2017年2月4日土曜日

「ニュース女子」騒動と朝日社説 慰安婦の「大誤報」反省せず、現在進行形で海外にたれ流し―【私の論評】「ニュース女子」を巡って大公開討論をすべき(゚д゚)!


朝日新聞の社説
朝日新聞は1月28日の社説で、東京MXテレビで放送しているDHCシアター「ニュース女子」の沖縄取材を批判した。社説は冒頭から飛ばしている。

《事実に基づかず、特定の人々への差別と偏見を生むような番組をテレビでたれ流す。あってはならないことが起きた。》

朝日に、東京MXテレビやDHCシアターを批判する資格がないことは後ほど説明する。引き続き、社説を引用する。

《反対運動を支援してきた市民団体「のりこえねっと」の辛淑玉(シンスゴ)さんは、番組で「運動を職業的に行っている」などと中傷されたとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会に人権侵害を申し立てた。》

沖縄・高江のヘリパッド工事は、北部訓練場の7543ヘクタールのうち、4010ヘクタールを返還する目的で行われた。日米双方が希望する「基地の返還」に必要な工事だった。それを日米いずれの国籍も持たない人々が問題視していた。疑問を持つメディアがあることも理解できる。

動画サイト「ユーチューブ」にアップされた動画を見ると、辛氏は反対運動に在日朝鮮人らが含まれていることを認めていた。ヘリコプターで高江に物資を運ばれることに対し、「みんなで風船飛ばそう」「グライダー飛ばしたり」などと語っていた。ヘリが墜落したらどうするのか。

高江や辺野古に住む住民の中には、県外者による過激な反対運動を迷惑だと訴える人もいる。また、辛氏が共同代表を務める「のりこえねっと」が「市民特派員」を募集する際、往復の飛行機代相当の5万円を支給すると告知していたことは事実である。
さて、朝日社説の締めである。

《対立をあおり、人々の間に分断をもたらすことに放送を使う行いは、厳しく批判されなければならない。》

オーストラリアで慰安婦像設置を阻止した、住民組織AJCNの山岡鉄秀代表の調査を受けて、私も1月26日付の朝日の英字サイトを確認した。

朝日は、日本語では単に「慰安婦」と書く部分を、英語では「women who were forced to provide sex to Japanese troops」(日本兵にセックスを強制された女性)と表現していた。

慰安婦報道の「大誤報」を反省しておらず、「事実に基づかず、日本人への差別と偏見を生むような英語記事」を、現在進行形で海外にたれ流しているのではないか。私は、朝日こそが「あってはならない新聞」として、厳しく批判されなければならないと思う。

ケント・ギルバート

【私の論評】「ニュース女子」を巡って大公開討論をすべき(゚д゚)!

「ニュース女子」に関する自分自身の論評をこのブログにもいずれ掲載しなければならないとは思っていたのですが、そもそも私からすると、辛淑玉らの訴えは底が見えていて、あまりに下らなく、これについて論評すること自体が考えただけで疲れをもよおすので、今日まで掲載しませんでした。しかし、本日はケント・ギルバート氏もブログ冒頭のような記事を掲載していることから、このブログでも紹介することにしました。

ブログ冒頭に掲載されている、「ニュース女子」の沖縄取材番組の動画を以下に掲載します。


この番組は、タテマエや綺麗ごとは一切なし!本音だらけのニュースショー!!今話題のニュースを女性とともに考え、面白くわかりやすく解説します。大人の社交界型ニューストーク番組です。

この動画は以下の様な構成になっています。
①「沖縄基地反対派はいま」
②「2017年日本の政治・経済はどう動くのか」
③「ニュース女子反省会」
MC:長谷川幸洋(東京中日新聞論説副主幹)
吉木りさ(グラビアアイドル)
武田邦彦(中部大学教授)
藤井厳喜(国際政治学者)
須田慎一郎(経済ジャーナリスト)
井上和彦(軍事ジャーナリスト)
岸博幸(元経済産業相官僚)
上念司(経済評論家)
杉原杏璃(グラビアアイドル)
脊山麻理子(フリーアナウンサー)
八田亜矢子(タレント)
REINA(タレント)

私が視聴した限りにおいては、特に酷い内容とは思えません。これを批判するというのなら、報道どころか、朝日新聞が「事実に基づかず、特定の人々への差別と偏見を生むような番組」と報道するのは、言論の自由への挑戦としかいえません。

さて、先月27日、東京・永田町の衆院第2議員会館で記者会見した辛淑玉(シンスゴ)はこの番組による米軍ヘリパッド建設に関する放送内容を「うそと妄想とデマで固められている」と断罪しました。自らとともに侮蔑(ぶべつ)された沖縄県民の思いをおもんぱかり、悔しさと憤りをにじませたそうです。代理人の弁護士は法務省の人権擁護機関への救済申し立てを予定していることも明らかにしました。

その模様の動画を以下に掲載します。



しかし、この訴え、かなりの部分が不当であることが以下の動画をご覧いただくと良くご理解いただけるものと思います。私は、自身でこれを記述しようとも思ったのですが、あまりにくだらなくて、その元気が出ないので、この動画を掲載することにしました。



ちなみに、辛淑玉さんは「ニュース女子」報道が偏向しているとして、BPO に訴えたのですが、BPO 側から返事がかえってきたとし、以下のようにツイートしています。

BPOには、いっとき香山リカさんが放送倫理検証委員会をしていたこともあり、偏りがあるのではないかと危惧していました。意外とまともな対応をしています。あの程度の番組であれば、何も辛淑玉さんのいうように、酷い内容でもありませんし、どこまでも努力を強いられるなどということもないです。
ちなみに、私はなぜか辛淑玉さんには、ツイートでブロックされています。この記事を書くために、辛淑玉さんのツイートを閲覧しようとしたのですが、ブロックされていることを今日はじめて知りました。私自身は、辛淑玉に対してTwitterや、その他のメディアでも一切批判したことなどありません。

したことといえば、辛淑玉さんに批判的なツイートをリツイートしたことはあったかもしれません。ただし、それも記憶に定かではありません。

にもかかわらず、ブロックされたのはなぜかと考えてみたところ、以下のような記事をブログに掲載したことがあったことを思い出しました。
【中国の本性】翁長知事の危険な中国接近 左翼活動家や沖縄メディアが触れない南シナ海問題 ―【私の論評】沖縄左翼のゴネ得を間近で見た私の結論は、結局奴らへの対処は毅然として絶対に妥協はしないこと(゚д゚)!
米ワシントンを訪問した翁長知事
詳細は、この記事をご覧いただくもとして、この記事では東京から沖縄へ活動家として赴いていると思しき人の、ゴネ得体質を説明しました。やはり、このような記事をブログに掲載したり、日当に関することなども他の記事で掲載したので、ブロックされたのだと思います。

さて、朝日新聞が1月28日に社説で「ニュース女子」を厳しく批判する社説を掲載したことについて、ケント・ギルバート氏がTwitterで公開討論を求めています。
ケント・ギルバート氏は1月2日の「ニュース女子」について1月下旬にzakzak誌上で取り上げ、同番組に対し相次いでいる反論に疑問を呈し「私自身が現地で見たり、沖縄に住む友人たちから聞いた話とは食い違う」などと語るとともに沖縄の米軍基地を「排除したい国はどこなのか。聞く方が野暮である」と背後の勢力について匂わせるコメントでコラムを締めていました。

氏のTwitterには数多くの応援メッセージが寄せられており、朝日新聞に対して自社の社説に関する公開討論を受けるべきだとの声が相次いでいます。

この件では、この「ニュース女子」の番組で東京新聞の論説副主幹でもある長谷川幸洋氏がMCをしていたことを、東京新聞が問題だったとして、謝罪の社説を掲載しています。

以下に、その東京新聞の紙面を掲載します。


私自身は、長谷川氏のこの行動は何も問題はなかったと思います。長谷川氏も一切謝罪していません。これを謝罪する東京新聞はやはり、かなり偏向していると言わざるを得ません。

そうして、最後に、上の記事でケント・ギルパート氏は"日本語では単に「慰安婦」と書く部分を、英語では「women who were forced to provide sex to Japanese troops」(日本兵にセックスを強制された女性)と表現していた"と掲載しています。

それで、実際に朝日新聞の英文サイト "The Asahi Sinbun"で、" women who were forced to provide sex to Japanese troops"で検索をしてみたところ、12もの記事がヒットしました。

以下が、検索結果の一部です。



このような恥知らずのことをしておきながら、一方では"対立をあおり、人々の間に分断をもたらすことに放送"などと「ニュース女子」を批判するなど、あり得ないです。

やはり、ここは、朝日新聞も含めて、あの「ニュース女子」の報道を虚偽という人々と、そうではないとする人々の間で、大公開討論をすべきです。

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2017年2月3日金曜日

【痛快!テキサス親父】偏向メディアに騙されるな トランプ氏は公約を実行してるだけだゼ―【私の論評】日米保守はニューディール連合から政治の主導権を取り戻せ(゚д゚)!

