2017年7月28日金曜日

【国防最前線】必要性が低い女性防衛相 圧倒的に男性が多い自衛隊、弱体化しかねない「客寄せパンダ」的施策―【私の論評】現状で、憲法9条だけが変わっても無意味(゚д゚)!


稲田防衛大臣 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
私はそもそも「女性を防衛相にする必要性は特にない」と思っている。非常時でも、すっぴんで髪ボサボサというわけにいかないだろうから、そういう意味で適さない。

 小池百合子防衛相時代も、演習場視察の前日から自衛官がひたすら散水を続けたり、動線に敷物をしたり、あれこれ心を配っていたことを思い出す。本人が知れば「そんなことは無用だ」と言うだろうが、やはり男性大臣よりも神経を使うことは確かだ(=ほとんど注意を払わせない、身だしなみなど気にしない女性ならいいかもしれないが)。

 もし、「女性活躍の象徴」として女性防衛相を選んだのだとしたら、何の意味もなさない。

 自衛隊には圧倒的に男性が多い。それは男性にしかできない任務が多いからだ。ただ、女性にできる分野もあり、これまで開放されなかった職種を希望する女性も出てきている。昨今は女性も活躍の場を広げつつあるが、それは人口減に伴う労働者不足を補わなければならない日本全体が抱える状況と同じ。つまり、人手不足が大きな要因だ。

 本来、戦場では女性は足手まといになる。女性防衛相が就任して応募が増えたというなら効果があるといえるが、おそらく、そのような成果は出ないだろう。まして、女性の魅力で(?)沖縄問題が進展したり、憲法改正に理解が広がるなどということもない。

 今後、本気で女性枠を拡大させるならば、女性防衛相を据えることなどではなく、インフラ投資のために防衛費のGDP枠2%以上へ増額など、相当の覚悟をすべきだ。スーパーマーケットとまでは言わなくても、基地や駐屯地に低料金か無料の託児所を完備するなりの徹底した措置を施した上で将来も女性を簡単に諦めさせない体制を構築すべきだろう。

今現在は「任務に全力をささげたい」と考えている女性隊員らが、ある時に価値観が変わり、家庭が優先順位のトップになることは大いにあり得る。その時に、引き留める要素が何もないのなら、それは組織の怠慢となる。

 しかし、問いたいのは、それだけの投資・支出を国民は許容できるのかだ。

 莫大(ばくだい)な経費を要するミサイル防衛、サイバー、宇宙など、日本の防衛に必要な金はまったく足りていない。それらを抑えてまでやるのか? あるいは別枠予算でも付けるか?

 マンパワー獲得という真の目的からかけ離れた、「客寄せパンダ」的な安易な施策では、自衛隊が弱体化しかねない。防衛省をめぐる一連の騒ぎは、自衛隊PKO(国連平和維持活動)のあり方、女性活用の今後を熟考する契機にすべきではないだろうか。 

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。テレビ番組制作などを経て著述業に。防衛・安全保障問題を研究・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。

桜林美佐さん

【私の論評】現状で、憲法9条だけが変わっても無意味(゚д゚)!

ブログ冒頭の桜林美佐氏の、論評はやはり女性の軍事問題研究科だからできるというとろがあると思います。男性や、軍事の素人ではなかなか、ここまではっきりとは書けないです。このようなことを男性が書くと、女性差別主義者であるとみなされてしまうかもしれません。

それに、誰が正しいとか、誰が間違いなどというような、倒閣のために自衛隊を利用する輩共とは異なり、不毛な議論ではなく、何が正しい、何が間違いという観点から論じていて、理解しやすいですし、こういう論点なら、正しい意思決定のきっかけづくりにもなりえると感じました。

対戦車ヘリのパイロットの訓練を受ける女性自衛官
私も、女性の防衛大臣は必要ないと思います。これは、直接は関係ないのかもしれませんが、たとえば戦場で戦闘中に用を足すことを考えた場合、女性はなかなか難しいと思います。

昔聴いた話ですが、戦闘中に用を足したくなった場合は、無論我慢はするのですが、我慢しきれなくなった場合、米兵のほとんどは戦闘のその場で、銃をうちながら、大便でも小便でも、用を足すのが当たり前なのですが、日本兵は特に大便の場合など、人目をはばかり、人の見えないところまで行って用を足すものが多く、その間に敵から撃たれるものが結構いたという話をきいたことがあります。

これは、当然のことながら、米兵のやり方が正しいです。戦闘中には、その場で銃をそばにおきいつでも敵に対応できるようにして、用を足すべきです。

1945年3月 硫黄島 
このようなことは、確かに女性には難しいことだと思うのです。とはいいながら、女性のほうがが向いている役割も多いです。

しかし、そうはいっても、桜林さんが主張するように、「女性活躍の象徴」として女性防衛相を選ぶというのは、全く無意味だと思います。

そうして、桜林さんの語っているように"マンパワー獲得という真の目的からかけ離れた、「客寄せパンダ」的な安易な施策では、自衛隊が弱体化しかねない。防衛省をめぐる一連の騒ぎは、自衛隊PKO(国連平和維持活動)のあり方、女性活用の今後を熟考する契機にすべき"です。

自衛隊に関しては、憲法9条を変更する前に、できることは多くあります。また、憲法9条が変わったとしても、自衛隊がすぐに変わることを意味するわけでもありません。

それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
安倍内閣で防衛費が5年連続増額しているのを、評価する向きもあるでしょう。しかし、防衛費1%枠などという何の根拠もない霞が関の掟を頑なに守っている枠内での話に過ぎません。 
トランプ米大統領は、「同盟国は義務を果たすべきだ。せめて防衛費を文明国水準のGDP2%にまで引き上げよ」と訴えています。 
これは大きなチャンスです。増やせば良いのです。これだけ北朝鮮が暴れまわり、中国やロシアといった不安定要だらけの隣国に囲まれているのです。日本が防衛費をGDP2%に増やしたとて文句を言うのは敵国だけです。 
しかし、国内には防衛費増額を拒む勢力がいます。財政支出抑制を金科玉条とする財務省主計局、彼らに唯々諾々と従う防衛省自衛隊、そしてそれを是とする政治家。
ある自衛隊の駐屯地でのトイレットペーパーに関する注意書き。予算の問題はこんなところにも。
防衛費増額と憲法は何の関係もありません。それとも、自衛隊が、「米軍並のファーストエイドキット携行できるにようにするとか、軽武装をできるだけの人数を充足させる、アメリカ軍楽隊よりもマシな訓練を行えるようにする、トイレットペーパーの減り具合を気にしないで済むようになする」というような、これらの予算請求もすべて憲法改正をしなければできないのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずがありません。
平成27年度自衛隊音楽まつりに参加した米軍の軍楽隊
本気で戦争に備えているのであれば、防衛省は予算の拡大を要求するはずです。現状を見るに、自日本の本気で戦争する気は無いように思えます。このような現状は仮想敵国には見透かされているでしょう。であれば、自衛隊の抑止力はかなり低いと考えられます。 
憲法を改正する以前に、努力してより自衛隊を実戦的に変えることは可能なはずなのです。ところが威勢のいいことを言う「保守の論客」はこのような小さな問題をコツコツと掘り起こし、解決しようという地道な努力をしようとしません。 
世論を煽り、新しい玩具を買え、防衛費を増やせ、自衛隊の定員を増やせ、憲法を変えろと叫ぶだけです。まあ、その方が楽だし人気もでるのかもしれません。しかし、いくら喰うためとはいえ、そんなことで良いのでしょうか。 
できるかどうかもわからない、非常にハードルが高い憲法改正を叫び、それが出来れば世の中は変わると主張し、小さな努力はしない。それでは沖縄で反基地闘争をやっている連中と同じではありませんか。
私は、憲法9条を変えるという安倍総理の考えには、賛成ですが、 その前にできることはするべきです。

そうして、憲法9条を変えさせまいとする野党や、マスコミが、ここにきて一気に日報問題で、稲田防衛大臣を辞任に追い込みました。

稲田大臣は、確かに安倍内閣の中で最も評判が悪い閣僚になっていました。失言も多く、メディア出演・答弁・記者会見も頼りないものでした。記者懇談会に出ないこともあってメディア等からの視線も厳しく、連日連夜、稲田大臣と彼女を支えている統幕・内局に不利な一部の陸自幹部からと思しきリーク情報が報道されていました。

政治指導者の過ちをただし国民に直接説明するという姿勢は一見もっともらしいですが、極めて危険です。なぜならば「国民」とは実際にはひとかたまりではなく、多種多様だからです。

「国民のため」という発想は、「天皇陛下の御為」「国民の為」を掲げた226事件がそうであったように、「自分と同じ考えの国民」という独善に陥りやすいです。だからこそ、今回のリークはクーデターであり、重大なのです。

日本を震撼させた2.26事件
このことを野党やマスコミも指摘すべきであるにもかかわらず、普段は過去の軍部の暴走の危険を例に出し、文民統制の重要性を指摘しておきながら、今回は、目的があくまで倒閣なので、稲田防衛大臣個人や、安倍政権を攻撃するだけです。

とはいいながら、リークの全てを否定するものではありません。例えばパワハラ等への内部告発はもっと行われるべきです。しかし、それはあくまでも文民統制に反しない限り、つまり政治的活動に関与しない範囲であるべきなです。
しかし、それにしても、稲田大臣が辞職し、制服組がリークによって大臣を辞職させ、首相の政治生命すら危うくさせたという前例を作ってしまったということは非常に残念であるし、かなり危険なことでもあります。

なぜなら、今後の防衛大臣が陸自に対して“忖度”せざるを得なくなってしまう可能性があるからです。その結果、陸自の不祥事を追及できず、陸自も含めた防衛省改革が不可能になるおそれがあります。

要するに、今後、稲田大臣に変わって優秀かつ能力があり、熱意あふれる防衛大臣が誕生し、改革を断行しようとしても、真偽不明の内部リークで潰されてしまう、もしくはそうされることを恐れて断念してしまう可能性がでてきたのです。

こうした事態を避けるため、今回の日報問題を踏まえた文書管理のありの方針を決めるべきです。それこそが、本来稲田大臣がとるべき責任であったはずでし、それを稲田大臣にやらせるべきでした。辞任はその後でも良かったはずです。

南スーダン派遣自衛隊日報
部隊がどこいるか補給物資や弾がどれくらいあるかといった部隊の安全に関わる情報が満載された何十ページにも及ぶ日報が、その都度、情報公開請求されれば、部隊にとっては大きな負担になります。

今回のように、その都度情報公開の判断をさせれば、部隊の活動の政治問題化、部隊への政治介入が起こり、部隊にも隠蔽のインセンティブが働いてしまうことになります。このままでは現場の部隊は、上級部隊に何も意味のある報告できなくなり、現場と上級舞台は、分離されてしまうことになります。そんなことになれば、自衛隊は崩壊します。

これらの日報は自衛隊全体では、膨大なものになります。これを逐一、政治家などが日々全部読んで、様々な判断をするなどということは不可能です。無論、自衛隊の幹部などもそのようなことは不可能です。

