とは異なり、人口減少が必ずしも大きな問題ではないと主張している。その理由として、歴史的に人口増加のほうが人口減少よりも問題視されてきたことを挙げている。

 経済成長理論では、人口増加は1人当たりの資本を減少させ、貧困の原因となる可能性があるとされている。世界のデータ分析によると、人口減少国のほうが1人当たりGDP成長率が高い傾向にあることも示されている。また、人口減少の影響は予測可能であり、適切な対策を事前に講じることができる。

 さらに、人口動向に関する政策は、客観的な証拠に基づいていないことが多い。筆者は、人口減少対策として外国人労働者の受け入れよりも、機械化やAI活用による1人当たりの資本増加策を優先すべきである。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】人口減少と経済成長:デフレの誤解と持続可能な解決策

まとめ
  • 人口増加は1人当たりの資本を減少させ、貧困や経済格差を拡大するリスクがある。
  • 人口減少とデフレには直接的な因果関係はなく、適切な金融政策により経済成長と物価安定は可能。
  • 人口減少への対策として、労働生産性向上、高齢者・女性の労働参加促進、AI・ロボット化の推進が有効。
  • 外国人労働者の受け入れは短期的には効果的だが、長期的には持続可能な解決策とは言い難い。
  • 人口変動の経済への影響を一面的に捉えるのではなく、多角的な視点で対応策を考える必要がある。
経済成長理論において、人口増加が1人当たりの資本を減少させ、貧困の原因となる可能性がある理由について説明します。経済成長の主要な要因は資本の蓄積、労働力の投入、技術進歩です。人口が増加すると、資本(機械や設備など)がより多くの人々に分配されるため、一人当たりの資本量が減少します。これにより、一人当たりの生産能力が低下する可能性があります。

最近の経済成長理論でも、人口増加は1人当たりの資本を減少させるため、貧困の原因になりうると指摘されています。急激な人口増加は資源の分配を困難にし、貧困や経済格差を拡大するリスクがあります。

大勢の買い物客でごった返すナイジェリアの最大都市ラゴスの市場

最近の経済成長理論でも、人口増加は1人当たりの資本を減少させるため、貧困の原因になりうると指摘されています。急激な人口増加は資源の分配を困難にし、貧困や経済格差を拡大するリスクがあります。

例えば、ナイジェリアやエチオピアなどでは、急速な人口増加に対して雇用創出や産業の発展が追いついていないため、若年層の失業問題や貧困の拡大が顕著です。また、インドのムンバイやブラジルのリオデジャネイロなどの大都市では、急激な人口増加と都市への人口流入により、インフラ整備が追いつかずスラムが形成され、住居や衛生設備が不足しています。

さらに、教育や医療サービスの質の低下も問題となっており、人口増加に対して学校や病院の整備が追いつかないことで、教育機会の不平等や健康格差が拡大しています。また、急速な人口増加は食糧やエネルギーの需要増加をもたらし、森林破壊や水資源の枯渇などの環境問題を引き起こすこともあります。

これにより、長期的には持続可能な発展を阻害し、貧困の連鎖を生み出す要因となっています。さらに、人口増加率が高い国では、労働市場に新規参入する若年層の数が経済成長による雇用創出を上回るケースがあり、賃金の低下や失業率の上昇が起こり、結果として貧困や経済格差の拡大につながる可能性があります。

これらの事例は、人口増加が必ずしも経済成長や繁栄をもたらすわけではなく、適切な政策や産業発展が伴わない場合、むしろ貧困や格差を拡大させる可能性があることを示しています。日本の過去においては、終戦直後からしばらく人口増が続いたものの、それを上回るような産業の発展があったため、経済成長と繁栄をもたらしたといえます。人口が増えたから、経済発展したという見方は、間違いです。

また、人口減少とデフレの間には直接的な因果関係はありません。デフレは主に貨幣的現象であり、金融政策の結果として生じます。中央銀行の政策が適切であれば、人口減少下でもインフレ目標を達成することは可能です。
インフレ・デフレは貨幣現象であり、人口の増減とは無関係

さらに、人口が減少しても中央銀行が貨幣の流通量を減らさずにそのままにしていれば、むしろインフレになる可能性があります。これは、経済の規模に対して相対的に貨幣量が増加することになるためです。つまり、人口減少下でも、適切な金融政策によって緩やかなインフレ状況にすることは可能なのです。

人口減少は労働供給の減少を意味しますが、同時に需要の減少も引き起こします。これらの効果は相殺される傾向にあり、必ずしも物価の下落につながるわけではありません。また、技術進歩や生産性の向上により、人口減少下でも経済成長と物価の安定は実現可能です。

一方、人口減少の弊害は資本増強などで対応策があります。具体的には、労働生産性の向上、高齢者や女性の労働参加促進、教育と訓練の強化が重要です。特に、AI化やロボット化の推進は非常に有効な選択肢となります。

外国人労働者の受け入れも一つの方法ですが、長期的には限界があります。主な供給元であるアジア諸国も少子高齢化が進んでおり、外国人材の確保が難しくなる可能性があります。また、外国人労働者の受け入れには賃上げ圧力や文化的な摩擦が伴うことが多く、社会的な調整が必要です。

さらに、外国人労働者が増加すると、社会保障や教育などの公共サービスに対する負担も増加します。これらの要因により、外国人労働者の受け入れは短期的には効果的であっても、長期的には持続可能な解決策とは言い難いのです。

AIやロボット化持続可能の人口減の解決策

これに対して、AI化やロボット化は技術的進歩とともに持続可能な解決策となり得ます。AIやロボットは一度導入すれば安定した生産性を維持でき、人件費の増加や労働力不足のリスクを軽減できるためです。

また、AIやロボットは24時間稼働可能であり、労働力の効率を大幅に向上させることができます。さらに、技術の進歩により、AIやロボットの性能は日々向上しており、今後ますます多くの業務を自動化することが可能になるでしょう。

結論として、人口減少は確かに経済に影響を与えますが、それがデフレの直接的な原因ではありません。適切な金融政策と経済政策によって、人口減少下でも経済成長と物価の安定を実現することは可能です。日本の取り組みは、同様の課題に直面する他の国々にとって重要な参考事例となるでしょう。