【痛快!テキサス親父】偏向メディアに騙されるな トランプ氏は公約を実行してるだけだゼ

 トニー・マラーノ氏(中央)
 ハ~イ! みなさん。

19日間の日本訪問を終えて、地元・テキサスに帰ってきたぜ。今回も、たくさんの出会いがあった。67歳になって、世界で最も文化的な国である日本で、多くの新しい友人ができたことに幸せを感じる。講演会に来てくれたみなさん、運営を手伝ってくれたスタッフのみなさんに心から感謝したい。

途中で、伝統的なイルカ漁で知られる和歌山県太地町にも立ち寄った。反捕鯨団体「シー・シェパード」の連中が生放送中だったので、彼らの異常性について大声で論理的に抗議してきたぜ。

さて、日本では、ドナルド・トランプ米大統領のことが話題のようだな。大統領令や発言、突然の人事などで、米国の主要メディアも右往左往しているようだ。

トランプ氏が、中東・アフリカ7カ国からの入国を90日間禁止したことに、米国のリベラルな地域では抗議デモが行われている。

だが、考えてほしい。トランプ氏は大統領選で「米国民の安全を第一に考える」として、何度もこの措置を口にしていた。つまり公約だ。トランプ氏が大統領に当選したのだから、選挙民がこの政策を支持したことになる。彼はそれを淡々と実行しているだけだぜ。

そもそも、オバマ前大統領は2011年、イラク難民へのビザ発給を6カ月間も禁止にしたぜ。そのとき、主要メディアは無視していた。トランプ氏がその半分の暫定措置を出したら、この騒ぎだ。だれが騒いでいるのか明確だよな。

「合法性に確信が持てない」として司法省に大統領令を擁護しないよう求めたサリー・イエーツ司法長官代行が解任された。これも当然だ。国民の投票で当選した大統領による大統領令に異議を唱えたわけだから、民意に反することになる。

日本では「トランプ氏が暴走している」「米国中が反対している」と報じられているようだが、違うぜ。日本メディアの支局があるニューヨークやロサンゼルスには民主党支持者が多く、リベラルな地域だから大騒ぎだろうが、他は静かだ。そして、米国の主要メディアもほぼリベラルだ。

こうしたなか、トランプ氏は欠員があった連邦最高裁判事に、保守派として知られる連邦高裁判事のニール・ゴーサッチ氏を指名した。

いよいよ、リベラルやポリティカル・コレクトネス(過度な政治的公平性)にメチャクチャにされた、「米国のリハビリ」が始まったってことだ。型破りの方法に、民主党やマスコミは動揺しているが、トランプ氏が掲げる「米国民のための政治」に、米国のサイレントマジョリティーは大いに期待しているぜ。

親愛なるみなさんと、日本と米国に神のご加護がありますように。米国民はマスコミの偏向報道にうんざりしている。国民にツイッターで直接語りかけるトランプ氏への期待は大きいんだ。

では、また会おう!

トニー・マラーノ

【私の論評】日米保守はニューディール連合から政治の主導権を取り戻せ(゚д゚)!

トニー・マラーノ氏の考え、アメリカの保守層の代表的な意見であると考えられます。では、アメリカの保守層とはどのような人たちなのでしょうか。そもそも、私たちは、従来彼らの声をほとんど聴いてきませんでした。

それを考える上で非常に参考になる動画を以下に掲載します。


上の動画の要旨を以下に掲載します。

【ニューディール連合とは (3:00頃~)】
フランクリン・ルーズベルトが社会主義政策を大規模に推し進め、労働組合・バラマキ利権者・リベラル派官僚から成る選挙機関を作り政界を乗っ取りました。これをニューディール連合といいます。このニューディール連合から政治の主導権を取り戻すのがアメリカの保守の課題なのです。 
ニューディール連合を日本的に言うと「戦後レジーム」となります。ニューディーラーの中でも極めて落ちこぼれで、アメリカ本国で通用しないので極東アジアに左遷されたGHQなる組織によって作られたのが戦後の日本国憲法であり日本的左翼なのです。
【ポピュリズムとは(5:55頃~)】
日本で一般的に認知されているポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳され批判の対象とされます。しかしこの解釈はアメリカの左翼によって作られたものであり、保守派の定義ではもともとは中産階級の代弁者という意味です。 
「ポピュリズム」の対義語は「エスタブリッシュメント」です。 
エスタブリッシュメントは支配階級・上流階級の意味ですが、分かりやすく日本で例えるなら朝日新聞のような自称インテリ、朝日岩波文化人を指します。 
これに対してまともな国民の意見を代弁する少数の政治家を、左翼が「ポピュリスト」とレッテル貼りをしたのです。
以上のようなことが、日本では全く知られていません。さて、この動画の中でも紹介されていた、『現代アメリカ保守主義運動小史』にはこのあたりのことについて詳細に記されています。表紙の写真を以下に掲載します。



リー・エドワーズ氏(1932年生まれ、イリノイ州シカゴ生まれ)は、ヘリテージ財団のアメリカ研究のためのB.ケネス・サイモン・センターの保守派の著名な研究員です。
ブログなどでは、どうしても体系的にアメリカの保守について解決することはできません。米国の保守派の考え方の概要を知りたい方は、是非お読みになって下さい。

今のところ、アメリカの保守を正しく知るためには、この書籍が最高のものであると考えられます。残念ながら、日本で手に入るアメリカ保守に関する書籍は、翻訳したもの、そうではないものも含めて、すべてリベラル・左派等の色眼鏡を介して書かれたものばかりです。

今回なぜトランプ大統領がなぜ、誕生したのかを知るには、これらの知識は欠かすことができません。

しかし、日本のメディアはこのようなことを理解していないので、トランプ大統領の誕生を全く予測できないばかりか、米国のリベラル・左派のメデイアの報道をそのまま日本でも垂れ流しているだけです。

そもそも、日本では多くの人が、米国のリベラル・左派の考えを、米国の大勢を占める考え方であると捉えています。そうして、その中には当然のことながら、保守層の考えも含まれているものと捉えています。

しかし、それは完璧な間違いです。 おそらく、米国には人口の半分くらいの保守層が存在するものと考えられます。しかし、その声は、リベラル・左派のメディアや学界などにより、かき消され、ニュースなどを見ている限りでは、リベラル・左派の意見が世の中の大勢を占めているかのように見えたです。

アメリカ国内がこの有様ですから、アメリカ以外の他の国もこれに引きずられて、ハチャメチャになっていたというのが、今までの世界でした。

しかし、トランプ大統領登場によって、その偏向や歪みが正される可能性がでてきました。それが、上の記事でトニー・マラーノ氏が述べている「リベラルやポリティカル・コレクトネス(過度な政治的公平性)にメチャクチャにされた、「米国のリハビリ」が始まった」ということなのです。
まさに、ニューディール連合から政治の主導権を取り戻すのがアメリカの保守の課題であり、これは日本でいえば、「戦後レジーム」からの脱却なのです。

日本の「戦後レジーム」は、上にもあるように、ニューディーラーの中でも極めて落ちこぼれの連中によってもたらされたものです。

その意味では、ニューディール連合は、まさしく日米保守の敵なのです。日米の保守は、これに勝利するために、手を携えて行く必要があるのです。まさに、ニューディール連合から政治の主導権を取り戻すことこそが、日米保守の最大の課題なのです。

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2017年2月2日木曜日

トランプ氏、豪首相に暴言連発=電話会談、険悪な雰囲気―【私の論評】豪政府の尻拭い?オバマの旧悪露見(゚д゚)!


ホワイトハウス執務室でオーストラリアターンブル首相と電話会談するトランプ米大統領=1月28日
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は1日、トランプ米大統領が1月28日にオーストラリアのターンブル首相と電話会談した際、難民引き受けに関する米豪合意をめぐり激しい言葉を首相に投げつけ、険悪な雰囲気に陥ったと報じた。政敵やメディアだけでなく、意見が合わなければ同盟国の首脳にも攻撃的態度に出るトランプ氏の姿勢が表れたと言えそうだ。

 豪政府はオバマ前米政権との間で、難民認定を求め豪州へ密航後、国外の施設に収容された人々について、一部を米国へ移住させる一時的措置で合意している。同紙によると、ターンブル氏が電話会談で、トランプ政権もこの合意を守ることを確認しようとしたところ、トランプ氏は「これまでで最悪の取引だ」とこき下ろした。

 トランプ氏はさらに、豪州が「次のボストン(マラソン大会)爆弾テロ犯」を輸出しようとしていると非難。同じ28日に安倍晋三首相やプーチン・ロシア大統領らとも電話で話したことを挙げ、「この(豪首相との)電話が飛び抜けて最悪だ」と吐き捨てるように言った。1時間を予定していた電話は、25分で切り上げられたという。
 
 米政府高官はポスト紙に、豪首相とのやりとりが険悪だったと認めた上で、安倍首相らとの協議は生産的で心地良いものだったと強調した。

 ターンブル氏は30日の記者会見で、トランプ氏との電話会談で難民移送に関する合意が引き継がれることを確認したと述べた。一方、トランプ氏は1日、ツイッターに「オバマ前政権は、何千人もの不法移民を豪州から引き受けると約束した。なぜだ? このばかな取引について調べる」と投稿した。

【私の論評】豪政府の尻拭い?オバマの旧悪露見(゚д゚)!