現場の日報は、何のためにあるかといえば、当該部署の1年間の流れを把握するという意味もあると思います。はじめてその部署についた人でも、日報をみれば大体の流れをすぐに把握できます。だから、現場で日報をある期間保存するというのは当然といえば、当然です。3年間くらいは保存したいところでしょう。5年前のものだと、随分状況が変わっているので、現場でも破棄しても良いかもしれまん。

そこで今後は、このような現場の実情も踏まえて、文書管理の方法を設定すべきです。PKO部隊なら活動が終わった直後あるいは年一回を区切りとして、他の部署なら3年に一回として、活動終了後3年といった公開時期を設定し、あらかじめ公開すべき内容と公開すべき範囲、非公開にすべき内容を定め、特異な事象が発生した場合には即公開するといった基準を設けるべきです。

こういうと、すべてをのべつまくなくリアルタイムで公開すべきであるという愚かな人もでてくる可能性もありますが、この日報は、いわば軍隊のものであり、そもそも最初から公開すべきでないものもあります。たとえば、部隊の脆弱性に関するものなど、一般に公にすれば、仮想敵に対して有益な情報を与えるだけになります。あるいは、当初は重要でなかったものが、後で重要であることがわかるということもしばしばあるはずです。

このあたりも、他国の軍隊のやり方を見習い、慎重に定めるべきでしょう。それから、稲田大臣は辞任しましたが、今後の議論が稲田大臣個人の問題や、安倍総理個人の問題に矮小されることなく、文民統制や日報管理のあり方、そもそも一義的な文民とは国民なのか、政治指導者なのか、まともに議論されべきものと思います。

そうして、憲法9条を変えることも重要なのですが、その前に文書管理等を明確にし、予算も増やすべきです。そうして、文書管理をまともにするためには、他の事柄もかえなくてはないらないことがいろいろと出て来るはずです。それも逐次変えていくべきです。今の状況で、憲法9条だけが変わっても、無意味です。

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2017年7月27日木曜日

インフレ目標未達の真の問題 増税影響の説明と政治的配慮、追加緩和は補正と一体実施も―【私の論評】日銀は奇妙な景況感を捨て去り速やかに追加金融緩和せよ(゚д゚)!


グラフ、写真はブログ管理人挿入 以下同じ

日銀の金融緩和によって雇用環境は劇的に改善しているが、2%のインフレ目標達成時期は先送りが続いている。インフレ目標政策のセオリーから見て、目標達成の先送りをどのように考えたらいいのだろうか。

 本コラムでこれまで繰り返してきたことであるが、金融政策の究極的な目標は雇用の確保である。

 経済理論では、インフレ率と失業率には逆相関(インフレ率が高ければ失業率は低く、逆にインフレ率が低ければ失業率が高い)がある。失業率を低くしようとしても、これ以上は下がらない構造失業率があるのでそれ以下にはできず、その場合、インフレ率だけが高くなる。

 つまり、インフレ目標は過度に失業率を下げようとするのを歯止めをかけるために、失業率と逆相関になっているインフレ率の上限を設けていると考えてよい。つまり、失業率が低下していれば、インフレ目標に達していないのは、さらに金融緩和せよとのシグナルになり得ても、それまでの金融緩和が間違っていたということにはならない。

インフレ率と失業率の間の逆相関は「フィリップス曲線」として知られている
 その上で、インフレ目標に達していないことについて、中央銀行には説明責任が出てくる。

 日銀の金融政策による雇用のパフォーマンスをみれば、失業率の低下のほか、就業者数の増加、有効求人倍率の上昇が顕著であり、これまでの金融緩和を否定する材料はない。ただし、インフレ目標の達成の説明では、原油価格の動向の影響があるとしたものの、2014年4月からの消費増税の影響にはできるだけ触れないようにしており、不十分である。

 黒田東彦(はるひこ)総裁自らが、消費増税しても影響が軽微と言っていたことから、総裁自身の説得的な説明力に疑問が出てしまうのだ。


 今後の金融政策を考えると、2つの選択肢が出てくる。1つは、金融緩和を現状維持で継続すること。もう1つは追加緩和である。

 マネタリーベース(中央銀行が供給する資金)残高が増加していれば金融緩和とみていいが、限界的に見れば金融緩和のスピードは落ちている。これは、実際の失業率がそろそろ構造失業率(筆者の推計では2%半ば)に近づいており、本格的な賃金上昇が始まるかどうかというギリギリの段階まで来ているからだ。

 政治的に見ても、失業率が下限にぶち当たった後にくる賃金上昇は経営者サイドにはすこぶる不満な事態となる。本来の金融政策としては望ましいものの、政治的な配慮をすれば、追加緩和に踏み切れないという面もある。

 もっとも、現状維持でも失業率が下がらず、その一方で賃金やインフレ率が高まらなければ、追加緩和すべきだとなる。その手法としては、目先の影響度・注目度を考えれば外債購入であるが、そのハードルは高い。秋に開かれる見通しの臨時国会では補正予算が打ち出され、国債増発となるだろうから、それを見計らって国債買い入れを若干増加させるというのが現実的な財政金融一体の対応策だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀は奇妙な景況感を捨て去り速やかに追加金融緩和せよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏は「黒田東彦(はるひこ)総裁自らが、消費増税しても影響が軽微と言っていたことから、総裁自身の説得的な説明力に疑問が出てしまうのだ」としています。

この認識は、奇妙といえば、奇妙でした。その奇妙な状態はその後も続き、現在も続いています。

昨年7月29日に日本銀行(以下、日銀)は金融政策決定会合で追加緩和を決定しまし
た。決定のポイントは (1)年間80兆円の国債購入ペースを維持、(2)日銀当座預金の超過準備(政策金利残高)に対するマイナス金利0.1%を維持、(3)ETF購入のペースを年間3.3兆円から6兆円に増額、(4) 次回の金融政策決定会合で2013年4月以降の量的・質的緩和(マイナス金利を含む)の検証を行うと要約できるものでした。いわゆる追加緩和は上記の(3)のみでした。

ETFとは証券取引所に上場されており、TOPIX(東証株価指数)等の指標に連動する投資信託を意味します。実は我が国におけるETFの市場はそれほど大きくはありません、野村資本市場研究所の推定によれば2016年2月末で14.5兆円程度です。


ETF市場14.5兆円のうち日銀が約6兆円を購入するという当事の追加緩和は一見すると大きな額のように見えました。しかし、実際にはそうでありせんでした。

日銀の使命は、日銀法に定められている通り「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展」に努めることです。言うまでもなくそのETF購入も国民経済の健全な発展のために行うのであって、ETF市場を活性化することにはありません。ETF購入は、日銀が株式市場全体に資金を供給することで、日本経済全体の活性化を図るものです。

しかし、東証一部上場企業の株だけでも時価総額は約500兆円前後(昨年7月末)あり、日銀が購入する6兆円はそれに比べて少額にすぎるといえます。つまり、当事の追加緩和は、2014年4月の消費増税以後、停滞が続く日本経済を回復させるにはまったく力不足であると言わざるをえないものでした。

さらに、政策決定会合後の記者会見で黒田東彦総裁は「英国のEU離脱問題や新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。日本銀行は、こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止する」ことが必要と述べており、その認識は間違いではなかったと思います。

日銀黒田総裁
しかし、黒田総裁が「わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」と述べた部分、さらに「その後は、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、潜在成長率を上回る成長を続け、基調として緩やかに拡大していく」の部分には大きく首を傾げざるを得ませんでした。

現実には2014年4月の消費増税以後、日本経済は民間需要が低迷し、黒田総裁が述べるような「前向きの循環メカニズム」が機能しているようには到底見えませんでした、どうしてあのような認識だったのでしょうか。

2013年4月に現在の日銀執行部が量的・質的緩和を始めて、すでに4年以上が経過しました。しかし、消費者物価指数でみたインフレ率(前年同月比)はブログ冒頭のグラフをご覧いただいてもおわかりなる通り、2%にはほど遠いです。

昨年からすでに失業率が下がらず、その一方で賃金やインフレ率も高まらならい状況が続いています。日銀は、このような状況を、奇妙な景況感でごまかすことなく、国内の景気が低迷していることを直視すべきです。

そして、より思い切った量的追加緩和策を検討し、次回の政策決定会合で実行に移すべきです。

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2017年7月26日水曜日

民進党、崩壊前夜の様相 桜井充参院議員「離党を含め考える」 相次ぐ執行部批判、離党予備軍に動きも―【私の論評】民進党は、自らの仕事の本質は何かを再定義せよ(゚д゚)!



民進党の蓮舫代表は、野田佳彦幹事長が東京都議選の敗北の責任を取って辞任することを受け、党役員人事に着手した。人心一新で求心力を回復したい考えだが、党勢低迷への反省が足りないとして代表辞任を求める声は根強い。離党や解党を模索する議員もおり、党崩壊の危機さえ漂う。

 「仙台市長選は、党の執行部が頑張ったという結果と違う。すみませんが『応援に入りたい』といわれたのもお断りした」

 民進党の桜井充参院議員=宮城選挙区=は25日の両院議員懇談会で、与野党対決の構図となった23日の仙台市長選で支援した新人候補の勝利に謝意を示しながらも、蓮舫執行部の求心力のなさを痛烈に批判した。

 桜井氏は発言後に両院懇を中座し、「都議選の総括文書を読む限り、全然反省は見えない」と記者団に対しても執行部批判を繰り返した。「(離党を含めて)仲間とこれからいろいろ考えたい」とも語った。

 離党届を準備する横山博幸衆院議員も両院懇後、「(離党は)最終的には個人判断だから、1日、2日よく考える」と述べた。

 両院懇では「蓮舫執行部は『新世代の民進党』というイメージはなく、旧世代の民主党という形だ」(宮崎岳志衆院議員)など党運営への批判が相次いだ。

 蓮舫氏は両院懇の最後に「勝てる政党にして政権交代を実現したい」と結束を呼び掛けたが、最大の「後見役」である野田氏を失う痛手は大きい。原口一博元総務相はさっそく「野田氏だけが辞めて済む話なのか」と牽制した。

 国会で内閣支持率が急落する安倍晋三政権を学校法人「加計学園」問題などで厳しく追及したところで、党の内紛が続けば反転攻勢は遠のくばかり。党の再生どころか、組織が溶解する危機さえある。

【私の論評】民進党は、自らの仕事の本質は何かを再定義せよ(゚д゚)!