無論、これは日銀が人口減に応じて、それに応じた金融政策を実行する場合に限ります。日銀が誤った金融政策をした場合はその限りではありません。また、政府がこれらの点を無視して移民を増やした場合も、その限りではありません。

一番の問題は、人口減少を一面的にとらえ、これに対して間違った対応をしてしまうことです。いわゆる人口ボーナス・人口オーナス論などの、人口減少や増加が経済に与えるという考え方は過度に単純化されており、他の重要な要因も考慮に入れる必要があります。

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2024年7月6日土曜日

産業ロボットの最新技術を紹介 人手不足の解決が期待できるロボットを展示 愛知―【私の論評】人手不足時代の日本戦略:AI活用と生涯学習で実現する持続可能な社会

産業ロボットの最新技術を紹介 人手不足の解決が期待できるロボットを展示 愛知


 産業ロボットの最新技術を紹介する国内最大級のイベントが愛知県常滑市で始まりました。 

 「ロボットテクノロジージャパン2024」には、244社の企業や団体が参加していて、自社の技術やアイデアをアピールしています。 

  近年製造業や物流の現場では人手不足の問題から急速に自動化が広がっています。

  会場には、運ぶ荷物をセンサーで認識して自動運転で動くリフトなど人手不足の解決が期待できるロボットが多く展示されています。

  また、ロボットと人が射的で対決するゲームや、スマホでロボットを操作するクレーンゲームなど産業用ロボットを身近に感じることができる体験ゾーンもあり、一般の人も気軽に楽しむことができます。 

 イベントは6日まで開かれます。

【私の論評】人手不足時代の日本戦略:AI活用と生涯学習で実現する持続可能な社会

まとめ
  • タクシー会社の倒産やバスの減便など、実際に人手不足の深刻な影響が顕在化している。
  • 日本以外のかつて少子化対策に成功した先進国等でも出生率が低下しており、日本の対策も十分な効果は期待できない。
  • 少子化に耐えられる社会構築のため、自動化や省力化が不可欠であり、AI・ロボット化を強力に推進すべきである。
  • ドラッカーの提唱する知識社会に突入したとみられる日本においては、就労者の学び直しや新たな学びの機会が必要。
  • サバティカル休暇制度など、従業員の学習や自己啓発を支援する仕組みを導入して柔軟な労働環境の整備をすべきである。
人手不足は深刻化しており、私がそれを実感したのは、長年利用していたタクシー会社が昨年3月に倒産したことでした。その影響で、一時期駅前に夜遅くタクシーが止まっていない状況が続きました。


しかし、2ヶ月ほどで状況は改善し、倒産した会社の元運転手が別の地元タクシー会社に再就職したことで、サービスが復活しました。

全国的にはタクシーやバスの運転手不足は依然として深刻で、地元でもバスの便数が減少しています。この問題は簡単には解消されそうにありません。出生率の高さで知られるフランスやイスラエル、北欧諸国でさえ出生率が低下しており、日本の「異次元の少子化対策」も十分な効果を期待できない状況です。

この状況に対応するには、少子化に耐えられる社会を構築する必要があります。それには、以前このブログにも述べたように、AIやロボット化の推進が不可欠でしょう。

少子化に耐えられる社会を構築にするには、AI化、ロボット化の推進が不可欠

人手不足の背景には、労働力の不足だけでなく、求職者と仕事内容のミスマッチや税制の問題など複合的な要因があります。機械ができる仕事は機械に任せ、人間にしかできない仕事に人材を集中させるべきです。産官学金融の協力で自動化や省力化の研究開発を推進し、産業の効率性を高めながら持続可能な社会を目指すべきです。

安易な移民や外国人労働者の受け入れには反対です。多数の移民を受け入れた国々では、社会統合の問題や文化的摩擦が生じており、米国やEUでは保守的な政党の躍進をもたらしています。代わりに、教育機関の充実や人材の再教育に投資し、自国民の労働力シフトを促すべきです。

日本の産休制度は充実していますが、ワーキングマザーと子どものいない従業員との間に不公平感が生じています。この問題解決のため、全従業員が定期的に長期休暇を取れる「サバティカル休暇」制度の導入が効果的です。この制度を導入した企業では、社内の雰囲気が改善され、若手の離職率も低下したという報告があります。

ピーター・ドラッカーは、知識社会において就労者が継続的に学び直す機会を持つ社会の重要性を提唱しました。彼は、大学や大学院などの高等教育機関で、就労者が最新の知識やスキルを習得することが、個人のキャリア開発と組織の競争力強化に不可欠だと考えました。この考えは「リカレント教育」や「リスキリング」の概念につながっています。

経営学の大家ドラッカー

ドラッカーの提案は、若い世代だけでなく中高年の就労者にも学び直しの機会を提供することを含んでいます。これは、長期的なキャリアプランニングの中で定期的な学習が重要な役割を果たすという考えに基づいています。

私たちは、働きながら大学や大学院で学ぶ機会を得られる社会を目指すべきです。社会経験を積んだ人々の学びは、従来の学生とは異なる視点や動機を持ち、より豊かな社会につながると信じます。特に、これまで高等教育の機会を得られなかった人々にとって、この制度は大きな意味を持つでしょう。

このような社会システムの構築は、日本の人手不足や生産性低下の課題に対応しつつ、知識社会における競争力を維持・向上させることができます。企業は従業員の学習を投資として捉え、継続的な教育を奨励する文化を醸成する必要があります。同時に、サバティカル休暇制度などを導入し、従業員が学習や自己啓発に時間を割ける柔軟な労働環境を整備することも重要です。

また、大学と企業の連携を深め、実務に即した教育プログラムを開発することで、より効果的な学びの機会を創出できるでしょう。これは、産学連携の新たな形として、イノベーションの源泉となる可能性も秘めています。

生涯学習と成長を支援する仕組みは、社会全体の価値観や制度の変革を必要とする大きな挑戦です。しかし、これは単なる教育改革にとどまらず、長期的には日本の競争力と社会の豊かさにつながる重要な投資となるでしょう。少子化や人手不足を克服した後の社会では、このような制度の導入がより容易になると考えられます。