トランプ米大統領は2日、ツイッターで、イラクやイランなどからオーストラリアに亡命を希望して密航した数百人を米国へ移住させるという米豪間の取り決めを「ばかげた合意」と評し、再検討する意向を示しました。

米紙ワシントン・ポスト(WP)はこれより先、ブログ冒頭の記事にもあるとおり、トランプ大統領が1月28日に行われたターンブル豪首相との電話会談で首相を激しく非難し、1時間の予定だった会談を25分で切り上げたと報じました。

ターンブル首相は会談について記者団に、率直かつ腹を割った話し合いだったと述べましたが、「プライベート」な会話の詳細については明らかにしませんでした。

WP紙は米国に最も近い同盟国の1つである豪の指導者との会談についてトランプ大統領が「これまでの中で最悪」と評したとも報じました。

密航者の米国への移住合意は、豪政府とオバマ前政権との間で昨年11月に結ばれたもののです。

これに関しトランプ大統領はツイッターに「これが信じられるか。オバマ政権は豪から何千人もの不法移民を引き取ることに合意した。なぜか。このばかげた合意を調査する」と投稿しました。

合意の一環として、米政府は豪政府がパプアニューギニア・マヌス島とナウルの施設に収容している最大1250人の密航者を米国に移住させ、引き換えにエルサルバドル、グァテマラ、ホンジュラスからの難民を豪に移住させることになっています。

パプアニューギニア・マヌス島にあった難民収容施設内の2段ベッド(2014年2月18日)
さて、豪政府による移民に扱いは以前から国際的な問題になっていました。

オーストラリアへの定住を求める難民認定申請者が、同国本土から遠く離れたパプアニューギニアや、太平洋の島国ナウルなどで隔離される形で収容生活を送っている現実は、15年前からオーストラリアの国内外で大きな議論となってきました。

昨年の8月、英紙ガーディアンが、以前から入手していたナウルの収容所における劣悪な環境を記した文書を公開しました。子供に対する性的虐待が日常化している現状などを報じたことによって、オーストラリア政府が難民認定申請者を自国内に入れようとしないどころか、経済援助という名目で近隣の貧しい国に難民認定申請者の収容を肩代わりさせている実態が再び議論になっていました。

ガーディアン紙が10日に報じたナウルにある難民認定者収容施設の劣悪な環境。同紙は8000ページ以上に及ぶ文書を入手し、その中で2013年5月から2015年10月までの間に施設内で2100件以上のトラブルや事件が発生していたと伝えています。


太平洋に浮かぶ島国ナウル共和国は世界で3番目に小さな国家で、約1万人が暮らしています。この小さな島国に、オーストラリアでの定住を希望する難民認定申請者が送られ、島に作られた収容施設で生活をしています。

収容所はオーストラリア移民国境警備省の委託を受けた民間企業が管理・運営を行っており、2014年に1200人を超えた収容者は、昨年の時点では460人程度にまで減少していました。

オーストラリアでは1970年代初頭まで、白人以外の移民流入を認めない、いわゆる「白豪主義」で知られていましたが、1972年に発足したホイットラム政権によって白豪主義は廃止され、オーストラリアは多文化主義を国策として掲げ、アジアからの移民にも門戸を開きました。

1990年代前半、ボートでオーストラリアに入国した難民認定申請者は年間数百人レベルだったのですが、密航業者によってインドネシアといった地域からのルートが開拓されたことで、90年代後半からボートを使った入国が急増。2001年には5500人超がオーストラリアに入国しました。

難民認定を求める申請者の急増にオーストラリア政府が対応しきれなくなり始めたことや、海上ルートでオーストラリアにやってくる難民認定申請者が事故などで命を落とす危険性、密航業者の台頭を抑える必要性など、「ボートピープル」への早急な対応を迫られた中道右派のハワード政権は2001年秋に「パシフィック・ソリューション」という対ボートピープル政策を開始しました。

この政策は難民認定申請者を乗せた船を海上で拿捕し、彼らをオーストラリア本土に立ち寄らせないまま、他国に作られた施設に収容し、そこで難民として生活させる仕組みです。

前述のナウルや、パプアニューギニアのマヌス島、オーストラリア本土から2000キロ以上離れたクリスマス島(オーストラリア領)に収容施設が作られ、難民認定申請者はオーストラリアから遠く離れたこれらの場所で新たな生活を始めることになりました。

収容施設の暴動で亡くなった青年を追悼するオーストラリアの人たち
アムネスティは2013年末にパプアニューギニアのマヌス島にある収容施設を訪問しました。収容されている人びとは口々に「まるで刑務所のようだ」と話したそうです。鍵のかかったフェンスに囲まれ、出入口には守衛が立っていました。

居住施設は過密状態で、仕切りはなく、プライバシーはまったくありませんでした。一番ひどい所では、50畳ほどの広さに61の2段ベッドが並でいました。ベッドの間隔はわずか20センチ。112人が毎日を過ごすこの建物は、まるで戦時中の格納庫のようなかまぼこ型のトタンづくりで、風は通らず、窓もありませんでした。

蒸し暑いマヌス島では極めて不快でした。トイレとシャワーの数は限られ、しかもよく壊れるそうです。当然、列をつくって並ぶはめになるのですが、待つのは炎天下です。そして着替えの支給はわずかだそうです。

こうした肉体的にも精神的にも不衛生な環境では病人が出ても不思議ではないのですが、医療の設備もスタッフも不足しています。

職員による暴力や人種差別的な中傷も起きています。2014 年2月には、あまりの劣悪さに一部が脱走を試みたことがきっかけで暴動になり、死者まで出ました。

ただし、オーストラリア政府は毎年一定数の難民受け入れを行っており、毎年1万人を超える難民にオーストラリアでの定住許可が与えられています。2015年から2016年にかけて、オーストラリア政府は当初約1万3000人の難民受け入れを予定していたのですが、シリア内戦の激化とそれが原因となった難民の増加に対応するため、難民受け入れ数を2万5000人にまで増やしています。

多くの難民船がオーストラリアに向かう途中で沈没
(2010年12月、クリスマス島沖)
オーストラリア政府がパシフィック・ソリューションの対象としているのは、船を使ってオーストラリア入国を試みる難民認定申請者で、空路でオーストラリアに入国した者は対象外となっています。

ヨーロッパのケースとは異なり、オーストラリアに陸路で入国することは物理的に不可能で、空路か海路のどちらかになります。オーストラリア政府はヨーロッパ諸国よりも入国を試みる難民認定申請者の数をより把握できており、空路でやってきた多くが審査を経て在住資格を得ていると主張しています。しかし、難民認定を受けているか否かに関係なく、船で入国を試みた者は基本的にオーストラリア本土に住むことはでません。

海上で拿捕された船に乗っている難民認定申請者は、そのままパプアニューギニアのマヌス島かナウル共和国に連行され、そこに作られた収容所に入れられるという話は先に述べた。収容所に入った難民認定申請者には、収容所で暮らすか、出港した国に戻るか、定住先を第三国に求めるかの選択肢しかありません。

 2007年12月に労働党政権が誕生すると、翌年に当時のラッド首相はパシフィック・ソリューションの廃止を発表したが、与党のエバンス移民・市民権大臣は「馬鹿げており、社会により負担がかかり、成功する見込みすらない試みだ」と批判した。

廃止後、海上ルートでオーストラリアを目指す難民認定申請者は急増。対応に頭を抱えたオーストラリアは、ギラード政権誕生後の2012年8月にマヌス 島とナウルの難民収容施設の再開を発表。ギラードの辞任を受けて再び首相に就任したラッドは、以前に示した方針を180度転換する形で、「ビザを持たずに船でオーストラリア入国を試みる難民認定申請者をオーストラリアに住まわせることは決してない」と発言していました。

ナウルの地元住民から攻撃を受けた難民。
(アムネスティ・インターナショナル提供)
マヌス島とナウルの収容施設は、それぞれ2004年と2008年に閉鎖されましたが、オーストラリア政府は緊急事態に備えて、両施設の取り壊しは行ないませんでした。ギラード政権下で2012年に収容施設が再開されると、オーストラリア政府は2012年からの4年間で両施設の維持費として約2400億円を使っており、パプアニューギニアとナウルにとっては貴重な収入源となっていました。

これに加えて、オーストラリアから両国への経済援助も行われており、それらの見返りとしてこれまで両国は難民収容の“アウトソーシング”を引き受けてきた経緯があります。

ナウルの人口は1万人足らずですが、リン鉱石の採掘事業が成功し、リン鉱石の輸出によってナウル経済は繁栄を続け、20世紀には世界で最も豊かな国の1つとして知られていました。税金も存在せず、世界でもトップクラスの社会福祉制度を設けていたナウルですが、20世紀末に国家収入の大部分を占めていたリン鉱石が枯渇すると、国内経済に混乱が発生するようになりました。

