ウワサの“VAIO New Mobile”がついに登場
| VAIO type P(VGN-P70H/R・G・W) |
CPU | Atom Z520/1.33GHz |
メモリ | 2GバイトDDR2(オンボード) |
HDD | 60Gバイト |
ディスプレイ | 8インチウルトラワイド(1600×768ピクセル) |
テレビ機能 | ワンセグチューナー(VGN-P80H/W除く) |
無線LAN | IEEE 801.11b/g、nドラフト準拠 |
インタフェース | USB2.0×2、メモリースティックDuoスロット、SDメモリーカードスロット(SDHC対応) |
カメラ | 有効31万画素 |
キーボード | ピッチ約16.5ミリ、ストローク約1.2ミリ、86キー |
ポインティングデバイス | スティック式 |
バッテリー駆動時間 | 付属標準リチウムイオンポリマーバッテリー約4.5時間(別売り大容量バッテリー約9時間) |
サイズ | 245(幅)×120(奥行き)×19.8(厚さ)ミリ |
重さ | 約634グラム(標準バッテリー装着時) |
カラー | ガーネットレッド(R)、ペリドットグリーン(G)、クリスタルホワイト(W) |
価格 | オープン(実売予想価格は10万円前後 |
VAIO type PはワイヤレスWANもしくはワンセグ機能を標準搭載した店頭販売モデルが10万円前後、仕様をカスタマイズできるソニースタイル直販のVAIOオーナーメードモデルが7万9800円からだ 新春早々、ソニーからビッグニュースが飛び込んできた。昨年末からVAIOのホームページにティーザー広告(予告広告)が掲載され、さまざまな憶測が飛び交っていたVAIOの新しいモバイルPCが、ついにそのベールを脱いだのだ。
1月8日に正体が明らかにされた新製品とは、ソニー初のAtom搭載ミニノートPC「VAIO type P」。これまでAtom搭載の低価格PCは数多く登場しているが、VAIO type Pでは少し価格が高くなる代わりにNetbookとは違うプラットフォームを使用することで、ほかでは味わえない価値を数多く提供するという、ソニーらしい戦略が練られている。
今回は1月16日の発売を前に、VAIO type Pの試作機を入手できたので、既存のNetbookとも比較しつつ、その実力をじっくりと検証していこう。なお、検証した機体はいずれも試作機なので、実 際の製品とは異なる場合があることをあらかじめお断りしておく。製品概要と分解記事は以下の囲み内の記事を参照してほしい。
プラットフォームの選択が運命の分かれ目
VAIO type Pを語るうえで重要なポイントとなるのが、Menlowの開発コード名で知られるMID(Mobile Internet Device)/UMPC向けプラットフォームの採用だ。
CPUは、Netbook向けの開発コード名DiamondvilleことAtom N270(1.6GHz)ではなく、より小型化と省電力に注力した開発コード名SilverthorneことAtom Z520(1.33GHz)/Z530(1.6GHz)/Z540(1.86GHz)を搭載する。
チップセットについても、2チップで構成されるNetbook向けのIntel 945GSE Expressとは異なり、1チップ構成のIntel System Controller Hub(SCH) US15Wだ。さらには、チップセットに統合されるグラフィックス機能も945GSEのIntel GMA 950に対して、PowerVRをベースとしたIntel GMA 500になる。Intel GMA 500はHD映像のハードウェアデコードによる再生支援機能を持つが、3Dグラフィックスの性能は低い。
このように、VAIO type PはAtom搭載とはいえ、Netbookとは似て非なる製品だ。周知の通り、Netbookではインテルとマイクロソフトが安価にAtom N270(1.6GHz)やWindows XP Home Editionを供給するのと引き替えに、液晶ディスプレイの解像度が最大1024×600ドットにとどまるなどの基本スペックに関する制約を受けること になる。それによって、メーカーは低価格でNetbookを販売できるメリットが得られる半面、競合製品にスペックで差を付けることが難しくなるデメリッ トも抱えてしまう。