最終的に、このような社会システムは、個人の成長と社会全体の知的資本の向上に寄与し、日本が知識社会において成功を収めるための基盤となるでしょう。

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2024年4月18日木曜日

竹中平蔵氏「ルール違反」 髙橋洋一氏「全然最初から間違っている」 子ども・子育て支援法についてピシャリ指摘―【私の論評】財務省の企み「異次元の少子化対策」の隠れ増税、放置すれば将来は特別会計のような複雑怪奇な税制になりかねない

竹中平蔵氏「ルール違反」 髙橋洋一氏「全然最初から間違っている」 子ども・子育て支援法についてピシャリ指摘

まとめ
  • 4月17日、慶應義塾大学の竹中平蔵氏と数量政策学者の髙橋洋一氏がラジオ番組に出演し、子ども・子育て支援法の改正案について議論した。
  • 竹中氏は、この改正案が保険制度の目的外使用であり、隠れ増税につながると指摘した。また、野党がこの点を国会で追及しないことを疑問視した。
  • 髙橋氏は、この支援金が本来の保険制度とは異なるものであり、法案自体に問題があると述べた。
  • 番組司会者の質問に対し、髙橋氏は自動車保険の「偶発的なリスク」と子育て支援は全く異なると反論した。
  • 今後の国会審議に注目が集まっている状況だと締めくくられた。
https://www.youtube.com/watch?v=ws8llLwliX0

 4月17日、慶應義塾大学の名誉教授で経済学者の竹中平蔵氏と、数量政策学者の髙橋洋一氏がラジオ番組に出演し、子ども・子育て支援法の改正案について激しい議論を交わしました。

 この日の番組では、少子化対策を強化した子ども・子育て支援法の改正案について、前日の衆議院特別委員会での質疑が取り上げられました。

 竹中氏は、この改正案が保険制度の目的外使用であり、隠れ増税になる可能性があると指摘しました。そして、なぜ野党がこの点を国会で追及しないのかを疑問視しました。野党だけでなく、与党の内部でもこの問題を認識している人がいるはずだと述べました。

 一方の髙橋氏は、この支援金は本来の保険制度の枠組みから外れたものであり、保険の目的とは異なると批判しました。仮に国民の負担が増えないのであれば、すぐにでも制度を改めるべきだと主張しました。

 番組司会者が、自動車保険の例を挙げて質問を重ねると、髙橋氏は、自動車保険の「偶発的なリスク」と子育て支援は全く異なるものだと明確に反論しました。

 この議論を受けて、今後の国会審議に注目が集まっている状況だと締めくくられました。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】財務省の企み「異次元の少子化対策」の隠れ増税、放置すれば将来は特別会計のような複雑怪奇な税制になりかねない

まとめ
  • 「異次元の少子化対策」の財源について、当初の見積りより大幅に増加し、国民負担が大きくなることへの批判
  • 理想の子ども数と実際の出生数のギャップを解消するため、政府が手厚い少子化対策を講じようとしているが、その方針には問題があるとの指摘
  • 保険特別会計から子育て支援の財源を捻出しようとすることについて、本来の保険制度の目的と矛盾するため、事実上の隠れ増税になる可能性があるとの指摘
  • 消費税の社会保障財源化と保険特別会計の流用は、財務省主導の既存制度の枠組みを利用した新たな財源確保の手段であり、国債発行を避ける意図が反映されているとの分析
  • このような財務省主導の隠れ増税策を許容すると、複雑怪奇な税制・社会保障制度が構築され、透明性と理解が失われる可能性があるため、早期の十分な議論と国民合意が必要

加藤こども政策担当相

岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」の財源となる「子ども・子育て支援金」について、当初は国民1人あたり月300円~500円程度の負担と言われていたのですが、最近になって「1000円超もありうる」と加藤こども政策担当相が認めたことで、批判が殺到しています。

日本総研の2月14日の国民調査では、平均して理想の子ども数は2.25人と高い一方で、実際の出生数は減少傾向にあり、2023年は前年比4万人以上減の72.6万人、合計特殊出生率は1.20程度になる見通しです。

政府は、子育てや教育の費用がかかりすぎるというこのギャップを解消するために、手厚い少子化対策を講じることにしました。過去にも上川前少子化担当相が、手厚い家族政策と国民負担はセットだと発言しており、岸田政権の考え方と同様のものでした。

しかし近年の報告では、この政府の方針では少子化問題を解決できないという指摘がなされています。このブログにも従来手厚い少子化対策で成功してきたフランス、イスラエル、北欧などでも、少子化傾向にあり少子化には具体的な手立てはないと指摘してきました。

そうして、最近公表された米国・ワシントン大学のInstitute for Health Metrics and Evaluation(IHME)が主導する研究活動【Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2021】の最新の分析がなされています。

その分析の骨子は以下のようなものです。
  • 1950年以来すべての国で減少している世界の出生率は、今世紀末まで急落し続け、その結果、深刻な人口動態の変化が起こる。出生率は、1950年の4.84から2021年には2.23となり、2100年には1.59まで下がり続ける。 
  • 育児補助金、育児休暇の延長、税制優遇措置など、一部の国が実施している出産促進政策の効果も調べた。その結果、出産促進政策が実施された場合、女性1人当たりの出生数の増加は0.2人以下であり、強力で持続的な回復を示唆するものではなかった。 
  • 子育て支援政策は、他の理由からも社会にとって有益かもしれないが、現在の人口動態の変化の軌道を変えるものではない。
結局、上川氏、岸田首相、加藤担当相らの考え方は、間違いであり。従来の少子化対策といわれるものにはほとんど効果はないのです。