かつてはナウル国民全員をオーストラリアが受け入れする案も出されたほど、国内の景気低迷は出口の見えない状態となっており、他国からの経済援助なしでは国家が崩壊しかねない状態にあります。ナウルにとっては、収容所運営はまさに渡りに船なのです。

オーストラリア政府が現在も実施しているボートピープル収容のアウトソーシング化には人権・倫理上の問題から批判が多く、パプアニューギニアの最高裁判所は昨年4月に「マヌス島の収容施設では収容者の人権が侵害されており、非合法と判断する」との判決を下しました。

ナウルの収容所での
以上のことを知った上では、トランプ大統領がターンブル首相に苦言を呈したのはもっとなことだと考えられます。

結局のところ、オバマ前大統領は何のことはない、オーストラリア政府の不手際の尻拭いをしようとしたいうことです。

オーストラリア政府は、難民の数が増え過ぎて、国内では受け入れ不可能な程になったのですが、難民を受け入れなければ国際社会から非難されることを恐れてパシフィック・ソリューションなる姑息な手段を講じたのです。とにかく、キレイ事、事なかれ主義で体裁を繕おうとしたのです。全く無責任です。


そうして、頭のネジの緩んだオバマは、こうしたオーストラリア政府の言い分を聞いて、難民認定を求め豪州へ密航後、国外の施設に収容された人々について、一部を米国へ移住させる一時的措置で合意したのです。

そうして、これに関して、トランプ大統領は、「オバマ前政権は、何千人もの不法移民を豪州から引き受けると約束した。なぜだ? このばかな取引について調べる」とTwitterに投稿したのです。

まさに、オバマの旧悪が露見した形です。どうしてこのようなことになってしまったのか、トランプ大統領はこれを詳しく調査して公表していただきたものです。そうして、無論のことオバマの責任を追求すべきです。

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2017年2月1日水曜日

「日本は円安誘導」=トランプ氏、為替政策批判-日銀緩和も不満?―【私の論評】変動相場制国間の通貨戦争は単なる幻想に過ぎない(゚д゚)!


大統領令にサインしたトランプ大統領
トランプ米大統領は31日、ホワイトハウスでの医薬品大手トップらとの会談で「他国は通貨安誘導に依存している。支那は行っているし、日本は何年も行ってきた」と語り、日中の為替政策を批判した。大統領就任後に日本の為替政策に言及したのは初めて。2月10日の日米首脳会談を前に日本をけん制する意図があるもようだ。

 31日の欧米外国為替市場では、トランプ氏の発言直後、1ドル=113円台だった円相場が2カ月ぶりの高値となる112円付近まで急伸した。

 トランプ氏は「他国は通貨安を享受し、米国がばかを見ている」「他国は通貨安や通貨供給量で有利な立場を取っている」と主張し、円安・ドル高基調を批判。日銀などが量的金融緩和を実施し、市場に大量の資金を供給していることにも不満をにじませた。

 先進7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)の首脳会議などは、通貨安誘導の回避の原則を確認。一方で、通貨安をもたらす日銀などの金融緩和は、自国経済の安定が目的だとして、容認してきた。トランプ氏が他国の金融政策を批判し続ければ、G7、G20会議の議論にも波紋を広げそうだ。

 「米国第一」を掲げるトランプ氏は貿易赤字の削減に向け、自国製品の輸出に不利なドル高の進行を抑制したい考え。日米首脳会談では、トランプ氏の関心が強い自動車貿易に加え、円安・ドル高も議題に上る可能性がある。日本は2011年以降、円売り介入を避けてきたことを説明し、理解を求める構えだ。
 
 一方、英紙フィナンシャル・タイムズは31日、トランプ政権高官がユーロ安・ドル高を批判したと伝えた。報道によると、国家通商会議トップのナバロ氏は米国と欧州連合(EU)間の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)交渉について、ドイツに対する巨額の貿易赤字が「障害になる」と述べ、ユーロ安をけん制した。

【私の論評】変動相場制国間の通貨戦争は単なる幻想に過ぎない(゚д゚)!

上の記事の内容からは、トランプ氏は、金融政策を正確に理解していないとろがあります。そうそも、通貨戦争なるものは存在しません。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中通貨戦争、敗者は支那―【私の論評】支那を敗者に追い込んだのは、米国だけではない!寧ろ日本のほうが大きな役割を果たした!!
米中通貨戦争の勝者はアメリカ?
 この記事は、2013年11月3日のものです。この時期は、アメリカの金融緩和政策(QE)が続いていました。

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、そもそも金融緩和による通貨戦争など成り立ち得ないことを示した部分をこの記事から引用します。
そもそも、通貨戦争など本来あまり成り立ちにくいものです。ある国がどこまでも金融緩和を続ければ、確かに当面の通貨戦争には勝つかもしれませんが、そのまま続けていれば、国内がインフレになってしまいます。それでも続けていれば、ハイパーインフレになってしまいます。そうなれば、金融緩和策はやめざるを得なくなります。こういうことから、通貨戦争をやり続けることは現実には無理です。
日本の場合、2013年4月からそれまで頑なに緩和をしてこなかった日銀が金融緩和に転じました。それによって、確かに円安状況にはなりましたが、その後2014年4月から、経済的には悪手である、消費税増税8%にするというとんでもないことを実施してしまいました。

金融緩和は継続してはいるものの、この増税によって、消費が落ち込み、またデフレにもどってもおかしくない状況になってしまいました。雇用はかなり良くはなったものの、日銀が金融緩和を実施する前に定めた物価目標2%はいまだに達成できない状況です。

それとこのブログにも掲載したように、日本の構造的失業率は過去の統計数値などから2.7%程度と考えられるにもかかわらず、現在の失業率は3%台であり、本来は追加の量的緩和をする必要性があると考えられるのですが、日銀はそれに踏み切らないため、実質賃金なども上昇しつつはあるのですが、目立って上がっている状況にはありません。

そのため、トランプ氏の語る「他国は通貨安誘導に依存している。支那は行っているし、日本は何年も行ってきた」という発言はこと日本に関しては間違いです。

日本は、通貨誘導のために何年も金融緩和政策を続けてきたわけではありません。あくまで、デフレから脱却するために実行してきたものであり、その結果として円安傾向になったものです。

これは、過去のアメリカも実施してきたことです。以下に、アメリカの金融緩和を示すグラフを掲載します。


2014年10月末に、米国連邦準備制度理事会(FRB)は量的金融緩和(quantitative easing : QE)による金融機関等からの資産追加購入を停止することを発表しました。その意味や今後の影響に関してはすでに沢山の解説や論評が出ていますので、ここでは長く続けられた量的金融緩和の実績と結果について、FRBのデータからマネタリーベース(Monetary Base)の推移を現したグラフを掲載しました。

リーマン・ショックのあたりから、かなり大規模な金融緩和を行ってきたことがわかります。それも、現在の日銀と同じように、資産の購入によって実行してきました。そうして、米国の場合は、雇用の改善度合いを目標値として、それを達成したので、QEをやめたのです。これをいつまでも続けていれば、いずれはインフレ、それでもまだ続けていれば、ハイパー・インフレになったことでしょう。

この間、日本の日銀は、金融緩和を行わなかったため、日本は超円高となり、国内では深刻なデフレスパイラルの深みに陥りました。

米国に限らず、他国の中央銀行が大規模な金融緩和を行ったにもかかわらず、当時の日銀はそれを実行しなかったため、こうした事態を招いてしまったのです。

2013年4月以降の日本も、円安誘導をするために、金融緩和政策を実行してきたわけではありません。しかし、2%の物価目標では、インフレになる可能性はありませんが、それでも量的追加金融緩和を拡大し続ければ、いずれインフレになり、それでもさらに続ければハイパー・インフレに陥り、とんでもないことになります。

そのため、金融緩和はいずれかの時点で、取りやめることになります。そうして、普通の国ならば、ハイパー・インフレにならないため、金融緩和政策をいつまでも続けるなどということはあり得ません。

2010年日本は為替介入を実施したが、その後はほとんど行っていない
通貨安誘導には、為替介入(外国為替市場介入)という方式もありますが、これは通貨当局が為替相場に影響を与えるために、外国為替市場で通貨間の売買を行うことで、正式名称は「外国為替平衡操作」といいます。為替介入の目的は、為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることです。

わが国では、為替介入は財務大臣の権限において実施することとされており、実施の決断のほか、タイミングや金額等の決定は財務大臣が行います。日本銀行は、外国為替資金特別会計法および日本銀行法に基づき、財務大臣の代理人として、その指示に基づいて為替介入の実務を遂行しています。

この為替介入についても、いつまでも続けるわけにはいきません。たとえば、円安を誘導するのであれば、ドルを売って円を買うということで確かにできますが、これも長期にわたって継続することは困難です。いつまでも、続けていればドルが枯渇してしまいます。これもいずれ収束することになります。

そのため、為替介入の目的は為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることであると認識すべきです。