民進党では、4月に憲法改正問題で細野豪志氏が代表代行を辞任したのに続き、6月7日、役員室長の柿沢未途衆院議員が辞表を提出しました。理由は、柿沢氏の妻である現職都議の幸絵氏が離党表明したためです。

前回の代表選で蓮舫氏を担いだ主流派から、離反が相次いでいます。

民進党・蓮舫代表の側近である柿沢未途氏が、党の役員室長の辞表提出後、 相次ぐ党幹部の辞任に、テレビ東京の取材で、蓮舫代表が周囲にこう漏らしたといいます。「もう限界だ…代表の仕事はもう飽きたよ」。

「もう限界」と漏らしつつも「飽きた」という表現を使うところがいやらしいです。あくまで代表としての実力不足が離党者の続出を生んだのに、その責任を回避するかのように「飽きた」という言葉を使っています。

蓮舫代表については森友・加計、日報問題と安倍政権の揚げ足取りに全力を尽くし、国民のための提案ができていない点をこのブログでも批判してきました。さらに個人的な二重国籍問題も炎上し、解決が図られないまま有耶無耶にされたっきりです。

柿沢未途氏はただの民進党議員ではありませんでした。蓮舫代表の側近だった人です。


身近な人間が党を離れるということは代表を見限ったということです。これまで信頼して重要なポジションを任せてきたのに窮地に陥っている状態で辞められたのです。蓮舫代表の精神面が追い詰められるのも当然といえば当然でした。

柿沢未途氏は言葉少なくも謝罪の意を表していました。色々な関係者に対しての謝罪なのでしょう。

朝日新聞には、以下のような内容の記事もありました。
「どうせ民進党はなくなる」幹事長辞任…内部にも解党論
辞意を表明した野田幹事長
 民進党の野田佳彦幹事長が自らの辞任を表明した。党内の反対論を押し切って幹事長に起用した蓮舫代表にとって大きな痛手だ。野田氏周辺は「外からでも(蓮舫氏を)支えられる」と話すものの、党勢回復の道筋はなお見えず、解党論がくすぶる党内ではリスクを抱えた再出発となる。
 民進党本部であった25日の両院議員懇談会。野田氏は「多くの皆さんから党のガバナンスの問題を指摘された。ガバナンスは幹事長の責任だ」などと述べた。

 東京都議選直後の3日の記者会見では、早々と続投の意向を表明。心配する側近議員から「辞任したほうがいい」と促されても、「蓮舫体制を支えるにはここで辞めるわけにはいかない」と明言していた。

 一転したのは、11~18日の都議選総括の会議。執行部刷新を求める声が相次ぎ、蓮舫氏の「二重国籍」問題も再燃。解党論をぶち上げた議員に野田氏が反論すると、「幹事長失格だ」と面罵された。
民進党の支持率を低迷させまくった蓮舫代表は結局何の成果も出すことができませんでした。組織の崩壊は内部から始まります。最も内情を知る者が辞め始めた民進党の瓦解はもはや止められないようです。最近では、自民党の支持率の低下ばかりがクローズアップさますが、民進党の低下も著しいです。


それにしても、なぜこのようなことになったのでしょうか。それは、結局のところ民進党内では、誰が正しい、誰が間違いという不毛な議論ばかりが行われているからです。

それは、党内部の問題だけではなく、国会運営にも如実に現れています。民進党の国会ではの活動は、安倍政権や安倍総理個人を攻撃するものです。

まさに「安倍政権がー」「安倍総理がー」というものがほとんどです。何が正しい、何が間違いという観点はなおざりにされ、この論点ばかりで、国会で質問をするというか、糾弾ばかり繰り返しています。

彼らは、こうした体質が染み付いてしまい、習い性となり、党内でもそのような論議ばかりするようです。やれ、蓮舫代表が正しい、誰が間違い、誰が正しいという、不毛な論議の落とし穴に嵌っているのです。これでは、正しい意思決定などできるはずがありません。

意思決定においては何が正しいかを考えなければならないです。そうして、どのような意思決定にも、相手や制約があるからこそ、ある程度の妥協はやむを得ないです。しかし、やがては妥協が必要になるからこそ、最初から誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならないのです。

中途半端に頭の良い人、しかも責任感のある人は、せっかくの意思決定も実行されなければ意味がないと思います。そのため、最初から落としどころとしての妥協を考えます。

しかし、妥協には2つの種類があるということを知るべきなのです。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基づくものです。前者では半分は必要条件を満足させます。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用となります。半分の赤ん坊では妥協にもなりません。

半分のパンは食用になるが半分の赤ん坊では妥協にもならない
何が受け入れられやすいか、何が反対を招くから触れるべきでないかを心配することは無益であって、時間の無駄です。心配したことは起こらず、予想しなかった困難や反対が突然ほとんど対処しがたい障害となって現れることになります。

何が受け入れられやすいかからスタートしても得るところはありません。それどころか、妥協の過程において大切なことを犠牲にし、正しい答えはもちろん、成果に結びつく可能性のある答を得る望みさえ失うのです。そうして、八方塞がりになるのです。

政治の世界での意思決定のほとんどは妥協の産物です。しかし、この妥協が曲者です。妥協するにも正しい妥協と、間違った妥協があることは上ですでに述べました。民進党は、間違った妥協を繰り返し、結局多数の半分の赤ん坊を得るはめに至り、失敗を繰り返しているのです。この落とし穴から抜け出さない限り、民進党は立ち直ることはできません。

たとえば、蓮舫代表が辞任するというのも妥協です。しかし、たとえ蓮舫代表が辞任したとしても、それだけで民進党の党勢が回復するようなことはありません。民進党の体質の何かを変えなければならないはずです。そのこともせずに、蓮舫氏がただ辞任したとしても何も変わりありません。

そもそも、民進党はご存知のように、バラバラです。これをまず解消しなければならないです。あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠です。

無論、「事業=ビジネス」というと、民間企業のことであり、政党などの組織とは関係ないと思われてしまうかもしれません。しかし、それは違います。特に米国では、政治のせかいでもビジネスという言葉を使いますし、学校や、非営利企業などでも用いられます。

要するに、遊びではなく、仕事という意味と考えるべきです。民進党は、自分たちの仕事は何か。何であるべきなのか」を自問して定義すべきなのです。

これは、当たり前のように見えても、実際にやってみるとそうではないし、非常に困難だし、時間もかかることがわかると思います。

しかし、これを行わない限り、民進党はバラバラのまま瓦解するしかありません。今の民進党は、このような本質に取り組まず、不毛な論議を繰り返し、半分の赤ん坊という妥協にもならない妥協を繰り返しているだけです。今のままだと、社民党のような政党になるのは目に見えています。

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2017年7月25日火曜日

【書評】『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか? ──“カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』―【私の論評】霊性の息づく国日本ならではのキティちゃん(゚д゚)!

【書評】『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか? ──“カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』


 本書は、ハワイ大学人類学部教授の日系女性人類学者が、ハローキティがいかにして世界に広がり、どのように受容されていったかを、足かけ12年にわたって、日米のサンリオ関係者、アメリカにおけるキティファン、批評家などへのインタビューと文献の調査によって解き明かそうとした大著。

著書のクリスチャン・ヤノ氏
 著者は〈「カワイイ」を体現した物品や図像が、日本から世界各地に国境を越えて広まっていく現象〉を〈ピンクのグローバリゼーション〉と名付け、キティをその先頭走者と位置付けている。
レディー・ガガの「キティちゃん」の誕生日の時の衣装
 レディー・ガガなどのセレブがキティを好んでいることはよく知られているが、その一方、アメリカでは、キティは「従順でおとなしい」というアジア系女性のステロタイプなイメージの権化と捉えられ、それゆえに他ならぬアジア系女性のフェミニストから憎しみの対象となっているという。そうかと思うと、非西洋世界から侵入してきたグローバリゼーションへの警戒感からか、一部のキリスト教右派からは「ジャップの悪魔的な狂信教」などと糾弾されている。

 逆に、パンク、アングラ、ゲイ、レズビアンなどのマイノリティにとって、反逆や解放の象徴になっている。本書にはキティを模ったプラカードを掲げてパレードをするアジア系ゲイ団体の写真も掲載されている。

Houston Gay Pride Parade 2009
 キティは、西洋が非西洋を支配するという権力構造に抗って西洋に浸透したキャラクターと捉えられ、反逆や解放のシンボルになったのだ。ちなみに、アメリカのシンボルであるミッキーマウスは決して反逆、解放のシンボルにはならないという。

 日本人の知らないさまざまなキティ現象が具体的に紹介されており、非常に興味深い。

【私の論評】霊性の息づく国日本ならではのキティちゃん(゚д゚)!

ご存じのように「KAWAii(カワイイ)」は今ではTSUNAMI(津波)同様、世界で通じる日本語の一つです。2012~13年頃から、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、BABYMETALなどのアーティストが海外進出したことも、日本発の「KAWAii文化」の広がりを後押しました。しかしその元祖的な存在はと言えば、70年代から世界進出を果たしていたサンリオの大人気キャラクター、ハローキティなのです。



ではいったい、なぜハローキティは世界で受け入れられたのか? そして、キティを軸とした「KAWAii文化」から見えてくる日本とは、どんな国なのか? そんな考察を外国人視点から学んでみたいという人にオススメしたいのが、この書籍です。

日系人のハワイ大学人類学部教授で人類学博士という著者のヤノ氏は、1998年から2010年までの12年をかけてキティの調査研究を行い、その成果を約500頁の大作にまとめたのが本書です。

そして著者は、キティと「KAWAii文化」を人類学というアカデミズムの見地から分析することで浮かび上がる日本のキャラクター文化が、日本国内のみならず、世界規模で担う経済的・精神的役割を解明しようと試みています。

そんな本書には、キティを取り囲む様々な人たちが登場する。本書冒頭には、日本のサンリオ本社から、キティの3代目デザイナーである山口裕子氏がインタビューに答えています。キティと言えば、口がないのが特徴ですが、その理由を皆さんはご存知でしょうか。

3代目デザイナーである山口裕子氏
山口 キティを眺める人が、そこに自分の感情を映して読み取れるようにするためです。(中略)皆さんが幸せならキティも幸せそうに見えるし、悲しいときはキティも悲しげです。こうした心理的メカニズムのことを踏まえて、キティにはあえてどんな感情も面に出さないようにしました。

本書ではこうしたサンリオの企業戦略も詳細に分析されますが、多くのページは主に米国在住の成人したキティファン(キティファンを公言するレディ・ガガのエピソードなども登場)およびアンチ派への取材で構成されています。

中でもユニークな現象だと感じたのは、米国では、LGBT(性的マイノリティ)団体やパンクロック・アーティストたちが、自分たちのステイタスを代弁するアイコンとして、キティを活用しているというレポートです。

こうしたキティに対する賛否両論の取材を通して、著者は自身の造語である「ピンクのグローバリゼーション」(ピンク色に象徴される日本発「KAWA ii文化」が世界に広がっている現象)の本質を浮き彫りにしていきます。

赤のキティちやんビキニでご満悦のヘイデン・パネッティーア1
そして最後の「キティが生まれた国」と題された第8章では、企業から警察、首相、政府機関まで、すべてがマスコットキャラクターを持つ日本のキャラクター文化の分析や、全国の土産物店で活躍するキティを通して見た日本の贈答文化などへも言及され、「KAWA ii文化」の背後にある日本人の精神などが考察されています。

そんなハローキティことキティ・ホワイト(ロンドン生まれ)は、2014年11月1日に40歳の誕生日を迎えました。これを祝して米国カリフォルニア州の全米日系人博物館では、世界最大規模のハローキティ展覧会「ハロー!キティのスーパーキュートな世界への体験」(2014年10月11日~2015年5月31日)が開催され、この展覧会を取りまとめた学芸員が本書著者のヤノ氏でした。