そこでソニーは少々割高になるのを承知で、こうした制約を受けず、メーカーが自由に製品を開発しやすいMenlowを選択したというわけだ。この 選択により、Netbookでは実現が困難なレベルのコンパクトボディや、1024×600ドットを大きく上回る高解像度ディスプレイの搭載を可能として いる点に注目してほしい。一方で、パフォーマンス面はNetbookに比べて不利になる部分も少なくないが、その検証結果は後編で紹介する。
Netbookではなく“ポケットスタイルPC”という新提案
さて、VAIO type Pの製品コンセプトは、高機能化が進むケータイとともに手軽に持ち出してリッチなインターネット環境が楽しめる“ポケットスタイルPC”というもの。ソ ニーは、VAIO type Pが既存のNetbookと同一視されないように、この造語を前面に押し出したプロモーションを行っている。ちなみに「P」の文字には、Private、 Personal、Pocketable、Premiumといった意味を込めたという。
昨今は携帯電話が普及し、誰でも外出先で手軽にメールやWebコンテンツが利用できるようになった。また、より高度な機能を求める向きにはスマー トフォンといった選択肢もある。このように進化したケータイがPCに近づいていく中で、PCを携帯利用してもらうためにソニーが考えたのは、薄さや軽さ、 スタミナに配慮しながらも、PCの強みである「キー入力のしやすさ」と「情報表示能力の高さ」を重視するという方針だ。
ソニーは男女がジーンズのポケットから颯爽(さっそう)とVAIO type Pを取り出すイメージ写真を使って、ポケットスタイルPCという新コンセプトをアピールしている。もちろん、実際にはボディの幅があるため、ジーンズのポ ケットに入れるのは難しいし、仮に入ったとしても耐久性の面からおすすめできない ボディの設置面積ギリギリまで使ってキーボードを敷き詰めた“ジャストKeyboardサイズ”のボディを採用 こうしてイチから設計されたのが、ソニーが“ジャストKeyboardサイズ”と呼ぶ横長のボディデザインだ。キーボードのサイズを十分確保した うえで、それ以外のスペースは極力削っており、本体の一面にキーボードが敷き詰められている。現状でMenlowを用いたWindows搭載PCとして は、デルの「Inspiron Mini 12」、富士通の「FMV-BIBLO LOOX U」、ウィルコムの「WILLCOM D4」が挙げられるが、そのどれとも違った個性的なデザインだ。
パームレスト部がばっさりと省かれ、ポインティングデバイスにスティック型を採用したスタイルは、1998年に投入された名機「VAIO PCG-C1」 の復活を思わせる。ただ、ボディの薄さと軽さはPCG-C1の時代からぐんと進化した。本体サイズは厚さが19.8ミリの薄型で、横幅は245ミリ、奥行 きは120ミリと、ダイレクトメールなどに多いA4用紙が3つ折りで入る長形3号の定形サイズ封筒(235×120ミリ)と同程度の設置面積におさってい る。ティーザー広告のイメージ画像に使われた小さな封筒は、ボディサイズを表現していたのだ。
コンパクトなサイズに加えて、ボディの前面から背面までが19.8ミリ厚で統一されたフラットボディは、バッグの中にもキレイにしまえる。側面は 角を丸めた「カプセルシェイプ」になっていることもあり、小脇に抱えたときも手によくなじむ印象だ。ソニーはVAIO type Pの開発にあたり、キーボードの使い勝手や持ちやすさなどを最適なバランスに保てるように、数多くのモックアップを作ってデザインを磨き上げていったそう だが、確かに絶妙なサイズ感と思う。
重量は最小構成で約588グラム、バッテリー駆動時間は公称約4.5時間