しかし、これは無論のこと、変動相場制をとっている国の通貨にあてはまることです。


支那は、そうではありません。支那の人民元は変動相場制に対応していません。ですから、通貨の需要と供給の関係によって相場が決定されるという市場メカニズムが働いていません。

厳密に言えば、人民元は確かに完璧な固定相場制ではありません。ただ、現状では自由に売買できる通貨でもありません。うまい表現ではないかもしれませんが、「ちょっと上下する固定相場制」と言った方が良いのかもしれません。

支那は元々、資本主義国ではありませんから、自由貿易と言うものを行ってきませんでした。ですから我々のように、貿易をするのにあたって互いの国の通貨が必要となり、売買したりする必要がありませんでした。

東西冷戦が崩壊し、支那が国際舞台に再び登場してくると、加工貿易を基礎とした急速な経済発展が続きました。すると、外貨と人民元の需給バランスを考えなければならなくなります。そこで登場したのが管理フロート制の採用です。これによって、まったくの固定相場ではなくなりましたが、未だ固定相場に近いのです。

こうした特殊事情から、支那の場合は、元を不当に低くして、為替操作をすることもできます。だから、支那の場合は完璧に変動相場制に移行していないため、為替操作国の謗りを免れないかも知れません。

しかし、日本をはじめとする、変動相場制に移行している国々を、為替操作しているなどというのはトランプ氏の言いがかり以外の何ものでもありません。

貿易赤字に関しても、貿易赤字そのものを家計の赤字と同じようにそれだけで悪いと思い込むのは間違いです。それについては、以下の記事を御覧ください、ここでは解説しません。
支那:1月の貿易黒字は過去最高-内需の弱さ浮き彫りに―【私の論評】安倍政権批判のためには何でもする日本の敵マスコミ諸氏! 支那は貿易黒字で大躍進ではないのですか! 嘘つき日本マスコミの実体が良く理解できる記事(゚д゚)!
貿易統計や、国際収支のみでものを語る愚かな人々?
さて、日本を為替操作しているなどとみる、トランプ大統領にはやはり、その間違いをはっきりと指摘しなければなりません。

トランプ米大統領が日本の為替政策を批判したことを受け、日本政府は反論しました。菅義偉官房長官は1日午前の記者会見で、トランプ氏の発言について「全く当たらない。金融緩和は国内の物価安定目標のためで、円安誘導を目的としたものではない」と強調しました。

菅氏は為替について(1)市場で決定される(2)通貨の競争的な切り下げを回避する(3)為替レートを目標にしない――など主要7カ国(G7)をはじめとする過去の国際的な合意に基づいて政策を進めていると説明。今後もその方針に変わりはないと強調しました。

浅川雅嗣財務官も財務省内で記者団に「日本の金融政策はデフレ脱却という国内政策目的のためにやっている。為替を念頭に置いたものでは全くない」と指摘。「(為替)介入を日本は最近していない」と説明しました。「為替相場はマーケットで動いている。操作しているわけではない。もう少し説明がないと分からない」とも述べました。

いずれにせよ、自国の経済や雇用を良くするために、金融緩和をすれば自国通貨流通量が増えるので、通貨安になるのは当然のことです。しかし、上にも述べたように、金融緩和は限度超えていつまでも実行できるものでありません。為替操作も長期間継続できるものでもありません。

その意味では、変動相場制の国々の間での通貨戦争は単なる幻想です。これをトランプ大統領に理解させないと、日本に限らず、いずれの変動相場制の国でも、金融政策に齟齬を生じる危険性さえあります。

安倍総理は、トランプ大統領と会談するときにこれをわかりやすく説明して、納得してもらうべきです。



2017年1月31日火曜日

トランプの7カ国90日の入国制限は、オバマのイラク180日の制限よりはるかに緩い―【私の論評】日米のリベラル・左派メディアとオバマに操られるな(゚д゚)!

トランプの7カ国90日の入国制限は、オバマのイラク180日の制限よりはるかに緩い

トランプの大統領令は「紛争地帯からの入国制限」であり、「イスラム」ではない


トランプ大統領の入国に関する大統領令が話題になっています。
アメリカの大手メディア(CNNことClinton News Network)が「トランプはイスラムが多数派の国の入国を制限した」と報じたからです。
Trump's executive order bars citizens of seven Muslim-majority countries from entering the United States for the next 90 days and suspends the admission of all refugees for 120 days. 
これに対し、ブライトバードは、「トランプの難民政策に関する7つの不都合な真実」という記事を投稿しています。
その中で、CNNのような論調に対し、
「ドナルドトランプ大統領の難民や入国者に対する厳格で論理的な対応は、国内TVメディアによるヒステリックな過度の反発や、感情的なメルトダウンを巻き起こしてる」と批判しました。
The sober and logical reasons for President Donald Trump’s executive order on refugees and visitors are rising above the noise after an evening of hysterical over-reactions and emotional meltdowns on the nation’s TV networks. 
では、その7つの不都合な事実とはなんでしょうか?
1.ムスリムの禁止ではない。
そもそも、世界87%のムスリムには関係ない。
2.トランプ大統領の大統領令は、オバマ大統領時代のセキュリティレビューに基づいている。
2015年に施行されたテロ防止法でイラン、スーダン、シリアが、2016年の更新時にリビアソマリア、イエメンが加わりました。 
ちなみに、イラクはその前からです。
トランプ大統領の顧問、ケリーアン・コンウェイ氏によれば、
「これらの国々は、テロリストが訓練し、隠れ家としており、テロリストの輸出国となっている。我々は偽装することもできなければ、別の方法もありません」
“These are countries that have a history of training, harboring, exporting terrorists. We can’t keep pretending and looking the other way”  
つまり、一般国民に混ざって、テロリストがやってくることを阻止し、アメリカ国民を守るために、90日間の入国拒否をする、ということですね。 
何かがあってからでは遅いのです。欧米各地でテロが起きていることは、事実なのですから。
3.入国拒否は、あくまで一時的な話です。
4.オバマイラクからの移民を、カーターはイランからの移民を禁止した。トランプだけの話ではない。
オバマ、カーター、トランプ、いずれも共通することは、ムスリムを禁止したわけではなく、各国民を禁止した点です。 
しかも、禁止の度合いで行けば、
オバマは1カ国に対し6ヶ月の入国制限をしたが、誰からも反発がなかった
・トランプは7カ国に対し、3ヶ月の入国制限でしかない
というような比較になります。
5.しかも、オバマ大統領も、シリア内戦が苛烈だった時に、たいした移民受け入れはしていません。
6.オバマの時に合憲だったのだから、トランプになって急に違憲になることはない。
7.大統領令は、セキュリティ上の措置に過ぎない。
結局、アメリカ人の命を守ることが目的である、ということは一貫しています。パリでは、フランス出身のIS参加者がテロを起こし、130人の命が失われました。ブリュッセルでもテロが起き、大勢が亡くなりました。
 テロの恐ろしいところは、入国する段階で誰がテロリストかなんてわからないところです。そして、テロリストは、無差別殺人を起こします。
そのような状況なので、テロリストの拠点となっている国の調査が終わるまで、入国制限を行う、というのは、仕方のないことでしょう。
【私の論評】日米のリベラル・左派偏向メディアとオバマに操られるな(゚д゚)!
さて、オバマ前米大統領の報道担当者は30日、トランプ米大統領が出した入国制限の大統領令について「個人の信念や宗教を理由に差別する考え」に基づくとして、オバマ氏は「基本的に賛成しない」との声明を発表しました。

オバマ氏が20日に退任後、声明を出したのは初めてのことです。米CNNテレビによると、大統領経験者が現職の大統領を公然と批判するのは異例だそうです。声明では、全米に広がる抗議デモを支持する考えも示しました。

自分も過去に、イラクに対して6ヶ月もの間入国制限をしたというのに、何という無責任な発言でしよう。私は、オバマがイラクに対して入国制限をしたときは、及び腰オバマにしてはよくやったと思い、好意的に受け取りましたが、今日のオバマの矛盾した行動を見るとやはりオバマはどこか頭のネジが狂っているとしか思えません。

オバマ氏
辞任した大統領は、その直後自分の出身地に戻るなどワシントンを離れるのが慣例とされていますが、バラク・オバマ米大統領一家は、退任後にホワイトハウスから3キロほどしか離れていないキャロラマという高級住宅街に移り住んでいます。

オバマ大統領は退任後も、次女サーシャが高校を卒業する2018年までワシントンに住み続ける意向を表明していました。一家は広さ760平方メートル、寝室が9室ある豪邸を借りて暮らしています。

ワシントン随一の高級住宅街キャロラマにあるオバマ氏一家が入居した豪邸
複数の不動産ウェブサイトによれば、この家を買うとしたら価格は600万ドル程度で、借りる場合の家賃は月2万2000ドルくらいが相場のようです。

バラク・オバマ米大統領は退任後も、必要があればドナルド・トランプ氏の次期政権に異議を唱えるかもしれないと表明していました。米国では、退任した大統領が政治の議論に関わらないことが長年の慣例となっています。