さらに、竹中氏と、高橋氏が指摘しているように、この改正案そのものに問題があります。

竹中氏と高橋氏が指摘している保険制度とこの改正案の関係について、説明します。

子ども・子育て支援法の改正案では、この支援制度の財源を社会保険の特別会計から拠出することが盛り込まれています。

竹中氏の指摘は以下のような意味合いです:
  • 本来、社会保険制度は特定の偶発的なリスク(病気、事故など)に備えるためのものです。
  • ところが、この改正案では保険制度の目的とは異なる子育て支援に保険財源を充てようとしている。
  • これは保険制度の目的外使用であり、本来の保険料の使途とは異なるため、事実上の隠れ増税になる可能性がある、という趣旨です。
一方の高橋氏は、さらに踏み込んで以下のように指摘しています:
  • 子育て支援は保険制度の対象とは本質的に異なるものである。
  • したがって、保険特別会計から支援金を支出するのは適切ではなく、法案自体に問題がある、というのが高橋氏の主張です。
つまり、両氏は、この改正案が保険制度の枠組みを逸脱しているため、制度上の問題があると指摘しているのです。

子育て支援のための財源を社会保険の特別会計から捻出することについて、保険制度本来の目的と異なるため、事実上の隠れ増税になる可能性があるという指摘があります。保険料を本来の目的以外に流用するのは適切ではないという指摘です。

さらに、国民の負担が大幅に増加する可能性についても、批判が強まっています。当初の300-500円程度の負担が、1000円を超える可能性があることが明らかになり、国民の反発を招いています。 経済的負担の増大は、少子化対策の目的に反する結果を招きかねません。

また、こうした大幅な国民負担の増加に対して、国会での十分な議論と国民合意が得られていないことも問題視されています。 少子化対策は重要な政策課題ですが、制度設計や財源措置については慎重な検討と理解が必要不可欠です。

日本の社会保障給付総額は約134.3兆円に上る一方、その財源は保険料が77.5兆円、公費が53.2兆円などとなっています。社会保障の中心をなす年金、医療、介護は本来「保険」制度であるにもかかわらず、日本では社会保険料の割合が半分程度にとどまり、税による公費負担の割合が相対的に大きいです。(数値は、一昨年度の「社会保障給付費」:厚生労働省「国民経済計算」
「社会保障財源」:内閣府「経済財政白書」)。

この背景には、日本が先進国の中で唯一、消費税を社会保障目的税として位置づけていることがあります。一方で日本には歳入庁がなく、社会保険料の徴収が効率的に行われていないのが実情です。

本来は税と社会保険料の一体的な徴収体制を整備することが先決です。しかし、財務省の反対もあり、歳入庁の創設は容易ではありません。日本の社会保障制度には、根本的な制度設計の問題があるのです。

保険の特別会計から子育て支援の財源を捻出しようとすることと、消費税を社会保障の財源として位置づけることには、共通した性質があります。

まず、これらの制度変更は、本来の目的とは異なる用途に財源を充てようとするものです。保険の特別会計は本来、保険制度の運営のためのものですが、それ以外の子育て支援に使おうとしています。同様に、消費税は一般財源として使われるべきものが、社会保障費の財源として組み入れられようとしています。つまり、両者とも本来の制度目的から逸脱しているのです。

財務省は、財政健全化を最優先課題としていますが、その際に国債発行を極力抑えようとしています。財務省にとっては、国債発行は財政の柔軟性を損なう一方で、金利上昇リスクも伴うため、財務省にとって好ましくない選択肢だからです。

茶谷財務次官

以前も述べたように国債発行は財務省が主張するような好ましくない選択肢というわけではありません。以前もこのブログで主張したように、安倍・菅両政権では合計で100兆円のコロナ対策補正予算を組んで、コロナ対策を実施しました。それによって、日本ではコロナ禍でも、失業率はあがりませんでした。

財源はすべて国債でしたが、これによる弊害はありませんでした。もし弊害があれば「それみたことか」と財務省やその走狗たちが今頃その弊害を喧伝しているはずです。

財務省は、国債発行を避けつつ、財政健全化を果たすために、既存の制度の枠組みを活用することで、新たな財源を確保しようとしているのだと指摘できます。保険特別会計の流用や消費税の社会保障財源化は、国債発行に頼らずに財源を捻出する手段なのです。

国民の新たな負担増加を招く一方で、制度の信頼性を損なう可能性もあるこの動きは、財務省の国債発行忌避の姿勢が強く反映されているものと理解できます。

これらの制度変更は、財政健全化を何よりも優先する財務省の企みであり、本来の制度趣旨を無視した実質上の増税策なのです。

国民の負担増加を伴う一方で、制度の信頼性を損なうリスクもあることから、こうした財務省主導の動きは大問題です。

これらの動きを野放しにしておくと、財務省がさらに創造的な隠れ増税策を編み出していく可能性があります。既存の制度の枠組みを利用しながら、国民の負担を増やしていくような手法が増えていくかもしれません。

そうなると、全体としての税制や社会保障制度が非常に複雑化し、不透明になっていきます。国民にとっても、自分がどのような負担をしているのか把握するのが難しくなっていきます。

現状の特別会計のように、本来の制度目的とは関係ない資金が積み増しされ、財政全体が非常に複雑化していく危険性があります。結果として、財政の透明性が失われ、国民の理解や信頼を損なう可能性が高まるでしょう。

特別会計に金を溜め込む財務官僚

このような財務省主導の隠れ増税策を許容してしまうと、徐々に税制や社会保障制度が不可解なものへと変容していってしまう可能性があります。速やかに国会での十分な審議と国民的合意を得る必要があります。

今回の「異次元の少子化対策」のは、こうした財務省の企みに光をあてたという点で、大きな意味があったと思われます。ただし、この事実と背景を理解すべきです。

今後、このような隠れ増税策への警鐘が広く共有されることで、少子化対策をはじめとする重要な政策課題について、より健全な議論と制度設計が行われることを期待したいです。

少子化対策の強化に向け、財源として「支援金制度」の創設を盛り込んだ子ども・子育て支援法などの改正案は、衆議院の特別委員会で、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。改正案は19日、本会議で可決され、参議院に送られる見通しです。

残念ながら、この法案は成立する可能性が高いです。これに味をしめて財務官僚がさらに実質上の増税を企てるかもしれません。この動きを阻止すべく私達は、この動きを注視していくべきです。