重量については、ソニースタイル直販のVAIOオーナーメードモデルにおける最軽量の構成で約588グラム、店頭販売のワンセグモデルで約634グラム、店頭販売のワイヤレスWANモデルで約636グラムと非常に軽い(製品ラインアップの詳細はこちらの記事を参照)。感覚としては、500ミリリットルのペットボトルよりちょっと重い程度で、長時間持ち歩いても苦にならず、携帯性は優秀といえる。
ここまで小型かつ軽量のボディを実現できたのは、やはりMenlowの恩恵が大きい。Menlowはプラットフォーム全体の発熱量が小さいため、 ファンレス構造によってパーツ点数を減らして小型化を推し進めつつ、静粛な操作環境を提供しているのも魅力だ。冷却ファンがないことでCPUやチップセッ トの熱はボディ全体で放熱するため、ボディは発熱しやすくなっているが、温度の検証は後編で行う。
薄型軽量で知られるASUSのNetbook「Eee PC S101」と、横長ボディを用いた日本ヒューレット・パッカードのNetbook「HP Mini 1000」と並べてみた。Eee PC S101は本体サイズが264(幅)×180.5(奥行き)×18~25(高さ)ミリで重量が約1.06キロ、HP Mini 1000は本体サイズが261.7(幅)×166.7(奥行き)×25.9(高さ)ミリで重量が約1.1キロだ。どちらも小型軽量が身上だが、VAIO type Pはさらにコンパクトなボディに仕上がっている 底面に装着するバッテリーは本体の厚さからはみ出さないスリムな形状になっている。ACアダプタは突起部を除くサイズが36(幅)×76.4(奥行き)×25.5(高さ)ミリ、ACケーブルも含む重量は実測値で約154グラムと、本体に負けず劣らず小型軽量だ これだけ本体が小型軽量だと心配になるのがバッテリー容量だが、その点も考慮されている。バッテリーは本体を薄く仕上げるためにリチウムイオンポ リマーを採用。容量は標準バッテリーが7.4ボルト 2100mAh(重量約145グラム)、別売のバッテリーパックLが7.4ボルト 4200mAh(重量約263グラム)だ。
店頭販売モデルの場合、標準バッテリーで約4.5時間、バッテリーパックL装着時で約9時間の連続駆動をうたっており、ここにも低消費電力のMenlowが生かされている(実際のバッテリー駆動時間の検証は後編)。
バッテリーパックLを装着すると、本体後部の厚さが約11ミリ増え、重さが約118グラム加算されるが、もともと薄くて軽いため、大容量バッテ リーをつけた途端に携帯性が大きく損なわれてしまった、というような心配はない。バッテリーパックLを付けても、重量はせいぜい700グラム強で済む。
付属のACアダプタも小型軽量で、コンセントに直接装着できるウォールマウントプラグアダプタも用意されている。スタンバイ/休止状態/電源オフ時には急速充電が可能なのもうれしい。
天板から底面までこだわった外装はネジが1本も見えない
低価格帯のミニノートPCとはいえ、ボディの形状だけでなく、外装にも手を抜いていないのはさすがだ。本体のカラーは天然石をイメージした4色を 用意。店頭販売向けモデルはクリスタルホワイト、ガーネットレッド、ペリドットグリーンと落ち着いた配色の3色展開(ワイヤレスWANモデルはクリスタル ホワイトのみ)で、VAIOオーナーメードモデルでは限定色のオニキスブラックも選べる。どのカラーを選んでもキーボード面はシルバーだ。
マグネシウム合金製の天板は、手作業による研磨で仕上げるパール入りの多層塗装を用いており、光沢感のある表面は光の当たる加減で色の深みや細か いパールの照り具合など表情が変わるのが面白い。ボトムカバーの素材は樹脂製だが、天板と同様の品のある光沢塗装で見栄えがする。スティック型ポインティ ングデバイスのキャップとデスクトップの壁紙も、カラーごとに異なるものが付いてくるのは心憎い演出だ。
デザインへのこだわりは底面にもおよび、不自然な突起やスリットなどが一切ないことに加えて、ネジが1本も表に出ていないのには驚かされる。ここ まで底面が美しいVAIOノートはおそらく初めてだろう。光沢塗装により指紋が付着しやすいのは難点だが、いかにも低価格ミニノートPCという安っぽさは 皆無で、この製品について知らない人が見たら、もっと高級なモバイルノートPCに映っても不思議ではない。