昨年、南米ペルーで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席した当時のオバマ大統領は記者会見で、トランプ次期大統領を支援するつもりだし、トランプ氏が自らのビジョンを提示するまで、猶予を与えるとした上で、ひとりの民間人として、一部の問題については発言を続けるかもしれないと述べていました。

オバマ大統領は、「大統領職に敬意を示したいし、誰かが意見を差し挟むことなく、次期大統領が自らの政策テーマや主張を推し進める機会が得られるようにしたい」と語ったが、「我々の価値観や理想が根本的に脅かされた場合、また、理想を守るため私が何かするのが必要、もしくはそうした方がいいと思う時には、その都度検討する」と付け加えました。

オバマ大統領は自らを、「我々の国を深く愛する米国市民」だと表現しました。

それにしても、「我々の価値観や理想」とは何を示すのかといえば、当然のことながらリベラル・左派の価値観でしょう。しかし、オバマ氏が一市民になった後に「我々の価値観」を訴えなくても、米国のリベラル・左派の「価値観や理想」は米国メディアがいやというほど主張することでしょう。

このブログにも従来から取り上げてきたように、米国メディアは9割方がリベラル・左派であり、保守系メディアは1割に過ぎず、日本でいうところの、産経新聞のような保守系の新聞は存在せず、すべての新聞がリベラル・左派です。学問の世界も、特に文化系はリベラル・左派が牛耳っています。

そうして、本当はアメリカの人口の半分くらいは保守派が存在するにもかかわらず、米国のメディアはそうした人々の声や言論を完全に無視して、あたかも半分に過ぎないリベラル・左派の「価値観や理想」が米国全体のそれであるかのように、情報操作してきました。

今回のトランプ大統領の登場は、現実にアメリカの半分は存在する無視されてきた保守派の憤り、憤懣が背後にあることを我々日本人も銘記すべきです。

保守系が何かを言っても、メディアはほとんど取り上げず、かき消されてきたというのが実情です。それは、トランプ氏が大統領になっても変わりはありません。ただし、今後トランプ政権が続けば多少は改善されるかもしれませんし、また改善されなければなりません。

メルケル首相
ドイツのメルケル首相も30日、ベルリンでの記者会見で「テロに対する断固とした戦いが必要だとしても、特定の人たちに疑いを向けることは正当化できない」とトランプ氏の対応を批判しました。

ドイツのメルケル首相は昨年9月、自ら率いるキリスト教民主同盟(CDU)がベルリン市議会選で「苦い敗北」を喫したのを受けて、移民受け入れ推進が大敗につながったと責任を認めました。

メルケル首相は最近のある世論調査では、4割の国民が辞任を望んでいるそうです。自分の頭の上のハエも追えないような人間が、米国トランプ大統領を非難する前に、やるべきことがあると思います。

マスコミは日本もアメリカもオバマの発言をこれみよがしに取り上げて、トランプ大統領馬鹿呼ばわりしています。そうして、リベラル・左派は反トランプデモを繰り返しています。

反トランプデモ。まるで韓国のデモのよう・・・・
これは、日本でいえば、鳩山由紀夫氏の発言をとりあげて、安倍総理を非難しているようなものです。日米いずれのメディアの報道も非常に偏向していると言わざるを得ません。 

さて、オバマ氏は今後あの首相を退任した後の鳩山氏のように、様々な政治活動等にかかわっていくことでしょう。

鳩山氏に関してはさすがに日本のメデイアもあまりの体たらくに、積極的にとりあげなくなりましたが、米国メディアはオバマ氏をそのように扱うことはないでしょう。

米国のリベラル・左派メディアは、これからもどんどんオバマ氏をとりあげ、ことあるごとにトランプ氏を批判することでしょう。それほど、米国のメディアは大偏向しているのです。

南京虐殺博物館を訪問した鳩山元首相
そうして、鳩山氏に関しては表立ってとりあげるようなことをしなくなった日本のメディアも、オバマ氏に関しては、米国のリベラル・左派の偏向メディア報道を垂れ流し続け、いずれ大統領選の報道のときのように、間違った報道を続けて、最後に大赤恥をかくことになるでしょう。

なぜなら、ほんの少し前に大統領選報道で大失敗をしたにもかかわらず、その反省もなく、米国のリベラル・左派の報道を何の吟味もせずに垂れ流しているからです。

しかし、これは見え透いた情報操作であり、少し調べれば誰でもその誤りに気づくことができます。

我々は、日米のリベラル・左派メディア、オバマに操られるべきではないのです。このようなものに操られていては、見るべきものも見えなくなります。

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2017年1月30日月曜日

トランプはかくも賢く、計算高い! メディアが知らない「真の実力」―【私の論評】新大統領のしたたかな戦略・戦術!日本の保守も見習え(゚д゚)!

トランプはかくも賢く、計算高い! メディアが知らない「真の実力」

歪んだイメージに騙されるな


高橋洋一氏






 公約実行は当然のこと

トランプ政権が20日にスタートし、矢継ぎ早に大統領令を出している。

これに対してほとんどのマスコミは「異例である」と報じ、識者の多くはトランプ政権が早々に行き詰まるだろう、という見方を示している。

筆者がレギュラー出演している朝日放送「正義のミカタ」(毎週土曜日朝9時~)でも、米国人モーリー・ロバートソン氏が大統領令について、「異例の多さで、内容が悪い」と語っていた。彼は民主党支持者で、まるで大統領選挙中の民主党によるトランプ批判そのものを聞いているかのようだった。

米国の大統領令は、連邦政府や軍に対して連邦議会の承認を得ることなく、行政権を直接行使するものだ。これをモーリー氏は「今回は異例に多い」と言っていた。これに対して一緒に出演していた岡田斗司夫氏は、「オバマ大統領も数多くの大統領令を出していた」と返していた。

また、筆者は、実はどこの国でも行政権の行使に関して、議会承認を得ないで行うものはあり、たとえば日本でも政令は国会の承認を得ないで行うものだと説明した。同じ番組内で、新たな元号についての話題もあったが、実は元号の決定は国会の承認ではなく、政令によって政府が決めているものだ。

アメリカの大統領令の範囲が明確でないという批判もあるが、連邦議会の制定する法律に基づき大統領に委任されているものも少なくない。

この点、日本の政令でも、根拠法律が明確な委任政令と、そうでない実施政令が混在しているので、アメリカの大統領令との差異は、少なくとも筆者にとってはそれほど明確でなく、五十歩百歩ではないかと思う。

こうした意味で、「大統領令が乱発されている」という報道は、アメリカでもなされているが、やや大げさであると思う。

新政権が選挙期間中の公約を実行に移すのは当然である。また、見方を変えればトランプ政権は、選挙期間中、当選後の戦略をよく考えて、議会の承認の必要のない大統領令でできることばかりを公約に掲げてきたともいえるのだ。

もっとも、連邦議会が反対法律を制定したり、過去にも大統領令について連邦裁判所が違憲判断を示したことも2回ある。行政権の執行であるので、三権分立の立場から立法と司法からチェックを受けるのもまた当然である。

 マスコミが知らないトランプの素顔

マスコミの報道の多くは、いまだに「トランプ大統領はバカではないか」というものが主流であるように感じる。これは(筆者は直接トランプ大統領と面識があるわけではないが)、私の友人・知人を通じて知るトランプ大統領のイメージと異なっている。

実は、昨年11月、安倍首相が当選直後のトランプ氏と電撃的な会談をしたが、それを仲介した人物は、筆者の長年の友人である日系三世アメリカ人、村瀬悟氏である(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50422)。友人の名を明かすのは気が引けるが、もういいだろう。


村瀬悟氏 写真はブログ管理人挿入以下同じ
彼は、日本語の勉強のために日本に中学・高校と留学しているが、留学先は成蹊中学・高校である。年齢は安倍首相と一つ違いであり、安倍首相も成蹊中学・高校であるので、当然よく知っている仲だ。

ハーバード大卒、ニューヨークで評判のいい弁護士をしており、トランプ大統領のかつてのビジネス案件も手がけいたこともあって、トランプファミリーとも密接な関係がある。

当然、トランプ大統領に直接連絡できる人物だ。彼は、トランプはとても賢く数々の発言は計算に基づいているといっていた。

また、トランプ大統領がかつて倒産したとき、彼のために金策で奔走した日本人も知っている。苦境の時に助けに乗り出した人であり、そういうときの恩義は古今東西を問わず忘れないものだ。その人も、トランプ大統領はかなり賢く、先々のことをいろいろと考えて行動していたといっていた。

 最も大きな失点は「国境税」

さらに、かつてのトランプ氏は今のようなやさしい英語を使わなかった。しかし、不動産で失敗した後、テレビショーに出演していたときのトランプ氏は別人のように言葉づかいが変わり、難しい表現を使わなかった。

しかも、WWEというプロレス団体のリングにも登場した。日本では、地位のある人がプロレスを好きだといっても自然だが、アメリカではプロレスは完全にプア・ホワイトら向けのもので、リング上で使われる言葉も基本的には低レベルだ。こうした経験を積むこと、トランプ大統領は一皮むけたという。