ヤノ氏はこの展覧会の準備中、サンリオ本社からのある訂正依頼に驚愕する。それは「キティは猫ではなく、人間の女の子です」というものだった。著者がこの事実を知らされたのは、本書執筆後のことです。そして、このことの顛末に関しては、本書あとがきで訳者が詳細に記しているので、興味のある方はぜひ、そちらもしっかりと読んでほしいです。

本書を読むと、キティのプロフィールがしっかりと調べあげられ、記されているにもかかわらず、それでも著者は「キティは猫」と信じて本書の執筆にあたっていたようです。もっとも、キティが「猫か人間か」ということは、世界中のファンにも、そして本書の分析にも大きな影響を与えていないことも事実です。「眺める人が自由に創造できるアイコン」それがキティであり、世界を魅了するその秘密なのですから。

赤のキティちやんビキニでご満悦のヘイデン・パネッティーア2

ハローキティのキャラクターとしての開発は1974年で、公式にはこの年が誕生年になっていますが、初号グッズの販売は1975年3月です。最初のグッズはビニール製のがま口「プチパース」でした(当時の定価は240円)。

ハローキティの最初のグッズは「プチパース」
ちなみに、絵画やイラストは「著作物」ですが小物にあしらう図案は「意匠」といいます。コンテンツとデザインの違いです。この違いは19世紀後半のホームズの時代までさかのぼります。国際条約でこれらに線が引かれたのです。

西洋人が自分たちの知財利権を整備するために恣意的にに線を引いたのです。これは、中東に勝手に国境線を引いて「ここからはイギリス、ここからはフランス、ここからはベルギーの領土」等と定めていって、あとで問題が複雑化したのと同じ時代精神によるものです。

西洋人が自分たちの勝手で引いた線を跳び越えていく。「デザイン」を出自としながら「コンテンツ」と読み替えられることで「キャラクター」に進化したのがキティでした。

ミッキーマウスが「コンテンツ」出自のキャラクターだったのに対し、キティは「デザイン」出自のキャラクターでした。前者はコンテンツから商品展開してキャラクターとなったのですが後者は商品展開からキャラクターになりました。

これは、まさに越境のシンボルです。アジア系でゲイであるマイノリティな人々が、自分たちの存在をアピールするためにキティを掲げ、あっという間にパレードの主役になってみせたのも「越境」によるものです。キティの越境パワーがこんなところで全開したのです。

ミッキーとのもうひとつの違いは先にも掲載したように、口がないことです。自己主張する部位がもとからないので、「キャラクター」でありつつも「デザイン」に留まり続けるのです。つまりどのような解釈も、どのような感情移入も許容してしまうのです。

この、どのような解釈もどのような感情移入も許してしまうというところが、いかにも人的であり、他国には真似出来ないところです。

私にはハローキティーは、何やら、日本人の八百万の神を受け入れる精神を具現しているような気がします。

日本人は、昔から人はもとより万物に霊がやどるものとして生きてきました。そうして、それらを神(deity)として、多くの霊を受け入れてきました。

ハローキティーは、現在でも、連綿として霊性が息づく日本でないと生まれなかったのではないかと思います。

日本が霊性の国であることは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事の、リンクを以下に掲載します。
「中韓」とは異質な日本人の「精神世界」…仏作家は「21世紀は霊性の時代。日本は神話が生きる唯一の国」と予言した―【私の論評】日本は特異な国だが、その特異さが本当に世界の人々に認められ理解されたとき世界は変る。いや、変わらざるをえない(゚д゚)!
式年遷宮「遷御の儀」で現正殿から新正殿に向かう渡御行列。
伊勢神宮は日本人と心のふるさと、未来への道しるべだ
=平成25年10月2日夜、三重県伊勢市の伊勢神宮

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、日本は霊性の国であることを掲載しました。以下に結論部分から一部を引用します。
このように、神話が現代なお生きているのが日本であり、日本それ自体が、神話そのものの国で、他国の影響を吸収し切って、連綿たる一個の超越性を保つ国が日本であり、霊性の根源に万世一系の天皇がある国が日本なのです。そうして、マルローが指摘したかどうかは、わかりませんが、日本では、過去が現在に現在が未来につながっているのです。そうなのです。霊的に時間を超越してつながっているのです。私たちの霊は、この悠久の流れにつながっているのです。こんなことは、当然であり、だからこそ、マルローも指摘しなかったのかもしれません。 
私たち日本人は、このような国日本に誇りを持ち、自信を持ち、世界に日本の素晴らしさを伝えていくべきです。日本のやり方が、世界伝わりそれが理解されれば、世界は変わります。
この結論に付け加えると、外国においてもかつてシャーマニズムやアニミズムという形式で、霊を重んじる気風があったにもかかわらず、宗教の成立とともに、これをほとんど捨て去ったにもかかわらず、日本ではこれを昇華し現代にまでそれを連綿と受け継いでいるという特異な点があります。

この霊性を重んじるという気風があるからこそ、八百万の神を受け入れ、日本では大きな宗教対立もなく現在に至っているのです。

この精神の宿る日本だからこそ、キティちゃんのようなキャラクターができたと私は考えているのです。

そうして、私はこのブログの記事でも述べたように、日本は特異な国ですが、その特異さが本当に世界の人々に認められ理解されたとき世界は変ると思っています。

世界が日本のやり方を見習えば、宗教紛争はかなり減ると思います。そうして、私は、世界にこれを理解してもらうことは、かなり困難なことであると思ったのですが、良く考えてみると、キティちゃんの「どのような解釈も、どのような感情移入も許容してしまう」というところが、まさに霊性の世界に入るきっかけともなるのではないかと思うのです。

だからこそ、マイノリティーの人々も「眺める人が自由に創造できるアイコン」としてのキティちゃんを自分たちのステイタスを代弁するアイコンとして活用しているのでしょう。

そうして、ブログ冒頭の記事では、このアイコンを反逆や解放の象徴としているとしているようですが、私はこの解釈は違うと思います。彼らがアイコンとしてキティちゃんを用いるのは、やはり日本のようにすべてを受け入れるという包容のシンボルとしているのだと思います。自分たちも、一般社会から受け入れられたいし、一般の人たちのことも自分たちの中に受け入れたいということを表象しているのだと思います。

そうして、西欧ではシャーマニズムやアニムズムは宗教と対立する概念であり、宗教はより優れて高尚なものであり、シャーマニズムやアニミズムは、野蛮で未熟なものであるという考えがあります。

だからこそ、西欧の一部のキリスト教右派からは「ジャップの悪魔的な狂信教」などと糾弾されているのです。

しかし、キティちゃんのことが理解されれば、本当に世界は変わっていくかもしれません。キティちゃんだけでは、それは無理なのかもしれませんが、キティちゃんを含めた、様々な方面でキティちゃん的なものが、日本から海外に越境すれば、いずれ日本の霊性の気風が息づく社会の本質も理解され、世界も変わっていくのではないかと思います。

そうして、それを実行するのは、そうです私達全員です。特に、若い世代の人々です。

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2017年7月24日月曜日

稲田問題のリーク源から、安倍内閣「倒閣運動」の深刻度が見えてくる―【私の論評】森・加計・日報問題の背後に財務省(゚д゚)!

稲田問題のリーク源から、安倍内閣「倒閣運動」の深刻度が見えてくる

稲田防衛大臣
   面白い資料が出てきた

森友学園問題、加計学園問題については、本コラムでそれぞれの問題の本質を明らかにしてきた。

森友学園問題では、当初の段階で公開入札手続きをとらなかったという近畿財務局のチョンボ(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51362)であり、加計学園問題では、50年以上獣医学部の新設を拒否してきた文科省告示の存在とそれを巡る既得権派と規制緩和派の争いである(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)、というものだ。

その問題本質の理解を妨げたのが、役所における公文書管理である。筆者にとっては、各種資料から、森友学園問題、加計学園問題について結論を出しているが、一般からみてそれらが分かりにくいのは事実だ。

森友学園問題では、「森友学園側の不正補助金授受」という形で事件化されて、ことが終わろうとしている。もちろん、この問題についてももろもろ論点はあるのだが、なにしろ「財務省の文書は破棄した」という言い方に終始したのは、政府への信頼を大きく損ねただろう。

実際、筆者は森友学園問題の構図を探るためにいろいろと資料をさがしたのだが、結局、鴻池議員の事務所のメモ(これは、各種資料と照らし合わせても信憑性が高いものである)に頼らざるを得なかった。本来であれば、財務省に管理されているしかるべき公文書をみれば直ぐわかることなのに、それがないゆえに解明に難渋した。

一方、加計学園問題では、その点かなり楽だった、当事者である文科省と内閣府双方の合意済みの特区諮問会議、ワーキンググループの議事録が残されており、それらと前川氏の記者会見や文科省からリークされたメモが齟齬していたからだ。筆者が本コラムで書いてきた問題の本質は、10日の閉会中審査での加戸守行前愛媛県知事の国会証言、14日に行われた京都産業大の記者会見で、結局明らかになった。

その後、週刊誌が、昨年11月17日、山本幸三行革大臣は蔵内勇夫日本獣医師会会長らと面談した際、「新設校は加計学園で決定した」という、抵抗勢力であった獣医師会側からのリークメモを報じた(ただし、これについて、蔵内氏自身が、その面談の際には、京都産業大学の名前も出ていたと、山本大臣に軍配を上げ、週刊誌報道を否定した→https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170720-00000004-tncv-l40)。

いずれにしても、加計学園問題は、森友学園問題に比べて公開されている議事録や資料が多いので、その解明は難しくなかった。

筆者は、加計問題でのいわゆる「石破4条件」について、文科省の挙証責任を指摘してきた(5月29日付け本コラム http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51868)。しかし、「石破4条件の挙証責任は文科省にはない」という。実際、前川喜平・前文科事務次官ほか、文科省関係者はそう主張してきた。

規制官庁側に挙証責任があるというのは、本コラムで書いたように役所の常識であるし、閣議決定された特区基本方針にも書かれている、にもかかわらずだ。

それについて面白い資料が見つかった。2005年7月12日の規制改革会議の議事録だ(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/minutes/wg/2005/0712/summary050712_01.pdf)。そこには、課長時代の前川氏が登場している。ご一読いただければ分かるが、その当時から前川氏は「挙証責任」が理解できておらず、草刈隆郎規制改革会議議長から、規制改革会議への出入りを禁止されていたのだ。このような非常識な役人が次官になるというのが、文科省の最大の問題点だろう。

さて、前置きが長くなったが、今回は稲田防衛大臣の諸々の問題について解説を加えたい。

   支持率低下の理由は「女性」にアリ

まずは各種報道から時系列を整理しておこう。

昨年7月、国連平和維持活動(PKO)をしている南スーダンで政府軍と反政府軍の間で「戦闘」があった。

9月30日、フリージャーナリストが防衛省に、PKO派遣されている部隊の「日報」開示を請求

12月2日、「日報」の情報開示請求に対して、防衛省は「日報はすでに廃棄し存在しない」とし不開示を決定

12月16日、稲田防衛大臣が再調査を指示

12月26日、電子データが統合幕僚監部に存在

今年1月27日、稲田防衛大臣に対し電子データが統合幕僚監部存在していたことを報告

2月7日、日報公開

2月15日、《省内会議 陸上幕僚監部で電子データとして保管、保管データは公表しない方針》(?)