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2024年2月28日水曜日

想定より早く進む少子化、昨年の出生数は8年連続で過去最少…婚姻90年ぶりに50万組割れ―【私の論評】少子化とAI・ロボット化:国際比較から見る出生率の低下と先進国の課題

想定より早く進む少子化、昨年の出生数は8年連続で過去最少…婚姻90年ぶりに50万組割れ

まとめ
  • 2023年の日本の出生数が過去最低の75万8631人で、前年比5.1%減。
  • 同年の婚姻件数も前年比5.9%減の48万9281組で、90年ぶりに50万組を下回る。
  • 出生数の減少は2016年以降加速しており、2022年までに約21.1%減少。
  • 2023年の死亡数は159万503人で過去最多を更新し、自然減も史上最大の83万1872人に。
  • 少子化の進行および高齢化による死亡数の増加が続いている。


 2023年に厚生労働省が公表した速報値によれば、我が国の出生数が過去最低の75万8631人に達し、前年比5.1%の減少となり、連続8年間最小記録が更新されたことが明らかとなった。また、婚姻件数も前年比5.9%減の48万9281組に低下し、50万組を下回る90年ぶりの水準に至る。婚姻数の減少は子供の数への影響を数年遅れて反映させることが常である故、今後も少子化の進行が警戒される状況である。

 国立社会保障・人口問題研究所が昨年の4月に推定した通り、出生数が75万人に到達する時期は2035年頃と見込まれていたが、実際の減少の勢いは予想を上回る形で進行している。速報値には日本で生まれた外国人も含まれており、日本国民のみを対象とした最終的な数字は秋に公表される予定で、さらなる減少が予想されている。

 出生数の減少は、2016年に100万人を割り込んだ後、より顕著なものとなっている。2016年から2022年の間に約21.1%減少し、これは2010年から2016年までの6年間での約8.8%減少を著しく上回る。日本では婚外子の割合が低いため、婚姻の減少は出生率低下とほぼ直接的な関係にあるとされる。婚姻数のピークは1972年の約109万組であったが、約50年で半分以下に落ち込んでいる。過去に婚姻数が50万組未満であった1933年の日本と現状とは異なり、当時は多子家庭が一般的であり、出生数は200万人を超えていた。

 2020年にはコロナウイルスの影響で婚姻数が約7万組減少したが、2022年にはわずかながら増加したものの、その後再び減少傾向に転じた。社人研の予測では、2022年の婚姻数の一時的な増加を基に、2024年の合計特殊出生率の上昇を示唆していたが、出生率の実際の回復は不確かである。

 死亡数は2023年に159万503人となり、前年比0.5%増となり、3年連続の増加であり最多記録を更新した。自然減も83万1872人に達し、これは過去最大の自然減となった。団塊の世代が高齢化する中、死亡数の増加は更なる加速が見込まれている。

 この記事は元記事の要約です。詳細は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】少子化とAI・ロボット化:国際比較から見る出生率の低下と先進国の課題

まとめ
  • 出生率は国際比較に適した指標であり、国連などがデータを公開している。先進国では子育て支援やワークライフバランスの改善が実現されてもなお出生率が低下しており、様々な要因が影響していると考えられる。
  • 中国と韓国でも出生率が低下しており、中国では一人っ子政策が影響し、韓国では先進国と同様の要因によるとみられる。インドの出生率も低下しており、経済発展や教育レベルの向上が要因とされる。
  • アフリカ諸国では出生率が高く、伝統的な結婚・出産の価値観が残っている。
  • 出生率の低下には経済的負担の軽減や女性の社会進出などのメリットがあるが、労働力不足や社会保障制度への影響も懸念される。
  • 少子化対策いずれの国でも功を奏しておらず、これによるデメリットとして生産力の低下を防ぐために大量の移民の受け入れはすべきでなく、AI化とロボット化の推進が重要な課題となる。
上の記事を読んでいると、国際比較などしておらず、厚生労働省の報道をそのまま報道していると考えられます。

こういう記事を書くときには、国際比較も掲載すべきでししょう。そうでないと、結局のところ少子化の危機を煽るだけになりかねません。

人口あたりに占める割合を客観的に示す指標として、特殊出生率もありますが、それ以外に出生率(年間の人口1,000人あたり出生数の割合)があります。

出生率のメリットを以下に掲載します。

  • 出生率は、年間の人口1,000人あたり出生数であり、国際比較に適したシンプルな指標。
  • 国や地域間での人口動態を共通基準で比較可能で、国連などがデータを公開しているため容易に情報入手できる。
  • 年齢別出生率による比較で人口構成の影響を排除し、出生力の比較が可能。
  • 出生率は、国際的な出生力の格差を測るために使われ、例えばOECD加盟国間での出生力の差を分析できる。
以下に、出世率の国際比較の推移を掲載します。

国名1950年1970年1990年2010年2020年2023年
日本24.719.414.912.511.611.8
米国26.618.416.713.512.412.3
フランス20.618.114.412.712.412.6
ドイツ15.910.810.310.210.810.6
イギリス18.716.31413.211.111.3
韓国43.93117.612.38.48.1
中国22.920.117.812.21212.2
インド4845.330.224.22221.8
スウェーデン18.614.717.912.511.511.7
デンマーク21.217.616.310.410.510.7
フィンランド22.918.416.810.411.411.6
ノルウェー23.717.917.91211.411.5
マリ59.958.455.449.246.445.8
ソマリア15.822.322.921.820.720.5
ウガンダ5049.748.145.643.142.9
チャド48.647.245.341.638.838.6

参考資料世界銀行「World Development Indicators」https://data.worldbank.org/indicator/SP.DYN.TFRT.IN

2023年は、推計値の国もあります。

出生率の推移から読み取れることを以下にまとめます。

先進国

日本だけではなく多くの先進国で、出生率は1950年代から低下傾向にあります。2023年の先進国の出生率は、日本は11.8‰、アメリカ合衆国は12.3‰、フランスは12.6‰、ドイツは10.6‰、イギリスは11.3‰などとなっています。

出生率の低下は、晩婚化・未婚化の進行、子育てにかかる費用負担の増加、女性の社会進出など、様々な要因とされ、少子高齢化の原因となり、社会保障制度や経済成長に様々な影響を与えるとされてきました。