ただし、トランプ大統領の行動すべてが計算づくでうまくいっているわけではない。

メキシコとの国境に壁をつくる、というところまでは想定内だ。実際、今でもメキシコとの国境には壁がある。そもそも国境に壁があるのは、アメリカとメキシコの間を往復すれば旅行者もわかることだ。それに入国管理を強化するのも大統領選挙期間中の公約である。

しかし、国境税についてまともにブチ上げたことには面食らった。たしかに大統領選挙でも国境税については言及されていたが、これは悪手だろう。早速、「国境税といっても、相手国に課すことができない以上、アメリカ国民が支払うことになる」といったの批判が出た。

この批判はその通りであるし、相手国もWTOなどの国際機関をうまく使えばかなり防戦できる。こうした意味で、これは「ディール」に向かない戦法であり、トランプ政権としては「しまった!」と思ったはずだ。

ただ、トランプ大統領とメキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領との間で、電話会談が行われたので、ディールは一歩前進している。結果オーライ、ともいえるかもしれない。

 実はしたたかな「失業・雇用論」

さて、経済政策に関しての言動は想定内である。もっとも、トランプ政権への批判はまだ強く、そうした論者のなかには「トランプ政権が掲げる経済政策は、とてもできっこない」と断言する者が多い。

一方、『現代ビジネス』のサイトには、冷静な記事もある。1月26日付けの安達誠司氏の「トランプの経済政策は本当に『保護主義』なのだろうか?」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50815)は有用だ。この見方には、経済学的な観点から賛同するとことが多いが、筆者の場合、それに政治的な観点を加えてみている。

トランプ政権は、雇用を増やすことを主張しており、これに対して「アメリカはいま、完全雇用に近い状態」という批判がなされている。安達氏は、アメリカ経済は「完全雇用」に近いのか? と自ら問いかけて、実際の「失業率」はもう少し高いとの試算を提供している。

興味深い指摘だが、もしそうであっても、統計で目に見える「失業率」は容易に低下しない。高い失業率を低くするのは困難なので、これでは政治的には無意味な主張になる。

トランプ政権の射程は2年、中間選挙までに政治的に目に見える成果を求めている。それまで、マクロの「失業率」は、理由がどうあれ顕著に低下することはない。

トランプ政権はこのことをよく知っているのだと思う。マクロの「失業率」には目をくれずに、個別企業の雇用を促進させ、「その雇用はオレが作った」と成果を主張することを考えているのだろう。

実際、そういわんばかりのつぶやきをツイッター上で展開している。一連の日本叩き、日本企業叩きも、そうした戦略から行われているのだろう。

となると、日本としては、1980年代に起こったような日本叩きにならないよう、したたかな対応が必要だ。

幸いなことに、対日貿易赤字は80年代ほど大きくはない。ところが、貿易赤字は経済学的にはたいした意味はないが、政治的な意味は大きいので、あまり経済的に考えるのは得策ではないのだ。

80年代、筆者は実際に対米交渉をやった経験があるが、そのとき一応経済学的な観点から各所に説明するのだが、あまり意味がなかった。今や中国が日本のポジションに変わっているので、この点(つまり、政治的な観点)を強調した方が日本のためにもなる。

 日本が優位に立つチャンスはある!

さて、これについて「トランプ政権の80年代を彷彿させる行動は、トランプ政権が比較優位の貿易論も知らないから採られるもので、いわば暴挙」という識者もいるが、それは誤りだ。

伝統的な貿易論どころか、その次の「新貿易論」、さらに貿易は格差の源になりうるという「新新貿易論」さえも利用して、対日交渉に臨んでくると思ったほうがいい。

1月28日夜、安倍首相とトランプ大統領は電話会談した。2月10日、安倍首相が訪米し日米首脳会談を行うことを取り付け、その直前の2月3日にマティス国防長官が来日する予定だ。

当面は、トランプ政権が離脱を表明しているTPPの後をどうするかだ。筆者は、昨年米大統領選直後11月14日付けの本コラムで、日米2国間交渉に移行すべきと書いた(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50202)。それは、日本が言わなくともアメリからそう求めてくることが予想できたからだ。

案の定、日米2国間貿易交渉という流れが出てきている。報道によれば、アメリカから提案が持ち出されたら、日本も受けるという。だが、この報道通りの受け身対応だと、ちょっと心配である。

筆者が昨年の本コラムで書いたのは、どうせ2国間になるから、日本から先に持ちかけるべきだ、ということだ。そのほうが、議論の枠組が作れるので有利になるからだ。

これも新聞報道だが、アメリカが2国間交渉を日本に持ちかけるとき、在日米軍の駐留経費負担増を日本に求めない、とのマティス長官の話が出ている。

一見すると、マティス長官は日本に配慮したように見えるが、日本にとってはいい話ではない。じつは、在日米軍の駐留経費増を日本がいわれても、年間2000億円程度なのでたいした話でないのだ。むしろ増額に応じて、2国間貿易交渉を有利に運んだり、日米地位協定の見直しをとる方が、日本としても得策だっただろう。

トランプ政権がそれを察知して在日米軍の駐留経費増を持ち出さないのだとしたなら、2国間交渉はかなりタフなものとなるだろう。

日米2国間交渉は、TPPで決まったことをベースにして行うのは当然として、場合によっては、オーストラリア、ニュージーランドの旧英連邦も加えればいいだろう。少なくとも、TPPベースの交渉ではいいパートナーとなる。

さらに、NAFTAで再交渉のカナダ、EUから離脱するイギリスも加えて、アングロサクソン+日本という先進国型自由貿易経済圏を模索するのもありだ。

トランプ政権は、貿易交渉をしようというだけで、先進国間では保護主義ではなくどちらかといえば自由貿易を指向するだろう。その中で、日本もしたたかな交渉術が求められている。

ディール(契約)は、売りと買いで折り合いがつかないと思っても粘り強く交渉すると着地点があるように、決して破壊的な結末ではなく、両者が納得できるところに落ち着くものだと肝に銘じてほしいものだ。

【私の論評】新大統領のしたたかな戦略・戦術!日本の保守も見習え(゚д゚)!

トランプ氏の大統領令については、矢継ぎ早で突拍子もない印象を受けるかもしれないですが、実はそのようなことはないです。

高橋洋一氏も上の記事で、実はどこの国でも行政権の行使に関して、議会承認を得ないで行うものはあり、たとえば日本でも政令は国会の承認を得ないで行うものだと説明しています。

確かにその通りです。しかし、これ以外にも本来マスコミなどが、異例であるとするには根拠に乏しいと言わざるをえない理由があります。

そもそも、トランプ氏はこのようなことをすることを予め国民に向かって宣言しています。それは、選挙中の公約のことを言っているのではありません。

トランプ氏は、大統領選の直前に、「アメリカを再びかつてのような偉大な国にするための100日プラン」を公表し、サイトに公開しています。

メキシコとの国境沿いに壁を築き、建築費用をメキシコに支払わせる」「イスラム教徒の入国を禁止する」などの過激な発言にもかかわらず、あれよあれよという間に支持を集めて次期アメリカ合衆国大統領に選出されたドナルド・トランプ氏が、アメリカを再び偉大な国にするために、大統領就任後直ちに実行するという公約「100日プラン」はこんな感じです。

O-TRU-102316-Contractv06.indd - O-TRU-102316-Contractv02.pdf
(PDFファイル)https://assets.donaldjtrump.com/_landings/contract/O-TRU-102316-Contractv02.pdf



「『100日プラン』はアメリカの有権者と私自身との契約であり、誠実さと責任をもって始め、ワシントンに変化を起こし始める」というトランプ氏の決意表明から100日プランはスタートします。

◆ワシントンD.C.内の特別な衝突を一掃する6つの政策
1:議会のすべての議員に任期制限を課すように憲法改正案を提出する。
2:すべての連邦職員の雇用を凍結し、職員数を削減する(ただし、軍事、公安、公衆衛生についてはこの限りでない)。
3:新しい連邦規則に反する従来の連邦規則は廃止する。
4:公職を離れた連邦議会職員のロビー活動を5年間禁止する。
5:外国政府を利するロビー活動をした職員は、永久にロビー活動を禁止する。
6:アメリカの選挙費用を集めようとする外国のロビー活動は一切禁止にする。

◆アメリカの労働者を守るための7つのアクション
1:北米自由貿易協定(NAFTA)は第2205条に基づき再交渉するか離脱する。
2:環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は離脱する。
3:中国が為替操作国であることを認定するよう財務長官に直接命令を下す。
4:アメリカの労働者に不公平なすべての乱用的為替操作を特定し根絶する法律を制定するよう商務省とアメリカ貿易局に直接命令を下す。
5:シェールオイル、石油、天然ガス、クリーンな石炭などのアメリカが有する50兆ドル(約5300兆円)規模のエネルギー備蓄を放出する。
6:オバマ-クリントン路線でのインフラ投資抑制を撤回し、Keystone Pipelineなどの有望なインフラ整備プロジェクトを許可する。
7:気候変動枠組条約で支払っている何十億ドルもの分担金を取りやめる。取りやめた分担金はアメリカ国内の水などの環境インフラの整備に振り替える。