3月16日、衆院安全保障委員会において、陸上幕僚監部で日報が保管されていた疑惑に対して、稲田防衛大臣が「報告はされなかった」と答弁

3月17日、防衛省防衛監察本部による特別防衛監察が設置され、解明が進められることに

まず、国民との関係でみれば、日報自体は2月7日に公開されているので、大きな実害はない。どこの部署で保管されていたかどうかが議論になっており、これは部内では問題であるが、国民との関係では些細な問題である。しかも、その後、南スーダンからPKO部隊は撤収されているので、この点でも、安全保障政策上の問題はまずない。

もっとも、防衛省の部内問題であるとはいえ、稲田防衛大臣が国会で「虚偽答弁」をしていたのであれば、それは問題である。それが今クローズアップされているのは、森友学園問題で、弁護士時代の活動についての国会発言が訂正されたり、先の都議選での自衛隊に関する不適切な失言があったからだ。

特に、都議選での失言(「防衛省、自衛隊としても(自民党候補の応援を)お願いしたい」と発言したもの)は弁解の余地はないくらい酷いものだ。筆者はたまたま失言が行われた選挙区の住民であったが、この失言と隣接地区選出の豊田真由子議員の暴言によって、自民党への大きな批判が起こるのを身近に感じた。

なお、2カ月前までの安倍政権の高い支持率には、小泉純一郎政権以降と比べて、いくつかの特徴があった。

年代別でみると、他の政権では、一般的に高齢世代ほど支持率が高い傾向があったが、安倍政権は逆に若い世代ほど支持率が高かった。男女別でみると、他の政権では男女で支持率の差は少ないが、安倍政権は男性の支持率が高かった。第2次、第3次安倍政権は、10年前の第1次安倍政権と比べても、世代別政権支持率と男女別政権支持率は異なっている。

最近になって支持率が急落した要因は、女性の支持率がさらに下がったことが大きい。強引な国会運営に加えて、豊田真由子議員の暴言、稲田朋美防衛大臣の失言も背景にあると筆者はみている。

豊田氏の暴言は本当にひどいものだった。これで高齢世代の男性の支持も大きく失ったはずだ。筆者もあの発言がテレビで流れるたびに腹が立ったものだ。

また、稲田防衛大臣の失言もひどかった。ある女性芸能関係者は、ワイドショーのなかで「神妙になるべき会見で、稲田防衛大臣のつけまつげはその場にふさわしくない」と指摘していた。こうした点に女性は敏感である。

   一種の「クーデター」だったのか

話を稲田防衛大臣の国会における虚偽答弁に戻すと、国民への開示や安全保障政策上の問題というより、議員本人の信頼の問題だろう。ただし、これを文書管理の観点から白黒つけるのは難しい。公文書があったとしても、開示するのは難しいからだ。

もしかすると、稲田防衛大臣のいうとおり、大臣は日報問題について防衛省から報告を受けていなかった可能性もある。たしかに、2月7日には日報が公開されていることから、稲田防衛大臣には隠蔽するインセンティブはない。しかしながら、これほどまで防衛省からのリークがあること自体が、シビリアンコントロールの観点から考えても異常なことだと言わざるを得ない。

筆者の役人時代の感覚からいえば、「軍隊組織」に近いほど上から下までの統率が取れているものだ。その代表格は防衛省、警察である。その意味からいえば、森友学園では財務省から一切情報が出ないで、加計学園問題では文科省からのリークが出たのは、想定内の話だ(文科省の方が、より軍隊組織からは遠いという意味だ)。

もちろん、防衛省からも自己組織に有利なリークが行われることはあるが、今回のような防衛大臣を貶めるリークは聞いたことがない。これまで、防衛省は、どのような人が防衛大臣になったとしても、組織として必死に支えてきたはずだ。

一部には、特別防衛監察の結果があまりに酷く、稲田防衛大臣にまったく責任が及んでいない点から、防衛省内での一種の「クーデター」だったのではないかという意見もある。

また、一部のテレビ局が報じたが、日報問題の「監察結果の概要」が画像付きでスクープされたり、防衛大臣室でのやりとりで稲田防衛大臣が「けしからん」といった、という報道も気にかかる。

テレビのスクープ報道のキャプチャ
監察結果の画像付きスクープは、「監察結果の概要」が外部に漏れていることを示唆するし、「けしからん」が防衛大臣の口癖であることは、知っている人は知っている話だ。これは、ひょっとしたら、安倍政権の倒閣運動が、各省庁の段階ではなく、かなりの広範囲で行われている可能性も示唆しているのだ。

    もろもろぶっ飛ぶ

いずれにしても、稲田防衛大臣の下では、防衛省の組織統率が取れていないの事実であるので、仮に稲田防衛大臣が虚偽答弁をしていなくても、大臣失格であるのは間違いない。8月上旬の内閣改造を待たずに辞任する可能性もあるだろう。短期間であれば、首相が兼務するという方法もある。

さて、安倍政権の倒閣が行われた場合、経済政策にかなりの変化が起こることは、7月10日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)で書いた。もちろん、教育の無償化を憲法改正で行うという議論もぶっ飛ぶだろう。

教育の無償化は、憲法改正なしでも立法政策として可能だという意見もあるが、その問題点は18日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52319)で書いてある。

安倍首相は、教育を投資とみて教育国債を発行する考え方にも理解をしている。これは、23日に行われた日本青年会議所(JC)との会合でも明らかになっている(日経新聞「首相、教育国債「次代にツケ残さず」 無償化財源めぐり 可能性排除せず」 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK23H0B_T20C17A7000000/)。この点は、ポスト安倍といわれる政治家とは異なっていることに留意すべきである。倒閣というなら、もろもろのデメリットも考慮したうえでいうべきだろう。

こうした点も含めて、24日(月)と25日(火)の国会閉会中審査が安倍政権の支持率反転につながるのかどうか、注目したい。

【私の論評】森・加計・日報問題の背後に財務省(゚д゚)!

高橋洋一氏は、ブログ冒頭の記事で、「これは、ひょっとしたら、安倍政権の倒閣運動が、各省庁の段階ではなく、かなりの広範囲で行われている可能性も示唆しているのだ」と指摘しています。

これは、おおいにありそうなことです。何やら、今回の森友に始まり、加計で国会閉会中審査が開催され、さらに日報問題と立て続けに起こる、倒閣運動は従来にはみないスケールです。

これに対して、高橋洋一氏はこの倒閣運動が広範囲となっているその背景については掲載していません。しかし、ヒントは掲載しています。

最後のほうで、高橋洋一氏は、安倍政権の倒閣が行われた場合、経済政策にかなりの変化がおこることを指摘しています。さらには、教育無償化を憲法改正で行うという議論もぶっ飛ぶとしています。

さて、これらに関与する官庁はどこかといえば、それは無論財務省です。財務省はとにかく何が何でも、増税をしたいという立場です。

福田淳一 次期財務事務次官
ところが、今までのところ複数回にわたって、10%増税を安倍総理に阻止されてきました。そうして、このままだと永久に阻止されてしないかねないという危機感を持っていることでしょう。

そこで、財務省はこの危機を打開するために、当然のことながら安倍政権の倒閣運動に向かうという筋書きはかなり自然な成り行きです。

そうして、文科省や防衛省など単独では、とてもこのような動きはできません。しかし、財務省なら、政府の金を管理しているということで、他省庁にもにらみを利かすことができるし、他省庁が何かをしようとしても、結局予算がなければ、何もできないということで、予算を司る財務省にはなかなか頭が上がらないという現実もあります。

財務省と他の省庁との違い、特に文科省との違いについては、一昨日のこのブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
「石破4条件」の真相はこれだ!学部新設認めない「告示」の正当性示せなかった文科省―【私の論評】財務省のような粘りのない文科省の腰砕けを露呈したのが加計問題の本質(゚д゚)!
石破茂氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に文科省と財務省の違いを指摘する部分のみ引用します。
ところが、ここから文科省は猛烈なサボタージュを始めました。八田は内閣府を通じて文科省に検討状況を何度も尋ねたのですが、期限である「28年3月末」が過ぎても明確な回答はありませんでした。結局、WG会合が開催されたのは、期限の半年近く後の同年9月16日でした。 
ちなみに「需要見通し」は、「複数の微分方程式体系からなる数理モデル」です。獣医師は足りているということを文科省は微分方程式を書いて証明すれば良かったのです。しかし、これは、文系事務官僚の手に負える代物ではないです。 
しかし、何も自分たちでやらなくても、省外の誰か数学の得意な人に顧問にでもなってもらいその人にやってもらえば、それで良かったはずです。そうして、その結果を他の複数の人に検証してもらえばそれで良かったはずです。でも、彼らにはそれをしませんでした。 
本当は誰かに頼んで、やってもらったのかもしれません。しかし、いくら数理モデルにあてはめたにしても、本当に足りなければ足りないなりの結果しかでません。外部に頼んだにしても、外部の数理研究者なども嘘をつくわけにはいきません。 
そこで、文科省は諦めてしまったのでしょう。文科省はこの点においては、財務省には負けてしまうようです。財務省の場合は、このような場合でも無理をしてでも、何とか自分たちの都合の良い資料を作り上げます。 
たとえば、デフレなど景気の悪い時には、マクロ経済学的には、減税、給付金、公共工事などの積極財政をせよと教えていますが、財務省はこの教えに背いて、デフレ気味味の現状でも増税をするための根拠を何とかでっちあげています。 
そうして、増税の根拠をご説明資料にまとめて、政治家やマスコミなどに足繁くかよい説明をして、その根拠をまわりに信じ込ませ、とうとう8%増税を安倍政権に実行させてしまいました。しかし、この根拠はでっちあげだったことは、増税後の大失敗ですぐに暴露されました。 
この手口は、詳しく分析してみると、数理モデルを駆使するような高度なものではありません。良く分析するといくつもの錯誤の上に成り立っていることは確かです。たとえば、財政と税制の一体改革なるものを打ち出し、まともな医療や社会保障を受けたいのであれば、増税に甘んじなければならないなどと、多くの人の情感に訴えるものであったり、明らかな錯誤の上に成り立つものです。
財務省の嘘を暴く高橋洋一氏の番組
その手口の中心は、政府の負債だけに注目させて、資産を無視して、国の借金1000兆円であり、政府は借金塗れであるようにみせかけるというものです。また、統合政府という、日銀と政府を含めた尺度見た統合政府の財政状況なども無視です。これなど、民間企業では連結決算ということで当たり前になっていることですが、それが明るみに出れば、政府の借金など幻想に過ぎないということが国民知れてしまうで、財務省はおくびにも出しません。
財務省は、自分たちの省益を守り抜くには、ここまでやり抜くのですが、文科省にはこうした根気や、覚悟がなかったようです。さすがに、一流官庁といわれる財務省と最低といわれる文科省の違いです。(無論これでは、財務省も国民にとって良くはないのですが、目標に向かって執着心を持って、努力するという意味では財務省のほうが優れているという意味です)
この文科省に比較して、はるかに粘り腰の強い、財務省が、従来のように財務省単独で、安倍政権を手玉にとったり、場合によっては弱体化させ事実上の倒閣にもっていくことができれば、財務省の最大目標である「増税」を心おきなく実行できます。