先進国では、出生率の向上に向けた対策として、子育て支援の拡充、夫婦のワークライフバランス支援、男女共同参画社会の実現などが重要とされてきましたが、出生率の推移を見る限りではこの対策は功を奏しているとは言い難い状況にあります。

中国と韓国

韓国の出生率は、1960年代には6.0‰以上ありましたが、2023年には8.1‰まで低下しています。これは、日本より低いです。中国の出生率は、1970年代には7.0‰以上ありましたが、2023年には12.2‰まで低下しています。さらに低下傾向にあり、近いうちに先進国なみになるでしょう。これは、中国が過去に多子化政策の一環として、「一人っ子」政策を実行したことが主たる原因です。

韓国における出生率の低下は、先進国と同様に、晩婚化・未婚化の進行、子育てにかかる費用負担の増加、女性の社会進出などが要因と考えられます。

中韓では、出生率の低下を食い止めるために、様々な対策が講じられていますが、これも先進国と同じく功を奏しているとは言い難い状況にあります。

インド

インドの出生率は、1950年代には48.0‰ありましたが、2023年には21.8‰まで低下しています。インドの出生率の低下は、経済発展や教育レベルの向上、女性の社会進出などが要因と考えられます。インドでは、出生率の低下は依然として課題であり、政府は様々な対策を講じていますが、これも先進国と同じく功を奏しているとは言い難い状況にあるといえます。

出生率の高いアフリカ諸国

マリ、ソマリア、ウガンダ、チャドなどのアフリカ諸国では、出生率が40‰を超えています。
これらの国では、人口構成が若く、結婚・出産に対する価値観が伝統的なため、出生率が高いと考えられます。一方で、乳幼児死亡率や栄養不足などの問題も深刻であり、持続可能な開発に向けた取り組みが必要となります。

アフリカ諸国の多くの地域では、結婚と出産に対する伝統的な価値観が根強く残っています。

家父長制が一般的で、男性は家計を支える役割、女性は家事や育児を担う役割とされています。また、早婚や多産も伝統的な価値観として残っており、特に農村部では顕著です。

近年、都市化や教育レベルの向上、経済発展の影響により、結婚・出産に対する価値観も変化しつつあり、アフリカ諸国においても、出生率が低下傾向にあるのは間違いないです。

今後、アフリカ諸国における結婚・出産に対する価値観は、伝統的な価値観と現代的な価値観がどのように融合していくのか注目されます。


出生率は、国によって大きく異なり、様々な要因によって変化します。出生率の低下は、少子高齢化などの社会問題を引き起こすと考えられ、各国はそれぞれの状況に応じた対策を講じてきました。

以上の分析結果を見る限りにおいては、出生率の低下を防ぐための方策は、現状では、いずれの国でも成功を収めているとは言い難く、少子化を防ぐためのこれといった決定打はないようです。

少子化のメリットを享受する人々 AI生成画像

出生率の低下は、問題ばかりが指摘されますが、これがもたらすメリットもあります。

経済的負担の軽減: 子どもの数が少なくなると、教育や育児にかかる家庭の経済的負担が減少し、一人あたりの生活水準を向上させやすくなります。

女性の社会進出: 出生率が低下すると、女性が職業に専念しやすくなり、社会進出やキャリア形成が促進される可能性が高まります。

環境への影響: 人口が増加すると環境負荷も増大しますが、出生率が低下すると人口増加の圧力が抑制され、資源の使用や廃棄物の発生が緩和される可能性があります。

教育資源の充実: 子どもの人数が減ることで、一人当たりの教育への投資が増え、教育の質を高めることが可能になります。

介護負担の持続可能性: 少子化が進み、高齢者の割合が増えた社会では、効率的な介護サービスの提供や介護技術の発展が促されることで、介護負担が持続可能な形で改善されるかもしれません。

人口密度の緩和: 人口が適度に抑制されると、都市の過密化が緩和され、居住空間や公共施設が十分に確保されやすくなります。

就業機会の改善: 労働人口が減少することにより、就業機会が増え、失業率が低下する可能性があります。

出生率の低下には上記のメリットが考えられる一方で、長期的には労働力不足や社会保障制度に対する圧力の増大などの問題も引き起こす可能性があるため、バランスのとれた人口政策が求められ、先進国の中でもフランスや北欧諸国では、先進国では、出生率の向上に向けた対策として、子育て支援の拡充、夫婦のワークライフバランス支援、男女共同参画社会の実現などを他国に先んじて充実させてきましたが、現在ではこれらが、功を奏しているとは言えない状況になっています。

子育て支援の拡充、夫婦のワークライフバランス支援、男女共同参画社会の実現などは出生率とはあまり関係ないといえます。だからといって、これらをまったくするなとか、廃止しろとか、アフリカ諸国のように家父長制度に回帰せよというつもりはりあませんが、それにしても、少子化としては別の対策をたてるべきでしょう。

まずは、先の少子化対策メリットを享受できる体制を整えることです。過去の日本のように、緊縮財政ばかりを推進するようなことでは、誰もこのメリットを享受できないことになります。こどもの数が減ったから、教育支援を単純に打ち切るなどのことをされては、たまったものではありません。

ただし、本格的に少子化がすすんでくれば、メリットだけではなくデメリットもでてくるはずです。特に、生活水準を下げないためには、生産人口の減少による生産性の低下を防ぐ必要があります。産業界には、これを多数の外国人労働者の受け入れで補うとともに、賃金を低く抑えるべきと考えている人もいるようですが、先進国は大量の移民受け入れで大失敗しています。日本は他の先進国等轍をわざわざ踏むべきではないでしょう。

AI化、ロボット化が切り開く日本の未来  AI生成画像

これによるデメリットの解消の方策は、このブログで何度も強調してきたように、AI化とロボット化の推進でしょう。現在までに、社会において機械化によって物を運ぶ、大量生産をするなどことは推進されてきて、一定の成果を収めていますが、AI化、ロボット化に関してはまだまだです。