光沢塗装を採用した4色のカラーバリエーション。底面にもソニーのロゴを配置し、ネジをすべて隠すなど、外装に対する力の入れ方は相当なものだ 液晶ディスプレイ部はLEDバックライトを用いたスリムな作りだが、剛性感がある 堅牢性に関しては強度を示す数値などが公表されているわけではないが、ほかのVAIOノートと同様に天板加圧などの耐久テストを一通り実施し、社 内水準はクリアしたという。実際、天板やボディがたわむようなことはなく、全体的にしっかりした作りだ。VAIOの上位モバイルノートPCは液晶ディスプ レイを極薄に仕上げているが、VAIO type Pの液晶ディスプレイ部は厚みが約5ミリあり、開閉時にゆがまないのは安心感がある。
また、液晶ディスプレイ部は軽い力で開閉できるうえ、閉じた状態と開いた状態ではしっかりと固定されるように、チルト角度によってヒンジの固さが 異なる可変トルクヒンジを採用している。具体的には液晶の開け始めは固く、少し開けると緩くなり、90度近くまで上げるとまた固くなって液晶ディスプレイ の角度を微調整しやすくなる仕組みだ。これにより、液晶ディスプレイ部を閉じる場合、ピタリとキーボード面に吸着するため、カバンの中で不意に開いてしま うようなトラブルは少ないだろう。
小型軽量ボディながら入力しやすいキーボードは魅力
VAIOおなじみのアイソレーションキーボードと、スティック型ポインティングデバイスを採用。クリックボタンの右にはプログラマブルボタンを2つ備えている キーボードを重視して設計したというだけあって、コンパクトボディの割にキーボードサイズには余裕がある。キーボードの形状は、隣接するキーをミスタイプしにくいように、キーとキーの間に3ミリ程度のスペースを設けた日本語86キーのアイソレーションキーボードだ。
主要キーのキーピッチは約16.5ミリとなっており、実際にキーのサイズを計測したところ、主要キーは約13.5×12ミリ、最上段のキーは約 11×9ミリ、スペースバーは約39.5ミリだった。6段配列のキーレイアウトは「半角/全角」がEscの右にある点を除けばクセがなく、変則的なキー ピッチになっているのはEnterの周辺と最下段のキーのみだ。
キーボードユニットは格子状の穴が開いたトップカバーに接着されているため、強めに押してもキーボード全体がたわんだり、キートップがぐらつくこ とはなく、底つき感もある。キーストロークは約1.2ミリと非常に浅い。軽い力で入力できるが、クリック感が乏しいようなことはなく、押している感覚が あって数値の印象より打ちやすい。キーの入力音が小さいため、静粛な場所での利用もしやすいだろう。
直販モデルで選択できる英字配列キーボードは、キー数が少ないため、スペースバーが長くなり、変則的なキーピッチがさらに減る キーがフラットな形状かつツルツルした塗装なので、ホームポジションに指を置いたときの座りは少々悪いが、キー間隔を離した設計も奏功し、ミスタイプは少なくて済み、このサイズのミニノートPCとしては確かにタッチタイピングがかなりしやすいといえる。
ただし、スペースバーのすぐ下に、クリックボタン上部の段差があるため、長時間の文章入力などでは、スペースバーを押すとこの段差に指の側面が当 たるのが少し気になった(スペースバーを押そうとして、左右ボタンを押してしまうようなことはないが)。スペースバーの短さが不満ならば、VAIOオー ナーメードモデルで選択できる英字配列キーボードを選ぶのも手だ。
ポインティングデバイスはスティック型で、3つのクリックボタンを備えている。タッチパッドと比べて評価が分かれるポインティングデバイスだが、 最小限の指の動きで操作できることから疲れにくく、パワーユーザーには愛好家が多い。個人的にもタッチパッドよりスティックのほうが好みだ。スティックの せいで、G、H、Bのキーが削られているが、タイピングで困ることはなかった。