菅官房長官と安倍総理
とにかく、安倍政権がなくなれば、その後は自民党政権であろうが、民主党政権であろうが、その他の政党や連立政権であろうとも、安倍総理とその側近以外はほとんどが増税派ですから、増税は簡単にできます。

彼らにしてみれば、10%増税など序の口で、最終的には25%増税を目指していることでしょう。しかし、このような財務省の試みに対して、安倍政権一度は8%増税で負けたものの、 増税延期を公約とした選挙で大勝して、増税を阻止したり、その後は選挙に頼ることもなく延長を一方的に決めてしまいまいました。

これでは、省是である「増税」を完璧に阻まれると認識した財務省は、最後の賭けにでたのでしょう。とにかく、安倍政権と刺し違えてでも、増税を成就させるという腹なのでしょう。

そのため、従来は主に財務省がコーディネートして、政治家や民進党などの野党、マスコミやいわゆる識者を動かし、増税キャンペーンに巻き込んていた状況から、やり方を変え、多くの省庁を巻き込むさらに広範な形で、安倍政権倒閣運動にのめり込んでいる状況なのでしょう。

高橋洋一氏としては、これを言いたかったのでしょうが、現状のところでは、確たる証拠もないので、ブログ冒頭のような記事のような書き方になったのでしょう。しかし、経済に少し詳しい人や、政局に詳しい人が読めば、おそらく私と同じ解釈になるに違いないです。

死に物狂いの財務省は、たとえ現役次官など複数の高級官僚のクビが飛んだとしても、各省庁を巻き込んで、安倍政権に挑み、何とか安倍政権をなきものにしようともくろんでいるのでしょう。

そうなると、今後も森友・加計、日報問題と同じようなことが続くものと考えられます。さて、次は何なのか、思いもかけないところから、また問題が発生するかもしれません。

現在の安倍政権は従来とは異なる「2つの武器」を手にしています。官邸(内閣官房)に「内閣人事局」を設置して各省幹部の人事権を掌握したことと、特定秘密保護法の制定です。今のところ、これを十分に使うには至っていませんが、今後は駆使することでしょう。これによって、官邸は官僚から政治力を奪い、政治主導に徹しようと考えています。

これに対して、霞が関全体が財務省をリーダーに、支配権を取り戻そうとスクラムを組んだか、組もうとしているのが現状です。

しかし、このような財務省の活動は本来許されるものではありません。そもも、財務省などの各省庁は、政府の下部機関にすぎません。会社でいえば、官邸は本部や本社のような存在です。各省庁は、財務部や総務部、あるいは小会社のような存在です。

それに、官僚は国民の信託を受けているわけではないですが、政治家は選挙によって国民の信託を受けて、政府を構成しているのです。

本部や本社が、下部組織であるはずの部や、小会社に支配されるようなことがあっはならないはずです。それでは、会社全体を統治することできません。

安倍総理も座して死を待つつもりは全くないでしょう。今後、官邸と財務省の間にはかつてなかった壮大な大バトルが始まります。この戦いに官邸が負ければ、10%増税が行われ、その他の緊縮財政が導入され、日本はまた失われた20年に突入し選挙など有名無実になり官僚支配が完璧に定着することでしょう。

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2017年7月23日日曜日

「空母大国」に突き進む中国に待ち受ける「財政の大惨事」 米専門家指摘に反論「偉業を快く思っていない」―【私の論評】日本は既に戦闘力では米空母と同等ものを建造できる(゚д゚)!

「空母大国」に突き進む中国に待ち受ける「財政の大惨事」 米専門家指摘に反論「偉業を快く思っていない」

大連港で進水した中国初の国産空母(今年4月26日撮影)
【国際情勢分析】

 4月26日、中国初の国産空母が遼寧省大連の建造ドックから進水し、軍当局は「わが国の空母建造は重大な段階的成果を得た」(国防省報道官)と自賛した。上海では2隻目の国産空母が建造中で、原子力空母の建造も視野に入れるなど中国は「空母大国」に向け突き進んでいる。一方で巨費を投じる空母の建造が中国の財政を圧迫するとの指摘も米国の専門家から出ている。

将来、中国の空母戦力が「財政的な大惨事」を招く-。米ニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」は新空母の進水にあたり、米軍事専門家の分析を紹介した。

「計画が見直されない限り、中国の空母は大きな財政的難題となるだろう。空母への資源の投入は米国においても巨大な財政負担となっている」

こうした専門家の見方の背景にあるのが、中国における空母建造の進め方だ。新空母は中国初の空母「遼寧」の前身である旧ソ連の未完成空母「ワリヤーグ」を元に設計、改良したもの。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、艦載機の殲(J)15の収用数は遼寧の18~24機から8機程度増える見通しだ。一方、スキージャンプ方式の甲板によって艦載機自らの推力で発艦する方式を踏襲しており、艦載機の搭載燃料や武器重量が制限される課題は残されたままだ。

上海で建造中の空母は、まったく別タイプの設計とみられている。現在の米原子力空母に設置されている、高圧蒸気で艦載機を発進させる装置「カタパルト」(射出機)を備えていると同サイトは予測。さらに次世代の空母は、リニアモーターによる電磁式カタパルトが設置され、原子力による動力システムが導入されると分析する。

ただ日本の軍事アナリストによれば、中国は現在、蒸気カタパルトよりも高度な技術が必要な電磁式カタパルトを優先的に開発しているもようだ。通常動力型の空母に蒸気カタパルトを搭載すれば、船の動力の相当部分をカタパルトが消費してしまうためだ。

いずれにしろ、大連と上海の空母は設計思想が根本的に異なっており、それぞれを運用させた上で設計を統一するとみられている。

こうした中国のやり方に対して、米国の空母設計の専門家は同サイトにこう指摘している。「甚だしく設計が異なるタイプの艦隊を運用するのは、効果的な空母戦力を形成する方法ではない。いずれ後方支援上の悪夢であることが明らかになるだろう」

また別の米研究者は「海軍の艦船の維持には巨額のコストがかかる。それ(空母の建造)は絶え間なく拡大を続ける資源の消耗であり、手遅れになるまで中国側は気づかないだろう」と警告した。

ロシアメディアは2013年、中国初の国産空母の建造費用が約30億ドル(約3300億円)に上るとの建造関係者の話を報じている。空母打撃群としての運用・維持には、さらに数千人の空母乗組員や数十の艦載機、さらには一体運用する駆逐艦や潜水艦などが必要となり、莫大(ばくだい)な費用がかかることは間違いない。

「空母に投じられた資金は、ただの浪費ではなく投資だ」

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は、ワシントン・フリービーコンへの反論を掲載した。中国人専門家は「国産空母には8000もの革新的技術が使用されている」として、空母の建造が電子設備や動力、鋼材などの製造分野での技術向上につながったと主張した。

また別の専門家は、今後数年間で中国が空母を複数建造した場合、投資額は計1300億元(約2兆800億円)に上り、中国の経済成長を刺激すると指摘。ハイテク分野での雇用創出や、コンピューター・通信産業などの発展をもたらし、国内総生産(GDP)への直接的な貢献額は数千億元に上ると楽観的な見方を示した。

米国は現在10隻の空母を保有しており、さらに2隻を建造中だ。中国はそこまで多くの空母を建造するつもりはないとして、中国の専門家は同サイトの「財政危機説」を否定する。「そうした考え方は完全に間違っている。米国の専門家が中国をよく理解していないか、われわれの偉業を快く思っていないかだ」(中国総局 西見由章)

【私の論評】日本は既に戦闘力では米空母と同等ものを建造できる(゚д゚)!

中国初の国産空母とされる、最新鋭のものとあまり変わりがないともいわれている空母「遼寧」のボロ船ぶりについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下掲載します。
【中国空母、太平洋進出】遼寧は台湾南部を抜け南シナ海へ―【私の論評】ボロ船「遼寧」で中国の国内向けイッツ・ショータイムが始まる(゚д゚)!
中国の空母は、日米や台湾にとつても全く脅威でも何でもありません。結論から言ってしまうと、西側の空母は「実用品」ですが、中国の空母は見世物にすぎないからです。 
昔日本のある軍人が「空母の性能は艦載機で決まる」と言ったそうですが、現代でもこの言葉は当てはまります。 
高性能な艦載機を安定して運用できる空母が高性能なので、空母自体は極論すれば、飛行機の入れ物に過ぎないのです。 
アメリカの空母は地上基地と同じような性能の大型戦闘機を80機以上も搭載可能で、カタパルト(射出装置)によって数十秒ごとに離陸させることができます。平常時は航空機55機程度とヘリコプター15機程度を運用しています。
米空母「ニミッツ」
離陸の際には蒸気式カタパルト4基が1分ごとに艦載機を射出するので最大15秒で一機ずつ離陸できます。この蒸気式カタパルト4基を稼動させるのに原子力機関の電力が必要で、通常エンジンで運用するのは困難とされています。 
アメリカが空母に原子力機関を用いる一番の理由がこの電力確保ではないかとも言われています。良く言われる「地球を何周も出来る航続距離」についてはアメリカ軍自身が、あまり実用的な意味は無いと認めています。 
船の燃料だけ無限でも、航空機燃料や乗組員の食料や飲料が先に尽きてしまうからです。収容の際も数十秒間隔で着艦し、2機同時に昇降できる大型エレベーター3基で艦内に格納することができます。 
艦載機は同じ時代の地上用戦闘機と比較しても、遜色の無い性能が確保されている。現在のFA-18はF-15と同等とされていますし、今までの艦載機もずっとそうでした。今後もF-35ステルス機を海軍と空軍で運用する事が予定されています。 
アメリカの空母はまさに空母の理想形といえ、一隻の空母を50年間運用するのに1兆円以上掛けているとされます。他国の空母はアメリカよりぐっと下がり「とりあえず飛ばせる」のを目的にしている事が多いです。 
実戦で役に立ちそうなのはフランスとイギリスの空母くらいで、他は地上の基地から飛び立つ敵機と交戦するのは厳しいです。欧米先進国はハリアーや将来はF-35のような優れた艦載機を運用できるのですが、他の国は「とりあえず飛べる」程度のものしか確保できないからです。