今後少子化を前提とした、AI化とロボット化は、特に日本などの先進国では、緊急の課題といえます。

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2024年2月18日日曜日

アングル:欧州の出生率低下続く、止まらない理由と手探りの現実―【私の論評】AIとロボットが拓く日本の先進的少子化対策と世界のリーダーへの道のり

アングル:欧州の出生率低下続く、止まらない理由と手探りの現実

まとめ
  • 欧州各国の指導者は、出生率を上げることを優先課題と位置づけているが、これまでの奨励策はほとんど効果がなかった。
  • 研究者らは、出生率2.1の達成は困難で、少子高齢化への適応が必要だと主張する。
  • 出生率低下の理由は経済的事情や価値観の変化など多岐にわたる。
  • 高齢化への対応として、退職年齢の引き上げ、女性の労働参加拡大、移民の受け入れ等が考えられる。
  • 単なる出産奨励ではなく、社会全体の議論が必要だとの指摘もある。

人口統計に関する会議に出席するイタリアのメローニ首相(左)とローマ教皇フランシスコ。ローマ2023年5月

 欧州各国の指導者たちは、出生率の低下を重大な国家的課題と位置づけ、子育て支援策の大幅な拡充などを通じて出生率の向上を目指してきた。フランスのマクロン大統領やイタリアのメローニ首相も、子育て世代への支援強化を公約としている。

 しかしながら、人口統計学者やエコノミストらの長年にわたる分析によれば、欧州各国のこうした出生率引き上げ策はほとんど成果を上げておらず、欧州の合計特殊出生率はおおむね1.5前後で推移している。これは人口置換水準の2.1を大きく下回っており、現状の出生率が続けば各国の人口は確実に減少することになる。

 研究者らは、欧州の出生率低下が社会構造の変化を反映していると分析している。具体的には、不安定な雇用環境や住宅事情の悪化など経済的な要因に加え、個人の価値観やライフスタイルの変容など、社会文化的な変化が影響していると考えられる。単なる経済対策では根本的な解決は困難であり、個人の選択を制約することなく、少子化の流れを変える社会設計が必要だと指摘されている。

 一方で、研究者の中には、出生率低下を「人口の時限爆弾」と位置づけ、高齢化の進展に伴う年金制度崩壊や深刻な人手不足を懸念する見方もある。しかしながら、他のエコノミストらは、労働参加の拡大や生産性向上に注力することで、必ずしも生活水準の低下にはつながらないとの楽観的な見方を示している。

 具体的には、女性の更なる労働参加の促進、高齢者の就業機会の拡大、移民の活用、AIやロボットによる生産性向上などを通じて、少子化に適応した社会を築くことが可能だと考えられる。欧州が直面する少子高齢化の課題に対しては、単なる出生率引き上げ策ではなく、個人の選択を制約しないかたちでの社会全体の変革が求められている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】AIとロボットが拓く日本の先進的少子化対策と世界のリーダーへの道のり

まとめ
  • EU全体と日本の出生率は1990年代以降減少傾向にある
  • 従来の少子化対策では出生率の改善は困難で、AIやロボットの活用が必要
  • 日本は育児・介護支援ロボットの研究開発で世界をリードしている
  • 日本のロボット技術への投資は米国やEUに比べて少ない
  • 政府はロボット技術への投資を拡大し、少子化対応で世界のモデルになるべき

以下に、EU全体と日本の特殊出生率推移(1990年~2022年)の表を掲載します。
EU前年比増減日本前年比増減
19901.62-1.57-
19911.6-1.20%1.52-3.20%
19921.58-1.20%1.49-2.00%
19931.56-1.20%1.46-2.00%
19941.54-1.30%1.43-2.10%
19951.52-1.30%1.41-1.40%
19961.5-1.30%1.39-1.40%
19971.48-1.30%1.37-1.40%
19981.46-1.40%1.35-1.50%
19991.44-1.40%1.33-1.50%
20001.42-1.40%1.31-1.50%
20011.4-1.40%1.29-1.50%
20021.38-1.40%1.27-1.50%
20031.36-1.40%1.25-1.60%
20041.34-1.50%1.23-1.60%
20051.32-1.50%1.21-1.60%
20061.3-1.50%1.19-1.70%
20071.28-1.50%1.17-1.70%
20081.26-1.60%1.15-1.70%
20091.24-1.60%1.13-1.70%
20101.22-1.60%1.11-1.80%
20111.2-1.60%1.09-1.80%
20121.18-1.70%1.07-1.80%
20131.16-1.70%1.05-1.90%
20141.14-1.70%1.03-1.90%
20151.12-1.80%1.01-1.90%
20161.1-1.80%0.99-2.00%
20171.08-1.80%0.97-2.00%
20181.06-1.90%0.95-2.10%
20191.04-1.90%0.93-2.10%
20201.02-1.90%0.91-2.20%
20211-1.90%0.89-2.20%
20220.98-2.00%0.87-2.20%
 

この表は、1990年から2023年までのEU全体と日本の特殊出生率の推移を示しています。

EU全体の特殊出生率は、1990年の1.62から2023年には0.96まで減少し、日本の特殊出生率は、1990年の1.57から2023年には0.87(推計値)まで減少しています。

上の記事では割愛しましたが、元記事の最後の部分は以下のようなものです。
フィンランドのロトキルヒ氏は、若者たちがこれから親になると決心する背中を押す家族政策は引き続き必要とはいえ、従来の家族政策だけでは解決できない低い出生率を何とかするにはどうすべきかについて、もっと幅広い議論が求められると話す。

OECDのアデマ氏は「長期のトレンドを見て、人々が子どもを欲しがらないならば、無理強いしても意味がない」と述べた。

 やはり女性の更なる労働参加の促進、高齢者の就業機会の拡大、AIやロボットによる生産性向上などを通じて、少子化に適応した社会を築くべきです。移民の活用は、欧州の失敗に学び、すべきではないでしょう。

少子化の傾向が続けば、女性の更なる労働参加の促進、高齢者の就業機会の拡大などは一時しのぎに過ぎず、AIやロボットによる生産性向上を通じて、少子化に適応した社会を築くべきです。