◆保安と憲法上の秩序を回復する6つのアクション
1:オバマ大統領によって出された憲法に反する大統領令や発行されたすべての覚書を取り消す。
2:最高裁判事Justice Scaliaの後任を、リストに上がっている合衆国憲法を支持し守っていけるであろう判事の中から選出する。
3:連邦政府から資金援助を受ける"聖域都市"の廃止。
4:200万人を超える違法な移民の強制送還を始め、二度とアメリカに戻って来れないようにビザを破棄する。
5:安全を担保できないテロの起こりやすい地域からの移民の受け入れを停止する。

◆中間所得層の税金の免除と徴収プロセス簡素化に関するアクション
経済の目標として年4%の経済成長と大規模プロジェクトを通じて少なくとも2500万人の新規雇用を創出する。これらは減税、税徴収手続きの簡素化、規制緩和やアメリカのエネルギー備蓄の解放によって実現する。最大の減税対象は中間所得層になる。子どもを2人持つ中間所得層は35%の減税を享受する。税制上の所得区分は7つから3つに減らし、税金の仕組みを簡素化する。法人税は35%から15%に減らし、資本10億ドル(約1070億円)以上の規模の大企業が海外資金をアメリカに戻す場合の税率は10%に軽減する。

◆オフショアを終わらせるアクション
海外に生産拠点を移し税を免れ国内の労働者を解雇する企業活動を阻止するために関税をかける。

◆エネルギーとインフラに関するアクション
10年間にわたって1兆ドル(約107兆円)規模の資金をインフラ整備に投入することで、官民共同プロジェクトや民間投資を活発化させる。

◆学校選択と教育機会平等に関するアクション
教育関連費を子どもの親に直接還元することで、公立、私立、宗教、ホームスクールなど種類を問わず学校を選ぶ権利を与える。一般的なコアカリキュラムを終わらせ、地域の教育機関に監督権を与える。職業教育と技術教育を拡大させ、2年制・4年制の大学をより安い学費で提供する。

◆オバマケア関連法の廃止と代替プラン
オバマケアを完全に廃止して、Health Savings Accounts(医療費用口座)による積立て運用に置き換える。この改革にはFDAの改革も含まれる。現在FDAの認可を待つ4000以上の薬剤がある。救命救急薬の承認手続きのスピードアップを実現する。

◆育児・介護費用を安くするアクション
アメリカ人に限り育児と高齢者介護に関する費用の税控除を許可する。企業内託児サービスの提供を促し、従介護者の免税用貯蓄口座を創設する。

◆不法移民を根絶するアクション
メキシコとの国境沿いに壁を建設し、その建築費用をメキシコに負担させる。不法移民に対して、1度目は2年以上の懲役を、不法に再入国した場合には5年以上の懲役を強制送還前に科すよう刑罰を改める。オーバーステイに対する刑罰を強化するようビザ規則を改定し、まず優先的にアメリカ人に雇用を提供するようにする。

◆地域の安全を修復するためのアクション

各地域の警察を訓練し、支援するプログラムへの助成金を増やすことで、犯罪やドラッグ、暴力を減らす。違法な犯罪組織を解体し暴力犯罪者を逮捕しやすくなるように連邦執行機関や連邦検察のためのリソースを増やす。

◆国家安全保障法の修復に関するアクション
軍事部門への投資を進めて軍を再構築する。退役軍人に傷病治療を受ける公的なサービスや民間医師の選択権を与える。重要なインフラに対するサイバー攻撃を防ぐ。アメリカに入国を希望する者に対しては、アメリカの価値観を支持するかどうかを見極めるための新しい入国審査手続きを設ける。

◆ワシントンの腐敗を一掃するアクション
政治に対して影響を与える汚職をなくすため、新しい倫理規約を作る。

昨年の11月にこれを、読んだ私は、以上のことを100日で実行するというのなら、当然のことながら、議会での審議だけでは到底不可能だと思いました。

当然のことながら、この100日プランの全部とはいわないものの、日本でいえば政令、米国でいえば大統領令で実行することになるものも多数あるだろうと思いました。

大統領令とは大統領が議会の承認や立法を経ずに直接、連邦政府や軍に発令する命令のことです。憲法に明確な記述はないのですが、法律と同等の効力を持ちます。第2次世界大戦時のフランクリン・ルーズベルト大統領は、12年間の在職中に3522件も発令しました。

オバマ政権においては、気候変動対策の強化や化学物質管理の安全性向上など170件近く出されています。議会は反対する法律を作ることで大統領令に対抗できるほか、最高裁判所も違憲判断を出すことがあります。

まさに、トランプ氏はこの100日プランを実行するため、矢継ぎ早に大統領を出しているわけで、これを「異例」とか、不意打ちのように感じたり、そのように報道するのは全くの検討違いです。

士官学校時代のトランプ氏
日本では、あまり知られていませんが、トランプ氏は大統領選挙の前から、タブーともいわれていることに自分の考えをはっきり述べるようなことをしてきたので、テレビ局などは、トランプ氏を出演させ、トランプ氏に大胆な発言をさせ、それを専門家などが解説すというような方式で、かなり視聴率を稼ぐことができました。

とにかく、トランプがテレビに出ると、軒並み視聴率があがるという状況でした。トランプ氏はこうして、結果としてマスコミを自分の味方につけたのです。これは、明らかに大統領選を意識した伏線だったとみなすべきでしょう。トランプ氏は意図して意識して、そのようなことを計算ずくで実行してきたのです。

そうして、この「アメリカを再びかつてのような偉大な国にするための100日プラン」も、したたかな戦略の中に位置づけられるとみなすべきです。

そうして、トランプ氏としては、この100日プランに掲載したことは、実行すべきものと考えていることだと思います。

しかし、実はアメリカ大統領といえども、できることと、できないことがあります。実は平時にはアメリカ大統領は世界でもっとも権限の少ないリーダーであるともいわれています。ただし、アメリカの政治においては、議会が戦争を承認した場合、その戦争を遂行するため、極めて多くの権限が大統領に集中するという特徴があります。

平時にもっとも権限が強いのは、司法であるともいわれています。実際、ニューヨーク連邦裁判所は28日、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港で拘束されていたイラク人男性の一時的な入国を認める判断を下しました。
 
司法の判断が、イラクなどの出身者の入国を停止・制限したトランプ氏の大統領令を阻止した形で、他の拘束者に同様の動きが広がる可能性もあります。

だから、大統領令だけで100日プランを全部実行できるようにするということは不可能です。しかし、そのこともトランプ氏の戦略には織り込み済みなのだと思います。

現在行われている、入国制限は、トランプ氏による観測気球であると考えられます。どの程度のことができるか、探りを入れている状況であると考えられます。

大統領令1号 リンカーン大統領による『奴隷解放令』

というより、トランプ新大統領は、100日プランに向けて大統領令を出すことにより、タブーといわれていたことにも、手を染めて、特に大統領選で支持をした有権者の目を自分に惹きつけ、自らが行動する大統領であることを国民にアピールしているのだと思います。

そうして、その裏側にはしたたかな戦術があるものと思います。大統領令を出したにしても、今回の司法による介入、議会による介入があって、100日プランが実行できなかった場合も、トランプ大統領がそれに向けて努力したということはアピールできます。

さらに、大統領令によって100日プランの一部が実現すれば、それはそれで評価されます。過去のアメリカ大統領は、選挙期間中に公約として掲げたことを結局実行しなかったということは当たり前にありました。これによって、国民は政治不信に陥ったり、自分の支持した大統領に失望し、反対派にまわるというようなこともよくあったことです。

オバマ大統領に関しては、選挙期間中に様々な活動をした若者層が離反するということがみられました。

トランプ大統領としては、このようなことを防ぐため、100日プランをだし、それに向けて行動し、行動したとしもなかなか成就できない場合、その原因や背景を誰の目にも明らかにするつもりであると思います。

とにかく、大統領選でも破天荒な行動をしたトランプ新大統領です。日米のマスコミも従来の大統領や、政治家などのつもりで、トランプ大統領の行動を分析したり、報道するようなことをしていては、また大統領選報道の二の舞いになります。

トランプ氏は言動や、行動は一見荒っぽくみえますが、実は民衆の声には敏感で繊細でさえあり、その中には常人にはなかなか見えないしたたかな戦略・戦術があるとみなすべきです。

そうして、日本の保守層もトランプ新大統領の戦略・戦術をその背景も含めて研究し、見習うべきと思います。もっと戦略とか計画とかいうものを立てて、その上でトランプ氏のように意図して意識して発言し、行動し、そうしてただ行動するだけではなく、成果をあげるべきです。

日本の保守層もネットでただ文句を言う、ストレス発散するレベルに陥っている人が沢山いて勿体無いというか、そんことでは組織立って体系的に行動する敵対勢力と戦いにはならないです。トランプ氏が台頭した背景、歴史、さらにトランプ氏の戦略・戦術をもっと深く研究すべきです。

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