燃料も装備を全部外さないと「遼寧」を離陸できないJ-15
では中国の空母および艦載機はどうなのでしょうか?中国の空母「遼寧」は旧ソ連空母の「ヴァリャーグ」がウクライナの造船所で未完成のまま野ざらしになっていたのを買い取りました。エンジンが無かったので中国製のエンジンを搭載し、搭載装備も間に合わせの中国製や輸入品でできています。 
特徴は速力が遅いこと、カタパルトが無いこと、スキージャンプ方式であることです。滑走路の先端にスキージャンプを取り付けるのはイギリス空母で始まり、垂直離着陸機のハリアーを少ない燃料で離陸させる事ができました。 
このように西側先進国の空母では垂直離着陸機(VTOL機)でスキージャンプを使用しています。本来ジャンプ台を使わなくても離陸できるのです。 
対してソ連やロシアの空母では、元々空母から離陸する能力が無い戦闘機を、ジャンプ台を用いて離陸させています。空母からは飛べない戦闘機を無理やり飛ばしているので、空母のミサイルや爆弾の搭載量は非常に少なく、航続距離も短いのです燃料を多く積むと兵器を減らす必要があるのです。 
ソ連とロシアの艦載機SU-33は、地上運用型のSU-27の改造機に過ぎません。中国が「遼寧」で運用しているJ-15(殲-15)もソ連のSU-27を中国が勝手にコピーして艦載機にしたもので、ロシア側はSU-33の模造品だと言っています。 
J-15はSU-33よりも電子装備などが新しいものの、基本性能はSU-33より劣っています。以前アメリカの軍事メディアが「J-15は2トンしか武器を積載できない」との解説をしていたことがありますしかも実際の運用時には翼の下に増加タンクも装備するので、1トン以下かゼロという可能性すらあります。
「遼寧」を発艦するJ-15
元になったソ連の空母とSU-33は現在もロシアが運用しているのですが「飛行しているのを何度が確認された」という程度で、あまり活動はしていないようです。 SU-33の生産奇数はたった24機で、J-15は11機に過ぎません。これでは、通常では試作機の数程度に過ぎません。 
中国の空母はロシアと同じく、保有しているのを見せびらかす以上の機能を持っていないと考えられています。 
今後新型のJ-31が実戦配備されても空母「遼寧」の戦力はあまり変わらないでしょう。中国は「遼寧」に変わるような10万トン級の大型空母を多数建造するという計画を発表しています。 
しかし、技術的、予算的な裏づけがないのに、大風呂敷を広げるのは中国の伝統芸能ですす。本当に建造したとしたら、やはり専門家の笑いの種になるのでしょう。
下の動画は、蒸気カタパルトで巨大な戦闘機を一気に加速させ、空に放つ米空母の飛行甲板で働く様子を、とある作業員の装着したGoProカメラの視点から眺められる動画です。


船の上の作業は戦闘中に電源を失ってもできるよう、基本的には人力で行われます。こうした発艦作業もオートメーション化はされていません。事故を防止するためにいろいろな人がいろいろな工夫や手順を踏んでいる様子がなかなかおもしろい動画です。

そうして注目転点は、空母「遼寧」の搭載している殲(J)15はミサイルも燃料タンクも搭載していませんが、米国の航空機はミサイルと燃料タンクも搭載していることがはっきりわかります。

米国の空母の専門家は、この有様をみて、「中国が何のためにこのような空母を運用するのか、その理由がわからない」と語ったと言われています。私にも全くわかりません。

中国初の国産空母も、スキージャンプ方式なので、実質は遼寧とあまり変わりないでしょう。ただし、電子機器や兵装が近代化された程度のものでしょう。

それと、次世代の空母は、リニアモーターによる電磁式カタパルトが設置され、原子力による動力システムが導入されると予測しているようですが、中国のリニアモーターの技術もかなり拙いものです。

2027年、東京~名古屋間に世界で初めて超電導技術を採用したリニア中央新幹線が開通します。品川駅から名古屋駅までを最速40分、さらに2045年には大阪までを67分で結ぶ計画です。

「でも、リニアモーターカーって上海にもなかった?」という人もいるかもしれないですが、上海のリニアと日本のリニアとでは技術レベルの次元に雲泥の差があります。そうして、この技術は空母で戦闘機を発艦することに転用できます。

技術的には拙い上海のリニアモーターカー
リニアモーターカーとは、車両側に取り付けた電磁石と地上側の電磁石の、磁界(N極・S極)の反発する力と引っ張る力を利用して進むものをいいます。なかでも日本のリニア中央新幹線の特徴は、超電導技術を導入している点です。

ある種の金属・合金・酸化物を一定温度以下に冷やすと、電気抵抗がゼロになる「超電導現象」が生まれます。超電導状態になったコイルに一度電流を流せば、電流は永遠に流れ続け、強力なパワーをもつ超電導磁石となります。この「超電導現象」を生み出すのが技術的に極めて難しいのです。

日本のリニアは超電導材料としてニオブチタン合金を使用し、液体ヘリウムでマイナス269度まで冷却することで超電導状態を作り出しています。

日本のリニアは“超電導”技術を使い、10センチも浮上して走行します。一方、上海のリニアはドイツが開発したトランスラピッドリニアという方式を採用していますが、これは超電導ではなく“常電導”磁気浮上と呼ばれるものです。超電導に比べて圧倒的に磁場が弱く、浮上する高さは1センチメートル程度しかありません。もしも地震などで軌道が歪めば、すぐに車両と軌道が接触する危険があります。

最高速度も日本のリニアが最高時速581キロなのに対し、上海リニアは430キロが限度です。さらに加減速の性能にも大きな差があります。

上海リニアの常電導では最高時速430キロに到達するのに13.3キロメートルの距離を要していますが、日本の超電導リニアが最高速度581キロを出すまでに必要な距離はわずか8.8キロメートル。時速500キロになら、上海リニアの半分の距離で達することができます。

上海リニアは2002年、中国・上海の浦東空港と郊外の地下鉄駅の間、約30キロの区間を8分弱で結んで話題になりましたが、実際に乗った人は、「加速に時間がかかり、最高速度に到達するとすぐに減速を始めてしまった」と話しています。

技術レベルで見れば、超電導と上海の常電導は“機械とオモチャ”ほどの違いがあることは間違いありません。

中国は、日本の大型ヘリコプター搭載護衛艦の存在をかなり恐れているようですが、それも理解できるような気がします。

海上自衛隊最大の護衛艦「かが」が3月22日、横浜市のジャパンマリンユナイテッド磯子工場で就役しました。

護衛艦「かが」
「かが」は全長248メートル(遼寧は304メートル)で艦首から艦尾までが空母のように平らな「全通甲板」を持つヘリコプター搭載護衛艦です。哨戒ヘリは5機が同時に離着艦でき、対潜水艦戦に従事して強引な海洋進出を続ける中国を牽制します。

輸送ヘリや攻撃ヘリ、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイなども搭載でき、南西諸島をはじめとした離島防衛や災害派遣などでの活躍も期待されています。

この「かが」は見た目は、ほとんど空母です。そうして、甲板をある程度加工すれば、垂直離着陸機(VTOL機)でもあるF35Aを搭載すれば、実質的に空母として運用できます。

航空自衛隊のF35A
それに、日本がリニアモーターカーの技術を、空母のカタパルトに転用することは可能です、そうすると、原子力ではない通常のエネルギーで動く空母でも、原子力空母と同等の攻撃力を持った空母も建造可能です。

中国にはまだない技術を日本は、はるかに先んじて持っているわけで、日本にとってはすでにまともな空母を建造するのは可能なのです。

それにしても、中国は工作技術や、先端技術でかなり劣っていますから、「遼寧」を改装したり、国産空母を建造するのでさえ、莫大な費用がかかります。どの程度かかるのかは、わかりませんが、日本が「かが」や「ひゅうが」を建造したり、リニアモーターによる電磁式カタパルトを備えた本格的空母を建造するよりもはるかに費用がかかるのは間違いないです。

これから、中国が空母大国になりたいと望むなら、莫大な経費を必要として、末期のソ連のようになる可能性は高いです。旧ソ連は、軍事力で米国に追いつき追い越そうとしたため、かなりの軍事費をついやさなければならなくなり、それがソ連崩壊の原因の一つにもなった面は否めません。

日本も、これから空母を建造すべきだと思います。日本が空母を5隻くらいも持つようになれば、アジアの軍事バランスも相当変わると思います。それに、日米に追いつけ、追い越せと中国が空母建造に血道をあげれば、中国が弱体化します。どんどんやってほしいです。

リニアモーターカーによる電磁カタパルトを備えた本格的空母を二隻建造し、あとはヘリコプター護衛艦の甲板を改装して、F35Aを搭載するようにすれば、日本としては無理なくできる範囲だと思います。それと、当然のことながら、オスプレイも搭載すべきです。

日本のリニアモーター技術と省エネ技術をもってすれば、後続距離では米国の原子力空母には到底及ばないものの、戦闘力では同等のものを十分に建造できます。ただし、ブログ冒頭の記事にもあるように、「地球を何周も出来る航続距離」についてはアメリカ軍自身が、あまり実用的な意味は無いと認めています。

船の燃料だけ無限でも、航空機燃料や乗組員の食料や飲料が先に尽きてしまうからです。

日本は、米空母の航空燃料や乗組員の飲食料の搭載分の範囲の航続距離を有し、エネルギーを節約し、米原子力空母と同等の航空機発艦・着艦回数と同等の能力を持つ安全な空母を建造する事が可能です。

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2017年7月22日土曜日

「石破4条件」の真相はこれだ!学部新設認めない「告示」の正当性示せなかった文科省―【私の論評】財務省のような粘りのない文科省の腰砕けを露呈したのが加計問題の本質(゚д゚)!

「石破4条件」の真相はこれだ!学部新設認めない「告示」の正当性示せなかった文科省

石破茂氏
 加計学園問題では、いわゆる「石破4条件」が注目された。石破茂氏が地方創生担当相だった2015年6月30日に閣議決定されたものなのでそう呼ばれているが、石破氏は、本人の名前がついていることを嫌っているようだ。

 なにしろ加計学園問題が、安倍晋三政権への倒閣運動の様相を呈しているので、政治家がピリピリするのは仕方ない。

 「石破4条件」は、獣医学部新設に関して、(1)新たな分野のニーズがある(2)既存の大学で対応できない(3)教授陣・施設が充実している(4)獣医師の需給バランスに悪影響を与えない-という内容で、16年3月までに検討するとされている。


日本獣医師政治連盟委員長の北村直人氏
 これが作られた経緯は、18日付産経新聞「加計学園 行政は歪められたのか(上)」に詳しい。それによれば、15年9月9日、石破氏は、衆院議員会館の自室で日本獣医師政治連盟委員長の北村直人氏と、日本獣医師会会長の蔵内勇夫氏に対して、「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました」と語ったという。

 これが事実であれば、「石破4条件」は獣医師会の政界工作の成果だといえる。

 その根本を探すと、文科省が獣医学部の申請を一切認めないとする同省の方針に行きつく。これは、03年3月の「文科省告示」として書いてある。いわゆる岩盤規制である。これらの規制に基づき50年以上も獣医学部の新設がなかった。

 そこで、国家戦略特区の課題として、内閣府と文科省の間で、文科省告示の適否が議論された。交渉の結果として出てきたのが「石破4条件」だった。筆者の聞くところでは、この文言案は文科省から出されたようだ。

 しかし、文科省はここで大失敗をした。前述のように高いハードルを作るつもりで、学部新設をしたい者は条件をクリアして持ってこい、と考えた。つまり、4条件の挙証責任は文科省にはないという立場だ。実際、前川喜平・前文科事務次官ほか、文科省関係者はそう主張する。

 これは誤りだ。文科省の学部新設の認可制度は、憲法で保証されている営業の自由や職業選択の自由を制限するので、挙証責任は所管官庁の文科省にあるのだ。これは閣議決定された特区基本方針にも明記されている。

 つまり、「石破4条件」で書かれていることは、文科省が学部新設の申請を門前払いする文科省告示の正当性を16年3月までに示さなければいけないということだ。それが示せなければ、文科省告示を廃止または改正する必要が出る。

 「石破4条件」を検討するためには、農水省などの協力も必要だ。しかし農水省は早い段階から手を引いたらしい。その結果、文科省は16年3月までに説明ができなくなってしまった。これが真相だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省のような粘りのない文科省の腰砕けを露呈したのが加計問題の本質(゚д゚)!