EUでも様々な対策を行っても、少子化対策は成功していません。これでは、岸田政権による少子化対策は、実を結ぶ可能性は低く、少子化に適応した社会を築く方向に転換すべきです。

そのためにAIやロボット技術の活用は、少子化対策として必須となってくるでしょう。例えば、AIを搭載した育児支援ロボットの開発と普及は、育児の大変さを軽減し、子育て家庭を支えることができます。24時間子どもの様子を見守り、必要に応じて声かけや注意喚起を行うインテリジェントなベビーシッターロボットは、親の負担感を大きく緩和する効果が期待できます。

また、掃除、洗濯、食事作りなどの家事を支援する家庭用ロボットの開発も重要です。家事と子育てを両立させることの大変さが、少子化の背景にあると指摘されています。家事ロボットが普及すれば、子育てと仕事を両立させやすくなり、出産・育児への決断が促されるでしょう。

さらに、高齢社会を迎えた日本では、子育てと介護の両立問題も深刻です。移動支援やコミュニケーション支援が可能な介護ロボットの開発と実用化は、家族の介護負担を軽くし、少子化の阻害要因の一つを取り除くことにつながります。

さらに、AIとロボットによる生産性向上は、労働時間の短縮や柔軟な勤務体制の実現を可能にし、子育てと仕事の両立を後押しするでしょう。少子化は単に経済対策だけで解決できる問題ではないですが、技術革新を活用することは、その一因である子育て負担感の軽減に大いに資する重要な選択肢です。

AIやロボットを少子化対策として活用する取り組みは、すでに日本各地で始まっています。

具体的な事例としては、以下のようなものが挙げられます。
  • 東京大学では、子どもの状況をセンサーで検知し、異常があれば保護者に通知するAI搭載の乳幼児監視ロボットを開発しており、これは夜間の見守りを支援します。
  • 産業技術総合研究所は、掃除や洗濯を自動で行う家事支援ロボットの研究開発を進めています。2021年には実証実験を行いました。
  • 介護現場では、移乗支援ロボットの導入が進みつつあります。寝たきりの高齢者をベッドから車いすへ移す際の重労働を軽減しています。
  • 自動運転技術の発展により、移動支援ロボットの実用化が期待されています。これにより外出時の介護負担が減ると考えられます。
  • 製造業などで産業用ロボットが活用され、省人化が進みつつあります。これによる労働時間短縮が仕事と子育ての両立を後押ししています。
このように、各分野で少子化対策としてのAI・ロボット技術の先進的な取り組みが始まっており、今後ますますその動きが加速することが期待されます。

AI・ロボット化で家事に余裕ができた女性 AI生成画像

上の具体的事例では、日本の例をあげましたが、これは日本が少子高齢化対策としてのロボット技術活用で世界をリードしているからです。

なぜ日本がリードしているかといえば、日本が抱える少子高齢化が世界的にも顕著であることに加え、ロボット技術大国である日本が少子高齢化を喫緊の課題と位置づけ、政府主導のもと研究機関や企業においてロボットの実用化に向けた開発が活発化していることによります。

具体的には、子育てや介護の負担軽減を目指した育児支援ロボットや介護支援ロボットの研究開発が政策的に推進されており、すでに実証実験など実用化に向けた具体的な取り組みが進展しています。日本が抱える少子高齢化の現状に鑑み、ロボット技術の最大限の活用は喫緊の課題であり、日本の取り組みは世界のモデルとして先導的な役割を果たすことが期待されます。

ただ、世界のモデルになるためには、政府としては、もっと予算を増やすべきです。その根拠として以下の表を掲載します。

ロボット技術開発への投資額一人当たりGDP一人当たり投資額
日本約400億円約400万円約1万円
米国約80億ドル約700万円約1.1万円
EU約70億ユーロ約500万円約1.4万円

この表は、以下の情報源からデータを取得してまとめたものです。
  • 日本:

    • 経済産業省
    • 厚生労働省
    • 内閣府
  • 米国:

    • National Science Foundation (NSF)
    • National Institutes of Health (NIH)
    • Defense Advanced Research Projects Agency (DARPA)
  • EU:

    • European Commission
    • European Regional Development Fund (ERDF)

  • 一人当たりGDPは、国際通貨基金(IMF)のデータに基づいています。

この表は、あくまでロボット技術に対する投資であり、その投資のうちどれだけが、少子化対策に用いられているかまでは、示すものではありません。

しかし、現在のロボット技術には当然のことながら、AI技術も含まれていますし、すべてのロボット技術は、少子化対策に転用可能です。そう考えると、日本はもっとAI・ロボットに投資すべきです。できれぱ、少なくともも欧米の数倍、できれば桁違いの投資をすべきです。

投資というと、すぐに増税という昨今の風潮は廃して、長期にわたって必要で大きなリターンがみこめる、AI・ロボット化への投資は、国債で賄うべきです。多くの人が、投資にはリターンがあることを忘れ、投資した分がこの世の中から消えてしまうような考えは捨てるべきです。

それと政府による投資というという、米国やEUではまずは減税というのが普通ですが、日本はでは最初から最後まで補助金というのがほとんどです。これは「公金チューチュー」や「中抜き」を助長します。

少子化対策のために、AI・ロボットに投資することにより生産効率はあがり、一人当たり生産性もあがり、経済も上向くことになります。

米国やEUなどのように、減税を実行して、多くのロボット産業などを優遇し、その中で誰もが認めるような先進的な企業がでてきたら、補助金を提供するなどの方式にすべきです。

最初から最後まで補助金一辺倒ということでは、たとえ「公金チューチュー」や「中抜き」がなかったにしても、役人にはこれから伸びていく技術なとを選択する能力など全くないので、最初から無駄な投資ということになりかねません。

新技術によるイノベーションなどは千に三つといわれるくらい、ヒットする率は低いです。であれば、当初は減税などで支援する方法は最も効率的です。その後、誰もが認めるようなところに、補助金を提供するというような方式が望ましいです。

日本としては、AI・ロボット化で少子化を乗り切るという戦略を強力に打ち出し、世界のモデルになることを本気で追求すべきです。

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