スティックの感度は問題なく、ボタンのクリック感もしっかりしていて使いやすいが、初期状態でオンになっているプレスセレクト機能(スティックを 押すことでクリックの動作になる)の感度が高めのようで、マウスポインターをちょっと動かすつもりが、あらぬところをクリックしてしまうことが多々あっ た。この機能は感度を調整するか、オフにしたほうが無難だろう。中央のボタンはスティックと組み合わせてスクロール操作に利用できるほか、別の機能も割り 当てられる。
1600×768ドット表示の高精細8型ワイド液晶を独自開発
1600×768ドット表示の8型ワイド液晶ディスプレイはXGA(1024×768ドット)を表示しても、横にこれだけ表示領域が余る 入力しやすいキーボード以上にVAIO type Pの特徴といえるのが、Netbookをはるかに超える高解像度のワイド液晶ディスプレイだ。「ウルトラワイド液晶」とソニーが呼ぶ、この8型ワイド液晶 ディスプレイは、1600×768ドット(ソニーはUWXGAと呼称)とかなり横長の高解像度表示が行える。アスペクト比は16:7.68となり、 16:9映像を全画面表示すると、画面の左右に13ミリ程度黒帯が出るほどディスプレイは横に長い。画面解像度が1024×600ドットにとどまる Netbookと比較すると、解像度は実に2倍だ。
もっとも、画面の表示領域は約182×88ミリと広くないため、1600×768ドットの表示はドットピッチが約0.114ミリと非常に狭く、ア イコンや文字がかなり小さく表示される点は注意が必要になる。FMV-BIBLO LOOX Uの1280×800ドット対応5.6型ワイド液晶ディスプレイ(ドットピッチは0.0945ミリ)よりは見やすいが、ここは好みが分かれるところだ。
個人的には、視聴距離が比較的近くなるヒザの上に本体を乗せた状態では、すぐに高精細表示がさほど気にならなくなったが、机上に置いて視聴距離が 通常のノートPC並みに離れると、長時間の作業では表示の細かさに目がチカチカして疲れやすいように感じた。細かすぎて困るほどではないので、もっと長期 間使用すれば、表示に慣れるかもしれない。VAIO type Pは本体の奥行きが120ミリと短いため、これに入るサイズの液晶パネルを搭載して縦の解像度は768ドットに決めると、必然的に極小のドットピッチに なってしまうのは仕方がない。
なお、Windows Vistaの設定でアイコンサイズやフォントサイズ(DPIスケール)を大きくすれば見やすくなるが、一部のソフトではフォントサイズの変更に対応しな かったり、メニューのレイアウトから文字がはみ出てしまうこともあり、万能ではない。この超高精細表示は一度店頭で確認してみることをおすすめする。
とはいえ、Netbook最大の懸案事項ともいえるXGA(1024×768ドット)未満の解像度の壁を越えた高解像度表示は大いに歓迎すべき で、デメリットを補って余りあると思う。クリックボタンの右には2つのプログラマブルボタンが用意されているが、初期状態では左のボタンを押すと、デスク トップ上で開いたウィンドウを画面全体に自動整列できる。例えば、Webブラウザのウィンドウを2枚開いてボタンを押せば、各ウィンドウは横800ドット ですき間なく整列するため、2つのWebサイトを並べて見比べることも容易だ。こうした芸当は、Netbookではマネできない。
表示の細かさ以外に目を向けると、液晶ディスプレイ表面はアクリルパネルで覆われた光沢タイプで、LEDバックライトを備えている。バックライト 輝度は9段階に調整でき、高輝度ではないものの、これだけ高精細(つまり、各ドットが光を通す量が少ない)の液晶パネルの割には十分明るく、薄型の液晶 ディスプレイを採用したNetbookの「Eee PC S101」などよりは高輝度だ。広色域ではないが、発色は自然でカラーバランスや階調性もまずまずといえる。
ただし、上下の視野角は狭いので、チルト角度の調整は正確に行うようにしたい。光沢仕様の画面は低反射処理が施されており、黒っぽい画面では照明や周囲が映り込むが、鏡のように自分の姿が映り込むことはないため、それほど気にならなかった。
128GバイトSSD、ワイヤレスWAN/GPS、ワンセグを搭載可能