学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐる批判が吹き荒れる6月26日、地方創生担当相の山本幸三は内閣府での会合でこう語りました。

「この話は、去年3月末までに文部科学省が挙証責任を果たせなかったので勝負はそこで終わっている。半年後の9月16日に延長戦としてワーキンググループ(WG)で議論したが、そこでも勝負ありだった」

多数のメディアや野党は、首相の安倍晋三と加計学園理事長が旧知の仲であることから「加計ありきだった」という批判を続けています。その最大の根拠は、内閣府幹部職員が文科省職員に「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと語ったとする同省の内部文書でした。

ところが、「官邸の最高レベル」という文書の日付は「平成28年9月26日」。この時点ですでに獣医学部新設の議論は決着しており、安倍の意向が働くことはありえないです。

では、日本獣医師会の強い意向を受けて、獣医学部新設を極めて困難とする「石破4条件」が27年6月30日の閣議決定「日本再興戦略」に盛り込まれたにもかかわらず、愛媛県今治市の獣医学部新設の特区申請が認められたのはなぜだったのでしょうか。

国家戦略特区WG座長でアジア成長研究所所長の八田達夫は「4条件により制限は加えられたが、達成可能だ」と踏みました。日本再興戦略で「獣医学部新設に関する検討」という文言が明記されていたからです。

国家戦略特区WG座長 八田達夫氏
文科省は、農林水産省による獣医師の需給推計を根拠に「獣医師は足りている」として学部新設や定員増を拒み続けてきました。

八田はこれを逆手に取りました。日本再興戦略を読み解いた上で「成長戦略につながる高度な研究や創薬など新たな部門に携わる獣医師の需要が明らかになれば、クリアできる」と理屈づけたのです。

しかも日本再興戦略では「28年3月末までの検討」を農水省や文科省に義務づけました。八田はこれこそ最重要ポイントと考え、WGは両省に「再検討」を求めました。

ところが、ここから文科省は猛烈なサボタージュを始めました。八田は内閣府を通じて文科省に検討状況を何度も尋ねたのですが、期限である「28年3月末」が過ぎても明確な回答はありませんでした。結局、WG会合が開催されたのは、期限の半年近く後の同年9月16日でした。

ちなみに「需要見通し」は、「複数の微分方程式体系からなる数理モデル」です。獣医師は足りているということを文科省は微分方程式を書いて証明すれば良かったのです。しかし、これは、文系事務官僚の手に負える代物ではないです。

しかし、何も自分たちでやらなくても、省外の誰か数学の得意な人に顧問にでもなってもらいその人にやってもらえば、それで良かったはずです。そうして、その結果を他の複数の人に検証してもらえばそれで良かったはずです。でも、彼らにはそれをしませんでした。

本当は誰かに頼んで、やってもらったのかもしれません。しかし、いくら数理モデルにあてはめたにしても、本当に足りなければ足りないなりの結果しかでません。外部に頼んだにしても、外部の数理研究者なども嘘をつくわけにはいきません。

そこで、文科省は諦めてしまったのでしょう。文科省はこの点においては、財務省には負けてしまうようです。財務省の場合は、このような場合でも無理をしてでも、何とか自分たちの都合の良い資料を作り上げます。

たとえば、デフレなど景気の悪い時には、マクロ経済学的には、減税、給付金、公共工事などの積極財政をせよと教えていますが、財務省はこの教えに背いて、デフレ気味味の現状でも増税をするための根拠を何とかでっちあげています。

そうして、増税の根拠をご説明資料にまとめて、政治家やマスコミなどに足繁くかよい説明をして、その根拠をまわりに信じ込ませ、とうとう8%増税を安倍政権に実行させてしまいました。しかし、この根拠はでっちあげだったことは、増税後の大失敗ですぐに暴露されました。

この手口は、詳しく分析してみると、数理モデルを駆使するような高度なものではありません。良く分析するといくつもの錯誤の上に成り立っていることは確かです。たとえば、財政と税制の一体改革なるものを打ち出し、まともな医療や社会保障を受けたいのであれば、増税に甘んじなければならないなどと、多くの人の情感に訴えるものであったり、明らかな錯誤の上に成り立つものです。

財務省の嘘を暴く高橋洋一氏の番組
その手口の中心は、政府の負債だけに注目させて、資産を無視して、国の借金1000兆円であり、政府は借金塗れであるようにみせかけるというものです。また、統合政府という、日銀と政府を含めた尺度見た統合政府の財政状況なども無視です。これなど、民間企業では連結決算ということで当たり前になっていることですが、それが明るみに出れば、政府の借金など幻想に過ぎないということが国民知れてしまうで、財務省はおくびにも出しません。

財務省は、自分たちの省益を守り抜くには、ここまでやり抜くのですが、文科省にはこうした根気や、覚悟がなかったようです。さすがに、一流官庁といわれる財務省と最低といわれる文科省の違いです。(無論これでは、財務省も国民にとって良くはないのですが、目標に向かって執着心を持って、努力するという意味では財務省のほうが優れているという意味です)

WG会合では、新たな部門での獣医師需要について農水省は「特に説明することはない」と関与を避けました。文科省は「各大学で取り組んでいる内容だ」と従来の説明を繰り返しました。

会合の議事録には、

「家畜の越境国際感染症など、これまで対応する必要がなかった部門で需要が出てきた。新たなニーズに対応するマンパワーの増強が必要ではないか」

「新しい分野も既得権を持った大学の中だけでやろうというのはあり得ない。本来は28年3月末までに検討するはずだったのに、今になって需要の有無の結論が出ていないのは遅きに失している」

という内容が掲載されています。

委員たちは矢継ぎ早に文科省を攻め立てたのですが、同省側はひたすら4条件をそらんじるばかりで挙証責任を果たしませんでした。そこである委員が詰め寄りました。

「文科省は需要の有無についてちゃんと判定を進めているのか」

文科省は「わが省だけでは決められない。政府全体で決めてほしい」と需要推計を内閣府に委ねてしまいました。事実上の「白旗」宣言でした。山本の言う「勝負あり」とはこれを指します。

国家戦略特区で提示された、新しいニーズの創薬(トランスレーショナル・スタディ、トランスレーショナル・ベテリナリーメディシン)など、動物を用いて行うライフサイエンス研究分野では、創薬イノベーションなどは厚労省、動物実験は環境省、また水際対応など危機管理対応の必要な分野では、人獣共通感染症は厚労省、食品の安全(輸入食品を含む)は厚労省、家畜感染症が農水省の管轄です。

国際的にみても、新しい獣医師へのニーズの多くは、厚労省などに関連する職域の獣医師です。「動物で完結していた獣医学が、ヒトを意識した獣医学」へと拡大していく必要があります。また、以下の図からわかるように、現状の獣医職域の偏在の矛盾が、そのまま、新しい獣医学のニーズへの対応不足として現れている関係になっています。


前川前財務次官は、財務次官のように省益に執着して、粘ることもなく、完璧に戦いに負けてしまったのですが、その負けを認めたくなかったようです。本来なら、現役のときに、財務省を見習って獣医師需要は盤石であるとの根拠をでっちあげ、それを説明資料にして、マスコミや政治家を説得すべきだったと思います。

本来ならば、現役のときに執着して、財務省のようにどこまでも突っ走ればよかったのでしょうが、それもせずに、辞任したあとにするというのですから、負け犬の遠吠えと言われてもしかたありません。

では、この直後に作成された文科省の内部文書とは一体何だったのでしょうか。誰の目から見ても文科省はあまりに無残に敗北しました。漏洩(ろうえい)した内部文書は、省内向けの敗北のエクスキューズ(言い訳)のために作られたのでしょう。「総理のご意向」ということにすれば、省内では何とか言い訳はたちます。

では「総理のご意向」とは何でしょうかか。WGの議論では一切登場しません。強いて言うならば「岩盤規制をドリルで崩せ」という国家戦略特区の大方針を指すのではないでしょうか。

28年9月16日のWG会合で獣医学部新設の道筋は開けたかに見えたが、11月9日の国家戦略特別区域諮問会議では「広域的に獣医学部のない地域に限り新設を認める」という新たな条件が加わりました。

これには理由がありました。八田は10月末に山本にこう耳打ちしました。

「獣医師会がまた厳しいことを言ってくる可能性がある。ニーズの高い地域に絞ることで反対勢力と合意しやすくしよう」

八田は「獣医学部の定員規制そのものがナンセンスだ」と考えていましたが、座長の職務を通じて獣医師会の政治力のすさまじさを思い知りました。山本も「早く岩盤規制を突破するには仕方ないな」と渋々応じたのです。

それでも獣医師会は猛反発しました。獣医師会会長で自民党福岡県連会長の蔵内勇夫は11月22日の獣医師会のメールマガジンで「必ずや将来に禍根を残すであろう無責任な決定に対し、総力を挙げて反対して行きましょう」と呼びかけました。

蔵内らは12月8日、山本に直談判し、「新設は1カ所1校」とするよう求めました。やむなく山本も受け入れました。これにより新設は加計学園1校に絞られました。

前文科事務次官の前川喜平は「『広域的』という条件により京都産業大(京都市)が排除され、加計学園に絞られた」「行政が歪(ゆが)められた」と批判しています。

京産大副学長の黒坂光氏
しかし、京産大副学長の黒坂光は今月14日の記者会見で「広域ということで対象外となったとは思っていない」と明言した。京産大とともに獣医学部誘致を目指した京都府知事の山田啓二も同日、こう語りました。

「愛媛県は10年間訴え続けたのに、こちらは1年。努力が足りなかった」

果たして安倍政権は行政を歪めたのでしょうか。むしろ歪めたのは獣医師会であり、文科省ではないでしょうか。獣医学部の問題の本質に踏み込まず、「安倍はお友達の加計を優遇したに違いない」という印象操作を繰り広げたメディアの罪もまた重いです。

そうして、メディアは、財務省の公表した資料を吟味もせず、そのまま垂れ流すようなことが習慣になっています。そのような矜持のないメディアは、加計問題もまともに報道できないのは当たり前です。

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