CPUとチップセット以外の基本スペックを見ても、Netbookとは一味違う。メインメモリはIntel SCH US15Wチップセットの最大容量となる2GバイトのDDR2-533 SDRAMをオンボードで実装するため、メモリスロットはない。データストレージは、店頭販売モデルこそ1.8インチ/5ミリ厚の60Gバイト Parallel ATA接続HDD(ZIFコネクタ仕様)にとどまるが、直販モデルでは64Gバイトもしくは128GバイトのSerial ATA接続SSD(いずれもMLCタイプ)が選択できる。
Netbookでは現状で32GバイトSSDが上限なので、大容量のSSDを選べるのはありがたい。VAIO type Pは光学ドライブも冷却ファンも搭載していないため、SSDを選択することで、内部に回転体が1つもない「真のゼロスピンドル構成」となるのも物欲をそそ られる。
ただし、チップセットがSerial ATAをサポートしない関係から、HDDの接続インタフェースはParallel ATAなので、SSDはSerial ATA/Parallel ATA変換アダプタを介してマザーボード上の専用端子に接続される。したがって、HDDと比較して高速ではあるが、転送速度最大66Mバイト/秒の Parallel ATA接続が多少はボトルネックになっていると予想される(パフォーマンスの検証は後編)。VAIO type Pの内部構造に関しては、こちらの分解記事を参照してほしい。
インタフェースは2基のUSB 2.0、ヘッドフォン、専用I/Oポート、SDHC対応SDメモリーカード/MMCスロット、メモリースティックPROスロット、有効画素数31万画素の Webカメラを搭載する。USB 2.0ポートは左右に振り分けられていて使いやすい。オプションとしてVAIO type Tと同様、ノイズキャンセリングヘッドフォンが用意されている点にも注目だ(端子の仕様はVAIO type Tのノイズキャンセリングヘッドフォンとは異なる)。
ただし、本体サイズが小さいこともあって、USB 2.0ポートの数は2基にとどまり、有線LANとアナログRGB出力の端子は、専用I/Oポートに接続するオプションの変換アダプタ経由での利用となる点は注意してほしい。
もっとも、ネットワーク機能はIEEE802.11a/b/g/nの無線LAN(11nはドラフト準拠)とBluetooth 2.1+EDRを備えており、不満はない。さらに本体に内蔵するデバイスとして、ワイヤレスWAN機能もしくはワンセグチューナーが選択できる。ワイヤレ スWAN機能はNTTドコモのFOMA HIGH-SPEED(下り最大7.2Mbps)に対応し、GPS機能も利用可能になるのがポイントだ。GPS機能があれば、後編で取り上げる専用ソフト をより便利に使える。
OSはWindows Vista Home Basicが基本でインスタントモードも装備
OSはWindows Aeroに対応せず、Windows Media Centerなどの機能がない32ビット版Windows Vista Home Basic(SP1)がプリインストールされる。直販モデルでは32ビット版Windows Vista Business(SP1)/Home Premium(SP1)も選択可能だが、VAIO type PではWindows Aeroをオンにするとパフォーマンスが低下するため、これが目的でOSをアップグレードするのはおすすめできない(ソニーも公式にWindows Aeroは使用不可としている)。
Linuxベースで動作するインスタントモードはクロスメディアバーを採用 Atom Z500番台のCPUを採用したVAIO type Pはパフォーマンス面では不利になり、OSの起動に時間がかかるため、電源オフの状態からWindowsよりも高速に起動が可能なLinuxベースのイン スタントモードが用意されているのはユニークだ。このインスタントモードは電源オフや休止状態の場合に、クリックボタン右に配置されたプログラマブルボタ ンを押すことで起動する。ソニーのAV機器に幅広く採用されているクロスメディアバー(XMB)のインタフェースを装備しており、ここでも見た目と操作性 にこだわっている。
Windowsのパブリックフォルダ内にある写真や動画、音楽の再生、Webブラウザ(Firefox)、Skypeなどの機能を利用でき、なか なか便利ではあるが、インスタントモードではWindows Vistaのような高度な省電力機能がないため、バッテリー駆動時間が短くなりがちな点は覚えておきたい。また、未使用時にWindows Vistaをスリープ状態にしておけば数秒で復帰できるため、個人的にインスタントモードを使う機会はほとんどなかった。
以上、VAIO type Pのハードウェア面の特徴と使い勝手を中心にお届けした。既存のNetbookとは違うコンセプトで作られた新タイプの低価格ミニノートPCとして、多い に注目したい製品だ。後編では、携帯利用時に威力を発揮するVAIO type Pならではのアプリケーションや、Menlowの採用で気になるパフォーマンス、バッテリー駆動時間、ボディの発熱などに迫る。
果たして売れるか?
さて、技術的に優れていることなどはわかりました。特に、Atomを採用したことは先進的です。「Netbookではインテルとマイクロソフトが安価にAtom N270(1.6GHz)やWindows XP Home Editionを供給するのと引き替えに、液晶ディスプレイの解像度が最大1024×600ドットにとどまるなどの基本スペックに関する制約を受けること になる。それによって、メーカーは低価格でNetbookを販売できるメリットが得られる半面、競合製品にスペックで差を付けることが難しくなるデメリッ トも抱えてしまう」としていますが、わすが10インチ程度の画面では、解像度が低くても問題にならないし、解像度が高くても、画面が小さいため、そのよさを確認するまでに至らないのではないかと思います。それよりも、安くするためであれば、解像度は多少犠牲にしてもかまわないと思います。
「“ポケットスタイルPC”というもの。ソニーは、VAIO type Pが既存のNetbookと同一視されないように、この造語を前面に押し出したプロモーションを行っている。ちなみに「P」の文字には、Private、 Personal、Pocketable、Premiumといった意味を込めたという。」として、ポケットに入るということを強調していましが、プロモーション用の画像を見ても、ポケットにすっぽり収まらないのは明らかですね。これは、ソニーが最初のトランジスタ・ラジオを開発して、テレビでCMを流すときに、背広のポケットに入ることを強調したにもかかわらず、背広のポケットには入らず、仕方ないので、大きめのポケットの背広を特注してコマーシャルどりをしたという話を彷彿とさせます。
「重量については、ソニースタイル直販のVAIOオーナーメードモデルにおける最軽量の構成で約588グラム、店頭販売のワンセグモデルで約634グラム、店頭販売のワイヤレスWANモデルで約636グラムと非常に軽い(製品ラインアップの詳細はこちらの記事を参照)。感覚としては、500ミリリットルのペットボトルよりちょっと重い程度で、長時間持ち歩いても苦にならず、携帯性は優秀といえる。」とあるように、重量に関してはかなり軽くこれはすばらしいことだと思います。
「キーボードを重視して設計したというだけあって、コンパクトボディの割にキーボードサイズには余裕がある。キーボードの形状は、隣接するキーをミスタイプしにくいように、キーとキーの間に3ミリ程度のスペースを設けた日本語86キーのアイソレーションキーボードだ」とあり、キーボードはかなり使いやすそうです。思い切って、横長のスタイルにしたので、相対的に小さくてもキーボードが打ちやすくなったのだと思います。他の横長でないノートブックなどだと、キーボードが小さすぎて、打つのに一苦労します。
さて、最近アメリカのあるメーカーでは200ドルパソコンを発表しました。また、ノートブックやネットブックの実勢価格、安いものでは3万円台からになっています。現在までのところ、これらの製品には、ウィンドウズが搭載されているものが多いですが、リナックスのOSを搭載しているものでは、価格が最初から3万円台のものもあります。さて、これらと、ソニーのバイオ、どうなるでしょうか?
もし、以前このブログに書いたように、貧困層ビジネスを盛んにするなら、やはり3万~4万できたら、2万円台の価格帯が良いと思います。徹底的に安いながらも、基本性能は落とさないという姿勢を貫く必要があると思います。さらには、貧困層にとってよりよい商品の開発という姿勢が必要です。
これは、日本でいうと、大昔の二股ソケットのような感覚です。二股ソケットといっても今はほとんど死語に近いですが、大昔に日本で、今でいえば、パナソニックが作ったソケットで、なんと二つの電球を差し込むことができました。真下を照らすソケットほかに、45度ほど傾斜をつけたソケットをもうひとつつけ、縫い物をするお母さんの手元を照らす電球と、そのそばで勉強する子供の手元を照らす電球のためのソケットということで、その当時の日本の家庭で便利なように作成されたものです。その当時は爆発的に売れました。今では、二股ソケットなどみたこともありません。もう、日本の家庭事情も変わってきたということだと思います。
これは、たまたま電球のことを例としてあげだのですが、貧困層ビジネスのためには、こうした工夫が必要だと思います。ソニーの工夫はこうした工夫ではないと思います。やはり先進国仕様なのだと思います。
さて、ミニノートや、ネットブックなどかなり廉価なものと、ソニーのこの機種のように倍くらいの値段、一体どうなっていくのでしょうか?私は、多少基本性能などが落ちても、結局販売台数などからいって、従来路線、もしくはもっとコストパフォーマンスの高い機種を販売するほうが売れると思います。でも、利幅は相当少なくなると思います。
ただし、もうこうなると、いわゆる営利企業の事業とはいえなくなってくると思いますので、たとえば、パソコンを所有していない人が3万円台のミニノートもしくは、ネットブックなどを購入する場合は、政府から半分程度の支援金が出るとか、かなり有利な融資を受けられるとか、などすると良いと思います。これによって、より多くの人にパソコンがいきわたるようにするのです。
高技術水準の先進国が狙うべき事業は、こうして、パソコンが行きわたった後ではないでしょうか?ミニノート、ネットブックなどはもう、台湾、韓国、中国などにやってもらうべきだと思います。普及した後で、先進国の高い技術などを用いて、さまざまなイノベーションを起こして現地の人々の生活を豊かにしていくことこそ、ソニーやパナソニックなどの先進国の役割ではないかと思います。
おそらく、ミニノートなどが多くの人に広まっただけでは、単に情報流通がよくなるだけで、社会変革などひきおこされないでしょう。やはり、先進国が培ってきた、社会のあり方や、高い技術などが、貧困層の人々にとって本当に役に立ったり、豊かにできることが多いと思います。貧困層の人々も豊かになれば、おのずと先進国にとっても良いことになると思います。それから、最近では、アメリカはもとより、日本でもいわゆる派遣労働などで、貧困層が注目されるようになってきました。先進国の中ですら、貧困層ビジネスを起こして、この人たちが生活しやすいようにしたり、できれば、政府やNPOの力を借りて、自立できるように支援するビジネスなど必要になってくると思います。
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